(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】PZT材料の結晶層を製造するための方法、及びPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板
(51)【国際特許分類】
C30B 29/32 20060101AFI20240312BHJP
C30B 25/18 20060101ALI20240312BHJP
C30B 33/06 20060101ALI20240312BHJP
C30B 31/22 20060101ALI20240312BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20240312BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20240312BHJP
H10N 30/076 20230101ALI20240312BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20240312BHJP
【FI】
C30B29/32 A
C30B25/18
C30B33/06
C30B31/22
C23C16/40
C23C14/08 K
H10N30/076
H10N30/853
(21)【出願番号】P 2020549791
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 IB2019000201
(87)【国際公開番号】W WO2019186264
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-09
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100154656
【氏名又は名称】鈴木 英彦
(72)【発明者】
【氏名】ギスレン, ブルーノ
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-234419(JP,A)
【文献】国際公開第2016/203955(WO,A1)
【文献】特開2012-001432(JP,A)
【文献】特開2018-046512(JP,A)
【文献】特開2003-309299(JP,A)
【文献】特表2008-532328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0171812(US,A1)
【文献】国際公開第2004/079059(WO,A1)
【文献】THIN SOLID FILMS,2012年,vol.520,p.4572 - 4575,http://dx.doi.org/10.1016/j.tsf.2011.11.073
【文献】MATERIALS LETTERS,2001年,vol.49,p.313 - 317
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
H10N 30/853
H10N 30/076
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SrTiO
3材料の単結晶シード層(200、200’、2000’)を
SOIタイプのキャリア基板(100、100’、100’’)に転写し、続いてPZT材料の結晶層(300、300’、3001、3002、3003)をエピタキシャル成長させることを含む、PZT材料の結晶層(300、300’、3001、3002、3003)を生成するための方法であって、
前記単結晶シード層(200、200’、2000’)が、10μm未満の厚さを有し、
SOIタイプの前記キャリア基板(100、100’、100’’)へのSrTiO
3材料の前記単結晶シード層(200、200’、2000’)の前記転写が、SrTiO
3材料の単結晶基板(20、20’、2001、2002、2003)を前記キャリア基板(100、100’、100’’)に直接接合するステップ(1’、1’’、1’’’)と、それに続くSrTiO
3材料の前記単結晶基板(20、20’、2001、2002、2003)を薄化するステップ(2’、2’’、2’’’)とを含
み、
SrTiO
3
材料の前記単結晶シード層(200、200’、2000’)が、それぞれがSOIタイプの前記キャリア基板(100、100’、100’’)に転写される複数のタイル(2001’、2002’、2003’)の形態である、方法。
【請求項2】
前記薄化するステップ(2’’)が、
SOIタイプの前記キャリア基板(100、100’、100’’)に転写されることが意図されたSrTiO
3材料の前記単結晶基板(20’)の一部(200’)の範囲を定める脆弱化ゾーンの形成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脆弱化ゾーンの前記形成が、原子及び/又はイオン種を注入すること(0’’)によって得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記薄化するステップ(2’’)が、SrTiO
3材料の前記単結晶基板(20’)の前記一部(200’)を
SOIタイプの前記キャリア基板(100、100’、100’’)に転写するように、前記脆弱化ゾーンで剥離するステップを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記接合するステップ(1’、1’’、1’’’)が、分子接着ステップである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
SOIタイプの前記キャリア基板(100、100’、100’’)が、レーザデボンディング技法及び/又は化学的侵襲によって及び/又は機械的応力によって剥離されるように構成された剥離可能な界面(40、40’)を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)材料の結晶層を生成するための方法、及びこのようなPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ある特定の材料は、現在、大口径ウエハの形態の単結晶基板としてはもちろんのこと、結晶基板としても入手することができない。さらに、ある特定の材料は、大口径で入手可能ではあるが、特に欠陥の密度又は要求される電気的若しくは光学的特性に関して、品質の点からある特定の特性又は仕様を有していない場合がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、PZT材料の結晶層、好ましくはPZT材料の単結晶層を生成するための方法、及びこのようなPZT材料の結晶層、好ましくはこのようなPZT材料の単結晶層をエピタキシャル成長させるための基板を提供することによって、従来技術のこれらの制限を克服することを目的とする。このようにして、現在入手可能なPZT材料の結晶又はさらには単結晶基板のサイズの問題に対処することが可能である。
【0004】
本発明は、SrTiO3材料の単結晶シード層をシリコン材料のキャリア基板に転写し、続いてPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させることを含む、PZT材料の結晶層を生成するための方法に関する。
【0005】
有利な実施形態では、PZT材料の結晶層は、単結晶である。
【0006】
有利な実施形態では、単結晶シード層は、10μm未満、好ましくは2μm未満、より好ましくは0.2μm未満の厚さを有する。
【0007】
有利な実施形態では、SrTiO3材料の単結晶シード層のシリコン材料のキャリア基板への転写は、SrTiO3材料の単結晶基板をキャリア基板に接合するステップと、それに続くSrTiO3材料の前記単結晶基板を薄化するステップとを含む。
【0008】
有利な実施形態では、薄化するステップは、シリコン材料のキャリア基板に転写されるSrTiO3材料の単結晶基板の一部の範囲を定める脆弱化ゾーンの形成を含む。
【0009】
有利な実施形態では、脆弱化ゾーンの形成は、原子及び/又はイオン種を注入することによって得られる。
【0010】
有利な実施形態では、薄化するステップは、SrTiO3材料の単結晶基板の前記一部をシリコン材料のキャリア基板に転写するように、脆弱化ゾーンで剥離するステップを含み、特に、剥離するステップが熱応力及び機械的応力の印加を含む。
【0011】
有利な実施形態では、接合ステップは、分子接着ステップである。
【0012】
有利な実施形態では、SrTiO3材料の単結晶シード層は、それぞれがシリコン材料のキャリア基板に転写される複数のタイルの形態である。
【0013】
有利な実施形態では、シリコン材料のキャリア基板は、レーザデボンディング技法及び/又は化学的侵襲によって及び/又は機械的応力によって剥離されるように構成された剥離可能な界面を含む。
【0014】
本発明は、シリコン材料のキャリア基板上に、SrTiO3材料の単結晶シード層を含むことを特徴とする、PZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板にも関する。
【0015】
有利な実施形態では、PZT材料の結晶層は、単結晶である。
【0016】
有利な実施形態では、SrTiO3材料の単結晶シード層は、複数のタイルの形態である。
【0017】
有利な実施形態では、シリコン材料のキャリア基板は、レーザデボンディング技法及び/又は化学的侵襲によって及び/又は機械的応力によって剥離されるように構成された剥離可能な界面を含む。
【0018】
本発明は、SrTiO3材料の単結晶シード層をシリコン材料のキャリア基板に転写し、続いてPMN-PT又はPZN-PT材料の結晶層をエピタキシャル成長させることを含む、PZT材料の格子定数に近い格子定数を有するPMN-PT及び/又はPZN-PTを含む材料の結晶層を生成するための方法にも関する。
【0019】
本発明は、YSZ又はCeO2又はMgO又はAl2O3材料の単結晶シード層をシリコン材料のキャリア基板に転写し、続いてPMN-PT又はPZN-PT材料の結晶層をエピタキシャル成長させることを含む、PZT材料の格子定数に近い格子定数を有するPMN-PT及び/又はPZN-PTを含む材料の結晶層を生成するための方法にも関する。
【0020】
本発明は、シリコン、サファイア、Ni、又はCu材料のキャリア基板上に、SrTiO3又はYSZ又はCeO2又はMgO又はAl2O3材料の単結晶シード層を含むことを特徴とする、PZT材料に近い格子定数を有するPMN-PT及び/又はPZN-PTを含む材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことによってよりよく理解されるであろう。
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態によるPZT材料の結晶層を生成するための方法、及び本発明のこの実施形態によるこのようなPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板である。
【
図2】本発明の別の実施形態によるPZT材料の結晶層を生成するための方法、及び本発明のこの別の実施形態によるこのようなPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板である。
【
図3】本発明のさらに別の実施形態によるPZT材料の結晶層を生成するための方法、及び本発明のこの別の実施形態によるこのようなPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板である。
【
図4】本発明のさらに別の実施形態によるPZT材料の結晶層を生成するための方法、及び本発明のこの別の実施形態によるこのようなPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板である。
【
図5】本発明のさらに別の実施形態によるPZT材料の結晶層を生成するための方法、及び本発明のこの別の実施形態によるこのようなPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図の読みやすさを向上させるために、様々な層は、必ずしも縮尺通りには示されていない。
【0024】
図1は、SrTiO
3材料の単結晶シード層200が転写されるシリコン材料のキャリア基板100を示す。単結晶シード層200のための他の材料は、YSZ、CeO
2、MgO、又はAl
2O
3などが想定されてもよく、これらは、PZT材料の格子定数に近い格子定数を有する。シリコン材料のキャリア基板100は、サファイア、Ni、又はCu材料のキャリア基板100に置き換えることもできる。シリコンの使用により、300mmタイプの大型の装置にのみPZT材料の層の適用分野が開放されるだけでなく、シリコン以外の異種材料、特にPZTに対する生産ラインでの受け入れに関する要件が高いマイクロエレクトロニクス産業にもPZT材料を適合させることができるという利点を有する。SrTiO
3材料の単結晶シード層200をシリコン材料のキャリア基板100に接合するステップ1’は、好ましくは分子接着ステップによって行われる。この分子接着ステップは、好ましくは周囲温度での結合ステップを含み、それに続いて結合界面を圧密化するためのアニールが行われ、このアニールは、通常、最大900℃、又はさらには1100℃の高温で数分~数時間の持続時間行われる。サファイア材料のキャリア基板に関しても、単結晶シード層をキャリア基板に接合するステップ1’は、上述したような同程度の典型的な条件を用いて分子接着ステップによって行われることが好ましい。Ni又はCu材料のキャリア基板に関しては、単結晶シード層をキャリア基板に接合するステップ1’は、例えば電着(ECD)又は電鋳(電気めっき)による堆積を介して、単結晶シード層上にNi又はCu材料を堆積させるステップによって置き換えられる。この技法は、通常、タイ層(tie layer)及びストリッピングの使用を含み、それ自体は知られており、ここではさらに詳細には説明しない。
【0025】
図1は、SrTiO
3材料の単結晶基板20をシリコン材料のキャリア基板100に接合するステップ1’を概略的に示す。本ステップは、シリコン材料のキャリア基板100に接合された後、SrTiO
3材料の単結晶基板20を薄化するステップ2’に続く。
図1は、例えば化学エッチング又は機械的エッチング(研磨、研削、フライス加工など)によって実施することができる薄化するステップ2’を概略的に示す。このようにして、
図1に概略的に示されるPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板10上にPZT材料の結晶層300をエピタキシャル成長させるステップ3’のための単結晶シードとして機能するSrTiO
3材料の単結晶シード層200を得ることができる。当業者は、本発明のPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板10上にPZT材料の結晶層300をエピタキシャル成長させるステップ3’を最適化するために、バルク結晶基板上のホモエピタキシ又はヘテロエピタキシで通常使用されるPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるために使用されるパラメータを調整することができるであろう。1つの可能性は、PZT材料のエピタキシャル成長は、陰極スパッタリング、例えば、当業者に知られているマグネトロン陰極スパッタリングによって行われることである。他の可能性は、低温での堆積に続いて、350℃~650℃若しくはさらには700℃の温度での様々なアニールを含むゾルゲル法の適用、又は当業者に知られている前駆体を使用する、約550℃の典型的な温度でのMOCVDによるエピタキシャル成長のいずれかがある。単結晶シード層の存在により、PZT材料の結晶層の結晶品質に好ましい影響を与えることが可能になる。特に、PZT材料の単結晶層を得ることが可能である。ちなみに、本発明は、PZT材料のエピタキシに限定されず、PZT材料の格子定数に近い格子定数を有するPMN-PT又はPZN-PTなどのペロブスカイトタイプのある特定の圧電結晶にも拡張される。
【0026】
キャリア基板100の熱膨張係数は、PZT材料の結晶層300をエピタキシャル成長させるステップ3’中に、PZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板10の熱挙動を支配することに留意されたい。これは、PZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板10の全厚さが数10μm~数100μmのオーダであるのに対して、SrTiO3材料の単結晶シード層200の厚さが小さく、好ましくは1μm未満であることに起因する。ちなみに、SrTiO3材料は、PZT材料の結晶層300の欠陥が可能な限り少なくなるエピタキシャル成長を可能にするために、PZT材料の結晶層300用に選択された格子定数、好ましくは緩和状態の格子定数に可能な限り近い格子定数を有する単結晶シード層を提供するように選択される。ちなみに、キャリア基板100の材料は、エピタキシによって得られる結晶層300の欠陥を減少させるという同じ理由から、特にPZT材料の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有するのが有利である。したがって、サファイア材料のキャリア基板100が、本発明のために使用されるのが好ましい。
【0027】
図2は、PZT材料の結晶層を生成するための方法の一実施形態を概略的に示し、本実施形態は、SrTiO
3材料の単結晶基板20’が、シリコン材料のキャリア基板100’に転写されることが意図されたSrTiO
3材料の単結晶基板20’の一部200’の範囲を定める脆弱化ゾーンを形成するために、原子及び/又はイオン種を注入するステップ0’’を受けるという点と、薄化するステップ2’’が、SrTiO
3材料の単結晶基板20’の前記一部200’をシリコン材料のキャリア基板100’に転写するように、この脆弱化ゾーンで剥離するステップを含み、特に、この剥離するステップが熱応力及び/又は機械的応力の印加を含むという点と、で
図1に関連して説明した実施形態とは異なる。したがって、本実施形態の利点は、SrTiO
3材料の出発単結晶基板20’の残りの部分201を回収することができ、したがって、この残りの部分201を再度使用して、同じプロセスにかけることができるためコストを削減することができる。
図2に示したPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板10’は、
図1に関連して説明した方法で既に説明したように、PZT材料の結晶層300’を成長させるステップ3’’に使用される。一般に、注入ステップ0’’は、水素イオンを用いて行われる。当業者によく知られている1つの有利な代替手段は、水素イオンのすべて又は一部をヘリウムイオンに置き換えることである。水素注入ドーズ量は、典型的には、6×10
16cm
-2~1×10
17cm
-2である。注入エネルギーは、典型的には、50~170keVである。したがって、剥離は、典型的には、300~600℃の温度で行われる。したがって、200nm~1.5μmのオーダの単結晶シード層の厚さが得られる。剥離操作の直後に、結合界面の強化若しくは良好なレベルの粗さの回復のいずれか、又は注入ステップで生成された可能性のある任意の欠陥の補正、さもなければエピタキシの再開のためにシード層の表面を調製すること目的として、追加の技術的ステップが追加されるのが有利である。これらのステップは、例えば、研磨、(湿式又は乾式)化学エッチング、アニール、化学洗浄である。これらは、単独で、又は当業者が調整可能な組合せで使用されてもよい。
【0028】
図3は、PZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板(10、10’)が、剥離されるように構成された剥離可能な界面40’を含む点で、
図1及び
図2に関連して説明した実施形態とは異なる。シリコン材料のキャリア基板100の場合、この界面40’は、接合ステップ中に単結晶シード層と接合される、例えばシリコン材料の粗界面であってもよい。さもなければ、シリコン材料のキャリア基板100内に粗界面が存在してもよく、この粗界面は、例えば、2つのシリコンウエハを接合することによって得られる。別の実施形態は、例えば、当業者に知られているウエハの縁部にブレードを挿入することによって又はアニールを施すことによって機械的応力及び/又は熱応力の印加中に分裂しやすい多孔質シリコン層を単結晶シード層と接合される面に導入することである。この界面は、本発明のプロセス(例えば、剥離、エピタキシャル成長など)中に遭遇する他の機械的応力及び/又は熱応力に耐えるように選択されるのは明らかである。サファイア材料のキャリア基板の場合、この界面は、単結晶シード層と接合されるサファイアの面上に生成される酸化ケイ素と、窒化ケイ素と、酸化ケイ素のスタック(いわゆるONOタイプ構造)であってもよい。このようなスタックは、サファイアキャリア基板を通過するレーザを印加(「レーザリフトオフ」タイプの剥離又はデボンディング)すると、窒化ケイ素層で剥離を受けやすい。当業者は、この剥離可能な界面を生成するための他の方法を特定することが可能である。したがって、これらの様々な剥離構成により、エピタキシャル層を成長パラメータに適合しない最終キャリアに転写すること、又は自立型のPZT材料の厚膜を調製することのいずれかが可能になる。
【0029】
図4は、PZT材料の結晶層を生成するための方法の一実施形態を概略的に示し、本実施形態は、SrTiO
3材料の単結晶シード層2000’が、それぞれがシリコン材料のキャリア基板100’’に転写される複数のタイル(2001’、2002’、2003’)の形態である、という点で、
図1、
図2、及び
図3に関連して説明した実施形態とは異なる。様々なタイルは、任意の形状(正方形、六角形、短冊など)を取ることができ、数mm
2~数cm
2にわたる異なるサイズを有することができる。チップ間の間隔も、求められているものが最大カバレッジ密度であるのか(この場合、0.2mm未満の間隔が選択されることが好ましい)、又は逆に基板内のタイルの最大広がりであるのか(この場合、間隔は、数ミリメートル、さらには数センチメートルであってもよい)に応じて大きく変わってもよい。各タイルに対して、当業者は、所望の転写を適用することが可能であり、特定のプロセスに限定されない。したがって、
図1に概略的に示される方法に関連して説明された技術的教示、又は
図2に概略的に示される方法に関連して説明された技術的教示、さらにはこれらの2つの組合せを適用することを想定することが可能である。したがって、キャリア基板100’’上で薄化すること2’’’によって、PZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板10’’の各タイル上に、PZT材料の結晶層(3001、3002、3003)をエピタキシャル成長3’’’させるための単結晶シード層(2001’、2002’、2003’)を生成するために、キャリア基板100’’のサイズよりも小さいサイズを有するSrTiO
3材料の単結晶基板(2001、2002、2003)を接合すること1’’’が可能である。
【0030】
したがって、
図1~
図4に関連して説明した様々な実施形態により、PZT材料の結晶層に作られた構成要素と、シリコン材料のキャリア基板に作られた構成要素との共集積の可能性が開ける。このキャリア基板は、単にシリコン基板であってもよいが、このキャリア基板はまた、シリコン基板を薄いシリコン層から分離する酸化ケイ素層を含むSOIタイプの基板であってもよい。
図1~
図4に関連して説明した実施形態の場合、キャリア基板へのアクセスは、当業者に知られているリソグラフィ及びエッチングによって簡単に達成することができる。
図4に関連して説明した実施形態の場合、タイルの位置及びそれらの間隔を単に選択することも可能である。
【0031】
図5は、一実施形態を概略的に示し、本実施形態は、キャリア基板100’、及びそれに続くPZT材料の結晶層をエピタキシャル成長させるための基板10’’が、例えば、レーザデボンディング(レーザリフトオフ)技法及び/又は化学的侵襲によって及び/又は機械的応力によって剥離されるように構成された剥離可能な界面40を含むという点で、
図4に関連して説明した実施形態とは異なる。この界面40により、
図3に関連して既に述べたように、キャリア基板100’’の一部を除去することができる。一例は、シリコン基板を薄いシリコン層から分離する酸化ケイ素層を含むSOIタイプのキャリア基板100の使用である。この酸化物層は、この酸化物層を選択的にエッチングすることによって、例えばフッ化水素(HF)酸浴に浸漬することによって、剥離可能な界面40として使用することができる。化学エッチングによって埋め込み層を剥離するというこの選択肢は、複数の小さな基板を処理することと組み合わせた場合に特に有利である。具体的には、アンダーエッチングの範囲は、工業的に合理的な処理条件及び時間を維持することが望まれる場合、一般的に数センチメートル、又はさらには数ミリメートルに制限される。複数の小さな基板を処理することにより、直径が最大で300mmの場合がある基板の最縁部だけではなく、各タイル間の埋め込み層へのアクセスが可能になるため、いくつかの化学エッチングフロントの開始が可能になる。SOIタイプのキャリア基板の場合、いくつかのエッチングフロントの開始を可能にするために、タイル間のシリコンの薄い層を部分的に除去することがこうして可能である。
【0032】
シリコンの薄層は、所定の厚さ(5nm~600nmの間で変わってもよく、又は意図された用途に応じてさらに厚くてもよい)を有するため、したがって、この薄層を使用して、マイクロエレクトロニクス部品を形成することができ、単一の基板にPZT材料をベースとした部品を共集積することが可能になる。
【0033】
したがって、エピタキシによって結晶層(3001、3002、3003)を形成した後に、この構造を最終基板に接合し、剥離可能な界面40で、キャリア基板100’’の一部を剥離することを考えることも可能である。したがって、最終的な基板は、例えば、以前に行われた成長のパラメータに適合しない追加の機能性(例えば、可撓性プラスチックタイプの最終基板又は金属線を含む最終基板)を提供することができる。加えて、一般に、剥離可能な界面は、必ずしもキャリア基板の内部に位置しているとは限らず、
図3に関連して既に説明したように、このキャリア基板に接合されたSrTiO
3材料のシード層との界面に位置することもできる(例えば、酸化ケイ素の2つの層間の窒化ケイ素層のスタックにより、特にサファイアタイプのキャリア基板に適したレーザデボンディングが可能になる)。