(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】反応炉及びフラーレンの製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 32/154 20170101AFI20240312BHJP
F27B 17/00 20060101ALI20240312BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C01B32/154
F27B17/00 D
F27D1/00 K
(21)【出願番号】P 2019239942
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100108187
【氏名又は名称】横山 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】飯野 匡
(72)【発明者】
【氏名】神原 英二
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-269298(JP,A)
【文献】特開2008-285343(JP,A)
【文献】特開2014-045053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
F27B 17/00
F27D 1/00-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼法によるフラーレンの生成に用いられる反応炉であって、
内周面に、放射率が0.80以上である被覆層を有
し、
前記被覆層の厚みが、0.5mm~3.0mmであり、
前記放射率は、1000℃における熱放射で、放射体が放出する、波長が0.5μm~10.0μmの範囲内である光の放射輝度と、黒体が放出する前記光の放射輝度との比である、反応炉。
【請求項2】
前記被覆層は、炭素材料、炭化ケイ素及び二酸化バナジウムからなる群より選択される一種以上を含む、請求項1に記載の反応炉。
【請求項3】
前記被覆層は、炭素材料を含む層と、前記炭素材料を含む層を被覆し、炭化ケイ素及び二酸化バナジウムの少なくとも一方を含む層とを、前記内周面側から順次有する、請求項2に記載の反応炉。
【請求項4】
前記被覆層を有する前記内周面の面積は、前記内周面の全面積の50%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の反応炉。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の反応炉を有する、フラーレンの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼法によるフラーレンの生成に用いられる反応炉及びフラーレンの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラーレンを安価に効率よく大量に製造する方法として、炭素化合物を反応炉内で不完全燃焼させて、フラーレンを製造する燃焼法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フラーレンを大量に製造できる燃焼法であっても、フラーレンの収率が高くないため、コストを更に低減することは難しい。フラーレンの収率を向上させ、フラーレンの製造コストを低減することが望まれている。
【0005】
本発明は、フラーレンの収率を向上させることが可能な反応炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)燃焼法によるフラーレンの生成に用いられる反応炉であって、内周面に、放射率が0.80以上である被覆層を有する、反応炉。
(2)前記被覆層は、炭素材料、炭化ケイ素及び二酸化バナジウムからなる群より選択される一種以上を含む、(1)に記載の反応炉。
(3)前記被覆層は、炭素材料を含む層と、前記炭素材料を含む層を被覆し、炭化ケイ素及び二酸化バナジウムの少なくとも一方を含む層とを、前記内周面側から順次有する、(2)に記載の反応炉。
(4)前記被覆層を有する前記内周面の面積は、前記内周面の全面積の50%以上である、(1)~(3)のいずれか一項に記載の反応炉。
(5)(1)~(4)のいずれか一項に記載の反応炉を有する、フラーレンの製造装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フラーレンの収率を向上させることが可能な反応炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のフラーレンの製造装置の一例を示す図である。
【
図2】
図1のフラーレンの製造装置の反応炉付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が同一であるとは限らない。
【0010】
フラーレンの製造装置10は、
図1に示すように、燃焼法によるフラーレンの生成に用いられる反応炉11と、フラーレン反応炉11の下部に接続されてフラーレン反応炉11内からフラーレンを含む煤状物を有する高温の排ガスを通過させる配管19と、配管19を通過した排ガスからフラーレンを含む煤状物を捕集するフラーレン回収装置16と、フラーレン回収装置16から流出する煤状物が取り除かれたガスを冷却するガス冷却器17と、ガス冷却器17によって降温されたガスを吸引する真空ポンプからなる減圧装置18と、を備える。ここでは、本実施形態のフラーレンの製造装置の一例として、
図1、
図2に沿って、フラーレンの製造装置10を説明するが、本実施形態のフラーレンの製造装置は、フラーレンの製造装置10に限定されない。
図1では、反応炉11は鉛直方向に配置され、上方から原料ガスが流入するが、反応炉11の配置方向は、例えば、水平方向でも構わないし、斜め方向でも構わない。反応炉11は、反応炉11内で生成したフラーレンを含む煤状物の滞留の影響が少ない鉛直方向に配置されていることが好ましく、燃料ガスは、上方から流入させることが好ましい。
【0011】
実施例においては、内径10cm、長さ200cmの反応炉11を使用したが、反応炉11の寸法は、限定されるものではなく、フラーレンを大量生産するために、より大径の反応炉や、長い反応炉を使用することも可能である。反応炉11の上流側に、供給された燃料ガスを酸素含有ガス下で燃焼させるバーナー13が設けられている。さらに、反応炉11の外側の一部又は全部には、例えば、アルミナ質の耐火煉瓦やアルミナ質の不定形耐火材等の断熱材14がライニングされている。
【0012】
バーナー13には、燃料ガスを導入する配管20と、酸素含有ガスを導入する配管21が接続されている。バーナー13は、燃料ガスと酸素含有ガスを所定の混合比で混合して混合ガスを作製する混合室13aと、混合ガスを所定の圧力で保持する蓄圧室13bと、多数の噴出口が平面上に形成されており、混合ガスを鉛直下向きに噴出させる混合ガス噴出部13cを有する。混合ガス噴出部13cは、多孔質のセラミック焼結体、金属粉末の焼結体で構成されていてもよい。このとき、熱交換器等を用いて、バーナー13に供給される、燃料ガス及び酸素含有ガスを、予熱することが好ましい。また、バーナー13に、混合室13aを設けずに、燃料ガスと、酸素含有ガスを、それぞれ独立にフラーレン反応炉11内に導入してもよい。
【0013】
反応炉11で、燃料ガスを不完全燃焼させることにより、フラーレンを生成させる。
【0014】
燃料ガスとしては、例えば、ガス状又はガス化させたトルエン、ベンゼン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の炭素数6~15の芳香族炭化水素、クレオソート油、カルボン酸油等の石炭系炭化水素、アセチレン系不飽和炭化水素、エチレン系炭化水素、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族飽和炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素が好ましい。
【0015】
なお、燃料ガスは、二種以上を併用してもよい。
【0016】
また、燃料ガスは、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスで希釈されていてもよい。
【0017】
酸素含有ガスとしては、例えば、酸素ガス、空気等が挙げられる。
【0018】
なお、酸素含有ガスは、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスで希釈されていてもよい。
【0019】
反応炉11は、ジルコニア、モリブデン、タンタル、白金、チタン、窒化チタン、アルミナ等の耐熱材料で構成されており、内周面の全面あるいは一部に、放射率が0.80以上である被覆層12を有する。このとき、被覆層12の放射率は、0.85以上であることが好ましく、放射率が0.90以上であることがより好ましい。
【0020】
被覆層12は、放射率が高く、耐熱性を有する材料より構成されている。
【0021】
放射率が0.80以上の材料としては、例えば、炭素材料、炭化ケイ素、二酸化バナジウム等が挙げられる。
【0022】
炭素材料としては、黒鉛、煤、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、炭素繊維等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、耐熱性が高いことから、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、炭化ケイ素が好ましい。
【0024】
なお、放射率が0.80以上の材料は、二種以上を併用してもよい。
【0025】
ここで、放射率は、所定の温度における熱放射で、放射体が放出する光の放射輝度と、黒体が放出する光の放射輝度との比である。
【0026】
本明細書及び特許請求の範囲において、放射率とは、1000℃における熱放射で放出される波長が0.5μm~10.0μmの範囲内である光の放射輝度から求められる放射率の平均値である。
【0027】
被覆層12は、反応炉11の内周面の全面に形成されていてもよく、内周面の一部に形成されていてもよい。すなわち、内周面に、被覆層12で覆われていない部分があっても良く、内周面が露出している部分があっても良い。被覆層12が内周面の一部に形成されている場合は、被覆層12により内周面の全面積の50%以上が被覆されていることが好ましく、70%以上が被覆されていることがより好ましい。また、被覆層12は、反応炉11の上方の内周面、特にバーナー13近傍の内周面に形成されていることが好ましい。なお、被覆層12が反応炉11の内周面の一部に形成されている場合、被覆層12は、連続的に形成されていてもよく、断続的に形成されていてもよく、点在していてもよい。
【0028】
被覆層12は、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。
【0029】
また、被覆層12の厚みは、均一であってもよく、不均一であってもよい。
【0030】
被覆層12の厚みが均一である場合、被覆層12の厚みは、0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。
【0031】
被覆層12の厚みが不均一である場合、被覆層12の全面積の半分以上の厚みは、0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。
【0032】
被覆層12が炭素材料を含む層を有している場合、炭素材料を含む層の上に、炭化ケイ素及び二酸化バナジウムの少なくとも一方を含む層を有することが好ましい。この場合、被覆層12は、炭素材料を含む層と、炭素材料を含む層を被覆し、炭化ケイ素及び二酸化バナジウムの少なくとも一方を含む層とが、内周面側から順次積層されている。通常、フラーレンは、燃料ガスの不完全燃焼により生成されるため、燃料ガスに対して、酸素含有ガス中の酸素が不足している。従って、酸素は、バーナー13で燃料ガスと反応して消費されてしまうため、被覆層12に含まれる炭素材料と酸素が反応する可能性は極めて低いと考えられる。しかし、異常反応等の非常時に備えて、上記のように、炭素材料を含む層が、高温で酸素と反応しにくい炭化ケイ素及び二酸化バナジウムの少なくとも一方を含む層で被覆されていることが好ましい。このとき、炭化ケイ素及び二酸化バナジウムの少なくとも一方を含む層の厚みは、0.05μm~0.1mmであることが好ましい。
【0033】
燃焼法によりフラーレンを生成する際に、反応炉11内の温度は、通常、1000℃以上であると推測される。ここで、被覆層12の放射率が0.80以上であることにより、反応炉11内を高温に維持することができ、その結果、フラーレンの収率を向上させることができる。
【0034】
図1に示すように、反応炉11の下部は、配管19と接続されている。反応炉11で生成したフラーレンを含む煤状物、一酸化炭素、水蒸気等を含む排ガスが配管19を通過して、フラーレン回収装置16に到達する。
【0035】
フラーレン回収装置16は、排ガス中のフラーレンを含む煤状物とガスを分離するフィルター22を備える。フィルター22は、排ガス中の未反応の燃料ガス、一酸化炭素、水蒸気等のガスを通過させて、フラーレンを含む煤状物を回収する。フィルター22は、通常の集塵機等に使用されるバッグフィルター構造となっている。フィルター22の市販品としては、例えば、焼結金属フィルター(日本ポール製)、焼結金属フィルター(富士フィルター製)等が挙げられる。
【0036】
フラーレン回収装置16は、配管27を介して、ガス冷却器17と接続されている。ガス冷却器17は、通常の熱交換器と同一又は近似した構造であり、ガスの温度を低下させて真空ポンプ18に流入することにより、ガスを減容すると共に、真空ポンプ18の負荷を低減させる。また、ガス冷却器17は、ガス中の未反応の燃料ガス、水蒸気を液化させ、ガス冷却器17の下部のドレーン28から、液化された成分が排出される。
【実施例】
【0037】
実施例及び比較例により、本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0038】
(フラーレンの収率)
まず、JIS Z 8981に準拠して、フラーレン回収装置16で回収した煤状物に含まれるフラーレンの含有率を、以下のように測定した。具体的には、回収した煤状物0.05gに対して、15gの1,2,3,5-テトラメチルベンゼン(TMB)を添加した後、15分間超音波処理し、懸濁液を得た。得られた懸濁液を孔径0.5μmのメンブランフイルターで濾過した後、高速液体クロマトグラフ(HPLC)で濾液(試料液)を分析して煤状物に含まれるフラーレン(C60、C70)を定量し、煤状物に含まれるフラーレンの含有率[質量%]を算出した。なお、フラーレンの含有率が既知のフラーレン溶液を用いて、検量線を作成した。
【0039】
HPLCの測定条件は、以下の通りである。
【0040】
装置:Infinity1260(Agilent製)
試料液の注入量:5μL
溶離液:トルエン(47体積%)/メタノール(53体積%)混合溶媒
溶離液の流速:1ml/分
カラム:YMC-Pack ODS-AM 100*4.6mmID S-3μm,12nm
測定温度:40℃
検出器:UV 325nm(JIS)
次に、煤状物に含まれるフラーレンの含有率(FLN含有率)から、式
(煤状物の回収量[g])/(燃料の消費量[g])×(FLN含有率[質量%])
により、フラーレンの収率を算出した。
【0041】
(実施例1)
(被覆層の形成)
炭素繊維(平均繊維径13μm、平均繊維長0.11mm)をエタノールに分散させ、塗布に好適な流動性が得られるように、被覆層用塗布液を調製した。内径10cm、長さ200cmのジルコニア製の反応炉11を回転させながら、反応炉11の中に内面塗布用ロングノズルを挿入して、スプレー法で反応炉11の内周面の全面に被覆層用塗布液を塗布した。このとき、形成される被覆層12の厚みが3.0mmになるように、被覆層用塗布液の塗布量を調整した。次に、被覆層用塗布液に含まれるエタノールを大気中で揮発させた。次に、窒素ガス雰囲気中で、10℃/minの昇温速度で1500℃まで昇温した後、1500℃で2時間焼成し、室温まで自然冷却させた。これにより、反応炉11の内周面の全面に、被覆層12を形成した。
【0042】
(被覆層の放射率の測定)
2cm×2cmのジルコニア板に、スプレー法で被覆層用塗布液を塗布した以外は、上記被覆層の形成と同様にして、被覆層12の放射率を測定するための試料を作製した。
【0043】
1000℃における熱放射で放出される、波長が0.5μm~10.0μmの範囲内である光の放射輝度から放射率を算出した後、平均して、被覆層12の放射率を求めた。具体的には、1000℃に加熱した黒体炉から放射された光の放射輝度と、1000℃に加熱した試料から放射された光の放射輝度を、導光器を経由して可視-赤外分光器で分光して測定し、被覆層12の放射率を求めた。このとき、1000℃に加熱した黒体炉から放射された光の放射輝度により分光器を補正した後、1000℃に加熱した試料から放射された光の放射輝度を測定した。被覆層12の放射率は、0.87であった。
【0044】
(フラーレンの製造)
上記で得られた被覆層12を有する反応炉11を使用し、
図1のフラーレンの製造装置10によってフラーレンを製造した。生成した煤状物中のフラーレンの含有率を測定して、フラーレンの収率を算出した。
【0045】
このとき、燃料ガスとして、ガス化させたトルエンを使用し、酸素含有ガスとして、純酸素を使用した。
【0046】
トルエンは、一旦気化装置で加熱してガス状とした後に、熱交換器に供給して、200℃に加熱して、使用した。酸素ガスは、酸素タンクから熱交換器に供給して、200℃に加熱して、使用した。そして、燃料ガスの流量を228.3g/分とし、酸素含有ガスの流量を175.7NL/分として、バーナー13に供給した。次に、混合室13aで予混合して混合ガスとした後、混合ガス噴出部13cから反応炉11内に混合ガスを噴出させて着火させ、フラーレンを含む煤状物を得た。フラーレンの収率は、1.40%であった。
【0047】
(実施例2)
反応炉11の内周面において、バーナー13の表面部(先端部)に相当する位置から下流側(配管19に向かう方向)に向かって100cmの範囲に、被覆層12を形成した以外は、実施例1と同様にして、フラーレンを製造した。すなわち、反応炉11の内周面の全面積の50%が被覆層12により被覆された。フラーレンの収率は、1.35%であった。
【0048】
(実施例3)
炭素繊維の代わりに、質量比40:60の炭素繊維と、黒色炭化ケイ素粉末(粒径範囲0.1μm~100μm)を用いて、被覆層12を形成した以外は、実施例1と同様にして、フラーレンを製造した。被覆層12の放射率は、0.90であり、フラーレンの収率は、1.75%であった。
【0049】
(実施例4)
炭素繊維の代わりに、黒鉛微粉(粒径範囲0.1μm~100μm)を用いて、被覆層12を形成した以外は、実施例1と同様にして、フラーレンを製造した。被覆層12の放射率は、0.91であり、フラーレンの収率は2.10%であった。
【0050】
(実施例5)
炭素繊維の代わりに、黒色炭化ケイ素粉末(粒径範囲0.1μm~100μm)を用いて、被覆層12を形成した以外は、実施例1と同様にして、フラーレンを製造した。被覆層12の放射率は、0.90であり、フラーレンの収率は、2.00%であった。
【0051】
(実施例6)
炭素繊維の代わりに、二酸化バナジウム粉末(粒径範囲0.5μm~100μm)を用いて、被覆層12を形成した以外は、実施例1と同様にして、フラーレンを製造した。被覆層12の放射率は、0.81であり、フラーレンの収率は、1.50%であった。
【0052】
(実施例7)
炭素繊維の代わりに、カーボンブラック(三菱ケミカル製、MCF#900)を用いて、被覆層12を形成した以外は、実施例1と同様にして、フラーレンを製造した。被覆層12の放射率は、0.92であり、フラーレンの収率は、2.10%であった。
【0053】
(実施例8)
反応炉11の内周面において、バーナー13の表面部(先端部)に相当する位置から下流側に向かって120cmの範囲に、被覆層12を形成した以外は、実施例7と同様にして、フラーレンを製造した。すなわち、反応炉11の内周面の全面積の60%が被覆層12により被覆された。フラーレンの収率は、1.60%であった。
【0054】
(実施例9)
反応炉11の内周面において、バーナー13の表面部(先端部)に相当する位置から下流側に向かって150cmの範囲に、被覆層12を形成した以外は、実施例7と同様にして、フラーレンを製造した。すなわち、反応炉11の内周面の全面積の75%が被覆層12により被覆された。フラーレンの収率は、1.90%であった。
【0055】
(実施例10)
(被覆層の形成)
カーボンブラック(三菱ケミカル製、MCF#900)をエタノールに分散させ、塗布に好適な流動性が得られるように、カーボンブラック層用塗布液を調製した。内径10cm、長さ200cmのジルコニア製の反応炉11を回転させながら、反応炉11の中に内面塗布用ロングノズルを挿入して、スプレー法で反応炉11の内周面の全面にカーボンブラック層用塗布液を塗布した。このとき、形成されるカーボンブラック層の厚みが3.0mmになるように、カーボンブラック層用塗布液の塗布量を調整した。次に、カーボンブラック層用塗布液に含まれるエタノールを大気中で揮発させた。次に、窒素ガス雰囲気中で、10℃/minの昇温速度で1500℃まで昇温した後、1500℃で2時間焼成し、室温まで自然冷却させた。これにより、反応炉11の内周面の全面に、カーボンブラック層を形成した。次に、100mL/分の速度でシランガスを反応炉11内に流通させながら、1000℃に加熱し、30分間維持した。これにより、カーボンブラック層の表面に、炭化ケイ素層を形成し、被覆層12とした。炭化ケイ素層の厚みは、0.05μmであった。
【0056】
上記のようにして被覆層12を形成した以外は、実施例7と同様にして、フラーレンを製造した。被覆層の放射率は、0.92であり、フラーレンの収率は、2.05%であった。
【0057】
(比較例1)
被覆層12を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、フラーレンを製造した。ジルコニア製の反応炉11の内周面の放射率は、0.40であり、フラーレンの収率は、0.70%であった。
【0058】
比較例1の反応炉11と比べて、実施例1~10の反応炉11は、フラーレンの収率が向上したことが確認された。このことから、被覆層12を有する反応炉11を用いることにより、フラーレンの収率が向上することがわかった。
【符号の説明】
【0059】
10 フラーレンの製造装置
11 反応炉
12 被覆層
13 バーナー
14 断熱材
16 フラーレン回収装置
17 ガス冷却器
18 減圧装置
19 配管
20 配管
21 配管
22 フィルター
27 配管
28 ドレーン