(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び吐出調整方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240312BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J2/205
(21)【出願番号】P 2020048478
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】羽田 篤史
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-189729(JP,A)
【文献】特開2012-061841(JP,A)
【文献】特開2011-173406(JP,A)
【文献】特開2020-082708(JP,A)
【文献】特開2011-121233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液体を吐出する複数のノズルが副走査方向にノズル列として配列された記録ヘッド
が前記副走査方向に複数設けられたヘッドアレイと、
前記記録媒体に対して前記液体を吐出させながら
前記ヘッドアレイを前記記録媒体に対して前記副走査方向と直交する
主走査方向に移動させる走査動作と、液体を吐出させないで前記
ヘッドアレイ又は前記記録媒体を、前記記録媒体又は前記
ヘッドアレイに対して相対的に前記副走査方向に移動させる副走査移動動作と、を交互に実施する移動部と、
画像データに対して、前記副走査方向における前記
ヘッドアレイの両端部を設定領域として、端になるほどノズルから吐出するドット数が少なくなるようなグラデーションを設定するグラデーション設定部と、
前記主走査方向及び前記副走査方向に対して不規則にドットを配置するランダムマスクパターンを用いて、面積当たりのドット数である印画率を不規則にする不規則パターン設定部と、
前記走査動作の期間に、前記グラデーションが設定され、且つ不規則パターンが設定された画像データを基に、
前記ヘッドアレイの複数の記録ヘッドの前記複数のノズルから液体を吐出させるヘッド吐出駆動部と、を備える、
液体吐出装置。
【請求項2】
記録媒体に液体を吐出する複数のノズルが副走査方向にノズル列として配列された記録ヘッド部と、
前記記録媒体に対して前記液体を吐出させながら前記記録ヘッド部を前記記録媒体に対して前記副走査方向と直交する
主走査方向に移動させる走査動作と、液体を吐出させないで前記記録ヘッド部又は前記記録媒体を、前記記録媒体又は前記記録ヘッド部に対して相対的に前記副走査方向に移動させる副走査移動動作と、を交互に実施する移動部と、
画像データに対して、前記副走査方向における前記記録ヘッド部の両端部を設定領域として、端になるほどノズルから吐出するドット数が少なくなるようなグラデーションを設定するグラデーション設定部と、
前記主走査方向及び前記副走査方向に対して不規則にドットを配置するランダムマスクパターンを用いて、面積当たりのドット数である印画率を不規則にする不規則パターン設定部と、
前記走査動作の期間に、前記グラデーションが設定され、且つ不規則パターンが設定された画像データを基に、前記記録ヘッド部の前記複数のノズルから液体を吐出させるヘッド吐出駆動部と、を備え、
前記グラデーション設定部は、濃度が高い領域が多い凸形状のカーブであるグラデーションカーブを設定する
液体吐出装置。
【請求項3】
前記不規則パターン設定部は、
前記設定領域に対してのみ、前記印画率を不規則にする
請求項
1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
液体吐出装置の吐出調整方法であって、
液体吐出装置は、記録媒体に液体を吐出する複数のノズルが副走査方向にノズル列として配列された記録ヘッド
が前記副走査方向に複数設けられたヘッドアレイと、前記記録媒体に対して前記液体を吐出させながら前記
ヘッドアレイを前記記録媒体に対して前記副走査方向と直交する
主走査方向に移動させる走査動作と、液体を吐出させないで前記
ヘッドアレイ又は前記記録媒体を、前記記録媒体又は前記
ヘッドアレイに対して相対的に前記副走査方向に移動させる副走査移動動作と、を交互に実施する移動部と、を備えており、
画像データに対して、前記副走査方向における前記
ヘッドアレイの両端部を設定領域として、端になるほどノズルから吐出するドット数が少なくなるようなグラデーションを設定するグラデーション設定ステップと、
前記主走査方向及び前記副走査方向に対して不規則にドットを配置するランダムマスクパターンを用いて、面積当たりのドット数である印画率を不規則にする不規則パターン設定ステップと、
前記グラデーションが設定され、且つ不規則パターンが設定された画像データを基に、前記走査動作の期間に、
前記ヘッドアレイの複数の記録ヘッドの前記複数のノズルから液体を吐出させるヘッド吐出駆動ステップと、を有する、
液体吐出装置の吐出調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び吐出調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させながら記録媒体上にインクを吐出し画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
インクジェット記録装置において、双方向印刷を実施すると、ドットの色の重なりの順番の違いによって、走路が先の領域と復路が先の領域とで、インクの表面形状に違いが発生して境界が生じてしまう。このような境界がヘッドの走査方向に沿って帯状に生じることとなり、いわゆる光沢ムラである記録画像のバンディングが生じてしまう。
【0004】
この光沢バンディングは、生産性とトレードオフの関係にあり、生産性を高めると光沢バンディングが発生し、画質を下げる。よって、生産性を高めつつ、濃度ムラ及び光沢バンディングの無い高品質な画像を得るために「グラデーションマスク」という技術がある。
【0005】
例えば、特許文献1では、
図1に示すように、ヘッドの両端部に対して対称なグラデーションカーブをかけることが提案されている。例えば、
図1において、グラデーションカーブは、(a)では直線状66,67であり、(b)ではS字形状68.69であり、(c)では円弧形状70,71である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のグラデーションマスクにおいて
図1(a)、
図1(b)に示す構成では、マルチパスインターレース方式で改行しながら繰り返し利用されると、四角枠で示す、端部近傍の最上層の改行幅でのグラデーションの変化率が少ないため、光沢ムラの解消効果が低い。
【0007】
また、特許文献1、2の
図1(c)のグラデーションマスクでは、マルチパスインターレース方式で改行しながら繰り返し利用されると、光沢ムラは低減する。
【0008】
しかし、これらのグラデーションマスクは、規則的なグラデーション変化のため、周期的なムラやドット合一などにより粒状感が悪化する恐れがある。
【0009】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、高生産な作像モードであっても、記録媒体上の着弾領域における濃度ムラ及び光沢バンディングを抑制しながら、粒状感を感じさせないようにする、液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様では、記録媒体に液体を吐出する複数のノズルが副走査方向にノズル列として配列された記録ヘッドが前記副走査方向に複数設けられたヘッドアレイと、
前記記録媒体に対して前記液体を吐出させながら前記ヘッドアレイを前記記録媒体に対して前記副走査方向と直交する主走査方向に移動させる走査動作と、液体を吐出させないで前記ヘッドアレイ又は前記記録媒体を、前記記録媒体又は前記ヘッドアレイに対して相対的に前記副走査方向に移動させる副走査移動動作と、を交互に実施する移動部と、
画像データに対して、前記副走査方向における前記ヘッドアレイの両端部を設定領域として、端になるほどノズルから吐出するドット数が少なくなるようなグラデーションを設定するグラデーション設定部と、
前記主走査方向及び前記副走査方向に対して不規則にドットを配置するランダムマスクパターンを用いて、面積当たりのドット数である印画率を不規則にする不規則パターン設定部と、
前記走査動作の期間に、前記グラデーションが設定され、且つ不規則パターンが設定された画像データを基に、前記ヘッドアレイの複数の記録ヘッドの前記複数のノズルから液体を吐出させるヘッド吐出駆動部と、を備える、
液体吐出装置、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
一態様によれば、液体吐出装置において、高生産な作像モードであっても、記録媒体上の塗布領域において濃度ムラ及び光沢バンディングを抑制し、粒状感を感じさせないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来例に係るグラデーションマスクのグラデーションカーブの概略説明図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例における全体構成を示す斜視図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の画像形成ユニット周辺の平面図。
【
図4】
図3の画像形成装置の画像形成ユニット周辺の正面図。
【
図5】本発明に係る画像形成装置の一例におけるハードウェア構成のブロック図。
【
図6】本発明の第1実施例に係る画像形成装置の画像処理に係る制御部の機能ブロック図。
【
図8】マルチパスインターレースにおいて、光沢バンディングが発生するしくみを説明する図。
【
図10】比較例に係るヘッドと印画率と、グラデーションを示す図。
【
図11】1ヘッドの記録ヘッド部に対して、比較例に係る印画率のグラデーションマスクを、1つの画像領域を8走査で形成する印刷シーケンスに適用した図。
【
図12】1ヘッドの記録ヘッド部に対して、本発明の印画率を適用する図。
【
図13】本発明における、画像調整の設定手順を示すフローチャート。
【
図14】本発明の不規則パターンの一例のランダムマスクパターンを示す図。
【
図15】記録ヘッドが副走査方向に移動する構成において、1ヘッドの記録ヘッド部に対して、本発明の第1実施例に係る印画率のグラデーション及び不規則マスクを、1つの画像領域を8走査で形成する印刷シーケンスに適用した図。
【
図16】記録媒体が副走査方向に搬送される構成において、1ヘッドの記録ヘッド部に対して、本発明に係る印画率のグラデーション及び不規則マスクを、1つの画像領域を8走査で形成する印刷シーケンスに適用した図。
【
図17】本発明の第1実施例を適用する、複数のヘッドが千鳥状に配置されたヘッドアレイを含む画像形成ユニット周辺の平面図。
【
図18】グラデーションマスクを、2つのヘッドを含むヘッドアレイをグラデーション繰り返し単位として適用した図。
【
図19】グラデーションマスクを、ヘッドアレイのヘッド毎にグラデーション繰り返し単位として適用した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。下記、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0014】
<全体構成>
まず、本発明に係る液体吐出装置の一例である画像形成装置の実施形態の全体構成を説明する。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の全体構成を示す斜視図である。
【0016】
このインクジェット記録装置10は、キャリッジ200と、記録媒体を載置するステージ13と、を備える。キャリッジ200は、複数のノズルが設けられた複数の液体吐出ヘッドを備えたインクジェット方式の画像形成部であるヘッドユニット300が設けられており、液体を記録ヘッド(記録ヘッド部)のノズルN(
図11参照)から吐出することによって画像を形成する。ノズルは、ステージ13との対向面に設けられている。なお、本実施形態では、液体は、一例として、紫外線硬化性を有するインクである。
【0017】
また、キャリッジ200のステージ13との対向面には、紫外線を照射する光源である照射ユニット400が設けられている。照射ユニット400(照射部の一例)は、ノズルNから吐出された液体を硬化させる波長の光を照射する。
【0018】
左右の側板18a,18bにはガイドロッド19が架け渡されており、ガイドロッド19は、キャリッジ200をX方向(主走査方向)に移動可能に保持している。
【0019】
また、キャリッジ200、ガイドロッド19、及び側板18a,18bは一体となって、ステージ13の下部に設けられたガイドレール29に沿ってY方向(副走査方向)に移動可能となっている。更に、キャリッジ200は、Z方向(上下方向)に移動可能に保持されている。
【0020】
なお、
図2の構成では、記録媒体が載置されるステージ13は固定されている。
図2のようなインクジェット記録装置では、記録ヘッドを主走査方向に移動させながらノズルNから記録媒体上にインクを吐出する主走査動作と、記録ヘッドを副走査方向に移動させる副走査動作とを交互に繰り返し行い画像を形成する。
【0021】
よって、本実施形態では、キャリッジ200とガイドロッド19が主走査方向(X方向)の移動部であり、キャリッジ200とガイドレール29が副走査方向(Y方向)の移動部として機能する。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態の画像形成装置(液体吐出装置)であるインクジェット記録装置1の正面図の一例を示す模式図であり、
図4は、本実施形態のインクジェット記録装置1の平面図の一例を示す模式図である。
図3、
図4の構成では、キャリッジ周辺の形状が
図2の形状と異なるが、他の機能は
図2の構成とほぼ同様である。
【0023】
図2~
図4の構成では、副走査動作において、キャリッジ200に搭載された記録ヘッド300K~300Wを記録媒体101に対して副走査方向に移動させる。
【0024】
(変形例)
本発明の画像形成装置の変形例として、記録媒体101が載置されるステージ13(130)を可動な構成にしてもよい。この場合では、ステージ13(130)が副走査方向の移動部となり、副走査動作において、記録媒体101を記録ヘッド300K~300Yに対して副走査方向に移動させる(搬送する)。
【0025】
なお、
図3では1つのヘッドアレイにおいてヘッドが1つ設けられる例を示しているが、1つのヘッドアレイにおいて副走査方向に複数のヘッドが設けられていてもよい(
図17参照)。
【0026】
次に、画像形成装置(インクジェット記録装置10,1)を含む画像形成システムにおけるハードウェア構成の例について説明する。
【0027】
図5は、本実施形態の画像形成システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すシステムでは、画像形成システムにおいて、
図2~
図4等に示すように、メカ構造により画像を形成する画像形成装置(インクジェット記録装置10,1)に対して、外部装置であるPC2が接続され、PC2が画像処理を実行する例を示している。なお、PC2によって実行する画像処理に関する機能を、画像形成装置の内部に設けていてもよい。
【0028】
図5に示すように、本実施形態の画像形成装置30(インクジェット記録装置1,10)は、コントローラユニット3と、検知群4と、搬送部である搬送ユニット100と、キャリッジ200と、ヘッドユニット300(液体吐出ヘッドの一例)と、照射ユニット400(照射部の一例)と、メンテナンスユニット500と、を備える。
【0029】
また、コントローラユニット3は、ユニット制御回路31と、メモリ32と、CPU(Central Processing Unit)33と、I/F34と、を備える。なお、硬化装置は、
図4の破線で示すように、少なくともコントローラユニット3と照射ユニット400とを含む装置であればよい。
【0030】
I/F34は、画像形成装置30(1、10)を外部のPC(Personal Computer)2と接続するためのインターフェースである。画像形成装置30(1,10)とPC2との接続形態はどのようなものであってもよく、例えば、ネットワークを介した接続や通信ケーブルで両者を直接接続する形態などが挙げられる。
【0031】
検知群4は、例えば、
図3及び
図4に示す高さセンサ41などインクジェット記録装置1に備えられている各種センサなどが挙げられる。
【0032】
CPU33は、メモリ32を作業領域に用いて、インクジェット記録装置1の各ユニットの動作を、ユニット制御回路31を介して制御する。具体的には、CPU33は、PC2から受信する記録データ及び検知群4により検知されたデータに基づいて、各ユニットの動作を制御し、記録媒体101(基材などとも称する)上に液体塗布面102である画像を形成する。
【0033】
なお、PC2には、プリンタドライバがインストールされており、このプリンタドライバにより画像データから、インクジェット記録装置1に送信される記録データが生成される。記録データは、インクジェット記録装置1の搬送ユニット100などを動作させるコマンドデータと、画像(液体塗布面102)に関する画素データと、を含む。画素データは、画素ごとに2ビットのデータで構成されており、4階調で表現される。
【0034】
次に
図3~
図5を用いて、画像形成装置のメカ機構における部材について説明する。搬送ユニット100は、ステージ130及び吸着機構120を有する。吸着機構120は、ファン110及びステージ130に設けられた複数の吸着孔100aを有する。吸着機構120は、ファン110を駆動して吸着孔100aから記録媒体101を吸着することにより、記録媒体101を搬送ユニット100に一時的に固定する。吸着機構120は静電吸着を用いて用紙を吸着してもよい。搬送ユニット100は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、Y軸方向(副走査方向)の移動が制御される。
【0035】
搬送ユニット100は、
図3、
図4に示す構成では、搬送制御部210、ローラ105、及びモータ104を有する。搬送制御部210は、モータ104を駆動してローラ105を回転することで、記録媒体101をY軸方向(副走査方向)に移動することができる。
【0036】
搬送ユニット100は、
図2のように記録媒体101ではなく、キャリッジ200をY軸方向(副走査方向)に移動してもよい。すなわち、搬送ユニット100は、記録媒体101とキャリッジ200とをY軸方向(副走査方向)に相対的に移動させる。
【0037】
例えば、搬送ユニット100は、
図4の右側に示すように、キャリッジ200をX軸方向(主走査方向)に案内する二本のガイド201を支持する側板407bと、側板407bを支持する台406と、台406に固定されたベルト404と、ベルト404が掛け回された駆動プーリ403及び従動プーリ402と、駆動プーリ403を回転駆動するモータ405と、搬送制御部210とを有する。
【0038】
更に、搬送ユニット100は、
図4の左側に示すように、キャリッジ200をX軸方向(主走査方向)に案内する二本のガイド201を支持する側板407aと、側板407aをスライド移動可能に支持する台408と、台408に形成され、側板407aを副走査方向に案内する溝409と、を有する。
【0039】
搬送ユニット100は、搬送制御部210でモータ405を駆動することにより、駆動プーリ403を回転させ、ベルト404をY軸方向(副走査方向)に移動する。キャリッジ200が支持された台406がベルト404の移動と共にY軸方向(副走査方向)に移動することで、キャリッジ200をY軸方向(副走査方向)に移動することができる。側板407aは台406のY軸方向(副走査方向)への移動に伴い、台408の溝409に沿ってY軸方向(副走査方向)に移動する。
【0040】
図2、
図3に示す実施形態では、キャリッジ200と、ガイド201と、走査部206は、主走査方向(X方向)の移動部である。キャリッジ200が副走査方向にも移動する場合は、キャリッジ200、台406と、ベルト404と、駆動プーリ403、従動プーリ402、及び回転駆動するモータ405が、副走査方向の移動部である。また、ステージ130が移動する場合は、ステージ130、ローラ105、及びモータ104等の搬送ユニット100が副走査方向(Y方向)の移動部として機能する。
【0041】
ヘッドユニット300は、
図3~
図4に示すように、K、C、M、Y、CL、WのUV硬化型インク(液体の一例)をそれぞれ吐出するヘッドアレイ(記録ヘッド)300K、300C、300M、300Y、300CL、300Wにより構成されており、キャリッジ200の下面に備えられている。
【0042】
各ヘッドアレイ300K~300Wには、1又は複数のヘッドが設けられている。ヘッドが複数のヘッドで構成されている場合、複数のヘッドは千鳥状であっても、よいし、1列に並んでいてもよい。
【0043】
各ヘッドは駆動素子であるピエゾを備えており、CPU33(ユニット制御回路31)によりピエゾに駆動信号が印加されると、ピエゾは、収縮運動を起こし、収縮運動による圧力変化が生じることにより、UV硬化型インクを記録媒体101上に吐出する。これにより、記録媒体101上には、液体塗布面102(液体塗布面の一例)が形成される。
【0044】
本実施形態に好適なUV硬化型インクとして、例えば、メタクリレート系モノマーを含むインクを挙げることができる。メタクリレート系モノマーは皮膚感さ性が比較的弱いという利点があるが、一般のインクに比べ硬化収縮の度合いが大きいという特性がある。
【0045】
照射ユニット400は、キャリッジ200の側面(X軸方向の面)に備えられており、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、UV光を照射する。照射ユニット400は、主として、UV光を照射するUV照射ランプにより構成されている。
【0046】
キャリッジ200は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、Z軸方向(高さ方向)及びX軸方向(主走査方向)の移動が制御される。
【0047】
キャリッジ200は、ガイド201に沿って主走査方向(X軸方向)に走査移動する。走査部206は、駆動プーリ203、従動プーリ204、駆動ベルト202、及びモータ205を有する。キャリッジ200は、駆動プーリ203及び従動プーリ204の間に掛け回された駆動ベルト202に固定されている。モータ205で駆動ベルト202を駆動することにより、キャリッジ200は主走査方向に左右に走査移動する。ガイド201は、装置本体の側板211A及び211Bに支持されている。
【0048】
高さ調整部207はモータ209及びスライダ208を有する。高さ調整部207は、モータ209を駆動してスライダ208を上下動させることで、ガイド201を上下させる。ガイド201が上下移動することによりキャリッジ200が上下動し、キャリッジ200の記録媒体101に対する高さを調整することができる。
【0049】
<画像形成動作>
以下、
図2に示すインクジェット記録装置1の画像形成動作について説明する。
まず、搬送ユニット100は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、Y軸方向(副走査方向)に移動し、記録媒体101を、画像(液体塗布面102)を形成させるための初期位置に位置させる。
【0050】
続いて、キャリッジ200は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、ヘッドユニット300によるUV硬化型インクの吐出に適した高さ(例えば、ヘッドユニット300のヘッドアレイ300K~Wにおける、各ヘッドの下面と記録媒体101とのヘッド間ギャップが1mmとなる高さ)に移動する。なお、ヘッドユニット300の高さは、高さセンサ41により検知されることで、CPU33に把握される。
【0051】
続いて、キャリッジ200は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、X軸方向(主走査方向)に往復移動し、この往復移動の際に、ヘッドユニット300は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、UV硬化型インクを吐出する。これにより、記録媒体101上には、1走査分の画像(液体塗布面102)が形成される。
【0052】
続いて、記録媒体101上に1走査分の画像(液体塗布面102)が形成されると、搬送ユニット100は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、Y軸方向(副走査方向)に1走査分移動する。
【0053】
以下、画像(液体塗布面102)の形成が完了するまで、1走査分の画像(液体塗布面102)を形成する動作と搬送ユニット100をY軸方向へ1走査分移動させる動作とが交互に行われる。
【0054】
そして、記録媒体101上での画像(液体塗布面102)の形成が完了すると、UV硬化型インクが平滑化される時間(以下、「レベリング時間」と称する場合がある)まで待機され、この後、照射ユニット400によるUV光の照射が行われる。
【0055】
<第1実施例の機能ブロック>
次に、本発明の機能ブロックについて説明する。
図6は、本発明の第1実施例に係る画像形成システムにおける画像処理に係る機能ブロック図である。
【0056】
画像処理装置11は、主制御部12を含む。主制御部12は、CPUなどを含んで構成されるコンピューターであり、画像処理装置11全体を制御する。なお、主制御部12は、汎用のCPU以外で構成してもよく、例えば、主制御部12は、回路などで構成してもよい。
【0057】
また、画像処理装置11は、
図6に示したように、画像形成装置30に接続されるPC2によって実現されてもよいし、あるいは、画像形成装置30の内部に設けられてもよい。
【0058】
主制御部12は、データ受理部12Aと、データ作成部12Bと、データ出力部12Cと、を含む。データ受理部12A、データ作成部12B、およびデータ出力部12Cの一部または全ては、例えば、CPUなどの処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
【0059】
データ受理部12Aは、画像データを受理する。画像データは、形成する画像の形状や色などの情報である。データ受理部12Aは、通信部を介して、外部装置から画像データを取得してもよいし、画像処理装置11に設けられた記憶手段から画像データを取得してもよい。
【0060】
データ作成部12Bは、データ受理部12Aで受理した画像データについて、マスク処理などの所定のデータ処理を行う。本実施形態では、画像データ(例えば、JPEG画像データ)と、所望の光沢度に基づいて、カラーインク画像データと、クリアインク用の画像データと、を作成する。
【0061】
データ出力部12Cは、データ作成部12Bにて作成された画像データを画像形成装置30に出力する。
【0062】
画像形成装置30(1,10)は、記録部14と、印刷モード受理部21と、照射部22と、駆動部25(23,24)と、記録制御部28と、を備える。
【0063】
記録部14は、記録制御部28によって制御された画像データを基にヘッドアレイ300K~300Wの各ヘッドの液滴吐出を駆動するヘッド駆動部である。
【0064】
駆動部25は、移動部を駆動するものであって、第1の駆動部23は、走査時のキャリッジ200のX方向の移動を駆動させ、第2の駆動部24は、副走査時の、キャリッジ200又は記録媒体101の副走査方向の移動を駆動させる。
【0065】
記録制御部28は、画像処理装置11から印刷データを受け付ける。記録制御部28は、受け付けた印刷データに応じて、各ヘッドから各画素に対応する液滴を吐出するように、記録部14、駆動部25、および照射部22を制御する。
【0066】
記録制御部28は、例えば、インクの吐出から光の照射までの時間の算出や、インクの吐出量と光の照射までの時間から記録媒体101に形成される画像の光沢度の算出や、光沢度を均一にするためのクリアインクの吐出量を決定する演算等を行う。
【0067】
また、記録制御部28は、印刷シーケンス設定部28Aと、グラデーション種類選択部28Bと、グラデーション繰り返し単位設定部28Cと、不規則パターン設定部28Dと、画像用駆動波形生成部28Eと、を有する。
【0068】
印刷シーケンス設定部28Aは、画像データ及び印刷モードを基に印刷シーケンスを設定する。印刷シーケンス(
図7参照)を設定することで、それぞれの画像領域に対して、記録部14が搭載されるキャリッジ200を主走査方向における往路方向又は復路方向に、何回走査させて画像を形成するか、を規定する。また、カラーインク画像データに基づいたカラーインク画像の画像形成を制御する。すなわち、インク色ごとの形成順序や、各インクの打ち込み量や、打ち込み位置(ドットの配置位置)を制御する。
【0069】
グラデーション種類選択部28Bは、グラデーションの種類(
図12、
図20、
図21)を選択する。
【0070】
グラデーション繰り返し単位設定部28Cは、
図17に示すように、複数のヘッドがヘッドアレイに設けられている場合に、
図18のようにヘッド毎にグラデーションパターンを割り当てるのか、
図19のようにヘッドアレイ毎にグラデーションパターンを割り当てるのか、選択する。
図3、
図10のように、副走査方向において、記録ヘッド部に1つのヘッドのみ設けられている場合は、この機能は有していなくてもよい。グラデーション種類選択部28B及びグラデーション繰り返し単位設定部28Cは、グラデーション設定部として機能する。
【0071】
詳しくは、グラデーションは、副走査方向において中央が濃く、両端部が薄くなる(端になるほどノズルから吐出される面積あたりのドット数(以下印画率と呼ぶ、この比率は、打ち込み量、記録率、噴射率、印字率とも呼ばれる)が少なくなるパターンである。グラデーション割当てパターンの具体的な設定例については、
図10以降で詳述する。なお、グラデーションは、単調増加・減少するものに限られず、移動平均をとったときに増加・減少していればよい。
【0072】
ここで、印画率とは、ヘッドユニットの各ヘッドにおける、ノズルと対応する画素データに係る画素のうち、画素データの値に応じてインクの吐出動作が行われて出力される画素の割合を示す値である。例えば、ヘッドユニット300を所定の速度で走査させたとき、特定のノズルを、X滴(Xは整数)吐出可能な場合であって、全ての位置でそのノズルが吐出動作を実行する場合は、100%になる。しかし、すべての位置では、吐出動作を行わない場合もあるため、X滴を母数として、実際に吐出動作を行うための出力データ(駆動データ)を印加する回数を、印画率(%)とする。
【0073】
不規則パターン設定部28Dは、グラデーション繰り返し単位毎に、不規則なノイズをのせる。この際、不規則なノイズをのせる際は、ランダム関数を利用してよいし、あるいは、他の方法により、ランダムなノイズを載せてもよい。
【0074】
なお、下記例では、グラデーション繰り返し単位において、グラデーションが掛かっていない中央部も含めて不規則にノイズをかける例を説明するが、本発明では、少なくともグラデーションにより印画率が変化している範囲に対しては、全域にランダムなノイズをのせるようにして、中央部には、ランダムなノイズをのせなくてもよい。
【0075】
画像用駆動波形生成部28Eは、マスク処理部の一例であって、繰り返し単位毎のグラデーションパターンを生成するためのグラデーションマスクを適用させ、及び少なくともノズル両端のグラデーション領域の上に不規則のノイズを重畳させた画像データを基に、駆動データを生成する。
【0076】
記録部14(ヘッド駆動部)は、画像用駆動波形生成部28Eで生成された、駆動データを基に、色毎の1つのヘッド(又はヘッドアレイ)300K~W、又は副走査方向に複数設けられるヘッドH1~H4(
図17参照)をそれぞれ駆動して、複数のノズルNから液体を吐出させる。
【0077】
なお、本ブロック図では、画像形成装置側で、グラデーション割当てパターンを調整する機能を有する例を説明したが、グラデーション割当てパターンを調整する機能は、PC2側のデータ作成部12B内に設けてもよい。
【0078】
さらに、PC2に接続される別の情報処理装置(例えば、上位装置)において、予めプログラムを設定し、演算ファイル(例えば、CSV(Comma Separated Value)ファイルやエクセルファイル)形式で記憶させておき、PC2においてそのプログラムを読み込むことで、グラデーション割当てパターンの吐出調整プログラムを実行させてもよい。
【0079】
<印刷シーケンス>
本発明のグラデーション及び不規則パターンの調整は、双方向印刷などのマルチパスインターレース(マルチパス印刷モード)に対して適用できる。
【0080】
ここで、マルチパスインターレースを含む、原稿(元データ)から走査毎の画像データを生成する際の画像変換における印刷シーケンスについて説明する。
図7は、複数の印刷シーケンスのパターンを示す図であって、画像変換処理の説明図である。
【0081】
データ作成部12B(
図6参照)は、画像変換処理として、印字幅と印字順序とヘッドアレイ300K~Wの構成に合わせて、1度の主走査方向Xへのヘッドユニット300の走査(1スキャン)で出力する画像単位で、画像データを変換する。
【0082】
図7(a)~(h)に示すマス目の含まれる四角のひとつが、記録画像の1ドットを表している。また、四角内部の数字が、ヘッドの走査順を表している。
図7に示すパターンを、主走査方向Xおよび副走査方向Yに繰り返す順序で、画像データが形成される。
【0083】
なお、主走査方向Xの打ち分け回数を、パスと称する場合がある。すなわち、主走査方向Xの打ち分け回数が1回であれば1パス、2回であれば2パスと称する。
【0084】
また、副走査方向Yの打ち分け回数を、インターレースと称する場合がある。すなわち、副走査方向Yの打ち分け回数が1回であれば1/1インターレース、2回であれば1/2インターレースと称する。
【0085】
また、打ち分け方の種類の数を、打ち分け回数Nと称する。具体的には、
図7(b)に示す1パス1/1インターレースであれば、N=1である。また、
図7(c)に示す2パス1/1インターレース又は、
図7(d)に示す1パス1/2インターレースであれば、N=2である。
【0086】
また、
図7(e)に示す2パス1/2インターレースであれば、N=4である。
図7(f)に示す4パス1/2インターレース又は、
図7(g)に示す2パス1/4インターレースであれば、N=8である。
図7(h)に示す4パス1/4インターレースであれば、N=16である。
【0087】
なお、
図7(b)、
図7(d)に示す1パスのシーケンスを通常モード、
図7(c)、
図7(e)、
図7(f)、
図7(g)、
図7(h)に示す複数のパスのシーケンスを、マルチパス印刷モードと呼ぶ場合もある。
【0088】
本発明の制御では、画像を重ね合わせて印刷する双方向印刷の際に、画像の重ね合わせに起因する濃度や光沢のバンディングを抑制するための制御であるため、記録媒体上の形成領域(着弾領域)は、
図7のようなマルチパスインターレースによって形成される。
【0089】
なお、インクジェット記録装置1、10では、予め初期設定の印刷方式の設定などで、マルチパス印刷モードとその際のマルチパス数の指定、インターレース印刷モードとそのインターレース数の指定が行われ、指定された印刷モード(マルチパス印刷モード)、マルチパス数、インターレース数が印刷方式としてメモリ(不図示)等の記憶媒体に記憶されている。
【0090】
下記、本発明のグラデーション割当てパターンの設定を、印刷シーケンスがマルチパスインターレースである場合について説明する。
【0091】
<マルチパスインターレースによる印刷で発生する光沢バンディングの例>
ここで、マルチパスインターレースの印刷モードで画像を形成する場合に発生する光沢バンディングについて、
図8、
図9を用いて、説明する。
【0092】
図8は、光沢バンディングが発生するしくみを説明する図であり、
図9は、光沢バンディングの説明図である。詳しくは、
図8では、
図7(f)や
図7(g)のN=8の印刷シーケンスを設定して、任意の画像領域に対して8回走査して記録媒体101に、画像を形成する場合に発生する光沢バンディングを示している。
図9では、(a)はブラックの塗りつぶし図の模式図であり、(b)複数の色で記録媒体を塗りつぶした写真である。
【0093】
図8に示すように、複数のヘッドアレイを用いて、双方向印刷を実施する場合、ドットの重なりの順番の違いにより、最も上層の色が異なる。
【0094】
このように双方向印刷を実施すると、インクがUV光を受けて化学反応する際に、ドットの色の重なりの順番の違いによって、インク吐出後、光が照射されるまでの時間の違いが発生するため、着弾後インクが硬化収縮している時間の違いに起因して、硬化部と未硬化部の境界が生じてしまう。このような硬化・未硬化の境界はヘッドの走査方向(主走査方向)に沿って帯状に生じることとなり、いわゆる光沢ムラである記録画像の光沢バンディングが生じる。
【0095】
このような境界は、
図8、
図9に示すように、ヘッドの主走査方向に沿って帯状に生じることとなり、硬化時の記録画像のインクの高さに起因する、光沢のムラである光沢バンディングが生じる。
【0096】
また、
図9(b)の写真に示すように、光沢バンディングは黒色(ブラック)で特に発生しやすい。
【0097】
<比較例>
図10は、比較例に係るヘッドと、印画率と、グラデーションを示す図である。
図10において、(a)はヘッド、(b)は印画率の分布、(c)は印画率の分布に沿った記録媒体上のグラデーションの例を示す図である。
【0098】
この比較例では、
図10(b)に示すように、印画率においてノズル列の両端で対称にグラデーションカーブをかけている。詳しくは、ノズル両端のグラデーション領域(設定領域)G1,G2のグラデーションカーブは、両端とも、S字カーブ形状であって、設定領域の幅は等しい。
【0099】
このS字カーブ形状が線対称である場合、一端側のグラデーションカーブと、他端側のグラデーションカーブは、設定領域G1,G2の範囲内において、ノズル端部(ノズル列の両端部)において、相互に濃度が補完できる。
【0100】
図11は、1ヘッドの記録ヘッド部に対して、比較例に係る印画率のグラデーションマスクを、1つの画像領域を8走査で形成する印刷シーケンスに適用した図である。
【0101】
図11に示すように、改行しながら走査するマルチパスインターレースの場合は、グラデーション領域(設定領域)は、キャリッジ200の走査における改行幅の整数倍に設定すると好適である。本例では、端部に向けて徐々に画像濃度を薄くするグラデーションマスクが設定される設定領域G1,G2が、パス(改行幅)dの2行分である例を示している。
【0102】
このように、各パスに改行しながら走査させるため、ヘッドの走査域の副走査方向はパス数に合わせて画像データはブロックに分割され、複数回のパスが重なり合うように、補完し合って画像を形成する。相互のブロック間のつなぎ目となるヘッド端部又はヘッドアレイ端部は、上述のように、グラデーションカーブが形成されているため、往路で形成した画像と復路で形成した画像との境界をわかりにくくするように補完しあう。
【0103】
よって、ヘッドの画像領域は、改行によって規定される複数のブロックに分割され、その異なるブロック間同士が、補完関係にある。
【0104】
詳しくは、印刷シーケンスがマルチパスインターレース(
図7(c)~
図7(h))の場合、副走査方向の複数のブロックに分割されて画像データが割り当てられる。例えば、改行によって副走査方向に移動しながら、走査方向に移動して、画像を形成する。その際に他の回の走査によって形成される画像同士が互いに補完し合うように、形成される。
【0105】
具体的には、
図11の例では、1つの画像領域内において、1走査目の搬送方向の上流端のグラデーション領域G2と、7走査目の搬送方向の下流端のグラデーション領域G1とが相補しあい、2走査目の搬送方向の上流端のグラデーション領域G2の中央側の一部と、8走査目の搬送方向の下流端のグラデーション領域G1の端部側の一部同士が相補しあっている。
【0106】
これにより、例えばベタ画像を形成する場合、8走査目以降の着弾領域では、すべて記録媒体101上に8層(8パス分)の画像が重なり合った8層積層構造になることになり、重なる層の厚さがほぼすべて等しくなる。したがって、重なった層の厚さの違いに起因する部分的な段差等は発生せず、光沢ムラをさらに抑制することができる。
【0107】
このようなグラデーションにより、ヘッド端部の濃度ムラと光沢ムラが、解消できるが、これらのグラデーションマスクは、規則的に印画率が変化するため、周期的なムラやドット合一などにより粒状感が悪化するおそれがある。
【0108】
<本発明の第1実施形態の印画率調整(1ヘッド部1ヘッドの例)>
図12は、1ヘッドの記録ヘッド部に対して、本発明の吐出調整を適用する図である。
図12において、(a)はヘッド、(b)は両端部にグラデーションマスクをかけた印画率の分布、(c)は(b)に不規則なノイズを重畳した本発明の印画率の分布を示す図である。
【0109】
本発明の第1実施形態に係る画像調整では、
図12(b)のようにノズル両端部に対称なグラデーションカーブをかけ、さらに
図12(c)のように、印画率を不規則に変化させる。
【0110】
ここで、
図12(b)で設定されるグラデーションマスクは、画像データに対して、副走査方向における記録ヘッド部の両端部を設定領域として、端になるほどノズルから吐出するドット数が少なくなるようなグラデーションのマスクをかける処理が実施されている。
【0111】
そして、ノズル列における、グラデーションがかかる両端部の設定領域Ga,Gbの幅、即ち、グラデーションが設定されるノズル数が、等しくなるように設定されている。そのため、両端で等しい範囲のグラデーションが相互に補完し合うことができる。
【0112】
ここで、本発明における、画像調整(吐出調整)の制御手法を
図13に示す。
図13は、本発明における、画像調整の設定手順を示すフローチャートである。
【0113】
ステップS1で、画像データと、印字モードが入力される。印字モードには、例えば、印刷スピードや、画像の種類(文字、イラスト、写真)、解像度の情報(高解像度、低解像度)等が含まれている。
【0114】
ステップS2で、印字モード及び画像データを参照して、印刷濃度及び印刷シーケンスを設定するとともに改行幅、及びグラデーション幅を設定する。グラデーションの設定領域は、改行幅の整数倍であると好ましい。
【0115】
ステップS3で、グラデーションの種類を設定する。グラデーションの種類は、上述の
図10に第1実施例のノズル両端で対称なS字形状のグラデーションカーブ、あるいは、後述する
図20、
図21に示す第2実施例の湾曲のグラデーションカーブ、第3実施例の線状のグラデーションカーブ等である。
【0116】
ステップS4で、両端部にグラデーション設定領域を含むグラデーション繰り返し単位を、ヘッドアレイ毎又はヘッド毎のいずれかに設定する。
【0117】
ステップS5において、グラデーション領域、あるいはグラデーション繰り返し単位全体の印画率を、不規則化するための不規則パターンの適用範囲及び種類を設定する。印画率を不規則化する際の不規則パターンの種類として、例えば、複数の種類のランダム関数から1つを選択することで、
図14に示すようなランダムパターンを生成してもよいし、あるいは固定の1つのランダム関数を適用させてもよい。あるいは、手動により不規則な値を設定してもよい。
【0118】
なお、繰り返し単位において、不規則パターンを、
図12(c)に示すようにグラデーションを適用する設定領域だけでなく中央領域にも適用する場合は、中央領域の印画率において、上方向にバラツいた部分で印画率が100%になり、その他のバラツキの平均や下方向にバラツク部分は100%未満となる。
【0119】
なお、本フローでは、S2で印刷シーケンスを設定した後、S3でグラデーションの種類を設定し、S4でグラデーションの繰り返し単位を設定し、S5で不規則パターンを設定する順で説明したが、順序は逆であってよく、あるいは、S3~S5は、同時であってもよい。
【0120】
ステップS6において、画像データに、S4で決定したグラデーション繰り返し単位の両端に、S3で決定した種類のグラデーションカーブのグラデーションマスク処理を実行する。
【0121】
そして、ステップS7で、S6のマスク処理後の画像データに、S5で設定した印画率の不規則化を実行し、不規則化実行後の画像データを駆動データとして出力して、記録部(ヘッド駆動部)14に送る。
【0122】
このような制御フローを設定することで、各パスの改行幅に対して、濃淡が変化する整数倍のグラデーション設定領域を設定し、且つ不規則化することで、パスが重なった際に互いに補完関係を一致させることができる。これにより、濃度ムラ及び光沢バンディングを防ぐことができるとともに、グラデーションに起因する粒状性が目立つことを抑止できる。
【0123】
なお、上記のグラデーションマスクの設定及び処理フローは画像形成装置において実行されてもよいし、あるいは画像形成装置に接続される情報処理装置によって実行されてもよい。
【0124】
さらに、このフローの後、実際に設定したグラデーションマスクを適用させた画像を記録媒体上に出力した後、光学検知手段(不図示)によりその画像を検知し、検知結果をフィードバックするように制御してもよい。
【0125】
<ランダムマスクパターン>
ここで、本発明の不規則パターンの一例のランダムマスクパターンを説明する。
図14は、ランダムマスクでのドット形成パターンの例を示している。
【0126】
本発明では、上述のS5、S7の不規則化の種類の設定及び不規則マスク処理において、一例として
図14に示すようなランダムマスクを用いたドット形成パターンを適用できる。
【0127】
ランダムマスクパターンは、主走査方向および副走査方向に対して、不規則にドットを配置するパターンであって、空いている部分は、別の走査で補完する。
【0128】
例えば、ベタ画像を印刷する場合、規則的に同じノズルから液滴を吐出し続けていくと、ドット合一を引き起こし、画像のムラや粒状感が悪化する可能性がある。ランダムマスクパターンのような不規則なパターンを用いることで上記画像品質を改善できる。さらに、グラデーションと組み合わせることで、光沢ムラも合わせて抑制できる。
【0129】
また、特に濡れ性が高いインク、例えばブラックは、複数の色のインクを重ねて画像を形成するため、光沢バンディングが発生しやすいが、このように、マスク処理を行うことで、ブラックのベタ画像であっても、光沢バンディングを低減することができる。
【0130】
なお、
図14に示すランダムマスクは一例であって、例えばランダム関数を選択することで、ランダムマスクの隙間の大きさなどが異なる複数のランダムマスクの中から任意の大きさの隙間を有するランダムマスクを適用させることができる。
【0131】
(第1実施例の適用例1)
図15は、
図2~
図4のように記録ヘッド部が記録媒体に対して副走査方向に移動する構成において、1ヘッドの記録ヘッド部に対して、本発明に係る印画率のグラデーション及び不規則マスクを、1つの画像領域を8走査で形成する印刷シーケンスに適用した図である。
【0132】
本適用例では、副走査移動動作が、記録ヘッド部を、記録媒体に対して相対的に副走査方向に移動させる動作である。
【0133】
本構成に第1実施例を適用する場合、ヘッド300Kの移動方向に対し末尾側のノズル端部の設定領域Gaと、ヘッド300Kの移動方向に対し先頭側のノズル端部の設定領域Gbに、印画率が変化するグラデーションカーブを設定する。
【0134】
さらに、本発明では、上述の
図11と同様に、ヘッド300Kの両端に不規則なグラデーションカーブをかけることで、他の回の走査によって形成される画像同士が互いに補完し合うように、層が形成される。
【0135】
また、このようなS字状のグラデーションにより、着弾領域における最上層の改行幅では、グラデーションが大きく変化するため、ヘッド端部の濃度ムラと、光沢ムラは、解消できる。
【0136】
しかし、
図12(b)に示すグラデーションカーブだけでは、規則的なグラデーションのため、連続的な濃度変化に対して、ドット合一の確率も同じように変化し、周期的なムラが発生し、粒状感が悪化するおそれがある。
【0137】
そこで、本発明では、不規則パターンによってランダムに印画率が変化させることで、粒状感が出ることを抑制できる。
【0138】
これにより、高生産な作像モードであっても、記録媒体上の着弾領域におけるグラデーションによって濃度ムラ及び光沢バンディングを抑制しつつ、さらに、不規則パターンによって粒状感も抑制することができる。
【0139】
なお、不規則パターンのバラツキが大きすぎると、グラデーションの原型がなくなってしまい、グラデーションによる濃度ムラ及び光沢ムラ抑制の効果がなくなってしまうため、不規則パターンによるばらつきは、50%以内にすると好適である。
【0140】
(第1実施例の適用例2)
図16は、記録媒体が記録ヘッド部に対して副走査方向に搬送される構成(変形例の構成)において、1ヘッドの記録ヘッド部に対して、本発明の第1実施例に係る印画率のグラデーション及び不規則マスクを、1つの画像領域を8走査で形成する印刷シーケンスに適用した図である。
【0141】
本適用例では、副走査移動動作が、記録媒体101を、ヘッド300Kに対して相対的に副走査方向に移動して搬送させる動作である。
【0142】
本構成に第1実施例を適用する場合、記録媒体101の搬送方向に対し下流側のノズル端部の設定領域Gcと、記録媒体101のKの搬送方向に対し上流側のノズル端部の設定領域Gdに、印画率が変化するグラデーションカーブを設定する。ノズル両端のグラデーション領域(設定領域)Gc,Gdのグラデーションカーブは、両端とも、S字カーブ形状であって、設定領域の幅は等しい。
【0143】
そのため、本実施例では、濃度及び光沢ムラについて、ほぼ完全に補いあうことができる。
【0144】
図11の比較例を本構成に適用させると、これらのグラデーションマスクは、規則的なグラデーション変化のため、周期的なムラやドット合一などにより粒状感が表れて、画像品質が悪化する恐れがある。
【0145】
しかし、本発明では、不規則なパターンにより、ランダムに印画率が変化するため、ドット合一の確率も低下(分散)し、画像品質を改善できる。
【0146】
これにより、高生産な作像モードであっても、記録媒体上の着弾領域におけるグラデーションによって濃度ムラ及び光沢バンディングを抑制しつつ、さらに、不規則パターンにより粒状感も抑制することができる。
【0147】
ここで、
図12、
図15、
図16のように、それぞれの色の記録ヘッド部が1つのヘッドで構成される場合は、ヘッドに対して副走査方向において、1つのヘッドの両端部に、グラデーションマスク処理をかけた。
【0148】
一方、それぞれの色の記録ヘッド部が、副走査方向に複数のヘッドを有するヘッドアレイの場合、「ヘッドアレイの両端部にグラデーションマスク処理及び印画率の不規則化を実行する」か、「ヘッドアレイの各ヘッドの慮端部にグラデーションマスク処理及び印画率の不規則化を実行する」かのいずれかを選択することができる。下記、記録ヘッド部が複数のヘッドを有する場合について説明する。
【0149】
<1ヘッド部複数のヘッドの構成例>
ここで、それぞれのヘッドアレイに複数のヘッドが設けられている例の一例を
図17に示す。
図17は、本発明の第2のヘッド構成として、複数のヘッドが千鳥状にヘッドアレイに搭載される画像形成ユニット周辺の平面図である。
【0150】
図17に示すように、本実施例に係る画像形成ユニット300aは、シリアル型のヘッドアレイを備える。
図5の左側からブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)、クリア(CL)、ホワイト(W)に対応する6つのヘッドアレイ(記録ヘッド部)300Ka、300Ca、300Ma、300Ya、300CLa及び300Waが配置されている。
【0151】
本実施形態に係るブラック(K)のヘッドアレイ300Kaは、副走査方向Yの移動方向又は記録媒体101の搬送方向Tと平行なノズル列方向Yに4つのヘッドH1、H2、H3及びH4を千鳥状に配置している。ヘッドH1、H2、H3、及びH4はそれぞれX方向に複数のノズル列NAを有している。
【0152】
それぞれのヘッドH1、H2、H3、及びH4では、記録媒体101上に液滴を吐出する複数のノズルがノズル列方向(副走査方向)に列をなしている。ヘッドH1、H2、H3、及びH4のそれぞれにおいて、ノズル列は、1つであっても、X方向に2列以上並列していてもよい。
【0153】
ヘッドアレイ300Kaでは、隣接するヘッドのノズル列の端部同士が、ノズル列方向Yでオーバーラップし、副走査方向Y(搬送方向T)で異なる位置にあるように配置されている。ノズル列方向Yは、搬送方向と同じ方向である。
【0154】
図17において、隣接するヘッドのノズル列の端部同士がノズル列方向Yでオーバーラップしている領域を、太線点線部Oa,Ob,Ocで示す。この領域をオーバーラップ部Oa、Ob、Ocとする。
【0155】
隣接するヘッドのノズル列の端部同士がノズル列方向Yでオーバーラップすることにより、画像形成ユニット300aは、記録媒体101のノズル列方向Yにおいて、ヘッド間で切れ目なく画像を形成することができる。なお、他のヘッドアレイ300Ca、300Ma、300Ya、300CLa及び300Waの構成は、ブラック(K)のヘッドアレイ300Kaの構成と同様のため、説明を省略する。
【0156】
なお、
図17では、ヘッドアレイ300Kaにおいて、4つのヘッドH1~H4が設けられる例を示したが、ヘッドアレイに設けられるヘッドの個数、配置はこれに限られるものではなく、適宜変更することができる。なお、下記の
図18、
図19の例に関する、画像調整を行うには、各ヘッドアレイにおいて、副走査方向Yに2つ以上のヘッドが設けられていることを前提としている。
【0157】
<グラデーション繰り返し単位例2(1ヘッド部複数のヘッドの例)>
次に、複数のヘッドを有するヘッドアレイであって、「ヘッドアレイの両端部にグラデーションマスク処理を実行する」制御について、
図18を用いて説明する。
【0158】
図18は、グラデーションマスクを、2つのヘッドを含むヘッドアレイ300Kbをグラデーション繰り返し単位として適用した図である。
【0159】
図18に示すように、ヘッドアレイは、ノズル列が形成されたヘッドを複数有し、隣接するヘッドにおけるノズル列の端部が副走査方向でオーバーラップし、走査方向で異なる位置にあるように配置されている。
【0160】
そして、ヘッドアレイの副走査方向全域を、記録ヘッド部でのグラデーション繰り返し単位として、副走査方向における、ヘッドアレイ300Kbの両端部を設定領域Ga,Gb(又はGc,Gd)として、グラデーションマスク処理を実行し、さらに印画率の不規則化を実行する。
【0161】
この制御により、高生産な作像モードであっても、記録媒体上の着弾領域におけるヘッドアレイ単位のグラデーションによって濃度ムラ及び光沢バンディングを抑制しつつ、さらに、不規則パターンにより粒状感も抑制することができる。
【0162】
<グラデーション繰り返し単位例3(1ヘッド部複数のヘッドの例)>
次に、複数のヘッドを有するヘッドアレイであって、「ヘッドアレイの各ヘッドにグラデーションマスク処理を実行する」制御について、
図19を用いて説明する。
【0163】
図19は、グラデーションマスクを、ヘッドアレイのヘッド毎にグラデーション繰り返し単位として適用した図である。
【0164】
図19に示すように、ヘッドアレイの構成は、
図18と同様である。本制御では、ヘッドアレイの各ヘッドの副走査方向全域を記録ヘッド部のグラデーション繰り返し単位として、副走査方向における、各ヘッドH1,H2の両端部を設定領域(Ga1,Gb1,Ga2,Gb2)又は(Gc1,Gd1,Gc2,Gd2)として、グラデーションマスク処理を実行し、さらに印画率の不規則化を実行する。
【0165】
この制御により、高生産な作像モードであっても、記録媒体上の着弾領域におけるそれぞれのヘッドアレイ単位のグラデーションによって濃度ムラ及び光沢バンディングを抑制しつつ、さらに、不規則パターンにより粒状感も抑制することができる。
【0166】
図18、
図19では、ヘッドアレイにおいて、オーバーラップ部がない構成について説明したが、
図17のようにオーバーラップ部を有するヘッドアレイに対しても、
図18、
図19と同様の制御を適用できる。
【0167】
図17に示すオーバーラップ部を有するヘッドアレイに対して、
図19に示すようにヘッドを繰り返し単位として本発明の画像調整の制御を実行する場合は、オーバーラップ幅は改行幅の整数倍、又は改行幅はオーバーラップ幅の整数倍であって、グラデーションが適用される設定領域(Ga1,Gb1,Ga2,Gb2)は、オーバーラップ幅の整数倍に設定されると好適である。
【0168】
さらに、
図17~
図19では、1つのヘッドアレイにおいて、千鳥状に複数のヘッドが配列される例を説明したが、副走査方向において、同一直線上の列状にヘッドを有するヘッドアレイに対しても本発明の画像調整の制御を適用できる。
【0169】
即ち、列状にヘッドを有するヘッドアレイにおいても、「ヘッドアレイの両端部にグラデーションマスク処理及び印画率の不規則化を実行する」又は「ヘッドアレイの各ヘッドの両端部にグラデーションマスク処理及び印画率の不規則化を実行する」という制御を実施できる。
【0170】
<第2実施例>
図20は、本発明の第2実施例の印画率の説明図である。
【0171】
本実施例では、ノズル両端のグラデーション領域(設定領域)Ge,Gfのグラデーションカーブは、両方とも、凸の濃度が高い領域が多いカーブである。
【0172】
本制御では、第1実施例同様に、不規則パターンにより粒状感を抑制することができる。
【0173】
また、最上層において、濃度が高い状態で変化するため、グラデーションの印画率変化による濃度ムラ及び光沢バンディングも抑制できる。
【0174】
ただし、このグラデーションは両端の設定領域は、完全な相補関係ではないため、8走査目以降において8層積層の他に9層積層の部分が存在することになる。そのため、若干、光沢バンディングの解消効果が弱くなる。しかし、本発明では、不規則なパターンをかけてるため、若干の相補関係の不足は補うことができる。
【0175】
なお、
図20では、グラデーションカーブは凸状のカーブである例を示したが、直線に対して濃度の低い面積が多い凹状のカーブであってもよい。本発明では不規則なパターンをかけるため、若干の相補関係の不足は補うことができる。
【0176】
<第3実施例>
図21は、本発明の第3実施例の印画率の説明図である。
【0177】
本実施例では、ノズル両端のグラデーション領域(設定領域)Gg,Ghのグラデーションカーブは、両方とも、直線状である。
【0178】
本実施例では、両端のグラデーションカーブは直線状のため、端部からの位置が等しいノズルにおいて、印画率の合計が100%となる補完関係が成立する。これにより、
図11で示すように、マルチパスインターレースの際に、ノズル端部において、相互に濃度が補完できる。
【0179】
本実施例においても、第1実施例同様に、不規則パターンにより粒状感を抑制することができる。
【0180】
また、両端の設定領域は、領域の幅が等しく、線対称である場合、下流側のグラデーションカーブと、上流側のノズルグラデーションカーブは、設定領域の範囲内において、上流端からの位置が等しいノズルにおいて、印画率の合計が100%となる補完関係が成立する。そのため、8走査目以降、8層構造という点では、濃度及び光沢ムラについて完全に補いあうことができる。
【0181】
また、いずれの実施例においても、少なくとも印画率が変化する部分、又はグラデーション繰り返し単位全域に対して、不規則なノイズをかけることにより、グラデーションによるドットの間隔が変化することで発生する粒状感を、抑制することができる。
【0182】
なお、
図20、
図21では、記録ヘッド部に1つのヘッドを有する構成に対して印画率を調整する例を説明したが、第2実施例、第3実施例に係るグラデーションマスクと不規則ノイズの組み合わせの制御について、記録ヘッド部に複数のヘッドを有する構成に対して適用してもよい。例えば、第2実施例、第3実施例の印画率制御を、
図18に示すように2つのヘッドを含むヘッドアレイのヘッドアレイ全体をグラデーション繰り返し単位として適用してもよい。あるいは、第2の実施例の印画率制御を、
図19に示すように2つのヘッドを含むヘッドアレイの各ヘッドをグラデーション繰り返し単位として適用してもよい。
【0183】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0184】
14 記録部(ヘッド吐出駆動部)
13,130 ステージ(副走査方向の移動部)
19 ガイドロッド(走査方向の移動部)
29 ガイドレール(副走査方向の移動部)
28A 印刷シーケンス設定部
28B グラデーション種類選択部(グラデーション設定部)
28C グラデーション繰り返し単位設定部(グラデーション設定部)
28D 不規則パターン設定部
28E 画像用駆動波形生成部
101 記録媒体
200 キャリッジ(移動部)
300 画像形成ユニット
300K,300C,300M,300Y,300CL,300W ヘッドアレイ(記録ヘッド部)
300Ka,300Kb,300Ca,300Ma,300Ya,300CLa,300Wa ヘッドアレイ(記録ヘッド部)
400 照射ユニット
H1、H2 ヘッド(記録ヘッド部)
Ga,Ga1,Ga2 記録ヘッド部の移動方向に対して末尾側のノズル端部のグラデーション設定領域(設定領域)
Gb,Gb1,Gb2 記録ヘッド部の移動方向に対して先頭側のノズル端部のグラデーション設定領域(設定領域)
Gc,Gc1,Gc2 記録媒体の搬送方向に対して下流側のノズル端部のグラデーション設定領域(設定領域)
Gd,Gd1,Gd2 記録媒体の搬送方向に対して上流側のノズル端部のグラデーション設定領域(設定領域)
Ge,Gf,Gg,Gh,Gi,Gj ノズル端部のグラデーション設定領域(設定領域)
X 走査方向
Y 副走査方向(ノズル列方向)
T 搬送方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0185】