(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240312BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20240312BHJP
C08K 5/5397 20060101ALI20240312BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20240312BHJP
C08L 23/02 20060101ALI20240312BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K9/04
C08K5/5397
C08K7/00
C08L23/02
G02B5/20
(21)【出願番号】P 2020021377
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】仲亀 良
(72)【発明者】
【氏名】小礒 尚之
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 史晃
(72)【発明者】
【氏名】岩永 宏平
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-235418(JP,A)
【文献】特開2019-094332(JP,A)
【文献】特開2016-128392(JP,A)
【文献】特開2019-058085(JP,A)
【文献】特開平08-319476(JP,A)
【文献】特開2018-101013(JP,A)
【文献】特開2019-132945(JP,A)
【文献】特開平10-235776(JP,A)
【文献】特開2004-067914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される波長変換材、層状化合物及びポリマーを含むことを特徴とするポリマー組成物。
【化1】
[式中、R
1
及びR
2
は各々独立に炭素数3~10の環状アルキル基であり、R
3
は、炭素数3~10の環状アルキル基又は式(2a)で表されるフェニル基
【化2】
(式中、X
1
、X
2
、X
3
、X
4
、及びX
5
は、各々独立に、水素原子;フッ素原子;炭素数1~3のアルキル基;炭素数1~3のアルキルオキシ基;炭素数6~10のアリールオキシ基;炭素数1~3のフルオロアルキル基;炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基;又はフッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基、フルオロフェニル基、水酸基、若しくはシアノ基で置換されてもよいフェニル基を表す。)を表す。R
4
は、水素原子、重水素原子、又はフッ素原子を表す。W
1
及びW
2
は、各々独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、フェニル基、2-チエニル基又は3-チエニル基を表す。nは1~3の整数を表す。]
【請求項2】
波長変換材が、樹脂材料で被覆されている請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
式(1)で表される波長変換材において、W
1
及びW
2
が炭素数1~6のペルフルオロアルキル基である、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
式(1)で表される波長変換材において、R
4
が水素原子である、請求項1~3のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項5】
式(1)で表される波長変換材において、nが2である、請求項1~4のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項6】
波長変換材が、以下の化合物である、請求項1~5のいずれかに記載のポリマー組成物。
【化3】
【請求項7】
層状化合物が、ハイドロタルサイト、デソーテルサイト、アイオワイト、パイロオーライト、スティックタイト、タコバイト、モトコレアイト、クロロマガルミナイト、グリーンラスト1、ベルチェリン、リーブサイト、ホネサイト、イヤードライト、メイキセネライトからなる群より得られる1種以上である請求項1~6のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項8】
ポリマーが、エチレン・酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、ポリプロピレン又はエチレン・プロピレン共重合体である請求項1~7のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のポリマーの組成物よりなる層を少なくとも1層含むフィルム。
【請求項10】
フィルムが、波長変換フィルムである請求項9に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムとした際に波長変換機能が高く、耐光性に優れるポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用ハウス内で植物を栽培する施設栽培では、露地栽培に比べ、植物の収穫量、品質ともに飛躍的に向上するための施策が行われている。例えば、植物の収穫量および品質のさらなる向上、収穫時期の調整、栽培期間の短縮等を目的に、農業用ハウスに用いられる農業用フィルムによって、植物に有害な紫外線を光合成に有用な青色系の光に変換したり、光合成の効率の低い緑色~黄色系の光を光合成の効率の高い橙色~赤色系の光に変換したりする試みがなされている。
【0003】
特定の波長の光を異なる波長の光に変換する機能(波長変換機能)を有する波長変換フィルムとしては、例えば、有機系紫外線吸収剤を含む樹脂フィルムと、波長変換材として2種類の蛍光色素を含む樹脂フィルムとを積層した農業用波長変換資材(例えば特許文献1参照)が提案されている。しかしながら、特許文献1では、長期間にわたって使用した場合、波長変換機能が著しく低下するといった課題がある。
【0004】
近年、強発光性希土類金属錯体として、β-ジケトナト配位子とホスフィンオキシド配位子をもつユウロピウム錯体(特許文献2及び3参照)が波長変換材として報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-170865号公報
【文献】RUB1453860
【文献】特開2003-81986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
農業フィルムとしては、ポリマー樹脂が良く使用されている。ポリマー樹脂の中でもエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)が良く使用されている。波長変換材をEVAの農業フィルムに用いる際にフィルムとするには、EVAから生じる酸により波長変換材の耐久性が低下するという課題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、フィルムとした際に波長変換機能に優れ、かつ耐光性に優れたポリマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、波長変換材、層状化合物及びポリマーを含むポリマー組成物をフィルムとすると波長変換機能に優れ、かつ耐光性に優れたフィルムとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の要旨を有するものである。
(1)
波長変換材、層状化合物及びポリマーを含むことを特徴とするポリマー組成物。
(2)
波長変換材が、樹脂材料で被覆されている(1)に記載のポリマー組成物。
(3)
波長変換材が、ユウロピウム錯体である(1)又は(2)に記載のポリマー組成物。
(4)
波長変換材が、下記式(1)で表される(1)~(3)のいずれかに記載のポリマー組成物。
【0010】
【0011】
[式中、R1及びR2は各々独立に炭素数3~10の環状アルキル基であり、R3は、炭素数3~10の環状アルキル基又は式(2a)で表されるフェニル基
【0012】
【0013】
(式中、X1、X2、X3、X4、及びX5は、各々独立に、水素原子;フッ素原子;炭素数1~3のアルキル基;炭素数1~3のアルキルオキシ基;炭素数6~10のアリールオキシ基;炭素数1~3のフルオロアルキル基;炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基;又はフッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基、フルオロフェニル基、水酸基、若しくはシアノ基で置換されてもよいフェニル基を表す。)を表す。R4は、水素原子、重水素原子、又はフッ素原子を表す。W1及びW2は、各々独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、フェニル基、2-チエニル基又は3-チエニル基を表す。nは1~3の整数を表す。]
(5)
波長変換材が、下記式(1)で表される(1)~(3)のいずれかに記載のポリマー組成物。
【0014】
【0015】
[式中、R1は炭素数3~10の環状アルキル基であり、R2及びR3は、式(2a)で表されるフェニル基
【0016】
【0017】
(式中、X1、X2、X3、X4、及びX5は、各々独立に、水素原子;フッ素原子;炭素数1~3のアルキル基;炭素数1~3のアルキルオキシ基;炭素数6~10のアリールオキシ基;炭素数1~3のフルオロアルキル基;炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基;又はフッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基、フルオロフェニル基、水酸基、若しくはシアノ基で置換されてもよいフェニル基を表す。)を表す。但し、R1がシクロヘキシル基、且つ、R2、R3がフェニル基である場合を除く。R4は、水素原子、重水素原子、又はフッ素原子を表す。W1及びW2は、各々独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、フェニル基、2-チエニル基又は3-チエニル基を表す。nは1~3の整数を表す。]
(6)
波長変換材が、式(6)で表される(1)~(3)のいずれかに記載のポリマー組成物。
【0018】
【0019】
{式中、Z4、Z5及びZ6は各々独立に、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基、フッ素原子で置換されていてもよいナフチル基、フッ素原子で置換されていてもよいピリジル基、又は式(7)で表される基
【0020】
【0021】
[式中、R5、R7及びR9は各々独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基、フッ素原子で置換されていてもよいフェニル基、水酸基、又はシアノ基を表す。R6及びR8は各々独立に、水素原子又はフッ素原子を表す。]を表す。但し、Z4、Z5及びZ6は同時に水素原子となりえない。W3及びW4は各々独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、フェニル基、2-チエニル基又は3-チエニル基を表す。}
(7)
層状化合物が、ハイドロタルサイト、デソーテルサイト、アイオワイト、パイロオーライト、スティックタイト、タコバイト、モトコレアイト、クロロマガルミナイト、グリーンラスト1、ベルチェリン、リーブサイト、ホネサイト、イヤードライト、メイキセネライトからなる群より得られる1種以上である(1)~(6)のいずれかに記載のポリマー組成物。
(8)
ポリマーが、エチレン・酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、ポリプロピレン又はエチレン・プロピレン共重合体である(1)~(7)のいずれかに記載のポリマー組成物。
(9)
(1)~(8)のいずれかに記載のポリマーの組成物よりなる層を少なくとも1層含むフィルム。
(10)
フィルムが、波長変換フィルムである(9)に記載のフィルム。
【発明の効果】
【0022】
本発明のポリマー組成物は、フィルムとした際に波長変換機能が高く、耐光性に優れるため、波長変換フィルムに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明のポリマー組成物について、本発明の一例を示しながら詳述する。
【0024】
最初に波長変換材について説明する。
【0025】
本発明の波長変換材としては、有機化合物、無機化合物、希土類錯体が挙げられる。
【0026】
前記有機化合物としては、シアニン系色素、ピリジン系色素、ローダミン系色素等の有機色素、BASF社製のLumogen F Violet570、同Yellow083、同Orange240、同Red300、田岡化学工業株式会社製の塩基性染料Rhodamine B、住化ファインケム株式会社製のSumiplast Yellow FL7G、Bayer社製のMACROLEXFluorescent Red G、同Yellow10GN等の有機蛍光体が挙げられる。
【0027】
前記無機化合物としては、Y2O2S:Eu、Mg、Tiの蛍光粒子、Er3+イオンを含有した酸化フッ化物系結晶化ガラス、酸化ストロンチウムと酸化アルミニウムからなる化合物に希土類元素のユウロピウム(Eu)とジスプロシウム(Dy)を添加したSrAl2O4:Eu、Dyや、Sr4Al14O25:Eu、Dyや、CaAl2O4:Eu、Dyや、ZnS:Cu等の無機蛍光材料が挙げられる。
【0028】
前記希土類金属錯体としては、ユウロピウム錯体、サマリウム錯体、テルビウム錯体などが挙げられる。
【0029】
これらのなかでも波長変換材としては、希土類錯体が好ましく、特にユウロピウム錯体が好ましい。
【0030】
波長変換材として特に好ましく用いられるユウロピウム錯体としては、(D-1)~(D-31)で例示するユウロピウム錯体、β-ジケトナトと、リン原子上に特定の置換基を導入したホスフィンオキシドとを配位子とするユウロピウム錯体、β-ジケトナトとトリフェニルホスフィンオキシド誘導体を配位子とするユウロピウム錯体、β-ジケトナトと含窒素環を配位子とするユウロピウム錯体等が挙げられ、その中でもβ-ジケトナトと、リン原子上に特定の置換基を導入したホスフィンオキシドとを配位子とするユウロピウム錯体又はβ-ジケトナトとトリフェニルホスフィンオキシド誘導体を配位子とするユウロピウム錯体(ユウロピウム錯体C)が好ましい。
【0031】
なお、β-ジケトナトと、リン原子上に特定の置換基を導入したホスフィンオキシドとを配位子とするユウロピウム錯体は、R1及びR2が環状アルキル基を有するユウロピウム錯体(ユウロピウム錯体A)及びR1のみが環状アルキル基を有するユウロピウム錯体(ユウロピウム錯体B)である。
【0032】
【0033】
【0034】
ユウロピウム錯体Aは、下記式(1)で表されるユウロピウム錯体である。
【0035】
【0036】
[式中、R1及びR2は各々独立に炭素数3~10の環状アルキル基であり、R3は、炭素数3~10の環状アルキル基又は式(2a)で表されるフェニル基
【0037】
【0038】
(式中、X1、X2、X3、X4、及びX5は、各々独立に、水素原子;フッ素原子;炭素数1~3のアルキル基;炭素数1~3のアルキルオキシ基;炭素数6~10のアリールオキシ基;炭素数1~3のフルオロアルキル基;炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基;又はフッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基、フルオロフェニル基、水酸基、若しくはシアノ基で置換されてもよいフェニル基を表す。)を表す。R4は、水素原子、重水素原子、又はフッ素原子を表す。W1及びW2は、各々独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、フェニル基、2-チエニル基又は3-チエニル基を表す。nは1~3の整数を表す。]
ユウロピウム錯体Bは、下記式(1)で表されるユウロピウム錯体である。
【0039】
【0040】
[式中、R1は炭素数3~10の環状アルキル基であり、R2及びR3は、式(2a)で表されるフェニル基
【0041】
【0042】
(式中、X1、X2、X3、X4、及びX5は、各々独立に、水素原子;フッ素原子;炭素数1~3のアルキル基;炭素数1~3のアルキルオキシ基;炭素数6~10のアリールオキシ基;炭素数1~3のフルオロアルキル基;炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基;又はフッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基、フルオロフェニル基、水酸基、若しくはシアノ基で置換されてもよいフェニル基を表す。)を表す。但し、R1がシクロヘキシル基、且つ、R2、R3がフェニル基である場合を除く。R4は、水素原子、重水素原子、又はフッ素原子を表す。W1及びW2は、各々独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、フェニル基、2-チエニル基又は3-チエニル基を表す。nは1~3の整数を表す。]
ユウロピウム錯体Cは、下記式(2)で表されるユウロピウム錯体である。
【0043】
【0044】
{式中、Z4、Z5及びZ6は各々独立に、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基、フッ素原子で置換されていてもよいナフチル基、フッ素原子で置換されていてもよいピリジル基、又は式(7)で表される基
【0045】
【0046】
[式中、R5、R7及びR9は各々独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基、フッ素原子で置換されていてもよいフェニル基、水酸基、又はシアノ基を表す。R6及びR8は各々独立に、水素原子又はフッ素原子を表す。]を表す。但し、Z4、Z5及びZ6は同時に水素原子となりえない。W3及びW4は各々独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、フェニル基、2-チエニル基又は3-チエニル基を表す。}
最初にユウロピウム錯体A,Bについて詳細に説明する。
【0047】
ユウロピウム錯体A,BにおけるR1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Z1、Z2、Z3、n、W1及びW2の定義は下記のとおりである。
【0048】
ユウロピウム錯体A,Bの式(1)のR1で表される炭素数3~10の環状アルキル基及びユウロピウム錯体Bの式(1)のR2及びでR3表される炭素数3~10の環状アルキル基としては、ユウロピウム錯体A,Bを用いたポリマー組成物の耐光性が良い点で、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基又はシクロデカニル基等が好ましく、特に安価な点でシクロペンチル基又はシクロヘキシル基が好ましい。
【0049】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2a)のX1、X2、X3、X4及びX5で表される炭素数1~3のアルキル基としては直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を例示できる。
【0050】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2a)のX1、X2、X3、X4及びX5で表される炭素数1~3のアルキルオキシ基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでも良く、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、1-メチルエチルオキシ基を例示できる。
【0051】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2a)のX1、X2、X3、X4及びX5で表される炭素数6~10のアリールオキシ基としては、具体的には、フェニルオキシ基、2-メチルフェニルオキシ基、3-メチルフェニルオキシ基、4-メチルフェニルオキシ基、2,3-ジメチルフェニルオキシ基、2,4-ジメチルフェニルオキシ基、2,5-ジメチルフェニルオキシ基、2,6-ジメチルフェニルオキシ基、3,4-ジメチルフェニルオキシ基、3,5-ジメチルフェニルオキシ基、2,3,4-トリメチルフェニルオキシ基、2,3,5-トリメチルフェニルオキシ基、2,3,6-トリメチルフェニルオキシ基、2,4,5-トリメチルフェニルオキシ基、2,4,6-トリメチルフェニルオキシ基、3,4,5-トリメチルフェニルオキシ基、2,3,4,5-テトラメチルフェニルオキシ基、2,3,4,6-テトラメチルフェニルオキシ基、2,3,5,6-テトラメチルフェニルオキシ基、2-エチルフェニルオキシ基、3-エチルフェニルオキシ基、4-エチルフェニルオキシ基、2,3-ジエチルフェニルオキシ基、2,4-ジエチルフェニルオキシ基、2,5-ジエチルフェニルオキシ基、2,6-ジエチルフェニルオキシ基、3,4-ジエチルフェニルオキシ基、3,5-ジエチルフェニルオキシ基、2-プロピルフェニルオキシ基、3-プロピルフェニルオキシ基、4-プロピルフェニルオキシ基、2-イソプロピルフェニルオキシ基、3-イソプロピルフェニルオキシ基、4-イソプロピルフェニルオキシ基、2-シクロプロピルフェニルオキシ基、3-シクロプロピルフェニルオキシ基、4-シクロプロピルフェニルオキシ基、2-ブチルフェニルオキシ基、3-ブチルフェニルオキシ基、4-ブチルフェニルオキシ基、2-(1-メチルプロピル)フェニルオキシ基、3-(1-メチルプロピル)フェニルオキシ基、4-(1-メチルプロピル)フェニルオキシ基、2-(2-メチルプロピル)フェニルオキシ基、3-(2-メチルプロピル)フェニルオキシ基、4-(2-メチルプロピル)フェニルオキシ基、2-シクロブチルフェニルオキシ基、3-シクロブチルフェニルオキシ基、4-シクロブチルフェニルオキシ基等を例示できる。
【0052】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2a)のX1、X2、X3、X4及びX5で表される炭素数1~3のフルオロアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでも良く、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、1,1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基等を例示できる。
【0053】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2a)のX1、X2、X3、X4及びX5で表される炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでも良く、トリフルオロメチルオキシ基、ジフルオロメチルオキシ基、ペルフルオロエチルオキシ基、2,2,2-トリフルオロエチルオキシ基、1,1-ジフルオロエチルオキシ基、2,2-ジフルオロエチルオキシ基、ペルフルオロプロピルオキシ基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルオキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルオキシ基、3,3,3-トリフルオロプロピルオキシ基、1,1-ジフルオロプロピルオキシ基、1,1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イルオキシ基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルオキシ基等を例示できる。
【0054】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2a)のX1、X2、X3、X4及びX5の一つ以上がフェニル基である場合、該フェニル基は、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基、炭素数6~10のアリールオキシ基、フルオロフェニル基、水酸基又はシアノ基で置換されていてもよく、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基、フルオロフェニル基、水酸基及びシアノ基からなる群の少なくとも1種以上で置換されたフェニル基(以下、「置換フェニル基」ともいう。)である場合、置換フェニル基として、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-プロピルフェニル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,6-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、4-(イソプロピルオキシ)フェニル基、2,6-ジ(イソプロピルオキシ)フェニル基、2-フェノキシフェニル基、3-フェノキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基、2-(トリフルオロメチル)フェニル基、3-(トリフルオロメチル)フェニル基、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2-(トリフルオロメチルオキシ)フェニル基、4-(トリフルオロメチルオキシ)フェニル基、2’-フルオロビフェニル-2-イル基、4’-フルオロビフェニル-2-イル基、4’-フルオロビフェニル-4-イル基、3’,5’-ジフルオロビフェニル-2-イル基、2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基及び4-ヒドロキシフェニル基、2-シアノフェニル基、3-シアノフェニル基、4-シアノフェニル基等を例示できる。
【0055】
ユウロピウム錯体A、BのR3における式(2a)で表されるフェニル基の中でも、X1、X2及びX3が各々式独立に、水素原子、メチル基、又は式(2b)であることが好ましい
【0056】
【0057】
[式中、Z1、Z2及びZ3が、各々独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよいフェニル基である。]で表されるフェニル基であり、X4及びX5は、各々独立に、水素原子又はメチル基である]
ユウロピウム錯体A,Bの式(2b)のZ1、Z2及びZ3で表される炭素数1~3のアルキル基としては、X1、X2、X3、X4及びX5と同様の炭素数1~3のアルキル基を例示できる。
【0058】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2b)のZ1、Z2及びZ3で表される炭素数1~3のアルキルオキシ基としては、X1、X2、X3、X4及びX5と同様の炭素数1~3のアルキルオキシ基を例示できる。
【0059】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2b)のZ1、Z2及びZ3で表される炭素数6~10のアリールオキシ基としては、X1、X2、X3、X4及びX5と同様の炭素数6~10のアリールオキシ基を例示できる。
【0060】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2b)のZ1、Z2及びZ3で表される炭素数1~3のフルオロアルキル基としては、X1、X2、X3、X4及びX5と同様の炭素数1~3のフルオロアルキル基を例示できる。
【0061】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2b)のZ1、Z2及びZ3で表される炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基としては、X1、X2、X3、X4及びX5と同様の炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基を例示できる。
【0062】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2b)のZ1、Z2及びZ3で表されるフッ素原子で置換されていてもよいフェニル基としては、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、ペルフルオロフェニル基等を例示できる。
【0063】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2b)のZ1、Z2及びZ3で表される置換基として、用いたポリマー組成物の耐光性が良い点で、水素原子、フッ素原子、メチル基、メトキシ基、イソプロピルオキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基が好ましい。
【0064】
ユウロピウム錯体A,Bの式(2a)のX1、X2、X3、X4及びX5で表される置換基として、用いたポリマー組成物の耐光性が良い点で、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、メトキシ基、イソプロピルオキシ基、炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基で置換されていてもよいフェニル基、フッ素原子で置換されていても良いフェニル基、直鎖状フルオロアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、直鎖状フルオロアルキルオキシ基で置換されていてもよいフェニル基が好ましく、水素原子、メチル基、イソプロピル基、メトキシ基、イソプロピルオキシ基、2,6-ジメトキシフェニル基、2,6-ビス(イソプロポキシ)フェニル基、4-フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、又は4-トリフルオロメチルオキシフェニル基又はフェニル基が更に好ましい。
【0065】
ユウロピウム錯体Aの式(1)のR3で表される置換基として、用いたポリマー組成物の耐光性が良い点で、炭素数3~10の環状第2級アルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいビフェニリル基、炭素数1~3のフルオロアルキル基で置換されていてもよいビフェニリル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基で置換されていてもよいビフェニリル基、フッ素原子で置換されていてもよいフェニル基、直鎖状フルオロアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基で置換されていてもよいフェニル基が好ましく、シクロヘキシル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、2-ビフェニリル基、2’,6’-ジメトキシビフェニル-2-イル基、2’,6’-ビス(イソプロポキシ)ビフェニル-2-イル基、2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル-2-イル基、4’-フルオロビフェニル-2-イル基、4’-(トリフルオロメチル)ビフェニル-2-イル基、又は4’-(トリフルオロメチルオキシ)ビフェニル-2-イル基が更に好ましい。
【0066】
ユウロピウム錯体Bの式(1)のR2及びR3で表される置換基として、用いたポリマー組成物の耐光性が良い点で、フッ素原子で置換されていてもよいビフェニリル基、炭素数1~3のフルオロアルキル基で置換されていてもよいビフェニリル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基で置換されていてもよいビフェニリル基、フッ素原子で置換されていてもよいフェニル基、直鎖状フルオロアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基で置換されていてもよいフェニル基が好ましく、フェニル基、2-メチルフェニル基、2-ビフェニリル基、2’,6’-ジメトキシビフェニル-2-イル基、2’,6’-ビス(イソプロポキシ)ビフェニル-2-イル基、2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル-2-イル基、4’-フルオロビフェニル-2-イル基、4’-(トリフルオロメチル)ビフェニル-2-イル基、又は4’-(トリフルオロメチルオキシ)ビフェニル-2-イル基が更に好ましい。
【0067】
ユウロピウム錯体A,Bの式(1)のR4は、水素原子、重水素原子又はフッ素原子を表し、入手が容易な点で、水素原子が好ましい。
【0068】
ユウロピウム錯体A,Bの式(1)のnは、1~3の整数を表し、ユウロピウム錯体A,Bを用いたポリマー組成物の耐光性が良い点で、nが2であることが好ましい。
【0069】
ユウロピウム錯体A,Bの式(1)のW1及びW2で表される炭素数1~6のアルキル基としては直鎖状、分岐状又は環状のいずれでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、1-シクロブチルエチル基、2-シクロブチルエチル基などを例示できる。
【0070】
ユウロピウム錯体A,Bの式(1)のW1及びW2で表される炭素数1~6のフルオロアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、1,1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-メチル-3,3,3-トリフルオロプロピル基、ペルフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)プロピル基、1,2,2,3,3,4,4,4-オクタフルオロ-1-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,3,3,4,4,4-オクタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,2,3,4,4,4-オクタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1,1-ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、1,2,2,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-1-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,2,3,3,4,5,5,5-デカフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ペンチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1,1-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1,2-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-3,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、ペルフルオロシクロペンチルメチル基等を例示できる。
【0071】
ユウロピウム錯体A,Bの式(1)のW1及びW2で表される置換基として、用いたポリマー組成物の耐光性が良い点で、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、及びペルフルオロプロピル基が更に好ましい。
【0072】
ユウロピウム錯体A,Bにおいて、安価に製造できる点でユウロピウム錯体Aが好ましい。
【0073】
ユウロピウム錯体Aとしては、R1及びR2いずれもシクロペンチル基又はシクロヘキシル基が好ましく、特に、R1、R2及びR3のいずれもシクロペンチル基又はシクロヘキシル基が好ましい。
【0074】
ユウロピウム錯体Aとしては、具体的には次の(1-1)~(1-21)に示す構造を例示できる。
【0075】
【0076】
(1-1)~(1-21)で表される化合物のうち、ユウロピウム錯体Aとしては耐光性が良い点で(1-1)~(1-8)が好ましく、特に(1-8)が好ましい。
【0077】
ユウロピウム錯体A、Bの製造方法については、WO2019-103155号公報に記載の方法により製造することができる。
【0078】
次に、ユウロピウム錯体Cについて説明する。
【0079】
式(6)で表されるユウロピウム錯体CにおけるZ4、Z5、Z6、R5、R6、R7、R8、R9、W3及びW4の定義は、下記のとおりである。
【0080】
式(6)のZ4、Z5及びZ6で表される炭素数1~3のアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでも良く、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を例示できる。
【0081】
式(6)のZ4、Z5及びZ6で表される炭素数1~3のアルキルオキシ基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでも良く、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、1-メチルエチルオキシ基を例示できる。
【0082】
式(6)のZ4、Z5及びZ6で表される炭素数1~3のフルオロアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでも良く、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、1,1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基等を例示できる。
【0083】
式(6)のZ4、Z5及びZ6で表される炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでも良く、トリフルオロメチルオキシ基、ジフルオロメチルオキシ基、ペルフルオロエチルオキシ基、2,2,2-トリフルオロエチルオキシ基、1,1-ジフルオロエチルオキシ基、2,2-ジフルオロエチルオキシ基、ペルフルオロプロピルオキシ基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルオキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルオキシ基、3,3,3-トリフルオロプロピルオキシ基、1,1-ジフルオロプロピルオキシ基、1,1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピルオキシ基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルオキシ基等を例示できる。
【0084】
式(6)のZ4、Z5及びZ6で表されるフッ素原子で置換されていてもよいナフチル基としては、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-フルオロナフタレン-1-イル基、4-フルオロナフタレン-1-イル基、5-フルオロナフタレン-1-イル基、1-フルオロナフタレン-2-イル基、4-フルオロナフタレン-2-イル基、6-フルオロナフタレン-2-イル基、1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロナフタレン-2-イル基等を例示できる。
【0085】
式(6)のZ4、Z5及びZ6で表されるフッ素原子で置換されていてもよいピリジル基としては、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-フルオロピリジン-6-イル基、3,5-ジフルオロピリジン-6-イル基、5-フルオロピリジン-6-イル基、4-フルオロピリジン-6-イル基、3-フルオロピリジン-6-イル基、2-フルオロピリジン-5-イル基、2,3-ジフルオロピリジン-5-イル基、3-フルオロピリジン-5-イル基、4-フルオロピリジン-5-イル基、2-フルオロピリジン-3-イル基、2-フルオロピリジン-4-イル基、2,3,5,6-テトラフルオロピリジン-4-イル基、3-フルオロピリジン-4-イル基、3,5-ジフルオロピリジン-4-イル基、2,6-ジフルオロピリジン-3-イル基、2,5-ジフルオロピリジン-3-イル基、2,5-ジフルオロピリジン-4-イル基等を例示できる。
【0086】
式(7)のR5、R7及びR9で表される炭素数1~3のアルキル基としては、Z4、Z5及びZ6と同様の炭素数1~3のアルキル基を例示できる。
【0087】
式(7)のR5、R7及びR9で表される炭素数1~3のアルキルオキシ基としては、Z4、Z5及びZ6と同様の炭素数1~3のアルキルオキシ基を例示できる。
【0088】
式(7)のR5、R7及びR9で表される炭素数1~3のフルオロアルキル基としては、Z4、Z5及びZ6と同様の炭素数1~3のフルオロアルキル基を例示できる。
【0089】
式(7)のR5、R7及びR9で表される炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基としては、Z4、Z5及びZ6と同様の炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基を例示できる。
【0090】
式(7)のR5、R7及びR9で表されるフッ素原子で置換されていてもよいフェニル基としては、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基、2-フルオロ-1,1’-ビフェニル-4-イル基、3-フルオロ-1,1’-ビフェニル-4-イル基、3’-フルオロ-1,1’-ビフェニル-4-イル基、4’-フルオロ-1,1’-ビフェニル-4-イル基、3’,4’,5’-トリフルオロ-1,1’-ビフェニル-4-イル基等を例示できる。
【0091】
式(7)のR5、R7及びR9で表される置換基として、用いたポリマー組成物の耐光性が良い点で水素原子、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキルオキシ基、又はフェニル基が好ましい。水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメチルオキシ基が更に好ましい。式(7)のR6及びR8は、入手容易な点で水素原子が好ましい。
【0092】
式(6)のZ4、Z5及びZ6で表される置換基として、用いたポリマー組成物の耐光性が良い点で直鎖状アルキル基、直鎖状アルキルオキシ基、ビフェニリル基、フッ素原子で置換されても良いフェニル基、直鎖状フルオロアルキル基で置換されてもよいフェニル基、又は直鎖状フルオロアルキルオキシ基で置換されてもよいフェニル基が好ましく、メチル基、メチルオキシ基、4-フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、又は4-トリフルオロメチルオキシフェニル基が更に好ましい。
【0093】
式(6)のW3及びW4で表される炭素数1~6のアルキル基としては、式(2a)のW1及びW2と同様の炭素数1~6のアルキル基を例示できる。
【0094】
式(6)のW3及びW4で表される炭素数1~6のフルオロアルキル基としては、式(2a)のW1及びW2と同様の炭素数1~6のフルオロアルキル基を例示できる。
【0095】
式(6)のW3及びW4で表される置換基として、用いたポリマー組成物の耐光性が良い点で、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、及びペルフルオロプロピル基が更に好ましい。
【0096】
ユウロピウム錯体Cとしては、具体的には次の(6-1)~(6-23)に示す構造を例示できる。
【0097】
【0098】
(6-1)~(6-23)で表される化合物のうち、ユウロピウム錯体Cとしては耐光性が良い点で(6-1)~(6-7)、(6-11)~(6-18)、(6-22)、(6-23)が好ましく、(6-1)~(6-7)、(6-22)、(6-23)が更に好ましい。
【0099】
ユウロピウム錯体Cの製造方法については、WO2019-103155号公報に記載の方法により製造することができる。
【0100】
本発明の波長変換材は、より耐光性にすぐれたポリマー組成物とすることができることから、樹脂材料で被覆することが好ましい。
【0101】
該樹脂材料として、例えばポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリn-プロピルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリn-ブチルメタクリレート、ポリsec-ブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリtert-ブチルメタクリレート、含フッ素ポリメチルメタクリレート、含フッ素ポリエチルメタクリレート、含フッ素ポリn-プロピルメタクリレート、含フッ素ポリイソプロピルメタクリレート、含フッ素ポリn-ブチルメタクリレート、含フッ素ポリsec-ブチルメタクリレート、含フッ素ポリイソブチルメタクリレート、含フッ素ポリtert-ブチルメタクリレート等のポリメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリn-プロピルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリn-ブチルアクリレート、ポリsec-ブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリtert-ブチルアクリレート、含フッ素ポリメチルアクリレート、含フッ素ポリエチルアクリレート、含フッ素ポリn-プロピルアクリレート、含フッ素ポリイソプロピルアクリレート、含フッ素ポリn-ブチルアクリレート、含フッ素ポリsec-ブチルアクリレート、含フッ素ポリイソブチルアクリレート、含フッ素ポリtert-ブチルアクリレート等のポリアクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、含フッ素ポリエチレン、含フッ素ポリプロピレン、含フッ素ポリブテン等のポリオレフィン、ポリビニルエーテル、含フッ素ポリビニルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、又はそれらの共重合体、セルロース、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネイト、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン、ナフィオン、石油樹脂、ロジン、ケイ素樹脂などが例示される。
【0102】
その中でも、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリn-プロピルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリn-ブチルメタクリレート、ポリsec-ブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリtert-ブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリn-プロピルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリn-ブチルアクリレート、ポリsec-ブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリtert-ブチルアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル又はそれらの共重合体等が好ましい。特に好ましくは、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリn-プロピルメタクリレート、ポリn-ブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリn-プロピルアクリレート、ポリn-ブチルアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル又はそれらの共重合体である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0103】
これら樹脂材料の中でも特に好ましく用いられる、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリn-プロピルメタクリレート、ポリn-ブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリn-プロピルアクリレート、ポリn-ブチルアクリレート、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル又はそれらの共重合体は、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、スチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルを重合開始剤存在下、50~80℃で、3~8時間水中で懸濁重合を行うことにより得ることができる。
【0104】
上記で用いる重合開始剤としてはこれらの樹脂材料を重合するときに通常用いるものでよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物が挙げられる。
【0105】
懸濁重合の際には、得られるポリマー粒子の凝集防止のために、分散安定剤を添加することが好ましく、該分散安定剤としては通常用いるものでよく、例えば塩基性リン酸カルシウム,水酸化アルミニウム,炭酸マグネシウムなどの水難溶性無機微粒子やポリアクリル酸塩,ポリメタクリル酸塩,ポリアクリルアミド,ポリビニルアルコール,セルロース誘導体等が挙げられる。
【0106】
懸濁重合の際には、ゲル化物の抑制を防止するために、重合調整剤を添加することが好ましい。該重合調整剤としては通常用いるものでよく、例えば4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のニトロキシル化合物、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩、ジ-t-ブチルニトロオキシド等の窒素酸化物等が挙げられる。
【0107】
層状化合物としては、例えばハイドロタルサイト、リザーダイト、バーチェリン、アメサイト、クロンステダイト、ネポーアイト、ケリアイト、フレイポナイト、ブリンドリアイト、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、オーディナイト、タルク、ウィレムサイト、ケロライト、ピメライト、パイロフィライト、フェリパイロフィライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、スインホルダイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ジオクタヘドラルバーミキュライト、バイオタイト、フロゴパイト、アナイト、イーストナイト、シデロフィライト、テトラフェリアナイト、レピドライト、ポリリシオナイト、ムスコバイト、セラドナイト、フェロセラドナイト、フェロアルミノセラドナイト、アルミノセラドナイト、トベライト、パラゴナイト、イライト、グラウコナイト、ブラマーライト、ウォンネサイト、クリントナイト、キノシタライト、ビティライト、アナンダイト、マーガライト、クリノクロア、シャモサイト、ペナンタイト、ニマイト、ベイリクロア、ドンバサイト、クッケアイト、スドーアイト、コレンサイト、ハイドロバイオタイト、アリエッタイト、クルケアイト、レクトライト、トスダイト、ドジライト、ルニジャンライト、サライオタイト、デソーテルサイト、アイオワイト、パイロオーライト、スティックタイト、タコバイト、モトコレアイト、クロロマガルミナイト、グリーンラスト1、ベルチェリン、リーブサイト、ホネサイト、イヤードライト、メイキセネライト等が挙げられ、ハイドロタルサイト、デソーテルサイト、アイオワイト、パイロオーライト、スティックタイト、タコバイト、モトコレアイト、クロロマガルミナイト、グリーンラスト1、ベルチェリン、リーブサイト、ホネサイト、イヤードライト、メイキセネライトが好ましく、耐光性向上の効果が高い為、特にハイドロタルサイトが好ましい。
【0108】
ポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリエステル等があげられる。
【0109】
ポリオレフィンとしては、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル等が挙げられ、その中でもエチレン・酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、ポリプロピレン又はエチレン・プロピレン共重合体等が好ましい。
【0110】
ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート等があげられる。
【0111】
本発明にて用いられる波長変換材、層状化合物、ポリマーの組成比率は、波長変換材が0.001~80wt%、特に0.01~20wt%が好ましく、層状化合物が0.01~30wt%、特に0.1~20wt%が好ましく、ポリマーは20~99.989wt%、特に80~99.989wt%が好ましい。
【0112】
本発明のポリマー組成物は、酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤等、通常ポリマーに使用される添加剤、農業用ハウス材やトンネル材に使用される保温剤、防霧剤などを含有したものでもかまわない。保温剤としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が例示され、防霧剤としては、フッ素化多価アルコール類やフッ素化ポリエステルオリゴマー等のフッ素系化合物等が例示される。
【0113】
本発明のポリレオフィン組成物の製造方法は、波長変換材、ポリマーを混合することにより製造することができ、その際の混合する順番は特に制約はない。混合雰囲気は通常空気中で行うが、不活性雰囲気中で行ってもよい。
【0114】
ポリマー組成物は、該組成物よりなる層を少なくとも1層含むフィルムとすることができる。
フィルムは、インフレーション成形機、Tダイキャスト成形機、カレンダー成形機、プレス成形機等を用いて得ることが可能である。インフレーション成形やTダイキャスト成形においては共押出法により、またこれら成形法により得られたフィルムを、サンドウィッチラミネート法、ドライラミネート法、サーマルラミネート法等の貼り合わせにより、多層フィルムとすることも可能である。
【0115】
フィルムの厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、柔軟性に優れ、破損などの問題が小さいことから、1μm~1mmの厚みであることが好ましい。
【0116】
ポリマー組成物よりなる層を少なくとも1層含むフィルムに用いる他のフィルムとしては、LDPE、EVA、HDPE等のフィルムが挙げられる。なお、ポリマー組成物よりなる層を少なくとも1層含むフィルムとは、本発明のポリマー組成物よりなるフィルムの他に前記フィルムを1層以上含むフィルムである。
【0117】
フィルムの順序は、フィルムが2層の場合、本発明のポリマー組成物よりなるフィルムは、外層、内層のいずれでもよく、好ましくは内層であり、3層以上の場合は、本発明のポリマー組成物よりなるフィルムは、外層、中間層、内層のいずれでもよく、好ましくは中間層又は内層である。
【0118】
ポリマー組成物は、該組成物よりなる層を少なくとも1層含むフィルムは、波長変換機能が高く、耐光性に優れるため、波長変換フィルムとして有用である。該波長変換フィルムとしては太陽電池用フィルム、農業用フィルム、LED蛍光体材料、セキュリティインク材料等がある。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】実施例1及び比較例1で得たフィルムの光性試験により得られたUV光照射後の発光強度残存率の結果
【実施例】
【0120】
以下、実施例、比較例及び評価実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。なお、化学式においてシクロヘキシル基をCyと表す。
【0121】
ユウロピウム錯体の同定には、以下の分析方法を用いた。
【0122】
1H-NMR、19F-NMR及び31P-NMRの測定には、BRUKER社製 ULTRASHIELD PLUS AVANCE III(400MHz、376MHz及び162MHz)とASCEND AVANCE III HD(400MHz、376MHz及び162MHz)を用いた。1H-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。19F-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)及び重アセトン(Acetone-d6)を測定溶媒として測定した。31P-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)を用いて測定した。
【0123】
耐光性は以下に示す方法で評価した。
【0124】
耐光性評価は615nm付近の最大発光波長における発光強度を分光光度計(日本分光社製、FP-6500)で測定した。測定条件は励起側スリット5nm、蛍光側スリット5nm、励起光波長350nmとした。次いで、室温において、UV光照射器(ウシオ電機社製、SP-9)及びレンズを用い、200mW/cm2(365nm)のUV光を所定の時間(0~48時間)照射した。UV光照射後のサンプルの発光強度を分光光度計によって再度測定し、初期状態からの発光強度残存率を下記式より算出し、UV光照射時間をX軸、発光強度残存率をY軸にとり耐光性を評価した。
【0125】
発光強度残存率(%)(I/I0)=(UV光照射後の最大発光波長における発光強度)/(UV照射前の最大発光波長における発光強度)×100
また、試薬類は市販品を用いた。
【0126】
参考例1
【0127】
【0128】
トリシクロヘキシルホスフィン(1.66g,5.9mmol)をジクロロメタン(10mLに溶解し、30%過酸化水素水(3.0mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に水(15mL)を入れ、有機層を分離後、水層にクロロホルム(15mL)を加え、クロロホルム層を分離した。この操作を2回繰り返した。有機層を併せ、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール)により精製することで、トリシクロヘキシルホスフィンオキシドの白色固体を得た(収量1.24g,収率71%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3),δ(ppm):1.94~1.73(m,18H),1.48~1.25(m,15H).31P-NMR(162MHz,CDCl3),δ(ppm):50.0(s)。
【0129】
【0130】
アルゴン雰囲気下、酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として112mg,0.30mmol)と得られたトリシクロヘキシルホスフィンオキシド(178mg,0.60mmol)にジクロロメタン(3.0mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物にHhfaのジクロロメタン溶液(1.8M,0.5mL,0.9mmol)を滴下後、室温で3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、ジクロロメタン/メタノールで再結晶することで、ビス(トリへキシルホスフィンオキシド)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)の白色固体を得た(収量271mg,収率66%)。19F-NMR(376MHz,CDCl3),δ(ppm):-78.0(brs).31P-NMR(162MHz,CDCl3),δ(ppm):-71.7(brs).ESIMS(m/z):1159.3[M-hfa]+。
【0131】
実施例1
分散安定剤としてポリビニルアルコール(4.2g)と重合調整剤として亜硝酸ナトリウム(0.21g,3.0mmol)に純水(208mL)を加えて溶解させた水溶液に、メタクリル酸メチルモノマー(70.0g,700mmol)と重合開始剤として過酸化ベンゾイル(1.4g,5.8mmol)、参考例1で得たビス(トリへキシルホスフィンオキシド)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(70.4mg,0.051mmol)の混合物を加えた。この混合物を65℃で4時間撹拌し、得られた白色懸濁液をろ過し、純水で洗浄後、減圧加熱乾燥(80℃、2時間)しビス(トリへキシルホスフィンオキシド)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)を含有する樹脂材料で被覆された波長変換材(66.1g)を作製した。
【0132】
この波長変換材を5wt%、層状化合物であるハイドロタルサイト(DHT-4A、協和化学工業株式会社製)5wt%、エチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製 商品名:ウルトラセン630)90wt%のポリマー組成物を得、そのポリマー組成物をラボプラストミル4C150((株)東洋精機製作所製)を使用し、温度160℃、回転数60rpm、10分混錬した。その後プレス機(関西ロール社製)で温度160℃、時間:予熱120秒、加圧300秒、冷却300秒で厚さ0.1mmになるようにフィルムを作製した。作製したフィルムをヘーズメーターNDH-20D型(日本電色(株)製)を使用しヘーズを測定した。結果を表1に示した。
【0133】
また耐光性試験により得られたUV光照射後の発光強度残存率の結果を
図1に示した。
【0134】
【0135】
比較例1
層状化合物であるハイドロタルサイトを含まないこと以外は、実施例1と同様にフィルムを作成し、耐光性試験により得られたUV光照射後の発光強度残存率の結果を
図1に示した。
【0136】
図1より層状化合物を含む実施例1は、発光強度残存率が変わらないものの、層状化合物を含まない比較例1は発光強度残存率が低下した。