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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】自発光型画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/86 20230101AFI20240312BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240312BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240312BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240312BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240312BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240312BHJP
【FI】
H10K50/86
B32B7/023
G09F9/00 313
G09F9/30 365
G02B5/30
H10K50/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019181927
(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公開番号】P2021057308
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 早紀
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134414(JP,A)
【文献】特開2015-232647(JP,A)
【文献】特開2014-026266(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061235(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H05B 44/00
H05B 45/60
H10K 50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルムおよび位相差フィルムを備える円偏光板が、前記位相差フィルム側で、内部ヘイズが35%以上85%以下である光拡散層を介して光反射性自発光型画像表示素子に積層され
前記位相差フィルムは第1の位相差フィルムおよび第2の位相差フィルムを備え、第1の位相差フィルムが式(1)および式(3)で表される特性を有し、第2の位相差フィルムが式(4)で表される特性を有する
自発光型画像表示装置。
nx>ny≒nz (1)
135nm<RoA(550)<145nm (3)
nx≒ny<nz (4)
〔式(1)、式(3)および式(4)において、
nxは、フィルム面内における遅相軸方向の屈折率を表し、
nyは、フィルム面内であって遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
RoA(λ)は、第1の位相差フィルムの波長λnmにおける面内位相差値を表す。〕
【請求項2】
前記光拡散層が光拡散粘着剤層である請求項1に記載の自発光型画像表示装置。
【請求項3】
前記第1の位相差フィルムがさらに式(2)で表される特性を有する請求項に記載の自発光型画像表示装置。
RoA(450)/RoA(550)≦0.93 (2)
〔式(2)において、
RoA(λ)は、第1の位相差フィルムの波長λnmにおける面内位相差値を表す。〕
【請求項4】
偏光フィルムおよび位相差フィルムを備え、前記位相差フィルム側に内部ヘイズが35%以上85%以下である光拡散粘着剤層を備え
前記位相差フィルムは第1の位相差フィルムおよび第2の位相差フィルムを備え、第1の位相差フィルムが式(1)および式(3)で表される特性を有し、第2の位相差フィルムが式(4)で表される特性を有する光拡散粘着剤層付き円偏光板。
nx>ny≒nz (1)
135nm<RoA(550)<145nm (3)
nx≒ny<nz (4)
〔式(1)、式(3)および式(4)において、
nxは、フィルム面内における遅相軸方向の屈折率を表し、
nyは、フィルム面内であって遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
RoA(λ)は、第1の位相差フィルムの波長λnmにおける面内位相差値を表す。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自らの発光により画像を表示する自発光型画像表示装置としては、有機EL(エレクトロルミネッセンス)画像表示素子などの自発光型画像表示素子と、その前面側に配置される円偏光板とを備えるものが知られている。自発光型画像表示素子の内部には、発光素子の他、画像表示のための電気信号を送るための電極、発光光の色を調整するためのカラーフィルターなどが配置される。これらの電極等は、画像表示素子の前面側から入射した外光を前面側に向けて反射することがある。内部から前面側に向けて反射された内部反射光は、表示画像の視認性を低下させるため、自発光型画像表示素子の前面側には通常、円偏光板が配置される。
【0003】
円偏光板は、偏光フィルムおよび位相差フィルムが積層された光学素子である。円偏光板は、前面側から自発光画像表示素子側に向けて偏光フィルムおよび位相差フィルムがこの順となるように配置される。位相差フィルムとしてはλ/4板が用いられる。円偏光板を配置することにより、内部反射光を低減して僅かなものとすることにより、画面の視認性の低下を抑制する。
【0004】
円偏光板を透過する僅かな内部反射光の着色を抑制するために、λ/4板として、可視光の広範囲に亘ってλ/4として機能する広帯域λ/4板も用いられる。また、画面を斜め方向から見たときの僅かな内部反射光をも抑制するために、位相差フィルムとして、λ/4板の自発光型画像表示素子側に、いわゆるポジティブCプレートを配置したものも用いられる。このような円偏光板は通常、無色で透明な接着層を介して自発光型画像表示素子に積層される。
【0005】
しかし、このような従来の自発光型画像表示装置では、斜め方向から見たときに、画面を見る方位に依存して、画面内に内部反射光の抑制が不十分な領域を生ずる、いわゆる光抜けと呼ばれる現象が生ずることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-40603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、斜め方向のいずれの方位から画面を見たときにも、内部反射光の光抜けが抑制された自発光型画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、偏光フィルム(10)および位相差フィルム(2)を備える円偏光板(5)が、前記位相差フィルム(2)側で、内部ヘイズが35%以上85%以下である光拡散層(14)を介して光反射性自発光型画像表示素子(16)に積層された自発光型画像表示装置(100)を提供する。本発明の自発光型画像表示装置(100)は、円偏光板(5)と光反射性自発光型画像表示素子(16)との間に内部ヘイズが35%~85%である光拡散層(14)が介在することにより、光抜けを抑制することができる。
【0009】
前記光拡散層(14)は、光拡散粘着剤層であってもよい。光拡散層(14)が光拡散粘着剤層であることにより、光拡散層としての機能と前記円偏光板(5)を自発光型画像表示素子(16)に密着して積層する粘着剤層としての機能とを兼用して、画像表示装置(100)全体を薄型化することができる。
【0010】
前記位相差フィルム(2)は第1の位相差フィルム(20)および第2の位相差フィルム(21)を備えていてもよい。従来の画像表示装置では、第1の位相差フィルム(20)が式(1)および式(3)で表される特性を有し、第2の位相差フィルム(21)が式(4)で表される特性を有する場合には、斜め方向から見たときの内部反射光を十分に抑制し得るために光抜けが却って目立つこととなっていたが、本発明では上記光拡散層(14)が介在するので、このような僅かな光抜けをも、有効に抑制し得る。
nx>ny≒nz (1)
135nm<RoA(550)<145nm (3)
nx≒ny<nz (4)
〔式(1)、式(3)および式(4)において、
nxは、フィルム面内における遅相軸方向の屈折率を表し、
nyは、フィルム面内であって遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
RoA(λ)は、第1の位相差フィルムの波長λnmにおける面内位相差値を表す。〕
【0011】
第1の位相差フィルム(20)が、式(1)および式(3)に加えて、さらに式(2)で表される特性を有していてもよい。第1の位相差フィルム(20)が式(2)で表される特性を有する場合には、広い波長範囲に亙って内部反射光を更に十分に抑制することから、却って光抜けが目立ち易かったが、本発明の自発光型画像表示装置(100)は、このような場合であっても、有効に光抜けを抑制しうる。
RoA(450)/RoA(550)≦0.93 (2)
〔式(2)において、
RoA(λ)は、第1の位相差フィルムの波長λnmにおける面内位相差値を表す。〕
【0012】
また本発明は、偏光フィルム(10)および位相差フィルム(2)を備え、前記位相差フィルム(2)側に内部ヘイズが35%以上85%以下である光拡散粘着剤層(14)を備える光拡散粘着剤層付き円偏光板をも提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自発光型画像表示装置(100)は、斜め方向から見たときに画面を見る方位に依存して生ずる光抜けを抑制するので、斜め方向のいずれの方位から見ても、例えば画像表示装置を斜め方向から見ながら、面内で回転させて横表示と縦表示とを切替えるなどしも、良好な画像表示が可能であり、特に黒表示能力が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の自発光型画像表示装置の一例について層構成を示す概略断面図である。
図2】実施例1で得た光拡散粘着剤層付き円偏光板の反射光の強度Lの極座標系にプロットした図である。
図3】比較例1で得た光拡散粘着剤層付き円偏光板の反射光の強度Lの極座標系にプロットした図である。
図4比較例2で得た光拡散粘着剤層付き円偏光板の反射光の強度Lの極座標系にプロットした図である。
図5】実施例における内部反射光の強度L*の測定方法を説明する模式図であり、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔自発光型画像表示装置〕
本発明の自発光型画像表示装置(100)は、円偏光板(5)と光反射性自発光型画像表示素子(16)とを備える。円偏光板(5)は、光反射性自発光型画像表示素子(16)に積層されている。円偏光板(5)と光反射性自発光型画像表示素子(16)との間には光拡散層(14)が介在している。
【0016】
円偏光板(5)は、偏光フィルム(10)および位相差フィルム(2)を備える。偏光フィルム(10)と位相差フィルム(2)とは、接着層を介して互いに積層されることができる。接着層としては、例えば後述の粘着剤層や接着剤層が挙げられる。
【0017】
以下、図1を参照して、本発明の自発光型画像表示装置(100)の層構成の一例を説明する。なお、図1において偏光フィルム(10)と第1の保護フィルム(11)および第2の保護フィルム(12)とをそれぞれ貼合するための接着剤層は図示していない。図1に示す自発光型画像表示装置(100)は、偏光フィルム(10)の一方の面に第1の保護フィルム(11)が積層され、偏光フィルム(10)のもう一方の面に第2の保護フィルム(12)が積層された偏光板(1)と、位相差フィルム(2)と、光拡散層(14)と、光反射性自発光型画像表示素子16とがこの順に積層された層構成を有する。偏光板(1)は、入射した光のうち直線偏光光のみを通過させる機能を有する。
【0018】
偏光板(1)と位相差フィルム(2)とは粘着剤層(13)を介して積層されており、位相差フィルム(2)と光反射性自発光型画像表示素子(16)とは光拡散層(14)を介して積層されている。
【0019】
位相差フィルム(2)は、第1の位相差フィルム(20)と第2の位相差フィルム(21)とが、接着層(15)を介して積層されている。また、位相差フィルム(2)は、第1の位相差フィルム(20)および第2の位相差フィルム(21)以外の層を備えていてもよい。このような相としては、例えば重合性液晶化合物を配向させるための配向膜や、基材フィルム、その他の位相差層等が挙げられる。
【0020】
光反射性自発光型画像表示素子(16)は、例えば有機EL画像表示素子であることができる。有機EL画像表示素子は電極を備える。電極は透明電極であるか、または半透明電極である。これらの電極は通常、比較的大きな反射率を示す光反射性である。有機EL画像表示素子は正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、正孔防止層、電子輸送層、電子注入層からなる群から選ばれる少なくとも一つの層を備えることができる。これらの層は、光を反射する光反射性であることがある。
【0021】
位相差フィルム(2)が第1の位相差フィルム(21)および第2の位相差フィルム(22)を備える場合、これらの積層順は任意である。すなわち、本発明における円偏光板(5)は、図1に示すように、偏光フィルム(10)、第1の位相差フィルム(20)、第2の位相差フィルム(21)をこの順に備えてもよいし、偏光フィルム(10)、第2の位相差フィルム(21)、第1の位相差フィルム(20)をこの順に備えてもよい。
【0022】
光反射性自発光型画像表示装置(100)は、図1に示した層以外の層を有することができる。光反射性自発光型画像表示装置(100)がさらに有していてもよい層としては、前面板、遮光パターン、タッチセンサーなど(図示せず)が挙げられる。
【0023】
前面板は、偏光板における位相差フィルムが積層された側とは反対側、すなわち偏光フィルム側に配置することができる。このように配置することにより、前面板は円偏光板よりも前面側に配置されることとなる。
【0024】
遮光パターンは、前面板と円偏光板(5)との間に配置することができる。この場合、遮光パターンは、前面板における偏光板側の面上に形成することができる。遮光パターンは、画像表示装置の額縁(非表示領域)に形成され、画像表示装置の配線が使用者に視認されないようにすることができる。
【0025】
タッチセンサーは、前面板と円偏光板(5)との間や、円偏光板(5)と光反射性自発光型画像表示素子(16)との間などに配置されることができる。
【0026】
本発明の自発光型画像表示装置(100)の平面視における形状は特に限定されるものではない。自発光型画像表示装置(100)の形状が平面視で実質的に矩形である場合、長辺の長さは5cm以上35cm以下であることが好ましく、10cm以上25cm以下であることがより好ましく、短辺の長さは5cm以上25cm以下であることが好ましく、6cm以上20cm以下であることがより好ましい。
【0027】
実質的に矩形であるとは、自発光型画像表示装置(100)が、それぞれ、主面の4つの隅(角部)のうち少なくとも1つの角部が鈍角となるように切除された形状や丸みを設けた形状であったり、主面に垂直な端面の一部が面内方向に窪んだ凹み部(切り欠け)を有したり、主面内の一部が、円形、楕円形、多角形及びそれらの組合せ等の形状にくり抜かれた穴あき部を有したりしてもよいことをいう。
【0028】
〔偏光板〕
偏光板(1)は、偏光フィルム(10)と、偏光フィルムの片面もしくは両面に貼合された保護フィルム(11、12)とからなるフィルムのことをいう。偏光板が備える保護フィルムは、後述のハードコート層、反射防止層、帯電防止層などの表面処理層を有していてもよい。偏光フィルムと保護フィルムとは、例えば接着剤層や粘着剤層を介して積層することができる。偏光板が備える部材について、以下に説明する。
【0029】
(1)偏光フィルム
偏光板(1)が備える偏光フィルム(10)は、その吸収軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、吸収軸に直交する振動面、すなわち透過軸と平行な振動面を持つ直線偏光を透過する性質を有する吸収型の偏光フィルムであることができる。偏光フィルムとしては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させた偏光フィルムを好適に用いることができる。偏光フィルムは、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程;二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液等の架橋液で処理する工程;及び、架橋液による処理後に水洗する工程を含む方法によって製造できる。
【0030】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、及びアンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等を含む。
【0031】
本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルから選択される少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリレート」等においても同様である。
【0032】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は通常、85~100mol%であり、98mol%以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタール等を用いることもできる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は通常、1000~10000であり、1500~5000が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準拠して求めることができる。
【0033】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは特に制限されないが、偏光フィルムの厚みを15μm以下とするためには、5~35μmのものを用いることが好ましい。より好ましくは、20μm以下である。
【0034】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、架橋処理の前又は架橋処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。
【0035】
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤や水を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、3~8倍である。
【0036】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、例えば、該フィルムを二色性色素が含有された水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0037】
二色性色素による染色後の架橋処理としては通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液は、ヨウ化カリウムを含有することが好ましい。
【0038】
偏光フィルムの厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは13μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは8μm以下である。偏光フィルムの厚みは、通常2μm以上であり、3μm以上であることが好ましい。
【0039】
偏光フィルムとしては、例えば特開2016-170368号公報に記載されるように、液晶化合物が重合した硬化膜中に、二色性色素が配向したものを使用してもよい。二色性色素としては、波長380~800nmの範囲内に吸収を有するものを用いることができ、有機染料を用いることが好ましい。二色性色素として、例えば、アゾ化合物が挙げられる。液晶化合物は、配向したまま重合することができる液晶化合物であり、分子内に重合性基を有することができる。また、WO2011/024891に記載されるように、液晶性を有する二色性色素から偏光フィルムを形成してもよい。
【0040】
偏光フィルムの視感度補正偏光度は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。上限値は、特に限定されないが、99.9999%以下である。また、偏光フィルムの視感度補正単体透過率は、35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。上限値は、特に限定されないが、49.9%以下である。積層体が、このような性能の偏光フィルムを備えることで、反射光が漏れにくくなり、色付きを目立たなくすることができる。
【0041】
(2)保護フィルム
偏光フィルム(10)は通常、その片面または両面に保護フィルムを積層した偏光板として用いられる。図1に示す自発光型画像表示装置(100)においては、偏光フィルム(10)の両面にそれぞれ保護フィルム(11,12)が積層されている。偏光フィルム(10)の一方の面に積層した保護フィルムを第1の保護フィルム(11)とし、もう一方の面にせきそうした保護フィルム(12)を第2の保護フィルムとしている。積層される保護フィルムは、透光性を有する熱可塑性樹脂フィルムであることができ、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂フィルムである。
【0042】
保護フィルムは、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等からなるフィルムであることができる。
【0043】
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂(エチレンの単独重合体であるポリエチレン樹脂や、エチレンを主体とする共重合体)、ポリプロピレン樹脂(プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン樹脂や、プロピレンを主体とする共重合体)のような鎖状オレフィンの単独重合体の他、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
【0044】
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのようなノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0045】
ポリエステル系樹脂は、下記セルロースエステル系樹脂を除く、エステル結合を有する樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としては2価のジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルが挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。ポリエステル系樹脂の代表例として、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合体であるポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主な構成モノマーとする樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂の具体例は、例えば、ポリメタクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル-スチレン共重合体(MS樹脂等);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル-メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)を含む。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステルを主成分とする重合体が用いられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50~100重量%、好ましくは70~100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
【0047】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例は、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートを含む。また、これらの共重合物や、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものも挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース)が特に好ましい。
【0048】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなるエンジニアリングプラスチックである。
【0049】
保護フィルムの位相差値を、適宜に好適な値に制御してもよい。使用者が偏光サングラス等を着用した場合の画面の視認性を向上させるために、波長550nmにおける面内位相差値を70~140nmとしてもよい。このような面内位相差値を示す保護フィルムは、例えば偏光フィルムの前面側の面に積層される。
【0050】
保護フィルムの厚みは通常1~100μmであるが、強度や取扱性等の観点から5~60μmであることが好ましく、10~55μmであることがより好ましく、15~40μmであることがさらに好ましい。
【0051】
偏光フィルムの両面に貼合される保護フィルムは、同種の熱可塑性樹脂で構成されていてもよいし、異種の熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。また、厚みが同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、同じ位相差特性を有していてもよいし、異なる位相差特性を有していてもよい。
【0052】
上述のように、保護フィルムの少なくともいずれか一方は、その外面、すなわち偏光フィルムとは反対側の面に、ハードコート層、防眩層、光拡散層、反射防止層、低屈折率層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層を備えるものであってもよい。表面処理層はコーティングにより形成されるコーティング層であってもよい。なお、保護フィルムの厚みは、表面処理層の厚みを含んだものである。
【0053】
保護フィルムは通常、接着層を介して偏光フィルムに積層される。すなわち、接着層として、例えば接着剤層または粘着剤層を用い、これを介して偏光フィルムに貼合することができる。接着剤層を形成する接着剤としては、水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤又は熱硬化性接着剤を用いることができ、好ましくは水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤である。粘着剤層を形成する粘着剤としては後述のものが使用できる。
【0054】
水系接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる接着剤、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等が挙げられる。中でもポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる水系接着剤が好適に用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるポリビニルアルコール系共重合体、又はそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体等を用いることができる。水系接着剤は、アルデヒド化合物(グリオキザール等)、エポキシ化合物、メラミン系化合物、メチロール化合物、イソシアネート化合物、アミン化合物、多価金属塩等の架橋剤を含むことができる。
【0055】
水系接着剤を使用する場合は、偏光フィルムと保護フィルムとを貼合した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するための乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥工程後、例えば20~45℃の温度で養生する養生工程を設けてもよい。
【0056】
上記活性エネルギー線硬化性接着剤とは、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性化合物を含有する接着剤であり、好ましくは紫外線硬化性接着剤である。
【0057】
上記硬化性化合物は、カチオン重合性の硬化性化合物やラジカル重合性の硬化性化合物であることができる。カチオン重合性の硬化性化合物としては、例えば、エポキシ系化合物(分子内に1個又は2個以上のエポキシ基を有する化合物)や、オキセタン系化合物(分子内に1個又は2個以上のオキセタン環を有する化合物)、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。ラジカル重合性の硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル系化合物(分子内に1個又は2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)や、ラジカル重合性の二重結合を有するその他のビニル系化合物、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。カチオン重合性の硬化性化合物とラジカル重合性の硬化性化合物とを併用してもよい。活性エネルギー線硬化性接着剤は通常、上記硬化性化合物の硬化反応を開始させるためのカチオン重合開始剤及び/又はラジカル重合開始剤をさらに含む。
【0058】
偏光フィルムと保護フィルムとを貼合するにあたっては、接着性を高めるために、これらの少なくともいずれか一方の貼合面に表面活性化処理を施してもよい。表面活性化処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、放電処理(グロー放電処理等)、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、電離活性線処理(紫外線処理、電子線処理等)のような乾式処理;水やアセトン等の溶媒を用いた超音波処理、ケン化処理、アンカーコート処理のような湿式処理を挙げることができる。これらの表面活性化処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上を組み合わせてもよい。
【0059】
偏光フィルムの両面に保護フィルムが貼合される場合においてこれらの保護フィルムを貼合するための接着剤は、同種の接着剤であってもよいし異種の接着剤であってもよい。また、偏光フィルムの一方の面に接着剤層を介して保護フィルムを積層し、もう一方の面には粘着剤層を介して保護フィルムを積層してもよい。
【0060】
〔位相差フィルム〕
位相差フィルム(2)は、第1の位相差フィルム(20)だけであってもよいし、図1に示すように、第1の位相差フィルム(20)と第2の位相差フィルム(21)とを有していてもよい。さらに、位相差フィルムは後述の基材、配向膜、その他の位相差層を含んでいてもよい。
【0061】
第1の位相差フィルムは、式(1)および式(3)で表される特性を有するものである。第1の位相差フィルムは、ポジティブAプレートであることができ、λ/4板であることができる。また、第1の位相差フィルムが更に式(2)で表される特性を有する場合、この第1の位相差フィルムは、いわゆる逆波長分散性を示す。このような第1の位相差フィルムを備えることで、内部反射光の色付きを抑制することができる。第1の位相差フィルムは、その遅相軸が、偏光フィルムの吸収軸に対して通常40°~50°、好ましくは43°~47°、さらに好ましくは44°~46°、理想的には45°で交わる。
【0062】
nx>ny≒nz (1)
RoA(450)/RoA(550)≦0.93 (2)
135nm<RoA(550)<145nm (3)
式(1)~式(3)において、nxは、フィルム面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、フィルム面内であって遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表す。RoA(λ)は、第1の位相差フィルムの波長λnmにおける面内位相差値を表す。
【0063】
ny≒nzは、nyとnzとが完全に等しい場合に加え、nyとnzとが実質的に等しい場合も包含する。具体的には、nyとnzとの差の大きさが0.01以内であれば、nyとnzとが実質的に等しいと言うことができる。
【0064】
RoA(λ)は、波長λnmにおける屈折率n(λ)と、厚みdから、以下の式に基づいて算出することができる。
RoA(λ)=〔nx(λ)-ny(λ)〕×d
ここで、RoA(450)/RoA(550)は、第1の位相差フィルムの波長分散性を表し、好ましくは0.92以下である。
【0065】
また、波長λnmにおける第1の位相差フィルムの面内位相差値RoA(λ)について、RoA(450)は100nm以上135nm以下であることが好ましく、RoA(550)は137nm以上145nm以下であることが好ましく、RoA(650)は137以上165以下であることが好ましい。
【0066】
第2の位相差フィルム(21)は、式(4)で表される特性を有するものである。第2の位相差フィルムは、ポジティブCプレートであることができる。このような第2の位相差フィルムを備えることで、反射光の色付きを抑制することができる。
【0067】
nx≒ny<nz (4)
式(4)において、nxは、フィルム面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、フィルム面内であって遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表す。
【0068】
nx≒nyは、nxとnyとが完全に等しい場合に加え、nxとnyとが実質的に等しい場合も包含する。具体的には、nxとnyとの差の大きさが0.01以内であれば、nxとnyとが実質的に等しいと言うことができる。
【0069】
後述の光反射層の反射特性に依存するが、具体的に、第2の位相差フィルムの厚み方向の位相差値は、波長550nmにおいて、-150nm以上0nm以下であることが好ましく、-90nm以上-20nm以下であることがより好ましい。
【0070】
位相差フィルムは、第1の位相差フィルム及び第2の位相差フィルム以外の位相差を有する層(以下、その他の位相差層ということがある。)を1つ以上備えていてもよい。その他の位相差層としては、表示素子が備えるタッチセンサー、発光素子の封止層、発光素子のベースフィルム等が挙げられる。その他の位相差層は、偏光フィルムと光反射層との間に配置され、好ましくは第2の位相差フィルムと光反射層との間に配置される。
【0071】
その他の位相差層は、Aプレートであってもよいが、通常はCプレートであることができる。その他の位相差層は、式(9)で表される特性を有していてもよい。すなわち、その他の位相差層は、ネガティブCプレートであることができる。
nx≒ny>nz (9)
【0072】
nx≒nyは、nxとnyとが完全に等しい場合に加え、nxとnyとが実質的に等しい場合も包含する。具体的には、nxとnyとの差の大きさが0.01以内であれば、nxとnyとが実質的に等しいと言うことができる。
【0073】
少なくとも第1の位相差フィルム(20)と第2の位相差フィルム(21)とを備える位相差フィルム(2)は、以下の式(5)または(7)を満たしていてもよい。
0.1<|RthC(550)|/|RoA(550)|<0.5 (5) 0.5<|RthC(550)|/|RoA(550)|<1.0 (7)式(5)および式(7)において、RoA(λ)は、第1の位相差フィルムの波長λnmにおける面内位相差値を表し、RthC(λ)は、第2の位相差フィルムの波長λnmにおける厚み方向の位相差値を表す。
【0074】
RthC(λ)は、波長λnmにおける屈折率n(λ)と、厚みdから、以下の式に基づいて算出することができる。
RthC(λ)={〔nx(λ)+ny(λ)〕/2-nz}×d
【0075】
RthC(450)/RthC(550)は、第2の位相差フィルムの波長分散性を表し、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.1以下である。
【0076】
位相差フィルムを形成する第1の位相差フィルムおよび第2の位相差フィルムは、上述の熱可塑性樹脂フィルムや重合性液晶化合物を含む組成物から形成することができる。第1の位相差フィルムおよび第2の位相差フィルムは、重合性液晶化合物を含む組成物から形成されることが好ましい。重合性液晶化合物を含む組成物から形成される層としては、重合性液晶化合物が硬化した層が挙げられる。
【0077】
第1の位相差フィルムが満たす式(1)~式(3)の関係、第2の位相差フィルムが満たす式(4)の関係、および位相差フィルムが満たしていてもよい式(5)または式(7)の関係は、例えば第1の位相差フィルムおよび第2の位相差フィルムを形成する熱可塑性樹脂や重合性液晶化合物の種類、配合比率を調整したり、第1の位相差フィルムおよび第2の位相差フィルムの厚みを調整したりすることによって制御される。
【0078】
重合性液晶化合物が硬化した層は例えば、基材に設けられた配向膜上に形成される。前記基材は、配向膜を支持する機能を有し、長尺に形成されている基材であってもよい。この基材は、離型性支持体として機能し、転写用の位相差フィルムを支持することができる。さらに、その表面が剥離可能な程度の接着力を有するものが好ましい。前記基材としては、上記保護フィルムの材料として例示をした樹脂フィルムが挙げられる。
【0079】
基材の厚みとしては、特に限定されないが、例えば20μm以上200μm以下の範囲とすることが好ましい。基材の厚さが20μm以上であると、強度が付与される。一方で、厚さが200μm以下であると、基材を裁断加工して枚葉の基材とするにあたり、加工屑の増加、裁断刃の磨耗を抑制できる。
【0080】
なお、基材は、種々のブロッキング防止処理が施されていてもよい。ブロッキング防止処理としては、例えば、易接着処理、フィラー等を練り込ませる処理、エンボス加工(ナーリング処理)等が挙げられる。このようなブロッキング防止処理を基材に対して施すことによって、基材を巻き取る際の基材同士の張り付き、いわゆるブロッキングを効果的に防止することができ、生産性高く光学フィルムを製造することが可能となる。
【0081】
重合性液晶化合物が硬化した層は、配向膜を介して基材上に形成される。すなわち、基材、配向膜の順で積層され、重合性液晶化合物が硬化した層は前記配向膜上に積層される。
【0082】
なお、配向膜は、垂直配向膜に限らず、重合性液晶化合物の分子軸を水平配向させる配向膜であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を傾斜配向させる配向膜であってもよい。第1の位相差フィルムを作製する場合には、水平配向膜を使用することができ、第2の位相差フィルムを作製する場合には、垂直配向膜を使用することができる。配向膜としては、後述する重合性液晶化合物を含む組成物の塗工等により溶解しない溶媒耐性を有し、また、溶媒の除去や液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜及び表面に凹凸パターンや複数の溝を形成し配向させるグルブ配向膜が挙げられる。配向膜の厚さは、通常10nm~10000nmの範囲であり、好ましくは10nm~1000nmの範囲であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは10nm~200nmの範囲である。
【0083】
配向膜に用いる樹脂としては、公知の配向膜の材料として用いられる樹脂であれば特に限定されるものではなく、従来公知の単官能又は多官能の(メタ)アクリレート系モノマーを重合開始剤下で硬化させた硬化物等を用いることができる。具体的に、(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メタクリル酸、ウレタンアクリレート等を例示することができる。なお、樹脂としては、これらの1種類であってもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。
【0084】
本実施形態で使用される重合性液晶化合物の種類については、特に限定されないものの、その形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(円盤状液晶化合物、ディスコティック液晶化合物)とに分類できる。さらに、それぞれ低分子タイプと高分子タイプとがある。なお、高分子とは、一般に重合度が100以上のものを言う(高分子物理・相転移ダイナミクス、土井 正男著、2頁、岩波書店、1992)。
【0085】
本実施形態では、何れの重合性液晶化合物を用いることもできる。さらに、2種以上の棒状液晶化合物や、2種以上の円盤状液晶化合物、又は棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。
【0086】
なお、棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1、又は、特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものを好適に用いることができる。円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]、又は、特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものを好適に用いることができる。
【0087】
重合性液晶化合物は、2種類以上を併用してもよい。その場合、少なくとも1種類が分子内に2以上の重合性基を有している。すなわち、前記重合性液晶化合物が硬化した層は、重合性基を有する液晶化合物が重合によって固定されて形成された層であることが好ましい。この場合、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。
【0088】
重合性液晶化合物は、重合反応をし得る重合性基を有する。重合性基としては、例えば、重合性エチレン性不飽和基や環重合性基などの付加重合反応が可能な官能基が好ましい。より具体的には、重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などを挙げることができる。その中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、メタアクリロイル基及びアクリロイル基の両者を包含する概念である。
【0089】
重合性液晶化合物が硬化した層は、後述するように、重合性液晶化合物を含む組成物を、例えば配向膜上に塗工することによって形成することができる。前記組成物には、上述した重合性液晶化合物以外の成分が含まれていてもよい。例えば、前記組成物には、重合開始剤が含まれていることが好ましい。使用される重合開始剤は、重合反応の形式に応じて、例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤が選択される。例えば、光重合開始剤としては、α-カルボニル化合物、アシロインエーテル、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせなどが挙げられる。重合開始剤の使用量は、前記塗工液中の全固形分に対して、0.01~20質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0090】
また、前記組成物には、塗工膜の均一性及び膜の強度の点から、重合性モノマーが含まれていてもよい。重合性モノマーとしては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の化合物が挙げられる。その中でも、多官能性ラジカル重合性モノマーが好ましい。
【0091】
なお、重合性モノマーとしては、上述した重合性液晶化合物と共重合することができるものが好ましい。具体的な重合性モノマーとしては、例えば、特開2002-296423号公報中の段落[0018]~[0020]に記載のものが挙げられる。重合性モノマーの使用量は、重合性液晶化合物の全質量に対して、1~50質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましい。
【0092】
また、前記組成物には、塗工膜の均一性及び膜の強度の点から、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられる。その中でも特に、フッ素系化合物が好ましい。具体的な界面活性剤としては、例えば、特開2001-330725号公報中の段落[0028]~[0056]に記載の化合物、特願2003-295212号明細書中の段落[0069]~[0126]に記載の化合物が挙げられる。
【0093】
また、前記組成物には、溶媒が含まれていてもよく、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、例えば、アミド(例、N,N-ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン)が挙げられる。その中でも、アルキルハライド、ケトンが好ましい。また、2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0094】
また、前記組成物には、偏光フィルム界面側垂直配向剤、空気界面側垂直配向剤などの垂直配向促進剤、並びに、偏光フィルム界面側水平配向剤、空気界面側水平配向剤などの水平配向促進剤といった各種配向剤が含まれていてもよい。さらに、前記組成物には、上記成分以外にも、密着改良剤、可塑剤、ポリマーなどが含まれていてもよい。
【0095】
本実施形態において第1の位相差フィルムおよび第2の位相差フィルムの厚みは、0.1μ以上5μm以下とすることができる。第1の位相差フィルムおよび第2の位相差フィルムの厚みが前記範囲内であると、十分な耐久性が得られ、積層体の薄層化に貢献し得る。当然のことながら、第1の位相差フィルムおよび第2の位相差フィルムの厚みは、λ/4の位相差を与える層、λ/2の位相差を与える層、又はポジティブCプレート等の所望の面内位相差値、及び厚み方向の位相差値が得られるよう調整され得る。
【0096】
位相差フィルムが、第1の位相差フィルムおよび第2の位相差フィルムとして、重合性液晶化合物が硬化した層を2層含む場合、重合性液晶化合物が硬化した層を配向膜上にそれぞれ作製し、両者を接着剤層や粘着剤層を介して積層することにより、位相差フィルムは製造され得る。両者を積層した後、基材および配向膜は剥離することができる。位相差フィルムの厚みは、3~30μmであることが好ましく、5~25μmであることがより好ましい。
【0097】
〔光拡散層〕
本発明の自発光型画像表示装置(100)は、光拡散層(14)を備える。光拡散層は、入射光を拡散させる機能を有する光学素子である。光拡散層(14)の内部ヘイズは35%以上85%以下であり、好ましくは50%以上80%以下である。光拡散層(14)の内部ヘイズとは、全ヘイズのうち、光拡散層の表面形状に起因するヘイズ(表面ヘイズ)以外のヘイズである。光拡散層(14)の表面ヘイズは1%未満であることが好ましい。
【0098】
ここで、「全ヘイズ」とは、光拡散層に光を照射して透過した光線の全量を表す全光線透過率(Tt)と、光拡散層(14)により拡散されて透過した拡散光線透過率(Td)との比から下記式(12):
全ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100 (12)
により求められる。
【0099】
全光線透過率(Tt)は、入射光と同軸のまま透過した平行光線透過率(Tp)と拡散光線透過率(Td)の和である。全光線透過率(Tt)及び拡散光線透過率(Td)は、JIS K 7361に準拠して測定される値である。
【0100】
光拡散層の「内部ヘイズ」及び「表面ヘイズ」は、光拡散層の視認側に、全ヘイズが実質的にゼロであるトリアセチルセルロースフィルムを、グリセリンを用いて貼合し、上記した「全ヘイズ」の測定方法によりかかる試料の全ヘイズを測定する。ここで測定された全ヘイズは、光拡散層13の視認側の表面に起因する表面ヘイズが、貼合されたトリアセチルセルロースフィルムによって打ち消されることから、内部ヘイズとみなすことができる。なお、表面ヘイズは、全ヘイズと内部ヘイズとの差となる。
【0101】
光拡散層(14)としては、粘着性の透光性樹脂と、これとは屈折率が異なる透光性微粒子とを含む光拡散粘着剤を層状にした光拡散粘着剤層を好適に用いることができる。粘着性の透光性樹脂としては通常、無色で透明な粘着剤が用いられ、、具体的には、例えばアクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などのベースポリマーを主成分とする粘着剤が挙げられる。
【0102】
透光性微粒子としては、無機化合物からなる微粒子や有機化合物からなる微粒子を用いることができる。有機化合物としては通常、ポリマーが用いられる。粘着性の透光性樹脂と透光性微粒子との屈折率差は、例えば0.01以上であり、画像表示装置とした場合の明るさや視認性を考慮すると0.01以上0.5以下とすることが好ましい。屈折率差を大きくすることにより内部ヘイズを大きくすることができる。粘着性の透光性樹脂の屈折率が通常1.4前後であることから、透光性微粒子として使用される無機化合物または有機化合物からなる微粒子として下記のものを好ましく挙げることができる。
【0103】
無機化合物からなる透光性微粒子としては、例えば、酸化アルミニウム(屈折率1.76)、酸化ケイ素(屈折率1.45)などを挙げることができる。
【0104】
有機化合物からなる透光性微粒子としては、例えば、メラミンビーズ(屈折率1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50~1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、ポリスチレンビーズ(屈折率1.6)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、エポキシ樹脂ビーズ(屈折率1.5~1.6)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)などが挙げられる。
【0105】
さらに粘着性の透光性樹脂の成分としてアクリル系共重合体を選択したときは、エポキシ樹脂ビーズ、ポリメタクリル酸メチルビーズ、シリコーン樹脂ビーズがアクリル系共重合体に対する分散性が優れ、均一で良好な光拡散性が得られることから光拡散剤である透光性微粒子として好適である。また、光拡散剤としては、光拡散が均一な球状かつ単分散性のものが好ましい。
【0106】
透光性微粒子の平均粒径は、0.1~20μmの範囲であることが好ましい。平均粒径が0.1μm以上とすることにより、内部ヘイズを大きくすることが容易となる。一方、平均粒径が20μmを超えると、画像のコントラストが低下し易く、さらにディスプレイの画像ピッチより大きくなる場合にはギラツキが発生する。以上の点より、透光性微粒子の平均粒径は0.5~10μmの範囲が好ましく、特に1~6μmの範囲が好ましい。ここで透光性微粒子の平均粒径は、例えば、超遠心式自動粒度分布測定装置を用いて測定する重量平均粒子径とする。
【0107】
透光性微粒子の配合量は、目標とする内部ヘイズや、それが適用される画像表示装置の明るさなどを考慮して、適宜決められるが、一般には、光拡散層を構成する粘着性の透光性樹脂100質量部に対して、1~40質量部の範囲が好ましく、3~30質量部の範囲がさらに好ましい。この含有量が1質量部以上であることにより、内部ヘイズを大きくすることが容易となる。一方、透光性微粒子の含有量が40質量部を超えると、画像表示装置の画面の解像度が低下し易く、ボヤケが発生する懸念がある。
【0108】
また、粘着性の透光性樹脂には、所望により、架橋剤を含有させることができる。この架橋剤としては、特に制限はなく、従来アクリル系の粘着性樹脂において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
【0109】
粘着性の透光性樹脂には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により粘着性の透光性樹脂に通常使用されている各種添加剤、例えば粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤などを添加することができる。
【0110】
透光性微粒子が配合された光拡散粘着剤層(14)の厚みは、その接着力などに応じて決定されるが、通常は1~50μmの範囲である。自発光型画像表示装置(100)の薄型化の観点から、加工性や耐久性などの特性を損なわない範囲で薄く塗るのが望ましい。光拡散粘剤着層(14)の厚みは3~30μmとするのが、良好な加工性を保ち、高い耐久性を示し、また自発光型画像表示装置(100)を正面から見た場合や斜めから見た場合の明るさを保ち、表示像のにじみやボケが生じにくくする観点から、好適である。
【0111】
光拡散層(14)を形成するには、例えば粘着性の透光性樹脂と透光性微粒子とからなる組成物を、位相差フィルム(2)上に塗布して光拡散粘着剤層を形成し、これを光拡散層(14)とすることができる。また、粘着性の透光性樹脂と透光性微粒子とからなる組成物をセパレーターフィルム上に層状に塗布して光拡散粘着剤層(14)を形成し、これを位相差フィルム(2)上に貼合してもよい。セパレーターフィルムは光拡散粘着剤層(14)を貼合した後に、この層から剥離してもよい。セパレーターフィルム上に形成された光拡散粘着剤層としては、様々な内部ヘイズのものが市販されている。このようにして、偏光フィルム(10)および位相差フィルム(2)を備え、その位相差フィルム側に光拡散粘着剤層(14)を備える光拡散粘着剤層付き円偏光板(6)を得ることができる。
【0112】
この光拡散粘着剤層付き偏光板(6)は、円偏光板(5)と光拡散粘着剤層(14)とを備える。円偏光板(5)は偏光フィルム(10)および位相差フィルム(2)を備える。光拡散粘着剤層(14)は位相差フィルム(2)側に備えられている。光拡散粘着剤層(14)の内部ヘイズは35%以上85%以下である。
【0113】
本発明の光反射性自発光型画像表示装置(100)は、前面板、遮光パターン、タッチセンサーなど(図示せず)を更に有していてもよい。
【0114】
〔前面板〕
前面板は、偏光板(5)の視認側に配置されることができる。前面板は、接着層を介して偏光板に積層されることができる。接着層としては、例えば粘着剤層や前述の接着剤層が挙げられる。
【0115】
前面板としては、ガラス、樹脂フィルムの少なくとも一面にハードコート層を含んでなるものなどが挙げられる。ガラスとしては、例えば、高透過ガラスや、強化ガラスを用いることができる。特に薄い透明面材を使用する場合には、化学強化を施したガラスが好ましい。ガラスの厚みは、例えば100μm~5mmとすることができる。
【0116】
樹脂フィルムの少なくとも一面にハードコート層を含んでなる前面板は、既存のガラスのように硬直ではなく、フレキシブルな特性を有することができる。ハードコート層の厚さは特に限定されず、例えば、5~100μmであってもよい。
【0117】
樹脂フィルムとしては、ノルボルネンまたは多環ノルボルネン系単量体のようなシクロオレフィンを含む単量体の単位を有するシクロオレフィン系誘導体、セルロース(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、イソブチルエステルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース)エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリシクロオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシなどの高分子で形成されたフィルムであってもよい。樹脂フィルムは、未延伸、1軸または2軸延伸フィルムを使用することができる。これらの高分子はそれぞれ単独または2種以上混合して使用することができる。樹脂フィルムとしては、透明性及び耐熱性に優れたポリアミドイミドフィルムまたはポリイミドフィルム、1軸または2軸延伸ポリエステルフィルム、透明性及び耐熱性に優れるとともに、フィルムの大型化に対応できるシクロオレフィン系誘導体フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム及び透明性と光学的に異方性のないトリアセチルセルロース及びイソブチルエステルセルロースフィルムが好ましい。樹脂フィルムの厚さは5~200μm、好ましくは、20~100μmであってもよい。
【0118】
粘着剤層は、粘着剤の層である。粘着剤としては、光拡散粘着剤層において上記した粘着性の透光性樹脂をそのまま用いることができる。
【0119】
〔遮光パターン〕
遮光パターン(ベゼル)は、前面板における表示素子側に形成することができる。遮光パターンは、表示装置の各配線を隠し使用者に視認されないようにすることができる。遮光パターンの色及び/または材質は特に制限されることはなく、黒色、白色、金色などの多様な色を有する樹脂物質で形成することができる。一実施形態において、遮光パターンの厚さは2μm~50μmであってもよく、好ましくは4μm~30μmであってもよく、より好ましくは6μm~15μmの範囲であってもよい。また、遮光パターンと表示部の間の段差による気泡混入及び境界部の視認を抑制するために、遮光パターンに形状を付与することができる。
【0120】
〔自発光型画像表示装置の製造方法〕
図1に示した自発光型画像表示装置(100)を例に、本発明の自発光型画像表示装置(100)の製造方法を説明する。本発明の自発光型画像表示装置(100)は、例えば光拡散層(14)として光拡散粘着座右層を用いる場合には、偏光板(5)と位相差フィルム(2)とを粘着剤層(13)を介して積層し、その後、位相差フィルム(2)側で光反射性自発光型画像表示素子(16)に光拡散層(14)(光拡散粘着剤層)を介して積層することにより製造できる。
【0121】
偏光板は、偏光フィルム10と第1保護フィルム11および第2保護フィルム12とを、それぞれ接着剤層を介して積層して製造されることができる。偏光板は、長尺の部材を準備し、ロール・トゥ・ロールでそれぞれの部材を貼り合わせた後、所定形状に裁断して製造してもよいし、それぞれの部材を所定の形状に裁断した後、貼り合わせてもよい。次いで、第2保護フィルム12上に、剥離フィルム上に形成された粘着剤層13を積層させる。
【0122】
位相差フィルム2は、例えば次のように製造することができる。基材上に配向膜を形成し、配向膜上に重合性液晶化合物を含む塗工液を塗工する。重合性液晶化合物を配向させた状態で、活性エネルギー線を照射し、重合性液晶化合物を硬化させる。このようにして、第1の位相差フィルム20を備えるフィルムを作製する。同様にして、第2の位相差フィルム21を備えるフィルムを作製する。
【0123】
第1の位相差フィルム20または第2の位相差フィルム上に、接着層15を形成し、第1の位相差フィルム20を備えるフィルムと第2の位相差フィルム21を備えるフィルムとを貼り合わせる。次いで、基材フィルム、または基材フィルムおよび配向膜を、それぞれ剥離し、位相差フィルム2を作製する。位相差フィルム2は、長尺の部材を準備し、ロール・トゥ・ロールでそれぞれの部材を貼り合わせた後、所定形状に裁断して製造してもよいし、それぞれの部材を所定の形状に裁断した後、貼り合わせてもよい。位相差フィルム2は、第1の位相差フィルム上に、直接第2の位相差フィルムを形成することによって得てもよい。すなわち、接着層15は省略可能である。
【0124】
粘着剤層13上の剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層13を介して、得られた偏光板と位相差フィルム2とを貼り合わせる。こうして得られたフィルムは、円偏光板として機能することができる。光反射性自発光型画像表示素子(16)が、光反射性の電極を備える有機EL表示素子である場合、円偏光板を有機EL表示素子に積層させることで、本発明の自発光型画像表示装置(100)を製造することができる。
円偏光板(5)は、例えば光拡散層(14)である光拡散粘着剤層を介して、光反射性自発光型画像表示素子(16)に積層される。
【0125】
〔用途〕
本発明の自発光型画像表示装置(100)を構成する光反射性自発光型画像表示素子は、自ら発光して画像を表示する画像表示素子であって、前面側から入射した光を内部で前面側に向けて反射する特性を有する画像表示素子である。具体的には、例えば有機エレクトロルミネッセンス画像表示素子等が挙げられる。
【0126】
光反射性自発光型画像表示素子として有機エレクトロルミネッセンス画像表示素子を備える本発明の自発光型画像表示素子は、内部反射光の色付きが抑制され、斜め方向から見たときにも全方位に亘って良好な黒表示能力を示すことができる。
【実施例
【0127】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部を意味する。
【0128】
(1)フィルム厚みの測定方法:
フィルムの厚みは、日本分光株式会社製のエリプソメータ M-220、又は接触式膜厚計(株式会社ニコン製のMH-15M、カウンタTC101、MS-5C)を用いて測定した。
(2)位相差値の測定方法:
厚み方向の位相差値や面内位相差値は、王子計測機器株式会社 KOBRA-WPR、又は日本分光株式会社製のエリプソメータ M-220を使用して測定した。
(3)内部反射光の強度Lの測定方法:
光反射層に円偏光板を貼合したサンプルについて、ディスプレイ評価システム「DMS803」(Instrument SystemsGmbH製)を用いて、図5(a)に示すように、傾斜角度(円偏光板(5)に対して垂直方向(法線)(H)基準)45°から平行白色光(L)で円偏光板(5)を照明しながら、傾斜角度(円偏光板に対して垂直方向基準)10°~70°の範囲、および円偏光板面内の方位0°~360°の範囲で内部反射光の反射強度Lを測定し、傾斜角度を動径座標とし、面内の方位を角度座標とする極座標系にプロットした。
(4)光拡散粘着剤層の内部ヘイズの測定
光拡散粘着剤層のセパレータが貼合されている表面とは反対側の露出面を無アルカリガラスに貼合し、光拡散粘着剤層からセパレータを剥離し、セパレータの剥離により露出した粘着剤層の表面に透明樹脂フィルム(「ゼオノアZF14-013」、日本ゼオン株式会社製、環状ポリオレフィンフィルム)を貼り付けて測定対象のサンプルを準備した。上記作製したサンプルのガラス面に光入射し、積分球式光線透過率測定装置(スガ試験機株式会社製「Haze Meter Hz-V3」)を用いて、JIS K7105に準拠して、拡散透過率Hd(%)と全光線透過率Ht(%)を測定した。そして、上記した式(12)により全ヘイズを算出した。なお、上記のようにして準備したサンプルは、粘着剤層の光が出射する表面に透明フィルムが貼合されているため、表面ヘイズがゼロであるとみなすことができる。したがって、内部ヘイズは、式(12)により算出される全ヘイズの値と同じ値とみなすことができる。
【0129】
〔光反射層の準備〕
市販のアルミ箔を平板に貼って反射層とした。この反射層は、Y値SCIが81%であり、Y値SCEが65%であった。
【0130】
〔円偏光板の作製〕
〔水平配向膜形成用組成物の調製〕
下記構造の光配向性材料5部(重量平均分子量:30000)とシクロペンタノン(溶媒)95部とを混合した。得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向膜形成用組成物を得た。
【0131】
〔垂直配向膜形成用組成物の準備〕
日産化学工業株式会社製、サンエバーSE610を準備した。
【0132】
〔水平配向液晶硬化膜形成用組成物の調製〕
水平配向液晶硬化膜(第1の位相差フィルム)を形成するために、以下の重合性液晶化合物Aおよび重合性液晶化合物Bを用いた。重合性液晶化合物Aは、特開2010-31223号公報に記載された方法で製造した。また、重合性液晶化合物Bは、特開2009-173893号公報に記載された方法に準じて製造した。以下にそれぞれの分子構造を示す。
【0133】
[重合性液晶化合物A]
【0134】
[重合性液晶化合物B]
【0135】
重合性液晶化合物Aおよび重合性液晶化合物Bを90:10の質量比で混合した。得られた混合物100部に対して、レベリング剤(F-556;DIC株式会社製)を1.0部、重合開始剤である2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369、BASFジャパン株式会社製)を6部添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加し、80℃で1時間攪拌することにより、水平配向液晶硬化膜形成用組成物を得た。
【0136】
〔垂直配向液晶硬化膜形成用組成物の調整〕
垂直配向液晶硬化膜(第2の位相差フィルム)を形成するために、以下の手順で組成物を調製した。重合性液晶化合物であるPaliocolor LC242(BASF社製)100部に対して、レベリング剤としてF-556を0.1部、及び重合開始剤としてイルガキュア369を3部添加した。固形分濃度が13%となるようにシクロペンタノンを添加して、垂直配向液晶硬化膜形成用組成物を得た。
【0137】
〔偏光板の準備〕
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着配向させた偏光フィルム(厚み8μm)(10)と、その片面にポリビニルアルコール系樹脂水溶液により貼合された環状ポリオレフィン系樹脂フィルム(厚み25μm)(11)と、その反対面にポリビニルアルコール系樹脂水溶液により貼合されたトリアセチルセルロースフィルム(厚み20μm)(12)とを備える偏光板(1)を準備した。なお、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、片面にハードコート層を備えたものであり、ハードコート層を含めた厚みは25μmであった。また、この環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、ハードコート層が外側となるように偏光フィルムに貼合されていた。
【0138】
〔位相差フィルムの作製〕
日本ゼオン株式会社製の環状オレフィン系樹脂フィルム(ZF-14-50)〔以下、COPフィルム〕上にコロナ処理を実施した。コロナ処理は、ウシオ電機株式会社製のTEC-4AXを使用して行った。コロナ処理は、出力0.78kW、処理速度10m/分の条件で1回行った。COPフィルムに水平配向膜形成用組成物をバーコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥した。塗布膜に対して、偏光UV照射装置(「SPOT CURE SP-9」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長313nmにおける積算光量が100mJ/cmとなるように、軸角度45°にて偏光UV露光を実施した。得られた水平配向膜の膜厚は100nmであった。
【0139】
続いて、水平配向膜に、水平配向液晶硬化膜形成用組成物を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥した。塗布膜に対して、高圧水銀ランプ(「ユニキュアVB-15201BY-A」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、水平配向液晶硬化膜(第1の位相差フィルム)を形成した。水平配向液晶硬化膜の膜厚は2.3μmであった。
【0140】
水平配向液晶硬化膜上に、粘着剤層を積層した。当該粘着剤層を介して、COPフィルム、配向膜、水平配向液晶硬化膜からなるフィルムをガラスに貼合した。COPフィルムを剥離して、位相差値を測定するためのサンプルを得た。
【0141】
各波長における位相差値RoA(λ)を測定した結果、RoA(450)=121nm、RoA(550)=142nm、RoA(650)=146nm、RoA(450)/RoA(550)=0.85、RoA(650)/RoA(550)=1.03であり、水平配向液晶硬化膜は、逆波長分散性を示した。水平配向液晶硬化膜は、nx>ny≒nzの関係を満たす、ポジティブAプレートであった。
なお、各波長における位相差値RthA(λ)を測定した結果、RthA(450)=61nm、RthA(550)=71nm、RthA(650)=73nmであった。
【0142】
〔垂直配向液晶硬化膜の作製〕
上記で作製したCOPフィルム、配向膜、水平配向液晶硬化膜からなるフィルムにおける水平配向液晶硬化膜に対して、コロナ処理を実施した。コロナ処理の条件は上記と同じとした。水平配向液晶硬化膜上に、垂直配向膜形成用組成物をバーコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥させて、垂直配向膜を得た。得られた垂直配向膜の膜厚は50nmであった。
【0143】
垂直配向膜に、バーコーターを用いて垂直配向液晶硬化膜形成用組成物を塗布し、90℃で120秒間乾燥した。塗布膜に対して、高圧水銀ランプ(「ユニキュアVB-15201BY-A」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、垂直配向液晶硬化膜(第2の位相差フィルム)を形成した。このようにしてCOPフィルム、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜、垂直配向膜、垂直配向液晶硬化膜からなるフィルムを得た。垂直配向液晶硬化膜の膜厚は、0.1μmであった。
【0144】
垂直配向液晶硬化膜の厚み方向の位相差値を測定するために、別途、COPフィルム上に、上記と同様の手順で、垂直配向膜、垂直配向液晶硬化膜を形成した。垂直配向液晶硬化膜上に粘着剤層を積層した。当該粘着剤層を介して、COPフィルム、配向膜、垂直配向液晶硬化膜からなるフィルムをガラスに貼合した。COPフィルムを剥離して、位相差値を測定するためのサンプルを得た。波長550nmにおける位相差値RthC(550)を測定した結果、RthC(550)=-20nmであった。垂直配向液晶硬化膜は、nx≒ny<nzの関係を満たすポジティブCプレートであった。
【0145】
COPフィルム、水平配向膜、水平配向液晶硬化膜、垂直配向膜、垂直配向液晶硬化膜からなるフィルムにおける垂直配向液晶硬化膜にコロナ処理を施した。コロナ処理の条件は上記と同じとした。偏光板におけるトリアセチルセルロースフィルム側が垂直配向液晶硬化膜側となるように、粘着剤層を介して両者を積層した。このとき、偏光フィルムの吸収軸と、水平配向液晶硬化膜の遅相軸とのなす角度は45°であった。最後にCOPフィルムを剥離して、位相差フィルムと偏光板とが粘着剤層を介して積層された円偏光板を得た。この円偏光板(5)の層構成は、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム(11)/接着剤層/偏光フィルム(10)/接着剤層/トリアセチルセルロースフィルム(12)/粘着剤層(13)/垂直配向液晶硬化膜(20)/垂直配向膜/水平配向液晶硬化膜(21)/水平配向膜であった。また、この円偏光板のRthC(550)およびRoA(550)を測定してその比を求めたところ、
|RthC(550)|/|RoA(550)|=0.14
であった。
【0146】
〔実施例1〕
アクリル系ベースポリマーを主成分とする粘着剤(アクリル系粘着剤)に透光性微粒子を配合した組成物(光拡散粘着剤)をセパレーターフィルム上に塗布して形成された光拡散粘着剤層(14)を準備した。この光拡散粘着剤層の内部ヘイズは75%であった。この光拡散粘着剤層(14)の上に上記で得た円偏光板(5)を、水平配向膜側で貼合して光拡散粘着剤層付き円偏光板を得た。
【0147】
得られた光拡散粘着剤層付き円偏光板(6)を長辺153mm短辺78mmの長方形に切出し、セパレーターフィルムを剥離して光拡散粘着剤層(14)を露出させ、光反射層(6)に貼合してサンプルとし、このサンプルの反射光を測定して反射光の強度Lを極座標系にプロットした。このサンプルは、図5(b)に示すように、位相差フィルムの遅相軸(R)が長辺に対して平行であった。このサンプルは、偏光フィルムの吸収軸(P)が、光反射層(16)を下にして上から見たときに、遅相軸(R)に対して反時計回りに45°の角度であった。平行白色光(L)は、光拡散粘着剤層付き円偏光板(6)の長辺側から短辺に平行となるように照射した。結果を図2に示す。この図では、角度座標(面内の方位)は反時計回りに0°~360°である。なお、角度座標は、平行光(L)の照射方向を基準(0°)とし、サンプルを円偏光板(5)側から見て反時計回りを正としている。遅相軸は0°および180°である。吸収軸は45°および315°である。動径座標は円偏光板に対して垂直方向(法線)を基準とする傾斜角度であり、その範囲は10°~70°である。強度Lが大きい座標は白くなるように、強度Lが小さな座標は黒くなるように、それぞれグレースケールで表している。角度座標15°および200°の方位付近では、反射光の強度Lが比較的小さく、濃灰色となっている。角度座標60°および240°の方位付近では強度Lが比較的大きく、薄灰色となっている。
【0148】
このサンプルを目視で観察して外光の反射を見たところ、正面から斜めに傾け、この状態で法線方向を軸にサンプルを回転させることにより様々な面内方位から見ても、反射光の光抜けは認識できなかった。また、正面(法線方向)から見ても、反射層からの反射光は認識できなかった。
【0149】
上記で得た光拡散粘着剤層付き円偏光板を光拡散粘着剤層(14)側で有機EL画像表示素子(16)の前面側に貼合した有機EL画像表示装置(100)は、斜め方向の様々な方位から見ても、有機EL画像表示素子(16)からの内部反射光の光抜けが抑制される。
【0150】
〔比較例1〕
実施例1で用いた光拡散粘着剤層(14)に代えて、セパレーターフィルム上にアクリル系粘着剤のみを塗布して形成された粘着剤層(内部ヘイズ0%)を準備し、これを用いた以外は、実施例1と同様に操作して粘着剤層付き円偏光板を得、サンプルを得、反射光の強度Lを測定した。結果を図3に示す。度座標15°および200°の方位付近では反射光の強度Lが小さく、濃灰色となっている。角度座標60°および240°の方位付近では強度Lが大きく、比較的明るい明灰色となっており、その角度範囲は実施例1よりも広くなっている。
【0151】
実施例1と同様に、このサンプルを目視で観察して外光の反射を見たところ、斜めに傾けて様々な面内方位から見ると、図3で明灰色となっている角度座標に対応する方位で、反射光の光抜けを視認することができた。なお、正面(法線方向)から見たときには反射層からの反射光は認識できなかった。
【0152】
〔比較例2〕
実施例1で用いた光拡散粘着剤層(14)に代えて、アクリル系粘着剤に透光性微粒子を配合した光拡散粘着剤をセパレーターフィルム上に塗布して形成された光拡散粘着剤層(内部ヘイズ90%)を準備し、これを用いた以外は実施例1と同様に操作して粘着剤層付き円偏光板を得、サンプルを得、反射光の強度Lを測定した。結果を図4に示す。度座標15°および200°の方位付近では反射光の強度Lがやや小さく、灰色となっている。
角度座標60°および240°の方位付近では強度Lが大きく、比較的明るい明灰色となっており、その角度範囲は実施例1よりも広くなっている。
【0153】
実施例1と同様に、このサンプルを目視で観察して外光の反射を見たところ、斜めに傾けて様々な面内方位から見ると、図4で明灰色となっている角度座標に対応する範囲で、反射光の光抜けを明確に視認することができた。また、正面から見ると、全体に白く見えた。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の自発光型画像表示装置は、外光反射による反射光の色付きを抑制し、斜め方向から見たとき、画面を見る方位に依存することなく、光抜けが抑制される。このため、良好な黒表示能力を付与することができる。本発明の自発光型画像表示装置を備える有機EL表示装置は、外光反射による反射光の色付きが抑制され、斜め方向から見たときにも良好な黒表示能力を示すことができる。
【符号の説明】
【0155】
2 位相差フィルム
10 偏光フィルム
11,12 保護フィルム
13 粘着剤層
14 光拡散層(光拡散粘着剤層)
15 接着層
16 光反射性自発光型画像表示素子
20 第1の位相差フィルム
21 第2の位相差フィルム
5 円偏光板
6 光拡散粘着剤層付き円偏光板
100 自発光型画像表示装置
16’ 光反射層
R 遅相軸
P 吸収軸
L 平行白色光
図1
図2
図3
図4
図5