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特許7451442EUV用ペリクルフレームの通気構造、EUV用ペリクル、EUV用ペリクル付露光原版、露光方法及び半導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】EUV用ペリクルフレームの通気構造、EUV用ペリクル、EUV用ペリクル付露光原版、露光方法及び半導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/64 20120101AFI20240311BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G03F1/64
H01L21/68 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021016290
(22)【出願日】2021-02-04
(62)【分割の表示】P 2017196982の分割
【原出願日】2017-10-10
(65)【公開番号】P2021073536
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-03-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】簗瀬 優
【合議体】
【審判長】秋田 将行
【審判官】安藤 達哉
【審判官】松川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0089814(US,A1)
【文献】特開2000-292909(JP,A)
【文献】国際公開第2016/043292(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/094197(WO,A1)
【文献】特開2015-18228(JP,A)
【文献】特開2017-83791(JP,A)
【文献】国際公開第2008/105531(WO,A1)
【文献】特開2017-83806(JP,A)
【文献】特表2016-539372(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178250(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/174412(WO,A1)
【文献】特開2004-354720(JP,A)
【文献】特開2005-241698(JP,A)
【文献】実開昭61-173942(JP,U)
【文献】特開平2-287355(JP,A)
【文献】米国特許第5814381(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/20 - 1/86
G03F 7/20 - 7/24
G03F 9/00 - 9/02
H01L21/027
H01L21/30
B65D85/30 -85/48
B65D85/86
B65D85/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクルの内側と外側とを通気するための通気構造であって、厚みが2.5mm未満であり、シリコン結晶からなる二つの端面を有する四角形枠状のペリクルフレームの一方の端面の各辺に設けられた外側面から内側面まで伸びる凹部により外側面と内側面とにそれぞれ開口部が形成されており、外側面に形成された開口部と内側面に形成された開口部とが通気孔として機能し、上記凹部の高さが上記ペリクルフレームの厚みの30%以下であり、外側面における上記開口部の面積の合計は40mm 2 以上であることを特徴とするEUV用ペリクルの通気構造。
【請求項2】
上記ペリクルフレームの外側面から内側面まで伸びる凹部内部には、フィルタ等の部材が一切配置されておらず空間が維持されている請求項1記載のEUV用ペリクルの通気構造。
【請求項3】
フィルタが設けられない、又は上記ペリクルフレームの外側面若しくは内側面にフィルタが設けられる請求項1又は2記載のEUV用ペリクルの通気構造。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項記載のEUV用ペリクルの通気構造を構成要素として含むことを特徴とするEUV用ペリクル。
【請求項5】
請求項記載のEUV用ペリクルを露光原版に装着したEUV用ペリクル付露光原版。
【請求項6】
請求項記載のEUV用ペリクル付露光原版を用いてEUV露光することを特徴とする露光方法。
【請求項7】
請求項記載のEUV用ペリクル付露光原版を用いてEUV露光することを特徴とする半導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ用フォトマスクにゴミ除けとして装着されるペリクルフレーム、ペリクル及びペリクルの剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIのデザインルールはサブクオーターミクロンへと微細化が進んでおり、それに伴って、露光光源の短波長化が進んでいる。すなわち、露光光源は水銀ランプによるg線(436nm)、i線(365nm)から、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)などに移行しており、さらには主波長13.5nmのEUV(Extreme Ultra Violet)光を使用するEUV露光が検討されている。
【0003】
LSI、超LSIなどの半導体製造又は液晶表示板の製造においては、半導体ウエハまたは液晶用原板に光を照射してパターンを作製するが、この場合に用いるリソグラフィ用フォトマスク及びレチクル(以下、総称して「露光原版」と記述する)にゴミが付着していると、このゴミが光を吸収したり、光を曲げてしまうために、転写したパターンが変形したり、エッジが粗雑なものとなるほか、下地が黒く汚れたりして、寸法、品質、外観などが損なわれるという問題があった。
【0004】
これらの作業は、通常クリーンルームで行われているが、それでも露光原版を常に清浄に保つことは難しい。そこで、露光原版表面にゴミよけとしてペリクルを貼り付けた後に露光をする方法が一般に採用されている。この場合、異物は露光原版の表面には直接付着せず、ペリクル上に付着するため、リソグラフィ時に焦点を露光原版のパターン上に合わせておけば、ペリクル上の異物は転写に無関係となる。
【0005】
このペリクルの基本的な構成は、ペリクルフレームの上端面に露光に使われる光に対し透過率が高いペリクル膜が張設されるとともに、下端面に気密用ガスケットが形成されているものである。気密用ガスケットは一般的に粘着剤層が用いられる。ペリクル膜は、露光に用いる光(水銀ランプによるg線(436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)等)を良く透過させるニトロセルロース、酢酸セルロース、フッ素系ポリマーなどからなるが、EUV露光用では、ペリクル膜として極薄シリコン膜や炭素膜が検討されている。
【0006】
ペリクルはフォトマスクに装着して使用されるが、ペリクル膜の汚れがひどくなった場合や、ペリクル膜が破損した場合等には、ペリクルをフォトマスクから剥離する必要がある。このため、ペリクルフレームの外側面には、剥離治具を挿入するために直径1mm程度の窪み(治具穴)が設けられている。例えば、下記の特許文献1には、治具穴に剥離治具に設けられたピンを差し込んで、この原理を利用して剥離する方法が開示されている。
【0007】
ところで、EUV露光用のペリクルフレームには、露光装置の都合上、いくつかの制限がある。EUV露光装置内のペリクル配置スペースが小さいために、ペリクルの高さを2.5mm以下にする必要がある。また、ペリクルはEUV露光中に高温にさらされる可能性があるため、EUV用のペリクルフレームは、EUV用ペリクル膜と同等か、それ以下の線膨張係数を持つ材質が好ましい。
【0008】
EUV用ペリクルの高さは2.5mm以下にする必要があることから、ペリクルフレームの厚みはそれよりも小さくなるが、このようなペリクルフレームの外側面に直径1mmの治具穴を設けようとした場合、ペリクルフレームの治具穴近傍が薄くなってしまう。そのため、治具穴の加工時やペリクルの剥離時には、ペリクルフレームが破損する懸念がある。この問題を回避するために、治具穴の直径を小さくすることも考えられるが、その場合は、確実に剥離を行うために治具穴の数を増やす必要がある。そうすると、加工時に破損する可能性が高まって、結局のところ歩留りが悪化してしまう。特に、ペリクルフレームの材質として、シリコン結晶等の脆い材料が用いられる場合は、この問題が顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-298870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ペリクルフレームに形成される治具穴の加工時やペリクルをフォトマスクから剥離する剥離時に破損が生じ難いペリクルフレーム、及び該ペリクルフレームを用いたペリクル、更にはペリクルの剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームにおいて、下端面の外側面から内側面に向かって切り欠き部を設けることにより、従来から使用されているペリクルフレームに形成される治具穴の加工時やペリクルの剥離時にペリクルフレームが破損するおそれを確実に抑制し、且つ、ペリクルが装着されたフォトマスクからペリクルを剥離する際、上記切り欠き部に剥離治具を差し込んでペリクルフレームの上端面方向に移動させることによりペリクルを確実に剥離できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0012】
従って、本発明は、以下のペリクルフレーム、ペリクル及びペリクルの剥離方法を提供する。
1.ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームであって、下端面の外側面から内側面に向かって切り欠き部が設けられていることを特徴とするペリクルフレーム。
2.上記切り欠き部は、外側面から内側面まで形成されている1記載のペリクルフレーム。
3.厚みが2.5mm未満で、シリコン結晶からなる1又は2記載のペリクルフレーム。
4.1~3のいずれかに記載のペリクルフレームを構成要素として含むことを特徴とするペリクル。
5.ペリクルフレームの切り欠き部以外の下端面上にはマスク粘着剤層が設けられる4記載のペリクル。
6.4又は5に記載のペリクルが装着されたフォトマスクからペリクルを剥離する方法であって、ペリクルフレームの側面から切り欠き部に剥離治具を差し込み、この状態で該剥離治具をペリクルフレームの上端面方向に移動させることによりペリクルをフォトマスから剥離するようにしたことを特徴とするペリクルの剥離方法。
7.上記剥離治具の差し込み部分が、切り欠き部に相応した平板形状である6記載のペリクルの剥離方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ペリクルフレームの加工時やペリクルの剥離時において破損し難いペリクルフレーム及びこれを用いたペリクルを提供することができる。また、本発明では、破損等の問題を生じることなく、確実にフォトマスクからペリクルを剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のペリクルフレームの一実施形態(実施例1)を示す模式図であり、(A)は下端面側から見た図であり、(B)は長辺外側面側から見た図であり、(C)は短辺外側面側から見た図である。
図2】本発明のペリクルフレームの他の実施形態を示す模式図であり、(A)は下端面側から見た図であり、(B)は長辺外側面側から見た図であり、(C)は短辺外側面側から見た図である。
図3】本発明のペリクルフレームの別の一実施形態(実施例2)を示す模式図であり、(A)は下端面側から見た図であり、(B)は長辺外側面側から見た図であり、(C)は短辺外側面側から見た図である。
図4図1のペリクルフレームに、粘着剤層とペリクル膜を設けたペリクルの下端面側から見た模式図である。
図5図4のペリクルをフォトマスクに装着したものを、図4のZ側から見た模式図である。
図6図4のX-Y断面模式図(ペリクルをフォトマスクから剥離する際の様子も含む)である。
図7】従来のペリクルをフォトマスクに装着した際の側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のペリクルフレームは、ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームである。
【0016】
ペリクルフレームは枠状であれば、その形状はペリクルを装着するフォトマスクの形状に対応する。一般的には、四角形(長方形又は正方形)枠状である。
【0017】
また、ペリクルフレームには、ペリクル膜を設けるための面(ここでは上端面とする)と、フォトマスク装着時にフォトマスクに面する面(ここでは下端面が)がある。
【0018】
通常、上端面には、接着剤等を介してペリクル膜が設けられ、下端面には、ペリクルをフォトマスクに装着するための粘着剤等が設けられるが、この限りではない。
【0019】
ペリクルフレームの材質に制限はなく、公知のものを使用することができる。EUV用のペリクルフレームでは、高温にさらされる可能性があるため、熱膨張係数の小さな材料が好ましい。例えば、Si、SiO2、SiN、石英、インバー、チタン、チタン合金等が挙げられる。EUV用ペリクル膜としては、極薄シリコン膜が有望視されており、ペリクル膜と同じ材質であるシリコン結晶が好ましい。シリコン結晶としては、単結晶でも多結晶でもよいが、入手しやすく安価なシリコン単結晶が好ましい。
【0020】
ペリクルフレームの寸法は特に限定されないが、EUV用ペリクルの高さが2.5mm以下に制限されることから、EUV用のペリクルフレームの厚みはそれよりも小さくなり2.5mm未満である。
【0021】
例えば、シリコン結晶から成るペリクルフレームに、穴を形成する場合には、穴の周囲に少なくとも0.5mmのマージンが必要である。したがって、直径1mmの穴を形成する場合は、少なくとも厚みが2.0mm必要となる。すなわち、本発明は、厚みが2.0mm未満で、シリコン結晶から成るペリクルフレームに特に有用である。
【0022】
また、EUV用のペリクルフレームの厚みは、ペリクル膜やマスク粘着剤等の厚みを勘案すると、2.0mm以下であることが好ましく、1.6mm以下であることがより好ましい。
【0023】
また、ペリクルとしての機能を十分に発揮するためには、高さが1.5mm以上必要である。そうすると、EUV用のペリクルフレームの厚みは、ペリクル膜やマスク粘着剤等の厚みを勘案すると、1.0mm以上であることが好ましい。
【0024】
本発明のペリクルフレームは、下端面の外側面から内側面に向かって切り欠き部が設けられる。切り欠き部の配置場所や個数に制限はないが、ペリクルを把持するために用いられることから、最低でも向い合う二辺に各1箇所ずつ、合計で2箇所以上設けられることが好ましい。
【0025】
また、切り欠き部は形状や寸法にも制限はないが、切り欠き部の高さを大きくすれば、その分ペリクルフレームの切り欠き部上方の厚みが減り、破損する可能性がある。そのため、切り欠き部の高さは、ペリクルフレームの厚みの50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは15%以下である。
【0026】
シリコン結晶からなるペリクルフレームの場合は、ペリクルフレームの切り欠き部上方の厚みが0.7mm以上となるようにすることが好ましい。
【0027】
切り欠き部は、ペリクルフレームの途中まで形成されていてもよいし、外側面から内側面まで通じるように形成されていてもよい。切り欠き部は、外側面から内側面まで形成されていれば、切り欠き部を通気部としても使用することができる。
【0028】
一般にペリクルフレームには、ペリクル内外の圧力差を緩和させるための通気部が設けられている。特に、EUVリソグラフィでは、露光装置内を真空にするため、EUV用ペリクルは大気圧から真空への圧力変化に耐える必要があり、EUV用ペリクルフレームには大面積の通気部が要求される。
【0029】
従来、通気部は治具穴と同様に、ペリクルフレーム側面に貫通孔として設けられている。従って、治具穴と同様に加工時に破損する懸念がある。特に、EUV用ペリクルフレームでは、大面積の通気部が要求されるが、通気部を大きくしようとして貫通孔の直径を大きくすれば、破損する可能性がさらに高まってしまう。また、貫通孔の数を多くしようとしても、同様に破損の可能性が高まる。
しかしながら、本発明のように切り欠き部を設ける加工であれば、ペリクルフレームの薄くなる箇所でもある程度の厚みがあるため、容易に加工することができ、加工時に破損する可能性が低くなる。
【0030】
さらに、この切り欠き部に剥離治具を挿入してペリクルを剥離する際も、最も力かかる(剥離治具をペリクルフレーム上端面方向に移動させるときに、剥離治具と接触する)箇所に、側面中央付近に穴を設ける場合よりも厚みがあるため、剥離時の破損も起こり難い。
【0031】
また、切り欠き部を通気部として用いる場合に、切り欠き部の高さを小さくして、ペリクルフレームに厚みをもたせたとしても、幅を大きくすることによって、多量の通気を行うことが可能となる。
【0032】
切り欠き部を通気部として用いる場合は、ペリクル使用時の圧力変化速度に応じて、サイズや個数を調整する。EUV用ペリクルフレームとする場合は、開口部の面積が合計で少なくとも5mm2以上とすることが好ましく、10mm2以上とすることがより好ましい。なお、従来のエキシマレーザー露光では、1mm2以下であっても十分であった。
【0033】
例えば、ペリクルフレームには、ペリクルフレームの途中まで形成されている切り欠き部と、外側面から内側面まで形成されている切り欠き部の両方の形態を設けてもよい。この場合、ペリクルフレームの途中まで形成されている切り欠き部は剥離用途、外側面から内側面まで形成されている切り欠き部は通気用途、というように用途を分けてもよい。
【0034】
さらに、ペリクルフレームに設けられる複数の切り欠き部は、それぞれ形状や寸法が異なっていてもよい。例えば、上記のように、切り欠き部の用途を区別する場合は、その用途に応じて最適な形状や寸法を選択できる。
【0035】
また、外側面から内側面まで形成されている切り欠き部には、フィルタを設けてもよい。この切り欠き部を剥離に用いる場合は、ペリクルフレームの内側面に切り欠き部を覆うように設けること、或いは、切り欠き部の内部に設けることが好ましい。通気のみに用いる場合は、ペリクルフレームの外側面に切り欠き部を覆うように設けてもよい。
ペリクルフレーム下端面に粘着剤等を形成する場合は、粘着剤の厚みにフィルタ寸法を合わせることが好ましい。
【0036】
切り欠き部は、剥離や通気のみならず、ハンドリング時の治具穴としても用いることができる。ハンドリング用の治具穴は、剥離用の治具穴に比べて大きな力がかからないため、従来通り、ペリクルフレーム外側面の中央付近に設けてもよい。また、そのほか必要に応じて、加工時に破損しない範囲内で、外側面や内側面に加工を施すことができる。
【0037】
本発明のペリクルは、上記構成のペリクルフレーム上端面に、粘着剤あるいは接着剤を介して、ペリクル膜が設けられる。粘着剤や接着剤の材料に制限はなく、公知のものを使用することができる。一般的に、粘着剤や接着剤は、ペリクルフレーム端面の周方向全周に亘って、ペリクルフレーム幅と同じ又はそれ以下の幅に形成される。
【0038】
また、ペリクル膜の材質に制限はないが、露光光源の波長における透過率が高く耐光性の高いものが好ましい。例えば、EUV露光に対しては極薄シリコン膜や炭素膜等が用いられる。
【0039】
さらに、ペリクルフレームの下端面には、フォトマスクに装着するための粘着剤が形成される。この粘着剤は、ペリクルフレームの切り欠き部以外の下端面上に設けられることが好ましい。
【0040】
上記粘着剤としては、公知のものを使用することができ、アクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤が好適に使用できる。耐熱性の観点からシリコーン系粘着剤が好ましい。粘着剤は必要に応じて、任意の形状に加工されてもよい。
【0041】
上記粘着剤の下端面には、粘着剤を保護するための離型層(セパレータ)が貼り付けられていてもよい。離型層の材質は、特に制限されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)等を使用することができる。また、必要に応じて、シリコーン系離型剤やフッ素系離型剤等の離型剤を離型層の表面に塗布してもよい。
【0042】
本発明では、ペリクルフレーム側面から切り欠き部に剥離治具を差し込み、この状態で該剥離治具をペリクルフレーム上端面方向に移動させることにより、ペリクルが装着されたフォトマスクからペリクルを剥離する。
【0043】
このとき、剥離治具をペリクルフレーム上端面方向に移動させるときに、ペリクルフレームの剥離治具と接触する箇所が平坦であれば、剥離治具は平板形状であることが好ましい。剥離治具は、ペリクルフレームの剥離治具と接触する箇所の形状に応じた形状にすることが好ましい。このようにすれば、剥離治具と切り欠き部上方との接触面積が大きくなり、ペリクルフレームの破損も起こりにくくなる。
【0044】
ここで、図1~3は、本発明のペリクルフレーム1の一例を示し、それぞれの図面において、符号11はペリクルフレームの内側面、符号12はペリクルフレームの外側面、符号13はペリクルフレームの上端面、符号14はペリクルフレームの下端面を示す。上記ペリクルフレーム1は切り欠き部2が設けられ、符号21は切り欠き部の幅、符号22は切り欠き部の奥行、符号23は切り欠き部の高さを示す。なお、図2では、長辺の切り欠き部は、外側面から内側面まで形成されており、短辺の切り欠き部は、ペリクルフレームの途中まで形成されているが、短辺の切り欠き部は、剥離治具を挿入しやすいように、長辺の切り欠き部よりも高さが大きくなっている。また、図5はペリクル3を示し、ペリクルフレーム1の上端面には接着剤6によりペリクル膜5が接着,張設されている。また、上記ペリクル3は、粘着剤4によりフォトマスク7に剥離可能に接着され、フォトマスク7上のパターン面を保護している。また、図6は、ペリクルをフォトマスから剥離する際、ペリクルフレーム1の切り欠き部2に剥離治具8を挿通した様子を示すものである。
【実施例
【0045】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0046】
[実施例1]
Si単結晶製のペリクルフレーム(外寸150mm×118mm×1.5mm、フレーム幅4mm)を作製した。
【0047】
ペリクルフレーム各辺中央の下端面には、実施例1に示すように、幅70mm×高さ0.2mm×奥行4mmの切り欠き部を設けた。この切り欠き部は、外側面から内側面まで形成されている。また、切り欠き部上方の厚みは1.3mmであり、破損することなく加工することができた。
【0048】
ペリクルフレームを洗浄し、フレーム上端面にはシリコーン粘着剤(信越化学工業(株)製X-40-3264)を全周に渡り塗布した。また、切り欠き部以外のフレーム下端面上にもマスク粘着剤として、シリコーン系粘着剤(信越化学工業(株)製X-40-3264)を塗布した。
【0049】
その後、ペリクルフレームを90℃で12時間加熱して、上下端面の粘着剤を硬化させた。続いて、ペリクル膜として極薄シリコン膜を、フレーム上端面に形成した粘着剤に圧着させて、ペリクルを完成させた。
【0050】
このペリクルをフォトマスクの代用として150mm×150mmの石英マスクに貼り付けた後、切り欠き部に剥離治具の平板形状になっている部分を挿入して、剥離治具をペリクルフレーム上端面方向に0.1mm/sの速度で移動させることによってフォトマスクからペリクルを剥離した。ペリクルを剥離してもペリクルフレームは破損しなかった。
【0051】
[実施例2]
Si単結晶製のペリクルフレーム(外寸150mm×118mm×1.5mm、フレーム幅4mm)を作製した。
【0052】
ペリクルフレーム長辺の下端面には、実施例2に示すように、幅30mm×高さ0.2mm×奥行4mmの切り欠き部を30mmの間隔を開けて2箇所に設けた。短辺の下端面には、幅20mm×高さ0.2mm×奥行4mmの切り欠き部を20mmの間隔を開けて2箇所に設けた。この切り欠き部は、外側面から内側面まで形成されている。また、切り欠き部上方の厚みは1.3mmであり、破損することなく加工することができた。
【0053】
ペリクルフレームを洗浄し、フレーム上端面にはシリコーン系粘着剤(信越化学工業(株)製X-40-3264)を全周に渡り塗布した。また、切り欠き部以外のフレーム下端面上にもマスク粘着剤として、アクリル粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1495)を塗布した。
【0054】
その後、ペリクルフレームを90℃で12時間加熱して、上下端面の粘着剤を硬化させた。続いて、ペリクル膜として極薄シリコン膜を、フレーム上端面に形成した粘着剤に圧着させて、ペリクルを完成させた。
【0055】
このペリクルをフォトマスクの代用として150mm×150mmの石英マスクに貼り付けた後、切り欠き部に剥離治具の平板形状になっている部分を挿入して、剥離治具をペリクルフレーム上端面方向に0.1mm/sの速度で移動させることによってフォトマスクからペリクルを剥離した。ペリクルを剥離してもペリクルフレームは破損しなかった。
【0056】
[比較例1]
Si単結晶製のペリクルフレーム(外寸150mm×118mm×1.5mm、フレーム幅4mm)を作製した。
【0057】
ペリクルフレーム長辺の外側面に、辺中央からコーナー方向へ45mm離れた2箇所に、直径1mm×奥行1mmの治具穴を設けようとしたが、加工中に破損してしまった。
【0058】
[比較例2]
Si単結晶製のペリクルフレーム(外寸150mm×118mm×1.5mm、フレーム幅4mm)を作製した。
【0059】
ペリクルフレーム長辺の外側面に、辺中央からコーナー方向へ45mm離れた2箇所に、直径0.5mm×奥行1mmの治具穴を設けた。治具穴上方の厚みは0.5mmであり、破損することなく加工することができた。
【0060】
ペリクルフレームを洗浄し、フレーム上端面にはシリコーン粘着剤(信越化学工業(株)製X-40-3264)を全周に渡り塗布した。また、切り欠き部以外のフレーム下端面上にもマスク粘着剤として、シリコーン粘着剤(信越化学工業(株)製X-40-3264)を塗布した。
【0061】
その後、ペリクルフレームを90℃で12時間加熱して、上下端面の粘着剤を硬化させた。続いて、ペリクル膜として極薄シリコン膜を、フレーム上端面に形成した粘着剤に圧着させて、ペリクルを完成させた。
【0062】
このペリクルをフォトマスクの代用として150mm×150mmの石英マスクに貼り付けた後、治具穴に剥離治具の円柱状になっている部分を挿入して、剥離治具をペリクルフレーム上端面方向に0.1mm/sの速度で移動させることによってフォトマスクからペリクルを剥離しようとした。しかしながら、治具穴周辺部が破損してしまい、ペリクルを剥離することはできなかった。
【符号の説明】
【0063】
1 ペリクルフレーム
11 ペリクルフレーム内側面
12 ペリクルフレーム外側面
13 ペリクルフレーム上端面
14 ペリクルフレーム下端面
2 切り欠き部
21 切り欠き部の幅
22 切り欠き部の奥行
23 切り欠き部の高さ
3 ペリクル
4 フォトマスク粘着剤
5 ペリクル膜
6 ペリクル膜接着剤
7 フォトマスク
8 剥離治具
9 通気孔
10 治具穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7