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特許7451074水中油型乳化組成物、及び該水中油型乳化組成物の製造方法
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  • 特許-水中油型乳化組成物、及び該水中油型乳化組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物、及び該水中油型乳化組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20240311BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240311BHJP
【FI】
A23D7/00 504
A61K9/10
A61K47/44
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2017236515
(22)【出願日】2017-12-08
(65)【公開番号】P2018093868
(43)【公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-07-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2016238828
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花崎 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】松浦 傳史
(72)【発明者】
【氏名】笠井 鉄夫
(72)【発明者】
【氏名】五十島 健史
【合議体】
【審判長】植前 充司
【審判官】天野 宏樹
【審判官】淺野 美奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/170099(WO,A1)
【文献】特開2014-113123(JP,A)
【文献】Zhen Hu,Sarah Balinger,Robert Pelton,Emily D. Cranston,“Surfactant-enhanced cellulose nanocrystal Pickering emulsions”,Journal of Colloid and Interface Science,2015,vol.439,p.139-148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子、アルキル基を1つ有する界面活性剤、油相成分、及び水相成分を有し、
前記固体粒子が、水相成分及び油相成分に溶解しない固体粒子であり、
前記油相成分は、不飽和結合及び/又は酸素原子を有する食用油脂を含み、
前記油相成分と前記水相成分との界面に前記固体粒子が存在する、水中油型乳化組成物であって、
前記界面活性剤の含有量は、組成物全量に対し0.00001重量%以上0.01重量%未満である、水中油型乳化組成物
【請求項2】
60℃以上の耐熱性を有する、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤の含有量は、組成物全量に対し0.00001重量%以上0.005重量%以下である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤は、HLBが8より大きい値である界面活性剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤の組成物中の濃度は、該界面活性剤の臨界ミセル濃度以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤は、分子内にカチオン性基を少なくとも1つ有する界面活性剤を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項8】
前記固体粒子の平均粒子径が0.01μm以上5μm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項9】
連続相と不連続相の界面に存在する固体粒子の平均粒子径が0.01μm以上5μm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項10】
水中油型乳化組成物中の不連続相の大きさが0.5μm以上1mm未満である、請求項1~9のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項11】
前記固体粒子が、無機物を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項12】
前記固体粒子が、シリカ粒子を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項13】
食品用である、請求項1~12のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項14】
前記水相成分と、前記界面活性剤及び前記固体粒子と、を混合し、該混合物を撹拌する第1ステップ、前記ステップで得られた混合物と、前記油相成分と、を混合し、該混合物を撹拌する第2ステップ、を含む請求項1~13のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物の製造方法。
【請求項15】
前記油相成分と、前記界面活性剤及び前記固体粒子と、を混合し、該混合物を撹拌する第1´ステップ、前記ステップで得られた混合物と、前記水相成分と、を混合し、該混合物を撹拌する第2´ステップ、を含む請求項1~13のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物の製造方法。
【請求項16】
固体粒子、界面活性剤、油相成分、及び水相成分を有し、
前記固体粒子が、水相成分及び油相成分に溶解しない固体粒子であり、
前記油相成分は、食用油脂を含み、
前記油相成分と前記水相成分との界面に前記固体粒子が存在する、食品用水中油型乳化組成物であって、
前記界面活性剤の含有量は、組成物全量に対し0.00001重量%以上0.01重量%未満である、食品用水中油型乳化組成物
【請求項17】
60℃以上の耐熱性を有する、請求項16に記載の食品用水中油型乳化組成物。
【請求項18】
前記界面活性剤の含有量は、組成物全量に対し0.00001重量%以上0.005重量%以下である、請求項16又は17に記載の食品用水中油型乳化組成物。
【請求項19】
前記界面活性剤は、HLBが8より大きい値である界面活性剤を含む、請求項1618のいずれか1項に記載の食品用水中油型乳化組成物。
【請求項20】
前記界面活性剤の組成物中の濃度は、該界面活性剤の臨界ミセル濃度以下である、請求項1619のいずれか1項に記載の食品用水中油型乳化組成物。
【請求項21】
前記界面活性剤は、分子内にカチオン性基を少なくとも1つ有する界面活性剤を含む、請求項1620のいずれか1項に記載の食品用水中油型乳化組成物。
【請求項22】
前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤を含む、請求項1621のいずれか1項に
記載の食品用水中油型乳化組成物。
【請求項23】
前記固体粒子の平均粒子径が0.01μm以上5μm以下である、請求項1622のいずれか1項に記載の食品用水中油型乳化組成物。
【請求項24】
連続相と不連続相の界面に存在する固体粒子の平均粒子径が0.01μm以上5μm以下である、請求項1623のいずれか1項に記載の食品用水中油型乳化組成物。
【請求項25】
水中油型乳化組成物中の不連続相の大きさが0.5μm以上1mm未満である、請求項1624のいずれか1項に記載の食品用水中油型乳化組成物。
【請求項26】
前記固体粒子が、無機物を含む、請求項16~25のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項27】
前記固体粒子が、シリカ粒子を含む、請求項16~26のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項28】
前記水相成分と、前記界面活性剤及び前記固体粒子と、を混合し、該混合物を撹拌する第1ステップ、前記ステップで得られた混合物と、前記油相成分と、を混合し、該混合物を撹拌する第2ステップ、を含む請求項1627のいずれか1項に記載の食品用水中油型乳化組成物の製造方法。
【請求項29】
前記油相成分と、前記界面活性剤及び前記固体粒子と、を混合し、該混合物を撹拌する第1´ステップ、前記ステップで得られた混合物と、前記水相成分と、を混合し、該混合物を撹拌する第2´ステップ、を含む請求項1627のいずれか1項に記載の食品用水中油型乳化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物、及び該水中油型乳化組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品分野の乳化には、従来から乳化剤・界面活性剤を用いた乳化が利用されている。乳化剤・界面活性剤による乳化は、熱力学的に不安定であるために、高温での殺菌工程に対する安定性や長期安定性を確保するためには、例えば、水中油型乳化組成物(O/W型)の油滴粒子径をサブミクロンレベルまで下げる必要があった。
しかし、近年食品分野においては、食欲に通じる見た目、風味(味覚、嗅覚による感覚を刺激するもの)、食感、健康志向による成分へのこだわり等のニーズが増加している。そこで、従来の乳化剤・界面活性剤を用いた乳化組成物とは異なるエマルションサイズや構造を有する乳化組成物を調製し得る乳化手法が求められている。乳化剤・界面活性剤による乳化以外の手法として、近年、微粒子安定化エマルション(ピッカリングエマルション)の研究が活発に行われている。
【0003】
特に、化粧品分野では特許文献1に記載された方法が開示されている。また、医薬分野では特許文献2に記載された方法が開示されている。
しかし、例えば、食品用途に使用する際には、殺菌時の高温加熱に耐え得る耐熱性の付与が必要とされる。一方、食感や見た目、触感、粘度、安定性等に影響を及ぼす粒子径の制御は、食品及び医薬品等の経口材料においては重要な項目である。それにも関わらず、加熱前後での粒子径分布の変化の有無について、特許文献1にも非特許文献1にも触れられていない。また、パラフィン等の工業用途に使用する油性成分と比べて、エステル系の油性成分や食用油脂は極性が高く、組成分布や純度等の問題からも、適切な濡れ性の粒子を選定することが難しく、微粒子安定化技術を用いた乳化組成物の安定化が難しかった。また、食用油脂以外の油性成分を用いた場合は、人体にとって有害であるか、あるいは有害でなくても、味質の面で充分な水中油型乳化組成物を調製することが困難であった。また、特許文献2は熱刺激により容易に崩壊するものであり、界面活性剤も過剰に含有するため食品用途に使用するには不適合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008―291027号公報
【文献】特表2013-500844号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】J. Giermanska-Kahn et.Al, Langmuir 2005, 21, 4316-4323
【文献】油脂 Vol.65, No4 (2012), 94-102
【文献】油化学, 26, 150 (1977)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水中油型乳化組成物を作製する際には、高速撹拌時の泡立ちの度合いも、製造時の消泡剤の使用や製造時間等の観点から、製造コストや作業者の取扱いのし易さに大きく影響する。そのため、製造時の起泡をできるだけ抑制することも重要な項目である。
また、不飽和結合及び/又は酸素原子を有する油相成分を用いた水中油型乳化物、例えば食用油脂を用いた水中油型乳化物において、油滴同士の合一の抑制や、合一に繋がるクリーミングの抑制、針状結晶成長による界面破壊の結果生じる乳化不安定性は大きな課題である(非特許文献2)。
また、食用油脂は、酸化や加水分解により、劣化臭を生じることが課題となっている(非特許文献3)。
本発明では、殺菌等の高温工程を経ても乳化安定性を保持し(耐熱性)、加熱前後での粒子径分布の変化が小さい乳化組成物であって、油相成分が状態変化する場合であっても(例えば、降温により油相成分が凝固、結晶化する。昇温により油相成分が融解する。)、乳化安定性を保持し(降温耐性)、製造時取り扱いの容易な組成物を提供することを第1の課題とする。また、殺菌等の高温工程を経ても乳化安定性を保持し(耐熱性)、加熱前後での粒子径分布の変化が小さい乳化組成物であって、油相成分が状態変化する場合であっても(例えば、降温により油相成分が凝固、結晶化する。昇温により油相成分が融解する。)、乳化安定性を保持し(降温耐性)、油脂の劣化が抑制された食品用の組成物を提供することを第2の課題とする。さらにその組成物を飲食した際に、人体への有害性がなく、味質としても好適で、特に同量の油脂含有量でも油感(オイル感、ファット感)が強く、飲食品の油脂含有量低減に寄与できる組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究をすすめ、固体粒子を含有する乳化組成物であって、界面活性剤及び特定の油性成分との組合せにより、前記油相成分と前記水相成分との界面に前記固体粒子が存在する乳化構造とすることで、上記課題を解決できることに想到し、本発明を見出した。
【0008】
すなわち、本発明の第1の側面は以下を要旨とする。
(A1)固体粒子、アルキル基を1つ有する 界面活性剤、油相成分、及び水相成分を有
し、前記油相成分は、不飽和結合及び/又は酸素原子を有する食用油脂を含み、前記油相成分と前記水相成分との界面に前記固体粒子が存在する、水中油型乳化組成物。
(A2)60℃以上の耐熱性を有する、(A1)に記載の水中油型乳化組成物。
(A3)前記界面活性剤の濃度は、組成物全量に対し0.00001重量%以上0.05重量%以下である、(A1)又は(A2)に記載の水中油型乳化組成物。
(A4)前記界面活性剤は、HLBが8より大きい値である界面活性剤を含む、(A1)~(A3)のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
(A5)前記界面活性剤の組成物中の濃度は、該界面活性剤の臨界ミセル濃度以下である、(A1)~(A4)のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
(A6)前記界面活性剤は、分子内にカチオン性基を少なくとも1つ有する界面活性剤を含む、(A1)~(A5)のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
(A7)前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤を含む、(A1)~(A6)のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
(A8)前記固体粒子の平均粒子径が0.01μm以上5μm以下である、(A1)~(A7)のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
(A9)連続相と不連続相の界面に存在する固体粒子の平均粒子径が0.01μm以上5μm以下である、(A1)~(A8)のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
(A10)水中油型乳化組成物中の不連続相の大きさが0.5μm以上1mm未満である、(A1)~(A9)のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
(A11)食品用である、(A1)~(A10)のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
(A12)前記水相成分と、前記界面活性剤及び前記固体粒子と、を混合し、該混合物を撹拌する第1ステップ、前記ステップで得られた混合物と、前記油相成分と、を混合し、該混合物を撹拌する第2ステップ、を含む(A1)~(A11)のいずれかに記載の水中油型乳化組成物の製造方法。
(A13)前記油相成分と、前記界面活性剤及び前記固体粒子と、を混合し、該混合物を撹拌する第1´ステップ、前記ステップで得られた混合物と、前記水相成分と、を混合し、該混合物を撹拌する第2´ステップ、を含む(A1)~(A11)のいずれかに記載の水中油型乳化組成物の製造方法。
本発明の第2の側面は以下を要旨とする。
(B1)固体粒子、界面活性剤、油相成分、及び水相成分を有し、前記油相成分は、食用油脂を含み、前記油相成分と前記水相成分との界面に前記固体粒子が存在する、食品用水中油型乳化組成物。
(B2)60℃以上の耐熱性を有する、(B1)に記載の食品用水中油型乳化組成物。
(B3)前記界面活性剤の濃度は、組成物全量に対し0.00001重量%以上0.05重量%以下である、(B1)又は(B2)に記載の食品用水中油型乳化組成物。
(B4)前記界面活性剤は、HLBが8より大きい値である界面活性剤を含む、(B1)~(B3)のいずれかに記載の食品用水中油型乳化組成物。
(B5)前記界面活性剤の組成物中の濃度は、該界面活性剤の臨界ミセル濃度以下である、(B1)~(B4)のいずれかに記載の食品用水中油型乳化組成物。
(B6)前記界面活性剤は、分子内にカチオン性基を少なくとも1つ有する界面活性剤を含む、(B1)~(B5)のいずれかに記載の食品用水中油型乳化組成物。
(B7)前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤を含む、(B1)~(B6)のいずれかに記載の食品用水中油型乳化組成物。
(B8)前記固体粒子の平均粒子径が0.01μm以上5μm以下である、(B1)~(B7)のいずれかに記載の食品用水中油型乳化組成物。
(B9)連続相と不連続相の界面に存在する固体粒子の平均粒子径が0.01μm以上5μm以下である、(B1)~(B8)のいずれかに記載の食品用水中油型乳化組成物。
(B10)水中油型乳化組成物中の不連続相の大きさが0.5μm以上1mm未満である、(B1)~(B9)のいずれかに記載の食品用水中油型乳化組成物。
(B11)前記水相成分と、前記界面活性剤及び前記固体粒子と、を混合し、該混合物を撹拌する第1ステップ、前記ステップで得られた混合物と、前記油相成分と、を混合し、該混合物を撹拌する第2ステップ、を含む(B1)~(B10)のいずれかに記載の食品用水中油型乳化組成物の製造方法。
(B12)前記油相成分と、前記界面活性剤及び前記固体粒子と、を混合し、該混合物を撹拌する第1´ステップ、前記ステップで得られた混合物と、前記水相成分と、を混合し、該混合物を撹拌する第2´ステップ、を含む(B1)~(B10)のいずれかに記載の食品用水中油型乳化組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、殺菌等の高温工程を経ても乳化安定性を保持し(耐熱性)、加熱前後での粒子径分布の変化が小さい乳化組成物であって、油相成分が状態変化する場合であっても(例えば、降温により油相成分が凝固、結晶化する。昇温により油相成分が融解する。)、乳化安定性を保持し(降温耐性)、製造時取り扱いの容易な組成物を提供することができる。
また、殺菌等の高温工程を経ても乳化安定性を保持し(耐熱性)、加熱前後での粒子径分布の変化が小さい乳化組成物であって、油相成分が状態変化する場合であっても(例えば、降温により油相成分が凝固、結晶化する。昇温により油相成分が融解する。)、乳化安定性を保持し(降温耐性)、油脂の劣化が抑制された食品用の組成物を提供することができる。
さらにその組成物を飲食した際に、人体への有害性がなく、味質としても好適で、特に同量の油脂含有量でも油感(オイル感、ファット感)が強く、飲食品の油脂含有量低減に寄与できる組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】水中油型乳化組成物Aを60℃まで昇温し、その後室温まで降温させた後の、偏光顕微鏡写真である(図面代用写真)。
図2】水中油型乳化組成物Aを水で10倍希釈した乳化組成物の、偏光顕微鏡写真である(図面代用写真)。
図3】水中油型乳化組成物Aの、消光位での偏光顕微鏡写真である(図面代用写真)。
図4】実施例4における、加熱前後の粒子径分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
【0012】
本発明の実施形態に係る水中油型乳化組成物は、固体粒子、界面活性剤、油相成分、及び水相成分を含有する。そして、前記油相成分と前記水相成分との界面に前記固体粒子が存在する構造を有する水中油型乳化組成物である。
具体的には、本発明の第1の実施形態は、固体粒子、アルキル基を1つ有する界面活性剤、油相成分、及び水相成分を有し、
前記油相成分は、不飽和結合及び/又は酸素原子を有する食用油脂を含み、
前記油相成分と前記水相成分との界面に前記固体粒子が存在する、水中油型乳化組成物である。
また、本発明の第2の実施形態は、固体粒子、界面活性剤、油相成分、及び水相成分を有し、
前記油相成分は、食用油脂を含み、
前記油相成分と前記水相成分との界面に前記固体粒子が存在する、食品用水中油型乳化組成物である。
本明細書において水中油型乳化組成物とは、連続相を水相とするいわゆるO/W型の水中油型乳化組成物に加え、W/O/W型乳化物等の多層乳化物も含む。また、油相成分と水相成分との界面に固体粒子が存在することは、クライオ走査型電子顕微鏡(Cryo-SEM)等による水中油型乳化組成物の断面観察で確認できる。断面を観察する方法としては、通常用いられる方法であれば特に限定されないが、例えば、水中油型乳化組成物をメタルコンタクト法等の急速凍結法により急速凍結させた後、光学顕微鏡用ダイヤモンドナイフを用いてクライオミクロトームで断面を作製し、Cryo-SEMで試料断面の観察を行い、観察することができる。
【0013】
本実施形態の水中油型乳化組成物に含有される固体粒子は、使用する水相成分及び油相成分に溶解せず、水相成分及び/又は油相成分に該固体粒子を添加した後にも、水相及び/又は油相を撹拌することができるものであれば任意の固体粒子を用いることができる。固体粒子の例としては無機物、有機物、有機-無機複合体、等があげられる。
無機物の例としては、球状シリカやヒュームドシリカ等のシリカ粒子、タルク、酸化チタン、ヒドロキシアパタイト等のセラミック、炭酸カルシウム、ゼオライト、無機顔料等が挙げられる。有機物の例としては、キチン、キトサン、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、メチルセルロース、発酵セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、キサンタンガム、カラギーナン、デキストリン、難消化性デキストリン、大豆多糖類、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル、タマリンドシードガム、タラガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、ガディガム、プルラン、アラビアガム、寒天、ファーセラン、イヌリン、コンニャクマンナン等の多糖類、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等のポリマー、有機顔料、オリゴマー、ヤヌス粒子、澱粉、澱粉加工品、シクロデキストリン、ホエーやカゼイン等の動物性蛋白質、大豆蛋白、ゼイン等の植物性蛋白質、ハイドロフォビン等の微生物由来蛋白質、酵素、蛋白質分解物、ペプチド、微生物、芽胞、細胞、フラボノイド等の植物抽出物、蛋白質ゲル粉砕物や穀物粉末等の食品粉砕物、それらの複合体、誘導体、等が挙げられる。合成物であっても天然物であっても構わない。特に、多糖及びポリマーの場合、直鎖状(セルロース)、分岐状(グルコマンナン等)、側鎖状(ガラクトマンナン類)、球状(アラビアガム、大豆多糖類)のいずれであってもよい。酸性多糖類でも中性多糖類でも、塩基性多糖類でも良い。有機-無機複合体としては、Feを保持したフェリチン、アルギン酸Naとカルシウム塩等から調製したゲル微粒子、等が挙げられる。水相もしくは油相に分散する前の固体粒子の形態としては、粉末状であってもよいし、ペースト状、ペレット状であってもよい。
【0014】
澱粉としては、特にその由来原料に制限はないが、代表的な原料としては、馬鈴薯、ワキシーポテト、小麦、トウモロコシ、糯トウモロコシ、ハイアミローストウモロコシ、サツマイモ、米、糯米、キャッサバ、クズ、カタクリ、緑豆、サゴヤシ、ワラビ、オオウバユリなどが挙げられる。
澱粉加工品としては、湿式法または乾式法にて、澱粉に各種加工(酵素的、物理的、化学的)を施し、性質を改善したり、機能性を付与したりした加工澱粉、化工澱粉が挙げられ、具体的には酵素処理デンプン、デンプングルコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酸化デンプン、酸処理デンプン、アルファ化デンプン、乾燥デンプン、加熱処理デンプン、湿熱処理澱粉、油脂加工デンプン、造粒デンプン、吸油性デンプンなどが挙げられる。
なお固体とは、組成物調製時から消費時に至るまでに経る温度履歴において流動性を有しない状態である。
【0015】
固体粒子の形状に制限はないが、球状、ロッド状、紐状、ゲル状、網目状、多孔性、針状、フレーク状、凝集塊、等が挙げられる。固体粒子は、単体でも凝集体でも会合体でも構わない。高分子体の単体構造の場合には、絡み合い構造もしくは、水素結合やイオン結合もしくは分子間力による架橋構造を有することが好ましい。固体粒子は、単一の成分でも、種類の異なる複数種の成分からなる混合物、凝集体、会合体でも構わない。固体粒子が、ゲル状の場合には、収縮していても、膨潤していてもよい。固体粒子の内部もしくは表層に有効成分を含有していてもよい。
シリカを用いる場合、親水性シリカ、疎水性シリカのいずれを使用してもよいが食品や医薬品分野での使用を考えた場合の安全性やコストの観点から親水性シリカが好ましい。シリカに親水性や疎水性を付与する方法は既知の方法を用いてよく、例えばシランカップリング剤などによる表面処理があげられる。本発明で使用する固体粒子に制限はないが、必ずしもこのような事前の化学処理を必要としない。
食品分野で使用する場合には、固体粒子は可食性であればよく、食品添加物であっても食品原料であってもよい。固体粒子は、1種の固体粒子を用いてもよいし、2種以上の複数の固体粒子を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
固体粒子の一次粒子径に特に規定はないが、通常0.001μm以上、好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.5μm以上であり、通常50μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.9μm以下である。固体粒子の一次粒子径は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)測定により得られた粒子画像を拡大し、画像上で観察できる粒子の平均粒子径を示す。観察する粒子数は5以上であってよく、40以上であってよく、100以上であってよく、200以上であってよい。固体粒子の一次粒子径は、カタログ値を用いても構わない。
【0017】
固体粒子の平均粒子径に特に規定はないが、液中に希薄状態で分散した固体粒子の平均
粒子径が、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.5μm以上であり、通常50μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.9μm以下である。
液中での固体粒子のサイズは、例えば、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて、粉体もしくは液中に分散された状態での固体粒子の粒子径分布、平均径、メジアン径を測定することができる。ここで、希薄状態とは、任意の濃度であるが、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて、フロー式等で測定可能な濃度を指す。測定に供する濃度としては、通常20重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.02重量%以下である。
【0018】
また、水中油型乳化組成物中の、水相-油相界面に存在する固体粒子のサイズに特に規定はないが、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.5μm以上であり、通常50μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.9μm以下である。水相-油相界面に存在する固体粒子のサイズは、例えば、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)測定により得られた粒子画像を拡大し、画像上で観察できる粒子の平均粒子径を示す。操作型電子顕微鏡を用いて観察することが好ましい。観察する粒子数は5以上であってよく、40以上であってよく、100以上であってよく、200以上であってよい。回折・散乱光の強度が不足するなどして、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置での測定が難しい場合には、動的光散乱法による測定で、液中に分散された状態での固体粒子の粒子径分布、平均径、メジアン径を測定することができる。動的光散乱法による測定結果の解析は、例えばキュムラント法により解析することができる。
【0019】
本実施形態に係る水中油型乳化組成物中における固体粒子の含有量は、通常乳化組成物に含有し得る量であれば特段限定されないが、組成物全量に対し通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、最も好ましくは
0.5重量%以上であり、また通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは15重量%
以下である。
【0020】
本発明の第1の実施形態の水中油型乳化組成物に含有される界面活性剤は、アルキル基を1つ有する界面活性剤であれば、任意のものを使用できる。アルキル基を2つ有する界面活性剤は会合体を形成しやすいため、表面修飾には使用しにくい。また、水相へ界面活性剤を予め溶解しておく工程を要する場合には、溶解性の観点からもアルキル基を2つ有する界面活性剤よりもアルキル基を1つ有する界面活性剤の方が取扱いが容易である。特に低分子量で、両親媒性で界面活性を持つ物質であり、分子量が5000以下の物質である低分子界面活性剤が好ましい。低分子界面活性剤にはタンパク質や多糖類、合成ポリマーなどの高分子は含まれない。
低分子界面活性剤は、粉体、固体、液体、ペーストなど、いずれの形態でもよい。また、低分子界面活性剤の分子量は3000以下がより好ましく、2000以下が最も好ましい。低分子界面活性剤の分子量が小さいほど、重量あたりのモル数が大きく、より固体粒子との反応に寄与する分子数が増えるため、好ましい。低分子界面活性剤の分子量の下限としては特に制限はないが、分子構造内に親水性部分と親油性部分を含むために通常その分子量は200以上である。
【0021】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤が有するアルキル基は、直鎖のアルキル基であっても分岐を有するアルキル基であってもよいが、直鎖のアルキル基であることが好ましい。また、アルキル基の鎖長は炭素数8以上であり、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは14以上、最も好ましくは16以上である。上限は特段限定されないが、通常24以下であり、好ましくは22以下である。また、本実施形態のアルキル基は飽和型でもよく、不飽和型でもよいが、より好ましくは飽和型である。
界面活性剤は、固体粒子の表面と反応又は相互作用しうる官能基を有していることが好ましいが、これに限定されるものではない。このような官能基を介して、界面活性剤が固体粒子に吸着することで、固体粒子の表面性を改質せしめることができる。それによって、固体粒子の水相-油相界面への吸着が補強され、固体粒子単独での乳化組成物よりも、乳化安定性に優れた乳化組成物を得ることができる。
【0022】
固体粒子と界面活性剤との反応又は相互作用の例としては、静電相互作用、疎水性相互作用、分子間力相互作用、水素結合、抗原-抗体反応等が挙げられる。またこれらの反応又は相互作用を実現する界面活性剤が有する官能基の例としては、カチオン性基、アニオン性基、アミノ酸残基、水酸基、カルボキシル基、ペプチド、蛋白質、抗原等が挙げられ、カチオン性基、アニオン性基、アミノ酸残基、水酸基、カルボキシル基、ペプチド、が好ましい。
【0023】
静電相互作用や水素結合を実現する官能基は、親水基の分子構造における電子分極が大きいほど好ましい。具体的には、水酸基を含む場合、水酸基を2つ以上含むことが好ましく、水酸基を3つ以上含むことがさらに好ましく、水酸基を4つ以上含むポリオールが最も好ましい。エーテル基を含む場合、エーテル基を2つ以上含むことが好ましく、エーテル基を3つ以上含むことがさらに好ましく、エーテル基を4つ以上含むポリエーテルが最も好ましい。同様に好ましい例として、ポリカルボニル、ポリチオール、ポリアミド等が挙げられる。
水酸基、または、エーテル基を含む界面活性剤としては、食品用途に使用する場合、飲食品に使用可能な食品用乳化剤が好ましい。
【0024】
水酸基、または、エーテル基を含む食品用乳化剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウムやステアロイル乳酸ナトリウム等の乳酸脂肪酸エステル類、酵素分解レシチン、酢酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアシル酒石酸モノグリセリド等の有機酸モノグリセリド、等が挙げられる。中でも、静電相互作用を実現するのに好適であるポリオールやポリエーテル構造を持つ、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがさらに好ましく、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが最も好ましい。
【0025】
具体的には、アルキル基を1つ有する、デカグリセリンミリスチン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステルなどのグリセリンの重合度が4以上、好ましくは4~12のポリグリセリン脂肪酸エステル;グリセリンモノミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエートなどのグリセリンモノ脂肪酸エステル;アルキル基を1つ有する、ジグリセリンミリスチン酸エステル、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステルなどのジグリセリン脂肪酸エステル;アルキル基を1つ有する、トリグリセリンミリス
チン酸エステル、トリグリセリンパルミチン酸エステル、トリグリセリンステアリン酸エステル、トリグリセリンオレイン酸エステルなどのトリグリセリン脂肪酸エステル;炭素数12~22の飽和若しくは不飽和脂肪酸のモノグリセリドとコハク酸、クエン酸又はジアセチル酒石酸とのエステルなどのモノグリセリド有機酸エステル;アルキル基を1つ有する、テトラグリセリンリシノレイン酸エステルなどのポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル;アルキル基を1つ有する、ソルビタンミリスチン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステル、ソルビタンオレイン酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステル;アルキル基を1つ有する、プロピレングリコールミリスチン酸エステル、プロピレングリコールパリミチン酸エステル、プロピレングリコールステアリン酸エステル、プロピレングリコールオレイン酸エステルなどのプロピレングリコール脂肪酸エステル;アルキル基を1つ有する、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル;リゾレシチンなどの水溶性リン脂質があげられる。
【0026】
食品用乳化剤は、親水基の分子構造内にあるエステル結合可能な複数の水酸基に対して、結合しているアルキル基の数に分布がある混合物のため、混合物中のアルキル基を1つ有する構造をもつモノエステルの比率が高いことが好ましく、モノエステル含量が、40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましく、70重量%以上であることが最も好ましい。
【0027】
上記のショ糖脂肪酸エステルの市販品としては、「リョートーシュガーエステルS-1670」、「リョートーシュガーエステルS-1570 」、「リョートーシュガーエス
テルS-1170」、「リョートーシュガーエステルS-970」、「リョートーシュガーエステルP-1670」、「リョートーシュガーエステルP-1570」、「リョートーシュガーエステルM-1695」、「リョートーシュガーエステルO-1570」、「リョートーシュガーエステルL-1695」、「リョートーシュガーエステルLWA-1570」「リョートーモノエステル-P」(以上、三菱化学フーズ社製、商品名);「DKエステルSS」、「DKエステルF-160」、「DKエステルF-140」、「DKエステルF-110」(以上、第一工業製薬社製、商品名)等が挙げられる。
【0028】
上記のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、中でも、グリセリンの平均重合度が2~20のポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、より好ましくは平均重合度が2~10である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品としては、「リョートーポリグリエステルS-10D」、「リョートーポリグリエステルSWA-10D」、「リョートーポリグリエステルSWA-15D」、「リョートーポリグリエステルSWA-20D」、「リョートーポリグリエステルP-8D」、「リョートーポリグリエステルM-7D」、「リョートーポリグリエステルM-10D」、「リョートーポリグリエステルO-15D」、「リョートーポリグリエステルL-7D」、「リョートーポリグリエステルL-10D」(以上、三菱化学フーズ社製、商品名);「SYグリスターMSW-7S」、「SYグリスターMS-5S」、「SYグリスターMO-7S」、「SYグリスターMO-5S」、「SYグリスターML-750」、「SYグリスターML-500」(以上、阪本薬品工業社製、商品名);「サンソフトQ-14F」、「サンソフトQ-12F」、「サンソフトQ-18S」、「サンソフトQ-182S」、「サンソフトQ-17S」、「サンソフトQ-14S」、「サンソフトQ-12S」、「サンソフトA-121C」、「サンソフトA-141C」、「サンソフトA-121E」、「サンソフトA-141E」、「サンソフトA-171E」、「サンソフトA-181E」(以上、太陽化学社製、商品名);「ポエムTRP-97RF」、「ポエムJ-0021」、「ポエムJ-0081HV」、「ポエムJ-0381V」(以上、理研ビタミン社製、商品名);「NIKKOL Hexaglyn 1-M」、「NIKKOL Hexaglyn 1-L」、「NIKKOL De
caglyn 1-SV」、「NIKKOL Decaglyn 1-OV」、「NIKKOL Decaglyn 1-M」、「NIKKOL Decaglyn 1-L」(以上、日光ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。
【0029】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの市販品としては、「エマゾールS-120V」、「エマゾールL-120V」、「エマゾールO-120V」、「レオドールTW-S120V」、「レオドールTW-L120」、「レオドールTW-O120V」、「レオドールTW-L106」、「レオドールTW-P120」、「レオドールTW-O320V」、「レオドールスーパーTW-L120」、「レオドール440V」、「レオドール460V」(以上、花王社製、商品名);「ソルゲンTW-60F」、「ソルゲンTW-20F」、「ソルゲンTW-80F」(以上、第一工業製薬社製、商品名);「アドムルT60K」、「アドムルT80K」(以上、Kerry社製、商品名);「T-Maz60K」、「T-Maz80K」(以上、BASF社製、商品名);「ウィルサーフTF-60」、「ウィルサーフTF-80」(以上、日油社製、商品名);「Glycosperse S-20K FG」、「Glycosperse O-20K FG」(以上、Lonza社製、商品名)等が挙げられる。
【0030】
上記ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、耐熱性菌に対して効果を持つ食品用乳化剤(すなわち、静菌性乳化剤)を用いることもできる。アルキル基の炭素数が14~22のショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルがより好ましく、構成する脂肪酸の炭素数が16~18のショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルがさらに好ましく、これらは耐熱性菌に対する有効性が高いため好適である。使用するショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノエステル含量が50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上であることが、耐熱性菌に対する有効性が高いため好適である。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンの平均重合度が2~5であることが好ましく、さらに2~3であることが、菌に対する有効性が高いため最も好ましい。
【0031】
さらに、静電相互作用を実現する官能基が、イオン分極すなわち電離型の官能基を含むことが好ましい。電離型の官能基としては、アニオン性基とカチオン性基を少なくとも1つずつ有することがさらに好ましく、アニオン性基、または、カチオン性基を少なくとも1つ有する界面活性剤であることがより好ましく、カチオン性基のみを有することが最も好ましい。
電離型の官能基を持つ界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のイオン性界面活性剤があげられる。
【0032】
カチオン性基を少なくとも1つ有する界面活性剤としては、両性界面活性剤、カチオン
性界面活性剤、等があげられる。
イオン性界面活性剤の具体例として、食用で使用する場合には、ステアロイル乳酸カルシウムやステアロイル乳酸ナトリウム等の乳酸脂肪酸エステル類、ステアリン酸ナトリウムやオレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩類、酵素分解レシチン、コハク酸モノグリセリドやジアシル酒石酸モノグリセリド等があげられる。
【0033】
レシチンを酵素分解したリゾレシチン(酵素分解レシチン)は、グリセロリン脂質の1位または2位に結合した脂肪酸(アシル基)のいずれか一方が失われたものである。リゾレシチンは、酸、又はアルカリ触媒によるレシチンの加水分解により得られるが、ホスホリパーゼA1、又はA2を用いたレシチンの加水分解により得ることもできる。このようなリゾレシチンに代表されるリゾ化合物を化合物名で示すと、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルグリセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルメチルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリ
ン(リゾレシチン)、リゾホスファチジルセリン等が挙げられる。ここで、レシチンの由来としては、大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦、ヒマワリ等の植物由来のものや、卵黄、牛、乳等の動物由来のもの及び微生物由来の各種レシチンを挙げることができる。
【0034】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アンモニウム系カチオン界面活性剤やサルフェート系カチオン界面活性剤があげられ、具体的には、第4級アンモニウム塩のうち、アルキルトリメチルアンモニウム塩として、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド等があげられる。
その他、第3級アミドアミンとして、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドプロピルジエチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン、ステアラミドエチルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジエチルアミン、パルミタミドエチルジエチルアミン、パルミタミドエチルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジエチルアミン、ベヘナミドエチルジエチルアミン、ベヘナミドエチルジメチルアミン、アラキダミドプロピルジメチルアミン、アラキダミドプロピルジエチルアミン、アラキダミドエチルジエチルアミン、ア
ダミドエチルジメチルアミン、ジエチルアミノエチルステアラミド、等が挙げられる。
【0035】
このうち分散性の観点から、好ましくは第4級アンモニウム塩、さらに好ましくはヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドがあげられる。
界面活性剤のHLB値は特段限定されないが、8より大きいことが好ましく、9以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。ここで、HLB値は、通常、界面活性剤の分野で使用される親水性、疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えばGriffin、Davis、川上式、有機概念図等の方法が使用できる。また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
【0036】
本実施形態に係る水中油型乳化組成物中における界面活性剤の含有量は、通常乳化組成物に含有し得る量であれば特段限定されないが、組成物全量に対し通常0.00001重量%以上、好ましくは0.00005重量%以上、より好ましくは0.0001重量%以上、最も好ましくは0.001重量%以上であり、また通常0.05重量%以下、好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0.005重量%以下である。
また、水中油型乳化組成物中における界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度以下であることがより好ましい。界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度以下とすることによって、界面活性剤がミセルを形成することなく単層で固体粒子に結合もしくは吸着可能となるため、固体粒子の表面性を効率よく改質せしめ、結果的に界面活性剤の添加量を抑えることができる。
【0037】
本実施形態において、界面活性剤は固体粒子と反応又は相互作用することが好ましく、その場合、固体粒子100重量部に対する界面活性剤の含有量が、0ミリ当量より多く60ミリ当量未満であることが好ましい。尚、界面活性剤と固体粒子との反応又は相互作用には、例えば、静電相互作用、疎水性相互作用、分子間力相互作用、水素結合、等が含まれる。
なお、水中油型乳化組成物中に含まれている界面活性剤の分析方法は特に制限されないが、例えば次の(1)~(3)の手順で分析することができる。
(1)水中油型乳化型組成物を遠心分離にかけ、その上澄み及び沈降物(界面活性剤が吸着した固体粒子等)をそれぞれ回収し分析する。
(2)(1)で得られた沈降物から、種々の方法(塩添加、pH調整、エタノール等の所望の溶媒で洗浄等)で界面活性剤を脱離させ、界面活性剤の抽出液を得る。
(3)(1)で得られた上澄みや、(2)で得られた界面活性剤の抽出液をGPC(特開平8-269075等参照)、LC/MS、LC/MS/MS(特開2014-122213等参照)、GC/MS、GC/MS/MS、NMR等の方法で同定する。
【0038】
本発明の第2の実施形態における界面活性剤は特に制限されるものではなく、食品用として使用し得るものであればよい。
食品用として使用し得る界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウムやステアロイル乳酸ナトリウム等の乳酸脂肪酸エステル類、レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン、酢酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアシル酒石酸モノグリセリド等の有機酸モノグリセリド、糖脂質、サポニン、ステアリン酸ナトリウムやオレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩類、等が挙げられる。中でも、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、乳酸脂肪酸エステル類、酵素分解レシチン、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアシル酒石酸モノグリセリドが好ましく、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、乳酸脂肪酸エステル類、酵素分解レシチン、コハク酸モノグリセリド、ジアシル酒石酸モノグリセリドがさらに好ましく、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、乳酸脂肪酸エステル類、酵素分解レシチン、コハク酸モノグリセリドが最も好ましい。
【0039】
本発明の第1の実施形態の水中油型乳化組成物に含有される油相成分は、不飽和結合及び/又は酸素原子を含む食用油脂であり、本発明の第2の実施形態においては、油相成分は食品用として使用し得るもの(以下これを「食用油脂」と称する)であれば特に限定されず、いずれの食用油脂も使用することができる。
食用油脂としては、生理機能を有する油脂、脂溶性の色素、抗酸化剤も含まれる。不飽和結合を含む食用油脂としては、不飽和高級脂肪酸炭化水素類、不飽和高級脂肪酸、動植物性油脂類、スクアレンやトコフェロールを含むイソプレノイド、などがあげられる。酸素原子を含む食用油脂としては、高級アルコール、合成エステル油、グリコール高級脂肪酸エステル、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、などがあげられる。
本実施形態の水中油型乳化組成物では、固体粒子により油相成分と水相成分の接触を低減できるため、不飽和結合を含む食用油脂の酸化が抑制され、また、酸素原子を含む食用油脂の加水分解が抑制されるため、食用油脂の劣化臭の発生を抑制することができる。尚、油脂の劣化は、乳化組成物から抽出した抽出油の酸価もしくは過酸化物価もしくはカルボニル価を分析することで評価できる。これらは、基準油脂分析試験法(日本油化学会編)に準じる。
【0040】
食用油脂としては、例えば、ナタネ油、コメ油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ヒマワリ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、リンシード油、マカデミア種子油、ツバキ種子油、茶実油、米糠油、ココアバターなどの植物油、乳脂、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、魚油などの動物油、これら植物性油脂又は動物性油脂の液状又は固体状物を精製や脱臭、分別、硬化、エステル交換といった油脂加工した、硬化ヤシ油、硬化パーム核油などの硬化油脂や加工油脂、更にこれらの油脂を分別して得られる液体油、固体脂等を、1つ、または2つ以上混合した食用油脂などを用いることができる。
この他に、生理機能性を有する油脂も使用可能であり、その具体例としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、アラキドン酸、αリノレン酸、γリノレン酸、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)が挙げられる。これらの油脂は、1種で使用してもよく、混合物としても使用してもよい。
また、脂溶性の色素、抗酸化剤も使用可能であり、その具体的としては、色素としては、アナトー色素、β-カロチン、パプリカ色素、ニンジンカロテン、ディナリエラカロテン等のカロテノイド色素、ベニコウジ色素、クロロフィル、クルクミン(クルクミノイド)などのウコン色素、食用タール系色素、等が挙げられる。
抗酸化剤としては、ローズマリー抽出物、茶抽出物、生コーヒー豆抽出物、ブドウ種子抽出物、ヤマモモ抽出物などの植物抽出物、トコフェロール、トコトリエノール、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
これらの中でも、植物性油脂およびその硬化油脂や加工油脂が好ましく、味わいの観点から特に25℃で固体状の食用油脂が好ましい。
【0041】
特に、食用油脂について、主成分であるトリグリセリド分子に結合している全脂肪酸に占める、飽和脂肪酸以外、すなわちトランス脂肪酸を含む不飽和脂肪酸の割合が、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下であるものが、より良好な味質とするうえで好適である。
また、食用油脂は、トリグリセリド分子に結合している全脂肪酸に占める、炭素数が12以下の脂肪酸の割合が30重量%以上であるものが好ましい。
また、食用油脂は、沃素価が通常60.0以下、好ましくは30.0以下、より好ましくは20.0以下、さらに好ましくは10.0以下、最も好ましくは5.0以下であることが、加熱時の酸化臭がなく、良好な風味となるため好適である。
また、食用油脂は、10℃におけるSFC(固形脂含量)が好ましくは通常20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらにより好ましくは40重量%以上、最も好ましくは50重量%以上であることが、風味のよい組成物を作るため好適である。
【0042】
ここで、固体脂量(SFC)の測定は、通常のパルスNMRによる方法が一般的であり、熱分析から得られる固体脂指数(SFI)を使用しても大差は生じない。
また、食用油脂の上昇融点が好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上、最も好ましくは25℃以上であることが、風味のよい組成物を作るため好適である。この上昇融点の上限は好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下、最も好ましくは45℃以下であることが、良好な乳化安定性を得るために好適である。
【0043】
本発明の第1の実施形態では、油相成分として不飽和結合及び/又は酸素原子を含む油相成分を用いることで、特に油相成分として食用油脂を用いると、食品に添加できる程度の安全性を有し、味質としても好適な組成物を提供することが可能である。
【0044】
本実施形態に係る水中油型乳化組成物中における油相成分の含有量は、水中油乳化組成物を形成し得る量であれば特段限定されないが、組成物全量に対し通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、特に好ましくは30重量%以上、また通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは60重量%
以下、特に好ましくは50重量%以下である。
【0045】
本実施形態の水中油型乳化組成物に含有される水相成分は、通常乳化組成物に配合され、水相を形成する成分であればよい。水のほか、低級アルコール、多価アルコールなどを含んでもよい。
本実施形態に係る水中油型乳化組成物中における水相成分の含有量は、水中油乳化組成物を形成し得る量であれば特段限定されないが、組成物全量に対し通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、また通常95重量%未満、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。
【0046】
本実施形態において、水中油型乳化組成物には、上記固体粒子、界面活性剤、油相成分、及び水相成分以外に、更に上記アルキル基を1つ有する界面活性剤以外の界面活性剤、不飽和結合及び/又は酸素原子を有する油相成分以外の油相成分、不飽和結合及び/又は酸素原子を有する油相成分以外の着色料、不飽和結合及び/又は酸素原子を有する油相成分以外の抗酸化剤、甘味料、安定化剤、乳成分、タンパク質、着香料、着色料、塩類、有機酸などを含んでいてもよい。
【0047】
上記アルキル基を1つ有する界面活性剤以外の界面活性剤としては、アルキル基を2つ以上有するデカグリセリンミリスチン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステルなどのグリセリンの重合度が4以上、好ましくは4~12のポリグリセリン脂肪酸エステル;
グリセリンジミリステート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、グリセリンジオレエートなどのグリセリンジ脂肪酸エステル;
アルキル基を2つ以上有する、ジグリセリンミリスチン酸エステル、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステルなどのジグリセリン脂肪酸エステル;
アルキル基を2つ以上有する、トリグリセリンミリスチン酸エステル、トリグリセリンパルミチン酸エステル、トリグリセリンステアリン酸エステル、トリグリセリンオレイン酸エステルなどのトリグリセリン脂肪酸エステル;
炭素数12~22の飽和若しくは不飽和脂肪酸のジグリセリドとコハク酸、クエン酸又はジアセチル酒石酸とのエステルなどのジグリセリド有機酸エステル;
アルキル基を2つ以上有する、テトラグリセリンリシノレイン酸エステルなどのポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル;
アルキル基を2つ以上有する、ソルビタンミリスチン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステル、ソルビタンオレイン酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステル;
アルキル基を2つ以上有する、プロピレングリコールミリスチン酸エステル、プロピレングリコールパリミチン酸エステル、プロピレングリコールステアリン酸エステル、プロピレングリコールオレイン酸エステルなどのプロピレングリコール脂肪酸エステル;
アルキル基を2つ以上有する、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル;
レシチンなどのリン脂質、酵素処理レシチン;糖脂質;サポニン;があげられる。
【0048】
不飽和結合及び/又は酸素原子を有する油相成分以外の油相成分としては、食品、飼料、化粧品、医薬品及び工業等の分野で利用される任意の油相成分が挙げられる。
【0049】
甘味料としては、以下のものがあげられる。
糖:ぶどう糖、果糖、木糖、ソルボース、ガラクトース、異性化糖などの単糖類、蔗糖、麦芽糖、乳糖、異性化乳糖、パラチノースなどの二糖類、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、パラチノースなどのオリゴ糖類
糖アルコール:エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール等の単糖アルコール類、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール等の2糖アルコール類、
マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等の3糖アルコール類、オリゴ糖アルコール等の4糖以上アルコール類、粉末還元麦芽糖水飴など
高甘味度甘味料:アスパルテーム、ネオテーム、スクラロース、ステビアなど
【0050】
安定化剤としては、ガラクトマンナン、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアガム、タマリンドガム、ジェランガム、グルコマンナン、セルロースなどが挙げられる。
【0051】
乳成分としては、牛乳、加工乳、脱脂乳、生クリーム、ホエー、バターミルク、加糖練乳、無糖練乳などの液状物、全脂粉乳、脱脂粉乳、調製粉乳、粉末クリーム、粉末ホエー、バターミルクパウダーなどの粉末乳製品が挙げられる。特にバターミルク、バターミルクパウダーが好ましい。バターミルクとは、牛乳から遠心分離等で製造されたクリームから、チャーニング等により乳脂肪部分をバターとして取り出した際に分離されるバターミルク、バターセーラムと呼ばれる液体分のことで、それを濃縮した液状の濃縮バターミルクと、さらに噴霧乾燥を行った粉末状のバターミルクパウダーがある。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。別途、牛乳からクリームやバターを分離する過程で、酸を生成する菌による発酵や、有機酸等の酸を添加する場合があるが、本発明で用いるバターミルクは、そのような発酵や酸添加を行っていないバターミルクが好ましい。
バターミルク類としては、よつ葉乳業社製「バターミルクパウダー」等の市販品を用いることができる。
【0052】
タンパク質は、動物性タンパク質であっても植物性タンパク質であってもよく、動物性タンパク質としては、卵由来の卵黄、卵白、全卵、及びこれらより分離されたオボアルブミン、コンアルブミン、オボムコイド、オボグロブリンなどや牛乳由来の乳清タンパク、カゼイン及びカゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、カゼインカルシウムなどのカゼイン塩、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、血清アルブミン、免疫グロブリンなどを挙げることができる。植物性タンパク質としては、大豆由来の脱脂大豆粉、濃縮大豆タンパク、分離大豆タンパク、抽出大豆タンパクなどや、これらから分離された7Sグロブリン、11Sグロブリンなどを挙げることができる。
【0053】
着香料としては、任意のものを用いることができる。例えば、バニラエッセンス等のバニラ香料、ミルクフレーバー、バターフレーバー等のミルク香料が挙げられる。特に、ミルク香料が好ましく、ミルク香料としては、ミルクの芳香成分を有する香料であり、乳に特徴的な香気成分を含んだ香料であれば特に制限はなく、化学合成されたものでもよいし、乳より抽出、精製されたものでもよいし、それらの混合物であってもよいが、乳を原料としたものがより好ましく、乳成分に酵素を反応させて製造されたミルク香料が、自然な乳の風味を再現できるため、さらに好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
不飽和結合及び/又は酸素原子を有する油相成分以外の着色料としては、任意のものを用いることができる。例えば、ベニバナ色素、クチナシ色素、コチニール色素、カカオ色素、カラメル色素、リボフラビン酪酸エステル(VB2)、等が挙げられる。
不飽和結合及び/又は酸素原子を有する油相成分以外の抗酸化剤としては、任意のものを用いることができる。
例えば、水溶性の植物抽出物、L-アスコルビン酸およびその塩、エリソルビン酸およびその塩、等が挙げられる。
【0054】
塩類としては、例えば、食塩、塩化カリウム、塩化マグネシウム等の塩化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、重炭酸ナトリウム等の重炭酸塩、リン酸2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸2カリウム、リン酸3カリウム等のリン酸塩、ポリリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等のクエン酸塩、乳酸ナトリウムなど
が挙げられる。特にマグネシウムを含む塩類が好ましく、食品用途して使用できるものとして、乳清ミネラル、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、苦汁(粗製海水塩化マグネシウム)、ドロマイト、粗塩、ステアリン酸マグネシウム、リン酸一水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、L-グルタミン酸マグネシウム、セピオライト、タルク、フィチンなどが挙げられる。
【0055】
有機酸としては、例えば、フマル酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸などが挙げられる。
【0056】
本実施形態の水中油型乳化組成物は、前記油相成分と前記水相成分との界面に前記固体粒子が存在する乳化構造を有する。また、好ましくは前記固体粒子が連続相と不連続相の界面に存在する乳化構造を有する。このような構造を有することで、加熱前後であっても粒子径が制御された、降温耐性及び耐熱性のある水中油型乳化組成物とすることができる。
【0057】
上記水中油型乳化組成物の構造において、不連続相のサイズ、即ちO/Wにおける油相や、W/O/Wにおける油相及び最内層の水相の径が、安定性や食感、触感の観点から0.5μm以上1mm以下であることが好ましく、0.7μm以上500μm以下であることがより好ましく、1μm以上100μm以下であることがさらに好ましく、1μm以上50μm以下であることが特に好ましい。不連続相の径は、乳化組成物を乳化させる際の撹拌速度、撹拌時間を適宜調整することで、所望の値とすることができる。
このような乳化構造は、偏光顕微鏡による観察により確認することができる。また、不連続相のサイズは、偏光顕微鏡による観察により確認できる不連続相の長径の平均サイズである。確認する不連続相は、10以上であってよく、50以上であってよく、100以上であってよく、200以上であってよい。
その他に、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置や動的光散乱法による測定装置を用いて上記水中油型乳化組成物の不連続相のサイズ、即ちO/Wにおける油相の粒子径分布、メジアン径、平均径を測定することもできる。
【0058】
本実施形態の水中油型乳化組成物は、121℃加熱前後において、エマルションの径、すなわち上記不連続相の径の変化が小さいことが好ましい。加熱前後における径の変化は、加熱前の水中油型乳化組成物のメジアン径(D50)を100%として、加熱後の水中油型乳化組成物のメジアン径(D50)との差が何%であるか計算した際、加熱後のメジアン径(D50)が±30%以下であってよく、±20%以下であってよく、±10%以下であってよく、±5%以下であってよく、±3%以下であってよい。
本実施形態の水中油型乳化組成物は、油相中もしくは固体粒子中に、生体において所望の生理学的作用の発揮が期待され得る有効成分を含んでいてもよい。これにより、安定性に優れた機能性食品とすることができる。機能性食品の形態としては、栄養ドリンク、滋養強壮剤、嗜好性飲料、冷菓などの一般的な食品類の他に、レトルト状の栄養補助食品、流動食等もあげることができるが、これに限定されるものではない。生理学的作用が期待され得る有効成分の例としては、脂肪、微量元素、ビタミン類、アミノ酸、ミネラル類、天然由来もしくは合成化合物に由来する薬効成分、等が挙げられる。
本実施形態の水中油型乳化組成物は、60℃以上の耐熱性を有することが好ましく、70℃以上の耐熱性を有することが好ましい。ここで、耐熱性とは、加熱後に油相の分離がないことをいい、より好ましくは、さらに加熱前後におけるエマルションの平均径およびメジアン径の変化が30%、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下であることをいう。
【0059】
本実施形態におけるこのような乳化構造は、典型的には以下の方法により調製することで得られる。
水相成分と、上記界面活性剤及び固体粒子と、を混合し、該混合物を撹拌する第1ステップ、前記ステップで得られた混合物と、前記油相成分と、を混合し、該混合物を撹拌する第2ステップ、を含む製造方法。
または、前記油相成分と、前記界面活性剤及び前記固体粒子と、を混合し、該混合物を撹拌する第1´ステップ、前記ステップで得られた混合物と、前記水相成分と、を混合し、該混合物を撹拌する第2´ステップ、を含む製造方法。
【0060】
第1ステップは水相を調製するステップである。このように、特定の界面活性剤と固体粒子とを、水相に併用添加して水相を調製することで、界面活性剤と固体粒子とが相互作用することで、本実施形態における油相成分と水相成分との界面に固体粒子が存在する乳化構造を形成し易くなる。
また、第1´ステップは油相を調製するステップである。このように、特定の界面活性剤と固体粒子とを、油相に併用添加して油相を調製することで、界面活性剤と固体粒子とが相互作用することで、本実施形態における油相成分と水相成分との界面に固体粒子が存在する乳化構造を形成し易くなる。
第1ステップ及び第1´ステップにおける混合物の撹拌は、常温常圧で行ってもよいし、加温状態及び/または高圧状態で行ってもよい。常温常圧下で行う場合は、撹拌速度は
通常10rpm以上20000rpm以下とすればよく、撹拌時間は通常10秒以上60分以下である。
撹拌装置としては、高圧乳化機、パドルミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ニーダー、インラインミキサー、スタティックミキサー、オンレーター等が挙げられるが、低エネルギー、低コストで充分な撹拌を行うことができるパドルミキサーやホモジナイザーが好ましい。
【0061】
第2ステップ及び第2´ステップは、水中油型乳化組成物を調製するステップである。第2ステップにおける混合物の撹拌は、典型的には油性成分を充分に融解させるため加温状態で行われ、通常10℃以上100℃以下、好ましくは20℃以上90℃以下である。また、撹拌速度は通常10rpm以上20000rpm以下とすればよく、撹拌時間は通常10秒以上60分以下である。
その他、本実施形態では、通常の乳化組成物の調製方法に準じて適宜調製することができる。
また、水中油型乳化組成物を調製した後には、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、通常160℃以下、好ましくは150℃以下で、通常0.01分以上、好ましくは0.03分以上、通常60分以下、好ましくは30分以下程度の殺菌処理を行ってもよい。殺菌方法は特に制限はないが、UHT殺菌、レトルト殺菌、ジュール式殺菌法などが挙げられる。UHT殺菌は組成物に直接水蒸気を吹き込むスチームインジェクション式や組成物を水蒸気中に噴射して加熱するスチームインフュージョン式などの直接加熱方式、プレートやチューブなど表面熱交換器を用いる間接加熱方式など公知の方法で行うことができ、例えばプレート式殺菌装置を用いることができる。
【0062】
本実施形態の食品用水中油型乳化組成物の用途としては、飲料・液状食品等の食品、レトルト状の栄養補助食品、流動食等の機能性食品、パンや麺などの小麦粉加工品、ファットスプレッドやフラワーペーストなどの油脂加工品、カレー、パスタソース、シチュー、デミグラスソース、ホワイトソース、トマトソース等の各種ソース・スープ類、中華食品の素、どんぶりの素等などのレトルト食品や複合調味料、ヨーグルト類、チーズ、アイスクリーム類、クリーム類、キャラメル、キャンディ、チューインガム、チョコレート、クッキー・ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、ゼリー、プリン等の菓子・デザート、ハンバーグ、ミートボール、味付け畜肉缶詰等の畜
産加工品、冷凍食品、冷蔵食品、パック入りや店頭販売用惣菜等の調理済み・半調理済み食品の他、即席麺、カップ麺、即席スープ・シチュー類等の即席食品、栄養強化食品、流動食、高カロリー食、等の飲食品が挙げられる。特に飲料・液状食品等の食品が好ましく、飲料としては、乳飲料、スープ飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、茶飲料(紅茶、緑茶、中国茶など)、豆類・穀物飲料、酸性飲料、等が挙げられ、中でも、乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料が好ましい。また、本実施形態の食品用水中油型乳化組成物は、例えば、缶飲料、ペットボトル飲料、紙パック飲料、ビン詰飲料等の容器詰め飲料に好適に使用できる。
【実施例
【0063】
<水中油型乳化組成物の調製>
(水中油型乳化組成物A)
固体粒子としてシリカ微粒子(サンシールSS-07、株式会社トクヤマ製)3.007gと、予めヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB、和光純薬工業(株)製)を添加した水溶液12.008gと、を容器に分取し、ホモジナイザー(IKA
T25 digital ULTRA TURRAX)を用いて9000rpmにて2
min処理することで水相を得た。このとき用いたCTAB水溶液は、CTAB 0.0049gと脱塩水70.082gとを撹拌することで予め準備した(1.9×10-4mol/L)。
容器に前記の水相10.509g及び60℃に加熱した硬化ヤシ油4.497gを分取し、さらにこれらを60℃に加温した。ホモジナイザーを用いて17000rpmにて2分間撹拌することで、水中油型乳化組成物Aを得た。
【0064】
(水中油型乳化組成物B)
固体粒子として親水性シリカ微粒子(OX50、日本アエロジル社製)0.920gとCTAB入り水溶液23.1gとを容器に分取し、ホモジナイザーを用いて9000rpmにて1min処理することで水相を得た。このとき用いたCTAB水溶液のCTAB濃度は1.9×10-4mol/Lとした。このように調製した水相を60℃に調温した後にホモジナイザーで9000rpmにて撹拌しながら、2minかけて予め60℃に調温した硬化ヤシ油6gを徐々に添加し、さらに9000rpmで1min処理した。さらに回転数を3000rpmまで減速し10min処理することで水中油型乳化組成物Bを得た。
【0065】
(水中油型乳化組成物C)
界面活性剤を添加せずに、脱塩水12.006g、シリカ微粒子(サンシールSS-07、株式会社トクヤマ製)2.978gを用いてホモジナイザーで17000rpmにて2分間処理することで水相を調製したこと以外は、水中油型乳化組成物Aと同様にして水中油型乳化組成物Cを得た。
【0066】
(水中油型乳化組成物D)
界面活性剤を添加せずに、親水性シリカ微粒子(OX50、日本アエロジル社製)23.172g、脱塩水23.1719gを用いて水相を調製したこと以外は、水中油型乳化組成物Bと同様にして水中油型乳化組成物Dを得た。
【0067】
(水中油型乳化組成物E)
シリカ微粒子を添加せずに、CTAB入り水溶液を用いて水相を調製したこと以外は、水中油型乳化組成物Bと同様にして水中油型乳化組成物Eを得た。
【0068】
(組成物F)
常温に降温した水中油型乳化組成物Aに対して、CTAB水溶液を添加してCTABの
濃度を最終的に0.030重量%とした以外は、水中油型乳化組成物Aと同様にして水中油型乳化組成物を作成したが、乳化組成物中に凝集が発生した。
顕微鏡観察をしたところ、臨界ミセル濃度(CMC)以上にCTABを添加することでエマルションの凝集が確認された。このような乳化組成物中の油滴相の凝集は、加熱や昇温降温を繰り返した際に合一や油相分離に繋がる可能性が高く、乳化安定性が低いと言える。
【0069】
(水中油型乳化組成物G)
硬化ヤシ油を用いずに精製パーム油を用いたこと以外は、水中油型乳化組成物Aと同様にして水中油型乳化組成物Gを調製した。
【0070】
(水中油型乳化組成物H)
硬化ヤシ油を用いずに精製パーム油を用いたこと以外は、水中油型乳化組成物Cと同様にして水中油型乳化組成物Hを調製した。
【0071】
(水中油型乳化組成物I)
硬化ヤシ油を用いずに精製パーム油を用いたこと以外は、水中油型乳化組成物Eと同様にして水中油型乳化組成物Iを調製した。
【0072】
(水中油型乳化組成物J)
界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステルS-570(三菱ケミカルフーズ社製)を用いた。まず、S-570を予め水中に添加して加温溶解することで水相を調製した。次に、60℃加温下でPRIMIX社のホモミキサーを用いて8000rpmにて水相を攪拌しし
ながら60℃に加温した精製パーム油を投入し、さらに10000rpmにて10分撹拌した。尚、組成は、S-570:0.7重量%、硬化ヤシ油:30重量%であった。
さらに、60℃の水浴に1時間浸漬して加温殺菌した後に、常温の水浴に浸漬すること
で降温し、水中油型乳化組成物Jを得た。
水中油型乳化組成物A~Iの組成及び後述の測定結果を表1に示す。
【0073】
<液中に分散した固体粒子の粒子径測定>
固体粒子濃度が20wt%となるように水及びシリカ粒子を準備し、ホモジナイザーで17000rpmにて2分間撹拌することで、シリカ微粒子分散液を得た。固体粒子として、サンシールSS-07(株式会社トクヤマ製)又はOX50(日本アエロジル社製)を使用した。水中に分散したシリカ微粒子の測定は、このシリカ微粒子分散液をサンプルとして、堀場製作所製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA-920を用いてフロー式測定法にて粒子径分布測定を実施した。相対屈折率:1.10を解析に使用し、体積換算で得られた測定結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
<水中油型乳化組成物の高温安定性の評価>
(実施例1)
Nikon社製偏光顕微鏡 ECLIPSELV100NPOL及びNikon社製画像統合ソフトウェアNIS-ElementsVer3.2、リンカム社製顕微鏡用冷却・加熱装置TH-600PMを用いて60℃にて水中油型乳化組成物Aの観察を行った。エマルション表層にシリカ粒子の存在を確認することができた。そのため、界面活性剤とシリカ粒子を併用添加して水相を調製した場合には、微粒子が水相-油相界面に存在する
構造を有していることがわかった。
【0076】
(比較例1)
実施例1と同様の条件で水中油型乳化組成物Cを偏光顕微鏡観察したところ、エマルション表層にシリカ粒子の存在を確認することはできなかった。そのため、シリカ粒子単独系では、微粒子は水相-油相界面に存在する構造は形成しないことがわかった。
【0077】
(実施例2)
水中油型乳化組成物Bを60℃湯浴中で1時間保持し、その後油相の分離が無いことを確認した。結果を表2に示す。
【0078】
(比較例2)
水中油型乳化組成物Dを60℃で1時間保持し、その後油相の分離を確認した。結果を表2に示す。
【0079】
(比較例3)
水中油型乳化組成物Eを60℃で1時間保持し、その後油相の分離を確認した。結果を表2に示す
【0080】
(実施例2’)
水中油型乳化組成物Gを60℃湯浴中で1時間保持し、その後油相の分離が無いことを確認した。結果を表2に示す。
【0081】
(比較例2’)
水中油型乳化組成物Hを60℃で1時間保持し、その後油相の分離を確認した。結果を表2に示す。
【0082】
(比較例3’)
水中油型乳化組成物Iを60℃で1時間保持し、その後油相の分離を確認した。結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示す結果から明らかなように、界面活性剤とシリカ粒子を併用添加して水相を調製した水中油型乳化組成物Bは、高温状態で1時間保持した後であっても油相が分離することなく、安定な乳化状態を保持することができた。一方、界面活性剤とシリカ粒子を併用添加しなかった水中油型乳化組成物D及びEは、油相が分離し、乳化安定性は低いことが明らかとなった。
【0085】
<水中油型乳化組成物の降温安定性の評価>
(実施例3)
60℃に加温した水中油型乳化組成物A 3mlを60℃に加温した容器に分取し、この容器を水浴に浸漬することで室温まで降温させた。その後、容器を反転させて、容器に振動を与え、水中油型乳化組成物Aの流動性の有無を目視確認した。乳化物の流動性がある場合は〇、流動性がなく固化している場合を×として、結果を表3に示した。
【0086】
(実施例3’)
水中油型乳化組成物Gを用いたこと以外は、実施例3と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0087】
(比較例4)
乳化物の降温安定性の評価
水中油型乳化組成物Cを用いたこと以外は、実施例3と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
表3に示す結果から明らかなように、界面活性剤とシリカ粒子を併用添加して水相を調製した水中油型乳化組成物A及びGは、降温後も乳化物は流動可能であり、安定な乳化状態を保持することができた。水中油型乳化組成物Gを偏光顕微鏡で観察し、エマルション径を40点計測したところ、その平均値は21.64μmであった。
【0090】
また、水中油乳化組成物Aを、室温まで降温させた後に偏光顕微鏡にて観察したところ、エマルション表層にシリカ粒子の存在を確認することができた(図1)。さらに、水で10倍希釈した乳化物を顕微鏡観察した場合にも、エマルション表層(水相-油相の界面)にシリカ粒子の存在を確認することができ、希釈安定性を持っていることが明らかとなった(図2)。水相-油相の界面に吸着している固体粒子の直径を40点計測したところ
、その平均値は0.67μm、標準偏差は0.11であった。偏光顕微鏡を用いて消光位で観察したところ、エマルションの内相部分が輝点状に観察され、硬化ヤシ油の結晶化がエマルションの内相で起こっており、針状結晶の突出しが無いことがわかった(図3)。
そのため、界面活性剤とシリカ粒子を併用添加して水相を調製した場合には、降温後も希釈の有無に関わらず固体粒子が水相-油相界面に存在する構造を有していることがわかった。
水中油型乳化組成物A及びBを室温まで降温した際にも、乳化物は流動可能であり、安定な乳化状態を保持することができた。
一方、界面活性剤とシリカ粒子を併用添加しなかった水中油型乳化組成物Cは、降温後に乳化物は流動性を失い、安定な乳化状態を保持することはできないことがわかった。
【0091】
<耐熱性の評価>
(実施例4)
水中油型乳化組成物Aをマイクロチューブに1ml分取し、水浴に浸漬して冷却した。マイクロチューブの蓋を開けて、開口部をアルミ箔で覆った状態で株式会社トミー製オートクレーブBS-325にて121℃30分の加熱を実施した。オートクレーブ加熱後、装置内温が80℃以下になっていることを確認した後にマイクロチューブを取り出し、水
浴に浸漬して冷却した。121℃加熱前後の水中油型乳化組成物Aに対して、堀場製作所製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA-920を用いてフロー式測定法にて粒子径分布測定を実施した。相対屈折率:1.30を用いて体積換算で得られた結果を図4及び表4に示す。図4から明らかなように、121℃加熱前後で粒子径分布に変化みられず、界面活性剤とシリカ粒子を併用して水相を調製することで、加熱殺菌処理に耐える耐熱性が付与されることがわかった。
【0092】
【表4】
【0093】
<食用油脂の劣化評価>
水中油型乳化組成物Gと同様の組成割合で、PRIMIX社ホモミキサーを用いて組成物G’の作製を行った。60℃加温下で水相を8000rpmで撹拌しながら、予め加温した油相を投入した。さらに10000rpmで10min攪拌し、60℃で1時間加温処理を行った後に、室温まで降温し、水中油型乳化組成物G’を得た。この水中油型乳化組成物G’と水中油型乳化組成物Jとの油脂劣化状態の比較を行った。油脂劣化状態の評価は、それぞれの水中油型乳化組成物の抽出油の過酸化物価(酢酸-クロロホルム法)、カルボニル価(基準油脂分析試験法:日本油化学会編。抽出油1g当たりの吸光度(波長440nm)[過酸化物は処理せず])を分析した。乳化後から15℃以上で0日間保管したサンプル(以下、試験区「0日」)、乳化後から15日間15℃以上で保管したサンプル(以下、試験区「15日」)、乳化後から15℃に設定した恒温機内で25日間保管した後に、さらに40℃に設定したオーブンで4日間保管したサンプル(以下、試験区「29日」)についての測定結果を、表5に示す。なお、それぞれのサンプルは、保管から測定するまでの間、4℃で冷蔵保管した。
また、酸化により生成する物質の合計量の目安として、過酸化物価を価数1と仮定し、meq/kgをmmol/kgに換算し、カルボニル価もμmol/gをmmol/kgに換算した上で、両者を合
計して、抽出油中の酸化生成物として表5に示すとともに、その値の水中油型乳化組成物G’に対するJの比率を表6に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
表5、6に示すように、食品分野で一般的に使用する乳化剤を用いた水中油型乳化組成物Jよりも界面活性剤と固体粒子を併用した水中油型乳化組成物G’において、乳化時および乳化後の乳化組成物の保管時における食用油脂である精製パーム油の異臭につながる酸化劣化の進行を抑制できることがわかった。
また、水中油型乳化組成物Jは保管の過程で視認可能な凝集が発生した。そのため、界面活性剤と固体粒子を併用した水中油型乳化組成物G’の方が水中油型乳化組成物の保管安定性の観点で優れていることがわかった。
図1
図2
図3
図4