(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/06 20060101AFI20240312BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B41J11/06
B41J2/01 305
B41J2/01 301
B41J2/01 303
(21)【出願番号】P 2020039121
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】松本 博好
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-010963(JP,A)
【文献】特開2003-096658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/06
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体を支持する被印刷媒体支持部材と、
前記被印刷媒体支持部材に支持されている前記被印刷媒体に対して液体を吐出する液体吐出手段と、を有し、
前記被印刷媒体支持部材は、前記液体吐出手段に対向する面における前記被印刷媒体に接触する接触面積が、前記被印刷媒体に接触しない非接触面積よりも小さ
く、
前記被印刷媒体支持部材は、前記液体吐出手段に対向する面と反対側の面に、前記液体を受ける液体受け部を有し、
前記液体受け部は、前記液体吐出手段と対向する面に傾斜を有し、該傾斜の底部に液体貯留部を具備することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
被印刷媒体を支持する被印刷媒体支持部材と、
前記被印刷媒体支持部材に支持されている前記被印刷媒体に対して液体を吐出する液体吐出手段と、を有し、
前記被印刷媒体支持部材は、前記被印刷媒体を支持する支持部と、前記被印刷媒体に接触しない開口部とで形成され、
前記被印刷媒体支持部材は、前記液体吐出手段に対向する面における前記開口部の面積が前記支持部の面積よりも大き
く、
前記被印刷媒体支持部材は、前記液体吐出手段に対向する面と反対側の面に、前記液体を受ける液体受け部を有し、
前記液体受け部は、前記液体吐出手段と対向する面に傾斜を有し、該傾斜の底部に液体貯留部を具備することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
前記被印刷媒体が、布帛であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記被印刷媒体支持部材の前記支持部は、格子状であることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記開口部の幅寸法が、30mm以下であることを特徴とする請求項2または4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体受け部は、前記被印刷媒体支持部材に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記被印刷媒体支持部材は、前記液体吐出装置に対して着脱可能であることを特徴とする請求項
1~6
のいずれか1つに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記被印刷媒体は、前記液体吐出手段を有するキャリッジの走査移動方向に対して直交する方向に搬送されることを特徴とする請求項
1~7のいずれか1つに記載の液体吐出装
置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一種であるインクジェット方式の印刷装置では、主として液体のインクを液体吐出手段としての液体吐出ヘッドから吐出し、被印刷媒体へ付着・染色させている。そのインクの主成分としては、水、有機溶剤、樹脂の元となるオリゴマーに染料や顔料を加え、安定剤、等の添加物を加えている。付着・染色の対象となる被印刷媒体は、紙以外に最近ではフィルムやプラスチックへの印刷、さらに不織布や布地への印刷もインクジェット方式の印刷装置が採用されている。不織布や布地へインクジェット方式で印刷するプリンタは、インクジェット捺染装置とも呼ばれ、テキスタイルプリンタやガーメントプリンタとして既に知られている(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1を含む今までのテキスタイルプリンタでは、布の種類や厚さによってインクの付着状態が様々である。中でも織りの粗い布や、薄い布に印刷すると、布の表面側に付着したインクが布の裏面側に通り抜けたり、浸透したりして(以下、「裏抜け」ともいう)しまい、布を支持している下地部材であるプラテン(以下、上位概念用語では「被印刷媒体支持部材」という)表面を汚すという問題があった。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、プラテン(被印刷媒体支持部材)表面のインク汚れを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、被印刷媒体を支持する被印刷媒体支持部材と、前記被印刷媒体支持部材に支持されている前記被印刷媒体に対して液体を吐出する液体吐出手段と、を有し、前記被印刷媒体支持部材は、前記液体吐出手段に対向する面における前記被印刷媒体に接触する接触面積が、前記被印刷媒体に接触しない非接触面積よりも小さく、前記被印刷媒体支持部材は、前記液体吐出手段に対向する面と反対側の面に、前記液体を受ける液体受け部を有し、前記液体受け部は、前記液体吐出手段と対向する面に傾斜を有し、該傾斜の底部に液体貯留部を具備することを特徴とする液体吐出装置にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被印刷媒体支持部材表面の液体(例えばインク)汚れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る印刷装置の外観斜視図である。
【
図4】一実施形態に係るプラテンの基本的な構成を示す模式的な平面図である。
【
図5】(a)はプラテンの開口部の幅寸法を求めるための試験方法を示す図、(b)は(a)の試験結果を示す図表である。
【
図6】(a)はプラテンの開口部の幅寸法を求めるための、
図5(a)とは異なる観点での試験方法を示す図、(b)は(a)の試験結果を示すグラフである。
【
図7】(a)は
図4に示した一実施形態とは別の実施形態に係るプラテン及び受け部を示す平面図、(b)は(a)の横断面図である。
【
図8】
図7(b)の要部を拡大して示す模式的な断面図である。
【
図9】
図4に示した一実施形態とは別の実施形態に係るプラテンの格子状パターンを示す平面図である。
【
図10】
図4及び
図9に示した一実施形態とはさらに別の実施形態に係るプラテンの格子状パターンを示す平面図である。
【
図11】実施例1に係るプラテン、受け部材の構成を示す図であって、プラテン及び受け部材の側断面図である。
【
図12】実施例2に係るプラテン、受け部材の構成を示す図であって、受け部材の一部を破断して示す一部側断面図である。
【
図13】実施例3に係るプラテン、受け部材の構成を示す側面図である。
【
図14】実施例4に係る図であって、Tシャツに印刷する場合に用いるプラテン及び受け部材等を示す平面図である。
【
図15】
図14のプラテンにTシャツをセットした状態を示す平面図である。
【
図17】(a)はTシャツをプラテンにセットする際に外枠を用いる例を示す平面図、(b)は(a)の要部の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態を詳細に説明する。各実施の形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品)等については、混同の虞がない限り一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。
まず、
図1~
図3を参照して本発明の一実施形態に係る印刷装置について説明する。
図1は同印刷装置の外観斜視図、
図2は同印刷装置の平面図、
図3は同印刷装置の正面図である。なお、
図1及び
図2では、プラテン2の厚さを無視して簡略的に図示している。
【0009】
図1~
図3に示すように、印刷装置1は、液体吐出装置の一例であり、シリアル方式のインクジェットプリンタである。印刷装置1は、液体を吐出する液体吐出手段である液体吐出ヘッドとしての複数のインクジェットヘッド10(
図3に示し、以下、「ヘッド10」と略称する)と、複数のヘッド10を搭載して主走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ11と、被印刷媒体を支持する被印刷媒体支持部材としてのプラテン2とを備えている。
図3には、印刷対象・被印刷媒体としての布帛の一例である布地400を支持するプラテン2が図示されている。
後述するように、布地400は、複数のヘッド10を有するキャリッジ11の走査移動方向である主走査方向Xに対して直交する方向、すなわち副走査方向Yに搬送される。
【0010】
上述したように、印刷装置1は、プラテン2に布地400(以下、単に「生地」ともいう)を支持ないし保持させて印刷する、いわゆるガーメントプリンタあるいはテキスタイルプリンタと呼ばれる装置構成を具備している。
【0011】
印刷装置1の操作者が、
図1においてはプラテン2の副走査方向Yの下流側(
図1におけるプラテン2の左斜め手前側)である正面、
図2においてはプラテン2の副走査方向Yの下流側(
図2におけるプラテン2の紙面下側)である正面に対向して、印刷装置1を操作するようになっている。プラテン2は、被印刷媒体が相対的に薄手のシャツ(Tシャツ等を含む)から相対的に厚手のソックスや布製のバッグ等に対応するために、ヘッド10のノズル面とキャリッジ11との距離(ギヤップ)を調整可能に上下方向Zに移動可能に構成されている。プラテン2上に取り付け・支持された被印刷媒体は印刷に合わせて
図1の右斜め奥側から左斜め手前側に移動する。
【0012】
プラテン2は、昇降機構41上に取り付け・搭載されていて上下方向Zの高さを調整可能に構成されている。プラテン2の昇降機構41は、スライダ42上に搭載されている。スライダ42は、主走査方向Xと直交する副走査方向Yに延設したスライドレール43上に移動可能に載置されている。昇降機構41としては、正逆転方向に回転可能な電動モータを備え、例えばラックアンドピニオン機構やボールねじ機構を利用して構成されている。
プラテン2の昇降機構41及び下記する移動機構以外の具体的な構成は、後で詳述する。
【0013】
図1~
図3において、主走査方向Xはキャリッジ11を往復移動させる方向を示し、Yは主走査方向Xと直交する副走査方向を、Zは主走査方向X及び副走査方向Yと直交する上下方向(鉛直方向ないし高さ方向でもある)方向を、それぞれ示す。
【0014】
一対のガイド部材12、13は、キャリッジ11を主走査方向Xに往復移動可能に保持している。キャリッジ11は、正逆転方向に回転可能な主走査モータ14(
図2参照)で回転される駆動プーリ15と従動プーリ16との間に掛け回したタイミングベルト17に連結され、主走査モータ14を駆動することによりキャリッジ11を主走査方向Xに往復移動させる。
【0015】
図1に示すエンコーダシート18は、主走査方向Xに沿って配置されている。エンコーダシート18には周期的なスリットが設けられている。キャリッジ11は、エンコーダシート18のスリットを読み取る読み取りセンサを有し、この読み取りセンサの読み取り結果から主走査方向Xにおけるキャリッジ11の位置を検出できるように構成されている。
【0016】
図1に示すコントローラボード50は、キャリッジ11の上記読み取りセンサの読み取り結果で得られるキャリッジの移動位置から液体であるインクを吐出する吐出位置にタイミングを合わせてヘッド10からインクを吐出させる制御をする。
【0017】
キャリッジ11上には、5つのヘッド10が搭載されている。各ヘッド10は、所要の色の液体を吐出するノズルを配列したノズル列を2列有している。キャリッジ11は、ヘッド10に供給する液体としてのインクを一時的に貯留するサブタンクも搭載している。
図2に示すように装置本体側に設けられたメインタンク21から、所要の色の液体であるインクを、供給チューブを介して送液ポンプにより上記サブタンクに送液する。
【0018】
キャリッジ11には、白(W)と、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(Bk)の各色のインクを吐出する5つのヘッド10が搭載されている。各色のヘッド10には、約200列のインクを吐出するノズルが平行に設けられている。
【0019】
印刷装置1には、プラテン2の上下方向Zの高さ位置を検知する図示を省略した高さ検知手段としてのポジションセンサが配設されている。このポジションセンサは、例えばレーザ光を射出する射出部とこのレーザ光を受光する受光部とで構成されていて、プラテン2上の布地400の表面がヘッド10のノズル面と干渉するか否かなどを検知する。すなわち、プラテン2上の布地400の表面位置は、上記ポジションセンサによって、プラテン2上の布地400の表面がレーザ光を遮るかどうかで判断している。プラテン2上の布地400の表面がレーザ光を遮った場合はエラーとなり、プラテン2は停止するように制御される。
布地400の表面と前記ノズル面との距離(ギャップ)はできるだけ狭い方がよく、昇降機構41を動作させることにより接触しないように設定している。具体的には0.5mm~7mm程度に設定されている。
【0020】
布地表面とノズル面との距離を自動で判断、調整するように設定できることが望ましいが、エラーの発生しない高さ位置まで調整できるように手動で変更してもよい。
【0021】
スライダ42は、タイミングベルト45を介して副走査駆動機構により副走査方向Yに往復移動される。スライダ42が副走査方向Yに往復移動されることにより、プラテン2も副走査方向Yに往復移動される。
【0022】
主走査方向Xの一端側には、ヘッド10の維持回復を行うメンテナンスユニット60が配置されている。メンテナンスユニット60は、ヘッド10のノズル面をキャッピングする吸引キャップ61と、ヘッド10のノズル面を保湿のためにキャッピングする保湿キャップ62と、ヘッド10のノズル面を払拭する払拭部材63を備えている。吸引キャップ61には吸引ポンプが接続されている。
【0023】
主走査方向Xの他端側には、吐出受け66が配置されている。コントローラボード50は、印刷途中で、ヘッド10から吐出受け66に液体を吐出させることにより、ヘッド10の維持回復を行う。
【0024】
また、印刷装置1は、印刷装置1に供給する電力を断接するための電源ボタン70、印刷装置1の各部に指示を与えて操作するための操作部71、印刷装置1の各部に電力を供給する電源ユニット72などを備えている。
【0025】
印刷装置1の一連の印刷動作について、印刷対象・被印刷媒体が布帛である布地400に印刷する場合を例にとって説明する。
布帛の一例である布地400(
図3に示す)は、印刷装置1による印刷前に、布地400の印刷面に前処理液を塗工する必要がある。本発明に使用するインクは前処理液を塗工する前処理を施さなければ布地400の目地の中に入り込んでしまい、目的の画像を得ることが難しいためである。
前処理液としては、例えば特許第4053720号公報に記載されているような色材である顔料(固体:陰イオン性)と電気的に結合し凝集して、表面に固定化させるための凝集剤(陽イオン性の例えば金属)を含有する液体を用いる。上記前処理液の塗工方法は、ローラやスプレー等、印刷面に均一に塗工できればよい。塗工後はそのまま印刷装置1へセットして印刷しても構わないが、できればヒートプレス機を用いて熱と圧力で布地400に塗工した上記前処理液を乾燥し、布地の皺や毛羽立ちを抑えておくことが望ましい。
【0026】
Tシャツなどの布地400に印刷を行うときには、布地400をプラテン2上に支持させセットする。印刷前の一連の作業を終えた布地400は、皺(凹凸)にならないようにプラテン2に取り付けることで支持・セットされる。その後、操作部71での操作により、スライダ42を介してプラテン2を装置本体内後方(副走査方向Yの上流側)へ完全に引き込む動作を行う。
【0027】
そして、布地400を支持したプラテン2は印刷スタート位置(
図1、
図2の副走査方向Yの下流側)へ移動する。この時、プラテン2上の布地400の上部表面がヘッド10のノズル面に接触しないように上記ポジションセンサで高さが検知され、布地400の上部表面とヘッド10のノズル面との距離(ギャップ)が上記所定の範囲内に維持されるように、昇降機構41を介してプラテン2の高さ位置が調整される。この時、ヘッド10と布地400が干渉・衝突する場合には、プラテン2の引き込みが停止され、あるいは、布地400をセットする位置にプラテン2が戻される。プラテン2が上記ポジションセンサをエラーなしで通過した後、プラテン2は印刷装置1の先頭の書き込み位置へ移動する。
【0028】
プラテン2の引き込みが完了したとき、印刷データ待機状態となる。ここで、印刷装置1が外部の情報処理装置(例えばパーソナルコンピュータなどのコンピュータや、スマートフォン等)から印刷データを受信したときに印刷動作チェックが行われ(詳細については省略)、開始される。あるいは、予めコントローラボード50に印刷データが蓄積されていた場合には、操作部71で当該印刷データを選択することによって印刷動作が開始される。
【0029】
印刷動作が開始されると、スライダ42を介してプラテン2が印刷開始位置まで移動される。その後、キャリッジ11はエンコーダシート18を読み取りつつ、第1及び第2ガイド部材12、13にガイドされながら主走査方向Xに移動して、ヘッド10によってプラテン2上にセットされた布地400表面へ吐出する。ヘッド10の動作に合わせてプラテン2は第1及び第2ガイド部材12、13の上で副走査方向Y(奥の上流側から手前の下流側)に移動しながら印刷が行われる。
こうして、キャリッジ11の移動とヘッド10からのインク吐出が行われて、1行分が印刷される。1行分が印刷されると、スライダ42を介してプラテン2が1行分移動される。キャリッジ11の1スキャンとスライダ42の間欠移動の繰り返しを行うことにより、布地400表面の所望の領域に印刷が行われる。印刷完了後、プラテン2は副走査方向Yの下流側(装置本体手前)まで戻されて印刷終了となる。
【0030】
印刷終了後はプラテン2より布地400を取り出し、ヒートプレス機等を利用して加熱・定着の後処理動作を行い、一連の印刷装置1の動作及び作業が終了する。
【0031】
ここで白以外の布地に印刷する際には注意が必要である。その訳は、普通に印刷すると布地の下地色の影響を受けて色味が変わってしまうからである。これを防ぐために、最初に白のベタを、布地の印刷範囲全体に印刷する。その後再び印刷開始位置へ移動し、残りの4色で所望する画像の印刷を行う。すなわち、2回、重ねて印刷することとなる。
【0032】
プラテン2に通常使用されている材料は、ステンレススチール(SUS)等の板材がベースとなっている。板材なので表面が平らである点は良いのだが、木目の粗い布地、薄手の布地、等は短時間で布地の厚さ方向(奥)へ浸透し、その後裏地へ到達して、いわゆる「裏抜け」を起こしてしまい、プラテン2表面をインクで汚すこととなった。
【0033】
図4を参照して、一実施形態に係るプラテンの基本的な構成について説明する。
図4は、一実施形態に係るプラテンの基本的な構成を示す模式的な平面図である。
図4に示すように、プラテン2をインク汚れから守るためにプラテン2を網目構造にすることを創案した。すなわち、布地の表面側から裏面側に滲み出てきたインクを網目の開口部で吸蔵し、ないしは開口部から逃がす。プラテン2の内部には、例えばインク受け部(
図4では省略する、後述の
図7等参照)を設けて滲み出てきたインクを取り込む。
【0034】
図4に示すように、プラテン2は、二点鎖線で示す被印刷媒体・布帛としての布地400に接触してこれを支持する、黒色の太い実線で示す支持部3と、布地400に接触しない複数の開口部4とで構成されている。具体的には、プラテン2は、支持部3が例えばステンレススチール(SUS)製の線材で「平織り」された、格子状のパターンをなす網目構造物(金網)で形成されている。この支持部3の格子状のパターンによって、プラテン2には、矩形状の16個の開口部4が形成されている。
【0035】
プラテン2は、
図3に示したヘッド10のノズル面に対向する面における16個の開口部4の総面積が、支持部3の総面積よりも大きく構成されている点が特徴となっている。
換言すれば、プラテン2は、ヘッド10のノズル面に対向する面における被印刷媒体(例えば布地400)に接触する接触面積(支持部3の総面積を意味する)が、被印刷媒体(例えば布地400)に接触しない非接触面積(全開口部4の総面積を意味する)よりも小さく構成されている点が特徴となっている。この特徴を備えたプラテンの基本的な構成は、後述の実施例等でも同じである。
【0036】
プラテン2の網目構造に関してさらに説明すると、単純な平織り以外に、クリンプ加工、綾織、畳織、綾畳織等が挙げられる。平織りから綾畳織へとこの順に網目構造(格子状のパターン)が複雑になる。ここで、
図4に示すように、プラテン2の支持部3を構成するものとして上記線材の線径(金属部の直径)と開口部4の幅寸法とで表現される平織りをベースに単純化して考える。平織りの金網に布帛の一例である布地を乗せて支持させた場合、開口部4の面積が広いほどインクは網目を通過しやすくなる。
しかしながら、開口部が広すぎると布地は自重で下方に撓んで凹んでしまう。これにより、上記印刷装置1のヘッド10から吐出されるインクにより布地表面に形成される画像が歪んでしまい、所望の画像が得られなくなってしまうという問題が発生する。
【0037】
そこで、布地が自重で下方に撓んで凹んでしまう現象を発生させない、支持部3により形成される適切な開口部4の大きさの範囲、すなわち開口部4の幅寸法の適切な範囲を求めるべく、
図5(a)に示す簡略的な試験を行い、
図5(b)に示す表1の試験結果を得た。
図5(a)において、角材A、Bは、隣り合う2点間の線材の線経部分で布地400を載置・支持する支持部3となる部材を、Lは開口部の幅寸法となる間隔(距離)を、a、bは開口部の幅寸法L内における布地400の自重による撓みの幅位置を、Pは幅寸法Lの幅位置a又はbにおける布地の自重を、δは幅寸法Lの幅位置a又はbにおける布地の撓みを、xは一方の角材Aからの距離・寸法を、それぞれ表している。また、角材Bは角材Aに対して一方の角材Aから距離x方向へ変更可能であることを表している。なお、布地400を載置・支持する方法は、上記した角材A、Bによる2点間の簡単な支持でなく、例えば
図4に示した1つの開口部4を形成している上記線材により平面的に支持する方法がより好ましいことは無論である。
【0038】
図5(a)に示すように、布地400としては、「綿ブロードシル付き」と呼ばれる生地を短冊に切り、支持部3となる2本の角材A、Bの上に両端部を広げて載せ、その生地の中央部が下方に撓んで最大撓みδ=6mmとなったときの、角材A、B間の幅寸法(mm)を表1に示す17、22、23、30、35、・・・に変えて調べた。「綿ブロードシル付き」の布地400では、最大撓みδ=6mmを実用的に好ましい基準とした。この範囲にあることで着弾精度を低下させずに印刷が可能である。「綿ブロードシル付き」は、通常のTシャツに使用されている生地である。試験環境条件としては、室温20℃、相対湿度50%で行った(後述の
図6の試験でも同じ)。
【0039】
なお、この布地400は薄く、上記の印刷装置1で印刷するとインクが裏抜けする。上記試験結果から、角材A、B間の距離が35mmを超えると、生地・布地400が下方に撓んで、実用的に好ましい範囲の基準となる最大撓みδ=6mmを超えてしまうことが分かった。開口部の幅寸法としては、表1の評価で〇、△で示す35mm以下が望ましい範囲と判断される。
【0040】
次に、
図6(a)に示すように、
図5に示したと同じ生地である布地400の短冊を、片側の支持となるように片持ち状態でA側一端部を固定し、B側他端部を自由端としてこの自由端(先端)を伸ばしたときの、
図6(b)に示すように布地400の長さ(mm)を変えて、布地400の自由端(先端)の下方への撓み(
図6(b)の深さに相当)を調べた。
布地400の先端(自由端)の変動を調べたのは、プラテンに載置された短冊の中央は両側から引っ張ることで、先述の結果より広い開口部でも対応可能であるが、これに対して先端は補強が難しいと考えたためである。
図6(b)の試験結果より、布地400の長さが先端から35mm伸ばすと下方に撓み始め、実用的に好ましい範囲の基準となる最大撓みδ=6mmを超えてしまうことが分かった。このことより、開口部4の幅寸法は35mm未満が適切な範囲と判断される。
【0041】
図5及び
図6の試験結果、布地の種類を考慮して、プラテンの開口部の幅寸法は、30mm以下が適切と判断される。
【0042】
上述の試験で用いた「綿ブロードシル付き」と呼ばれる生地・布地400よりも柔軟で、プラテン表面の起伏を拾ってしまう生地を印刷に用いる場合は、印刷前の生地のセット時に、あるいは印刷中に生地の四方より引っ張ることで解決できる。しかしながら、生地の四方を均等に引っ張る必要があり、これを引っ張る前の元の状態に戻した際には、生地に印刷された画像がいびつで歪んだ画像となってしまう。
【0043】
上述の網目構造は、いわゆる織網と呼ばれるものであり、市販されているものもある。織網製のプラテンで開口部を広くあるいは狭く製作することは、上記市販品を用いることなどにより比較的容易に実施可能である。しかしながら、織網の表面には線1本分の上下方向の起伏が生じてしまう。キャンバスのような剛性のある生地なら問題ないが、薄手で柔らかい生地では起伏となる可能性がある。生地表面の起伏はヘッドのノズル面とのギャップの差となり、インクの着弾位置ずれやミストの発生等の弊害を起こすことになる。
【0044】
上述の試験結果は、網目構造を備えたプラテンで保持ないし支持する布地として、「綿ブロードシル付き」と呼ばれる一種類の生地を用いた場合であったが、これ以外の剛性や柔軟性が異なる生地についても上述と同様の試験を行うことにより、その生地ごとの適切な開口部の寸法を求めることができることは無論である。
【0045】
上述したように、一実施形態によれば、布地400に接触するプラテン2の支持部3の接触面積(支持部3の総面積)が、布地400に接触しない非接触面積(
図4では16個の全開口部4の総面積)よりも小さく構成されているので、このような特徴的な構成を備えていないプラテンと比較して、プラテン2表面のインク汚れを防ぐことができる。
また、支持部3の総面積よりも相対的に全開口部4の総面積を大きくするように構成したことで、プラテン2の軽量化にも寄与する。
【0046】
図7を参照して、プラテンを織網以外の網目構造にした別の実施形態を説明する。
図7(a)は、
図4に示した一実施形態とは別の実施形態に係るプラテン及び受け部を示す平面図、
図7(b)は、
図7(a)の横断面図である。
図8は、
図7(b)の要部を拡大して示す模式的な断面図である。
図7に示すように、プラテン2は、二点鎖線で示す布地400に接触してこれを支持する支持部3と、布地400に接触しない複数の開口部4とで形成されている。この
図7に示すプラテン2では、主走査方向Xに沿って3個、副走査方向Yに沿って4個の合計12個の開口部4が形成されていて、支持部3と矩形状をなす12個の開口部4とのパターン模様が格子状をなす。
各開口部4は、プラテン2の厚さ方向である上下方向Zに貫通して開けられた貫通穴ないし空隙部となっている。各開口部4は、プラテン2に支持されている布地400の表面から裏面に滲み出てきた液体であるインク80(
図8参照)を重力の作用方向である上下方向Z(鉛直下方向)に逃がす、ないしは吸蔵する機能を有する。
【0047】
図7に示すプラテン2は、いわゆるパンチングメタルと呼ばれ、金属板を型で打ち抜いて製作したものである。このパンチングメタルによるプラテン2の製作方法ならば材料が一枚板なので、前述した
図4に示した網目構造をなす織網のように、被印刷媒体が凸凹を拾う心配がないと言える。勿論、樹脂板を型で打ち抜いて製作したものであってもよい。
【0048】
上記した織網と同様に、パンチングメタルは、様々な厚さ、開口(孔)率、開口パターン形状の製品が市販されている。そこで、プラテンとしては、用途及び目的に応じて上記した市販品のパンチングメタルを用いてもよい。これにより、プラテンを製作するコストを低減することもできる。
【0049】
プラテン2の支持部3は、ステンレススチール(SUS)やアルミニウムなどの金属、又はポリカーボネート(PC)やアクリル樹脂などの樹脂、あるいは樹脂材のベースに金属をインサートして強度向上を図ったインサート材などを選択して用いることができる。
なお、
図3に示したヘッド10のノズル面と対向する支持部3の表面に、適宜の布などを貼ることで、プラテン2の支持部3上に支持された布地400に対して貼られた布による摩擦で布地400を保持ないし支持する機能を持たせてもよい。
【0050】
プラテン2の下部には、プラテン2の支持部3を保持すると共に、プラテン2の各開口部4を通過してきたインク80を受ける液体受け部の一例としてのインク受け部5が設けられている。インク受け部5は、インクを受ける機能を有していればよく、例えば適宜の樹脂や金属等で形成されている。インク受け部5には、インクを貯留する液体貯留部の一例としてのインク貯留部5aが設けられている。
【0051】
図8に示すインク受け部5は、プラテン2の支持部3の外周下部に、プラテン2とは別の部材で保持・固定されている例を示したが、これに限定されず、インク受け部5は、プラテン2と一体的に形成されたものであってもよい。すなわち、被印刷媒体支持部材(プラテン)は、液体吐出手段(ヘッド)に対向する面と反対側の面に、液体(インク)を受ける液体受け部を有していればよい。
【0052】
プラテン2は、
図4を参照して説明したと同様に、ヘッド10(
図3参照)のノズル面に対向する面における12個の開口部4の面積が、支持部3の面積よりも大きく構成されている点が特徴となっている。すなわち、プラテン2は、ヘッド10のノズル面に対向する面における被印刷媒体(例えば布地400)に接触する接触面積(支持部3の総面積)が、被印刷媒体に接触しない非接触面積(全開口部4の総面積)よりも小さく構成されている。
【0053】
図8において、上述したようにヘッド10のノズル(
図3参照)から画像情報に応じて吐出されたインク80が布地400の表面に付着して印刷画像を形成する。そして、布地400の表地(表面)側の繊維に付着したインク80は布地400の裏地(裏面)側の繊維へと滲み出していき、その一部はプラテン2の支持部3に付着すると共にその一部は開口部4を通過してインク受け部5に受け止められる。
【0054】
本一実施形態によれば、布地400に接触するプラテン2の支持部3の接触面積(支持部3の総面積)が、布地400に接触しない非接触面積(
図7では12個の全開口部4の総面積積)よりも小さく構成されているので、このような特徴的な構成を備えていないプラテンと比較して、プラテン2表面のインク汚れを防ぐことができる。
【0055】
図9に示すプラテン2は、支持部3によって開口部4が円形形状の格子状パターンに形成されたパンチングメタルを、
図10に示すプラテン2は、開口部4が菱形・ラティス形状の格子状パターンに形成されたパンチングメタルを、それぞれ示す。なお、
図9及び
図10では、プラテン2の平面形状のみを示し、インク受け部5(
図7参照)に相当する部分の図示を省略している。
図10では、図の簡明化を図るため菱形・ラティス形状の繰り返し格子状パターンの一部のみを図示している。
【0056】
パンチングメタルの形状としては、60度千鳥型、角千鳥型、並列型、長丸穴千鳥型、長丸穴並列型、角穴千鳥型、角穴並列型、六角形60度千鳥型、長角穴千鳥型、長角穴並列型、等がある。これらの形状パターンを比較して、開口部(穴径)と支持部(骨)の比率である開口(孔)率を考慮すると、角穴並列型、六角形60度千鳥型、長角穴並列型、等が実施する際に適当と思われる。また、開口(孔)率は、60%以上が好ましい。
【0057】
なお、パンチングメタルの開口部(穴径)と支持部(骨)とにより形成される格子状パターンは、上記したように開口部(穴径)の形状が一種類のものの繰り返しパターンが圧倒的に多いが、これに限定されない。すなわち、異なる開口部(穴径)形状の格子状パターンが混合した、例えば円形形状と正方形形状とが混合ないし組み合わされた格子状パターンであってもよい。いずれにしても、上述した通り、ヘッドのノズル面に対向する面における全開口部の総面積が、支持部の総面積よりも大きく構成されていればよい。
【0058】
上記した特徴的な構成に加えて、プラテン2の少なくとも支持部3表面部分にインクを弾く撥インク性の樹脂(例えば撥水性のフッ素系樹脂やシリコン系樹脂)で表面処理を施すようにしてもよい。これにより、プラテン2表面へのインク付着によるインク汚れをより確実に防ぐことができるようになる。
【0059】
(実施例1)
図11を参照して実施例1を説明する。
図11は、実施例1に係るプラテン、受け部材の構成を示す図であって、プラテン及び受け部材の側断面図である。
実施例1は、
図7及び
図8に示した一実施形態の構成と比較して、インク受け部が、プラテン2に対して着脱可能に構成されている点が主に相違する。すなわち、実施例1では、インク受け部5に代えて、プラテン2とは別体の受け部材6をプラテン2に対して着脱可能に新設した点が相違する。
【0060】
受け部材6は、プラテン2の各開口部4を通過してきたインクを受け止めるべく副走査方向Yに延び、かつ主走査方向Xに渡って延在して形成されている。
受け部材6の副走査方向Yb(装置本体の奥方向)の一端部には、概略L字形状をなす引っ掛け部6bが、副走査方向Ya(装置本体の手前方向)の他端部には、概略半楕円形状の断面をなす液体貯留部としてのインク貯留部6aが、それぞれ一体的に形成されている。受け部材6には、その上記一端部から上記他端部にかけて、図において右斜め下に傾斜した傾斜面が形成されている。このように受け部材6は、傾斜を有し、該傾斜の底部に液体貯留部としてのインク貯留部6aを具備する。受け部材6に傾斜を設けることで、インクがインク貯留部6aの一箇所に貯められ、捨てやすくなる。
受け部材6の主走査方向Xの両端部は、筺体をなすプラテン2の主走査方向X(図示せず)の両内側壁面に干渉しない程度に、プラテン2の主走査方向Xの上記両内側壁面の間の距離よりも僅かに小さく形成されている。
【0061】
一方、プラテン2の副走査方向Ybの縦壁内壁面には、受け部材6の引っ掛け部6bと位置選択的に係合可能な概略L字形状をなす被引っ掛け部2aが一体的に形成されている。受け部材6の引っ掛け部6bと、プラテン2の被引っ掛け部2aとは、プラテン2に対して受け部材6を着脱可能にするための着脱手段を構成している。受け部材6は、インクを受ける機能を有していればよく、例えば適宜の樹脂や金属等で形成されている。
【0062】
インク貯留部6aにインクが貯留された受け部材6をプラテン2の内部筐体内から取り出すときには、受け部材6の図示しない取っ手部を持って、上下方向Zの上方向に持ち上げることにより、プラテン2の被引っ掛け部2aから引っ掛け部6bを取り外し、副走査方向Ya(装置本体の手前方向)側に引き抜く。これとは逆に、受け部材6をプラテン2の内部筐体内に装着・セットするときには、受け部材6の上記取っ手部を持って、副走査方向Yb(装置本体の奥方向)側に受け部材6を挿入し、被引っ掛け部2aに対して引っ掛け部6bを上下方向Zの下方向に押し込めばよい。
【0063】
実施例1によれば、プラテン2表面へのインク付着によるインク汚れを防ぐことができることは元より、プラテン2の全体を着脱することなく、プラテン2の内部下方に貯留したインクの廃棄動作や清掃等を簡単に行うことができるので、操作性が向上する。
【0064】
(実施例2)
図12を参照して実施例2を説明する。
図12は、実施例2に係るプラテン、受け部材の構成を示す図であって、受け部材の一部を破断して示す一部断面図である。
実施例2は、
図11に示した実施例1のプラテン、受け部材の構成と比較して、受け部材6に代えて、プラテン2とは別体の受け部材6Aを用いる点が相違する。受け部材6Aは、液体受け部として機能し、プラテン2に対して着脱可能に構成されている。受け部材6Aは、インクを受ける機能を有していればよく、例えば適宜の樹脂や金属等で形成されている。
【0065】
受け部材6Aは、プラテン2の各開口部4を通過してきたインクを受け止めるべく副走査方向Yに長く延び、主走査方向Xに渡って形成されている。受け部材6Aの内部には、副走査方向Yb(装置本体の奥方向)の一端部から副走査方向Ya(装置本体の手前方向)の他端部にかけて、図において右斜め下に傾斜した傾斜面が形成されている。このように受け部材6Aは、傾斜を有し、該傾斜の底部に液体貯留部としてのインク貯留部6aを具備する。受け部材6Aに傾斜を設けることで、インクがインク貯留部6aの一箇所に貯められ、捨てやすくなる。
【0066】
プラテン2と受け部材6Aとは、着脱手段としての永久磁石と強磁性体とで構成され、数箇所に設けられたマグネットキャッチャ7を介して、互いに着脱可能に構成されている。インク貯留部6aにインクが貯留された受け部材6Aをプラテン2からマグネットキャッチャ7を介して取り外すことにより、インク貯留部6aに貯留されたインクを廃棄することができる。
【0067】
なお、着脱手段は、着脱時の操作が簡単なマグネットキャッチャに限らず、例えばピンと該ピンを挿通する底有りのピン穴との嵌合を利用したものや、クランプ機構を利用したものであってもよい(後述の実施例3でも同じ)。
【0068】
実施例2によれば、プラテン2表面へのインク付着によるインク汚れを防ぐことができることは元より、プラテン2から受け部材6Aを着脱手段を介して取り外すことにより、貯留したインクの廃棄動作や清掃等を簡便に行うことができる。
【0069】
(実施例3)
図13を参照して実施例3を説明する。
図13は、実施例3に係るプラテン、受け部材の構成を示す側面図である。
実施例3は、
図12に示した実施例2と比較して、受け部材6に代えて、プラテン2とは別体の受け部材6Bを用いる点が相違する。受け部材6Bは、液体受け部として機能し、プラテン2に対して着脱可能に構成されている。受け部材6Bは、インクを受ける機能を有していればよく、例えば適宜の樹脂や金属等で形成されている。
【0070】
受け部材6Bは、プラテン2の各開口部4を通過してきたインクを受け止めるべく副走査方向Yに長く延び、主走査方向Xに渡って形成されている。受け部材6Bの内部には、図示を省略しているが、主走査方向Xの一端部(図の紙面奥側)から主走査方向Xの他端部(図の紙面手前側)にかけて、傾斜面が形成されていて、該傾斜の底部に液体貯留部としてのインク貯留部(図示せず)を具備する。
【0071】
プラテン2と受け部材6Bとは、実施例2と同様に、マグネットキャッチャ7を介して、互いに着脱可能に構成されている。上記インク貯留部にインクが貯留された受け部材6Bをプラテン2からマグネットキャッチャ7を介して取り外すことにより、上記インク貯留部に貯留されたインクを廃棄することができる。
【0072】
実施例3によれば、プラテン2表面へのインク付着によるインク汚れを防ぐことができることは元より、プラテン2から受け部材6Bを着脱手段を介して取り外すことにより、貯留したインクの廃棄動作や清掃等を簡便に行うことができる。
【0073】
(実施例4)
図14~
図16を参照して実施例4を説明する。実施例4は、Tシャツに印刷する場合に用いるプラテンについて説明する。
図14はTシャツに印刷する場合に用いるプラテン及び受け部材等を示す平面図である。
図15はプラテンにTシャツをセットした状態を示す平面図、
図16は
図15の要部の模式的な拡大断面図である。なお、
図15、
図16では図の簡明化を図るために受け部材6の図示を故意に省略している。
図14~
図16において、符号2AはTシャツへの印刷に用いるTシャツ専用のプラテンを、符号400Aは布帛・布地が縫製加工等されて製作されたTシャツを、それぞれ表している。
【0074】
Tシャツ用のプラテン2Aは、Tシャツ形状に合わせた5角形の外形形状をなしている。プラテン2Aは、例えば
図7に示した支持部3と開口部4とを有して格子状の網目構造で構成されたパンチングメタルを用いている。
図15及び
図16に示すように、
図1~
図3の印刷装置1によって、Tシャツ400Aの胸部400aあるいは背部400bにプラテン2Aを用いて印刷する場合について特化して述べる。
図15及び
図16において、符号PGは、Tシャツ400Aの胸部に印刷する領域を二点鎖線で示している。Tシャツ400Aの袖に印刷するような場合は、別の専用・オプションのプラテン及び受け部材等に交換する。
【0075】
プラテン2Aは、Tシャツ400Aのサイズに合わせて例えばS、M、Lの3種類が存在し、Tシャツ400Aの両袖に相当する部分をあたかも切り取ったような外周形状をなしている。5角形の外形形状のプラテン2Aに、Tシャツ400Aを被せてセットすると、Tシャツ400Aの図において上部中央の首の部分からプラテン2Aの頂点部分が実線で示すように露出し、両袖の部分が下がった状態となる。なお、
図15において、プラテン2A及び受け部材6に対してTシャツ400Aを装着・セットする際には、Tシャツ400Aの下部の胴部の開口部分が広い方から先に、不動状態にあるプラテン2Aの頂点部分を通し、Tシャツ400Aを図において下方に徐々にずらしながらTシャツ400Aをプラテン2Aにセットすることとなる。
Tシャツ400Aの胸部400aへの所定の印刷が終了したならば、プラテン2A及び受け部材6から印刷済みのTシャツ400Aを取り外す。胸部400aへのTシャツ400A印刷終了後に、背部400bへも印刷を行いたい場合には、胸部400a印刷済みのTシャツ400Aを概略180度回転させるようして上記したと同様にプラテン2A及び受け部材6に装着・セットして所定の印刷を行うこととなる。
【0076】
プラテン2Aの下側には、
図11に示した受け部材6が設けられている。受け部材6は、Tシャツ400Aの布地からの裏抜けしたインクを回収するだけでなく、誤って布地の無いプラテン2Aに印刷した時のインクの回収にも役立つ。上述したように受け部材6は、インク貯留部6aに溜まったインクを処分するために容易に取り出しやすくなっている。加えて、受け部材6には傾斜が設けられていることで、インクがインク貯留部6aの一箇所に貯められ、廃棄しやすくなっている。
受け部材6に限らず、
図14に括弧を付して示すように、
図7(b)に示したインク受け部5、
図12に示した受け部材6A、
図13に示した受け部材6Bを、その用途・目的に応じて適宜用いてもよい。
【0077】
上述したように、実施例4によれば、プラテン2A表面へのインク付着によるインク汚れを防ぐことができることは元より、プラテン2Aから受け部材6を取り外すことにより、貯留したインクの廃棄動作や清掃等を簡便に行うことができる。
【0078】
図17を参照してプラテンにTシャツをセットする方法について補足説明する。
図17(a)はTシャツをプラテンにセットする際に外枠を用いる例を示す平面図、
図17(b)は
図17(a)のA-A線の模式的な断面図である。
図17(b)では受け部材等の図示を省略している。
図17では、
図14~
図16に示した実施例4のプラテン2Aに代えて、Tシャツの形状に概略合わせた、平面視で概略長方形形状のプラテン2Bを用いると共に、新たに外枠を用いた場合のセット方法を示している。
図17に示すように、Tシャツ400Aの形状に概略合わせたプラテン2B(Tシャツ400Aに覆われているため破線で示す)に対して、実施例4と略同様にしてTシャツ400Aを装着・セットする。そして、内部領域部分が空洞の外枠8を載せて、プラテン2BとTシャツ400Aとを挟み込み保持するようにしてセットする。
【0079】
次いで、外枠8で挟み込み保持された内部領域部分のTシャツ400Aの表面を、ユーザ(図示せず)が適宜の布あるいはへら状の均し部材等を用いてTシャツ400Aの表面を伸ばすように軽くさすることにより、Tシャツ400Aの表面を略平坦状にしてTシャツ400Aのシワを伸ばす。
このように、Tシャツをプラテンにセットする際に外枠を用いると、Tシャツに生じるシワや弛み等を除去して良好な印刷画像を得ることができるようになる。Tシャツをプラテンにセットする際に外枠を用いる方法は、Tシャツの形状に合わせたプラテン2Aを用いる実施例4に適用できることは無論である。
【0080】
一方、
図17で説明したほどのTシャツ400Aのシワ伸ばし効果を望まなくてもよいのであれば、Tシャツの形状に概略合わせた平面視で概略長方形形状のプラテンを用いて次のようにしてもよい。すなわち、
図17に示した外枠8を用いずにプラテン2B(Tシャツ400Aに覆われているため見えない)上に載置されたTシャツ400Aをユーザが軽く引っ張ることで、Tシャツ400A上のシワや弛みを移動させてシワや弛みを伸ばし、Tシャツ400Aの表面を略平坦状にしてもよい。
【0081】
本発明の液体吐出手段である「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。
吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0082】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0083】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0084】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0085】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0086】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0087】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、シート、たとえば、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、その他、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0088】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック(OHPシートを含む)、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0089】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させる上述したシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0090】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0091】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記実施形態等に記載した技術事項を適宜組み合わせたものであってもよい。
【0092】
上記実施例に限らず、被印刷媒体を支持可能な被印刷媒体支持部材であるプラテン2、2A、2Bは、上記各種の着脱手段を介して、印刷装置1の本体に対して着脱可能に構成されているとみなすことができる。また、液体受け部が被印刷媒体支持部材と実質的に一体形成されているような構成(例えば
図7及び
図8に示した一実施形態)であっても、これらが印刷装置1の本体に対して着脱可能に構成されていれば、印刷装置1の本体に対して着脱可能に構成されているとみなすことができる。これは、例えば
図11に示した実施例1に、上記各種の着脱手段を付設することで容易に構成可能である。
【0093】
上記した印刷装置1は、布地400の印刷面に上記前処理液を塗布する前処理液塗布装置を備えていなかったが、これに限らず、前処理液塗布装置を備えている装置であってもよい。上記前処理液塗布装置としては、例えば特許第4053720号公報の
図1や
図2に開示されている前処理液(22)を被印刷媒体(例えば用紙11)に塗布する前処理液塗布ユニット(20)などが挙げられる。この場合、前処理液(22)としては、例えば上記特許第4053720号公報に開示されているような記録液中の着色剤を不溶化する化合物を含有する液体を用いるとよい。
【0094】
プラテンを導電性材料で形成し、他の部材と電気的に短絡するようにしてもよい。具体的には、金属等の導電性材料で形成されたプラテンを電極に接続し、メンテナンス時にプラテンに通電してもよい。このようにすれば、メンテナンス中にプラテンに通電し、系内のミスト(インク)を静電的にプラテンに吸着することができる。
【0095】
本発明の実施の形態に適宜記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0096】
1 印刷装置(液体吐出装置の一例)
2、2A、2B プラテン(被印刷媒体支持部材の一例)
3 支持部
4 開口部
5 インク受け部(液体受け部の一例)
6、6A、6B 受け部材(液体受け部の一例)
7 マグネットキャッチャ
8 外枠
10 インクジェットヘッド(液体吐出手段、液体吐出ヘッドの一例)
11 キャリッジ
80 インク(液体の一例)
400 布地(被印刷媒体、布帛の一例)
400A Tシャツ(被印刷媒体、布帛の一例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0097】