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特許7451906着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置
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  • 特許-着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20240312BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240312BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20240312BHJP
   C09B 47/067 20060101ALI20240312BHJP
   C09B 67/22 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G02B5/20 101
C09B67/20 G
C09B47/067
C09B67/22 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019161627
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2020042263
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2018168825
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 裕子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 理恵子
(72)【発明者】
【氏名】清水 完二
(72)【発明者】
【氏名】石井 洸毅
(72)【発明者】
【氏名】竹本 洋己
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-281927(JP,A)
【文献】特開2014-125460(JP,A)
【文献】特開2014-015542(JP,A)
【文献】特開2014-031421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)着色剤、(B)溶剤、(C)バインダー樹脂、及び(D)光重合開始剤を含有する着色樹脂組成物であって、
前記(A)着色剤が、下記一般式(1)で表されるフタロシアニン系染料を含有し、
下記一般式(1)で表されるフタロシアニン系染料の含有割合が、全固形分中に5質量%以上であることを特徴とする着色樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、A1~A16は各々独立に、下記一般式(2)で表わされる基、又はフッ素原子を表す。ただし、1分子あたりに含まれる下記一般式(2)で表される基のマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization、MALDI)-質量分析法(Mass Spectrometry、MS)で測定した平均個数が7.4以上である。)
【化2】
(式(2)中、Xは2価の連結基を表す。式(2)中のベンゼン環はアルコキシカルボニル基1つのみで置換されている。*は結合手を表す。)
【請求項2】
前記(A)着色剤が、さらに黄色顔料及び/又は黄色染料を含む、請求項1に記載の着色樹脂組成物。
【請求項3】
さらに光重合性モノマーを含有する、請求項1又は2に記載の着色樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の着色樹脂組成物を用いて形成された画素を有する、カラーフィルタ。
【請求項5】
請求項に記載のカラーフィルタを有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタを製造する方法としては、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法が知られている。中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する顔料分散法が最も広範に採用されている。
【0003】
近年、カラーフィルタに対して、より高輝度、高コントラスト且つ高色域化が要求されている。カラーフィルタの色を決める色材としては、耐熱性、耐光性等の観点から一般には顔料が用いられているが、顔料では特に高輝度については市場要求を満たすことが出来なくなってきており、色材として顔料に替えて染料を用いる検討が盛んにおこなわれている。緑色画素については染料として特定のフタロシアニン系染料を用いる検討が行われている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-051896号公報
【文献】特開2014-125460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが検討を行ったところ、特許文献1や特許文献2に記載されている着色樹脂組成物では、得られるカラーフィルタの輝度が実用上十分ではなく、得られるパターンに異物が発生することが見出された。
そこで本発明は、輝度が実用上十分であり、異物の発生が抑制されたパターンを形成可能な着色樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が鋭意検討を行った結果、着色剤として特定のフタロシアニン系染料を用いることで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の[1]~[6]の構成を有する。
【0007】
[1] (A)着色剤、(B)溶剤、(C)バインダー樹脂、及び(D)光重合開始剤を含有する着色樹脂組成物であって、
前記(A)着色剤が、下記一般式(1)で表されるフタロシアニン系染料を含有することを特徴とする着色樹脂組成物。
【0008】
【化1】
【0009】
(式(1)中、A1~A16は各々独立に、下記一般式(2)で表わされる基、又はフッ素原子を表す。ただし、1分子あたりに含まれる下記一般式(2)で表される基のマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization、MALDI)―質量分析法(Mass Spectrometry、MS)で測定した平均個数が7.4以上である。)
【0010】
【化2】
【0011】
(式(2)中、Xは2価の連結基を表す。式(2)中のベンゼン環は任意の置換基を有していてもよい。*は結合手を表す。)
【0012】
[2] 前記(A)着色剤が、さらに黄色顔料及び/又は黄色染料を含む、[1]に記載の着色樹脂組成物。
[3] 前記一般式(1)で表されるフタロシアニン系染料の含有割合が、全固形分中に5質量%以上である、[1]又は[2]に記載の着色樹脂組成物。
【0013】
[4] さらに光重合性モノマーを含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の着色樹脂組成物。
【0014】
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の着色樹脂組成物を用いて形成された画素を有する、カラーフィルタ。
[6] [5]に記載のカラーフィルタを有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、輝度が実用上十分であり、異物の発生が抑制されたパターンを形成可能な着色樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明のカラーフィルタを有する有機EL表示素子の一例を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の構成要件等について詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に限定されるものではない。
なお、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味するものとする。また「全固形分」とは、顔料分散液または着色樹脂組成物に含まれる、溶剤成分以外の全成分を意味するものとする。
【0018】
本発明において、「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をさす。
また本発明において、「アミン価」とは、特に断りのない限り有効固形分換算のアミン価を表し、分散剤の固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの質量で表される値である。
また本発明において、「C.I.」とはカラーインデックスを意味する。
【0019】
[1]着色樹脂組成物の構成成分
以下に本発明の着色樹脂組成物の各構成成分を説明する。本発明に係る着色樹脂組成物は、(A)着色剤、(B)溶剤、(C)バインダー樹脂、及び(D)光重合開始剤を必須成分とし、更に要すれば、上記成分以外の他の添加物等が配合されていてもよい。
以下、各構成成分を説明する。
【0020】
[1-1](A)着色剤
本発明の着色樹脂組成物に含まれる(A)着色剤は、下記一般式(1)で表されるフタロシアニン系染料(以下、「フタロシアニン系染料(1)」と称する場合がある。)を含む。
【0021】
【化3】
【0022】
式(1)中、A1~A16は各々独立に、下記一般式(2)で表される基、又はフッ素原子を表す。ただし、1分子あたりに含まれる下記一般式(2)で表される基のマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization、MALDI)―質量分析法(Mass Spectrometry、MS)で測定した平均個数が7.4以上である。
【0023】
【化4】
【0024】
式(2)中、Xは2価の連結基を表す。式(2)中のベンゼン環は任意の置換基を有していてもよい。*は結合手を表す。
【0025】
本発明の着色樹脂組成物に含まれる(A)着色剤は、フタロシアニン系染料(1)を含むことで、得られるカラーフィルタの輝度が高くなる。
前記一般式(2)で表される基の個数が少ない場合には、フタロシアニン環の広いπ電子共役と高い平面性のため、π-π相互作用によって凝集しやすく、カラーフィルタを形成する際の加熱工程において凝集が起こり、その凝集物が塗膜表面に析出して異物を発生すると考えられる。
これに対して前記フタロシアニン系染料(1)は、1分子あたりに含まれる前記一般式(2)で表される置換基の平均個数が7.4以上であることにより、溶剤やバインダー樹脂への溶解性が向上して異物が発生しにくくなり、また、凝集物による着色層の透過光量の減衰が抑制されると考えられる。
【0026】
(A1~A16
前記式(1)中、A1~A16は各々独立に、下記一般式(2)で表される基、又はフッ素原子を表す。
【0027】
【化5】
【0028】
式(2)中、Xは2価の連結基を表す。式(2)中のベンゼン環は任意の置換基を有していてもよい。*は結合手を表す。
【0029】
(X)
前記一般式(2)中のXは2価の連結基を表す。2価の連結基としては特に限定されないが、酸素原子、硫黄原子、又は-N(Ra1)-基が挙げられる。Ra1は水素原子、又は炭素数1~6の脂肪族炭化水素基を表す。これらの中でもフタロシアニン系染料(1)のベーク時における安定性の観点から、酸素原子又は硫黄原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0030】
(ベンゼン環が有していてもよい置換基)
また、式(2)中のベンゼン環は任意の置換基を有していてもよい。該置換基としては特に限定されないが、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基(-ORA基(ただし、RAはアルキル基を表す。))、アルコキシカルボニル基(-COORA基(ただし、RAはアルキル基を表す。))、アリール基、アリールオキシ基(-ORB基(ただし、RBはアリール基を表す。))、アリールオキシカルボニル基(-COORB基(ただし、RBはアリール基を表す。))が挙げられ、これらの基に含まれるアルキル基(-RA基)やアリール基(-RB基)が、さらにこれらの置換基で置換されていてもよい。これらの中でも、光選択透過性や溶剤への溶解性の観点から、アルコキシカルボニル基が好ましい。
【0031】
なおこれらの基に含まれるアルキル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でも、それらを組み合わせたものでもよいが、合成の容易さやバインダー樹脂及び溶剤への溶解性の観点から直鎖状であることが好ましい。
アルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、また、6以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることでフタロシアニン系染料(1)の溶剤への溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることでバインダー樹脂中の疎水性部分と疎水性相互作用が働き、加熱工程における分子間凝集が抑制される傾向がある。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、有機溶剤への可溶性を保つとともにバインダー樹脂中の疎水性部分と効率的に疎水性相互作用が働くとの観点からエチル基又はプロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。また、1分子中に含まれる複数の式(2)で表される基において、ベンゼン環が有していてもよい任意の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
またこれらの基に含まれるアリール基は、芳香族炭化水素環基であってもよく、芳香族複素環基であってもよい。
アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常4以上、6以上が好ましく、また、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることでフタロシアニン系染料(1)の溶剤への溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることでアリール基起因の色相変化が抑制される傾向がある。
【0033】
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環などの基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、チオフェン環、ピロール環、2H-ピラン環、4H-チオピラン環、ピリジン環、1,3-オキサゾール環、イソオキサゾール環、1,3-チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5-トリアジン環、ベンゾフラン環 、2-ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、2-ベンゾチオフェン環、1H-ピロリジン環、インドール環、イソインドール環、インドリジン環、2H-1-ベンゾピラン環、1H-2-ベンゾピラン環、キノリン環、イソキノリン環、4H-キノリジン環、ベンゾイミダゾール環、1H-インダゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環、1,8-ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環などの基が挙げられる。
【0034】
(1分子あたりに含まれる一般式(2)で表される基の平均個数)
フタロシアニン系染料(1)は、その1分子あたりに含まれる一般式(2)で表される基の平均個数が7.4以上であるが、7.5以上が好ましく、7.6以上がより好ましく、7.7以上がさらに好ましく、7.8以上がよりさらに好ましく、7.9以上が特に好ましく、7.92以上が最も好ましく、また、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、9以下がさらに好ましく、8.5以下が特に好ましく、8.2以下が最も好ましい。前記下限値以上とすることで溶剤やバインダー樹脂への溶解性が向上し、分子間における前記一般式(2)で表される基同士の立体反発によってキュア時の析出が抑制される傾向があり、また、前記上限値以下とすることで酸基を有するバインダー樹脂との相溶性が向上し、相分離が抑制される傾向がある。
【0035】
フタロシアニン系染料(1)の1分子あたりに含まれる一般式(2)で表される基の平均個数は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization、MALDI)―質量分析法(Mass Spectrometry、MS)にて測定する。手順は以下のとおりである。
まずMALDI-MS法にて分子量(m/z値)に対する強度を測定する。フタロシアニン系染料(1)には、一般式(2)で表される基の個数が異なる化合物が含まれることがあり、測定して得られた各化合物に対応するピークの分子量(m/z値)から、各分子に含まれる一般式(2)で表される基の個数を算出し、下記計算式から、式(2)で表される基の平均個数を算出することができる。実施例で用いた装置及び条件を採用して測定を行い、算出することが好ましい。
【0036】
式(2)で表される基の平均個数 = ΣNi×Ii/ΣIi
Ni:各々のピークに対応する化合物に含まれる式(2)の個数
Ii:各々のピークの高さ(強度)
【0037】
フタロシアニン系染料(1)には、前記一般式(1)において、A1~A16のうち2以上が前記一般式(2)で表される基であるフタロシアン系化合物(以下、「フタロシアニン系化合物(1)」と称する場合がある。)が含まれることが好ましい。フタロシアニン系化合物(1)における前記一般式(2)で表される基の数は2以上であれば特に限定されないが、4以上が好ましく、5以上がより好ましく、6以上がさらに好ましく、7以上が特に好ましく、また、10以下が好ましく、9以下がより好ましい、8がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで溶剤やバインダー樹脂への溶解性が向上し、分子間における前記一般式(2)で表される基同士の立体反発によってキュア時の析出が抑制される傾向があり、また、前記上限値以下とすることで酸基を有するバインダー樹脂との相溶性が向上し、相分離が抑制される傾向がある。
【0038】
フタロシアニン系染料(1)及びフタロシアニン系化合物(1)における、前記一般式(2)で表される基の結合位置は特に限定されないが、分子の平面性と対称性が向上し、モル吸光係数が高く、着色力が向上するとの観点から、A2、A3、A6、A7、A10、A11、A14及びA15からなる群から選ばれるいずれかであることが好ましい。
【0039】
フタロシアニン系染料(1)に含まれるフタロシアニン系化合物の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0040】
【化6】
【0041】
【化7】
【0042】
【化8】
【0043】
【化9】
【0044】
【化10】
【0045】
【化11】
【0046】
【化12】
【0047】
【化13】
【0048】
フタロシアニン系染料(1)の製造方法としては公知の方法を採用することができるが、1分子あたりに含まれる一般式(2)で表される基の平均個数を所定のものとするためには、以下の方法を採用することが好ましい。
【0049】
フタロシアニン系染料(1)を製造する方法としては、前記式(2)で表される基の導入個数を制御して合成し易く、収率が高く、反応が容易であるとの観点から、好ましくは溶融状態または有機溶媒中で、フタロニトリル化合物と金属塩とを環化反応する方法が使用できる。すなわち、下記一般式(3)で表されるフタロニトリル化合物を金属ハロゲン化物、有機金属、金属カルボニル等から選ばれる1種と環化反応させることによって本発明のフタロシアニン系染料(1)を製造することができる。
【0050】
【化14】
【0051】
式中、B1~B4は各々独立に、一般式(2)で表される基、又はフッ素原子を表す。
【0052】
前記式(3)で表されるフタロニトリル化合物は、特開昭64-45474号公報に開示されている方法などの従来既知の方法により合成できる。例えば、テトラフルオロフタロニトリル(以下、「TFPN」と略する。)と、前記一般式(2)で表される基を導入するための求核置換試薬(フェノール類、チオール類、アミン類)とを反応させることによって合成できる。合成する際の有機溶媒としてはアセトン、アセトニトリル等の不活性溶媒、あるいはピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、TFPNの濃度が通常10~80(w/v)%、好ましくは20~50(w/v)%となるような量である。また縮合剤としてフッ化カリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基類を用いるのが好ましい。この際、縮合剤の使用量はTFPN1モルに対し、通常、1.0~4.0モル添加することが好ましい。
【0053】
また、前記TFPNと前記求核置換試薬との反応条件は、上記反応が良好に進行する条件であれば特に制限はないが、4位及び5位のフッ素原子の反応選択性を高めるためには反応温度は、-5~150℃が好ましく、0~80℃がより好ましい。
【0054】
反応終了後、例えば、反応混合物と適当な有機溶媒と混合することにより、前記式(3)で表されるフタロニトリル化合物を析出させ、ろ過により取り出すことができるが、4位又は5位が求核置換試薬に完全に置換されずにフッ素原子が一部残留したものが含まれる可能性がある。これを次の環化反応の原料に用いると最終目的物であるフタロシアニン系染料1分子あたりに含まれる前記一般式(2)で表される基の数が減少し、溶解性等の物性に影響を与える場合があるので、4位及び5位のフッ素原子が前記一般式(2)で表される基によって置換されたフタロニトリル化合物の選択率(純度)が、高速液体クロマトグラフィー分析の面積%で、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上になるように再結晶やカラムクロマトグラフィー等により精製することが好ましい。
【0055】
また、前記式(3)で表されるフタロニトリル化合物の環化反応は特開2016-17147号公報に開示されている方法などの従来既知の方法により行うことができる。上記フタロニトリル化合物と反応させる金属塩としては特に限定されないが、亜鉛の塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物;酢酸塩等の有機酸亜鉛塩;亜鉛アセチルアセトナート等の亜鉛の錯体化合物等が挙げられる。これらの中でも反応性の高さの観点から、ハロゲン化亜鉛が好ましく、ヨウ化亜鉛がより好ましい。
【0056】
上記フタロニトリルと反応させる金属塩と、上記一般式(3)で表されるフタロニトリル化合物との環化反応を有機溶媒中で行う場合、その有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1-クロロナフタレン、1-メチルナフタレン、エチレングリコール、ベンゾニトリル等の不活性溶媒;ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、N,N-ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等を1種使用することもできるし、2種以上を使用することができる。これらの中でも、沸点が高く、フタロシアニンの溶解性が高いとの観点から、1-クロロナフタレン、N-メチル-2-ピロリドン、1-メチルナフタレン、トリメチルベンゼン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、エチレングリコールを使用することが好ましい。より好ましくはトリメチルベンゼン、ベンゾニトリルである。
【0057】
上記環化反応で有機溶媒を使用する場合、その有機溶媒の使用量は、上記一般式(3)で表されるフタロニトリル化合物の濃度が1~50質量%となるような量とすることが好適である。より好ましくは、10~40質量%となるような量である。
【0058】
上記環化反応における反応温度は、原料の種類、有機溶媒の種類、その他の条件に応じて設定すればよく、通常、100~300℃とすることが好適である。より好ましくは120℃以上であり、更に好ましくは130℃以上である。また、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは240℃以下、特に好ましくは200℃以下である。また、発熱反応を制御するために段階的に温度を上げてもよい。反応時間も特に制限はないが、通常、2~24時間とすることが好ましく、より好ましくは5~20時間である。上記反応は大気雰囲気中で行ってもよいが、上記フタロニトリル化合物と反応させる金属塩の種類により、不活性ガス、又は酸素含有ガス雰囲気で行われることが好ましく、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、又は、酸素/窒素混合ガス等の流通下で行われることがより好ましい。上記環化反応後は、従来公知の方法に従って、晶析、カラムクロマトグラフィー、濾過、洗浄、乾燥等を行ってもよい。
【0059】
(A)着色剤は、フタロシアニン系染料(1)以外に、その他の着色剤を含んでいてもよい。その他の着色剤としては、顔料や染料が挙げられる。これらの中でも、緑色画素用途に用いる場合には、緑色顔料、緑色染料、黄色顔料、黄色染料などを用いることが好ましく、黄色顔料及び/又は黄色染料を用いることがより好ましい。
緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、63などが挙げられ、輝度の観点からC.I.ピグメントグリーン58が好ましい。
緑色染料としては、カラーインデックスで染料に分類されているものの中で、C.I.ソルベント染料としてC.I.ソルベントグリーン1、3、4、5、7、28、29、32、33、34、35が挙げられ、またC.I.アシッド染料としてC.I.アシッド・グリーン1、3、5、9、16、25、27、50、58、63、65、80、104、105、106、109、C.I.モーダント・グリーン1、3、4、5、10、15、19、26、29、33、34、35、41、43、53などが挙げられる。これらの中でも、熱焼成時の染料分解抑制の観点からC.I.ソルベントグリーン1、3、4、5、7、28、29、32、33、34、35が好ましい。
【0060】
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、86、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、125、126、127、127:1、128、129、133、134、136、137、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208、及び下記式(i)で表されるアゾバルビツール酸のニッケルとの1:1錯体又はその互換異性体に、他の化合物が挿入されてなる化合物(以下、「式(i)で表されるニッケルアゾ錯体」と称する場合がある。)等が挙げられる。
【0061】
【化15】
【0062】
また、前記他の化合物としては、下記式(ii)で表される化合物などが挙げられる。
【0063】
【化16】
【0064】
この中でも、高輝度および高色域の観点から、C.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、154、155、180、185、及び式(i)で表されるニッケルアゾ錯体が好ましく、C.I.ピグメントイエロー83、138、139、180、185及び式(i)で表されるニッケルアゾ錯体がより好ましい。
【0065】
黄色染料としては、バルビツール酸アゾ系染料、ピリドンアゾ系染料、ピラゾロンアゾ系染料、キノフタロン系染料、シアニン系染料などが挙げられる。その具体例としては、特開2010-168531号公報に記載の具体的化合物が挙げられる。
カラーインデックスで染料に分類されているものの中で、C.I.ソルベント染料として、C.I.ソルベント・イエロー4、14、15、23、24、38、62、63、68、79、82、94、98、99、162、163などが挙げられる。またC.I.アシッド染料としてC.I.アシッド・グリーン1、3、5、9、16、25、27、50、58、63、65、80、104、105、106、109、C.I.アシッド・イエロー1、3、7、9、11、17、23、25、29、34、36、38、40、42、54、65、72、73、76、79、98、99、111、112、113、114、116、119、123、128、134、135、138、139、140、144、150、155、157、160、161、163、168、169、172、177、178、179、184、190、193、196、197、199、202、203、204、205、207、212、214、220、221、228、230、232、235、238、240、242、243、251やその誘導体が挙げられる。またC.I.ダイレクト染料としてC.I.ダイレクト・イエロー2、33、34、35、38、39、43、47、50、54、58、68、69、70、71、86、93、94、95、98、102、108、109、129、136、138、141などの染料が挙げられる。さらに、C.I.モーダント染料としてC.I.モーダント・イエロー5、8、10、16、20、26、30、31、33、42、43、45、56、61、62、65などの染料が挙げられ、好ましくは、C.I.ソルベント・イエロー4、14、15、23、24、38、62、63、68、82、94、98、99、162、C.I.アシッド・イエロー1、3、7、9、11、17、23、25、29、34、36、38、40、42、54、65、72、73、76、79、98、99、111、112、113、114、116、119、123、128、134、135、138、139、140、144、150、155、157、160、161、163、168、169、172、177、178、179、184、190、193、196、197、199、202、203、204、205、207、212、214、220、221、228、230、232、235、238、240、242、243、251、23、25、29、34、40、42、72、76、99、111、112、114、116、163、243やその誘導体が挙げられる。
これらの中でも、熱焼成時の染料分解抑制の観点から、C.I.ソルベント・イエロー4、14、15、23、24、38、62、63、68、79、82、94、98、99、162及び163からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0066】
顔料の平均一次粒子径は、通常0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.04μm以下である。顔料の微粒化に際しては、ソルベントソルトミリングのような手法が好適に用いられる。
【0067】
本発明の着色樹脂組成物における(A)着色剤の含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上がよりさらに好ましく、35質量%以上が特に好ましく、また、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、45質量%以下がよりさらに好ましく、40質量%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで色特性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることでパターン形成性が良好となる傾向がある。
【0068】
本発明の着色樹脂組成物におけるフタロシアニン系染料(1)の含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上が特に好ましく、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下がよりさらに好ましく、25質量%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで輝度等の色特性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることでパターン形成性が良好となる傾向がある。
【0069】
その他の着色剤を含む場合、その含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上がよりさらに好ましく、15質量%以上が特に好ましく、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることでカラーフィルタ作成時の熱焼成時の熱分解が抑制される傾向があり、また、前記上限値以下とすることでパターン形成性が良好となる傾向がある。
【0070】
[1-2](B)溶剤
(B)溶剤は、本発明の着色樹脂組成物において、着色剤、バインダー樹脂、光重合開始剤、その他の成分を溶解又は分散させ、粘度を調節する機能を有する。
係る(B)溶剤としては、各成分を溶解または分散させることができるものであればよい。
【0071】
このような溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルのようなグリコールモノアルキルエーテル類;
【0072】
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;
【0073】
エチレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサノールジアセテートなどのグリコールジアセテート類;
シクロヘキサノールアセテートなどのアルキルアセテート類;
アミルエーテル、プロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルのようなエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メトキシメチルペンタノンのようなケトン類;
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、メトキシメチルペンタノール、グリセリン、ベンジルアルコールのような1価又は多価アルコール類;
n-ペンタン、n-オクタン、ジイソブチレン、n-ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンのような脂肪族炭化水素類;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;
【0074】
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;
アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、γ-ブチロラクトンのような鎖状又は環状エステル類;
3-メトキシプロピオン酸、3-エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;
ブチルクロライド、アミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;
メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類;
アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類等が挙げられる。
【0075】
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
フォトリソグラフィ法にてカラーフィルタの画素を形成する場合、溶剤としては沸点が100~200℃(圧力1013.25[hPa]条件下。以下、沸点に関しては全て同様。)の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120~170℃の沸点をもつものである。
上記溶剤中、塗布性、表面張力などのバランスが良く、組成物中の構成成分の溶解度が比較的高い点からは、グリコールアルキルエーテルアセテート類が好ましい。
【0077】
また、グリコールアルキルエーテルアセテート類は、単独で使用してもよいが、他の溶剤を併用してもよい。併用する溶剤として、特に好ましいのはグリコールモノアルキルエーテル類である。中でも、特に組成物中の構成成分の溶解性の観点からプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。なお、グリコールモノアルキルエーテル類は極性が高く、添加量が多すぎると顔料が凝集しやすく、後に得られる着色樹脂組成物の粘度が上がっていくなどの保存安定性が低下する傾向があるので、溶剤中のグリコールモノアルキルエーテル類の割合は5質量%~30質量%が好ましく、5質量%~20質量%がより好ましい。
【0078】
また、150℃以上の沸点をもつ溶剤を併用することも好ましい。このような高沸点の溶剤を併用することにより、着色樹脂組成物は乾きにくくなるが、急激に乾燥することによる顔料分散液の相互関係の破壊を起こし難くする効果がある。高沸点溶剤の含有割合は、(B)溶剤に対して3質量%~50質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が特に好ましい。前記下限値以上とすることで、例えばスリットノズル先端で色材成分などが析出・固化して異物欠陥を惹き起こすことを回避しやすい傾向があり、また前記上限値以下とすることで組成物の乾燥速度が遅くなって減圧乾燥プロセスのタクト不良や、プリベークのピン跡といった問題を惹き起こすことを回避しやすい傾向がある。
なお沸点150℃以上の溶剤が、グリコールアルキルエーテルアセテート類であっても、またグリコールアルキルエーテル類であってもよく、この場合は、沸点150℃以上の溶剤を別途含有させなくてもかまわない。
好ましい高沸点溶剤として、例えば前述の各種溶剤の中ではジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサノールジアセテート、トリアセチンなどが挙げられる。
【0079】
インクジェット法にてカラーフィルタの画素を形成する場合、溶剤としては、沸点が、通常130℃以上300℃以下、好ましくは150℃以上280℃以下のものが適当である。前記下限値以上とすることで、得られる塗膜の均一性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで、焼成時の残留溶剤を低減しやすい傾向がある。
また、溶剤の蒸気圧は、得られる塗膜の均一性の観点から、通常10mmHg以下、好ましくは5mmHg以下、より好ましくは1mmHg以下のものが使用できる。
【0080】
なお、インクジェット法によるカラーフィルタ製造において、ノズルから発せられるインクは数~数十pLと非常に微細であるため、ノズル口周辺あるいは画素バンク内に着弾する前に、溶剤が蒸発してインクが濃縮・乾固する傾向がある。これを回避するためには溶剤の沸点は高い方が好ましく、具体的には、沸点180℃以上の溶剤を含むことが好ましい。より好ましくは沸点が200℃以上、特に好ましくは沸点が220℃以上である溶剤を含有する。また、沸点180℃以上である高沸点溶剤は着色樹脂組成物に含まれる全溶剤中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が最も好ましい。前記下限値以上とすることで、液滴からの溶剤の蒸発防止効果が十分に発揮されやすい傾向がある。
【0081】
好ましい高沸点溶剤として、例えば前述の各種溶剤の中ではジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサノールジアセテート、トリアセチンなどが挙げられる。
さらに、着色樹脂組成物の粘度調整や固形分の溶解度調整のためには、沸点が180℃より低い溶剤を一部含有することも効果的である。このような溶剤としては、低粘度で溶解性が高く、低表面張力であるような溶剤が好ましく、エーテル類、エステル類やケトン類などが好ましい。中でも特に、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノールアセテートなどが好ましい。
【0082】
一方、溶剤がアルコール類を含有すると、インクジェット法における吐出安定性が劣化する場合がある。よって、アルコール類は全溶剤中20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0083】
本発明の着色樹脂組成物に占める溶剤の含有割合は特に限定されないが、その上限は、通常99質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。前記上限値以下とすることで塗布膜を形成しやすくなる傾向がある。一方で、溶剤含有割合の下限は、塗布に適した粘性などを考慮して、通常70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは78質量%以上である。
【0084】
[1-3](C)バインダー樹脂
本発明の着色樹脂組成物において(C)バインダー樹脂は、前述の溶剤に可溶で、十分な硬化度の硬化膜を形成できるようなものであれば何ら限定されないが、アルカリ現像してパターンを形成するとの観点からは、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。例えば、特開平7-207211号公報、特開平8-259876号公報、特開平10-300922号公報、特開平11-140144号公報、特開平11-174224号公報、特開2000-56118号公報、特開2003-233179号公報などの各公報等に記載される高分子化合物を使用することができるが、中でも好ましくは下記(C-1)~(C-5)の樹脂などが挙げられる。
【0085】
(C-1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、又は該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂(以下「樹脂(C-1)」と称す場合がある。)
(C-2):カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂(以下「樹脂(C-2)」と称す場合がある。)
(C-3):前記樹脂(C-2)のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂(以下「樹脂(C-3)」と称す場合がある。)
(C-4):(メタ)アクリル系樹脂(以下「樹脂(C-4)」と称す場合がある。)
(C-5):カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂(以下「樹脂(C-5)と称す場合がある。)
このうち特に好ましくは樹脂(C-1)が挙げられ、以下詳述する。
【0086】
なお、樹脂(C-2)~(C-5)は、アルカリ性の現像液によって溶解され、目的とする現像処理が遂行される程度に溶解性を有するものであれば何でもよく、各々、特開2009-025813号公報の同項目として記載のものと同様である。好ましい態様も同様である。
(C-1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、又は該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂
樹脂(C-1)の特に好ましい樹脂の一つとして、エポキシ基含有(メタ)アクリレート5~90モル%と、他のラジカル重合性単量体10~95モル%との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の10~100モル%に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、又は該付加反応により生じた水酸基の10~100モル%に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
【0087】
そのエポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が例示できる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと共重合させる他のラジカル重合性単量体としては、本発明の効果を損わない限り特に制限はなく、例えば、ビニル芳香族類、ジエン類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、ビニル化合物類、不飽和ジカルボン酸ジエステル類、モノマレイミド類などが挙げられるが、特に下記式(III)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0089】
下記式(III)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位は、「他のラジカル重合性単量体」に由来する繰返し単位中、5~90モル%含有するものが好ましく、10~70モル%含有するものが更に好ましく、15~50モル%含有するものが特に好ましい。
【0090】
【化17】
【0091】
上記式(III)中、R89は水素原子又はメチル基を示し、R90は下記式(IV)で表される構造を示す。
【0092】
【化18】
【0093】
上記式(IV)中、R91~R98は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。尚、R96とR98とが、互いに連結して環を形成していてもよい。
96とR98が連結して形成される環は、脂肪族環であるのが好ましく、飽和又は不飽和のいずれでもよく、更に炭素数は5~6であることが好ましい。
中でも、式(IV)で表される構造としては、特に下記構造式(IVa)、(IVb)、又は(IVc)で表されるものが好ましい。
【0094】
【化19】
【0095】
尚、前記式(IV)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記式(IV)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート以外の、「他のラジカル重合性単量体」としては、着色樹脂組成物に優れた耐熱性及び強度を向上しうる点で、スチレン、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0096】
上記モノマー群から選択された少なくとも1種に由来する繰返し単位の含有割合が、1~70モル%であるものが好ましく、3~50モル%であるものが更に好ましい。
尚、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、前記他のラジカル重合性単量体との共重合反応には、公知の溶液重合法が適用される。
本発明において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと前記他のラジカル重合性単量体との共重合体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位5~90モル%と、他のラジカル重合性単量体に由来する繰返し単位10~95モル%と、からなるものが好ましく、前者20~80モル%と、後者80~20モル%とからなるものが更に好ましく、前者30~70モル%と、後者70~30モル%とからなるものが特に好ましい。
【0097】
上記範囲内であると、後述の重合性成分及びアルカリ可溶性成分の付加量が十分であり、また、耐熱性や膜の強度が十分であるため好ましい。
上記の様に合成された、エポキシ基含有共重合体のエポキシ基部分に、不飽和一塩基酸(重合性成分)と、更に多塩基酸無水物(アルカリ可溶性成分)とを反応させる。
ここで、エポキシ基に付加させる不飽和一塩基酸としては、公知のものを使用することができ、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0098】
具体例としては、(メタ)アクリル酸;クロトン酸、o-、m-又はp-ビニル安息香酸;α-位がハロアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基などで置換された(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。中でも好ましくは(メタ)アクリル酸である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダー樹脂に重合性を付与することができる。
これらの不飽和一塩基酸は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基の10~100モル%に付加させるが、好ましくは30~100モル%、より好ましくは50~100モル%に付加させる。前記範囲内であると、着色樹脂組成物の経時安定性に優れるため好ましい。尚、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0100】
更に、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させたときに生じる水酸基に付加させる多塩基酸無水物としては、公知のものが使用できる。
例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の三塩基以上の酸の無水物が挙げられる。中でも、無水コハク酸及びテトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。これらの多塩基酸無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダー樹脂にアルカリ可溶性を付与することができる。
これらの多塩基酸無水物は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基に、不飽和一塩基酸を付加させることにより生じる水酸基の10~100モル%に付加させるが、好ましくは20~90モル%、より好ましくは30~80モル%に付加させる。
【0102】
上記範囲内であると、現像時の残膜率及び溶解性が十分であるため好ましい。
尚、当該水酸基に多塩基酸無水物を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
更に、光感度を向上させるために、前述の多塩基酸無水物を付加させた後、生成したカルボキシル基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートや重合性不飽和基を有するグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。このような樹脂の構造に関しては、例えば特開平8-297366号公報や特開2001-89533号公報に記載されている。
【0103】
上述のバインダー樹脂の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、7,000以上がさらに好ましく、また、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、30,000以下がさらに好ましく、15,000以下がよりさらに好ましく、13,000以下が特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であると、耐熱性や膜強度、更に現像液に対する溶解性が良好である点で好ましい。
また、分子量分布の目安として、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は、2.0~5.0が好ましい。
【0104】
なお、バインダー樹脂の酸価は、通常10mgKOH/g以上、好ましくは15mgKOH/g以上、より好ましくは25mgKOH/g以上、さらに好ましくは50mgKOH/g以上、また、通常200mgKOH/g以下、好ましくは150mgKOH/g以下、より好ましくは100mgKOH/g以下である。前記下限値以上とすることで現像液に対する溶解性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで膜荒れの発生を抑制できる傾向がある。
【0105】
本発明の着色樹脂組成物において、(C)バインダー樹脂の含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましく、また、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下がよりさらに好ましく、25質量%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることでフタロシアニン系染料(1)との分子間疎水性相互作用が効率的に働きパターン形成性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることでアルカリ現像性が良好となり、基板上における残渣が抑制される傾向がある。
【0106】
[1-4](D)光重合開始剤
本発明の着色樹脂組成物は(D)光重合開始剤を含有する。(D)光重合開始剤を含有することで光重合による膜硬化性を得ることができる。
(D)光重合開始剤は、加速剤(連鎖移動剤)及び必要に応じて添加される増感色素等の付加剤との混合物(光重合開始系)として用いることもできる。光重合開始系は、光を直接吸収し、或いは光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する成分である。
【0107】
光重合開始剤としては、例えば、特開昭59-152396号、特開昭61-151197号各公報に記載のチタノセン化合物を含むメタロセン化合物や、特開平10-39503号公報記載のヘキサアリールビイミダゾール誘導体、ハロメチル-s-トリアジン誘導体、N-フェニルグリシン等のN-アリール-α-アミノ酸類、N-アリール-α-アミノ酸塩類、N-アリール-α-アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤、α-アミノアルキルフェノン系化合物、特開2000-80068号公報に記載されているオキシムエステル系開始剤等が挙げられる。
【0108】
本発明で用いることができる光重合開始剤の具体的な例を以下に列挙する。
2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシカルボニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル化トリアジン誘導体;
【0109】
2-トリクロロメチル-5-(2′-ベンゾフリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2′-ベンゾフリル)ビニル〕-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2′-(6″-ベンゾフリル)ビニル)〕-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5一フリル-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール誘導体;
2-(2′-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダソール2量体、2-(2′-クロロフェニル)-4,5-ビス(3′-メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2-(2′-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(2′-メトキシフエニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、(4′-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体等のイミダゾール誘導体;
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;
2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン誘導体;
【0110】
ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4-ブロモベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;
2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、α-ヒドロキシ-2-メチルフェニルプロパノン、1-ヒドロキシ-1-メチルエチル-(p-イソプロピルフェニル)ケトン、1-ヒドロキシ-1-(p-ドデシルフェニル)ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1,1,1-トリクロロメチル-(p一ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体;
チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2、4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;
【0111】
p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、P-ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体;
9-フェニルアクリジン、9-(p-メトキシフェニル)アクリジン等のアクリジン誘導体;
9,10-ジメチルベンズフェナジン等のフェナジン誘導体;
ベンズアンスロン等のアンスロン誘導体;
ジシクロペンタジエニル-Ti-ジクロライド、ジシクロペンタジェニル-Ti-ビス-フェニル、ジシクロペンタジェニル-Ti-ビス-2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル-1-イル、ジシクロペンタジェニル-Ti-ビス-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル-1-イル、ジシクロペンタジェニル-Ti-ビス-2,4,6-トリフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジェニル-Ti-2,6-ジプルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジェニル-Ti-2,4-ジフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジェニル-Ti-ビス-2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニ-1-イル、ジメチルシクロペンタジェニル-Ti-ビス-2,6-ジフルオロフェニ-1-イル、ジシクロペンタジェニル-Ti-2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)-フェニ-1-イル等のチタノセン誘導体;
【0112】
2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、4-ジメチルアミノエチルベンゾエ-ト、4-ジメチルアミノイソアミルベンゾエ-ト、4-ジエチルアミノアセトフェノン、4-ジメチルアミノプロピオフェノン、2-エチルヘキシル-1,4-ジメチルアミノベンゾエート、2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7-ジエチルアミノ-3-(4-ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、4-(ジエチルアミノ)カルコン等のα-アミノアルキルフェノン系化合物;
1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)エタノン、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物。
【0113】
これらの中でも、感度及び表面性状の観点から、オキシムエステル系化合物であることが好ましい。
オキシムエステル系化合物は、その構造の中に紫外線を吸収する構造と光エネルギーを伝達する構造とラジカルを発生する構造を併せ持っているために、少量で感度が高く、かつ熱反応に対しては安定であり、少量で高感度な着色樹脂組成物の設計が可能である。特に、露光光源のi線(365nm)に対する光吸収性の観点から、置換基を有していてもよいカルバゾール環を有するオキシムエステル系化合物が好ましい。
【0114】
オキシムエステル系化合物としては、例えば、下記一般式(I-1)で表される化合物が挙げられる。
【0115】
【化20】
【0116】
上記式(I-1)中、R21aは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよい芳香族環基を示す。
21bは芳香環又はヘテロ芳香環を含む任意の置換基を示す。
22aは、置換基を有していてもよいアルカノイル基、又は、置換基を有していてもよいアリーロイル基を示す。
【0117】
21aにおけるアルキル基の炭素数は特に限定されないが、溶媒への溶解性や露光に対する感度の観点から、通常1以上、好ましくは2以上、また、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチルエチル基、プロピル基等が挙げられる。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、芳香族環基、水酸基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基、4-(2-メトキシ-1-メチル)エトキシ-2-メチルフェニル基又はN-アセチル-N-アセトキシアミノ基などが挙げられ、合成容易性の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0118】
21aにおける芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。芳香族環基の炭素数は特に限定されないが、感光性着色組成物への溶解性の観点から5以上であることが好ましい。また、現像性の観点から30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、12以下であることがさらに好ましく、8以下であることが特に好ましい。
【0119】
芳香族環基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、フリル基、フルオレニル基などが挙げられ、これらの中でも現像性の観点から、フェニル基、ナフチル基又はフルオレニル基が好ましく、フェニル基又はフルオレニル基がより好ましい。
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基、アルキル基などが挙げられ、現像性の観点から水酸基、カルボキシ基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。また、置換基を有していてもよいアルキル基や置換基を有していてもよいアルコキシ基における置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基が挙げられる。
これらの中でも、現像性の観点から、R21aが置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0120】
また、R21bは芳香環又はヘテロ芳香環を含む任意の置換基であるが、溶媒への溶解性や露光に対する感度の観点から、置換基を有していてもよいカルバゾリル基、置換基を有していてもよいチオキサントニル基、置換基を有していてもよいジフェニルスルフィド基又は置換基を有してもよいフルオレニル基、これらの基とカルボニル基とを連結した基が好ましく挙げられる。これらの中でも、露光光源のi線(365nm)に対する光吸収性の観点から、置換基を有していてもよいカルバゾリル基、又は置換基を有していてもよいカルバゾリル基とカルボニル基を連結した基が好ましい。
【0121】
また、R22aにおけるアルカノイル基の炭素数は特に限定されないが、溶媒への溶解性や感度の観点から、通常2以上、好ましくは3以上、また、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。アルカノイル基の具体例としては、アセチル基、エチロイル基、プロパノイル基、ブタノイル基等が挙げられる。
アルカノイル基が有していてもよい置換基としては、芳香族環基、水酸基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基などが挙げられ、合成容易性の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0122】
また、R22aにおけるアリーロイル基の炭素数は特に限定されないが、溶媒への溶解性や感度の観点から、通常7以上、好ましくは8以上、また、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。アリーロイル基の具体例としては、ベンゾイル基、ナフトイル基等が挙げられる。
アリーロイル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基、アルキル基などが挙げられ、合成容易性の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0123】
前記一般式(I-1)で表される化合物の中でも、露光光源のi線(365nm)に対する光吸収性の観点から、下記一般式(I-2)又は(I-3)で表される化合物が挙げられる。
【0124】
【化21】
【0125】
【化22】
【0126】
上記式(I-2)又は(I-3)中、R21a及びR22aは、前記一般式(I-1)と同義である。
23aは、置換基を有していてもよいアルキル基を示す。
24aは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリーロイル基、置換基を有していてもよいヘテロアリーロイル基、又はニトロ基を示す。
カルバゾール環を構成するベンゼン環は、さらに芳香族環によって縮合されて多環芳香族環となっていてもよい。
【0127】
23aにおけるアルキル基の炭素数は特に限定されないが、溶媒への溶解性の観点から、通常1以上、好ましくは2以上、また、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、カルボニル基、カルボキシ基、ヒドロキシル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、又はニトロ基などが挙げられ、合成容易性の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0128】
23aにおけるアリーロイル基の炭素数は特に限定されないが、溶媒への溶解性の観点から、通常7以上、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、また、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下である。アリーロイル基の具体例としては、ベンゾイル基、ナフトイル基等が挙げられる。
アリーロイル基が有していてもよい置換基としては、カルボニル基、カルボキシ基、ヒドロキシル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、又はニトロ基などが挙げられ、合成容易性の観点からは、エチル基であることが好ましい。
【0129】
23aにおけるヘテロアリーロイル基の炭素数は特に限定されないが、溶媒への溶解性の観点から、通常7以上、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、また、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下である。ヘテロアリール基の具体例としては、フルオロベンゾイル基、クロロベンゾイル基、ブロモベンゾイル基、フルオロナフトイル基、クロロナフトイル基、ブロモナフトイル基等が挙げられる。
ヘテロアリーロイル基が有していてもよい置換基としてはカルボニル基、カルボキシ基、ヒドロキシル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、又はニトロ基などが挙げられ、合成容易性の観点からは、無置換であることが好ましい。
これらの中でもR23aとしては、溶媒への溶解性と合成容易性の観点から、アルキル基であることが好ましく、エチル基であることがより好ましい。
【0130】
カルバゾール環を構成するベンゼン環は、さらに芳香族環によって縮合されて多環芳香族環となっていてもよい。
【0131】
このようなオキシムエステル系化合物の市販品として、BASF社製のOXE-02、OXE-03、常州強力電子社製のTR-PBG-304、TR-PBG-314又はADEKA社製のN-1919、NCI-930、NCI-831などがある。
【0132】
オキシムエステル系化合物として、具体的には以下に例示されるような化合物が挙げられるが、何らこれらの化合物に限定されるものではない。
【0133】
【化23】
【0134】
【化24】
【0135】
【化25】
【0136】
これら光重合開始剤は、それぞれ1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0137】
また(D)光重合開始剤に加えて、さらに連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤とは、発生したラジカルを受け取り、該ラジカルを他の化合物に受け渡す機能を有する化合物である。
連鎖移動剤としては、上記機能を有する化合物であれば種々のものを用いることができるが、例えば、メルカプト基含有化合物や、四塩化炭素等が挙げられ、連鎖移動効果が高い傾向があることからメルカプト基を有する化合物を用いることがより好ましい。S-H結合エネルギーが小さいことによって結合開裂が起こりやすく、水素引きぬき反応や連鎖移動反応を起こしやすいためであると考えられる。感度向上や表面硬化性に有効である。
【0138】
メルカプト基含有化合物としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2-メルカプト-4(3H)-キナゾリン、β-メルカプトナフタレン、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン等の芳香族環を有するメルカプト基含有化合物;へキサンジチオール、デカンジチオール、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン等の脂肪族系のメルカプト基含有化合物が挙げられ、特に表面平滑性の観点から、メルカプト基を複数有する化合物が好ましい。
【0139】
このうち好ましくは、芳香族環を有するメルカプト基含有化合物の中では2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールが好ましく、脂肪族系のメルカプト基含有化合物の中では、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンが好ましい。
【0140】
また感度の面からは、脂肪族系のメルカプト基含有化合物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンが好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)がより好ましい。
これらは種々のものが1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用できる。
【0141】
本発明の着色樹脂組成物において、(D)光重合開始剤の含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、4質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、12質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像後のパターニング特性を確保できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで光重合開始剤過剰添加による透過率低下が抑制される傾向がある。
【0142】
本発明の着色樹脂組成物が連鎖移動剤を含む場合、その含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量以上がさらに好ましく、0.5質量%以上がよりさらに好ましく、1質量%以上が特に好ましく、また、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。前記範囲内とすることで保存安定性とアルカリ現像時のパターニング形成能が確保できる傾向がある。
【0143】
[1-5]その他の固形分
本発明の着色樹脂組成物には、更に、必要に応じ上記成分以外の固形分を配合できる。このような成分としては、光重合性モノマー、分散剤、分散助剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0144】
[1-5-1]光重合性モノマー
光重合性モノマーは、重合可能な低分子化合物であれば特に制限はないが、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する付加重合可能な化合物(以下、「エチレン性化合物」と称す)が好ましい。エチレン性化合物とは、本発明の着色樹脂組成物が活性光線の照射を受けた場合、光重合開始剤の作用により付加重合し、硬化するようなエチレン性二重結合を有する化合物である。なお、本発明における単量体は、いわゆる高分子物質に相対する概念を意味し、狭義の単量体以外に二量体、三量体、オリゴマーも含有する概念を意味する。
本発明においては、特に、1分子中にエチレン性二重結合を2個以上有する多官能エチレン性単量体を使用することが望ましい。多官能エチレン性単量体が有するエチレン性二重結合の数は特に限定されないが、通常2個以上であり、好ましくは4個以上であり、より好ましくは5個以上であり、また、好ましくは8個以下であり、より好ましくは7個以下である。前記下限値以上とすることで高感度となる傾向があり、前記上限値以下とすることで溶媒への溶解性が向上する傾向がある。
【0145】
エチレン性化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸、それとモノヒドロキシ化合物とのエステル、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び前述の脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル、ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物等が挙げられる。
【0146】
脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールアクリレート等のアクリル酸エステルが挙げられる。また、これらアクリレートのアクリル酸部分を、メタクリル酸部分に代えたメタクリル酸エステル、イタコン酸部分に代えたイタコン酸エステル、クロトン酸部分に代えたクロトン酸エステル、又は、マレイン酸部分に代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
【0147】
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、例えば、ハイドロキノンジアクリレート、ハイドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、ピロガロールトリアクリレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステルは、必ずしも単一物ではなく、混合物であっても良い。代表例としては、例えば、アクリル酸、フタル酸及びエチレングリコールの縮合物、アクリル酸、マレイン酸及びジエチレングリコールの縮合物、メタクリル酸、テレフタル酸及びペンタエリスリトールの縮合物、アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
【0148】
ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等と、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシ(1,1,1-トリアクリロイルオキシメチル)プロパン、3-ヒドロキシ(1,1,1-トリメタクリロイルオキシメチル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物との反応物が挙げられる。
【0149】
その他、本発明に用いられるエチレン性化合物としては、例えば、エチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等も有用である。
また、エチレン性化合物は酸価を有するモノマーであってもよい。酸価を有するモノマーとしては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能モノマーが好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。
【0150】
これらのモノマーは1種を単独で用いても良いが、製造上、単一の化合物を用いることは難しいことから、2種以上を混合して用いても良い。また、必要に応じてモノマーとして酸基を有しない多官能モノマーと酸基を有する多官能モノマーを併用しても良い。
酸基を有する多官能モノマーの好ましい酸価としては、0.1~40mgKOH/gであり、特に好ましくは5~30mgKOH/gである。前記下限値以上とすることで現像溶解特性を良好なものとすることができる傾向があり、前記上限値以下とすることで製造や取扱いが良好になり光重合性能、画素の表面平滑性等の硬化性を良好にしやすい傾向がある。従って、異なる酸基の多官能モノマーを2種以上併用する場合、或いは酸基を有しない多官能モノマーを併用する場合、全体の多官能モノマーとしての酸基が上記範囲に入るように調整することが好ましい。
【0151】
本発明において、より好ましい酸基を有する多官能モノマーは、東亞合成(株)製TO1382として市販されているジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸エステルを主成分とする混合物である。この多官能モノマーの他の多官能モノマーを組み合わせて使用することもできる。また、特開2013-140346号公報の段落[0056]や[0057]に記載のものを使用することもできる。
【0152】
また本発明において、画素の耐薬品性や画素のエッジの直線性を良好にするとの観点からは、特開2013-195971号公報に記載の重合性モノマーを用いることが好ましい。塗布膜の感度及び現像時間の短縮を両立するとの観点からは、特開2013-195974号公報に記載の重合性モノマーを用いることが好ましい。
【0153】
これらの光重合性モノマーの含有割合は、本発明の着色樹脂組成物の全固形分中、通常0質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、よりさらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは22質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。また、(A)着色剤100質量部に対する比率は、通常0質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上、よりさらに好ましくは40質量部以上、特に好ましくは60質量部以上であり、通常200質量部以下、好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。前記下限値以上とすることで硬化性が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像性の低下が抑制される傾向がある。
【0154】
[1-5-2]分散剤、分散助剤
本発明の着色樹脂組成物が(A)着色剤として顔料を含む場合、顔料を安定に分散させる目的で分散剤を含有させることができる。中でも高分子分散剤を用いると経時の分散安定性に優れるので好ましい。
高分子分散剤としては、例えば、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤を挙げることができる。これら分散剤の具体例としては、商品名で、EFKA(登録商標、BASF社製)、DisperBYK(登録商標、ビックケミー社製)、ディスパロン(登録商標、楠本化成社製)、SOLSPERSE(登録商標、ルーブリゾール社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社化学社製)、特開2013-119568号公報に記載のもの等を挙げることができる。
【0155】
高分子分散剤の中でも、分散性や保存安定性の観点から、窒素原子を含む官能基を有するブロック共重合体が好ましく、アクリル系ブロック共重合体がより好ましい。
窒素原子を含む官能基を有するブロック共重合体としては、側鎖に4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を有さないBブロックとからなる、A-Bブロック共重合体及び/又はB-A-Bブロック共重合体が好ましい。
【0156】
窒素原子を含む官能基としては、1~3級アミノ基や、4級アンモニウム塩基が挙げられ、分散性や保存安定性の観点から、1~3級アミノ基を有することが好ましく、3級アミノ基を有することがより好ましい。
前記ブロック共重合体における、3級アミノ基を有する繰り返し単位の構造は特に限定されないが、分散性や保存安定性の観点から、下記一般式(1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0157】
【化26】
【0158】
上記式(1)中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、R1及びR2が互いに結合して環状構造を形成してもよい。R3は水素原子又はメチル基である。Xは2価の連結基である。
【0159】
上記式(1)における、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また、10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であることがより好ましい。また、直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。また、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などの環状構造を含んでもよい。
【0160】
上記式(1)における、置換基を有していてもよいアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上であり、また、16以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが挙げられ、これらの中でもフェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、又はジエチルフェニル基であることが好ましく、フェニル基、メチルフェニル基、又はエチルフェニル基であることがより好ましい。
【0161】
上記式(1)における、置換基を有していてもよいアラルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常7以上であり、また、16以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、9以下であることがさらに好ましい。アラルキル基の具体例としては、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、フェニルブチレン基、フェニルイソプロピレン基などが挙げられ、これらの中でも、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、又はフェニルブチレン基であることが好ましく、フェニルメチレン基、又はフェニルエチレン基であることがより好ましい。
【0162】
これらの中でも、分散性、保存安定性、電気信頼性、現像性の観点から、R1及びR2が各々独立に置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0163】
上記式(1)におけるアルキル基、アラルキル基又はアリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、ベンゾイル基、水酸基などが挙げられ、合成の容易さの観点からは無置換であることが好ましい。
【0164】
また、上記式(1)において、R1及びR2が互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5~7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。具体的には、例えば下記(IV)のものが挙げられる。
【0165】
【化27】
【0166】
これらの環状構造は、更に置換基を有していてもよい。
【0167】
上記式(1)において、2価の連結基Xとしては、例えば、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、-CONH-R13-基、-COOR14-基〔但し、R13及びR14は単結合、炭素数1~10のアルキレン基、又は炭素数2~10のエーテル基(アルキルオキシアルキル基)である〕等が挙げられ、好ましくは-COO-R14-基である。
【0168】
また、前記ブロック共重合体の全繰り返し単位に占める前記式(1)で表される繰り返し単位の含有割合は、1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることがさらに好ましく、15モル%以上であることがよりさらに好ましく、20%以上であることが特に好ましく、25モル%以上であることが最も好ましく、また、90モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることがさらに好ましく、40モル%以下であることが特に好ましい。前記範囲内の場合には分散安定性と高輝度の両立が可能となる傾向がある。
【0169】
また前記ブロック共重合体は、分散剤の溶媒等バインダー成分に対する相溶性を高め、分散安定性を向上させるとの観点から、下記式(2)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0170】
【化28】
【0171】
上記式(2)中、R10はエチレン基又はプロピレン基であり、R11は置換基を有していてもよいアルキル基であり、R12は水素原子又はメチル基である。
nは1~20の整数である。
【0172】
上記式(2)のR11における、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上であることが好ましく、また、10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であることがより好ましい。また、直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。また、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などの環状構造を含んでもよい。有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、ベンゾイル基、水酸基などが挙げられ、合成の容易さの観点からは無置換であることが好ましい。
【0173】
また、上記式(2)におけるnは溶媒等バインダー成分に対する相溶性と分散性の観点から、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、また、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
【0174】
また、前記ブロック共重合体の全繰り返し単位に占める前記式(2)で表される繰り返し単位の含有割合は、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、4モル%以上であることがさらに好ましく、また、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。前記範囲内の場合には溶媒等バインダー成分に対する相溶性と分散安定性の両立が可能となる傾向がある。
【0175】
また、前記ブロック共重合体は、分散剤の溶媒等バインダー成分に対する相溶性を高め、分散安定性を向上させるという観点から、下記式(3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0176】
【化29】
【0177】
上記式(3)中、R8は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基である。R9は水素原子又はメチル基である。
【0178】
上記式(3)のR8における、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、1以上であることが好ましく、また、10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であることがより好ましい。また、直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。また、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などの環状構造を含んでもよい。
【0179】
上記式(3)のR8における、置換基を有していてもよいアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上であり、また、16以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが挙げられ、これらの中でもフェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、又はジエチルフェニル基であることが好ましく、フェニル基、メチルフェニル基、又はエチルフェニル基であることがより好ましい。
【0180】
上記式(3)のR8における、置換基を有していてもよいアラルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常7以上であり、また、16以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましい。アラルキル基の具体例としては、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、フェニルブチレン基、フェニルイソプロピレン基などが挙げられ、これらの中でも、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、又はフェニルブチレン基であることが好ましく、フェニルメチレン基、又はフェニルエチレン基であることがより好ましい。
【0181】
これらの中でも、溶剤相溶性と分散安定性の観点から、R8がアルキル基、又はアラルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、又はフェニルメチレン基であることがより好ましい。
8における、アルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。また、アリール基又はアラルキル基が有していてもよい置換基としては、鎖状のアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。また、R8で示される鎖状のアルキル基には、直鎖状及び分岐鎖状のいずれも含まれる。
【0182】
また、前記ブロック共重合体の全繰り返し単位に占める前記式(3)で表される繰り返し単位の含有割合は、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましく、また、80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。前記範囲内の場合には分散安定性と高輝度の両立が可能となる傾向がある。
【0183】
前記ブロック共重合体は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位、前記一般式(2)で表される繰り返し単位、前記一般式(3)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよい。そのような繰り返し単位の例としては、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸クロライドなどの(メタ)アクリル酸塩系単量体; (メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系単量体; 酢酸ビニル;アクリロニトリル;アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル;N-メタクリロイルモルホリン等の単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
【0184】
分散性をより高めるとの観点から、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するAブロックと、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有さないBブロックとを有する、ブロック共重合体であることが好ましい。該ブロック共重合体は、A-Bブロック共重合体又はB-A-Bブロック共重合体であることが好ましい。また、Bブロックが前記一般式(2)で表される繰り返し単位及び前記一般式(3)で表される繰り返し単位を有することがより好ましい。
【0185】
また、前記一般式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位が、Aブロック中に含有されていてもよく、そのような繰り返し単位の例としては、前述の(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の繰り返し単位等が挙げられる。前記一般式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位の、Aブロック中の含有量は、好ましくは0~50モル%、より好ましくは0~20モル%であるが、かかる繰り返し単位はAブロック中に含有されないことが最も好ましい。
【0186】
前記一般式(2)で表される繰り返し単位及び前記一般式(3)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位がBブロック中に含有されていてもよく、そのような繰り返し単位の例としては、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸クロライドなどの(メタ)アクリル酸塩系単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系単量体; 酢酸ビニル;アクリロニトリル;アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル;N-メタクリロイルモルホリン等の単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。前記一般式(2)で表される繰り返し単位及び前記一般式(3)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位の、Bブロック中の含有量は、好ましくは0~50モル%、より好ましくは0~20モル%であるが、かかる繰り返し単位はBブロック中に含有されないことが最も好ましい。
【0187】
また、前記ブロック共重合体の酸価は、分散性の点から、低い方が好ましく、特に0mgKOH/gであることが好ましい。ここで酸価とは、分散剤固形分1gを中和するのに必要なKOHのmg数を表す。
【0188】
さらに、前記ブロック共重合体のアミン価は、分散性と現像性の観点から、30mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることがより好ましく、70mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、90mgKOH/g以上であることがよりさらに好ましく、100mgKOH/g以上であることが特に好ましく、110mgKOH/g以上であることが最も好ましく、また、150mgKOH/g以下であることが好ましく、130mgKOH/g以下であることがより好ましい。ここでアミン価とは、有効固形分換算のアミン価を表し、分散剤の固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの質量で表される値である。
【0189】
また、前記ブロック共重合体の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」ということがある。)で1000~30,000の範囲が好ましい。前記範囲内である場合には、分散安定性が良好となり、また、スリットノズル方式による塗布時に乾燥異物がより発生しにくくなる傾向がある。
【0190】
前記ブロック共重合体は、公知の方法により製造することができるが、例えば、上記各繰り返し単位を導入する単量体を、リビング重合することにより製造することができる。リビング重合法としては、特開平9-62002号公報、特開2002-31713号公報や、P.Lutz,P.Masson et al,Polym.Bull.12,79(1984),B.C.Anderson,G.D.Andrews et al,Macromolecules,14,1601(1981),K.Hatada,K.Ute,et al,Polym.J.17,977(1985),18,1037(1986),右手浩一、畑田耕一、高分子加工、36,366(1987),東村敏延、沢本光男、高分子論文集、46,189(1989),M.Kuroki,T.Aida,J.Am.Chem.Soc,109,4737(1987)、相田卓三、井上祥平、有機合成化学、43,300(1985),D.Y.Sogoh,W.R.Hertler et al,Macromolecules,20,1473(1987)等に記載されている公知の方法を採用することができる。
【0191】
本発明の着色樹脂組成物が顔料及び分散剤を含む場合、分散剤の含有割合は特に限定されるものではないが、顔料100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上、よりさらに好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。前記範囲内とすることで、分散安定性に優れ、高輝度な着色性樹脂組成物を得ることができる傾向がある。
【0192】
また本発明の着色樹脂組成物が顔料を含む場合、顔料の分散性の向上、分散安定性の向上のために分散助剤として顔料誘導体等を含んでいても良い。顔料誘導体としてはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンツイミダゾロン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、インダンスレン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系顔料等の誘導体が挙げられる。顔料誘導体の置換基としてはスルホン酸基、スルホンアミド基及びその4級塩、フタルイミドメチル基、ジアルキルアミノアルキル基、水酸基、カルボキシ基、アミド基等が顔料骨格に直接またはアルキル基、アリール基、複素環基等を介して結合したものが挙げられ、好ましくはスルホンアミド基及びその4級塩、スルホン酸基が挙げられ、より好ましくはスルホン酸基である。またこれら置換基は一つの顔料骨格に複数置換していても良いし、置換数の異なる化合物の混合物でも良い。顔料誘導体の具体例としてはアゾ顔料のスルホン酸誘導体、フタロシアニン顔料のスルホン酸誘導体、キノフタロン顔料のスルホン酸誘導体、イソインドリン顔料のスルホン酸誘導体、アントラキノン顔料のスルホン酸誘導体、キナクリドン顔料のスルホン酸誘導体、ジケトピロロピロール顔料のスルホン酸誘導体、ジオキサジン顔料のスルホン酸誘導体等が挙げられる。
【0193】
[1-5-3]界面活性剤
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性界面活性剤等、各種のものを用いることができるが、諸特性に悪影響を及ぼす可能性が低い点で、非イオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤の含有割合は、着色樹脂組成物の全固形分に対して通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0.3質量%以下の範囲で用いられる。
【0194】
[2]着色樹脂組成物の調製
次に、本発明に係る着色樹脂組成物(以下、レジストと称することがある)を調製する方法を説明する。
【0195】
着色剤として顔料を含むものを調製する場合にはまず、顔料、溶剤および分散剤を各所定量秤量し、分散処理工程において、顔料を含む顔料を分散させて顔料分散液を調製する。この分散処理工程では、ペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザーなどを使用することができる。この分散処理を行なうことによって色材が微粒子化されるため、着色樹脂組成物の塗布特性が向上し、製品のカラーフィルタ基板における画素の透過率が向上する。
【0196】
顔料を分散処理する際には、上述の通り、分散助剤又は分散樹脂などを適宜併用するのが好ましい。
サンドグラインダーを用いて分散処理を行なう場合は、0.1から数mm径のガラスビーズ、又は、ジルコニアビーズを用いるのが好ましい。分散処理する際の温度は、通常0℃以上、好ましくは室温以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下の範囲に設定する。なお、分散時間は、顔料分散液の組成、及びサンドグラインダーの装置の大きさなどにより適正時間が異なるため、適宜調整する必要がある。
【0197】
上記分散処理によって得られた顔料分散液に、溶剤、バインダー樹脂、光重合開始剤、場合によっては上記以外の成分などを混合し、均一な分散溶液とする。なお、分散処理工程及び混合の各工程においては、微細なゴミが混入することがあるため、得られた顔料分散液をフィルタなどによって、ろ過処理することが好ましい。
【0198】
着色剤として顔料を含まない場合には、着色剤、溶剤、バインダー樹脂、光重合開始剤、場合によっては上記以外の成分などを混合し、均一な溶液として得ることができる。得られた溶液をフィルタなどによってろ過処理することが好ましい。
【0199】
[3]カラーフィルタ基板の製造
次に、本発明に係るカラーフィルタについて説明する。
本発明に係るカラーフィルタは、上述の着色樹脂組成物を用いて形成した画素を有する。
【0200】
[3-1]透明基板(支持体)
カラーフィルタの透明基板としては、透明で適度の強度があれば、その材質は特に限定されるものではない。材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホンの熱可塑性樹脂製シート、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂などの熱硬化性樹脂シート、又は各種ガラスなどが挙げられる。この中でも、耐熱性の観点からガラスまたは耐熱性樹脂が好ましい。
【0201】
透明基板及びブラックマトリクス形成基板には、接着性などの表面物性の改良のため、必要に応じ、コロナ放電処理、オゾン処理、シランカップリング剤や、ウレタン系樹脂などの各種樹脂の薄膜形成処理などを行なってもよい。透明基板の厚さは、通常0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、また、通常10mm以下、好ましくは7mm以下の範囲とされる。また、各種樹脂の薄膜形成処理を行なう場合、その膜厚は、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下の範囲である。
【0202】
[3-2]ブラックマトリクス
上述の透明基板上にブラックマトリクスを設け、更に通常は赤色、緑色、青色の画素画像を形成することにより、本発明に係るカラーフィルタを製造することができる。上記着色樹脂組成物は、赤色、緑色、青色の画素のうち、緑色の画素(レジストパターン)形成用塗布液(以下、「緑色レジスト」と略記する場合がある)として使用することが好ましい。当該緑色レジストを用い、透明基板上に形成された樹脂ブラックマトリクス形成面上、又は、クロム化合物その他の遮光金属材料を用いて形成した金属ブラックマトリクス形成面上に、塗布、加熱乾燥、画像露光、現像及び熱硬化の各処理を行なって画素画像を形成する。
【0203】
ブラックマトリクスは、遮光金属薄膜又はブラックマトリクス用着色樹脂組成物を利用して、透明基板上に形成される。遮光金属材料としては、金属クロム、酸化クロム、窒化クロムなどのクロム化合物、ニッケルとタングステン合金などが用いられ、これらを複数層状に積層させたものであってもよい。
これらの金属遮光膜は、一般にスパッタリング法によって形成され、ポジ型フォトレジストにより、膜状に所望のパターンを形成した後、クロムに対しては硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸及び/又は硝酸とを混合したエッチング液を用い、その他の材料に対しては、材料に応じたエッチング液を用いて蝕刻され、最後にポジ型フォトレジストを専用の剥離剤で剥離することによって、ブラックマトリクスを形成することができる。
【0204】
この場合、まず、蒸着又はスパッタリング法などにより、透明基板上にこれら金属又は金属・金属酸化物の薄膜を形成する。次いで、この薄膜上に着色樹脂組成物の塗布膜を形成した後、ストライプ、モザイク、トライアングルなどの繰り返しパターンを有するフォトマスクを用いて、塗布膜を露光・現像し、レジスト画像を形成する。その後、この塗布膜にエッチング処理を施してブラックマトリクスを形成することができる。
【0205】
ブラックマトリクス用感光性着色樹脂組成物を利用する場合は、黒色の着色剤を含有する着色樹脂組成物を使用して、ブラックマトリクスを形成する。例えば、カーボンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック、チタンブラックなどの黒色色材単独又は複数、もしくは、無機又は有機の顔料、染料の中から適宜選択される赤色、緑色、青色などの混合による黒色色材を含有する着色樹脂組成物を使用し、下記の赤色、緑色、青色の画素画像を形成する方法と同様にして、ブラックマトリクスを形成することができる。
【0206】
[3-3]画素の形成
画素の形成方法は、使用する着色樹脂組成物の種類により異なるが、ここでは着色樹脂組成物として光重合性組成物を用いた場合を例に説明する。
ブラックマトリクスを設けた透明基板上に、赤色、緑色、青色のうち一色の着色樹脂組成物を塗布し、乾燥した後、塗布膜の上にフォトマスクを重ね、このフォトマスクを介して画像露光、現像、必要に応じて熱硬化又は光硬化により画素画像を形成する。この操作を、赤色、緑色、青色の三色の着色樹脂組成物について各々行なうことによって、カラーフィルタ画像を形成することができる。
【0207】
カラーフィルタ用の着色樹脂組成物の塗布は、スピナー法、ワイヤーバー法、フローコート法、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法などによって行なうことができる。中でも、ダイコート法によれば、塗布液使用量が大幅に削減され、かつ、スピンコート法によった際に付着するミストなどの影響が全くなく、更には異物発生が抑制されるなど、総合的な観点から好ましい。
【0208】
塗布膜の厚さは、大き過ぎるとパターン現像が困難となるとともに、液晶セル化工程でのギャップ調整が困難となることがある一方で、小さ過ぎると顔料濃度を高めることが困難となり、所望の色発現が不可能となることがある。塗布膜の厚さは、乾燥後の膜厚として、通常0.2μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上、また、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下の範囲である。
【0209】
[3-4]塗布膜の乾燥
基板に着色樹脂組成物を塗布した後の塗布膜の乾燥は、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブンを使用した乾燥法によるのが好ましい。通常は、予備乾燥の後、再度加熱させて乾燥させる。予備乾燥の条件は、前記溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて適宜選択することができる。乾燥温度及び乾燥時間は、溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて選択されるが、具体的には、乾燥温度は通常40℃以上、好ましくは50℃以上、また、通常80℃以下、好ましくは70℃以下の範囲であり、乾燥時間は通常15秒以上、好ましくは30秒以上、また、通常5分間以下、好ましくは3分間以下の範囲である。
【0210】
再加熱乾燥の温度条件は、予備乾燥温度より高い温度が好ましく、具体的には、通常50℃以上、好ましくは70℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは160℃以下、特に好ましくは130℃以下の範囲である。また、乾燥時間は、加熱温度にもよるが、通常10秒以上、中でも15秒以上、また、通常10分以下、中でも5分の範囲とするのが好ましい。乾燥温度は、高いほど透明基板に対する接着性が向上するが、高過ぎるとバインダー樹脂が分解し、熱重合を誘発して現像不良を生ずる場合がある。なお、この塗布膜の乾燥工程としては、温度を高めず減圧チャンバー内で乾燥を行なう減圧乾燥法を用いてもよい。
【0211】
[3-5]露光工程
画像露光は、着色樹脂組成物の塗布膜上に、ネガのマトリクスパターンを重ね、このマスクパターンを介し、紫外線又は可視光線の光源を照射して行なう。この際、必要に応じ、酸素による光重合性層の感度の低下を防ぐため、光重合性層上にポリビニルアルコール層などの酸素遮断層を形成した後に露光を行なってもよい。上記の画像露光に使用される光源は、特に限定されるものではない。光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプなどのランプ光源や、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザーなどのレーザー光源などが挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルタを利用することもできる。
【0212】
[3-6]現像工程
本発明に係るカラーフィルタは、本発明に係る着色樹脂組成物を用いた塗布膜に対し、上記の光源によって画像露光を行なった後、有機溶剤、又は、界面活性剤とアルカリ性化合物とを含む水溶液を用いて現像を行なうことによって、基板上に画像を形成して製造することができる。この水溶液には、更に有機溶剤、緩衝剤、錯化剤、染料又は顔料を含ませることができる。
【0213】
アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、水酸化アンモニウムなどの無機アルカリ性化合物や、モノ-・ジ-又はトリエタノールアミン、モノ-・ジ-又はトリメチルアミン、モノ-・ジ-又はトリエチルアミン、モノ-又はジイソプロピルアミン、n-ブチルアミン、モノ-・ジ-又はトリイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリンなどの有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
【0214】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤、アルキルベタイン類、アミノ酸類などの両性界面活性剤が挙げられる。
【0215】
有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。有機溶剤は、単独でも水溶液と併用して使用できる。
現像処理の条件には特に制限はないが、現像温度は通常10℃以上、中でも15℃以上、更には20℃以上、また、通常50℃以下、中でも45℃以下、更には40℃以下の範囲が好ましい。現像方法は、浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法、超音波現像法などの何れかの方法によることができる。
【0216】
[3-7]熱硬化処理
現像の後のカラーフィルタには、熱硬化処理を施す。この際の熱硬化処理条件は、温度は通常100℃以上、好ましくは150℃以上、また、通常280℃以下、好ましくは250℃以下の範囲で選ばれ、時間は5分間以上、60分間以下の範囲で選ばれる。これら一連の工程を経て、一色のパターニング画像形成は終了する。この工程を順次繰り返し、ブラック、赤色、緑色、青色をパターニングし、カラーフィルタを形成する。なお、4色のパターニングの順番は、上記した順番に限定されるものではない。
【0217】
[3-8]透明電極の形成
本発明に係るカラーフィルタは、このままの状態で画像上にITOなどの透明電極を形成して、カラーディスプレー、液晶表示装置などの部品の一部として使用されるが、表面平滑性や耐久性を高めるため、必要に応じ、画像上にポリアミド、ポリイミドなどのトップコート層を設けることもできる。また一部、平面配向型駆動方式(IPSモード)などの用途においては、透明電極を形成しないこともある。
【0218】
[4]画像表示装置(パネル)
次に、本発明の画像表示装置について説明する。本発明の画像表示装置は、前述のカラーフィルタを有する。以下、画像表示装置として、液晶表示装置及び有機EL表示装置について詳述する。
【0219】
[4-1]液晶表示装置
本発明に係る液晶表示装置の製造方法について説明する。本発明に係る液晶表示装置は、通常、上記本発明に係るカラーフィルタ上に配向膜を形成し、この配向膜上にスペーサを散布した後、対向基板と貼り合わせて液晶セルを形成し、形成した液晶セルに液晶を注入し、対向電極に結線して完成する。配向膜は、ポリイミド等の樹脂膜が好適である。配向膜の形成には、通常、グラビア印刷法及び/又はフレキソ印刷法が採用され、配向膜の厚さは数10nmとされる。熱焼成によって配向膜の硬化処理を行なった後、紫外線の照射やラビング布による処理によって表面処理し、液晶の傾きを調整しうる表面状態に加工される。
【0220】
スペーサは、対向基板とのギャップ(隙間)に応じた大きさのものが用いられ、通常2~8μmのものが好適である。カラーフィルタ基板上に、フォトリソグラフィ法によって透明樹脂膜のフォトスペーサ(PS)を形成し、これをスペーサの代わりに活用することもできる。対向基板としては、通常、アレイ基板が用いられ、特にTFT(薄膜トランジスタ)基板が好適である。
【0221】
対向基板との貼り合わせのギャップは、液晶表示装置の用途によって異なるが、通常2μm以上、8μm以下の範囲で選ばれる。対向基板と貼り合わせた後、液晶注入口以外の部分は、エポキシ樹脂等のシール材によって封止する。シール材は、UV照射及び/又は加熱することによって硬化させ、液晶セル周辺がシールされる。
周辺をシールされた液晶セルは、パネル単位に切断した後、真空チャンバー内で減圧とし、上記液晶注入口を液晶に浸漬した後、チャンバー内をリークすることによって、液晶を液晶セル内に注入する。液晶セル内の減圧度は、通常1×10-2Pa以上、好ましくは1×10-3以上、また、通常1×10-7Pa以下、好ましくは1×10-6Pa以下の範囲である。また、減圧時に液晶セルを加温するのが好ましく、加温温度は通常30℃以上、好ましくは50℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは90℃以下の範囲である。
【0222】
減圧時の加温保持は、通常10分間以上、60分間以下の範囲とされ、その後、液晶中に浸漬される。液晶を注入した液晶セルは、液晶注入口を、UV硬化樹脂を硬化させて封止することによって、液晶表示装置(パネル)が完成する。
液晶の種類には特に制限がなく、芳香族系、脂肪族系、多環状化合物等、従来から知られている液晶であって、リオトロピック液晶、サーモトロピック液晶等の何れでもよい。サーモトロピック液晶には、ネマティック液晶、スメスティック液晶及びコレステリック液晶等が知られているが、何れであってもよい。
【0223】
[4-2]有機EL表示装置
本発明のカラーフィルタを有する有機EL表示装置を作成する場合、例えば図1に示すように、透明支持基板10上に、本発明の着色樹脂組成物により画素20が形成された青色カラーフィルタ上に有機保護層30及び無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって多色の有機EL素子を作製する。
【0224】
有機発光体500の積層方法としては、カラーフィルタ上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、及び陰極55を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100は、パッシブ駆動方式の有機EL表示装置にもアクティブ駆動方式の有機EL表示装置にも適用可能である。
【実施例
【0225】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
合成例に記載した中圧分取液体クロマトグラフィーは、山善社製、中圧分取装置;W-Prep(流速20mL/min、シリカゲル30μmのカラム)を使用した。
【0226】
<MALDI-MSの測定>
以下の合成例に記載した染料のマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization、MALDI)―質量分析法(Mass Spectrometry、MS)の測定は、日本電子社製JMS-S3000を使用して以下の手順にて行った。
測定は、各試料1~2mgを0.1mLのTHF(テトラヒドロフラン)に溶解した溶液と約1%のマトリックス溶液を準備し、試料溶液とマトリックス溶液をターゲットプレートに滴下して行った。測定範囲はm/z=600~3000、マトリックスとしてはDHB(2,5-ジヒドロキシ安息香酸)又はαCHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)又はジトラノールを用いた。
【0227】
<合成例1:染料Aの合成>
テトラフルオロフタロニトリル4.00g(20mmol)、フッ化カリウム2.90g(5.0mmol)及びアセトン10mLを混合し、氷冷した後、p-ヒドロキシ安息香酸エチル6.65g(40mmol)のアセトン(30mL)溶液を添加し、そのまま5時間撹拌した。反応終了後、反応液をろ過、濃縮し、エタノール60mLを加えて析出した沈殿をろ別、乾燥することにより、中間体A6.20g(収率63%、純度97.6%)を得た。なお、この純度は高速液体クロマトグラフィー分析の結果から算出した面積%の値である。
【0228】
【化30】
【0229】
1H-NMR(CDCl3
δ:1.38(t,6H)、4.36(m,4H)、6.81(d,4H)、7.98(d,4H)
【0230】
中間体A6.20g(12.6mmol)、ヨウ化亜鉛1.21g(3.78mmol)及びベンゾニトリル12mLを混合し160℃で10時間反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、エタノール20mLに投入した。生成した固形分をエタノールで洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより、5.66g(収率88%)の染料Aを得た。
【0231】
以下の1H-NMR及びMALDI-MSの測定結果より、以下の化合物が染料Aに含まれていることを確認した。
【0232】
【化31】
【0233】
1H-NMR(DMSO-d6
δ:1.30(t,24H)、4.27(m,16H)、7.26(d,16H)、7.79(d,16H)
【0234】
MALDI-MS
calcd for C104728824Zn [M]-: 2032.38, found: 2032.23
【0235】
<合成例2:染料Bの合成>
テトラフルオロフタロニトリル3.02g(15.0mmol)、炭酸カリウム4.14g(30.0mmol)及びアセトン50mLを混合し氷冷した。2~4℃でp-ヒドロキシ安息香酸n―プロピル5.40g(30.0mmol)のアセトン(30mL)溶液を添加し、そのまま5時間撹拌した。反応終了後、反応液をろ過し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤をろ別した。溶媒を10g程度になるまで濃縮し、析出した固体をろ過して、中間体B4.0g(収率51%、純度95.9%)を得た。なお、この純度は高速液体クロマトグラフィー分析の結果から算出した面積%の値である。
【0236】
【化32】
【0237】
1H-NMR(CDCl3
δ:1.03(t,6H)、1.78(m,4H)、4.29(t,4H)、6.82(d,4H)、7.98(d,4H)
【0238】
中間体B1.00g(2.15mmol)、ヨウ化亜鉛0.21g(0.65mmol)及びベンゾニトリル2.4mLを混合し、170℃で13時間反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、メタノール20mLに投入した。生成した固形分をろ過した後、メタノール及び水で洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより、0.33g(収率29%)の染料Bを得た。
【0239】
以下の1H-NMR及びMALDI-MSの測定結果より、以下の化合物が染料Bに含まれていることを確認した。
【0240】
【化33】
【0241】
1H-NMR(DMSO-d6
δ:0.94(t,24H)、1.88(m,16H)、4.16(t,16H)、7.25(d,16H)、7.78(d,16H)
【0242】
MALDI-MS
calcd for C112888824Zn[M]-: 2144.51, found: 2144.37
【0243】
<合成例3:染料Cの合成>
テトラフルオロフタロニトリル2.00g(10mmol)、フッ化カリウム1.45g(2.5mmol)及びアセトン5mLを混合し、氷冷した後、p-ヒドロキシ安息香酸イソブチル3.89g(20mmol)のアセトン(5mL)溶液を添加し、そのまま5時間撹拌した。反応終了後、反応液をろ過、濃縮し、得られた残留物を中圧分取液体クロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサンと酢酸の混合溶媒、94:6~73:27(体積比)のグラジエント)にて精製することにより中間体C2.50g(収率46%、純度97.8%)を得た。なお、この純度は高速液体クロマトグラフィー分析の結果から算出した面積%の値である。
【0244】
【化34】
【0245】
中間体C2.50g(4.56mmol)、ヨウ化亜鉛0.44g(1.37mmol)及びベンゾニトリル4mLを混合し、160℃で9時間反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、中圧分取液体クロマトグラフィー(展開溶媒はクロロホルムとメタノールの混合溶媒、100:0~85:15(体積比)のグラジエント)にて精製することにより染料C1.06g(収率41%)を得た。
【0246】
以下の1H-NMR及びMALDI-MSの測定結果より、以下の化合物が染料Cに含まれていることを確認した。
【0247】
【化35】
【0248】
1H-NMR(DMSO-d6
δ:0.94(d,48H)、1.98(m,8H)、4.00(d,16H)、7.27(d,16H)、7.80(d,16H)
【0249】
MALDI-MS
calcd for C1201048824Zn [M]-: 2256.63, found: 2256.45
【0250】
<合成例4:染料Dの合成>
国際公開第2008/038679号の合成例1に記載の方法で合成したヘキサデカフルオロ亜鉛フタロシアニン0.30g(0.05mmol)、p-ヒドロキシ安息香酸エチル0.46g(2.77mmol)、炭酸カリウム0.38g(2.77mmol)及びジメチルスルホキシド9.0gを混合し、50℃で12時間撹拌した。この反応液を室温まで冷却し、メタノールと水の混合溶媒(体積比は1:4)20mLに投入した。生成した固形分をメタノール及び水で洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより、0.44gの染料Dを得た。
【0251】
<合成例5:染料Eの合成>
国際公開第2008/038679号の合成例1に記載の方法で合成したヘキサデカフルオロ亜鉛フタロシアニン0.50g(0.58mmol)、p-ヒドロキシ安息香酸エチル0.77g(4.62mmol)、炭酸カリウム1.27g(9.24mmol)及びジメチルスルホキシド15.0gを混合し、60℃で7時間撹拌した。この反応液を室温まで冷却し、メタノールと水の混合溶媒(体積比は1:4)40mLに投入した。生成した固形分をメタノール及び水で洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより、0.82gの染料Eを得た。
【0252】
<合成例6:染料Fの合成>
テトラフルオロフタロニトリル3.00g(15.0mmol)、炭酸カリウム2.07g(15.0mmol)及びアセトン50mLを混合し、氷冷した。-5℃でp-ヒドロキシ安息香酸エチル2.49g(15.0mmol)のアセトン(20mL)溶液を添加し、そのまま3時間撹拌した。反応終了後、反応液をろ過、濃縮した。得られた残留物を中圧分取液体クロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒、85:15~75:25のグラジエント)にて精製することにより中間体F2.30g(収率44%、純度99.3%)を得た。なお、この純度は高速液体クロマトグラフィー分析の結果から算出した面積%の値である。
【0253】
【化36】
【0254】
1H-NMR(CDCl3
δ:1.40(t,3H)、4.38(q,2H)、7.02(d,2H)、8.09(d,2H)
【0255】
中間体F1.99g(5.78mmol)、ヨウ化亜鉛0.51g(1.59mmol)及びベンゾニトリル4.8gを混合し、170℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、水10mLに投入した。有機層を分離、濃縮した。得られた残留物を中圧分取液体クロマトグラフィー(展開溶媒はクロロホルムとメタノールの混合溶媒(体積比98:2))にて精製することにより染料F1.40g(収率70%)を得た。
【0256】
以下の1H-NMRの測定結果より、以下の化合物が染料Fに含まれていると考えられる。
【0257】
【化37】
【0258】
1H-NMR(DMSO-d6
δ:1.35(m,12H)、4.33(m,8H)、7.50(m,8H)、8.00(m,8H)
【0259】
<合成例7:染料Gの合成>
テトラフルオロフタロニトリル45.0g(225mmol)、炭酸カリウム124g(900mmol)及びアセトン342mLを混合し、-10℃に冷却した後、p-ヒドロキシ安息香酸エチル74.7g(450mmol)のアセトン(366mL)溶液を添加し、そのまま5.5時間撹拌した。反応終了後、反応液をろ過、濃縮し、メタノール1400mLを加え、さらに濃縮し700gの溶液を得た。ここに水148mLを添加した後0℃に冷却し、そのまま30分間撹拌した。析出した固体をろ別、乾燥することにより、中間体Gの粗結晶98g(収率89%、純度81%)を得た。この粗結晶65gとメタノール615mL、水162mLを混合し、室温で1時間撹拌した。これをろ別、メタノール洗浄、乾燥することにより中間体G95g(精製収率92%、純度84%)を得た。なお、この純度は高速液体クロマトグラフィー分析の結果から算出した面積%の値である。
【0260】
中間体G(純度84%)50g(mmol)、ヨウ化亜鉛9.7g(30mmol)及びベンゾニトリル100mLを混合し、160℃で16時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、0℃に冷却したメタノール1260mLに滴下した後、そのまま1時間撹拌し、室温まで昇温した。これを2時間静置し、上澄みを除去した。ここにメタノール280mLを加え、室温で1時間撹拌した後、2時間静置し上澄みを除去した。ここにメタノール280mLを加え、室温で1時間撹拌した後、固形分をろ別、乾燥することにより、43g(収率83%)の染料Gを得た。
【0261】
以下のMALDI-MSの測定結果より、以下の化合物が染料Gに含まれていることを確認した。
【0262】
【化38】
【0263】
MALDI-MS
calcd for C104728824Zn [M]-: 2032.38, found: 2032.40
【0264】
<合成例8:染料Hの合成>
テトラフルオロフタロニトリル40.0g(200mmol)、炭酸カリウム110g(800mmol)及びアセトン304mLを混合し、-10℃に冷却した後、p-ヒドロキシ安息香酸エチル66.4g(400mmol)のアセトン(325mL)溶液を添加し、そのまま5.5時間撹拌した。反応終了後、反応液をろ過、濃縮し、メタノール975mLを加え、さらに濃縮し550gの溶液を得た。ここに水48mLを添加した後0℃に冷却し、そのまま30分間撹拌した。析出した固体をろ別、乾燥することにより、中間体H73g(収率74%、純度89%)を得た。なお、この純度は高速液体クロマトグラフィー分析の結果から算出した面積%の値である。
【0265】
中間体H(純度89%)55g(mmol)、ヨウ化亜鉛10.7g(33.5mmol)及びベンゾニトリル110mLを混合し、160℃で15.5時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、0℃に冷却したメタノール1575mLに滴下した後、そのまま1時間撹拌し、室温まで昇温した。これを2時間静置し、上澄みを除去した。ここにメタノール350mLを加え、室温で1時間撹拌した後、2時間静置し上澄みを除去した。ここにメタノール350mLを加え、室温で1時間撹拌した後、固形分をろ別、乾燥することにより、51g(収率89%)の染料Hを得た。
【0266】
以下のMALDI-MSの測定結果より、以下の化合物が染料Hに含まれていることを確認した。
【0267】
【化39】
【0268】
MALDI-MS
calcd for C104728824Zn [M]-: 2032.38, found: 2032.42
【0269】
<合成例9:バインダー樹脂Aの合成>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート148.0質量部を窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。ここにスチレン7.3質量部、グリシジルメタクリレート91.0質量部及びトリシクロデカン骨格を有するモノメタクリレート(日立化成社製FA-513M)61.7質量部を滴下し、更に120℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.8質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部及びハイドロキノン0.12質量部を投入し、120℃で6時間反応を続けた。その後、無水コハク酸39.0質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、120℃3.5時間反応させた。こうして得られたバインダー樹脂AのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは5700、酸価は88mgKOH/gであった。この樹脂に固形分が58.7質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて用いた。
【0270】
<合成例10:バインダー樹脂Bの合成>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン5.2質量部、グリシジルメタクリレート132質量部、トリシクロデカン骨格を有するモノメタクリレートFA-513M(日立化成社製)4.4質量部および2.2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル8.47質量部の混合液を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸67.0質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール1.1質量部およびハイドロキノン0.19質量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)15.2質量部、トリエチルアミン0.2質量部を加え、100℃で3.5時間反応させた。こうして得られたバインダー樹脂BのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは9000、酸価25mgKOH/gであった。この樹脂に固形分が59.5質量%になるようプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて用いた。
【0271】
<合成例11:バインダー樹脂C>
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。
【0272】
一方、モノマー槽中にジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート30質量部、メタクリル酸60質量部、メタクリル酸シクロヘキシル110質量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート5.2質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を仕込み、連鎖移動剤槽にn-ドデシルメルカプタン5.2質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート27質量部を仕込み、反応槽の温度が90℃に安定してからモノマー槽及び連鎖移動剤槽から滴下を開始し、重合を開始させた。温度を90℃に保ちながら滴下をそれぞれ135分かけて行い、滴下が終了して60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。
【0273】
3時間、110℃を維持した後、セパラブルフラスコにガス導入管を付け、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、反応槽に、メタクリル酸グリシジル39.6質量部、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)0.4質量部、トリエチルアミン0.8質量部を仕込み、そのまま110℃で9時間反応させた。
室温まで冷却し、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが9000、酸価が101mgKOH/gのバインダー樹脂Cを得た。この樹脂に固形分が44.0質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて用いた。
【0274】
<分散剤A:ビックケミー社製分散剤「BYK-LPN6919」>
親溶媒性基を有するAブロックと、窒素原子含有官能基を有するBブロックからなるメタクリル酸系ABブロック共重合体。下記式(2a)及び(3a)の繰り返し単位を有し、かつ、下記式(1a)の繰り返し単位を有さない。アミン価は120mgKOH/g、酸価は1mgKOH/g以下である。
【0275】
全繰り返し単位中における下記式(2a)、(3a)の含有割合はそれぞれ、33.3モル%、6.7モル%である。
【0276】
【化40】
【0277】
<黄色顔料分散液の調製>
C.I.ピグメントイエロー138を12.0質量部、分散剤Aを固形分換算で3.0質量部、バインダー樹脂Cを固形分換算で6.0質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを79.0質量部、直径0.5mmのジルコニアビーズ225質量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させて、黄色顔料分散液を調製した。
【0278】
<光重合開始剤A>
国際公開第2009/131189号に記載の方法で合成した3-(2-アセトキシイミノ-1,5-ジオキソ-5-メトキシペンチル)-9-エチル-6-(o-トルオイル)-9H-カルバゾールを、光重合開始剤Aとして使用した。
【0279】
<吸光度の測定>
上記合成した染料A~H1mgをDMSO(ジメチルスルホキシド)100mLに溶解させた溶液を準備し、その吸収スペクトルを紫外可視分光光度計(染料A~Fは日立ハイテクノロジーズ社製U-4100、染料G及びHは島津製作所社製UV-3100PCを使用)にて、1cm角の石英セルを用いて測定した。各染料の極大吸収波長(λmax)と、極大吸収波長における吸光度(abs)を求めた。その結果を表1及び表2に示した。
【0280】
【表1】
【0281】
【表2】
【0282】
<MALDI-MSの測定>
上記合成した染料A~Hの1分子中に含まれる前記一般式(2)で表される基の平均個数を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization、MALDI)―質量分析法(Mass Spectrometry、MS)にて測定した。装置は日本電子社製JMS-S3000を使用した。
測定は、各試料1~2mgを0.1mLのTHF(テトラヒドロフラン)に溶解した溶液と約1%のマトリックス溶液を準備し、試料溶液とマトリックス溶液をターゲットプレートに滴下して行った。測定範囲はm/z=600~3000、マトリックスとしてはDHB(2,5-ジヒドロキシ安息香酸)、αCHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)又はジトラノールを用いた。
得られたマススペクトルにおいて、最大ピーク強度を基準とし、その5%強度を閾値とした。次いで、該閾値以上のピークについて、下記計算式から、式(2)で表される基の平均個数を求めた。その結果を表3及び表4に示す。
式(2)で表される基の平均個数 = ΣNi×Ii/ΣIi
Ni:各々のピークに対応する化合物に含まれる式(2)の個数
Ii:各々のピークの高さ(強度)
【0283】
【表3】
【0284】
【表4】
【0285】
<着色樹脂組成物の調製>
上記合成した染料A~H、合成例9及び10で得られたバインダー樹脂A及びB、黄色顔料分散液、光重合開始剤A、並びにその他の成分を表5~7に記載された組成となるように他の成分と混合して、着色樹脂組成物を調製した。
なお、表5~7の溶剤以外の各成分において、上段の数値は、いずれも添加する各成分の着色樹脂組成物中の含有割合(質量%)を表し、下段の数値は各成分の全固形分中の含有割合(質量%)を表す。
混合に際しては、各成分が十分に混合するまで10分以上攪拌した後、23℃で10分間超音波処理を行った。最後に孔径5μmの駒型フィルターによって濾過し、異物を取り除いた。
【0286】
【表5】
【0287】
【表6】
【0288】
【表7】
【0289】
表5~7中の略称等は、各々以下の通りである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
F559:メガファックF-559(DIC社製、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー)
BYK330:BYK-330(ビックケミー社製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)
【0290】
<着色硬化膜の製造及び色特性の評価>
5cm角に切断したガラス基板上に、調製した各着色樹脂組成物をスピンコート法により焼成後の膜厚が2μmとなるように塗布し、減圧乾燥させた後、ホットプレート上にて80℃で3分間プリベークした。その後、2kW高圧水銀灯により、32mW/cm2、60mJ/cm2の露光量にて全面露光した後に、クリーンオーブンにて230℃で30分間焼成した。得られた着色硬化膜の分光透過率を実施例1~4及び比較例1~3においては分光光度計U-3310(日立ハイテクサイエンス社製)を使用し、また、実施例5及び6においてはU-3900(日立ハイテクサイエンス社製)を使用して測定し、XYZ表色系における色度(SB2光源)及び輝度を算出した。その結果を表8~10に示した。
【0291】
<異物評価>
上記<着色硬化膜の製造及び色特性の評価>にて得られた着色硬化膜について光学顕微鏡(ECLIPSE L200(ニコン社製)、倍率50倍)で観察し、以下の基準にて評価した。その結果を表8~10に示した。
○:観察視野に異物が見られない
×:観察視野に異物が認められた
【0292】
<コントラスト評価>
上記<着色硬化膜の製造及び色特性の評価>にて得られた実施例4の着色硬化膜について、コントラスト計(CT-1:壺坂電気社製、色彩色差計BM-5AS:トプコン社製、光源:F-10、偏光板:壺坂電気社製)を用いて、ブランク18000としてコントラストを測定した。その結果を表10に示した。
【0293】
【表8】
【0294】
【表9】
【0295】
【表10】
【0296】
表8及び9より、染料A~C及びG~Hを含む実施例1~3及び5~6の着色樹脂組成物は輝度が高く、異物の発生がないのに対して、染料D~Fを含む比較例1~3の着色樹脂組成物は輝度が低く、異物も発生している。
比較例1~3に含まれる染料D~Fは、いずれも染料1分子あたりに含まれる前記一般式(2)で表される基の平均個数が7.4を下回っており、それによって加熱工程で染料が凝集し、異物が発生して、輝度が低くなったと考えられる。
これに対して実施例1~3及び実施例5~6に含まれる染料A~C及び染料G~Hは、いずれも染料1分子あたりに含まれる前記一般式(2)で表される基の平均個数が7.4以上であり、それによって溶剤やバインダー樹脂への溶解性が向上し、分子間における前記一般式(2)で表される基同士の立体反発により凝集が抑制されて輝度が高くなり、異物の発生が抑制されたと考えられる。
【0297】
また、表10より、フタロシアニン系染料以外の着色剤を含む場合においても、輝度が高く、異物の発生がないことが確認された。
【符号の説明】
【0298】
10 透明支持基板
20 画素
30 有機保護層
40 無機酸化膜
50 透明陽極
51 正孔注入層
52 正孔輸送層
53 発光層
54 電子注入層
55 陰極
100 有機EL素子
500 有機発光体
図1