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特許7451972液吐出ユニット、液吐出装置および液吐出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】液吐出ユニット、液吐出装置および液吐出方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240312BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20240312BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20240312BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B41J2/14 301
G01N35/10 A
B01J4/00 105C
C12M1/34 A
C12M1/34 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019217527
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084429
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 功一
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/036228(WO,A1)
【文献】特開2019-155268(JP,A)
【文献】特開2002-116205(JP,A)
【文献】特開2018-103141(JP,A)
【文献】特開2009-279848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
G01N 35/10
B01J 4/00
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液を吐出する吐出口を有し、液を保持する液保持部と、
前記液保持部に保持された前記液の圧力を調整する圧力調整部と、
圧力が調整された前記液の少なくとも一部を変位させ、前記液保持部から前記液を吐出させる変位部材と、を有し、
前記変位部材は、前記液保持部を前記液の吐出方向と略平行に変位させ、
前記液保持部に前記液を供給する供給部を有し、
前記供給部は、前記圧力調整部を兼ねる液吐出ユニット。
【請求項2】
前記圧力調整部により前記液が前記液保持部に供給されたとき、前記液保持部の内部は正圧になることを特徴とする請求項1に記載の液吐出ユニット。
【請求項3】
前記液保持部は、前記液の吐出方向と略平行に伸びる管状部材であり、
前記液保持部と前記変位部材とは、平面視で重なって配置され、
前記液保持部の平面視形状は、前記変位部材の平面視形状よりも小さい請求項1又は2に記載の液吐出ユニット。
【請求項4】
前記供給部は、配管を介して前記液保持部と接続されている請求項1から3のいずれか1項に記載の液吐出ユニット。
【請求項5】
前記液保持部の少なくとも一部が弾性材料で形成され、
前記圧力調整部は、前記液保持部の前記弾性材料で形成された箇所に設けられ、前記液保持部を変形させて前記液保持部の容積を変化させる手段である請求項1から3のいずれか1項に記載の液吐出ユニット。
【請求項6】
前記圧力調整部は、前記液保持部に保持され圧力が調整された前記液の圧力を、直接または間接的に検出する検出部を含む請求項1から5のいずれか1項に記載の液吐出ユニット。
【請求項7】
前記検出部は、前記液保持部に保持され圧力が調整された前記液の圧力を検出し、
前記圧力調整部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記液の圧力を、予め定めた液吐出時の前記液の圧力の設定値に近づくように調整する請求項6に記載の液吐出ユニット。
【請求項8】
前記検出部は、前記吐出口に形成されるメニスカスを観察し、
前記圧力調整部は、前記メニスカスの形成位置または前記メニスカスの運動情報の少なくともいずれか一方に基づいて、前記液の圧力を、予め定めた液吐出時の前記液の圧力の設定値に近づくように調整することを特徴とする請求項6に記載の液吐出ユニット。
【請求項9】
前記検出部は、前記液保持部から吐出された液滴を観察し、
前記圧力調整部は、前記液滴の飛翔位置、前記液滴の形状、前記液滴の体積および前記液滴の速度からなる群から選択される少なくとも一つに基づいて、前記液の圧力を、予め定めた液吐出時の前記液の圧力の設定値に近づくように調整することを特徴とする請求項6または8に記載の液吐出ユニット。
【請求項10】
前記検出部は、撮像装置またはレーザー測定器である請求項9に記載の液吐出ユニット。
【請求項11】
前記液は、粒子と、前記粒子が分散した分散媒とを有する分散液である請求項1から10のいずれか1項に記載の液吐出ユニット。
【請求項12】
前記粒子が細胞である請求項11に記載の液吐出ユニット。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の液吐出ユニットを有する液吐出装置。
【請求項14】
前記液吐出ユニットを複数有し、
複数の前記液吐出ユニットが前記液の吐出方向と交差する方向に配列している請求項13に記載の液吐出装置。
【請求項15】
液を吐出する吐出口を有し前記液を保持する液保持部から、前記液を吐出させる液吐出方法であって、
記液保持部に保持された前記液の圧力を予め定めた液吐出時の前記液の圧力の設定値に近づけるよう調整するために、前記液保持部に前記液を供給又は前記液保持部から前記液を吸い上げ
圧力が調整された前記液の少なくとも一部を前記液の吐出方向と略平行に変位させ、前記液保持部から前記液を吐出させる液吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液吐出ユニットおよび液吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクなどの液状体(液)を所望の位置に吐出する液吐出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の液吐出装置では、吐出ヘッドに設けられた配管の一部に圧電素子が設けられている。このような液吐出装置では、圧電素子により流路をつぶして変形させることにより、流路内の液を加圧しながら押し出し、液を吐出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のような液吐出装置においては、従来の二次元印刷の際に用いたインクに変わる種々の液を吐出することが求められる。例えば、吐出の対象となる液は、溶液のほか分散液も挙げられる。分散液に含まれる分散質としては、樹脂材料のような有機材料、金属粒子や酸化物粒子のような無機材料、細胞や遺伝子のような生体由来材料を挙げることができる。
【0004】
このような種々の液は、粘度も様々であり、従来の二次元印刷で用いたインクと比べて高粘度である液も多い。特許文献1に記載の液吐出装置は、圧電素子の駆動によって流路を変形させ、流路から液を押し出している。
【0005】
しかし、吐出する液が高粘度である場合、圧電素子から流路に圧力を加えても、液吐出装置の吐出口に付着したまま吐出口で液滴を形成し、液を吐出する対象物に液滴が飛翔しないことがある。すなわち、特許文献1に記載の液吐出装置は、高粘度の液の吐出には不向きであるため、高粘度の液を吐出可能な液吐出装置が求められていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、高粘度の液を好適に吐出可能な液吐出ユニットを提供することを目的とする。また、このような液吐出ユニットを有し、高粘度の液を好適に吐出可能な液吐出装置を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、液を吐出する吐出口を有し、液を保持する液保持部と、前記液保持部に保持された前記液の圧力を調整する圧力調整部と、圧力が調整された前記液の少なくとも一部を変位させ、前記液保持部から前記液を吐出させる変位部材と、を有する液吐出ユニットを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高粘度の液を好適に吐出可能な液吐出ユニットを提供することができる。また、このような液吐出ユニットを有し、高粘度の液を好適に吐出可能な液吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る液吐出ユニットおよび液吐出装置を示す概略斜視図である。
図2図2は、液吐出ユニットを示す模式図である。
図3図3は、液吐出ユニットにより液Lが吐出される様子を示す説明図である。
図4図4は、第2実施形態に係る液吐出ユニットおよび液吐出装置の説明図である。
図5図5は、第3実施形態に係る液吐出ユニットおよび液吐出装置の説明図である。
図6図6は、第4実施形態に係る液吐出ユニットおよび液吐出装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、図1図3を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る液吐出ユニットおよび液吐出装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0011】
以下の説明においては、xyz直交座標系を設定し、このxyz直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。ここでは、水平面内の所定方向をx軸方向、水平面内においてx軸方向と直交する方向をy軸方向、x軸方向およびy軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をz軸方向とする。
【0012】
また、鉛直方向上方を+z方向とし、鉛直方向下方を-z方向とする。以下の説明において、「上方」「上面」の「上」、「下方」「下面」の「下」も同じ意味とする。
【0013】
さらに、以下の説明において「平面視」とは、対象物を上方から視ることを指し、「平面形状」とは、対象物を上方から視た形状を指すものとする。
【0014】
図1は、液吐出ユニット101および液吐出装置1を示す概略斜視図である。図1に示すように、本実施形態の液吐出装置1は、液を保持し保持した液を吐出する吐出部10と、吐出された液滴が付着する付着部30と、付着部30を載置する載置部40と、液吐出装置1の各部の動作を制御する制御部50とを有する。
【0015】
液吐出装置1は、吐出部10で保持する液を付着部30に向けて吐出する。液吐出装置1から吐出される液は、特に制限はなく、溶液であってもよいし、粒子と粒子が分散した分散媒とを有する分散液であってもよい。
【0016】
分散媒に分散する粒子としては、ポリマー粒子のような有機材料、金属微粒子、無機酸化物粒子のような無機材料を挙げることができる。また、粒子として、細胞を用いることもできる。
【0017】
本実施形態においては、液吐出装置1で吐出する液が、分散媒に細胞を分散させた分散液であることとして説明する。この場合、分散媒としては、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline)やHank's Balanced Salt Solutionなどの公知の緩衝液を用いることができる。
【0018】
<吐出部>
吐出部10は、複数(図1では4つ)の液吐出ユニット101と、液吐出ユニット101を搬送する搬送部130と、を有する。
【0019】
複数の液吐出ユニット101は、それぞれ同じ液Lを吐出してもよく、互いに異なる液Lを吐出してもよい。以下の説明において、液吐出ユニットが吐出する液Lは、粒子Pが分散した分散液であることとする。
【0020】
(液吐出ユニット)
液吐出ユニット101は、液吐出ヘッド110と、液吐出ヘッド110に接続された圧力調整部120Aと、を有する。
液吐出ユニット101の詳細については、後述する。
【0021】
(搬送部)
搬送部130は、支持部材131と、直動部132とを有する。
【0022】
支持部材131は、平面視において矩形の部材であり、複数の液吐出ヘッド110を支持する。複数の液吐出ヘッド110は、支持部材131に支持され、x軸に沿って配列している。
【0023】
直動部132は、y軸方向に伸びた長尺の部材である。直動部132は、支持部材131をy軸方向に水平移動させる。直動部132の両端は、それぞれ不図示の支持部材に支持されている。
【0024】
直動部132は、例えば、駆動源としてステッピングモータを備えた公知のリニアアクチュエータを採用することができる。
【0025】
搬送部130は、支持部材131をy軸方向に移動させることにより、支持部材131が支持する複数の吐出手段11を、符号D1で示す両矢印方向であるy軸方向に移動させる。
【0026】
<付着部>
付着部30は、吐出部10から吐出される液滴L1の吐出方向に配置され、液滴L1が付着する。付着部30は、吐出される液Lの種類や吐出目的等により任意のものを用い得るが、本実施形態では、付着部30としてシャーレを用いる。
【0027】
また、付着部30は、複数のウェルがマトリクス状に等間隔に配置された、いわゆるウェルプレートであってもよいし、微小な電極が規則的に配置された微小電極アレイ(MEA)であってもよい。
【0028】
<載置部>
載置部40は、xステージ401と、yステージ402と、基台403を有する。
【0029】
xステージ401は、付着部30が載置され、付着部30を支持し固定する。また、xステージ401は、付着部30を、符号D2で示す両矢印方向であるx軸方向に水平移動させる。
【0030】
yステージ402は、xステージ401を、符号D3で示す両矢印方向であるy軸方向に水平移動させる。
基台403は、yステージ402を支持する。
【0031】
載置部40は、xyステージとして公知の構成を採用することができる。
【0032】
搬送部130および載置部40は、液吐出ユニット101と付着部30との相対位置を制御する。これにより、液吐出装置1では、液吐出ユニット101から吐出された液を、付着部30の所望の位置に付着させることができる。
【0033】
<制御部>
制御部50は、液吐出装置1の各部を動作させる信号を作成し、各部に供給して制御する。
【0034】
制御部50は、例えば、吐出部10に供給する駆動信号、載置部40に供給する駆動信号を作成し、各部に供給して各部の動作を制御する。
【0035】
<液吐出ユニット>
図2は、液吐出ユニット101を示す模式図である。
【0036】
液吐出ヘッド110は、液保持部111、支持部112、変位部材113、配管115を有する。
圧力調整部120Aは、供給部121と、検出部122とを有する。
【0037】
<液吐出ヘッド>
(液保持部)
液保持部111は、液吐出方向であるz軸方向と略平行に伸びる、管状の部材である。液保持部111は、例えばガラスや樹脂材料を形成材料とする。液保持部111の内部111xに面する壁面は、内部を流動させる液Lの性質に応じ、本願発明の目的に応じた適切な液吐出を可能とするために、撥液処理や親液処理が施されていてもよい。
液保持部111は、管状の部材のほか、内部に流路が形成された板状の部材を用いることもできる。
【0038】
液保持部111は、内部を流動する液Lの状態を確認可能とするために、光透過性を有していると好ましい。
【0039】
液保持部111は、-z方向に向かって内径が漸減している。液保持部111の下端は、吐出口111aとして開口している。例えば、液保持部111の外径は数mmである。また、吐出口111aの内径は、数十μm以上数百μm以下である。液保持部111の上端は、配管115と接続している。
【0040】
液保持部111は、吐出口111aから-z方向に液Lを吐出する。
【0041】
(支持部)
支持部112は、液保持部111を着脱自在に支持している。支持部112は、液保持部111を支持可能であれば、通常知られた種々の構成を採用することができる。
【0042】
支持部112は、液保持部111を支持する支持本体112aと、支持本体112aに液保持部111を固定するねじ112xとを有する。
【0043】
図2において、支持本体112aは、液保持部111が挿入される挿入部112bを有する直方体状の部材として示している。ねじ112xは、挿入部112bに挿入された液保持部111を、ねじ止めしている。
【0044】
(変位部材)
変位部材113は、支持本体112aの上面112sに設けられた平面視矩形の部材である。図1では、変位部材113の平面視形状は正方形として示している。例えば、変位部材113の平面視形状は、数mm×数mmの正方形である。
【0045】
変位部材113は、平面視で液保持部111と重なる位置に設けられている。変位部材113の平面視形状は、液保持部111の平面視形状よりも大きい。詳しくは、変位部材113を平面視した形状である正方形の一片の長さは、液保持部111の外径よりも長い。
【0046】
変位部材113は、下面113aが支持本体112aの上面112sに接着され、上面113bが支持部材131の下面131aに接着されている。
【0047】
変位部材113としては、圧電素子、磁石とコイルとで構成されたアクチュエータなどを用いることができるが、圧電素子が好適に用いられる。圧電素子としては、例えば、圧電材料の上面および下面に電圧を印加するための電極を設けた構造とすることができる。この場合、変位部材113は、制御部50から変位部材113(圧電素子)の上下電極間に電圧を印加することによって上下電極の面横方向に圧縮応力が加わる。これにより、変位部材113は、膜の面上下方向(図中の符号D4で示す両矢印方向)に振動する。
【0048】
変位部材113の振動方向はz軸方向であり、液Lの吐出方向と略平行に設定されている。ここで、「略平行」の「略」とは、変位部材113の振動方向と液Lの吐出方向とが、数学的に厳密にz軸と平行であることまでは求めないことを意味している。例えば、変位部材113の振動方向は、液Lの吐出方向(すなわち、z軸方向)を0°としたとき、z軸に対して±10°以内であれば傾いていてもよい。
【0049】
上述のように動作することにより、変位部材113は、支持部112を液Lの吐出方向と略平行に変位させ、さらに支持部112が支持する液保持部111および液保持部111が保持する液Lの少なくとも一部を変位させる。
【0050】
本明細書において、「変位」とは、物体が位置を変えることを指し、本実施形態においては、物体がxyz直交座標系における座標を変えることを指す。この意味において、液保持部111を変位させるとは、xyz直交座標系における液保持部111の座標を変えることを指す。本実施形態においては、液保持部111は、変位部材113の振動により、z軸方向に変位する。
【0051】
圧電材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ビスマス鉄酸化物、ニオブ酸金属物、チタン酸バリウム、又はこれらの材料に金属や異なる酸化物を加えたものなどが挙げられる。これらの中でも、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)が好ましい。
【0052】
(配管)
配管115は、液保持部111と圧力調整部120Aとを接続する。配管115は、第1配管115a、第2配管115b、第3配管115c、分岐管115dを有する。
【0053】
第1配管115a、第2配管115b、第3配管115cは、軟質の樹脂材料を形成材料とする管である。軟質の樹脂材料としては、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0054】
分岐管115dは、三方管(三方継手)であり、通常知られた構成を採用することができる。
【0055】
配管115は、第1配管115aの一端が液保持部111の上端に接続されている。第1配管115aの他端は、分岐管115dに接続されている。
【0056】
分岐管115dには、第2配管115bおよび第3配管115cが接続されている。第2配管115bは、一端が分岐管115dに接続され、他端が供給部121に接続されている。第3配管115cは、一端が分岐管115dに接続され、他端が検出部122に接続されている。
【0057】
<圧力調整部>
(供給部)
供給部121は、液保持部111と配管115を介して接続され、閉鎖系で液Lを液保持部111に供給する。供給部121は、液を供給可能であればいかなるものであってもよく、例えば重力などにより液Lを供給するようなものであってもよいし、シリンジポンプ、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプなどの微量ポンプを用いて、所望の速度で供給可能なものを用いてもよい。
【0058】
また、供給部121は、液保持部111に保持された液Lの圧力を調整する調整部としての機能を兼ね備えていてもよい。具体的には、供給部121から液保持部111に向けて液Lを供給すると、液Lの圧力が高くなり、供給部121が液保持部111から液Lを吸い上げると、液Lの圧力が低くなる。
【0059】
(検知部)
検出部122は、液保持部111に保持された液Lの圧力を検出する。検出部122には、例えば、半導体隔膜式の圧力センサーを採用することができる。
【0060】
図3は、液吐出ユニット101により液Lが吐出される様子を示す説明図であり、液保持部111の吐出口111a付近の様子を示す模式図である。
【0061】
図3(a)は、静置状態における液保持部111を示す。
液保持部111の内部111xに液Lを供給すると、液Lの表面張力により液保持部111で毛管現象が生じる。これにより、液保持部111内の液Lには、+z方向に引き上げる力F1が加わる。
【0062】
一方、液Lには、-z方向に重力が加わる。さらに吐出口111a付近の液Lには、液Lの圧力に応じて、吐出口111aから外部に向かう力が加わる。これにより、液保持部111内の液Lには、-z方向に押し下げる力F2が加わる。
【0063】
液保持部111において、力Fが力Fよりも小さい状態では、液保持部111の下端が開口しているにも関わらず、液Lは、吐出口111aから排出されることなく、液保持部111の内部111xに保持される。
【0064】
次いで、図3(b)に示すように、供給部121から液保持部111に液Lを供給する。液吐出ユニット101においては、液保持部111から圧力調整部120Aまで閉鎖系でつながっている。そのため、供給部121から液保持部111に液Lを供給すると、液保持部111では、液Lの供給圧力に応じて液Lが加圧される。これにより、液保持部111では、液Lを-z方向に押し下げる力F3が図3(a)の力F2よりも増大する。
【0065】
このとき、力F1が力F3よりも大きい状態とすると、液保持部111の吐出口111aでは、液Lは吐出口111aで保持される。一方で、力F3が力F2より大きいため、吐出口111aの液Lは、-Z方向に押し出されて突出し、メニスカスLMが形成される。
【0066】
次いで、図3(c)に示すように、変位部材113により液保持部111を変位させると、液LおよびメニスカスLMには、変位部材113の振動によりZ方向に加わる慣性力が加わる。これにより、吐出口111aでは、液LのメニスカスLMを-z方向に押し下げる力F4が図3(b)の力F3よりも増大する。
【0067】
力F4が力F1よりも大きくなると、メニスカスLMは吐出口111aで形状を維持できなくなり、図3(d)に示すように、吐出口111aから離れ、液滴L1として飛翔する。
【0068】
供給部121を駆動し続けると、液保持部111には、図3(b)に示すように供給部121から連続的に液Lが供給される。また、変位部材113を駆動し続けると、液保持部111は、z軸方向に振動し続ける。そのため、供給部121および変位部材113を駆動し続けると、液保持部111では、図3(b)~図3(d)に示す現象が繰り返し生じ、液滴L1を連続して吐出することができる。
【0069】
ここで、図2に示す圧力調整部120Aの検出部122では、供給部121により加圧された液Lの圧力を検出している。液吐出装置1の使用時には、予め液Lの圧力と、吐出される液滴L1の状態との対応関係を予備実験で確認しておき、液滴L1を適切に吐出可能とする液Lの圧力を確認しておくとよい。
【0070】
「吐出される液滴L1の状態」とは、液滴L1の体積、付着部30における液滴L1の付着位置などが挙げられる。
【0071】
また、制御部50には、液Lの適切な圧力を、液吐出時の液Lの圧力として予め入力しておく。制御部50は、検出部122の検出結果に基づいて、液Lの圧力を、予め定めた液吐出時の液Lの圧力の設定値に近づくように調整する。
【0072】
すなわち、検出部122の検出結果が、設定した圧力よりも高い場合には、制御部50は、供給部121から供給する液Lの供給量を減らすよう供給部121を制御する。
また、検出部122の検出結果が、設定した圧力よりも低い場合には、制御部50は、供給部121から供給する液Lの供給量を増やすよう供給部121を制御する。
【0073】
これにより、液吐出ユニット101は、検出部122の検出結果に基づいて、好適に液Lの圧力を調整し、液滴L1を吐出することができる。
【0074】
上述したように、本実施形態の液吐出ユニット101では、液保持部111に保持された液Lの圧力を調整する圧力調整部120Aと、液保持部111を変位させる変位部材113とが別構成となっている。これにより、以下のような効果を奏する。
【0075】
まず、液吐出ユニットが、上述のように液Lの圧力を調整する構成を有さない場合を考える。この場合、液保持部111の吐出口111aにおける液Lの圧力は、液保持部111における液Lの液面から吐出口までの高さ(深さ)に応じて定まる。このような場合、高粘度の液Lを吐出しようとした場合には、液保持部111を大型化し、液面から吐出口までの高さを高くする必要が生じ得る。
【0076】
これに対し、本実施形態の液吐出ユニット101では、液保持部111で保持する液Lの圧力を調整するための圧力調整部120Aを有している。そのため、高粘度の液Lを吐出しようとした場合であっても、圧力調整部120Aによって液保持部111の液Lに加える圧力を調整することにより、好適に液Lの圧力を調整可能となる。これにより、本実施形態の液吐出ユニット101では、装置の小型化が可能となる。
【0077】
また、液吐出ユニット101のように、液保持部111に液Lを供給する供給部121により液Lの圧力を調整する構成の場合、供給部121から連続して液Lを供給することで、液吐出ユニット101から連続的に液Lを排出するディスペンサとしても使用可能となる。
【0078】
さらに、液吐出ユニットが、例えば液が流動する流路の一部を変形させて、液保持部が有する液の一部の変位させ、液を吐出させる構成を考える。この場合、高粘度の液を吐出しようとすると、流路の一部を大きくまたは強く変形させる必要が生じる。流路を変形させる構成として、例えば圧電素子を採用すると、流路の一部を大きくまたは強く変形させるためには、圧電素子を大型化する必要が生じ得る。
【0079】
これに対し、液吐出ユニット101では、変位部材113と圧力調整部120Aとが別体であるため、図3(b)の状態とする圧力調整部120Aの動作と、図3(c)(d)の状態とする変位部材113の動作とを、それぞれ独立して制御することができる。そのため、例えば、粘度の異なる液をそれぞれ吐出する場合に、圧力調整部120Aの駆動条件を液の粘度に応じて調整することで、変位部材113を一定の駆動条件で駆動させるだけで好適に液を吐出可能となる。
【0080】
また、図3にて示したように、液吐出ユニット101では、液保持部111から液Lを吐出させるために加える力(力F2を力F4にするために加える力)を、変位部材113と圧力調整部120Aとで分担している。そのため、小型の変位部材113であっても、好適に液Lを吐出させることができる。これにより、本実施形態の液吐出ユニット101では、装置の小型化が可能となる。
【0081】
以上のような構成の液吐出ユニット101によれば、高粘度の液を好適に吐出可能な液吐出ユニットを提供することができる。
【0082】
また、以上のような構成の液吐出装置1によれば、上述の液吐出ユニットを有するため、高粘度の液を好適に吐出可能となる。
【0083】
なお、本実施形態において、圧力調整部120Aは、供給部121により液保持部111に液Lを供給し、液Lを加圧したが、圧力調整部120Aによる液Lの圧力調整はこれに限らない。圧力調整部120Aは、液保持部111から液Lを吸い出し、液Lの圧力を下げるよう調整してもよい。
【0084】
この場合、例えば、まず圧力調整部120Aで液保持部111の内部を負圧にすることで、吐出口111aのメニスカスが液保持部へと吸い込まれる。その後、メニスカスが吐出口111aへと自然に戻るタイミング、または圧力調整部120Aで加圧し液保持部111の内部が正圧になるタイミングで、変位部材113を変位させ液保持部111を変位させることで、液滴を吐出することができる。
【0085】
液Lの圧力を下げた状態で変位部材113を駆動し、液Lを吐出すると、生じる液滴L1の直径は、加圧した液Lを吐出したときの液の液滴L1の直径と比べ、小さくなる傾向にある。
【0086】
また、本実施形態の液吐出装置1は、複数の液吐出ユニット101を有することとしたが、これに限らず、液吐出ユニット101を一つだけ有する構成としてもよい。
【0087】
また、本実施形態の液吐出ユニット101では、変位部材113が液Lの吐出方向と略平行に液Lを変位させることとしたが、これに限らない。変位部材113が液Lを液Lの吐出方向と交差する方向に変位させる構成であっても、高粘度の液を好適に吐出可能であり、本発明の課題を解決する液吐出ユニットとすることができる。
【0088】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る液吐出ユニットおよび液吐出装置の説明図であり、図2に対応する図である。本実施形態の液吐出ユニット102は、第1実施形態の液吐出ユニット101と一部共通している。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0089】
液吐出ユニット102は、液吐出ヘッド110と、圧力調整部120Bとを有する。
【0090】
本実施形態の液吐出装置2は、上述の液吐出装置1から液吐出ユニット101を液吐出ユニット102に替えた構成とする。
【0091】
(圧力調整部)
圧力調整部120Bは、供給部121と、検出部123とを有する。
【0092】
供給部121は、液保持部111と配管116を介して接続されている。配管116は、上述した第1配管115aと同様の構成とすることができる。
【0093】
検出部123は、吐出口111aで形成されたメニスカスの状態を観察する観察装置である。「メニスカスの状態」とは、メニスカスの形状、体積およびメニスカスの形成位置からなる群から選ばれる少なくとも一つが挙げられる。検出部123としては、例えば、メニスカスを撮像する撮像装置や、メニスカスの位置、大きさ、形状を検出するレーザー測定器を挙げることができる。
メニスカスの位置を連続的に検出することで、メニスカスの運動状態を検出することができる。「メニスカスの運動状態」とは、変位部材が駆動することによるメニスカスの振動の振幅、位相が挙げられる。
【0094】
液吐出ユニット102を有する液吐出装置2の使用時には、予め、メニスカスの状態と液Lの圧力との対応関係を予備実験で確認しておく。
【0095】
メニスカスの状態は、液Lの圧力に応じて変化する。これにより、液Lの圧力を直接測定しなくても、液吐出ユニット102では、検出部123を用いてメニスカスの状態を確認することで、液Lの圧力を間接的に検出することができる。
【0096】
また、予め、液Lの圧力と吐出される液滴L1の状態との対応関係を、予備実験で確認しておく。
【0097】
制御部50には、液Lの適切な圧力を、液吐出時の液Lの圧力として予め入力しておく。また、制御部50には、メニスカスの状態と液Lの圧力との対応関係について、予め保存しておく。このような制御部50は、検出部123の検出結果に基づいて、メニスカスの状態から液Lの圧力を間接的に検出し、液Lの圧力を、予め定めた液吐出時の液Lの圧力の設定値に近づくように調整する。
【0098】
すなわち、検出部123の検出結果から間接的に検出した液Lの圧力が、設定した圧力よりも高い場合には、制御部50は、供給部121から供給する液Lの供給量を減らすよう供給部121を制御する。
また、検出部123の検出結果から間接的に検出した液Lの圧力が、設定した圧力よりも低い場合には、制御部50は、供給部121から供給する液Lの供給量を増やすよう供給部121を制御する。
【0099】
これにより、液吐出ユニット102は、検出部123の検出結果に基づいて、好適に液Lの圧力を調整し、液滴L1を吐出することができる。
【0100】
なお、本実施形態においては、検出部123が吐出口に形成されたメニスカスの状態を検出することとしたが、これに限らない。検出部123は、液保持部111から吐出された液滴L1の飛翔時の状態を観察することとしてもよい。
【0101】
「液滴L1の飛翔時の状態」とは、液滴L1の形状、体積、液滴L1の速度、液滴L1の飛翔位置からなる群から選ばれる少なくとも一つが挙げられる。検出部123としては、例えば、液滴L1を撮像する撮像装置や、液滴L1の大きさ、形状、動きを検出するレーザー測定器を挙げることができる。
【0102】
液吐出ユニット102を有する液吐出装置2の使用時には、予め、液滴L1の状態と液Lの圧力との対応関係を予備実験で確認しておく。
【0103】
液滴L1の状態は、液Lの圧力に応じて変化する。これにより、液Lの圧力を直接測定しなくても、液吐出ユニット102では、検出部123を用いて液滴L1の状態を確認することで、液Lの圧力を間接的に検出することができる。
【0104】
また、予め、液Lの圧力と吐出される液滴L1の状態との対応関係を、予備実験で確認しておく。
【0105】
制御部50には、液Lの適切な圧力を、液吐出時の液Lの圧力として予め入力しておく。また、制御部50には、メニスカスの状態と液Lの圧力との対応関係について、予め保存しておく。このような制御部50は、検出部123の検出結果に基づいて、液滴L1の状態から液Lの圧力を間接的に検出し、液Lの圧力を、予め定めた液吐出時の液Lの圧力の設定値に近づくように調整する。液Lの圧力調整方法は、上述したメニスカスの状態を検出した後の調整の方法と同じでよい。
【0106】
これにより、液吐出ユニット102は、検出部123の検出結果に基づいて、好適に液Lの圧力を調整し、液滴L1を吐出することができる。
【0107】
以上のような構成の液吐出ユニット102によっても、高粘度の液を好適に吐出可能な液吐出ユニットを提供することができる。
【0108】
また、以上のような構成の液吐出装置2によっても、上述の液吐出ユニットを有するため、高粘度の液を好適に吐出可能となる。
【0109】
なお、検出部123として、メニスカスの状態を検出する装置と、液滴L1の飛翔時の状態を検出する装置との両方を説明したが、液吐出装置は、これら2種の検出部123を両方備えてもよい。この場合、制御部50は、2種の検出部123による検出結果に基づいて、液Lの圧力を間接的に検出し、液Lの圧力を制御するとよい。
【0110】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態に係る液吐出ユニットおよび液吐出装置の説明図であり、図2,4に対応する図である。本実施形態の液吐出ユニット103は、上述の実施形態の液吐出ユニットと一部共通している。したがって、本実施形態において上述の実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0111】
液吐出ユニット103は、液吐出ヘッド160と、圧力調整部120Cとを有する。
【0112】
本実施形態の液吐出装置3は、上述の液吐出装置1から液吐出ユニット101を液吐出ユニット103に替えた構成とする。
【0113】
液吐出ヘッド160は、液保持部161、支持部162、変位部材163、配管116を有する。
圧力調整部120Aは、供給部121と、検出部122とを有する。
【0114】
<液吐出ヘッド>
(液保持部)
液保持部161は、上述した液保持部111と同様の構成を採用することができる。
【0115】
(支持部)
支持部162は、液保持部161を着脱自在に支持している。支持部162は、液保持部161を支持可能であれば、通常知られた種々の構成を採用することができる。
【0116】
支持部162は、液保持部161を支持する支持本体162aと、支持本体162aに液保持部161を固定するねじ162xとを有する。
【0117】
(変位部材)
変位部材163は、上述した変位部材113と同様の構成を採用することができる。
【0118】
(配管)
配管116は、液保持部161と供給部121とを接続する。
【0119】
<圧力調整部>
圧力調整部120Cは、加圧部125と、検出部123とを有する。
【0120】
(加圧部)
加圧部125は、軟質部126と押圧部127とを有する。
【0121】
軟質部126は、液保持部161と配管116とを接続して設けられ、液保持部161および配管116と連通した管状部材である。軟質部126は、軟質の樹脂材料を形成材料とする。軟質の樹脂材料としては、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0122】
軟質部126は、配管116と一体的に設けられてもよく、別部材であってもよい。
【0123】
押圧部127は、軟質部126に設けられ、制御部50の指示によって軟質部126を押圧する部材である。押圧部127としては、軟質部126を押圧することが可能であれば、種々の公知の構成を採用することができる。例えば、押圧部127としては、上述した変位部材113と同様の圧電素子を用いることができる。
【0124】
加圧部125においては、押圧部(圧電素子)127に通電して押圧部127を圧縮することで、押圧部127が設けられた軟質部126を押圧して圧縮する。これにより、軟質部126および液保持部161の内部の液Lが加圧され、液保持部161の吐出口161xから一部が押し出される。
【0125】
以上のような液吐出ユニット103では、まず、加圧部125において液保持部161内の液Lを加圧することにより、液保持部161の吐出口161xでは、液保持部161で保持された液Lの一部が押し出され、メニスカスが形成される。
【0126】
次いで、変位部材163を駆動させ、液保持部161を変位させることにより、図3と同様に駆動し、液滴が吐出される。
【0127】
以上のような構成の液吐出ユニット103によっても、高粘度の液を好適に吐出可能な液吐出ユニットを提供することができる。
【0128】
また、以上のような構成の液吐出装置3によっても、上述の液吐出ユニットを有するため、高粘度の液を好適に吐出可能となる。
【0129】
[第4実施形態]
図6は、本発明の第4実施形態に係る液吐出ユニットおよび液吐出装置の説明図であり、図2,4,5に対応する図である。本実施形態の液吐出ユニット104は、上述の実施形態の液吐出ユニットと一部共通している。したがって、本実施形態において上述の実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0130】
液吐出ユニット104は、液吐出ヘッド170と、圧力調整部120Bとを有する。
【0131】
本実施形態の液吐出装置4は、上述の液吐出装置1から液吐出ユニット101を液吐出ユニット104に替えた構成とする。
【0132】
液吐出ヘッド170は、液保持部171、ノズルプレート172、変位部材173、配管116を有する。
【0133】
(液保持部)
液保持部171は、z軸方向の下端が開口した筒状の部材である。液保持部171の内部には液Lが保持されている。また、液保持部171の上方は、配管116と接続されている。
【0134】
液保持部171の下方端部171xは、ノズルプレート172と変位部材173とで塞がれている。液保持部171とノズルプレート172と変位部材173とで囲まれた空間には、液Lが保持されている。
【0135】
(ノズルプレート)
ノズルプレート172は、吐出口172xを有する環状の部材である。ノズルプレート172は、液保持部171の下方端部171xを塞いでいる。吐出口172xは、液保持部171と連通している。
【0136】
ノズルプレート172の平面形状、平面視したときの大きさ、材質、および構造については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0137】
ノズルプレート172の外縁の平面形状としては、例えば、円形、楕円形、長方形、正方形、菱形などが挙げられる。例えば、ノズルプレート172の外縁の形状が円形である場合、ノズルプレート172は円環状の部材となる。
【0138】
ノズルプレート172は、吐出口172x側の端部が支持されておらず、上下に振動可能である。ノズルプレート172は、吐出口172x側の端部が振動することにより、吐出口172x近傍の液Lに対して下方に力を加え、吐出口172xから液滴L1として吐出する。
【0139】
ノズルプレート172の材質としては、柔らかすぎるとノズルプレート172が簡単に振動し、吐出しないときに直ちに振動を抑えることが困難であるため、ある程度の硬さを有する材質を用いることが好ましい。
【0140】
ノズルプレート172の材質としては、例えば、金属、セラミックス、高分子材料などが挙げられる。ノズルプレート172の材質として、具体的には、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニアなどが挙げられる。
【0141】
吐出口172xの開口形状としては、目的に応じて適宜選択することができる。吐出口172xの開口形状としては、例えば、円形、楕円形、四角形などが挙げられる。なかでも、吐出口172xの開口形状としては、円形が好ましい。
【0142】
吐出口172xの平均開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。吐出する液Lが分散液である場合には、液L中に分散する細胞などの分散質が吐出口172xに詰まることを避けるため、吐出口172xの開口形状は、分散質の最大径の2倍以上とすることが好ましい。
【0143】
(変位部材)
変位部材173は、ノズルプレート172を振動させて吐出口172xから液滴L1を吐出させる。
【0144】
変位部材173は、液保持部171の下方端部171xとノズルプレート172との間に挟まれ、液保持部171の下方端部171xを塞いでいる。
【0145】
変位部材173の形状、大きさ、材質、及び構造については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0146】
変位部材173の形状や配置は、発明の効果を阻害しないならば特に制限はなく、ノズルプレート172の形状に合わせて適宜設計することができる。例えば、ノズルプレート172の平面形状が円環状である場合には、吐出口172xの周囲に、同心状に変位部材173を設けることが好ましい。
【0147】
変位部材173としては、圧電素子が好適に用いられる。圧電素子としては、変位部材113で採用する圧電素子と同様の構成の部材を用いることができる。
【0148】
以上のような液吐出ユニット104では、まず、供給部121において液保持部171内の液Lを加圧することにより、液保持部171の吐出口172xでは、液保持部171で保持された液Lの一部が押し出され、メニスカスが形成される。
【0149】
次いで、変位部材173を駆動させ、液保持部171に保持された液Lの一部を変位させることにより、液滴L1が吐出される。
【0150】
以上のような構成の液吐出ユニット104によっても、高粘度の液を好適に吐出可能な液吐出ユニットを提供することができる。
【0151】
また、以上のような構成の液吐出装置4によっても、上述の液吐出ユニットを有するため、高粘度の液を好適に吐出可能となる。
【0152】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0153】
上述の第1~4実施形態に記載した液吐出ユニットおよび液吐出装置の構成のうち、同じ効果を奏する構成については、発明の効果を損なわない範囲において相互に交換可能である。
【0154】
例えば、第1実施形態の液吐出装置は、検出部122に替えて、第2~4実施形態の液吐出装置が備える検出部123を有していてもよい。
【0155】
同様に、第2~4実施形態の液吐出装置は、検出部123に替えて、第1実施形態の液吐出装置が備える検出部122を有していてもよい。
【0156】
また、第1~4実施形態に記載した液吐出ユニットおよび液吐出装置の構成のうち、同じ効果を奏する構成については、発明の効果を損なわない範囲において重複して備えていてもよい。
【0157】
例えば、液吐出装置は、検出部122と検出部123との両方を備えていてもよい。この場合、制御部50は、検出部122と検出部123との両方の検出結果に基づいて、液Lの圧力を求め、液Lの圧力を制御するとよい。
【0158】
また、第1~4実施形態に記載した液吐出装置が複数の液吐出ユニットを備える場合、複数の液吐出ユニットは、全て同じ構成であってもよく、上述した液吐出ユニット101~104からなる群から選ばれる2種以上を有することとしてもよい。
【0159】
本発明は、以下の態様を含む。
【0160】
[1]液を吐出する吐出口を有し、液を保持する液保持部と、前記液保持部に保持された前記液の圧力を調整する圧力調整部と、圧力が調整された前記液の少なくとも一部を変位させ、前記液保持部から前記液を吐出させる変位部材と、を有する液吐出ユニット。
【0161】
[2]前記変位部材は、前記液保持部を前記液の吐出方向と略平行に変位させる[1]に記載の液吐出ユニット。
【0162】
[3]前記液保持部は、前記液の吐出方向と略平行に伸びる管状部材であり、前記液保持部と前記変位部材とは、平面視で重なって配置され、前記液保持部の平面視形状は、前記変位部材の平面視形状よりも小さい[2]に記載の液吐出ユニット。
【0163】
[4]前記液保持部に前記液を供給する供給部を有し、前記供給部は、前記圧力調整部を兼ねる[1]から[3]のいずれか1項に記載の液吐出ユニット。
【0164】
[5]前記液保持部の少なくとも一部が弾性材料で形成され、前記圧力調整部は、前記液保持部の前記弾性材料で形成された箇所に設けられ、前記液保持部を変形させて前記液保持部の容積を変化させる手段である[1]から[3]のいずれか1項に記載の液吐出ユニット。
【0165】
[6]前記圧力調整部は、前記液保持部に保持され圧力が調整された前記液の圧力を、直接または間接的に検出する検出部を含む[1]から[5]のいずれか1項に記載の液吐出ユニット。
【0166】
[7]前記検出部は、前記液保持部に保持され圧力が調整された前記液の圧力を検出し、前記圧力調整部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記液の圧力を、予め定めた液吐出時の前記液の圧力の設定値に近づくように調整する[6]に記載の液吐出ユニット。
【0167】
[8]前記検出部は、前記吐出口に形成されるメニスカスを観察し、前記圧力調整部は、前記メニスカスの形成位置または前記メニスカスの運動情報の少なくともいずれか一方に基づいて、前記液の圧力を、予め定めた液吐出時の前記液の圧力の設定値に近づくように調整することを特徴とする[6]に記載の液吐出ユニット。
【0168】
[9]前記検出部は、前記液保持部から吐出された液滴を観察し、前記圧力調整部は、前記液滴の飛翔位置、前記液滴の形状、前記液滴の体積および前記液滴の速度からなる群から選択される少なくとも一つに基づいて、前記液の圧力を、予め定めた液吐出時の前記液の圧力の設定値に近づくように調整することを特徴とする[6]または[8]に記載の液吐出ユニット。
【0169】
[10]前記検出部は、撮像装置またはレーザー測定器である[9]に記載の液吐出ユニット。
【0170】
[11]前記液は、粒子と、前記粒子が分散した分散媒とを有する分散液である[1]から[10]のいずれか1項に記載の液吐出ユニット。
【0171】
[12]前記粒子が細胞である[11]に記載の液吐出ユニット。
【0172】
[13][1]から[12]のいずれか1項に記載の液吐出ユニットを有する液吐出装置。
【0173】
[14]前記液吐出ユニットを複数有し、複数の前記液吐出ユニットが前記液の吐出方向と交差する方向に配列している[13]に記載の液吐出装置。
【0174】
[1]から[12]のいずれか1項に記載の液吐出ユニットおよび[13]または[14]に記載の液吐出装置によれば、従来の課題を解決し、本発明の目的を達することができる。
【符号の説明】
【0175】
1,2,3,4…液吐出装置、50…制御部、101,102,103,104…液吐出ユニット、110,160,170…液吐出ヘッド、111,161,171…液保持部、111a,161x,172x…吐出口、113,163,173…変位部材、120A,120B,120C…圧力調整部、121…供給部、122,123…検出部、127…押圧部(圧電素子)、L…液、L1…液滴、LM…メニスカス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0176】
【文献】特許第5716213号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6