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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】バイアス電流発生回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/26 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
G05F3/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020102231
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021196806
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】小川 正訓
(72)【発明者】
【氏名】境 要典
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-186360(JP,A)
【文献】特開2008-015779(JP,A)
【文献】特表2018-517990(JP,A)
【文献】特開平05-191166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電源電圧と負電源電圧との間に、バンドギャップ回路と前記バンドギャップ回路への電流供給を行う供給用カレントミラー回路が直列接続されて設けられてなるバイアス電流発生回路であって、
前記バンドギャップ回路は、カレントミラー接続状態に設けられた2つのトランジスタと、前記バンドギャップ回路の出力であるバイアス電流を決定する電流決定用抵抗器とを用いて構成され、
前記正電源電圧側から前記バンドギャップ回路、前記供給用カレントミラー回路が直列接続されて設けられる場合には、前記バンドギャップ回路を構成するトランジスタの制御電極と前記正電源電圧との間に電圧変化重畳用コンデンサが設けられる一方、
前記正電源電圧側から前記供給用カレントミラー回路、前記バンドギャップ回路が直列接続されて設けられる場合には、前記供給用カレントミラー回路を構成するトランジスタの制御電極と前記正電源電圧との間に電圧変化重畳用コンデンサが設けられてなり、
前記正電源電圧の急低下時に前記電圧変化重畳用コンデンサを介して前記正電源電圧の電圧変化を前記制御電極へ重畳せしめて前記正電源電圧の急低下に起因する前記バイアス電流の一時的停止を回避することを可能としてなり、
前記正電源電圧側から前記バンドギャップ回路、前記供給用カレントミラー回路が直列接続されて設けられる場合にあって、
前記バンドギャップ回路の2つのトランジスタにはバンドギャップ用第1及び第2のPMOSトランジスタが用いられ、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのソースには前記正電源電圧が、前記バンドギャップ用第2のPMOSトランジスタのソースには前記電流決定用抵抗器を介して前記正電源電圧が、それぞれ印加可能とされ、前記バンドギャップ用第1及び第2のPMOSトランジスタの制御電極であるゲートが相互に接続されると共に、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレインと接続され、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレインは前記供給用カレントミラー回路の出力端に、前記バンドギャップ用第2のPMOSトランジスタのドレインは前記供給用カレントミラー回路の入力端に、それぞれ接続され、前記バンドギャップ用第1及び第2のPMOSトランジスタのゲートは、前記電圧変化重畳用コンデンサを介して前記正電源電圧が印加可能とされ、
前記電圧変化重畳用コンデンサの容量CX1は、
不等式CX1>{Cb1-(Iref×Δt)/ΔV}を満たし、
前記不等式におけるCb1は、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレインと前記負電源電圧間における寄生容量、前記不等式におけるIrefは、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレイン電流、前記不等式におけるΔVは、前記正電源電圧が急低下した際の低下幅、前記不等式におけるΔtは、前記正電源電圧が急低下によって前記ΔV低下する際に要した時間である低下時間幅であって、
前記バンドギャップ用第2のPMOSトランジスタのドレイン電流は、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレイン電流と同一に設定されてなることを特徴とするバイアス電流発生回路。
【請求項2】
正電源電圧と負電源電圧との間に、バンドギャップ回路と前記バンドギャップ回路への電流供給を行う供給用カレントミラー回路が直列接続されて設けられてなるバイアス電流発生回路であって、
前記バンドギャップ回路は、カレントミラー接続状態に設けられた2つのトランジスタと、前記バンドギャップ回路の出力であるバイアス電流を決定する電流決定用抵抗器とを用いて構成され、
前記正電源電圧側から前記バンドギャップ回路、前記供給用カレントミラー回路が直列接続されて設けられる場合には、前記バンドギャップ回路を構成するトランジスタの制御電極と前記正電源電圧との間に電圧変化重畳用コンデンサが設けられる一方、
前記正電源電圧側から前記供給用カレントミラー回路、前記バンドギャップ回路が直列接続されて設けられる場合には、前記供給用カレントミラー回路を構成するトランジスタの制御電極と前記正電源電圧との間に電圧変化重畳用コンデンサが設けられてなり、
前記正電源電圧の急低下時に前記電圧変化重畳用コンデンサを介して前記正電源電圧の電圧変化を前記制御電極へ重畳せしめて前記正電源電圧の急低下に起因する前記バイアス電流の一時的停止を回避することを可能としてなり、
前記正電源電圧側から前記供給用カレントミラー回路、前記バンドギャップ回路が直列接続されて設けられる場合にあって、
前記供給用カレントミラー回路は、ミラー用第1及び第2のPMOSトランジスタが用いられてなり、前記ミラー用第1及び第2のPMOSトランジスタのソースは、前記正電源電圧が印加可能とされる一方、前記ミラー用第1及び第2のPMOSトランジスタの制御電極であるゲートが相互に接続されると共に、前記ミラー用第1のPMOSトランジスタのドレインと接続され、前記供給用カレントミラー回路の入力段をなす前記ミラー用第1のPMOSトランジスタのドレインは、前記バンドギャップ回路の出力端に、前記供給用カレントミラー回路の出力段をなす前記ミラー用第2のPMOSトランジスタのドレインは、前記バンドギャップ回路の入力端に、それぞれ接続され、前記ミラー用第1及び第2のPMOSトランジスタのゲートは、前記電圧変化重畳用コンデンサを介して前記正電源電圧が印加可能とされ、
前記電圧変化重畳用コンデンサの容量CX1は、
不等式CX1>{Cb1-(Iref×Δt)/ΔV}を満たし、
前記不等式におけるCb1は、前記ミラー用第1のPMOSトランジスタのドレインと前記負電源電圧間における寄生容量、前記不等式におけるIrefは、前記ミラー用第2のPMOSトランジスタのドレイン電流、前記不等式におけるΔVは、前記正電源電圧が急低下した際の低下幅、前記不等式におけるΔtは、前記正電源電圧が急低下によって前記ΔV低下する際に要した時間である低下時間幅であって、
前記ミラー用第2のPMOSトランジスタのドレイン電流は、前記ミラー用第1のPMOSトランジスタのドレイン電流と同一に設定されてなることを特徴とするバイアス電流発生回路。
【請求項3】
正電源電圧と負電源電圧との間に、バンドギャップ回路と前記バンドギャップ回路への電流供給を行う供給用カレントミラー回路が直列接続されて設けられてなるバイアス電流発生回路であって、
前記バンドギャップ回路は、カレントミラー接続状態に設けられた2つのトランジスタと、前記バンドギャップ回路の出力であるバイアス電流を決定する電流決定用抵抗器とを用いて構成され、
前記正電源電圧側から前記バンドギャップ回路、前記供給用カレントミラー回路が直列接続されて設けられる場合には、前記バンドギャップ回路を構成するトランジスタの制御電極と前記正電源電圧との間に電圧変化重畳用コンデンサが設けられる一方、
前記正電源電圧側から前記供給用カレントミラー回路、前記バンドギャップ回路が直列接続されて設けられる場合には、前記供給用カレントミラー回路を構成するトランジスタの制御電極と前記正電源電圧との間に電圧変化重畳用コンデンサが設けられてなり、
前記正電源電圧の急低下時に前記電圧変化重畳用コンデンサを介して前記正電源電圧の電圧変化を前記制御電極へ重畳せしめて前記正電源電圧の急低下に起因する前記バイアス電流の一時的停止を回避することを可能としてなり、
前記正電源電圧側から前記バンドギャップ回路、前記供給用カレントミラー回路が直列接続されて設けられる場合にあって、
前記バンドギャップ回路の2つのトランジスタにはバンドギャップ用第1及び第2のPMOSトランジスタが用いられ、前記バンドギャップ用第1及び第2のPMOSトランジスタのソースは前記正電源電圧が印加可能とされる一方、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレインと前記バンドギャップ用第2のPMOSトランジスタのゲートは相互に接続されると共に前記電流決定用抵抗器を介して前記カレントミラー回路の出力端に接続され、前記バンドギャップ用第2のPMOSトランジスタのドレインは前記カレントミラー回路の入力端に接続され、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのゲートは前記カレントミラー回路の出力段に接続されると共に前記電圧変化重畳用コンデンサを介して前記正電源電圧が印加可能とされ、
前記電圧変化重畳用コンデンサの容量CX1は、
不等式CX1>{Cb1-(Iref×Δt)/ΔV}を満たし、
前記不等式におけるCb1は、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレインと前記負電源電圧間における寄生容量、前記不等式におけるIrefは、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレイン電流、前記不等式におけるΔVは、前記正電源電圧が急低下した際の低下幅、前記不等式におけるΔtは、前記正電源電圧が急低下によって前記ΔV低下する際に要した時間である低下時間幅であって、
前記バンドギャップ用第2のPMOSトランジスタのドレイン電流は、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレイン電流と同一に設定されてなることを特徴とするバイアス電流発生回路。
【請求項4】
前記バンドギャップ用第1及び第2のPMOSトランジスタに代えてバンドギャップ用第1及び第2のバイポーラトランジスタを用い、前記バンドギャップ用第1及び第2のバイポーラトランジスタはPNPトラジスタであることを特徴とする請求項又は請求項記載のバイアス電流発生回路。
【請求項5】
前記ミラー用第1及び第2のPMOSトランジスタに代えてミラー用第1及び第2のバイポーラトランジスタを用い、前記ミラー用第1及び第2のバイポーラトランジスタはPNPトラジスタであることを特徴とする請求項記載のバイアス電流発生回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算増幅器等の電流源として用いられるバイアス電流発生回路に係り、特に、動作の安定性、信頼性の向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
バイアス電流発生回路は、演算増幅器や電源ICなどの様々なICにおいて電流源として用いられていることは良く知られている通りである。
図15には、かかるバイアス電流発生回路の従来の回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ従来のバイアス電流発生回路について説明する。
このバイアス電流発生回路は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)構成の典型的な回路で、トランジスタM1、M2にはPMOS(P-Channel Metal Oxide Semiconductor)が、トランジスタM3、M4にはNMOS(N-Channel Metal Oxide Semiconductor)が、それぞれ用いられている。
かかるバイアス電流発生回路は、トランジスタM1,M2と抵抗器R1によるバンドギャップ回路と、トランジスタM3,M4によるカレントミラー回路とに大別されて構成されたものとなっている。
【0003】
次に、この従来回路の回路動作を説明する。
電源電圧が一定に維持されている場合のトランジスタM2のドレイン電流Ioutを、トランジスタM1,M2と抵抗器R1によるバッドギャップ回路での回路ループで考えると以下のようになる。
まず、式1に示す電圧関係が成立する。
【0004】
VgsM1=VgsM2+R1×Iout・・・式1
【0005】
ここで、VgsM1は、トランジスタM1のゲート・ソース間の電位差、VgsM2は、トランジスタM2のゲート・ソース間の電位差であり、R1は、抵抗器R1の抵抗値とする。
【0006】
トランジスタM2のチャンネル幅Wとチャンネル長Lの(W/L)比がトランジスタM1の(W/L)比よりA倍大きいとして、式1を書き直すと、下記する式2を得る。
【0007】
〔2Iref/{μp・Cox・(W/L)}〕1/2+Vth=〔2Iout/{μp・Cox・A・(W/L)}〕1/2+Vth+R1×Iout・・・式2
【0008】
ここで、Irefは、トランジスタM1のドレイン電流、μpは、トランジスタM1,M2における電子の移動度、Coxは、トランジスタM1,M2の単位面積当たりの容量値、Vthは、トランジスタM1,M2の閾値電圧、Aは、トランジスタM1の(W/L)比に対するトランジスタM2の(W/L)比の割合、換言すれば、トランジスタM2の(W/L)比がトランジスタM1の(W/L)比の何倍であるかを表した値である。
【0009】
また、ここで、トランジスタM3,M4のカレントミラー回路により、Iref=Ioutとなる。したがって、トランジスタM2のドレイン電流Ioutは、下記する式3で求められる。
【0010】
Iout=Iref=(1/R1)×〔2/{μp・Cox・(W/L)}〕×(1-1/A1/2)・・・式3
【0011】
このように、従来回路は、抵抗器R1の大きさによって、所望のバイアス電流を発生させることができる回路であるということができる。
次に、この従来のバイアス電流発生回路において、正電源電圧端子VDDの電位が急激に低下した場合のトランジスタM2のドレイン電流Ioutの変化について、図16に示された波形図を参照しつつ説明する。
【0012】
まず、正電源電圧VDDが5Vとした場合に、図16(A)には、正電源電圧VDDが時刻t1において低下し始め、時間Δt経過後に2Vまで低下した場合の電圧変化が実線の特性線で示されている。
【0013】
正電源電圧VDDが5Vの場合に、トランジスタM1,M2のゲート電位V1は、トランジスタM1のゲート・ソース間の電位差が0.7V程度あることに起因して、4.3V程度となる。
一方、正電源電圧VDDが急激に低下するのに対して、ゲート電位V1は図16(B)において二点鎖線の特性線で示されたように、比較的緩慢に徐々に低下してゆく。このようにゲート電位V1が緩慢に低下してゆくのは、コンデンサC1の放電に時間を要するためである。
【0014】
正電源電圧VDDの急激な低下とゲート電位V1の緩慢な低下によって、トランジスタM1,M2のドレイン電流を流すのに必要なゲート・ソース間電位差Vgsが確保できなくなり、トランジスタM2のドレイン電流Ioutは停止してしまう(図16(C)の実線の特性線参照)。
【0015】
なお、図16(B)の時刻taにおいては、この時点におけるトランジスタM1のゲート・ソース間電位差Vgs(ta)がトランジスタM1,M2のドレイン電流を流すのに必要なゲート・ソース間電位差VgsM1より大(Vgs(ta)>VgsM1)となって、所定のゲート・ソース間電位差VgsM1が維持できない状態であることが示されている。
【0016】
その後、トランジスタM1,M2のゲート電位V1はさらに低下し、時刻t2において1.3V程度に達する(図16(B)の二点鎖線の特性線参照)。
そして、時刻t2においてトランジスタM1,M2のドレイン電流を流すために必要なゲート・ソース間電位差、0.7V程度が再び確保されると、トランジスタM2のドレイン電流Ioutが復帰することとなる(図16(B)及び図16(C)参照)。
【0017】
次に、正電源電圧VDDがどの程度の急峻さで低下した場合に、上述のような電流Ioutの停止が生ずるのかについて説明する。
結論としては、下記する式4に示されたように、正電源電圧VDDの低下時間Δtが短い場合、電流Ioutの停止が生ずることとなる。
【0018】
Δt<C1×ΔV/Iref・・・式4
【0019】
ここで、Δtは、正電源電圧VDDがVDD=5Vから2Vまで低下する低下時間であり、C1は、コンデンサC1の容量値であり、ΔVは、正電源電圧VDDの電圧低下時における電圧低下幅である。
なお、ΔVは、上述の例の場合、5V-2V=3Vである。
このように図15に示された従来のバイアス電流発生回路にあっては、正電源電圧VDDが急激に低下した場合、バイアス電流が一次的に停止するという問題がある。
【0020】
このような問題に対応する方策の一つとして、例えば、特許文献1に開示された回路がある。
図17には、特許文献1に開示された回路例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この回路例について説明する。
電源電圧の急峻な低下に対する方策が施されたこの従来回路は、先に図15に示された従来回路に、トランジスタM5とコンデンサC2を追加した構成を有するものである。
【0021】
すなわち、トランジスタM1,M2及び抵抗器R1からなるバンドギャップ回路と正電源電圧VDDとの間に、トランジスタM5が直列に設けられると共に、そのゲートと負電源電圧VSSとの間に、コンデンサC2が設けられている。
かかる構成において、正電源電圧VDDが急峻に低下した場合におけるトランジスタM1,M2のゲート電位V1、トランジスタM1のソース電位V2及びトランジスタM2のドレイン電流Ioutの変化について、図18に示された波形図を参照しつつ説明する。
【0022】
この図18は、先に図15に示された従来回路の回路動作説明に用いた図16の波形図と基本的に同様のものである。
すなわち、先ず、図18(A)には正電源電圧VDDが5Vから2Vまで急峻に低下した際の電圧変化を模式的に表した波形図が示されている。
図18(B)には、正電源電圧VDDが急峻に低下した場合のトランジスタM1のゲート電位V1及びトランジスタM1のソース電位V2の変化が二点鎖線で示されている。
図17に示された回路においては、正電源電圧VDDが急峻に低下しても、トランジスタM1のゲート電位V1は3.6V程度を維持したままであり、また、トランジスタM1のソース電位V2は4.3V程度を維持したままであり、いずれも一定電圧となっている。
【0023】
トランジスタM1のソース電位V2が一定となるのは、正電源電圧VDDが低下しても、コンデンサC2に電荷が蓄えられていることによるものである。
そのため、トランジスタM1,M2のゲート電位V1も一定に維持される。
その結果、トランジスタM1,M2のゲート・ソース間電位差Vgsが適切に保たれ、トランジスタM2のドレイン電流Ioutは停止することなく流れ続ける(図18(C)参照)。
【0024】
なお、正電源電圧VDDとトランジスタM1のソース電位V2との間に0.7V程度の電位差があるように説明したが、この電位差は、トランジスタM5のゲート・ソース間の電位差に起因するものである。
また、同様に、トランジスタM1のソース電位V2とトランジスタM1のゲート電位V1との間にも0.7V程度の電位差があるように説明したが、この電位差はトランジスタM1のゲート・ソース間電位差によるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】特許第5219876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、特許文献1に開示された回路にあっては、ダイオード接続されたトランジスタM5を設けたために、最低動作電源電圧が上昇するという問題がある。
すなわち、トランジスタM5を動作させるために電源電圧がさらに必要となり、最低動作電源電圧の上昇を招くこととなる。結局、特許文献1に開示されたバイアス電流発生回路は、急激な電源電圧の低下に対してバイアス電流の一時的な停止を回避することはできる反面、最低動作電源電圧の上昇を招くという問題がある。
【0027】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、最低動作電源電圧の上昇を招くことなく電源電圧の急激な低下が生じても安定したバイアス電流を得ることのできるバイアス電流発生回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るバイアス電流発生回路は、
正電源電圧と負電源電圧との間に、バンドギャップ回路と前記バンドギャップ回路への電流供給を行う供給用カレントミラー回路が直列接続されて設けられてなるバイアス電流発生回路であって、
前記バンドギャップ回路は、カレントミラー接続状態に設けられた2つのトランジスタと、前記バンドギャップ回路の出力であるバイアス電流を決定する電流決定用抵抗器とを用いて構成され、
前記正電源電圧側から前記バンドギャップ回路、前記供給用カレントミラー回路が直列接続されて設けられる場合には、前記バンドギャップ回路を構成するトランジスタの制御電極と前記正電源電圧との間に電圧変化重畳用コンデンサが設けられる一方、
前記正電源電圧側から前記供給用カレントミラー回路、前記バンドギャップ回路が直列接続されて設けられる場合には、前記供給用カレントミラー回路を構成するトランジスタの制御電極と前記正電源電圧との間に電圧変化重畳用コンデンサが設けられてなり、
前記正電源電圧の急低下時に前記電圧変化重畳用コンデンサを介して前記正電源電圧の電圧変化を前記制御電極へ重畳せしめて前記正電源電圧の急低下に起因する前記バイアス電流の一時的停止を回避することを可能としてなり、
前記正電源電圧側から前記バンドギャップ回路、前記供給用カレントミラー回路が直列接続されて設けられる場合にあって、
前記バンドギャップ回路の2つのトランジスタにはバンドギャップ用第1及び第2のPMOSトランジスタが用いられ、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのソースには前記正電源電圧が、前記バンドギャップ用第2のPMOSトランジスタのソースには前記電流決定用抵抗器を介して前記正電源電圧が、それぞれ印加可能とされ、前記バンドギャップ用第1及び第2のPMOSトランジスタの制御電極であるゲートが相互に接続されると共に、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレインと接続され、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレインは前記供給用カレントミラー回路の出力端に、前記バンドギャップ用第2のPMOSトランジスタのドレインは前記供給用カレントミラー回路の入力端に、それぞれ接続され、前記バンドギャップ用第1及び第2のPMOSトランジスタのゲートは、前記電圧変化重畳用コンデンサを介して前記正電源電圧が印加可能とされ、
前記電圧変化重畳用コンデンサの容量CX1は、
不等式CX1>{Cb1-(Iref×Δt)/ΔV}を満たし、
前記不等式におけるCb1は、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレインと前記負電源電圧間における寄生容量、前記不等式におけるIrefは、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレイン電流、前記不等式におけるΔVは、前記正電源電圧が急低下した際の低下幅、前記不等式におけるΔtは、前記正電源電圧が急低下によって前記ΔV低下する際に要した時間である低下時間幅であって、
前記バンドギャップ用第2のPMOSトランジスタのドレイン電流は、前記バンドギャップ用第1のPMOSトランジスタのドレイン電流と同一に設定されてなるものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、正電源電圧の急低下が生じた際に、その電圧変化が、最低動作電源電圧の上昇を招くことなくバンドギャップ回路、又は、バンドギャップ回路への電流供給を行う供給用カレントミラー回路を構成するトランジスタの制御電極に重畳されるよう構成したので、正電源電圧の急低下が生じても、従来回路と異なり、バンドギャップ回路の出力電流の一時的な停止を招くことなく安定した出力状態を維持することができ、しかも、最低動作電源電圧の上昇を招くことのない信頼性、安定性の高いバイアス電流発生回路を提供することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施の形態におけるバイアス電流発生回路の第1の回路構成例を示す回路図である。
図2図1に示された第1の回路構成例において正電源電圧VDDが低下する際の主要な電流の経路を示した回路図である。
図3図1に示された第1の回路構成例における起動回路を他の構成の起動回路に変更した場合の回路図である。
図4図1に示された第1の回路構成例におけるNMOSカレントミラー回路を他の任意の構成のカレントミラー回路に置換可能であることを示した回路図である。
図5図1に示された第1の回路構成例におけるCMOSトランジスタをバイポーラトランジスタに置換した回路図である。
図6】本発明の実施の形態におけるバイアス電流発生回路の第2の回路構成例を示す回路図である。
図7図6に示された第2の回路構成例におけるNMOSバンドギャップ回路を他の任意の構成のバンドギャップ回路に置換可能であることを示した回路図である。
図8図6に示された第2の回路構成例におけるCMOSトランジスタをバイポーラトランジスタに置換した回路図である。
図9】本発明の実施の形態におけるバイアス電流発生回路の第3の回路構成例を示す回路図である。
図10図9に示された第3の回路構成例におけるNMOSカレントミラー回路を他の任意の構成のカレントミラー回路に置換可能であることを示した回路図である。
図11図9に示された第3の回路構成例におけるCMOSトランジスタをバイポーラトランジスタに置換した回路図である。
図12】本発明の実施の形態における第1の回路構成例及び第3の回路構成例における回路構成の概念を模式的に示した回路図である。
図13】本発明の実施の形態における第2の回路構成例における回路構成の概念を模式的に示した回路図である。
図14】本発明の実施の形態におけるバイアス電流発生回路において正電源電圧が急激に低下した場合の主要部の波形を模式的に示した波形図であって、図14(A)は正電源電圧端子に印加された正電源電圧の急激な電圧低下が生じた場合の時間経過に対する電圧変化の一例を模式的に示した波形図、図14(B)は正電源電圧の低下に伴うバンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタのゲート電圧の変化例を模式的に示した波形図、図14(C)は正電源電圧が低下した場合のバンドギャップ用第2のMOSトランジスタのドレイン電流Ioutの電流変化の一例を模式的に示した波形図である。
図15】従来のバイアス電流発生回路の一例を示す回路図である。
図16図15に示された従来回路において、正電源電圧が急激に低下した場合における主要部の波形を模式的に示した波形図であって、図16(A)は正電源電圧端子に印加された正電源電圧が急激に低下した場合の時間経過に対する電圧変化の一例を模式的に示した波形図、図16(B)は正電源電圧の低下に伴うトランジスタM1,M2のゲート電圧の変化例を模式的に示した波形図、図16(C)は正電源電圧が低下した場合のトランジスタM2のドレイン電流Ioutの電流変化の一例を模式的に示した波形図である。
図17】従来のバイアス電流発生回路の他の構成例を示す回路図である。
図18図17に示された他の従来回路において、正電源電圧が急激に低下した場合の主要部の波形を模式的に示した波形図であって、図18(A)は正電源電圧の急激な電圧低下が生じた場合の時間経過に対する電圧変化の一例を模式的に示した波形図、図18(B)は正電源電圧の低下に伴うトランジスタM1,M2のゲート電圧及びトランジスタM2のソース電位の変化例を模式的に示した波形図、図18(C)は正電源電圧が急激に低下した場合のトランジスタM2のドレイン電流Ioutの電流変化の一例を模式的に示した波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図14を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、第1の回路構成例について、図1を参照しつつ説明する。
この第1の回路構成例におけるバイアス電流発生回路は、バンドギャップ回路101と、供給用カレントミラー回路(図1においては「CM1」と表記)102と、起動回路(図1においては「ST1」と表記)103とに大別されて構成されたものとなっている。
また、この回路構成例においては、正電源電圧VDDと負電源電圧VSSとの間に、正電源電圧VDD側からバンドギャップ回路101、供給用カレントミラー回路102が直列接続されて設けられた構成となっている。
【0032】
バンドギャップ回路101は、後述するようにカレントミラー接続状態で設けられたバンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ(図1においては、それぞれ「M1」、「M2」と表記)1,2と、第1の抵抗器(図1においては「R1」と表記)31とを有して構成されている。
この第1の回路構成例において、バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1,2には、PMOS(P-Channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタが用いられている。
【0033】
バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1のソースは、正電源電圧端子41に接続される一方、バンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2のソースは、第1の抵抗器31を介して正電源電圧端子41に接続されている。
すなわち、この回路構成例において、第1の抵抗器31は、カレントミラー接続の出力段となるバンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2に接続されて、バイアス電流の大きさを決定する電流決定用抵抗器として機能するものとなっている。
また、バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1,2のゲートは相互に接続されて、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1のドレインと接続されると共に、このゲート同士の接続点と正電源電圧端子41との間に、電圧変化重畳用コンデンサ(図1においては「CX1」と表記)35が接続されている。
【0034】
さらに、バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1,2の各々のドレインは、次述するように供給用カレントミラー回路102に接続されている。
供給用カレントミラー回路102は、ミラー用第1及び第2のMOSトランジスタ(図1においては、それぞれ「M3」、「M4」と表記)3,4を有して構成されている。
この第1の回路構成例において、ミラー用第1及び第2のMOSトランジスタ3,4には、NMOS(N-Channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタが用いられている。
【0035】
ミラー用第1及び第2のMOSトランジスタ3,4は、ゲートが相互に接続されると共に、ミラー用第1のMOSトランジスタ3のドレインと接続されている。ミラー用第1のMOSトランジスタ3は、いわゆるダイオード接続されて設けられている。
ミラー用第2のMOSトランジスタ4のドレインには、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1のドレインが、ミラー用第1のMOSトランジスタ3のドレインには、バンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2のドレインが、それぞれ接続されている。
【0036】
そして、ミラー用第1及び第2のMOSトランジスタ3,4のソースは、負電源電圧端子42に接続されている。
かかる構成において、ミラー用第1のMOSトランジスタ3は供給用カレントミラー回路102の入力段を、ミラー用第2のMOSトランジスタ4は供給用カレントミラー回路102の出力段を、それぞれ構成している。
【0037】
起動回路103は、第11乃至第13のMOSトランジスタ(図1においては、それぞれ「M11」、「M12」、「M13」と表記)11~13を有して構成されている。
この第1の回路構成例において、第11のMOSトランジスタ11にはPMOSトランジスタが、第12及び第13のMOSトランジスタ12,13には、NMOSトランジスタが、それぞれ用いられている。
【0038】
第11及び第12のMOSトランジスタ11,12は、ドレインが相互に接続される一方、第11のMOSトランジスタ11のソースは正電源電圧端子41に、第12のMOSトランジスタ12のソースは負電源電圧端子42に、それぞれ接続されている。
また、第11及び第12のMOSトランジスタ11,12のゲートは相互に接続されると共に、先のバンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2とミラー用第1のMOSトランジスタ3のドレイン同士の接続点に接続されている。
【0039】
さらに、第11及び第12のMOSトランジスタ11,12のドレイン同士の接続点には、第13のMOSトランジスタ13のゲートが接続されている。
そして、第13のMOSトランジスタ13のドレインは、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1とミラー用第2のMOSトランジスタ4のドレイン同士の接続点に接続される一方、第13のMOSトランジスタ13のソースは、負電源電圧端子42に接続されている。
なお、図1においては、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1とミラー用第2のMOSトランジスタ4のドレイン同士の接続点と負電源電圧端子42との間に生ずる寄生容量を「Cb1」と表記すると共に符号36を付している。
【0040】
次に、かかる構成における回路動作、特に、正電源電圧の低下時の動作について、図14に示された波形図を参照しつつ説明する。
まず、図14(A)に示されたように、正電源電圧VDDが印加された後、時刻t1において急低下したとする。なお、この動作例において、正電源電圧VDD=5Vとし、電圧低下により正電源電圧VDDは2Vまで低下すると仮定する。
また、5Vから2Vに低下するまでに要した短い時間を低下時間幅Δtとする。
【0041】
正電源電圧VDDが低下し始めると、バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1,2のゲート電位V1は、図14(B)において二点鎖線の特性線で示されたように、VDDの低下に追従して低下してゆく。
このようにゲート電位V1が正電源電圧VDDの低下に追従するのは、電圧変化重畳用コンデンサ35を介して正電源電圧VDDの変化がAC(Alternating Current)的にゲート電位V1に重畳されるためである。
【0042】
その結果、バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1,2のゲート・ソース間電位差Vgsが正電源電圧VDDの変化の前後に拘わらずほぼ一定に維持される。そして、バンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2のドレイン電流Ioutは、従来と異なり、正電源電圧VDDの急低下が生じても一時的に停止することなく、ほぼ一定に維持されることとなる(図14(C)参照実線の特性線参照)。なお、図14(B)においてはバンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1のゲート・ソース間電位差をVgsM1と表記している。
【0043】
次に、電圧変化重畳用コンデンサ35の容量値をどの程度に設定すべきかについて、図2を参照しつつ説明する。
図2は、寄生容量36から流れ出る放電電流Ib1の流れと電圧変化重畳用コンデンサ35に流れ込むコンデンサ流入電流IX1の流れを、第1の回路構成例に模式的に示した回路図である。
この2つの放電電流Ib1とコンデンサ流入電流IX1は、正電源電圧VDDが急激に低下(急低下)した際に発生する電流である。
【0044】
コンデンサ流入電流IX1は、電圧変化重畳用コンデンサ35に流れ込むことで、バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1,2のゲート電位V1を引き下げる作用を果たす。
バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1及びミラー用第2のMOSトランジスタ4のドレイン電流Irefと、バンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2のドレイン電流Ioutの相関関係は、従来回路と同様であり、先に説明した式3で表されるが、ここで、再掲すれば、下記の通りである。
【0045】
Iout=Iref=(1/R1)×〔2/{μp・Cox・(W/L)}〕×(1-1/A1/2)・・・式3
【0046】
そして、放電電流Ib1、コンデンサ流入電流IX1及びドレイン電流Irefの間に、下記する式5の関係が成立する場合に、バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1,2のゲート電位V1は正電源電圧VDDの急低下に追従することができる。
【0047】
Ib1<Iref+IX1・・・式5
【0048】
この式5は、寄生容量36の放電電流Ib1を、ドレイン電流Irefと電圧変化重畳用コンデンサ35に流れ込むコンデンサ流入電流IX1で補うことができれば、バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1,2のゲート電位V1は、正電源電圧VDDの急低下に追従可能であることを意味するものである。
【0049】
ここで、放電電流Ib1は下記する式6により、コンデンサ流入電流IX1は下記する式7により、それぞれ表すことができる。
【0050】
Ib1=Cb1×ΔV/Δt・・・式6
【0051】
IX1=CX1×ΔV/Δt・・・式7
【0052】
なお、Cb1は寄生容量36の容量値、ΔVは正電源電圧VDDの電圧低下の幅(電圧低下幅)である。なお、ΔVは、正常時の正電源電圧VDD=5Vとし、正電源電圧VDD低下時の正電源電圧を2Vとした先の例の場合、ΔV=3Vとなる(図14(A)参照)。
また、Δtは、正電源電圧VDDがΔV低下するのに要した時間、すなわち低下時間幅である(図14(A)参照)。
【0053】
この式6、式7を用いて式5を書き換えると、下記する式8となる。
【0054】
Cb1×ΔV/Δt<Iref+CX1×ΔV/Δt・・・式8
【0055】
次いで、この式8を電圧変化重畳用コンデンサ35について解くことで、その必要な容量値を得ることがきる。
【0056】
CX1>Cb1-Iref×Δt/ΔV・・・式9
【0057】
この第1の回路構成例においては、式9を満たす電圧変化重畳用コンデンサ35を設けることで、正電源電圧VDDの急下降時にバンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1,2のゲート電位V1を正電源電圧VDDの急下降に追従させることが可能となる。
その結果、バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1,2のゲート・ソース間電位差が維持され、バンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2のドレイン電流Ioutは、正電源電圧VDDの急低下が生じても一時的に停止することなく流れ続けることとなる。
【0058】
次に、起動回路103について説明する。
まず、図15に示された従来回路にあっては、コンデンサC1が起動回路として機能を果たしている。
これに対して、第1の回路構成例における起動回路103は、いわゆるインバータ形式の回路が用いられており、以下、その理由について説明する。
まず、第1の回路構成例における寄生容量36は、図15に示された起動回路として機能するコンデンサC1と同様なノード間に存在しているが、従来回路と異なり起動回路として機能するものではない。
【0059】
すなわち、この寄生容量36を起動回路として機能させようとすると、その容量値Cb1は下記する式10を満足するものであることが必要となる。
【0060】
Cb1>CX1×VgsM1/V1・・・式10
【0061】
ここで、VgsM1は、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1のゲート・ソース間電位差である。
仮に、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1のゲート・ソース間電位差VgsM1を0.7Vとした場合、各電源電圧での寄生容量36の容量値Cb1の条件は、以下、(a)~(e)に例示した通りとなる。
【0062】
(a)VDD=5VでCb1>0.16CX1
【0063】
(b)VDD=3VでCb1>0.30CX1
【0064】
(c)VDD=1.8VでCb1>0.64CX1
【0065】
(d)VDD=1.4VでCb1>1.00CX1
【0066】
(e)VDD=1.0VでCb1>2.33CX1
【0067】
このように、正電源電圧VDDが低くなるにつれて必要となる容量値Cb1が大きくなる。
この第1の回路構成例のバイアス電流発生回路は、抵抗やトランジスタの各素子の定数にもよるが、正電源電圧VDD=1.4V以下も使用範囲として考え得るため、容量値Cb1は下記する式11の条件を満たす必要がある。
【0068】
Cb1>CX1・・・式11
【0069】
一方で、正電源電圧が急激に低下した場合の電圧変化重畳用コンデンサ35の容量値CX1の条件は、式9に示された通りであった。
この式9において、容量値CX1がとり得る最小値は、Iref≒0Aとして、下記する式12で近似される。
【0070】
CX1>Cb1・・・式12
【0071】
本発明の実施の形態において、仮に、寄生容量36を起動回路として機能させようとした場合、式11と式12の双方を満たす必要があるが、これらの2式は相反する条件を定めるものであるので、これら2式を同時に満たすことはできない。したがって、本発明に実施の形態におけるバイアス電流発生回路においては、従来回路(図17参照)のようにコンデンサC2を起動回路として機能させる構成を採ることはできない。
このため、本発明の実施の形態における起動回路103は、先に述べたようにインバータ形式の回路構成を採っている。
【0072】
なお、ここで、正電源電圧VDDが正常な状態で印加された場合の起動回路103の動作について概括的に説明する。
正電源電圧VDDが印加された直後においてバンドギャップ回路101及び供給用カレントミラー回路102が未だ動作停止状態にあるときに、第12のMOSトランジスタ12はオフ状態となる一方、第11のMOSトランジスタ11はオン状態となる。
その結果、第11及び第12のMOSトランジスタ11,12により構成されるインバータの出力が論理値Highに対応する電圧レベルとなる。
【0073】
そのため、第13のMOSトランジスタ13がオン状態となり、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1から第13のMOSトランジスタ13に電流が引き込まれてバンドギャップ回路101及び供給用カレントミラー回路102が起動する。
バンドギャップ回路101及び供給用カレントミラー回路102の起動後、ミラー用第1のMOSトランジスタ3のゲート電位が上昇するため、第11及び第12のMOSトランジスタ11,12で構成されるインバータの出力が論理値Lowに対応する電圧レベルとなる。その結果、第13のMOSトランジスタ13がオフ状態となり、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1からの電流引き込みが停止され、バンドギャップ回路101及び供給用カレントミラー回路102は通常の動作状態となる。
【0074】
なお、起動回路103は、必ずしもインバータ形式に限定されるものではなく、種々変更して良いことは勿論である。
例えば、図1に示された第11のMOSトランジスタ11に代えて、図3に示されたように第11の抵抗器(図3においては「R11」と表記)32を用いた構成としても良い。
【0075】
以下、図3を参照しつつ、起動回路(図3においては「ST2」と表記)103Aの回路構成について説明する。
なお、図1に示された第1の回路構成例における構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
第11の抵抗器32の一端は、正電源電圧端子41に接続される一方、他端は、第12のMOSトランジスタ12のドレイン及び第13のMOSトランジスタ13のゲートに接続されている。なお、第12及び第13のMOSトランジスタ12,13の他の接続部分は、図1に示された回路構成例と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
かかる構成における動作は、図1に示されたインバータ形式の起動回路103と基本的に同様であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
【0076】
また、従来回路(図17参照)の場合、電源電圧の急峻な低下に対する方策のためにトランジスタM5を設けたことで、最低動作電源電圧が上昇する問題があった。これに対して、本発明の実施の形態におけるバイアス電流発生回路にあっては、従来回路のトランジスタM5に相当するものを設けることなく回路構成されているため、最低動作電源電圧の上昇を招くことなく、正電源電圧VDDの急激な低下に対してバンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2のドレイン電流Ioutの一時的な低下を招くことなく安定した出力状態に維持可能となる。
【0077】
なお、本発明の実施の形態においては、バンドギャップ回路101への電流供給を担う供給用カレントミラー回路102として、ミラー用第1及び第2のMOSトランジスタ3,4を用いた基本的な構成のものを用いたが、供給用カレントミラー回路102の具体的な回路構成は、必ずしも、このような基本的な回路構成に限定される必要はなく、他の良く知られている構成としても良いことは勿論である(図4参照)。
図4において、起動回路103は省略されており、供給用カレントミラー回路102の出力端T1は、図3におけるミラー用第2のMOSトランジスタ4のドレインに相当し、入力端T2は、ミラー用第1のMOSトランジスタ3のドレインに相当する。
【0078】
上述した第1の回路構成例においては、バンドギャップ回路101にCMOSトランジスタを用いたが、CMOSトランジスタを用いた構成に限定される必要はなく、例えば、バイポーラトランジスタを用いた構成としても良い。
図5には、バイポーラトランジスタを用いたバンドギャップ回路101Aの具体的な回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この回路について説明する。
なお、図1に示された第1の回路構成例における構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。また、図5において、起動回路103は省略されている。
【0079】
このバンドギャップ回路101Aにおいては、図1におけるバンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1に代えてバンドギャップ用第1のバイポーラトランジスタ(図5においては「Q1」と表記)21が、バンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2に代えてバンドギャップ用第2のバイポーラトランジスタ(図5においては「Q2」と表記)22が、それぞれ用いられている。
この回路構成例において、バンドギャップ用第1及び第2のバイポーラトランジスタ21,22には、PNPトランジスタが用いられている。
【0080】
以下、具体的な回路接続について説明する。
バンドギャップ用第1及び第2のバイポーラトランジスタ21,22は、各々の制御電極としてのベースが相互に接続されると共に、バンドギャップ用第1のバイポーラトランジスタ21のコレクタと接続されている。
バンドギャップ用第1及び第2のバイポーラトランジスタ21,22の各ベースと正電源電圧端子41との間には、電圧変化重畳用コンデンサ35が接続されている。
【0081】
また、バンドギャップ用第1のバイポーラトランジスタ21のエミッタは正電源電圧端子41に、バンドギャップ用第2のバイポーラトランジスタ22のエミッタは第1の抵抗器31を介して正電源電圧端子41に、それぞれ接続されている。
さらに、バンドギャップ用第1のバイポーラトランジスタ21のコレクタは、供給用カレントミラー回路102の出力端に、バンドギャップ用第2のバイポーラトランジスタ22のコレクタは、供給用カレントミラー回路102の入力端に、それぞれ接続されている。
なお、かかる構成における回路動作は、図1を参照しつ説明した回路動作と基本的に同様であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
【0082】
次に、第2の回路構成例について、図6を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された第1の回路構成例における構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の回路構成例は、NMOSトランジスタを用いたバンドギャップ回路(図6においては「BG1」と表記)101Bと、PMOSトランジスタを用いた供給用カレントミラー回路102Aを有してなるものである。
また、この第2の回路構成例は、正電源電圧VDD側から供給用カレントミラー回路102A、バンドギャップ回路101Bが直列接続されて設けられた構成となっている。
【0083】
バンドギャップ回路101Bは、バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ(図6においては、それぞれ「M1B」、「M2B」表記)1b,2bと第1の抵抗器31を有して構成されている。
バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1b,2bは、カレントミラー接続状態で設けられている。
すなわち、まず、バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1b,2bは、ゲートが相互に接続されると共に、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1bのドレインに接続されている。
【0084】
また、バンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2bのソースは、第1の抵抗器31を介して負電源電圧端子42に、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1bのソースは負電源電圧端子42に、それぞれ接続されている。
そして、バンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2bのドレインは、次述する供給用カレントミラー回路102Aの入力段に、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1bのドレインは、供給用カレントミラー回路102Aの出力段に、それぞれ接続されている。
【0085】
供給用カレントミラー回路102Aは、ミラー用第1及び第2のMOSトランジスタ(図6においては、それぞれ「M3A」、「M4A」と表記)3a,4aを用いて構成されている。
すなわち、ミラー用第1及び第2のMOSトランジスタ3a,4aは、ゲートが相互に接続されると共に、ミラー用第1のMOSトランジスタ3aのドレインに接続されている。
【0086】
ミラー用第1及び第2のMOSトランジスタ3a,4aのソースは、共に正電源電圧端子41に接続されている。一方、ミラー用第1のMOSトランジスタ3aのドレインは、バンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2bのドレインに、ミラー用第2のMOSトランジスタ4aのドレインは、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1bのドレインに、それぞれ接続されている。
また、ミラー用第1及び第2のMOSトランジスタ3a,4aのゲートと正電源電圧端子41との間に、電圧変化重畳用コンデンサ35が接続されている。
なお、図6においては、ミラー用第1及び第2のMOSトランジスタ3a,4aのゲート電位を”V1a”と表記してある。このゲート電位V1aは、図1に示された第1の回路構成例におけるゲート電位V1に対応するものである。
【0087】
この第2の回路構成例における回路動作や電圧変化重畳用コンデンサ35の容量値の設定条件は、第1の回路構成例と基本的に同様であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
なお、バンドギャップ回路101Bは、必ずしもバンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1b,2b及び第1の抵抗器31を用いた構成に限定される必要はなく、他の回路構成であっても良い(図7参照)。
図7において、起動回路103は省略されており、バンドギャップ回路101Bの入力端T4は、図6におけるバンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1bのドレインに相当し、出力端T3は、バンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2bのドレインに相当する。
【0088】
また、カレントミラー回路は、MOSトランジスタを用いた構成に限定される必要はなく、バイポーラトランジスタを用いた構成としても良い。
図8には、バイポーラトランジスタを用いた供給用カレントミラー回路102Bの回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ説明する。
なお、図6図7に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
【0089】
図8の回路構成例において、供給用カレントミラー回路102Bは、ミラー用第1及び第2のバイポーラトランジスタ(図8においては、それぞれ「Q1B」、「Q2B」と表記)21b,22bを用いて構成されている。
この回路構成例において、ミラー用第1及び第2のバイポーラトランジスタ21b,22bには、PNPトランジスタが用いられている。
【0090】
具体的には、ミラー用第1及び第2のバイポーラトランジスタ21b,22bは、各々の制御電極としてのベースが相互に接続されると共に、ミラー用第1のバイポーラトランジスタ21bのコレクタと接続されている。
また、ミラー用第1及び第2のバイポーラトランジスタ21b,22bのエミッタは、共に正電源電圧端子41に接続されており、ミラー用第1のバイポーラトランジスタ21bは入力段を、ミラー用第2のバイポーラトランジスタ22bは出力段を、それぞれ構成するものとなっている。
【0091】
そして、ミラー用第1及び第2のバイポーラトランジスタ21b,22bのコレクタは、それぞれバンドギャップ回路101Bに接続されている。
なお、電圧変化重畳用コンデンサ35は、ミラー用第1及び第2のバイポーラトランジスタ21b,22bのベースと正電源電圧端子41との間に接続されている。
【0092】
次に、第3の回路構成例について、図9を参照しつつ説明する。
なお、図1図6に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第3の回路構成例は、バンドギャップ回路101Cの構成が次述するように第1の回路構成例における構成と異なる点を除けば、他の構成部分は基本的に第1の回路構成例と同一である。
【0093】
以下、バンドギャップ回路101Cの具体的回路構成について説明する。
バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1C,2Cのソースは、共に正電源電圧端子41に接続されている。一方、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1Cのドレインは第1の抵抗器31を介してミラー用第2のMOSトランジスタ4のドレインに、バンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2Cのドレインはミラー用第1のMOSトランジスタ3のドレインに、それぞれ接続されている。
【0094】
また、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1Cのゲートは第1の抵抗器31とミラー用第2のMOSトランジスタ4との接続点に接続される一方、正電源電圧端子41との間には、電圧変化重畳用コンデンサ35が接続されている。
またさらに、バンドギャップ用第2のMOSトランジスタ2Cのゲートは、バンドギャップ用第1のMOSトランジスタ1Cのドレインに接続されている。
【0095】
なお、かかる構成における回路動作や電圧変化重畳用コンデンサ35の容量値の設定条件は、第1の回路構成例と基本的に同様であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
なお、供給用カレントミラー回路102は、必ずしもミラー用第1及び第2のMOSトランジスタ3,4を用いた構成に限定される必要はなく、他の回路構成であっても良い(図10参照)。
【0096】
また、上述した第3の回路構成例においては、バンドギャップ回路101CにCMOSトランジスタを用いたが、CMOSトランジスタを用いた構成に限定される必要はなく、例えば、バイポーラトランジスタを用いた構成としても良い。
図11には、バイポーラトランジスタを用いたバンドギャップ回路101Dの具体的な回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この回路について説明する。
なお、図1図9に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
【0097】
まず、この図11に示された回路例においては、バンドギャップ用第1及び第2のバイポーラトランジスタ(図11においては、それぞれ「Q1D」、「Q2D」と表記)21d,22dには、PNPトランジスタが用いられている。
バンドギャップ用第1及び第2のバイポーラトランジスタ21d,22dのエミッタは、共に正電源電圧端子41に接続されている。一方、バンドギャップ用第1のバイポーラトランジスタ21dのコレクタは第1の抵抗器31を介して供給用カレントミラー回路102の出力端に、バンドギャップ用第2のバイポーラトランジスタ22dのコレクタは供給用カレントミラー回路102の入力端に、それぞれ接続されている。
【0098】
また、バンドギャップ用第1のバイポーラトランジスタ21dのベースは第1の抵抗器31と供給用カレントミラー回路102との接続点に接続される一方、正電源電圧端子41との間には、電圧変化重畳用コンデンサ35が接続されている。
またさらに、バンドギャップ用第2のバイポーラトランジスタ22dのベースは、バンドギャップ用第1のバイポーラトランジスタ21dのコレクタに接続されている。
【0099】
なお、かかる構成における回路動作や電圧変化重畳用コンデンサ35の容量値の設定条件は、第1の回路構成例と基本的に同様であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
【0100】
次に、図12及び図13を参照しつつ、上述した本発明の実施の形態におけるバイアス電流発生回路における発明の概念について概括的に説明する。
なお、図1図6、又は図9のいずれかの回路構成例における構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
最初に、図12は、第1の回路構成例(図1)及び第3の回路構成例(図9)のように正電源電圧側にバンドギャップ回路が設けられる場合における発明の概念を模式的に示した回路構成図である。
【0101】
まず、第1及び第3の回路構成例における発明の要旨は、正電源電圧VDDの急激な低下が生じた場合、バンドギャップ回路を構成するMOSトランジスタのゲート電圧V1を正電源電圧VDDに追従させて低下させることにある。
図12においては、バンドギャップ用第1及び第2のMOSトランジスタ1,2のゲート付近に、正電源電圧VDDの急激な低下に追従して低下するゲート電位V1の電圧波形が模式的に示されている。かかる模式的な電圧波形の表記によって、第1及び第3の回路構成例においては、正電源電圧VDDの低下と共にゲート電圧V1を低下させる手段が設けられることが概念的に示されている。
【0102】
次に、図13は第2の回路構成例(図6)のように正電源電圧側に供給用カレントミラー回路が設けられる場合における発明の概念を模式的に示した回路構成図である。
まず、第2の回路構成例における発明の要旨は、正電源電圧VDDの急激な低下が生じた場合、供給用カレントミラー回路102Aを構成するMOSトランジスタのゲート電圧V1aを正電源電圧VDDに追従させて低下させることにある。
図13においては、ミラー用第1及び第2のMOSトランジスタ3a,4aのゲート付近に、正電源電圧VDDの急激な低下に追従して低下するゲート電位V1aの電圧波形が模式的に示されている。かかる模式的な電圧波形の表記によって、第2の回路構成例においては、正電源電圧VDDの低下と共にゲート電圧V1aを低下させる手段が設けられることが概念的に示されている。
【産業上の利用可能性】
【0103】
最低動作電源電圧の上昇を招くことなく電源電圧の急激な低下に影響されることなく安定したバイアス電流出力が所望されるバイアス電流発生回路に適用できる。
【符号の説明】
【0104】
35…電圧変化重畳用コンデンサ
101,101A,101B,101C,101D…バンドギャップ回路
102,102A,102B…供給用カレントミラー回路
103,103A…起動回路
図1
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