(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】板状物の製造方法及び板状物
(51)【国際特許分類】
C03B 33/00 20060101AFI20240311BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240311BHJP
C03C 15/00 20060101ALI20240311BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C03B33/00
B23K26/53
C03C15/00 Z
H01L21/78 B
H01L21/78 S
(21)【出願番号】P 2020144283
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】河野 文弥
(72)【発明者】
【氏名】武田 昇
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-110830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K26/00-26/70
C03B33/00
C03B23/02-23/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質材料で形成された板状の被加工物を、該被加工物を透過する波長を有するパルス状のレーザービームで加工することで、外力により屈曲可能な板状物を製造する板状物の製造方法であって、
該レーザービームの集光点を該被加工物の内部に位置付けた状態で該レーザービームを該被加工物に照射することにより、該被加工物の厚さ方向に沿って形成された細孔と該細孔の側方を囲む改質領域とをそれぞれ含む複数のシールドトンネルを該被加工物に形成するシールドトンネル形成ステップと、
エッチング剤で該複数のシールドトンネルをエッチングするエッチングステップと、
を備え、
該シールドトンネル形成ステップでは、
該被加工物の一面に設定された線状の第1の加工予定領域に沿って第1の長さを有する第1のシールドトンネル領域に複数のシールドトンネルを形成し、
該一面上で該第1の加工予定領域の延長線上とは異なり且つ該第1の加工予定領域に隣接する領域に設定された線状の第2の加工予定領域に沿って第2の長さを有する第2のシールドトンネル領域であって、該第1の加工予定領域から該第2の加工予定領域へ進む方向で該被加工物を見た場合に該第1のシールドトンネル領域と部分的に重なる該第2のシールドトンネル領域に、複数のシールドトンネルを形成することを特徴とする、板状物の製造方法。
【請求項2】
該シールドトンネル形成ステップは、
該レーザービームの照射領域と非照射領域とを交互に形成することで、該第1の加工予定領域に沿って第1の間隔を隔てて複数の第1のシールドトンネル領域を形成する第1のシールドトンネル形成ステップと、
該照射領域と該非照射領域とを交互に形成することで、該第2の加工予定領域に沿って第2の間隔を隔てて複数の第2のシールドトンネル領域を形成する第2のシールドトンネル形成ステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の板状物の製造方法。
【請求項3】
該被加工物はガラスで形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の板状物の製造方法。
【請求項4】
該エッチングステップ後において該第1のシールドトンネル領域及び該第2のシールドトンネル領域に形成された空間に、樹脂を充填する充填ステップを更に備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の板状物の製造方法。
【請求項5】
硬質材料で形成されており且つ外力により屈曲可能な板状物であって、
該板状物の厚さ方向に沿って形成された細孔をそれぞれ含む複数のシールドトンネルを有し、該板状物の一面に設定された線状の第1の加工予定領域に沿って第1の長さを有する第1のシールドトンネル領域と、
複数のシールドトンネルを有し、該一面上で該第1の加工予定領域の延長線上とは異なり且つ該第1の加工予定領域に隣接する領域に設定された線状の第2の加工予定領域に沿って第2の長さを有する第2のシールドトンネル領域と、
備え、
該第1のシールドトンネル領域と該第2のシールドトンネル領域とは、該第1の加工予定領域から該第2の加工予定領域へ進む方向で該板状物を見た場合に部分的に重なっていることを特徴とする板状物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質材料で形成された板状の被加工物をレーザービームで加工することで、外力により屈曲可能な板状物を製造する板状物の製造方法、及び、硬質材料で形成されており且つ外力により屈曲可能な硬質の板状物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシブルディスプレーを備える携帯端末が注目を集めている(例えば、特許文献1参照)。このようなフレキシブルディスプレーの表面は、樹脂で形成された透明の硬質フィルム等で覆われて保護される(特許文献2参照)。
【0003】
しかし、樹脂製の硬質フィルムは、傷がつきやすく、経年劣化しやすいという問題がある。この問題を解決するためには、例えば、ガラス等の硬質材料で形成された板状物で表面を保護することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-226204号公報
【文献】特開2019-206166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ガラス製の板状物を屈曲可能な薄さにすると、板状物の強度が不足する。これに対して、ガラス製の板状物を強度の確保が可能な厚さにすると、板状物を屈曲させることが困難になる。
【0006】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、硬質の板状物において強度と屈曲性とを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、硬質材料で形成された板状の被加工物を、該被加工物を透過する波長を有するパルス状のレーザービームで加工することで、外力により屈曲可能な板状物を製造する板状物の製造方法であって、該レーザービームの集光点を該被加工物の内部に位置付けた状態で該レーザービームを該被加工物に照射することにより、該被加工物の厚さ方向に沿って形成された細孔と該細孔の側方を囲む改質領域とをそれぞれ含む複数のシールドトンネルを該被加工物に形成するシールドトンネル形成ステップと、エッチング剤で該複数のシールドトンネルをエッチングするエッチングステップと、を備え、該シールドトンネル形成ステップでは、該被加工物の一面に設定された線状の第1の加工予定領域に沿って第1の長さを有する第1のシールドトンネル領域に複数のシールドトンネルを形成し、該一面上で該第1の加工予定領域の延長線上とは異なり且つ該第1の加工予定領域に隣接する領域に設定された線状の第2の加工予定領域に沿って第2の長さを有する第2のシールドトンネル領域であって、該第1の加工予定領域から該第2の加工予定領域へ進む方向で該被加工物を見た場合に該第1のシールドトンネル領域と部分的に重なる該第2のシールドトンネル領域に、複数のシールドトンネルを形成する、板状物の製造方法が提供される。
【0008】
好ましくは、該シールドトンネル形成ステップは、該レーザービームの照射領域と非照射領域とを交互に形成することで、該第1の加工予定領域に沿って第1の間隔を隔てて複数の第1のシールドトンネル領域を形成する第1のシールドトンネル形成ステップと、該照射領域と該非照射領域とを交互に形成することで、該第2の加工予定領域に沿って第2の間隔を隔てて複数の第2のシールドトンネル領域を形成する第2のシールドトンネル形成ステップと、を含む。
【0009】
好ましくは、該被加工物はガラスで形成されている。
【0010】
好ましくは、板状物の製造方法は、該エッチングステップ後において該第1のシールドトンネル領域及び該第2のシールドトンネル領域に形成された空間に、樹脂を充填する充填ステップを更に備える。
【0011】
本発明の他の態様によれば、硬質材料で形成されており且つ外力により屈曲可能な板状物であって、該板状物の厚さ方向に沿って形成された細孔をそれぞれ含む複数のシールドトンネルを有し、該板状物の一面に設定された線状の第1の加工予定領域に沿って第1の長さを有する第1のシールドトンネル領域と、複数のシールドトンネルを有し、該一面上で該第1の加工予定領域の延長線上とは異なり且つ該第1の加工予定領域に隣接する領域に設定された線状の第2の加工予定領域に沿って第2の長さを有する第2のシールドトンネル領域と、備え、該第1のシールドトンネル領域と該第2のシールドトンネル領域とは、該第1の加工予定領域から該第2の加工予定領域へ進む方向で該板状物を見た場合に部分的に重なっている板状物が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る板状物の製造方法は、シールドトンネル形成ステップを備える。シールドトンネル形成ステップでは、被加工物の一面に設定された線状の第1の加工予定領域に沿って第1の長さを有する第1のシールドトンネル領域に複数のシールドトンネルを形成し、一面上で第1の加工予定領域の延長線上とは異なり且つ第1の加工予定領域に隣接する領域に設定された線状の第2の加工予定領域に沿って第2の長さを有する第2のシールドトンネル領域に、複数のシールドトンネルを形成する。
【0013】
第1の加工予定領域から第2の加工予定領域へ進む方向で被加工物を見た場合に、第1のシールドトンネル領域と第2のシールドトンネル領域とは、部分的に重なる。これにより、第1の加工予定領域から第2の加工予定領域へ進む方向に沿って板状物は変形可能になる。また、被加工物の厚さは、シールドトンネル形成ステップの前後で変わらない。それゆえ、板状物の強度と屈曲性とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】
図3(A)はレーザー加工前の被加工物の一部断面側面図であり、
図3(B)はレーザー加工後の被加工物の一部断面側面図である。
【
図4】
図4(A)は1つのシールドトンネルの構造を示す斜視図であり、
図4(B)は複数のシールドトンネルを示す被加工物の一部の断面図である。
【
図5】
図5(A)は第1のシールドトンネル形成ステップを示す図であり、
図5(B)は第2のシールドトンネル形成ステップを示す図である。
【
図6】シールドトンネル形成ステップ後の被加工物の上面図である。
【
図9】
図9(A)は板状物の一面側の全体を示す画像であり、
図9(B)は板状物の一面側の角部を拡大した画像である。
【
図10】板状物を人の手で屈曲させた状態の画像である。
【
図12】
図12(A)は第1実験を示すグラフであり、
図12(B)は第2実験を示すグラフであり、
図12(C)は第3実験を示すグラフである。
【
図13】
図13(A)は第2の実施形態のシールドトンネル形成ステップ後の被加工物の上面図であり、
図13(B)は第3の実施形態のシールドトンネル形成ステップ後の被加工物の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る第1の実施形態について説明する。
図1は、レーザー加工装置2の斜視図である。なお、以下において、X軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)及びZ軸方向(高さ方向、上下方向)は、互いに直交する方向である。
【0016】
レーザー加工装置2は、チャックテーブル4を有する。チャックテーブル4の下方には、モータ等の回転駆動源(不図示)の出力軸が連結されている。出力軸は、Z軸方向に略平行に配置されており、回転駆動源を動作させると、チャックテーブル4は、出力軸の周りで回転可能である。
【0017】
回転駆動源の下方には、回転駆動源及びチャックテーブル4をY軸方向に移動させるボールネジ式のY軸移動ユニット(不図示)が設けられている。このY軸移動ユニットは、ボールネジ式のX軸移動ユニット(不図示)上に配置されている。
【0018】
X軸移動ユニットは、Y軸移動ユニット、回転駆動源及びチャックテーブル4を、X軸方向に沿って移動させる。チャックテーブル4は、金属で形成された円盤状の枠体(不図示)を有する。
【0019】
枠体の上部には、円盤状の凹部が形成されており、当該凹部には、多孔質セラミックスで形成された円盤状のポーラス板が固定されている。ポーラス板は、枠体の内部に形成されている流路(不図示)を通じてエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0020】
吸引源が発生する負圧は、流路を介してポーラス板の上面に伝達される。ポーラス板の上面と、枠体の上面とは、略面一となっており、X-Y平面に略平行な保持面4a(
図3(A)等参照)として機能する。
【0021】
被加工物11は、可視光線に対して透明な硬質材料で形成されている。本実施形態の被加工物11は、石英ガラスで形成されている。但し、被加工物11は、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダ石灰ガラス、無アルカリガラス、その他の光学ガラスを含む各種ガラスで形成できる。
【0022】
また、被加工物11は、ガラス以外にも、可視光波長に対して透明な結晶性の材料(水晶、サファイア等)で形成されていてもよい。被加工物11は、例えば、長辺が40mm、短辺が10mm、厚さが1mmの矩形板状である。なお、被加工物11の厚さは、所望の強度に応じて適宜設定される。
【0023】
被加工物11の一面11aには、線状(直線状、曲線状又は線分状)の複数の加工予定領域が、所定方向に離間する態様で設定される。なお、各加工予定領域は、レーザー加工装置2に読み込ませる設計データにおいて予め設定されてもよく、カメラの撮像視野等において仮想的に設定されてもよい。
【0024】
本実施形態における複数の加工予定領域は、それぞれ被加工物11の長辺の一辺から他辺まで短辺に沿って設定された直線状の第1の加工予定領域11c及び第2の加工予定領域11dを含む(
図6等参照)。第1の加工予定領域11c及び第2の加工予定領域11dは、被加工物11の長辺方向において互いに所定距離だけ離間する様に設定されている。
【0025】
つまり、第2の加工予定領域11dは、第1の加工予定領域11cの延長線上ではなく、第1の加工予定領域11cと直交する方向で第1の加工予定領域11cに隣接している(
図6等参照)。第1の加工予定領域11c及び第2の加工予定領域11d間の距離(ピッチ)は、例えば、10μm以上1000μm以下の所定値に設定される。
【0026】
被加工物11に対してレーザー加工を施す際には、前準備として、被加工物11の他面11b側に、被加工物11よりも大径であり樹脂で形成された粘着テープ(ダイシングテープ)13を貼り付ける。
【0027】
更に、粘着テープ13の外周部に、金属で形成された環状のフレーム15を貼り付ける。これにより、被加工物11が粘着テープ13を介してフレーム15で支持された被加工物ユニット17を形成する。
【0028】
被加工物11が吸引保持される保持面4aの上方には、レーザービーム照射ユニット6が配置されている。レーザービーム照射ユニット6は、Y軸方向に略平行に配置された円筒状の筐体8を有する。
【0029】
筐体8の一部には、Z軸移動ユニット(不図示)が連結されている。筐体8の高さ位置は、Z軸移動ユニットによって調整される。レーザービーム照射ユニット6は、レーザービームを発振するレーザー発振器(不図示)を有する。
【0030】
レーザー発振器は、例えば、Nd:YAG又はNd:YVO4で形成されたロッド状のレーザー媒質を含む。レーザー発振器は、被加工物11を透過する波長(例えば、1030nm、1064nm等)を有するパルス状のレーザービームを出射する。
【0031】
レーザービームは、音響光学変調器(不図示。以下、Acousto-Optic Modulatorの頭文字の基づきAOMと略記する)に入射する。AOMは、レーザービームの被加工物11への照射を一定の時間間隔で遮ることで、レーザービームの照射期間と、レーザービームの非照射期間と、を交互に設定できる。
【0032】
この様にして、レーザービームは、照射期間と非照射期間とが交互に繰り返される。レーザービームは、レーザービーム照射ユニット6の先端部に位置する加工ヘッド10内の集光レンズから、保持面4aに向けて略垂直に照射される。
【0033】
図3(A)に示す様に、加工ヘッド10から照射されるレーザービームLの集光点Pは、被加工物11の所定深さに位置付けられる。集光点Pと、保持面4aで保持された被加工物11と、をX軸方向に相対的に移動させれば、集光点Pの移動経路に沿って被加工物11が加工される。
【0034】
交互に繰り返されるレーザービームLの照射期間及び非照射期間に応じて、被加工物11には集光点Pの移動経路に沿って照射領域R
A及び非照射領域R
Bが交互に形成される(
図3(B)参照)。
【0035】
非照射領域RBに対する照射領域RAの比(即ち、RA/RB)は、例えば、1以上3以下の所定値に調整される。但し、この比の値は、AOMの動作を調整することで、適宜設定できる。
【0036】
加工ヘッド10の近傍には、撮像ユニット12が配置されている。撮像ユニット12は、対物レンズ、イメージセンサ(いずれも不図示)等を含む。撮像ユニット12は、例えば、保持面4aで保持された被加工物11を撮像する。
【0037】
撮像により得られた画像は、第1の加工予定領域11c及び第2の加工予定領域11dの決定、照射領域RA及び非照射領域RBの決定、レーザービームLの照射位置の決定、被加工物11の位置決め等に利用される。
【0038】
レーザー加工装置2は、X軸移動ユニット、Y軸移動ユニット、回転駆動源、チャックテーブル4、Z軸移動ユニット、レーザー発振器、AOM、撮像ユニット12等の動作を制御する制御部(不図示)を有する。
【0039】
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0040】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部の機能が実現される。制御部には、設計データが入力される入力部(不図示)が設けられている。
【0041】
設計データは、被加工物11のレーザー加工領域を示すデータであり、例えば、CAD(Computer-Aided Design)データで構成されている。制御部は、入力部に入力された設計データに基づいて、AOM、チャックテーブル4等の動作を制御し、被加工物11をレーザー加工する。
【0042】
次に、被加工物11をレーザービームLで加工して、外力により屈曲可能な板状物23(
図6、
図7等参照)を製造する製造方法について、
図2から
図7を参照して説明する。
図2は、板状物23の製造方法を示すフロー図である。
【0043】
本実施形態では、まず、被加工物ユニット17を保持面4aで保持する(保持ステップS10)(
図3(A)参照)。
図3(A)は、被加工物11の短辺の側面を見た場合における、レーザー加工前の被加工物11の一部断面側面図である。
【0044】
保持ステップS10の後、被加工物11にレーザービームLを照射することにより、被加工物11に複数のシールドトンネルを形成する(シールドトンネル形成ステップS20)。シールドトンネル形成ステップS20では、まず、チャックテーブル4の回転角度を適宜調節し、集光点Pを加工予定領域の延長線上に位置付ける。
【0045】
そして、Z軸移動ユニット等を動作させ、集光点Pを被加工物11の内部に位置付ける。この状態で、チャックテーブル4をX軸方向に沿って移動させると、加工予定領域に沿って被加工物11がレーザー加工される。
【0046】
図3(B)は、被加工物11の短辺の側面を見た場合における、レーザー加工後の被加工物11の一部断面側面図である。照射領域R
Aには、複数のシールドトンネル11eが形成され、照射領域R
Aは、第1のシールドトンネル領域19aとなる。これに対して、非照射領域R
Bには、シールドトンネル11eが全く形成されない。非照射領域R
Bは、第1の非加工領域19bとなる。
【0047】
図4(A)は、1つのシールドトンネル11eの構造を示す斜視図であり、
図4(B)は、複数のシールドトンネル11eを示す被加工物11の一部の断面図である。なお、
図4(A)及び
図4(B)では、厚さ方向で被加工物11の一部を省略している。
【0048】
各シールドトンネル11eは、被加工物11の厚さ方向に沿って形成された細孔11hを有する。細孔11hは、略円柱状の細長い空間であり、例えば、その直径ΦAが略1μmである。細孔11hは、典型的には、厚さ方向で被加工物11を貫通している。
【0049】
シールドトンネル11eは、細孔11hの側方を囲む様に形成された改質領域11gを更に有する。改質領域11gは、略円柱状の領域であり、例えば、その直径ΦBが5μm以上20μm以下の所定値である。
【0050】
改質領域11gは、レーザービームLが照射されていない第1の非加工領域19bに比べて、構造、密度等が変化しており、例えば、第1の非加工領域19bに比べてエッチング剤に対する耐腐食性が弱い領域である。
【0051】
複数のシールドトンネル11eは、第1の加工予定領域11cに沿って形成される。隣接する2つのシールドトンネル11eの改質領域11gは、例えば、
図4(B)に示す様に互いに接続しているが、2つの改質領域11gは、互いに離れていてもよい。
【0052】
シールドトンネル形成ステップS20では、第1の加工予定領域11cに沿ってレーザービームLを照射することで、
図5(A)に示す様に、第1の非加工領域19bをそれぞれ隔てて複数の第1のシールドトンネル領域19aを形成する(第1のシールドトンネル形成ステップS22)。
【0053】
図5(A)は、第1のシールドトンネル形成ステップS22を示す図である。第1のシールドトンネル形成ステップS22では、被加工物11の長辺の一点を始点として、第1の加工予定領域11cに沿って第1のシールドトンネル領域19aの形成を開始する。
【0054】
第1の加工予定領域11cに沿う第1のシールドトンネル領域19aの長さ(第1の長さ)LAに対する、第1の加工予定領域11cに沿う第1の非加工領域19bの長さ(第1の間隔)LBの比(即ち、LA/LB)は、(RA/RB)と同じである。
【0055】
第1のシールドトンネル形成ステップS22の後、チャックテーブル4を所定のピッチL
C(
図5(B)参照)だけ割り出し送りして、レーザービームLの集光点Pを第2の加工予定領域11dに位置付ける。
【0056】
そして、第2の加工予定領域11dに沿ってレーザービームLを照射することで、
図5(B)に示す様に、第2の非加工領域21bをそれぞれ隔てて複数の第2のシールドトンネル領域21aを形成する(第2のシールドトンネル形成ステップS24)。
【0057】
図5(B)は、第2のシールドトンネル形成ステップS24を示す図である。第1のシールドトンネル領域19aと同様に、第2のシールドトンネル領域21aも、複数のシールドトンネル11eを有する。
【0058】
第2の加工予定領域11dに沿う第2のシールドトンネル領域21aの長さ(第2の長さ)LAに対する、第2の加工予定領域11dに沿う第2の非加工領域21bの長さ(第2の間隔)LBの比(LA/LB)は、(RA/RB)と同じである。
【0059】
なお、本実施形態の第2のシールドトンネル領域21aの形成開始位置は、短辺方向において、第1のシールドトンネル領域19aからずれている。それゆえ、長辺近傍に位置する第2のシールドトンネル領域21aは、第1のシールドトンネル領域19aに比べて短い。
【0060】
しかし、本実施形態において、第2のシールドトンネル領域21aの長さは、長辺に接する第2のシールドトンネル領域21aの長さではなく、長辺に接しない第2のシールドトンネル領域21aの長さを意味するものとする。
【0061】
第2のシールドトンネル領域21aの形成開始位置を短辺方向でずらしたことで、
図5(B)に示す様に、第1の加工予定領域11cから第2の加工予定領域11dへ進む方向で被加工物11を見た場合に、1つの第1のシールドトンネル領域19aと、1つの第2のシールドトンネル領域21aと、は部分的に重なる(重なり長さL
D)。
【0062】
本実施形態の第2のシールドトンネル領域21aは、第1の加工予定領域11cから第2の加工予定領域11dへ進む方向で、第2のシールドトンネル領域21aの長手方向の中心が、第1の非加工領域19bの長手方向の中心と、一致する様に配置される。
【0063】
また、本実施形態の第1のシールドトンネル領域19aは、第1の加工予定領域11cから第2の加工予定領域11dへ進む方向で、第1のシールドトンネル領域19aの長手方向の中心が、第2の非加工領域21bの長手方向の中心と、一致する様に配置される。
【0064】
第1のシールドトンネル形成ステップS22及び第2のシールドトンネル形成ステップS24における、レーザー加工条件は、例えば、次の様に設定される。
【0065】
レーザー発振器 :Nd:YAGパルスレーザー
波長 :1030nm
パルスエネルギー:60μJ
加工送り速度 :100mm/s
【0066】
第1のシールドトンネル形成ステップS22及び第2のシールドトンネル形成ステップS24を繰り返すことにより、被加工物11の長辺方向に沿って、複数の第1のシールドトンネル領域19aと、複数の第2のシールドトンネル領域21aと、が交互に形成される。
【0067】
図6は、シールドトンネル形成ステップS20後の被加工物11(即ち、板状物23)の上面図である。レーザー加工後、板状物23を粘着テープ13から剥離し、板状物23に対してウェットエッチングを施す(エッチングステップS30)。
【0068】
図7は、エッチングステップS30を示す図である。エッチングステップS30では、例えば、エッチング剤16に対する耐腐食性を有する容器14が使用される。容器14の底面から所定の高さ位置には、板状物23が載置される支持部材14aが設けられている。
【0069】
本実施形態の支持部材14aは、耐腐食性を有する金属製のワイヤーネットである。容器14には、支持部材14aが十分に浸かる所定の高さ位置まで、フッ化水素酸、水酸化カリウム水溶液等の液体のエッチング剤16が満たされる。
【0070】
容器14の外側の底面には、超音波振動子(不図示)が固定されている。超音波振動子は、支持部材14aに載置された被加工物11へ超音波振動を付与する。なお、超音波振動の付与に代えて、又は、これと共に、エッチング剤16の撹拌、揺動、振動、加熱等を行ってもよい。
【0071】
エッチングステップS30では、エッチング剤16で満たされた容器14に、板状物23を浸漬し、各シールドトンネル11eの改質領域11gを少なくとも部分的にエッチング剤16でエッチングして除去する。但し、このとき、板状物23の厚さは変わらない。
【0072】
エッチング条件は、例えば、次の様に設定される。但し、エッチング剤16の濃度及び温度、超音波振動の有無等に応じて、浸漬時間を、適宜変更してもよい。
【0073】
エッチング剤:フッ化水素酸
濃度 :38%
温度 :室温
浸漬時間 :10分
超音波振動 :あり
【0074】
エッチングステップS30では、改質領域11gが少なくとも部分的に除去される。これにより、細孔11hの直径ΦAが拡大したり、細孔11hが厚さ方向で被加工物11を貫通したりするので、板状物23の屈曲性が、エッチング前に比べて向上する。
【0075】
この様に、本実施形態では、板状物23の厚さを強度確保が可能な厚さとし、且つ、第1の加工予定領域11cから第2の加工予定領域11dへ進む方向に沿って板状物23は変形可能になる。それゆえ、板状物23の強度と、屈曲性と、を両立できる。
【0076】
なお、エッチングステップS30前の板状物23も、エッチングステップS30後の板状物23に比べて程度が小さいが、ある程度の屈曲性を有する。それゆえ、エッチングステップS30前の板状物23も、強度及び屈曲性を両立できると言える。
【0077】
エッチングステップS30の後、板状物23を容器14から取り出して、第1のシールドトンネル領域19a及び第2のシールドトンネル領域21aに形成された細孔11h等の空間に樹脂25を充填する(充填ステップS40)。
【0078】
但し、充填ステップS40は必須の工程はなく、省略してもよい。充填ステップS40では、まず、屈曲した板状物23の形状に応じた保持面を有する治具で、板状物23の他面11b側を直接吸引保持する。次に、第1のシールドトンネル領域19a及び第2のシールドトンネル領域21aに樹脂25を塗布して充填する。
【0079】
樹脂25としては、石英ガラスの屈折率(1.40以上1.55以下の所定値)に近い屈折率を有する(即ち、透明な)、天然樹脂や合成樹脂を用いることができる。例えば、透明であり、且つ、柔軟性を有するシリコーンゴム、シリコーン樹脂等を樹脂25として用いる。
【0080】
図8は、第1のシールドトンネル領域19aに樹脂25が充填された板状物23の断面図である。なお、
図8では、板状物23の長辺に沿う断面を示している。樹脂25を充填することで、板状物23の強度及び屈曲性を両立しつつ、更に、第1のシールドトンネル領域19a及び第2のシールドトンネル領域21aに対応する縞模様(
図9(A)、
図9(B)、
図10参照)を低減又は除去できる。
【0081】
ところで、板状物23を任意の形状に屈曲させる必要が無く、屈曲した所定の形状で板状物23の形状を固定してもよい場合には、樹脂25として、透明だが、比較的柔軟性が低い、ポリメタクリル酸メチル等を用いてもよい。
【0082】
図9(A)は、エッチングステップS30後、且つ、充填ステップS40前における、板状物23の一面11a側の全体を示す画像である。また、
図9(B)は、エッチングステップS30後、且つ、充填ステップS40前における、板状物23の一面11a側の角部を拡大した画像である。
【0083】
図10は、エッチングステップS30後、且つ、充填ステップS40前における板状物23を、人の手で屈曲させた状態の画像である。
図9(A)、
図9(B)及び
図10に示す板状物23は、
図6で説明した板状物23に対応する。
【0084】
第1の実施形態では、板状物23の長辺方向において、第1のシールドトンネル領域19aと第2のシールドトンネル領域21aとを、部分的に重ねる。これにより、板状物23の厚さを強度確保が可能な厚さとし、且つ、板状物23の長辺方向に沿って板状物23を屈曲できる。それゆえ、板状物23の強度と屈曲性とを両立できる。
【0085】
次に、エッチングステップS30後、且つ、充填ステップS40前の板状物23に対して、試験装置20を用いて行った三点曲げ試験について説明する。
図11は、板状物23の撓み量27を測定するための三点曲げ試験の様子を示す画像である。
【0086】
三点曲げ試験では、長辺が42mm、短辺が10mm、厚さが1mmの板状物23を用いた。なお、板状物23の短辺方向の中央部における幅4mmの範囲において、複数の第1のシールドトンネル領域19a及び複数の第2のシールドトンネル領域21aを、板状物23の短辺方向ではなく、長辺方向に沿って形成した。
【0087】
板状物23の短辺方向の両側3mmの範囲には、第1のシールドトンネル領域19aも第2のシールドトンネル領域21aも形成しなかった。第1のシールドトンネル領域19a及び第2のシールドトンネル領域21aの長さLAは、3mm以上7mm以下の所定値とし、長さLBは、1.5mm以上2.5mm以下の所定値とすることで、オーバーラップ率を調整した。ピッチLCは、100μm以上300μm以下の範囲で調整した。
【0088】
三点曲げ試験では、まず、二箇所の支持部22の支点間の距離29を、4.0mmに設定し、他面11bが上を向き、且つ、板状物23の短辺方向の中央部が支点間に位置する様に、二つの支点上に板状物23を載置した。そして、板状物23の他面11b側を、先端の半径が0.30mmの圧子24で押圧した。
【0089】
このとき、圧子24の押圧力を1Nとし、1Nの押圧力と、弾性的に変形した板状物23の復元力と、が平衡状態になったときの、板状物23の撓み量27(即ち、曲がり量)を測定した。
図12(A)は、板状物23の撓み量27を測定した第1実験を示すグラフである。
【0090】
図12(A)において、横軸は、オーバーラップ率(%)を示し、縦軸は、撓み量27(μm)を示す。第1実験で使用した板状物23は、ピッチL
Cを300μmとし、長さL
Aに対する重なり長さL
Dの割合(L
D/L
A×100=オーバーラップ率)を16%以上37%以下とした。
【0091】
第2実験で使用した板状物23は、ピッチL
Cを200μmとし、オーバーラップ率を8%以上40%以下とした。
図12(B)は、板状物23の撓み量27を測定した第2実験を示すグラフである。横軸及び縦軸は、
図12(A)と同じである。
【0092】
第3実験で使用した板状物23は、ピッチL
Cを100μmとし、オーバーラップ率を16%以上37%以下とした。
図12(C)は、板状物23の撓み量27を測定した第3実験を示すグラフである。横軸及び縦軸は、
図12(A)と同じである。
【0093】
図12(A)から
図12(C)に示す様に、オーバーラップ率が高いほど、板状物23の撓み量27は大きくなる傾向にあった。また、ピッチL
Cが小さいほど、板状物23の撓み量27は大きくなる傾向にあった。
【0094】
なお、矩形形状の一面11aにおいて互いに対向する長辺に、第1のシールドトンネル領域19a及び第2のシールドトンネル領域21aがそれぞれ達している場合、板状物23は、より屈曲しやすくなる。
【0095】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の被加工物は、矩形板状ではなく、円盤状である。第1の加工予定領域11c及び第2の加工予定領域11dは、曲線状(より具体的には、直径の異なる同心円)であり、一面11aの中心から外側に向かって交互に設定される(
図13(A)参照)。
【0096】
つまり、第2の加工予定領域11dは、一面11aの中心から一面11aの外周へ進む方向で、第1の加工予定領域11cに隣接している。次に、第2の実施形態の加工手順について説明する。
【0097】
第2の実施形態でも、まず、保持ステップS10において、被加工物の一面11aの中心と、保持面4aの回転中心と、を一致させた状態で、他面11b側を保持面4aで吸引保持する。
【0098】
次いで、シールドトンネル形成ステップS20を行う。第2の実施形態のシールドトンネル形成ステップS20においても、制御部が、入力された設計データに基づいて、AOM、チャックテーブル4等の動作を制御する。
【0099】
第1のシールドトンネル形成ステップS22では、集光点Pを一面11aの中心から所定距離だけ外側に配置した状態でレーザービームLを照射しながら、チャックテーブル4を一回転させる。
【0100】
次いで、第2のシールドトンネル形成ステップS24では、集光点PをピッチLCだけ外側に配置した状態でレーザービームLを照射しながら、チャックテーブル4を一回転させる。その後、集光点Pを更にピッチLCだけ外側に配置した状態で、再び、第1のシールドトンネル形成ステップS22を行う。
【0101】
この様に、第1のシールドトンネル形成ステップS22及び第2のシールドトンネル形成ステップS24を交互に複数回繰り返す。
図13(A)は、第2の実施形態のシールドトンネル形成ステップS20後の被加工物(即ち、板状物23)の上面図である。
【0102】
シールドトンネル形成ステップS20の後、エッチングステップS30を施してもよい。
図13(A)に示す様に、板状物23の径方向において、第1のシールドトンネル領域19aと第2のシールドトンネル領域21aとは、部分的に重なる。
【0103】
第2の実施形態でも、板状物23の厚さを強度確保が可能な厚さとし、且つ、径方向に沿って板状物23を屈曲できる。より具体的には、板状物23の一面11a側は、外周から中心に向かって凸状に屈曲可能である。この様に、板状物23の強度と屈曲性とを両立できる。
【0104】
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の被加工物は、円盤状であるが、第1の加工予定領域11c及び第2の加工予定領域11dが、曲線状ではなく多角形の複数の辺に対応する一続きの線分状であるという点で、第2の実施形態と異なる(
図13(B)参照)。
【0105】
第3の実施形態における第2の加工予定領域11dは、一面11aの中心から一面11aの外周へ進む方向で、第1の加工予定領域11cに隣接している。次に、第3の実施形態の加工手順について説明する。
【0106】
保持ステップS10では、被加工物の一面11aの中心と、保持面4aの回転中心と、を略一致させた状態で、他面11b側を保持面4aで吸引保持する。次いで、シールドトンネル形成ステップS20を行う。
【0107】
最初の第1のシールドトンネル形成ステップS22では、集光点Pを一面11aの中心から所定距離だけ外側に配置した状態でレーザービームLを照射しながら、正方形(第1の正方形)の第1の加工予定領域11cの四辺に沿って、集光点Pを移動させる。
【0108】
続く最初の第2のシールドトンネル形成ステップS24では、集光点Pを第1の正方形の外側に配置した状態でレーザービームLを照射しながら、第1の正方形よりも大きな第2の正方形の第2の加工予定領域11dの四辺に沿って、集光点Pを移動させる。
【0109】
続く2回目の第1のシールドトンネル形成ステップS22では、集光点Pを第2の正方形よりも外側に配置した状態でレーザービームLを照射しながら、第2の正方形よりも大きな第1の正八角形の第1の加工予定領域11cの八辺に沿って、集光点Pを移動させる。
【0110】
続く2回目の第2のシールドトンネル形成ステップS24では、集光点Pを第1の正八角形よりも外側に配置した状態でレーザービームLを照射しながら、第2の正八角形よりも大きな第2の正八角形の第2の加工予定領域11dの八辺に沿って、集光点Pを移動させる。
【0111】
この様にして、第1のシールドトンネル形成ステップS22及び第2のシールドトンネル形成ステップS24を交互に複数回繰り返す。なお、上述の四角形及び八角形の中心は一致させている。
【0112】
図13(B)は、第3の実施形態のシールドトンネル形成ステップS20後の被加工物(即ち、板状物23)の上面図である。シールドトンネル形成ステップS20の後、板状物23に対して、エッチングステップS30を施してもよい。
【0113】
図13(B)に示す様に、第3の実施形態でも、第1の加工予定領域11cから第2の加工予定領域11dへ進む方向において、第1のシールドトンネル領域19aと第2のシールドトンネル領域21aとは、部分的に重なる。
【0114】
第3の実施形態でも、板状物23の厚さを強度確保が可能な厚さとし、且つ、径方向に沿って板状物23を屈曲できる。より具体的には、板状物23の一面11a側は、外周から中心に向かって凸状に屈曲可能である。この様に、板状物23の強度と屈曲性とを両立できる。
【0115】
なお、第1の加工予定領域11c及び第2の加工予定領域11dの形状は、正方形、正八角形に限定されず、頂点を4つ以上有する任意の多角形としてもよい。その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【0116】
例えば、被加工物11及び板状物23の形状は、矩形や円形に限定されず、三角形、他の多角形など、様々な形状としてもよい。また、板状物23の屈曲の態様に応じて、第1の加工予定領域11c及び第2の加工予定領域11dの形状は、適宜変更される。
【0117】
ところで、板状物23のシールドトンネル領域には、細孔11hが形成されているので、保持面が屈曲した凹凸を有する透明のチャックテーブルとして板状物23を利用することもできる。また、搬送対象を吸引して保持する搬送装置の吸引部として板状物23を利用することもできる。
【符号の説明】
【0118】
2:レーザー加工装置
4:チャックテーブル、4a:保持面
6:レーザービーム照射ユニット
8:筐体、10:加工ヘッド
11:被加工物
11a:一面、11b:他面
11c:第1の加工予定領域、11d:第2の加工予定領域
11e:シールドトンネル、11g:改質領域、11h:細孔
12:撮像ユニット
13:粘着テープ
14:容器、14a:支持部材
15:フレーム
16:エッチング剤、
17:被加工物ユニット
19a:第1のシールドトンネル領域、19b:第1の非加工領域
21a:第2のシールドトンネル領域、21b:第2の非加工領域
20:試験装置、22:支持部、24:圧子
23:板状物、25:樹脂、27:撓み量、29:距離
L:レーザービーム
LA,LB:長さ、LC:ピッチ、LD:重なり長さ
P:集光点
RA:照射領域、RB:非照射領域
ΦA,ΦB:直径