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特許7451128樹脂組成物、および、包装容器用の注出部材
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  • 特許-樹脂組成物、および、包装容器用の注出部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】樹脂組成物、および、包装容器用の注出部材
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20240311BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20240311BHJP
   C08K 5/3447 20060101ALI20240311BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20240311BHJP
   B65D 33/38 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L97/00
C08K5/3447
C08K5/36
B65D33/38 BRQ
B65D33/38 BSQ
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019181761
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021055025
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】平田 陽
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真一郎
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-286933(JP,A)
【文献】特開2014-194004(JP,A)
【文献】特公昭27-002791(JP,B1)
【文献】特開平11-157555(JP,A)
【文献】特開2019-081607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B65D 30/00- 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来材の粒子が合成樹脂中に充填された樹脂組成物であって、
有機系の防カビ剤が添加されており、
前記植物由来材の粒子が、スギ、ヒノキ、その他の針葉樹を由来とした20から100μmの粒子径を有するものであり、かつ、
前記合成樹脂が、ポリオレフィンを主成分とするものであり、なおかつ、
前記植物由来材の粒子の前記合成樹脂中への充填割合が10質量%以上70質量%未満であり、
前記有機系の防カビ剤が、ベンズイミダゾール系あるいは有機窒素硫黄系のものであるとともに、
相溶化剤としてマレイン酸変性ポリオレフィンが0.1~30重量%添加されていることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機系の防カビ剤の添加量が0.01質量%以上3.0質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1、または2に記載の樹脂組成物によって形成された包装容器用の注出部材であって、
筒状部分の下側に舟形状のベース部分を設けたものであり、
下記の測定方法で測定した前記ベース部分とLLDPEからなるシーラントフィルムとの接着強度が0.51kgf/25mm以上であることを特徴とする包装容器用の注出部材。
<接着強度>
注出部材の舟形状のベース部分に、厚さ100μmのポリプロピレンフィルムと厚さ50μmのLLDPEシーラントフィルムとを二液混合型ウレタン系接着剤を用いてラミネートした積層フィルムを、シーラントフィルム面が内側になるように当接させ、その当接部分を、加熱した金属板を利用して約120℃に加熱することによって、ベース部分に積層フィルムを融着させ、その融着部分を十分に冷却した後、その融着された界面における90°剥離強度を、24℃×65%RHの雰囲気下で、テンシロン引っ張り試験機を用いて、引っ張り速度 300mm/min.の条件で測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄する際の環境負荷が小さい樹脂組成物、および、その樹脂組成物によって形成される成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生活用品、台所用品、事務用品、インテリア用品、土木建築用資材等の各種の製品を製造する際の原料として合成樹脂が広く用いられている。たとえば、食品、薬品、化粧品等の各種の液体や粉体等を包装・収納するための包装容器としては、合成樹脂製のフィルムからなる袋の上部に合成樹脂製の注出部材を融着(熱融着)させたものが多く使用されている(特許文献1)。
【0003】
一方、近年では、廃棄された合成樹脂を燃焼させる際に排出されるCOが環境問題になっているが、上記従来の合成樹脂製の製品(たとえば、包装容器等)は、燃焼時に多くのCOを排出させるものであるため、廃棄時の環境負荷が小さいとは言い難い。そのため、特許文献2の如く、カーボンニュートラルな性質(燃やしても大気中のCOの増減に影響を与えない性質)を有する植物繊維やおが屑等の木質材を主原料である合成樹脂(熱可塑性樹脂)中に添加した樹脂組成物によって包装容器を製造する技術も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-034903号公報
【文献】実用新案登録第3153079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の如き従来の木質材入りの包装容器は、特に、長期間に亘って使用した場合には、合成樹脂中に添加された植物繊維やおが屑等にカビが生えてしまい、衛生面で悪影響を与えてしまう、という不具合がある。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の廃棄時の環境負荷を低減させた成形品、および、その原料である樹脂組成物が有する問題点を解消し、カーボンニュートラルな性質を有する物質を含有しており、成形品の廃棄時の環境負荷が小さいのみならず、長期間に亘って使用された場合でもカビが生えたりしない衛生性に優れた成形品を提供することにある。また、そのような環境負荷が小さく、かつ、衛生性に優れた高い成形品を成形可能な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、植物由来材の粒子が合成樹脂中に充填された樹脂組成物であって、有機系の防カビ剤が添加されており、前記植物由来材の粒子が、スギ、ヒノキ、その他の針葉樹(すなわち、パイン、スプルース)を由来とした20から100μmの粒子径を有するものであり、かつ、前記合成樹脂が、ポリオレフィンを主成分とするものであり、なおかつ、前記植物由来材の粒子の前記合成樹脂中への充填割合が10質量%以上70質量%未満であり、前記有機系の防カビ剤が、ベンズイミダゾール系あるいは有機窒素硫黄系のものであるとともに、相溶化剤としてマレイン酸変性ポリオレフィンが0.1~30重量%添加されていることを特徴とするものである。なお、植物由来材とは、各種の木質材、竹、竹炭、食品残渣からなるセルロース、あるいはそれらの混合物のことである。
【0013】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記有機系の防カビ剤の添加量が0.01質量%以上3.0質量%未満であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載された発明は、請求項1、または2に記載の樹脂組成物によって形成された包装容器用の注出部材であって、筒状部分の下側に舟形状のベース部分を設けたものであり、下記の測定方法で測定した前記ベース部分とLLDPEからなるシーラントフィルムとの接着強度が0.51kgf/25mm以上であることを特徴とするものである。
<接着強度>
<接着強度>
注出部材の舟形状のベース部分に、厚さ100μmのポリプロピレンフィルムと厚さ50μmのLLDPEシーラントフィルムとを二液混合型ウレタン系接着剤を用いてラミネートした積層フィルムを、シーラントフィルム面が内側になるように当接させ、その当接部分を、加熱した金属板を利用して約120℃に加熱することによって、ベース部分に積層フィルムを融着させ、その融着部分を十分に冷却した後、その融着された界面における90°剥離強度を、24℃×65%RHの雰囲気下で、テンシロン引っ張り試験機を用いて、引っ張り速度 300mm/min.の条件で測定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る樹脂組成物は、成形原料のベースとなる合成樹脂中に植物由来材の粒子とともに有機系の防カビ剤を添加したものであるので、廃棄する際の環境負荷が小さい上、長期間に亘って使用された場合でもカビが生えたりしない衛生性に優れた成形品を成形することが可能である。また、本発明に係る樹脂組成物は、ベース原料である合成樹脂と有機系の防カビ剤との馴染み(親和性)、および、有機系の防カビ剤と植物由来材の粒子との馴染みがいずれも良好であるため、成形品中にボイドやクラックが形成されにくく、樹脂本来の特性を発現し易い。それゆえ、本発明に係る樹脂組成物は、各種の物質を包装するためのシート、フィルム、包装袋・包装容器等の成形品の原料として幅広く利用することができ、特に、食品、薬品、化粧品等を包装するためのシート、フィルム、包装袋や包装容器の成形原料として好適に用いることができる。
【0016】
一方、本発明に係る成形品は、廃棄する際の環境負荷が小さい上、長期間に亘って使用された場合でもカビが生えたりせず衛生性に優れている。さらに、本発明に係る成形品は、ボイドやクラックが少なく、ベース樹脂本来の特性に近似した特性を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】成形された注出部材を示す説明図である(aは正面図であり、bは平面図であり、cは側面図である)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、各成分の特性、含有量、添加量に関する“~”は、原則的に、左側の数値以上右側の数値以下を意味するものとする。
【0019】
本発明に係る樹脂組成物は、ベース原料である合成樹脂中に、植物由来材の粒子とともに有機系の防カビ剤が添加されていることを特徴とするものである。ベース樹脂である合成樹脂としては、各種の樹脂を用いることができるが、ポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン系樹脂(すなわち、ポリオレフィンの比率が概ね80質量%以上である樹脂)を用いると、樹脂組成物のハンドリング性が良好なものとなるので好ましい。また、そのようなポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを、単独で、あるいは、それらの内の2種以上を混合して用いることができる。加えて、ポリオレフィンとして、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)を用いると、合成樹脂と植物由来材の粒子との馴染み(親和性)、および、合成樹脂と有機系の防カビ剤との馴染みが、いずれも良好なものとなり、成形品中にボイドやクラックがきわめて形成されにくくなるので好ましい。
【0020】
また、ベース原料である合成樹脂中に充填する植物由来材の粒子としては、分級粉砕機等の粉砕装置等を利用して木質材、竹、竹炭、食品残渣からなるセルロース、あるいはそれらの混合物を粒子状に粉砕したものを好適に用いることができる。また、植物由来材として木質材を利用する場合には、スギ、ヒノキ、パイン(松)、スプルース等の針葉樹や、ローズウッド、カリン、チーク、マホガニー、ウォールナット、ナラ(オーク)、ブナ、タモ、キリ、サクラ、ラワン、カバ等の広葉樹、あるいはそれらを混合したものを好適に用いることができる。そのような植物由来材の粒子の中でも、スギを粒子状に粉砕したものを用いると、ベース原料である合成樹脂中での植物由来材の粒子の分散性がきわめて良好なものとなり、均一に分散しやすくなるので好ましい。
【0021】
上述した植物由来材の粒子の大きさは、特に限定されないが、粒子径の最大径が10~500μmであると、ベース原料である合成樹脂と混ざりやすくなり、樹脂組成物を成形した際に、物性に斑のない均一な成形品が得られるので好ましく、粒子径が20~100μmであるとより好ましく、粒子径が40~60μmであると特に好ましい。なお、粒子の最大径は、数平均径として、顕微鏡の画像解析により得ることができ、粒子100点の直径(粒子が円形でない場合には粒子径の長さが最も長くなる径)の平均値を採用することができる。また、植物由来材の粒子として、表面をアセチル化処理(アセチレンによる処理等)した粒子を用いると、合成樹脂中での分散性が一段と良好なものとなるので好ましい。さらに、植物由来材の粒子として針状のものを用いると、成形品の強度が良好なものとなるので特に好ましい。
【0022】
また、植物由来材の粒子は、ベース原料である合成樹脂に対して、1~70質量%の割合で添加する必要がある。植物由来材の粒子の添加量が1%未満であると、成形された成形品を廃棄する際の環境負荷が大きくなる上、成形品に植物由来材独特の風合いを発現させることができなくなるので好ましくない。反対に、植物由来材の粒子の添加量が70%を上回ると、合成樹脂と混ざりにくくなって成形しにくくなる上、合成樹脂本来の特性が発現されにくくなるので好ましくない。植物由来材の粒子の含有量は、10%以上50%以下であるとより好ましく、20%以上40%以下であると特に好ましい。
【0023】
また、植物由来材の粒子を充填した合成樹脂に添加する防カビ剤は、有機系のものを用いることが必要である。そのような有機系の防カビ剤を用いると、少ない添加量で樹脂組成物の防カビ性を効果的に高めることが可能となる。加えて、有機系の防カビ剤は、ベース樹脂である合成樹脂、および、植物由来材の粒子との馴染み(親和性)が良好であるため、成形品の成形時におけるボイドやクラックの形成を抑制することができる。それゆえ、本発明に係る樹脂組成物を用いることによって、成形品を成形する際に、ベース樹脂に近い特性を発現させることが可能となる。たとえば、本発明に係る樹脂組成物を用いて、食品、薬品、化粧品を包装するための包装容器用の注出部材(所謂、スパウト)を成形した場合には、良好な防カビ性とともに、シーラントフィルムに対する良好な熱接着性(熱融着性)を発現させることが可能となる。
【0024】
樹脂組成物に添加する有機系の防カビ剤としては、各種のものを用いることができ、たとえば、フェノール系、ピリジン・キノリン系、トリアジン系、イソチアゾロン系、アニリド系、ニトリル系、イミダゾール系、チアゾール系、アルコール系、アルデヒド系、ジスルフィド系、チオカーバメート系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、四級アンモニウム塩系、ビグアナイド系、界面活性剤系、ハロゲン系、有機金属系のもの、あるいは、それらの誘導体、変性物等を、単独であるいは二種以上混合して用いることができる。さらに、それらの中でも、ベンズイミダゾール化合物(たとえば、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール等)や有機窒素硫黄系化合物は、食品、薬品、化粧品等の包装容器・包装袋用の部材の成形材料用として好ましい。ベンズイミダゾール系の化合物を用いると樹脂の成形時の流動性が増すため、流動性が必要な成形には好ましい。有機窒素硫黄系化合物は、添加による流動性を上昇させないため、有機窒素硫黄系化合物を入れないときの流動性と変わらない優れた成形性を提供することができる。
【0025】
また、本発明に係る樹脂組成物を製造する際には、ベース原料である合成樹脂を溶融させた状態で植物由来材の粒子を添加し、しかる後に混合物を十分に撹拌する方法を好適に用いることができる。さらに、樹脂組成物を製造する際には、合成樹脂中に、植物由来材の粒子とともに、相溶化剤を添加することも可能である。かかる相溶化剤としては、ワックス成分、界面活性剤、酸変性樹脂組成物、脂肪族エステル化合物、多価アルコールエステル、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、ステアリン酸、ポリアルキレングリコール等を好適に用いることができる。加えて、それらの相溶化剤の中でも、酸変性樹脂組成物を用いるのがより好ましく、酸変性ポリオレフィン(マレイン酸変性ポリエチレンやマレイン酸変性ポリプロピレン等)を用いるのが特に好ましい。そのように相溶化剤を添加することによって、合成樹脂中での植物由来材の粒子の分散性が一段と良好なものとなる。さらに、相溶化剤を添加する際には、相溶化剤の添加量を、0.1~30重量%に調整すると、合成樹脂と植物由来材の粒子との親和性が良好なものとなり、樹脂組成物を成形品に加工する際にボイドやクラックが形成されにくくなるので好ましい。
【0026】
加えて、本発明に係る樹脂組成物は、MFR(メルトフローレート)が2.0~50.0の範囲内にあると、押し出し成形等の方法によって各種の成形品(包装容器用の注出部材等)を形成するときのハンドリング性(成形性)が良好なものとなり、効率良く成形することが可能となるので好ましく、MFRが10.0~40であると、より好ましい。
【0027】
一方、本発明に係る樹脂組成物は、各種の生活用品、台所用品、事務用品、インテリア用品、工業製品(フィルム、シート、機械部品等)、土木建築用資材等の成形に好適に用いることができる。加えて、本発明に係る樹脂組成物は、長期間に亘って優れた衛生性を発現するため、食品、薬品、化粧品等の包装容器・包装袋用の部材(たとえば、包装容器用の注出部材(所謂、スパウト)やポンプ等)の成形原料として、特に好適に用いることができる。
【実施例
【0028】
以下、本発明に係る樹脂組成物および成形品について実施例によって詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。また、実施例・比較例における物性、特性の評価方法は以下の通りである。
【0029】
<廃棄時の環境負荷>
実施例・比較例で得られた樹脂組成物中に含まれるカーボンニュートラルな性質(燃やしても大気中のCOの増減に影響を与えない性質)を有する原料の量によって下記の2段階で評価した。
◎:カーボンニュートラルな性質を有する原料の含有量が35質量%以上である
○:カーボンニュートラルな性質を有する原料の含有量が20質量%以上35%未満である
△:カーボンニュートラルな性質を有する原料の含有量が10質量%以上20%未満である
×:カーボンニュートラルな性質を有する原料の含有量が10質量%未満である
【0030】
<防カビ性>
実施例・比較例で得られた樹脂組成物を用いて、「第十五改正日本薬局方 保存効力試験法」に準じて微生物試験を行った。具体的には、シャーレ内に収納した所定量(30g)の樹脂組成物に対して、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、酵母(カンジダ)、カビ(クロコウジカビ)の菌液を接種し、塗沫法によって菌数の経日変化(4週間)を調べた。そして、得られた試験結果によって、以下の3段階で評価した。
◎:短時間の内に菌数が確実に減少した
○:菌数が確実に減少した
△:菌数が減少したものの、減少速度が遅かった
×:菌数の増減が認められなかった
【0031】
<接着強度>
実施例・比較例で得られた注出部材のベース部分(舟形状の上下幅10mmの部分)に、合成樹脂製の積層フィルム(厚さ100μmのポリプロピレンフィルムと厚さ50μmのシーラントフィルム(LLDPEフィルム)とを二液混合型ウレタン系接着剤を用いてラミネートしたもの)を当接させ(シーラントフィルム面が内側になるように当接させ)、その当接部分を、加熱した金属板を利用して約120℃に加熱することによって、ベース部分に積層フィルムを融着させた。そして、その融着部分を十分に冷却した後、その融着された界面における剥離強度(所謂、90°剥離強度)を、24℃×65%RHの雰囲気下で、テンシロン引っ張り試験機を用いて、引っ張り速度 300mm/min.の条件で測定した。そして、それらの測定値に基づいて、下記の3段階で接着強度(剥離強度)を評価した。
◎:接着強度(剥離強度)が0.51kgf(約5.0N)/25mm以上
○:接着強度が0.46kgf/25mm以上0.51kgf/25mm未満
△:接着強度が0.46kgf/25mm未満
【0032】
[実施例1]
直鎖状低密度ポリエチレン 77重量部を、190℃の温度で加熱することにより溶融させて、その溶融させた樹脂中に、木質材(スギを乾燥させたもの)を粉砕してなる植物由来材の粒子(数平均粒子径=50μm) 20質量部、相溶加剤であるマレイン酸変性ポリプロピレン 2.5重量部、および、ベンズイミダゾール系防カビ剤(大阪ガスケミカル(株)製 コートサイド155) 0.5重量部を添加して十分に撹拌混合し、ストランド状に押し出し、冷却しながら所定の長さに裁断することによって、実施例1の樹脂組成物(一粒の大きさが直径約3.0mm×長さ約4.0mmの円柱状である粒状のペレット)を得た。
【0033】
さらに、得られた樹脂組成物を用いて、図1の如き形状を有する注出部材(合成樹脂製の包装容器の上部に熱融着して用いるスパウト)を成形した。なお、形成された注出部材1の大きさは、高さ×幅=30mm×40mmであり、筒状部分2の内径は11mmであり、下側のベース部分(合成樹脂フィルムとの融着部分)3の上下幅(高さ)は10mmであった。そして、得られた樹脂組成物、および、注出部材の特性を、上記した方法によって評価した。実施例1の樹脂組成物、注出部材の特性の評価結果を、樹脂組成物の性状とともに表1に示す。
【0034】
[実施例2]
溶融させた合成樹脂(LLDPE)中に添加する防カビ剤を、有機窒素硫黄系化合物(分子量317、分子内に硫黄分子と窒素分子、酸素原子を含む)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の樹脂組成物を得た。さらに、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様な形状・大きさを有する注出部材を成形した。そして、得られた樹脂組成物、および、注出部材の特性を、上記した方法によって評価した。実施例2の樹脂組成物、注出部材の特性の評価結果を、樹脂組成物の性状とともに表1に示す。
【0035】
[実施例3,4]
溶融させた合成樹脂(LLDPE)中に添加する防カビ剤の添加量を、それぞれ、0.1重量部、2.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3,4の樹脂組成物を得た。さらに、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様な形状・大きさを有する注出部材を成形した。そして、得られた樹脂組成物、および、注出部材の特性を、上記した方法によって評価した。実施例3,4の樹脂組成物、注出部材の特性の評価結果を、樹脂組成物の性状とともに表1に示す。
【0036】
[実施例5]
溶融させた合成樹脂(LLDPE)中に添加する植物由来材の粒子を、木質材(ヒノキを乾燥させたもの)を粉砕してなる植物由来材の粒子(数平均粒子径=50μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の樹脂組成物を得た。さらに、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様な形状・大きさを有する注出部材を成形した。そして、得られた樹脂組成物、および、注出部材の特性を、上記した方法によって評価した。実施例5の樹脂組成物、注出部材の特性の評価結果を、樹脂組成物の性状とともに表1に示す。
【0037】
[実施例6]
溶融させた合成樹脂(LLDPE)中に添加する植物由来材の粒子を、木質材(スギを乾燥させたもの)を粉砕してなる植物由来材の粒子(数平均粒子径=70μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の樹脂組成物を得た。さらに、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様な形状・大きさを有する注出部材を成形した。そして、得られた樹脂組成物、および、注出部材の特性を、上記した方法によって評価した。実施例6の樹脂組成物、注出部材の特性の評価結果を、樹脂組成物の性状とともに表1に示す。
【0038】
[実施例7,8]
溶融させた合成樹脂(LLDPE)中に添加する植物由来材の粒子の添加量を、それぞれ、10重量部、50重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7,8の樹脂組成物を得た。さらに、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様な形状・大きさを有する注出部材を成形した。そして、得られた樹脂組成物、および、注出部材の特性を、上記した方法によって評価した。実施例7,8の樹脂組成物、注出部材の特性の評価結果を、樹脂組成物の性状とともに表1に示す。
【0039】
[実施例9]
ベース原料である合成樹脂を高密度ポリエチレン(HDPE)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例9の樹脂組成物を得た。さらに、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様な形状・大きさを有する注出部材を成形した。そして、その樹脂組成物、および、注出部材の特性を、上記した方法によって評価した。実施例9の樹脂組成物、注出部材の特性の評価結果を、樹脂組成物の性状とともに表1に示す。
【0040】
[比較例1]
直鎖状低密度ポリエチレン 77.5重量部を、190℃の温度で加熱することにより溶融させて、その溶融させた樹脂中に、木質材(スギを乾燥させたもの)を粉砕してなる植物由来材の粒子(数平均粒子径=50μm) 20質量部、および、相溶加剤であるマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂 2.5重量部のみを添加して十分に撹拌混合し、冷却、裁断することによって比較例1の樹脂組成物を得た(すなわち、比較例1の樹脂組成物を作製する際には、溶融させた樹脂中に防カビ剤を添加しなかった)。さらに、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様な形状・大きさを有する注出部材を成形した。そして、得られた樹脂組成物、および、注出部材の特性を、上記した方法によって評価した。比較例1の樹脂組成物、注出部材の特性の評価結果を、樹脂組成物の性状とともに表1に示す。
【0041】
[比較例2]
溶融させた合成樹脂(LLDPE)中に添加する防カビ剤を、ゼオライト(無機系の防カビ剤 富士ケミカル(株)製 バクテキラーBM-102TG)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の樹脂組成物を得た。さらに、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様な形状・大きさを有する注出部材を成形した。そして、得られた樹脂組成物、および、注出部材の特性を、上記した方法によって評価した。比較例2の樹脂組成物、注出部材の特性の評価結果を、樹脂組成物の性状とともに表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から、実施例1~9で得られた樹脂組成物は、いずれも廃棄時の環境負荷が小さく、防カビ性に優れていることが分かる。さらに、実施例1~9で得られた樹脂組成物によって形成された注出部材は、合成樹脂製の積層フィルム(シーラントフィルム)との接着性(熱融着部分の剥離強度)が良好であることが分かる。それに対して、防カビ剤を添加していない比較例1の樹脂組成物や、無機系の防カビ剤を添加した比較例2の樹脂組成物は、防カビ性が不十分であることが分かる。また、無機系の防カビ剤を添加した比較例2の樹脂組成物は、シーラントフィルムとの接着性が不十分であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る樹脂組成物は、上記の如く優れた効果を奏するものであるから、生活用品、台所用品、事務用品、インテリア用品、工業製品、土木建築用資材等の各種の成形品(特に、食品、薬品、化粧品を包装するための包装容器用の注出部材)の原料として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1・・注出部材
2・・筒状部分
3・・ベース部分
図1