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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20240311BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240311BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20240311BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20240311BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240311BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20240311BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240311BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240311BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C08L79/08
C08L63/00 A
C08K5/49
C08K5/16
C08G73/10
C08G59/18
C08J5/24 CER
C08J5/24 CFC
C08J5/24 CFG
H01L23/30 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021048102
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147022
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】串原 直行
(72)【発明者】
【氏名】笹原 梨那
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/004316(WO,A1)
【文献】特開平01-210408(JP,A)
【文献】特開2022-001615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
C08L 63/00
C08K 5/49
C08K 5/16
C08G 73/10
C08G 59/18
C08J 5/24
H01L 23/29
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表されるシトラコンイミド化合物
【化1】
(式(1)中、Bは独立して環状構造を有する4価の有機基であり、Zは独立して炭素数6~100の2価炭化水素基であり、mは0~10である。ただし、mで括られた繰り返し単位の構造は、同じであっても異なっていてもよく、Zの1つ以上はダイマー酸骨格由来の構造を有する。)
(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、及び、
(C)窒素原子及びリン原子のうちの1種以上を含むアニオン重合開始触媒である、反応促進剤
を含有し、(A)及び(B)成分の質量比率は(A):(B)=99:1~1:99である熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物。
【請求項2】
2価の炭化水素基が脂肪族炭化水素基である請求項1に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物。
【請求項3】
2価の炭化水素基が、下記構造の飽和炭化水素基及びダイマー酸骨格由来の炭化水素基から選ばれるものである請求項1または2に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物。
【化2】
(*はシトラコンイミド基中の窒素原子との結合を意味する。nは6~20である)
【請求項4】
式(1)中のBが下記構造式で示される4価の有機基のいずれかである請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物。
【化3】
(上記構造式中の置換基が結合していない結合手は、一般式(1)において環状イミド構造を形成するカルボニル炭素と結合するものである。)
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物からなる未硬化樹脂フィルム。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物の硬化物からなる硬化樹脂フィルム。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物と繊維基材とを有するプリプレグ。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物を含む基板。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物からなる接着剤。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物からなる半導体封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物及びそれを用いた未硬化フィルム、硬化フィルム、接着剤、半導体封止材プリプレグ、基板等に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性樹脂、特に熱硬化性樹脂は、接着、注型、コーティング、含浸、積層、成形用の材料などに広く利用される。しかしながら、近年その用途は多岐にわたり、使用環境や使用条件よっては、従来の硬化性樹脂では満足できない場合がある。例えば、各種電気機器に用いるプリント配線板用の積層板には、電子機器の進歩に伴い、信号伝達速度の向上を図るため、低誘電特性を有する材料が要求されている。また、電子機器用部品として、半導体素子を樹脂で封止した半導体パッケージがあるが、半導体素子がSiからより高温動作性に優れるSiCへ移行し、半導体封止材も耐熱性が求められるようになってきた。
【0003】
このような背景から、熱硬化樹脂として汎用のエポキシ樹脂よりも誘電特性に優れ、かつ高いガラス転移温度(Tg)を有するマレイミド化合物の研究や、使用が盛んになってきている。特に、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドなどの低分子のビスマレイミド化合物を用いた半導体封止材(特許文献1,2)や基板材料(特許文献3,4)などについて、すでに多くの報告がある。
【0004】
一方で、最近では新規のマレイミド化合物及びそれを用いた樹脂組成物の報告も増えてきている。例えば、高耐熱性を有するビフェニルアラルキル骨格を有するマレイミド化合物(特許文献5)やアルケニル基をマレイミド化合物に導入することで、マレイミド樹脂の融点を下げながらも高Tgを維持した化合物(特許文献6)、特殊な脂肪族骨格を有するマレイミド樹脂(特許文献7、8)がある。
【0005】
なかでも、特殊な脂肪族骨格を有するマレイミド樹脂はその骨格の影響から低弾性率で、誘電特性に優れるなどの特徴を有することがわかり、接着剤、半導体封止材、基板材料など、このマレイミド樹脂を使用した多くの組成物が報告されている(特許文献9~12)。
【0006】
このように、マレイミド化合物に関しては多くの研究や、報告がされているが、類似化合物であるシトラコンイミド化合物に関しては、研究や、報告はあまり多くない。その理由として、シトラコンイミド化合物は、マレイミド化合物とは違い、単独でラジカル重合ができないことが考えられる。シトラコンイミド化合物やその組成物に関する報告もあるが、これらの報告は、構造が限定された化合物であったり、シトラコンイミド化合物をタイヤ用添加剤として用いた組成物である(特許文献13~15)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-299246号公報
【文献】特開2008-111111号公報
【文献】特開2012-41386号公報
【文献】特開2012-166515号公報
【文献】特開2009-1783号公報
【文献】特開2019-64926号公報
【文献】特表2006-526014号公報
【文献】特開2012-117070号公報
【文献】国際公開第2016-114286号
【文献】国際公開第2016-114287号
【文献】特開2018-70668号公報
【文献】特開2019-203122号公報
【文献】特表平5-500377号公報
【文献】特表2010-505966号公報
【文献】特開2010-159374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような背景から、シトラコンイミド化合物を含む組成物について種々研究したところ、飽和又は不飽和の炭素数6から100の2価の炭化水素基を有するシトラコンイミド化合物が同じ主骨格を持つマレイミド化合物と比較して、様々な特性に優れることがわかった。
従って、本発明の目的は、硬化前に低粘度であり、誘電特性に優れ(低比誘電率かつ低誘電正接)、低弾性率を有し、耐熱性にも優れる硬化物を与える樹脂組成物及びそれを用いた未硬化フィルム、硬化フィルム、接着剤、半導体封止材プリプレグ、基板等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物が、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
<1>
(A)飽和又は不飽和の炭素数6から100の2価の炭化水素基を有するシトラコンイミド化合物
(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、及び、
(C)反応促進剤
を含有し、(A)及び(B)成分の質量比率は(A):(B)=99:1~1:99である熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物。

<2>
(A)成分のシトラコンイミド化合物が2個のシトラコンイミド基を持つビスシトラコンイミド化合物である<1>に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物。

<3>
2価の炭化水素基が脂肪族炭化水素基である<1>または<2>に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物。

<4>
2価の炭化水素基が、下記構造の飽和炭化水素基及びダイマー酸骨格由来の炭化水素基から選ばれるものである<1>から<3>のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物。
【化1】
(*はシトラコンイミド基中の窒素原子との結合を意味する。nは6~20である)

<5>
(A)成分が、下記式(1)で表されるものである<1>から<4>のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物。
【化2】
(式(1)中、Bは独立して環状構造を有する4価の有機基であり、Zは独立して炭素数6~100の2価炭化水素基であり、mは0~10である。ただし、mで括られた繰り返し単位の構造は、同じであっても異なっていてもよく、Zの1つ以上はダイマー酸骨格由来の構造を有する。)

<6>
式(1)中のBが下記構造式で示される4価の有機基のいずれかである<5>に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物。
【化3】
(上記構造式中の置換基が結合していない結合手は、一般式(1)において環状イミド構造を形成するカルボニル炭素と結合するものである。)

<7>
(C)成分の反応促進剤が、窒素原子及びリン原子のうちの1種以上を含むアニオン重合開始触媒である<1>から<6>のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物。

<8>
請求項1~7のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物からなる未硬化樹脂フィルム。

<9>
<1>~<7>のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物の硬化物からなる硬化樹脂フィルム。

<10>
<1>~<7>のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物と繊維基材とを有するプリプレグ。

<11>
<1>~<7>のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物を含む基板。

<12>
<1>~<7>のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物からなる接着剤。

<13>
<1>~<7>のいずれか1項に記載の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物からなる半導体封止材。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物は、硬化前に低粘度であり、誘電特性に優れ(低比誘電率かつ低誘電正接)、低弾性率を有し、耐熱性にも優れる硬化物を与えることができる樹脂組成物である。従って、本発明の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物は未硬化フィルム、硬化フィルム、接着剤、半導体封止材として有用であり、プリプレグ、基板等の材料としても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0013】
(A)飽和又は不飽和の炭素数6から100の2価の炭化水素基を有するシトラコンイミド化合物
本発明で用いられる(A)成分は、シトラコンイミド化合物であり、これは飽和又は不飽和の炭素数6から100の2価の炭化水素基を有するものである。長鎖の炭化水素基を有することで、該シトラコンイミド化合物を含む硬化物の低弾性率化や、誘電特性の改善につながる。
シトラコンイミド基はマレイミド基中の一つの水素原子がメチル基に置換しているものである。このメチル基の効果により、同骨格のマレイミド化合物と比較して、低誘電率、低誘電正接を示すだけでなく、低粘度や低融点の特性も示す。
シトラコンイミド化合物中の2価の炭化水素基の炭素数が6未満の場合、化合物の融点が高くなったり、他の樹脂との相溶性が悪くなったりするため、目的の誘電特性が得られなくなる場合がある。一方、シトラコンイミド化合物中の2価の炭化水素基の炭素数が100を超えると、誘電特性には優れるが、炭化水素基が長すぎるため、耐熱性が低下する場合がある。
【0014】
(A)成分のシトラコンイミド化合物は室温での性状や数平均分子量は特に制限はないが、該数平均分子量は20000以下が好ましく、15000以下がより好ましい。なお、本発明において、数平均分子量(Mn)は、下記測定条件を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン標準で換算した数平均分子量を用いる。
【0015】
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.35mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperHZ4000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ3000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ2000(4.6mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:5μL(濃度0.2質量%のTHF溶液)
【0016】
(A)成分のシトラコンイミド化合物は原料となるアミン化合物の調達のしやすさやシトラコンイミド化合物の溶剤への溶解性、合成のしやすさの観点から、2個のシトラコンイミド基を持つビスシトラコンイミド化合物であることが好ましい。
また、硬化後の低弾性や優れた誘電特性を得るために、シトラコンイミド化合物中の2価の炭化水素基は脂肪族炭化水素基であることが好ましい。前記脂肪族炭化水素基として、下記構造の飽和脂肪族炭化水素基及びダイマー酸骨格由来の炭化水素基から選ばれるものがより好ましい。
【化4】
(*はシトラコンイミド基中の窒素原子との結合を意味する。nは6~20である。)
【0017】
なお、ダイマー酸とは、植物系油脂などの天然物を原料とする炭素数18の不飽和脂肪酸の二量化によって生成された、炭素数36のジカルボン酸を主成分とする液状の二塩基酸である。シトラコンイミド化合物を製造する際はダイマー酸をダイマージアミンに変換してから使用する。また、ダイマー酸(ダイマージアミン)骨格とは前記ダイマー酸からカルボキシ基(アミノ基)を除いた構造を指す。
そのため、ダイマー酸骨格は単一の骨格ではなく、複数の構造を有し、何種類かの異性体が存在する。ダイマー酸の代表的なものは直鎖型(a)、単環型(b)、芳香族環型(c)、多環型(d)という名称で分類される。
すなわち、ダイマー酸由来の骨格として、下記(a)~(d)で示されるダイマー酸から2つのカルボキシ基を除いた分岐状2価炭化水素基が好ましい。
【化5】
【0018】
前記(A)成分の2価の炭化水素基が、ダイマー酸骨格を有するものである場合は、下記式(1)で表されるシトラコンイミド化合物であることが好ましい。
【化6】
(式(1)中、Bは独立して環状構造を有する4価の有機基であり、Zは独立して炭素数6~100の2価炭化水素基であり、mは0~10である。ただし、mで括られた繰り返し単位の構造は、同じであっても異なっていてもよく、Zの1つ以上はダイマー酸骨格由来の構造を有する。)
【0019】
式(1)中、Bは独立して環状構造を有する4価の有機基を示し、中でも下記構造式で示される4価の有機基のいずれかであることが好ましい。
【化7】
(上記構造式中の置換基が結合していない結合手は、一般式(1)において環状イミド構造を形成するカルボニル炭素と結合するものである。)
【0020】
式(1)中、Zは独立して炭素数6~100、好ましくは炭素数6~50の2価炭化水素基を示し、そのうちの1つ以上はダイマー酸骨格由来の2価炭化水素基であり、該ダイマー酸骨格由来の2価炭化水素基は、アルキル基又はアルケニル基で置換されている分岐状2価炭化水素基であることが好ましい。分岐状2価炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和炭化水素基のいずれでもよい。Zの具体例としては、以下のような構造式で表される2価の脂環式炭化水素基が挙げられる。
【化8】
(nは6~20である。)
【0021】
上記式(1)中、mは0~10であり、好ましくは0~8である。mで括られた繰り返し単位の構造は、同じであっても異なっていてもよく、異なる場合は、2種以上、好ましくは2~3種の繰り返し単位を有する。
また、それぞれの繰り返し単位の並び順は製造方法に依存し、並び順は交互でもブロックでもランダムでもよいが、ブロックであることが好ましい。
【0022】
(A)成分は以下のような構造式で表されるものが例示される。
【化9】
(式(5)、(6)、(7)中のC3672はダイマー酸骨格を意味する。式(6)中、pは1~10である。式(7)中、qは1~10である。)
【0023】
(A)成分のシトラコンイミド化合物は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
本発明で用いる(B)成分は、1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂は(A)成分であるシトラコンイミド化合物とアニオン重合反応することで硬化物を得ることができる。エポキシ樹脂としては1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するものであれば、特に制限なく使用することができるが、ハンドリング性の観点から室温(25℃)で固体であることが好ましく、より好ましくは融点が40℃以上150℃以下又は軟化点が50℃以上160℃以下の固体のものである。
【0025】
エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂及び4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂等のビフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、フェノールビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂、トリアジン誘導体エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
これらエポキシ樹脂は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。また必要に応じて、上記以外のエポキシ樹脂を目的に応じて一定量併用することができる。
【0026】
前記(A)及び(B)成分の質量比率は(A):(B)=99:1~1:99であり、好ましくは(A):(B)=98:2~5:95であり、更に好ましくは(A):(B)=98:2~30:70である。(A)成分単独では重合反応が非常に遅く、目的とする硬化物を得るのが困難である。
【0027】
(C)反応促進剤
(C)成分である反応促進剤は、(A)成分であるシトラコンイミド化合物と(B)成分であるエポキシ樹脂とのアニオン重合反応を開始、促進するために添加するものである。
(C)成分としてはこの反応を促進するものであれば特に制限されるものではないが、反応機構の観点から窒素原子及びリン原子のうちの1種以上を含むアニオン重合開始触媒を使用することが好ましい。その例としては、イミダゾール類(例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール)、第3級アミン類、第4級アンモニウム塩類、三フッ化ホウ素アミン錯体、オルガノホスフィン類(例えば、トリフェニルホスフィン)、オルガノホスホニウム塩等のイオン触媒などが挙げられる。
(C)成分である反応促進剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
(A)成分単独でのラジカル重合反応を促進させるために、(C)成分として有機過酸化物のようなラジカル重合開始剤を使用するのは、シトラコンイミド化合物中のメチル基による立体障害の影響で、ラジカル重合反応が進行しにくいため好ましくない。
【0029】
反応促進剤は、(A)成分及び(B)成分などの熱硬化性樹脂成分の総和100質量部に対して0.05~10質量部、特に0.1~5質量部の範囲内で配合することが好ましい。
上記範囲を外れると、熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物の成形時に硬化が非常に遅くなったり、速くなったりするおそれがあるため好ましくない。また、上記範囲を外れると、得られた硬化物の耐熱性及び耐湿性のバランスも悪くなるおそれがある。
【0030】
その他の添加剤
本発明の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。その他の添加剤を以下に例示する。
【0031】
シトラコンイミド基と反応しうる反応性基を有する熱硬化性樹脂
本発明ではさらに、前記(B)成分以外にも、シトラコンイミド基と反応しうる反応性基を有する熱硬化性樹脂を添加してもよい。
シトラコンイミド基と反応しうる反応性基としては、マレイミド基、水酸基、アミノ基、アリル基やビニル基のようなアルケニル基、(メタ)アクリル基、チオール基などが挙げられる。
また、前記反応性基を有する熱硬化性樹脂としては、その種類を限定するものではなく、例えば、マレイミド樹脂などの環状イミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、多官能チオールなど、(A)成分及び(B)成分以外の各種樹脂が挙げられる。
【0032】
シトラコンイミド基と反応しうる反応性基を有する熱硬化性樹脂の配合量は、(A)成分、(B)成分及びシトラコンイミド基と反応しうる反応性基を有する熱硬化性樹脂の総和中0~30質量%であり、好ましくは0~20質量%である。
【0033】
無機充填材
本発明ではさらに、必要に応じて無機充填材を添加してもよい。無機充填材は、本発明の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物の硬化物の強度や剛性を高めたり、熱膨張係数や硬化物の寸法安定性を調整したりする目的で配合する。無機充填材としては、通常エポキシ樹脂組成物やシリコーン樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、球状シリカ、溶融シリカ及び結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、タルク、クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ガラス繊維及びガラス粒子等が挙げられる。さらに誘電特性改善のために含フッ素樹脂、コーティングフィラー、及び/又は中空粒子を用いてもよく、導電性の付与などを目的として金属粒子、金属被覆無機粒子、炭素繊維、カーボンナノチューブなどの導電性充填材を添加してもよい。無機充填材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
無機充填材の平均粒径及び形状は特に限定されないが、アンダーフィル材やフィルムや基板を成形する場合は特に平均粒径が0.5~5μmの球状シリカが好適に用いられる。接着剤や半導体封止材用途には平均粒径が3~45μmの球状シリカが好適に用いられる。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めた値である。
【0035】
さらに無機充填材は特性を向上させるために、シトラコンイミド基と反応しうる有機基を有するシランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。このようなシランカップリング剤としては、エポキシ基含有アルコキシシラン、アミノ基含有アルコキシシラン、(メタ)アクリル基含有アルコキシシラン、及びアルケニル基含有アルコキシシラン等が挙げられる。
前記シランカップリング剤としては、(メタ)アクリル基及び/又はアミノ基含有アルコキシシランが好適に用いられ、具体的には、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
その他
上記以外に、無官能シリコーンオイル、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、光増感剤、光安定剤、重合禁止剤、難燃剤、顔料、染料、接着助剤等を配合してもよいし、電気特性を改善するためにイオントラップ剤等を配合してもよい。
【0037】
[製造方法]
本発明の樹脂組成物の製造方法は、(A)~(C)成分並びに必要に応じてその他の添加剤を添加し、例えば、プラネタリーミキサーや、攪拌機を使用して混合する方法が挙げられる。
本発明の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物は、有機溶剤に溶解してワニスとして扱うこともできる。ワニス化することによってフィルム化しやすくなり、また、Eガラスや低誘電ガラス、石英ガラスなどでできたガラスクロスへも塗布・含浸しやすくなり、プリプレグを製造しやすくなる。有機溶剤に関しては(A)成分及び(B)成分の熱硬化性樹脂分が溶解するものであれば制限なく使用することができる。本発明のプリプレグに関しては、従来方法を用いて、本発明の組成物を所定の組成比で有機溶剤に溶解し、繊維基材に含侵させ、加熱乾燥させることで製造することができる。
【0038】
本発明の熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物は、上記ワニスを基材に塗工し、溶剤を除去して未硬化樹脂シートまたはフィルムにしたり、さらにそれを硬化させることで硬化樹脂シートまたはフィルムとしたりすることができる。
以下にシート、フィルムの製造方法を例示するが、これに限定されるものではない。
【0039】
例えば、有機溶剤に溶解した熱硬化性シトラコンイミド樹脂組成物を基材に塗布した後、通常80℃以上、好ましくは100℃以上の温度で0.5~5時間加熱すると有機溶剤が除去され、さらに130℃以上、好ましくは150℃以上の温度で0.5~10時間加熱すると、表面が平坦で強固なマレイミド樹脂硬化皮膜を形成することができる。有機溶剤を除去するための乾燥工程、及びその後の加熱硬化工程での温度は、それぞれ一定であってもよいが、段階的に温度を上げていくことが好ましい。これにより、有機溶剤を効率的に組成物外へ除去するとともに、樹脂の硬化反応を効率よく進めることができる。塗布方法として、スピンコーター、スリットコーター、スプレー、ディップコーター、バーコーター等が挙げられるが特に制限はない。
【0040】
前記基材としては、一般的に用いられるのを用いてよく、例えばポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂などのポリエステル樹脂などが挙げられ、この表面を離形処理していてもかまわない。また、塗工層の厚さも特に限定されないが、溶剤留去後の厚さが1~100μm、好ましくは3~80μmの範囲である。さらに塗工層の上にカバーフィルムを使用してもかまわない。
【0041】
他にも、各成分をあらかじめ予備混合し、溶融混練機を用いてシート又はフィルム状に押し出してそのまま使用することもできる。
【0042】
半導体封止材として製造する場合は、(A)~(C)成分及び必要に応じてその他の成分を所定の組成比で配合し、ミキサー等によって十分に均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合し、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕すればよい。得られた樹脂組成物は封止材料として使用できる。
また、接着剤としては、(A)~(C)成分及び必要に応じてその他の成分を所定の組成比で配合し、プラネタリーミキサー等の混合機を用いて混合後、必要に応じて分散性を高めるために3本ロールミルを使用し混練し、混合する。得られた樹脂組成物を接着剤として使用できる。
【0043】
半導体封止材を用いた一般的な成形方法としては、トランスファー成形法や圧縮成形法が挙げられる。トランスファー成形法では、トランスファー成形機を用い、成形圧力5~20N/mm2、成形温度120~190℃で成形時間30~500秒、好ましくは成形温度150~185℃で成形時間30~180秒で行う。また、圧縮成形法では、コンプレッション成形機を用い、成形温度は120~190℃で成形時間30~600秒、好ましくは成形温度130~160℃で成形時間120~300秒で行う。更に、いずれの成形法においても、後硬化を150~225℃で0.5~20時間行ってもよい。
【実施例
【0044】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0045】
実施例及び比較例で使用した各成分を以下に示す。なお、以下において数平均分子量(Mn)はポリスチレンを基準として、下記測定条件によりゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されたものである。
【0046】
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.35mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperHZ4000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ3000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ2000(4.6mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:5μL(濃度0.2質量%のTHF溶液)
【0047】
合成例1(シトラコンイミド化合物の製造、式(3))
攪拌機、ディーンスターク管、冷却コンデンサー及び温度計を備えた2Lのガラス製4つ口フラスコに、2-メチルペンタンジアミン52.29g(0.45モル)、無水シトラコン酸111.0g(0.99モル)及びトルエン150gを加えて反応液を調製し、80℃で3時間撹拌することでアミック酸を合成した。その後、反応液にメタンスルホン酸40gを加えたのち、110℃に昇温し、副生した水分を留去しながら16時間撹拌した後、反応液を200gのイオン交換水を用いて5回水洗した。その後、60℃の減圧ストリップにより室温で褐色液状の目的物(式(3)、(A-1)、Mn510)を130.1g(収率95%)得た。
【化10】
【0048】
合成例2(シトラコンイミド化合物の製造、式(4))
攪拌機、ディーンスターク管、冷却コンデンサー及び温度計を備えた2Lのガラス製4つ口フラスコに、2,2,4-トリメチルヘキサンジアミン71.2g(0.45モル)、無水シトラコン酸111.0g(0.99モル)及びトルエン150gを加えて反応液を調製し、80℃で3時間撹拌することでアミック酸を合成した。その後、反応液にメタンスルホン酸40gを加えたのち、110℃に昇温し、副生した水分を留去しながら16時間撹拌した後、反応液を200gのイオン交換水を用いて5回水洗した。その後、60℃の減圧ストリップにより室温で褐色液状の目的物(式(4)、(A-2)、Mn590)を149.7g(収率96%)得た。
【化11】
【0049】
(A-3):下記式(5)で示されるシトラコンイミド化合物(BCI-737、Designer Molecules Inc.製)
【化12】
(式中のC3672はダイマー酸骨格を意味する。)
【0050】
(A-4):下記式(6)で示されるシトラコンイミド化合物(BCI-1500、Designer Molecules Inc.製)
【化13】
(p≒3。式中のC3672はダイマー酸骨格を意味する。)
【0051】
合成例3(シトラコンイミド化合物の製造、式(7))
攪拌機、ディーンスターク管、冷却コンデンサー、温度計を備えた2Lのガラス製4つ口フラスコに、イソホロンジアミン37,25g(0.219モル)、ピロメリット酸無水物76.94g(0.35モル)、トルエン350gを加えて反応液を調製し、80℃で3時間撹拌することでアミック酸を合成した。その後、反応液をそのまま110℃に昇温し、副生した水分を留去しながら4時間撹拌し、ブロックコポリマーを合成した。
その後、室温まで冷却したブロックコポリマー溶液入りのフラスコに、Priamine―1075(CRODA製、H2N-C3672-NH2(平均組成式))116.88g(0.219モル)を加えて反応液を調製し、80℃で3時間撹拌することでアミック酸を合成した。その後、反応液をそのまま110℃に昇温し、副生した水分を留去しながら4時間撹拌し、両末端ジアミン化合物を合成した。
得られた両末端ジアミン化合物溶液入りのフラスコを室温まで冷却してから無水シトラコン酸を21.63g(0.193モル)加えて反応液を調製し、再び加熱して80℃で3時間撹拌することでアミック酸を合成した。その後、反応液をそのまま110℃に昇温し、副生した水分を留去しながら15時間撹拌し、300gの水で5回水洗し、ビスマレイミド化合物のワニスを得た。その後、ワニスを3,000gのイソプロピルアルコール(IPA)に滴下することで再沈殿し、溶剤を除去し、乾燥させることで目的の濃褐色固体(式(7)、(A-5)、Mn8,000)を196.2g(収率80%)得た。
【化14】
(q≒5。式中のC3672はダイマー酸骨格を意味する。)
【0052】
(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
(B-1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER-828:三菱ケミカル(株)製)
(B-2):ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000:日本化薬(株)製)
【0053】
(C)反応促進剤
(C-1):2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成(株)製)
(C-2):トリフェニルホスフィン(TPP:北興化学(株)製)
【0054】
(D)比較例用マレイミド化合物
合成例4(マレイミド化合物の製造、式(8))
攪拌機、ディーンスターク管、冷却コンデンサー及び温度計を備えた2Lのガラス製4つ口フラスコに、2-メチルペンタンジアミン52.29g(0.45モル)、無水マレイン酸111.0g(0.99モル)及びトルエン150gを加えて反応液を調製し、80℃で3時間撹拌することでアミック酸を合成した。その後、反応液にメタンスルホン酸40gを加えたのち、110℃に昇温し、副生した水分を留去しながら16時間撹拌した後、反応液を200gのイオン交換水を用いて5回水洗した。その後、ヘキサンに滴下することで再沈殿し、乾燥させることで褐色の固体(式(8)、D-1)を252.3g(収率90%)得た。
【化15】
【0055】
(D-2):下記式(9)で示されるマレイミド化合物(BMI-TMH、大和化成工業(株)製)
【化16】
【0056】
(D-3):下記式(10)で示されるマレイミド化合物(SLK-6895、信越化学工業(株)製)
【化17】
(式中のC3672はダイマー酸骨格を意味する。)
【0057】
(D-4):下記式(11)で示されるマレイミド化合物(SLK-1500、信越化学工業(株)製)
【化18】
(r≒3。式中のC3672はダイマー酸骨格を意味する。)
【0058】
評価試験1
<組成物の調製>
表1の配合比で双腕式ニーダー(TK0.5、(株)トーシン製)を用いて混合し、組成物を調製した。配合する成分の融点が高く、混合が難しいものは80℃で混合し、組成物を調製した。
【0059】
<粘度>
硬化前の組成物(未硬化樹脂)の粘度は、JIS Z8303:2011に記載の方法に準じ、25℃の測定温度で、E型粘度計を用いて測定した。結果を表1に記載した。
【0060】
<比誘電率、誘電正接>
直径200mm、150μm厚の枠を用意し、前記未硬化樹脂を厚さ50μmの離型処理されたPETフィルム(E7006、東洋紡製)で挟み込んで、真空プレス機(ニッコーマテリアルズ製)を用いて180℃で20分の条件で成形し、硬化物を得た。PETフィルムから硬化物を取り出し、さらに180℃で2時間の条件で本硬化させることで硬化樹脂フィルムを得た。
前記硬化樹脂フィルムを、ネットワークアナライザ(キーサイト社製 E5063-2D5)とストリップライン(キーコム株式会社製)を接続し、上記硬化樹脂フィルムの周波数10GHzにおける比誘電率と誘電正接を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1の結果から、シトラコンイミド化合物を含む組成物の硬化物は、シトラコンイミド化合物を含まない組成物の硬化物よりも低誘電特性を示すことが明らかとなった。
【0063】
評価試験2
<組成物の調製>
表2の配合比で双腕式ニーダー(TK0.5、(株)トーシン製)を用いて混合し、組成物を調製した。
【0064】
<粘度>
硬化前の組成物(未硬化樹脂)の粘度は、JIS Z 8303:2011に記載の方法に準じ、E型粘度計を用いて25℃で粘度を測定した。結果を表2に記載した。
【0065】
<引張強さ、引張弾性率、引張ひずみ>
JIS K 7161:1994に準じ、180℃で2時間の硬化条件で作製した硬化物を用いて、引張強さ、引張弾性率、引張ひずみを測定した。結果を表2に記載した。
【0066】
<高温保管後の引張強さ、引張弾性率、引張ひずみ>
上記と同様に、JIS K 7161:1994に準じ、180℃で2時間の条件で作製した硬化物を150℃で168時間の条件で保管した。室温まで冷却後、上記と同様に引張強さ、引張弾性率、引張ひずみを測定した。結果を表2に記載した。
【0067】
【表2】
【0068】
表2の結果から、シトラコンイミド化合物を含む組成物の硬化物(実施例)は、耐熱性を有することが明らかとなった。