(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】EUV検査用ビーム安定化兼基準補正方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20240311BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G01N21/956 A
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2022549874
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 US2021017306
(87)【国際公開番号】W WO2021167816
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-11-02
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャスキン ラリッサ
(72)【発明者】
【氏名】ツィグツキン コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】デムンシ デバシス
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/247324(WO,A1)
【文献】特表2019-529971(JP,A)
【文献】特表2012-530902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0049861(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G03F 1/00-G03F 1/92
G01N 23/00-G01N 23/2276
G06T 7/00-G06T 7/90
G01B 11/00-G01B 11/30
H01L 21/64-H01L 21/66
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査システムであって、
標本を照明するための極端紫外(EUV)照明ビームを放射するよう構成された照明源を備え、
1個又は複数個の第1マルチセル検出器を備え、
前記第1マルチセル検出器それぞれが、少なくとも2個のセグメントを備え、且つ、前記照明ビームが前記1個又は複数個の第1マルチセル検出器内を通ったときに第1光電流を生成するよう構成されており、
前記第1マルチセル検出器それぞれが、その中央部にアパーチャを有し、
前記第1マルチセル検出器それぞれが、前記第1光電流に基づき第1照明強度分布信号を生成するよう構成されており、
1個又は複数個の第2マルチセル検出器を備え、
前記第2マルチセル検出器それぞれが、少なくとも2個のセグメントを備え、且つ、前記照明ビームが前記1個又は複数個の第2マルチセル検出器内を通ったときに第2光電流を生成するよう構成されており、
前記第2マルチセル検出器それぞれが、前記第2光電流に基づき第2照明強度分布信号を生成するよう構成されており、
前記照明ビームを前記標本から受光し前記照明ビームに基づき画像を生成するよう構成された検出器アセンブリを備え、
前記検出器アセンブリ、前記1個又は複数個の第1マルチセル検出器及び前記1個又は複数個の第2マルチセル検出器に可通信結合されたコントローラを備え、前記コントローラが、プログラム命令を実行するよう構成された1個又は複数個のプロセッサを有し、それらプログラム命令に従い、前記1個又は複数個のプロセッサが、
前記検出器アセンブリから前記画像を受け取り、
前記第2照明強度分布信号における歪を前記画像内の有歪画素にマッピングすることによって、前記第2マルチセル検出器により生成された前記第2照明強度分布信号を前記検出器アセンブリにより生成された前記画像について校正し、
前記画像内の前記有歪画素の強度を前記第2照明強度分布信号に基づき調整することによって、補正済画像を生成し、且つ
前記補正済画像を用い前記標本上の欠陥を検出
し、
さらに、前記プログラム命令に従い、前記1個又は複数個のプロセッサが、
前記第1照明強度分布信号における中心点からのオフセットを前記照明ビームの不安定性にマッピングすることによって、前記第1照明強度分布信号を前記照明ビームについて校正する 検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の検査システムであって、前記標本がフォトマスク、レティクル及び半導体ウェハのうち少なくとも一つである検査システム。
【請求項3】
請求項1に記載の検査システムであって、前記第1マルチセル検出器それぞれの前記中央部にある前記アパーチャが、前記照明ビームを通すよう構成されている検査システム。
【請求項4】
請求項1に記載の検査システムであって、前記プログラム命令に従い、前記1個又は複数個のプロセッサが更に、
(i)前記照明源及び(ii)前記照明ビームの経路上にある光学部材のうち少なくとも一方に対し補正動作を適用することによって、前記照明ビームを前記第1照明強度分布信号に基づき安定化する検査システム。
【請求項5】
請求項4に記載の検査システムであって、
前記照明ビームの第1部分の第1照明路上に、前記第1マルチセル検出器、前記第2マルチセル検出器及び前記検出器アセンブリが備わり、且つ、
前記照明ビームの第2部分の第2照明路上に、前記照明ビームの前記第2部分がその上に射突したときに第3照明強度分布信号を生成するよう構成されたサイド検出器が備わる検査システム。
【請求項6】
請求項5に記載の検査システムであって、前記プログラム命令に従い、前記1個又は複数個のプロセッサが更に、
前記第3照明強度分布信号における歪を前記画像内の前記有歪画素にマッピングすることによって、前記第3照明強度分布信号を前記画像について校正し、
前記画像内の前記有歪画素の前記強度を前記第3照明強度分布信号及び前記第2照明強度分布信号に基づき調整することによって、前記補正済画像を生成し、且つ
前記補正済画像を用い前記標本上の前記欠陥を検出する、
検査システム。
【請求項7】
請求項6に記載の検査システムであって、前記サイド検出器が、
電荷結合デバイス(CCD)、相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサ、能動画素センサ(APS)及び時間遅延積分(TDI)センサのうち少なくとも一つである検査システム。
【請求項8】
請求項1に記載の検査システムであって、
前記照明ビームの第1部分の第1照明路上に、前記第1マルチセル検出器、前記第2マルチセル検出器及び前記検出器アセンブリが備わり、且つ、
前記照明ビームの第2部分の第2照明路上に、前記照明ビームの前記第2部分がその上に射突したときに第3照明強度分布信号を生成するよう構成されたサイド検出器が備わる検査システム。
【請求項9】
請求項8に記載の検査システムであって、前記プログラム命令に従い、前記1個又は複数個のプロセッサが更に、
前記第3照明強度分布信号における歪を前記画像内の前記有歪画素にマッピングすることによって、前記第3照明強度分布信号を前記画像について校正し、
前記画像内の前記有歪画素の前記強度を前記第3照明強度分布信号及び前記第2照明強度分布信号に基づき調整することによって、前記補正済画像を生成し、且つ
前記補正済画像を用い前記標本上の前記欠陥を検出する、
検査システム。
【請求項10】
請求項1に記載の検査システムであって、前記第1マルチセル検出器の前記2個以上のセグメントが、4個のセグメント、6個のセグメント及び8個のセグメントのうち少なくとも一つを含み、前記第2マルチセル検出器の前記2個以上のセグメントが、4個のセグメント、6個のセグメント及び8個のセグメントのうち少なくとも一つを含む検査システム。
【請求項11】
検査方法であって、
照明源を用い極端紫外(EUV)照明ビームを放射し、
前記照明ビームが第1マルチセル検出器それぞれを通ったときに1個又は複数個の前記第1マルチセル検出器で以て第1光電流を生成し、但し前記第1マルチセル検出器それぞれが、少なくとも2個のセグメントと、その中央部にあるアパーチャとを備えるものであり、
前記第1光電流に基づき第1照明強度分布信号を生成し、
前記照明ビームが第2マルチセル検出器それぞれを通ったときに1個又は複数個の前記第2マルチセル検出器で以て第2光電流を生成し、但し前記第2マルチセル検出器それぞれが少なくとも2個のセグメントを備えるものであり、
前記第2光電流に基づき第2照明強度分布信号を生成し、
前記照明ビームで以て標本を照明し、
検出器アセンブリで以て前記照明ビームを前記標本から受光し、
前記照明ビームに基づき画像を生成し、
前記第2照明強度分布信号における歪を前記画像内の有歪画素にマッピングすることによって、前記第2マルチセル検出器により生成された前記第2照明強度分布信号を前記検出器アセンブリにより生成された前記画像について校正し、
前記画像内の前記有歪画素の強度を前記第2照明強度分布信号に基づき調整することによって、補正済画像を生成し、且つ
前記補正済画像を用い前記標本上の欠陥を検出
し、
更に、
前記第1照明強度分布信号における中心点からのオフセットを前記照明ビームの不安定性にマッピングすることによって、前記第1照明強度分布信号を前記照明ビームについて校正する検査方法。
【請求項12】
請求項11に記載の検査方法であって、前記標本がフォトマスク、レティクル及び半導体ウェハのうち少なくとも一つである検査方法。
【請求項13】
請求項11に記載の検査方法であって、前記第1マルチセル検出器それぞれの前記中央部にある前記アパーチャを、前記照明ビームを通すよう構成する検査方法。
【請求項14】
請求項11に記載の検査方法であって、更に、
(i)前記照明源及び(ii)前記照明ビームの経路上にある光学部材のうち少なくとも一方に対し補正動作を適用することによって、前記照明ビームを前記第1照明強度分布信号に基づき安定化する検査方法。
【請求項15】
請求項14に記載の検査方法であって、
前記照明ビームの第1部分の第1照明路上に、前記第1マルチセル検出器、前記第2マルチセル検出器及び前記検出器アセンブリを設け、且つ、
前記照明ビームの第2部分の第2照明路上に、前記照明ビームの前記第2部分がその上に射突したときに第3照明強度分布信号を生成するよう構成されたサイド検出器を設ける検査方法。
【請求項16】
請求項15に記載の検査方法であって、更に、
前記第3照明強度分布信号における歪を前記画像内の前記有歪画素にマッピングすることによって、前記第3照明強度分布信号を前記画像について校正し、
前記画像内の前記有歪画素の前記強度を前記第3照明強度分布信号及び前記第2照明強度分布信号に基づき調整することによって、前記補正済画像を生成し、且つ
前記補正済画像を用い前記標本上の前記欠陥を検出する検査方法。
【請求項17】
請求項16に記載の検査方法であって、前記サイド検出器が、
電荷結合デバイス(CCD)、相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサ、能動画素センサ(APS)及び時間遅延積分(TDI)センサのうち少なくとも一つである検査方法。
【請求項18】
請求項11に記載の検査方法であって、
前記照明ビームの第1部分の第1照明路上に、前記第1マルチセル検出器、前記第2マルチセル検出器及び前記検出器アセンブリを設け、且つ、
前記照明ビームの第2部分の第2照明路上に、前記照明ビームの前記第2部分がその上に射突したときに第3照明強度分布信号を生成するよう構成されたサイド検出器を設ける検査方法。
【請求項19】
請求項18に記載の検査方法であって、更に、
前記第3照明強度分布信号における歪を前記画像内の前記有歪画素にマッピングすることによって、前記第3照明強度分布信号を前記画像について校正し、
前記画像内の前記有歪画素の前記強度を前記第3照明強度分布信号及び前記第2照明強度分布信号に基づき調整することによって、前記補正済画像を生成し、且つ
前記補正済画像を用い前記標本上の前記欠陥を検出する検査方法。
【請求項20】
請求項11に記載の検査方法であって、前記第1マルチセル検出器の前記2個以上のセグメントが、4個のセグメント、6個のセグメント及び8個のセグメントのうち少なくとも一つを含み、前記第2マルチセル検出器の前記2個以上のセグメントが、4個のセグメント、6個のセグメント又は8個のセグメントを含む検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件開示は、総じてフォトマスク及び半導体ウェハにおける欠陥の検出に関する。とりわけ、本件開示は、フォトマスクにおける照明分布の計測、並びに照明源ビームの光学的アライメント(整列具合)を維持するためのフィードバックの提供に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願への相互参照]
本願では、「EUV検査用ビーム安定化兼基準補正方法及び装置」(METHOD AND APPARATUS FOR BEAM STABILIZATION AND REFERENCE CORRECTION FOR EUV INSPECTION)と題しLarissa Juschkin、Konstantin Tsigutkin及びDebashis De Munshiを発明者とする2020年2月20日付米国仮特許出願第62/978969号に基づき米国特許法第119条(e)の規定による利益を主張し、参照によりその全容を本願に繰り入れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/0154301号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来型検査システムは、EUVスペクトル域にて動作させるとなると、ビームスプリッタがそうした波長で効率的でないことから非現実的である。加えて、ピックアップ光学系が照明ビーム路上にビーム安定化のため配置されることで、そのターゲットにおける照明プロファイルに歪及び不確定性が入り込み、その検査に利用可能な総光子束が減少する。更に、照明源が空間的に集積されている場合、その照明源が生来的に不安定でありジッタリングを引き起こすものであるとその照明源のパワーを監視するだけでは不十分なため、照明強度空間分布の変化を計測するのが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件開示の1個又は複数個の例証的実施形態に従い検査システムが開示される。ある例証的実施形態に係る検査システムは、標本を照明するための極端紫外(EUV)照明ビームを放射するよう構成された照明源と、1個又は複数個の第1マルチセル検出器と、を備え、第1マルチセル検出器それぞれが、少なくとも2個のセグメントを備え、且つ、照明ビームがその1個又は複数個の第1マルチセル検出器内を通ったときに第1光電流を生成するよう構成されており、第1マルチセル検出器それぞれが、その中央部にアパーチャを有し、第1マルチセル検出器それぞれが、第1照明強度分布信号を第1光電流に基づき生成するよう構成されている検査システムであり、1個又は複数個の第2マルチセル検出器を備え、第2マルチセル検出器それぞれが、少なくとも2個のセグメントを備え、且つ、照明ビームがその1個又は複数個の第2マルチセル検出器内を通ったときに第2光電流を生成するよう構成されており、第2マルチセル検出器それぞれが、第2照明強度分布信号を第2光電流に基づき生成するよう構成されている検査システムであり、照明ビームを標本から受光しその照明ビームに基づき画像を生成するよう構成された検出器アセンブリと、前掲の検出器アセンブリ、1個又は複数個の第1マルチセル検出器及び1個又は複数個の第2マルチセル検出器に可通信結合されたコントローラと、を備える検査システムであり、そのコントローラが、プログラム命令を実行するよう構成された1個又は複数個のプロセッサを有し、それらプログラム命令に従い、その1個又は複数個のプロセッサが、検出器アセンブリから画像を受け取り、第2照明強度分布信号における歪をそれら画像内の有歪画素にマッピングすることによって第2照明強度分布信号をそれら画像について校正し、それら画像内の有歪画素の強度を第2照明強度分布信号に基づき調整することによって補正済画像を生成し、且つそれら補正済画像を用い標本上の欠陥を検出する検査システムである。
【0006】
本件開示の1個又は複数個の例証的実施形態に従い検査方法が開示される。本検査方法では、照明源を用い極端紫外(EUV)照明ビームを放射し、その照明ビームがその第1マルチセル検出器それぞれを通ったときに1個又は複数個の第1マルチセル検出器で以て第1光電流を生成し、但しその第1マルチセル検出器それぞれを、少なくとも2個のセグメントと、その中央部にあるアパーチャとを備えるものとし、第1照明強度分布信号を第1光電流に基づき生成し、照明ビームがその第2マルチセル検出器それぞれを通ったときに1個又は複数個の第2マルチセル検出器で以て第2光電流を生成し、但しその第2マルチセル検出器それぞれを、少なくとも2個のセグメントを備えるものとし、第2照明強度分布信号を第2光電流に基づき生成し、標本を照明ビームで以て照明し、検出器アセンブリで以て照明ビームを標本から受光し、その照明ビームに基づき画像を生成し、第2照明強度分布信号における歪をそれら画像内の有歪画素にマッピングすることによって第2照明強度分布信号をそれら画像について校正し、それら画像内の有歪画素の強度を第2照明強度分布信号に基づき調整することによって補正済画像を生成し、且つそれら補正済画像を用い標本上の欠陥を検出する。
【0007】
理解し得るように、前掲の概略記述及び後掲の詳細記述は共に専ら例示的且つ説明的なものであり、特許請求の範囲記載の発明を必ずしも限定するものではない。添付図面は、本明細書に組み込まれてその一部分を構成し、本発明の諸実施形態を描出し、概略記述と相俟ち本発明の諸原理を説明する役目を有している。
【0008】
本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)であれば、以下の添付図面を参照することによって、本件開示の数多な長所をより良好に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】基準ビーム計測用検出器を有する従来型検査システムを描出する概略模式図である。
【
図2】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る検査システムを描出する概略模式図である。
【
図3A】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係るビーム安定化用検出器の概略模式図である。
【
図3B】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る基準補正用検出器の概略模式図である。
【
図4】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係りビーム安定化用に収集された光強度分布計測画像を示す図である。
【
図5】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係りビーム安定化用に収集された光強度分布計測画像を示す図である。
【
図6】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係りビーム安定化用に収集された光強度分布計測画像を示す図である。
【
図7】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り基準補正用に収集された光強度分布計測画像を示す図である。
【
図8】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り基準補正及び照明源制御用にサイドモニタにより収集された光強度分布計測画像を示す図である。
【
図9】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り基準補正及び照明源制御用にサイドモニタにより収集された光強度分布計測画像を示す図である。
【
図10】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る基準補正兼ビーム安定化用検査方法を描出するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解し得るように、前掲の概略記述及び後掲の詳細記述は共に専ら例示的且つ説明的なものであり、特許請求の範囲記載の発明を必ずしも限定するものではない。添付図面は、本明細書に組み込まれてその一部分を構成し、本発明の諸実施形態を描出し、概略記述と相俟ち本発明の諸原理を説明する役目を有している。いわゆる当業者には直ちに察せられるべきことに、本件開示の神髄及び技術的範囲から離隔することなく形態及び細部に様々な改変及び修正を施すことができる。以下、添付図面に描かれ開示されている主題を詳細に参照する。
【0011】
本件開示の諸実施形態は、標本を光子で以て照明しその標本から反射及び/又は散乱されてきた照明を1個又は複数個の検出器により回収し画像データを生成することで標本上の1個又は複数個の欠陥を検出するよう構成された、検査システムを指向している。その標本たりうるものには、例えば極端紫外(EUV)リソグラフィ(例.光子波長が190nm未満のそれ)にて用いられるフォトマスクがある。欠陥があるとそれらマスクを用い(例.EUVリソグラフィにより)後刻製造される集積回路に品質及び性能の劣化が生じうるので、極力多くの欠陥を検出するのが望ましい。加えて、製造速度を高め歩留まりを最大化させるため、極力速やかにそれら欠陥を識別するのが望ましい。
【0012】
その画像データを、複数枚の高解像度画像(例.試験画像)を含み、各画像がその標本上の注目エリアに対応するそれとすることができる。それら試験画像それぞれを、対応する基準画像と比較することができる。基準画像を理想的即ち無誤りな画像として用いうるので、その基準画像を個別の試験画像から減じた上で、その差分によって、その標本の表面上でその注目エリアにある問題含みな構造(即ち欠陥)を指し示し、(例.そのフォトマスクの設計又は処理を変えることによる)補正動作を実行することができる。
【0013】
欠陥を高い正確度で以て検出するには、試験画像を高忠実度(即ち低ノイズ)で以て生成すること、ひいてはそれら基準画像が試験画像から減じられたときに実際の欠陥(即ち実欠陥)に係る画素のみが欠陥として識別されノイズが欠陥として誤識別されないようにするのが望ましい。照明の変動に係るノイズを除去するには、その試験画像を、その標本の平面における照明強度分布に基づき補正すればよい。その標本のうち試験画像内にあり暗過ぎるエリアに関しては、それら暗画素の強度スケール(グレイスケール)を増せばよく、その逆のエリアに関してはその逆にすればよい。このグレイスケール調整プロセスによって、その標本における照明分布が不均一であり及び/又は経時変動することにより試験画像中に生じるノイズを除去することも、基準補正として知られている。
【0014】
それら欠陥を正確に識別するには、その検査システムを、リソグラフィプロセスにて用いられているのと同じ波長(例.EUVスペクトル域)にて動作させればよい。EUVスペクトル域は、短い波長、高エネルギな光子、低い放射輝度(即ち明るさ)のEUV放射源、並びに屈折(即ち透過)光学系の欠如を原因とする、多くの難題に直面している。標本におけるEUV照明分布及び安定性についての知識は、パターン分析のためぜひ必要である。この目的を達成するには、本件開示の諸システムを、(1)その標本における照明分布を計測し、(2)フィードバックを行うことでその照明ビームの安定なアライメントを保ち、且つ(3)それら試験画像内の有歪画素をその照明強度分布計測を踏まえ補正(例.基準補正)するよう構成すればよい。それら照明強度分布計測、ビーム安定化及び基準補正をリアルタイム実行することで、その照明光の経時変動を確とシステム条件の枠内にすることができる。
【0015】
図1は、基準補正用のビームモニタ130を有する従来型検査システム100を描出する概略模式図である。図示の通り、従来型検査システム100は、ビーム101を生成する照明源112、照明を標本120へと差し向ける対物レンズ118、並びにその標本120にて反射又は散乱された照明を回収する検出器126を有している。ビームスプリッタ116はビーム101を分岐させ、モニタ130はそのビーム101から分岐されたビーム102(例.モニタリング信号)を回収する。このモニタリング信号が、標本120上の投射先画素エリア上に亘る照明照射量を各回露出中に計測し、その計測を踏まえ検出器126内の画素毎に補正係数を求めることによって、基準補正に用いられる。
【0016】
直截に実施しうるとはいえ、この構成の従来型検査システム100は、EUVスペクトル域にて動作させるとなると、ビームスプリッタがそうした波長で効率的でないことから非現実的である。加えて、ピックアップ光学系が照明ビーム路上にビーム安定化のため配置されることで、そのターゲットにおける照明プロファイルに歪及び不確定性が入り込み、その検査に利用可能な総光子束が減少する。更に、照明源が空間的に集積されている場合、その照明源が生来的に不安定でありジッタリングを引き起こすものであるとその照明源のパワーを監視するだけでは不十分なため、照明強度空間分布の変化を計測するのが難しい。これに対し、本件開示の諸実施形態では、ビーム安定化及び基準補正のためのEUV放射分布の計測に生来的な、諸問題が迂回される。即ち、本件開示の諸実施形態によれば、その光学系又は放射源のコスト又は複雑度の等価的増大無しで、試験画像の忠実度及びホモジニアス性を改善することができる。
【0017】
図2は、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り標本250(例.フォトマスク、半導体ウェハ等)の表面上の欠陥を判別する検査システム200の概略模式図である。本検査システム200には、これに限られるものではないが照明源212、照明アーム211、集光アーム213及び検出器アセンブリ260を設けることができる。本検査システム200は、本件技術分野で既知な何れの光学依拠検査技術を利用するものともすることができる。ある種の実施形態によれば、本検査システム200を広帯域検査システム(例.広帯域プラズマ光源依拠検査システム)や狭帯域検査システム(例.レーザ依拠検査システム)とすることができる。ある種の実施形態によれば、本検査システム200に光学的暗視野検査ツールを設けることができる。
【0018】
ある実施形態では、コントローラ204が検出器アセンブリ260に可通信結合される。コントローラ204は、1個又は複数個のプロセッサ206及びメモリ208を有するものとすることができる。メモリ208内には、本件開示の様々な機能、手順、アルゴリズム、ステップ等を1個又は複数個のプロセッサ206に実行させるよう構成されたプログラム命令群を配することができる。コントローラ204は、標本250に備わる1個又は複数個のフィーチャ(外形特徴)のうちその標本250の1個又は複数個の欠陥を示すものを判別するよう、構成することができる。また、ある実施形態によれば、コントローラ204を、ターゲット標本に備わる1個又は複数個のターゲットフィーチャの画像たる1枚又は複数枚のターゲット画像を受け取るよう、構成することができる。ある種の実施形態によれば、コントローラ204を、1枚又は複数枚の画像であり、その画像それぞれが標本250上の注目エリアに対応しているものを受け取るよう、構成することができる。それら画像それぞれを、欠陥との関連で後刻検査されるべき試験画像とすること、並びに比較されるべき1枚又は複数枚の基準画像に関連付けることができる。
【0019】
ある種の実施形態によれば、照明源212には、これに限られるものではないが広帯域放射源を初め、照明ビーム201を生成することができ本件技術分野で既知なあらゆる照明源が包含されうる。ある種の実施形態によれば、ビーム201を、極端紫外(EUV)光又は真空紫外(VUV)光を含むものとすることができる。VUV又はEUV光を用いる場合、本システム200を真空中で動作させることで、雰囲気による光ビーム201の吸収を防ぐことができる。ある種の実施形態によれば、ビーム201を、約1nm~約5nmなる一通り又は複数通りの波長を有する軟X線を含むものと、することができる。ある種の実施形態によれば、ビーム201を、約13.5nmなる波長、約10nm~約124nmなる一通り又は複数通りの波長、或いは約5nm~約30nmなる一通り又は複数通りの波長を有するEUV光を含むものと、することができる。ある種の実施形態によれば、ビーム201を、190nm未満~約5nmなる一通り又は複数通りの波長を有すVUV光を含むものと、することができる。
【0020】
照明源212には、それら波長のうち一通り又は複数通りにてビーム201を放射することができ本件技術分野で既知な、あらゆる好適な光源が包含されうる。そうした光源には、これに限られるものではないが、レーザ誘起プラズマ光源、放電誘起プラズマ光源、カソード/アノード型光源、シンクロトロン光源等がある。加えて、本願記載の諸実施形態を、相対的に広い角度範囲内へと光を放射する何らかの光源(例.プラズマ依拠のそれ)と併用することができる。ある種の実施形態によれば、本システム200を、明るい照明のため照明源212の像が標本250上に投射されるクリティカル照明(臨界照明)を用い、構成することができる。ある種の実施形態によれば、本システム200を、標本250のより均等又はホモジニアスな照明を実現するケーラー照明又はホモジナイザ依拠照明を用い、構成することができる。
【0021】
ある種の実施形態では、照明アーム211が、ビーム201を標本250へと差し向けるよう構成される。照明アーム211には、本件技術分野で既知なあらゆる種類の光学部材を何個でも設けることができる。ある種の実施形態によれば、照明アーム211に1個又は複数個の光学素子を設けることができる。その1個又は複数個の光学素子には、これに限られるものではないが1個又は複数個の鏡、1個又は複数個のレンズ、1個又は複数個のポラライザ、1個又は複数個のビームスプリッタ、1枚又は複数枚の波長板、1個又は複数個のアポダイザ等を初め、本件技術分野で既知なあらゆる光学素子を含めることができる。それとの関連で、照明アーム211を、照明源212からのビーム201を標本250の表面上に合焦させるよう構成することができる。例えば、コレクタ鏡205を、ビーム201をイルミネータ鏡245へと差し向けるよう構成することができる。そのイルミネータ鏡245を更に、そのビーム201を標本250へと差し向けるよう構成することができる。
【0022】
標本250には、これに限られるものではないがフォトマスク、レティクル、ウェハ等を初め、本件技術分野で既知なあらゆる標本が包含されうる。ある実施形態では、標本250が、その標本250の運動を容易に行えるようステージアセンブリ上に配される。また、ある実施形態ではそのステージアセンブリが可駆動ステージとされる。例えば、そのステージアセンブリを、これに限られるものではないが一通り又は複数通りの直線方向(例.x方向、y方向及び/又はz方向)に沿い標本250を選択的に並進させるのに適した1個又は複数個の並進ステージを有するものとすることができる。また例えば、そのステージアセンブリを、これに限られるものではないが回動方向に沿い標本250を選択的に回動させるのに適した1個又は複数個の回動ステージを有するものと、することができる。また例えば、そのステージアセンブリを、これに限られるものではないが回動方向に沿い標本250を回動させ及び/又は直線方向に沿い標本250を選択的に並進させるのに適した回動ステージ及び並進ステージを有するものとすることができる。
【0023】
ある種の実施形態では、集光アーム213が、標本250から反射又は散乱されてきた照明を集光するよう構成される。また、ある種の実施形態によれば、集光アーム213により、その反射及び散乱光を、検出器アセンブリ260に備わる1個又は複数個のセンサ(例.検出器)へと、1個又は複数個の光学素子を介し差し向け及び/又はそこに合焦させることができる。その1個又は複数個の光学素子には、これに限られるものではないが1個又は複数個の鏡、1個又は複数個のレンズ、1個又は複数個のポラライザ、1個又は複数個のビームスプリッタ、波長板等を初め、本件技術分野で既知なあらゆる光学素子を含めることができる。例えば、イメージング鏡255により、標本250から反射及び散乱されてきた光を検出器アセンブリ260へと差し向けることができる。注記されることに、照明アーム211及び集光アーム213は、これに限られるものではないが暗視野モード、明視野モード等を初め、本件技術分野で既知なあらゆるモードに従い構成することができる。例えば、1個又は複数個の光学素子を選択的に調整することで、本検査システム200を暗視野モード、明視野モード等に従い構成することができる。
【0024】
検出器アセンブリ260には、標本250から反射又は散乱されてきた照明を検出することができ本件技術分野で既知な、あらゆるセンサ及び検出器アセンブリが包含されうる。例えば、検出器アセンブリ260を、電荷結合デバイス(CCD)又は時間遅延積分(TDI)検出器を有するものとすることができる。ある種の実施形態では、検出器アセンブリ260が、標本250についての検査データを、その標本250から反射又は散乱されてきた照明に基づき収集するよう、構成される。また、ある種の実施形態では、検出器アセンブリ260が、収集済画像(例.欠陥に関し試験されるべき試験画像)をコントローラ204に送るよう構成される。
【0025】
ここで注記されることに、システム200に備わる1個又は複数個の部材を、システム200に備わる様々な他部材に、本件技術分野で既知な何れの要領で可通信結合させてもよい。例えば、1個又は複数個のプロセッサ206を互いに、また他の諸部材に対し、有線接続(例.銅線、光ファイバケーブル等)や無線接続(例.RF結合、IR結合、WiMax(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、3G、4G、4G LTE、5G等)を介し可通信結合させてもよい。また例えば、コントローラ204を、検査サブシステム200に備わる1個又は複数個の部材に、本件技術分野で既知な何れの有線又は無線接続を介し可通信結合させてもよい。
【0026】
ある種の実施形態によれば、1個又は複数個のプロセッサ206のなかに、本件技術分野で既知なあらゆる処理素子を含めることができる。その意味で、この1個又は複数個のプロセッサ206のなかに、アルゴリズム及び/又は命令群を実行するよう構成されたあらゆるマイクロプロセッサ型デバイスを含めることができる。ある種の実施形態によれば、その1個又は複数個のプロセッサ206を、デスクトップコンピュータ、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、イメージコンピュータ、並列プロセッサその他のコンピュータシステム(例.ネットワーク接続されたコンピュータ)の構成部材であって、然るべく構成されたプログラムを実行することで本件開示の随所に記載の如く本システム200を動作させるよう構成されたものの構成部材と、することができる。認識されるべきことに、本件開示の随所に記載の諸ステップを、単一のコンピュータシステムにより実行してもよいし、それに代え複数個のコンピュータシステムにより(例えばクラウド情報処理システムにて)実行してもよい。更に、認識されるべきことに、本件開示の随所に記載の諸ステップを、1個又は複数個のプロセッサ206のうち何れの1個又は複数個で実行してもよい。一般に、語「プロセッサ」は、メモリ208から得たプログラム命令を実行する処理素子を1個又は複数個有するデバイス全てが包括されるよう、広義に定義することができる。更に、本システム200の様々な部材(例.照明源212、検出器アセンブリ260、コントローラ204等)に、本件開示の随所に記載の諸ステップのうち少なくとも一部分を実行するのに適したプロセッサ又は論理素子を組み込んでもよい。従って、上掲の記述は、本件開示に対する限定としてではなく単に例証として解されるべきである。
【0027】
メモリ208のなかには、1個又は複数個のプロセッサ206にて実行可能なプログラム命令群並びに検出器アセンブリ260から受け取ったデータを格納するのに適し本件技術分野で既知な、あらゆる格納媒体を含めることができる。例えば、そのメモリ208のなかに非一時的記憶媒体を含めることができる。例えば、そのメモリ2084のなかに、これに限られるものではないがリードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気又は光学記憶デバイス(例.ディスク)、磁気テープ、固体ドライブ等を含めることができる。更に注記されることに、そのメモリ208を、1個又は複数個のプロセッサ206それぞれと共に共通コントローラハウジング内に収容することができる。ある代替的実施形態によれば、そのメモリ208を、プロセッサ206及びコントローラ204の物理的居所に対し遠隔配置することができる。
【0028】
ある実施形態ではユーザインタフェースがコントローラ204に可通信結合される。ある実施形態によれば、そのユーザインタフェースのなかに、これに限られるものではないが1台又は複数台のデスクトップ、タブレット、スマートフォン、スマートウォッチ(登録商標)等を含めることができる。また、ある実施形態では、そのユーザインタフェースが、本システム200のデータをユーザ向けに表示するのに用いられるディスプレイを有する。そのユーザインタフェースのディスプレイには本件技術分野で既知なあらゆるディスプレイが包含されうる。例えば、そのディスプレイのなかに、これに限られるものではないが液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)式ディスプレイ、CRTディスプレイ等が包含されうる。いわゆる当業者には認識されるべきことに、ユーザインタフェースとの統合が可能なディスプレイデバイスは皆、本件開示における実装に適している。また、ある実施形態によれば、ユーザが、ユーザ向けに表示されたデータに応じ、そのユーザインタフェースに備わるユーザ入力デバイス(例.マウス及びキーボード)を介して選択事項及び/又は命令を入力することができる。
【0029】
ある種の実施形態によれば、本検査システム200に、照明強度分布を計測し基準補正を担うよう構成された、サイドモニタサブシステム220を設けることができる。サイドモニタサブシステム220には、照明源により生成された照明光201のうち一部分が集まるよう構成された、サイド検出器227を設けることができる。ある種の実施形態では、サイドモニタサブシステム220に、照明光201のうちその部分をサイド検出器227へと差し向けるよう構成された、イメージング素子(例.鏡)223が設けられる。サイド検出器227は、例えば、電荷結合デバイス(CCD)、相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサ、能動画素センサ(APS)、時間遅延積分(TDI)センサ等とすることができる。サイド検出器227により、照明源212からの照明光201のうちその部分をリアルタイムで(例.露出毎に又は走査TDIモードにて)直にイメージングすることで、標本250における照明強度分布を間接的に計測することができる。ある種の実施形態によれば、サイド検出器227にて、照明路211外の第1角度からビーム201のうちその部分を回収することができる。サイド検出器227の経路がなす第1角度は、照明路211がなす第2角度に対し相互排他的なものとすることができる。ここで注記されることに、照明光201のうちサイドモニタサブシステム220にて回収される部分は、その標本の照明に用いられることはないけれども、監視目的で用いることができる。
【0030】
照明源212の二次元(2D)画像でありサイド検出器227により回収されたものを用い、その照明源212により放射された照明ビーム201(及びその変動)の三次元(3D)空間分布を再構築することができる。その3D空間分布の生成にはトモグラフィ技術及びシステム対称性を利用することができる。その上で、ビーム201の3D幾何を、本検査システム200の光学モデルを通じ(例.シミュレーションにより)伝え、標本250における照明プロファイルを予測することができる。この直接マッピング、即ちサイド検出器227により回収された画像から標本250の照明野への直接マッピングを用いることで、照明源212により誘起される変動を(例えば検出器アセンブリ260により収集される画像内の諸画素の強度スケールを増減させることにより)補償することができる。ある種の実施形態によれば、サイド検出器227により収集された2D画像を、別の画像(例.ビーム201の照明路211上にある別の個所での照明強度分布の別の計測)について校正することができる。標本250の平面におけるあらゆる歪(例.照明強度の非ホモジニアス性)を、サイド検出器227により収集された2D画像における歪で以て、校正すること(例.補正すること又は関連付けること)ができる。加えて、ある種の実施形態によれば、その2D画像を、照明源212のコンディション(例.サイズ、位置、輝度)の監視及び制御に用いることができる。この要領で、サイドモニタサブシステム220を、照明源212の制御及び基準補正の双方に用いることができる。
【0031】
ある種の実施形態によれば、本検査システム200にインライン検出器サブシステム230を設け、(i)ビーム201の安定化用にフィードバックを行い及び/又は(ii)インライン基準補正を行う(例.検出器アセンブリ260により収集された試験画像内の有歪画素の強度を調整する)ようそれを構成することができる。そのインライン検出器サブシステム230に、ビーム安定化用の1個又は複数個の検出器233a,bと、基準補正用の検出器237とを設けることができる。注記されることに、基準補正計測をサイドモニタサブシステム220により実行しても、インライン検出器サブシステム230により実行しても、或いはそれらサブシステム双方により実行してもよい。
【0032】
ある種の実施形態によれば、検出器233aをビーム201の経路上の第1位置、検出器233bをビーム201の経路上の第2位置、検出器237をビーム201の経路上の第3位置に設けることができる。一般に、複数個の検出器233a,b及び237をビーム201の経路上の複数位置に設ければよいので(例.3通りの位置に3個の検出器、5通りの位置に5個の検出器等)、本件開示は何らかの具体的個数の検出器233a,b及び237に限定されるものではない。各検出器233a,b及び237により、ビーム201の周縁部内の光を受光することができ、そのビーム201の経路上の個別位置にてそのビーム201の断面を計測することができる。
【0033】
ある種の実施形態によれば、検出器233a,b及び237それぞれを、2個以上のセグメント(例.セル又は象限)が備わるマルチセル検出器とすることができる。注記されることに、本件開示はセグメントが2個しかないものに限定されるわけではなく、そのマルチセル検出器を、2個超(例.4個、6個、8個等)のセグメントが備わるものとしてもよい。そのマルチセル検出器233a,b及び237を、ビーム201のEUV光子がその照明ビームの周縁部に位置する検出器233a,b及び237に射突(例.それらセグメントの近隣を通過)した際に光電流を生成するように、構成することができる。ある種の実施形態によれば、検出器233a,b及び237のうち少なくとも1個を、アパーチャを有していて(例.その検出器個々の中央部を通じ)光子を通せるものとすることができる。ある種の実施形態によれば、検出器237を、検出器アセンブリ260(例.TDIセンサ)に投射される領域外で、中間視野面(例.ホモジナイザより後段)に所在させることができる。(例.モニタサブシステム220に加え)その検出器237により基準補正用に照明強度分布を計測することができる。ある種の実施形態によれば、検出器233a,bを、ビーム201の経路に沿い検出器237より前段に(例.ホモジナイザより前段に)配置し、光学系安定化用に信号を収集することができる。
【0034】
図3A,
図3Bは、順に、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る検査システム200にてマルチセル検出器233a及びb,237として使用されうる中空マルチセル検出器300a,透過マルチセル検出器300bを描出する概略模式図である。注記されることに、検出器233a,b及び237のうち1個又は複数個を中空マルチセル検出器300a又は透過(例.薄膜)マルチセル検出器300bとすることができる。ある例では、検出器233a,bが中空マルチセル検出器(例.個々の中央部にアパーチャがあるもの)とされ、検出器237が透過マルチセル検出器(例.その中央部にアパーチャがない薄膜)とされる。市場で入手可能な検出器ソリューションには、米国カリフォルニア州カマリロ所在のOpto Diode Corporation出自のAXUVPS7(商品名)がある。
【0035】
中空マルチセル検出器300aは、光ビーム201の強度を複数個のセグメント(例.4個のセル又は象限)にて検出するよう構成することができる。マルチセル検出器300aの中央部にあるアパーチャは、光ビーム201を通せるよう(例.自検出器300aを介し他の検出器に到達させうるよう)構成することができる。検出器300aは、EUV光ビーム201が自検出器300aの周縁部(例.4個のセグメント)を通過したときに光電流を生成しうるものである。この構成の検出器300aによれば、ビーム201の周縁部におけるパワーの計測を、その光ビーム201のパワーを過剰に低下させることなく行うことができる。透過マルチセル検出器300bは、EUV光が自検出器300bの周縁部を通過したときに光電流を生成するよう、構成することができる。ある種の実施形態によれば、検出器300a,bをスペクトル純度フィルタとして動作させることができる。そのフィルタをセグメント化して複数部材にすることによって、検出器300a,bを通過していくビーム201の空間的照明強度分布を、複数目的で(例.基準補正及びビーム安定化の双方のため)計測することができる。
【0036】
基準補正に関しては、光ビーム201の照明強度分布を、検出器アセンブリ260により収集された諸画像の画素について校正(例.マッピング)すればよい。検出器237により計測された光強度分布中の非ホモジニアスな諸エリア(例.強度が高過ぎ又は低過ぎる諸エリア)を補正対象と目し、検出器260により検出された諸画像内の対応する画素を(例.対応する画素の強度スケールを増減させることで)相応に調整すればよい。ビーム安定化に関しては、ビーム201がなす画像のオフセット(例.中心点からのそれ)を、検出器233a,bにより経時計測すればよい。その上で、そのオフセットを、補正動作(例.照明源212の位置を調整することによるビームの再センタリング及び安定化、或いは光学系例えば鏡205及び245の位置の調整)に用いればよい。
【0037】
ある種の実施形態によれば、マルチセル検出器233a,bの入射パワーを約3×10-4W、電源周波数を約5000Hz、パルス1個当たりエネルギを約6×10-5mJ、パルス1個当たり検出光子数を約4×109光子/パルス、パルス1個当たり検出電子数を約9×1010電子/パルス、検出電荷量を約15nAs、1セクション当たり検出電荷量を約3.7nAsとすることができる。注記されることに、本発明は本願記載の諸パラメタに限定されるものではなく、他のパラメタにすること(例.ユーザが予め定め又はリアルタイムに調整すること)も可能である。
【0038】
図4~
図9は、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り検出器233a,b及び237により計測(例.収集)された光強度分布を示す画像である。
【0039】
図4及び
図5に示されているのは、ビーム安定化用マルチセル検出器233aにおける光強度分布の計測結果である。
図6に示されているのは、ビーム安定化用マルチセル検出器233bにおける光強度分布の計測結果である。図示の通り、照明強度は検出器233a,bの周縁部でのみ計測されており、マルチセル検出器233a,bの中央部にあるアパーチャはビーム201を通しているので、ビーム201のパワーが過剰に低減されることはない。
【0040】
図7に示されているのは、マルチセル検出器237における光強度分布の計測結果である。
図8及び
図9に示されているのは、サイドモニタサブシステム220のサイド検出器227による、照明源212の強度分布の直接計測結果である。マルチセル検出器237及びサイド検出器227により収集された計測結果を、(例.それら計測結果における歪を、検出器アセンブリ260により収集された試験画像内の有歪画素にマッピングすることによる)基準補正に用いることができる。
【0041】
図10は、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る基準補正兼ビーム安定化用検査方法1000を描出するフローチャートである。
【0042】
ステップ1001にて、極端紫外(EUV)照明ビーム(例.ビーム201)を照明源(例.照明源212)により放射させることができる。そのビームの波長を190nm未満とすることができる。その照明源には、190nm未満の波長でビームを放射することができ本件技術分野で既知なあらゆる好適な光源が包含されうる。そうした光源としては、これに限られるものではないが、レーザ誘起プラズマ光源、放電誘起プラズマ光源、カソード/アノード型光源、シンクロトロン光源等がある。加えて、本願記載の諸実施形態は、比較的広い角度範囲内へと光を放射する何れの光源(例.プラズマ依拠のそれ)とも併用することができる。
【0043】
ステップ1002にて、そのビームを第1マルチセル検出器(例.検出器233a,b)に通して光電流を発生させることができる。その第1マルチセル検出器は、アパーチャがその中央部にありビームを通せるものとすることができる。第1照明強度分布信号をその光電流に基づき生成することができる。その第1照明強度分布信号をビーム安定化に用いることができる。例えば、第1照明強度分布信号のオフセット(例.中心点からのそれ)を、第1マルチセル検出器により経時計測することができる。その上で、そのオフセットを補正動作(例.照明源212の位置を調整することによるビーム201の再センタリング及び安定化)に用いることができる。
【0044】
ステップ1003にて、そのビームを第2マルチセル検出器(例.検出器237)に通して光電流を発生させることができる。第2照明強度分布信号をその光信号に基づき生成することができる。その第2照明強度分布信号を基準補正に用いることができる。例えば、第2照明強度分布信号における歪(例.明る過ぎ又は暗過ぎる非ホモジニアスエリア)を、検出器アセンブリ(例.検出器アセンブリ260)により収集された試験画像内の有歪画素へとマッピングすることができる。
【0045】
ステップ1004にて、標本(例.標本250)をその照明ビームにより照明することができる。その標本がフォトマスク(即ちレティクル)であっても半導体ウェハであってもよい。そのビームをその標本にて散乱及び/又は反射させることができる。ステップ1005にて、そのビームを検出器アセンブリにより受光することができる。ステップ1006にて、その検出器アセンブリにより、その収集された照明に基づき画像を生成することができる。
【0046】
ステップ1007にて、第2照明強度分布信号における歪を諸画像内の有歪画素へとマッピングすることができる。ステップ1008にて、それら有歪画素の強度スケールを調整することで、補正済画像(例.歪やノイズがないホモジニアスな画像)を生成することができる。ステップ1009にて、それら補正済画像を用い(例.それら補正済画像から基準画像を減じ欠陥検出アルゴリズムを適用することで)その標本上の欠陥を検出することができる。
【0047】
本件開示の諸実施形態は幾通りかの点で有利である。照明源212の輝度分布を(例.サイドモニタサブシステム220を用い)2D画像として監視することに加え、ビーム201に対しインラインな位置における輝度分布を(例.マルチセル検出器237を用い)監視することで、時間及び空間ドメインにおける照明プロファイルの変動に関する補正が可能となる。この補正のための計測結果が複数回採取されるため、(例.モニタサブシステム220及びマルチセル検出器237の双方が標本250の視野面における歪について校正されているので)各計測結果により他の計測結果が補強されることとなる。
【0048】
加えて、ビーム安定化のためのフィードバックにより、不安定でジッタリングしている照明源が使用される際の画像忠実度が、顕著に改善される。そのビーム安定化を、EUVビーム路幾何のリアルタイムな直接計測により達成することができる。更に、複数通りの光学的診断計測結果を、ビーム201の経路上にある余分な角度空間を用い得ることができる。主ビーム201の使用が減るため、検出器アセンブリ260のTDIセンサ上での光子計数値が影響を受けない。加えて、周縁部でのモニタリングにより、主ビーム201とのあらゆる相互作用が回避されるため、望ましくない収差の入り込みが防止される。
【0049】
本願記載の何れの方法でも、それら方法実施形態の1個又は複数個のステップの結果がメモリ内に格納されるようにすることができる。それら結果のなかに本願記載の諸結果のうち何れが含まれていてもよいし、その格納が本件技術分野で既知な何れの要領で行われるのでもよい。そのメモリには、本願記載のあらゆるメモリや、本件技術分野にて既知で好適な他のあらゆる格納媒体が包含されうる。結果格納後は、そのメモリ内の諸結果にアクセスし、本願記載の方法又はシステム実施形態のうち何れかで用いること、ユーザへの表示向けにフォーマットすること、別のソフトウェアモジュール、方法又はシステムにて用いること等々ができる。更に、その結果格納が「恒久的」であっても「半恒久的」であっても「一時的」であっても或いは幾ばくかの期間に亘るのでもよい。例えば、そのメモリをランダムアクセスメモリ(RAM)としてもよく、結果がそのメモリ内に必ずしも永久には存在しないのでもよい。
【0050】
いわゆる当業者には認識し得るように、本願記載の諸部材、諸動作、諸デバイス、諸物体及びそれらに付随する議論は、概念的明瞭性さに資する例として用いられており、様々な構成上の修正が考慮されている。従って、本願での用法によれば、先に説明した具体的な手本及びそれに付随する議論は、それらのより一般的な分類階級の代表たることを意図するものである。一般に、どのような具体的手本の使用も、その分類階級の代表たることを意図するものであり、具体的な諸部材、諸動作、諸デバイス及び諸物体が含まれていないことを限定として捉えるべきではない。
【0051】
本願におけるほぼ全ての複数形語及び/又は単数形語の使用に関し、いわゆる当業者であれば、複数形から単数形へ及び/又は単数形から複数形へと、その文脈及び/又は用途に相応しく読み替えることができる。明瞭さに鑑み、本願では、様々な単数形/複数形読み替えについて明示的に説明していない。
【0052】
本願記載の主題を表す諸部材は、ときとして、他部材内に組み込まれ又は他部材に接続・連結される。その種の図示構成は単なる例示であり、実のところは、他の多くの構成を実施し同じ機能を実現することが可能である。概念的には、どのような部材配置であれ同じ機能を実現しうる部材配置では、それら部材がその所望機能が実現されるよう有効に「連携」しているのである。従って、本願中の何れの二部材であれ特定機能を実現すべく組み合わされているものは、その所望機能が実現されるよう互いに「連携」していると見なせるのであり、構成や介在部材の如何は問われない。同様に、何れの二部材であれそのように連携しているものはその所望機能を実現すべく互いに「接続・連結され」又は「結合され」ているとも見ることができ、また何れの二部材であれそのように連携させうるものはその所望機能を実現すべく互いに「結合可能」であるとも見ることができる。結合可能、の具体例としては、これに限られないが、部材同士が物理的に嵌合可能であり及び/又は物理的に相互作用すること、及び/又は部材同士が無線的に相互作用可能であり及び/又は無線的に相互作用すること、及び/又は部材同士が論理的に相互作用可能であり及び/又は論理的に相互作用することがある。
【0053】
更に、本発明は別項の特許請求の範囲によって定義される。総じて、本願特に別項の特許請求の範囲(例.別項の特許請求の範囲の本文)にて用いられる語は概ね「開放」語たる趣旨のものである(例.語「~を含んでいる」は「~を含んでいるが~に限られない」、語「~を有している」は「少なくとも~を有している」、語「~を含む」は「~を含むが~に限られない」等々と解されるべきである)。ある具体的個数の請求項内導入要件を意図しているのであれば、その意図がその請求項に明示されるので、そうした要件記載がなければそうした意図がないということである。例えば、理解の助けとして、後掲の添付諸請求項のなかには、導入句「少なくとも1個」及び「1個又は複数個」の使用による請求項内要件の導入が組み込まれているものがある。しかしながら、不定冠詞「a」又は「an」による請求項内導入要件の導入によりその請求項内導入要件を含む個別請求項全てがその構成要件を1個しか含まない発明に限定される、といった含蓄があるかのように、そうした語句の使用を解釈すべきではないし、まさにその請求項に導入句「1個又は複数個」又は「少なくとも1個」と不定冠詞例えば「a」又は「an」が併存している場合でもそう解釈すべきではないし(例えば「a」及び/又は「an」は、通常、「少なくとも1個」又は「1個又は複数個」を意味するものと解されるべきである)、またこれと同じことが定冠詞の使用による請求項内要件の導入に関しても成り立つ。加えて、ある請求項内導入要件につき具体的な個数が明示されている場合でも、いわゆる当業者には認識頂けるように、通常は、少なくともその明示個数、という意味にその個数記載を解すべきである(例.他の修飾語句を欠く「2個の構成要件」なる抜き身的表現は、通常、少なくとも2個の要件或いは2個以上の要件という意味になる)。更に、「A、B及びCのうち少なくとも1個等々」に類する規約が用いられている例では、総じて、いわゆる当業者がその規約を理解するであろう感覚に従いそうした構文が企図されている(例.「A、B及びCのうち少なくとも一つを有するシステム」には、これに限られるものではないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A・B双方、A・C双方、B・C双方、及び/又は、A・B・C三者を有するシステム等々が包含されることとなろう)。2個以上の代替的な語を提示する分離接続詞及び/又は分離接続句はほぼ全て、明細書、特許請求の範囲及び図面のうちどこにあるのかを問わず、一方の語、何れかの語、或いは双方の語を包含する可能性が考慮されているものと理解されるべきである。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を包含するものと解されよう。
【0054】
本件開示及びそれに付随する長所の多くについては前掲の記述により理解し得るであろうし、開示されている主題から離隔することなく或いはその主要な長所全てを損なうことなく諸部材の形態、構成及び配置に様々な改変を施せることも明らかであろう。述べられている形態は単なる説明用のものであり、後掲の特許請求の範囲の意図はそうした改変を包括、包含することにある。更に、本発明を定義しているのは別項の特許請求の範囲である。