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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20240312BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240312BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/165 101
B41J2/17 205
B41J2/01 451
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020051405
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146701
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 英尚
(72)【発明者】
【氏名】戸田 直博
(72)【発明者】
【氏名】濱口 昌也
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131435(JP,A)
【文献】特開2014-028444(JP,A)
【文献】特開2010-274525(JP,A)
【文献】特開2011-167960(JP,A)
【文献】特開2019-163870(JP,A)
【文献】特開2004-061580(JP,A)
【文献】特開2013-176934(JP,A)
【文献】特開2009-184132(JP,A)
【文献】特開2004-243662(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0191016(US,A1)
【文献】米国特許第06402293(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/17
B41J 2/165
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドが有するノズル面をカバーするヘッドキャップと、
前記ヘッドキャップの下流側に設置され、液を一時的に貯留するバッファタンクと、
前記ヘッドキャップと前記バッファタンクを連通する第一連通路と、
前記バッファタンクに貯留された前記液を加温する第一ヒーターと、
装置内の熱源から排出される排熱を前記バッファタンクに導入する第一排熱導入路と、
前記排熱を一時的に蓄熱する蓄熱装置と、
を備え、
前記第一排熱導入路は、前記熱源からの排熱を前記蓄熱装置に導入する第一部分導入路と、前記蓄熱装置から前記バッファタンクに前記排熱を導入する第二部分導入路と、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドが有するノズル面をカバーするヘッドキャップと、
前記ヘッドキャップの下流側に設置され、液を一時的に貯留するバッファタンクと、
前記ヘッドキャップと前記バッファタンクを連通する第一連通路と、
前記バッファタンクに貯留された前記液を加温する第一ヒーターと、
装置内の熱源から排出される排熱を前記バッファタンクに導入する第一排熱導入路と、
前記バッファタンクに貯留されている液量や当該バッファタンクに貯留される液の粘性を調整するための調整液体を貯留する注水タンクと、
前記注水タンクと前記ヘッドキャップとを連通する注水管路と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドが有するノズル面をカバーするヘッドキャップと、
前記ヘッドキャップの下流側に設置され、液を一時的に貯留するバッファタンクと、
前記ヘッドキャップと前記バッファタンクを連通する第一連通路と、
前記バッファタンクに貯留された前記液を加温する第一ヒーターと、
装置内の熱源から排出される排熱を前記バッファタンクに導入する第一排熱導入路と、
前記バッファタンクの下側に配置され前記バッファタンクから排出した廃液を貯留する廃液タンクと、
前記廃液タンクの液面を検知する廃液面検知センサと、
前記バッファタンクと前記廃液タンクを連通する廃液連通路と、
前記廃液連通路に設置され、前記廃液の流量を制御する廃液制御弁と、
前記熱源から排出される排熱を前記廃液タンクに導入する第二排熱導入路と
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
前記第一排熱導入路は、前記排熱を前記バッファタンクへ送りだす量を制御する制御弁を備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第一排熱導入路は、前記熱源から前記バッファタンクに前記排熱を導入する第一分岐導入路と、前記熱源から前記蓄熱装置に前記排熱を導入する第二分岐導入路と、前記蓄熱装置から前記第一分岐導入路に前記排熱を導入する第三分岐導入路と、を備え、
前記熱源からの前記バッファタンクへの前記排熱の導入を、
前記第一分岐導入路のみを介する態様と、
前記第二分岐導入路と前記蓄熱装置と前記第三分岐導入路を介する態様と、
前記第一分岐導入路を介する態様と、前記第二分岐導入路と前記蓄熱装置と前記第三分岐導入路を介する態様と、を組み合わせた態様と、のいずれかを選択的に切り替る、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記バッファタンクの液面を検知する液面検知センサと、
前記バッファタンクの内部空間の温湿度を検知する温湿度検知センサと、を備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記注水タンクは、前記調整液体を加熱する第二ヒーターを備える、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記ヘッドキャップは、開口部を開閉する開閉機構を備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記廃液タンクに貯留された前記廃液を加温する第三ヒーターを備える、請求項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体をノズルから吐出する液体吐出装置において、液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドの吐出性能を維持することを目的とし、液滴吐出ヘッドが備えるノズルの状態を整えるノズルメンテナンス装置を備えるものがある。ノズルメンテナンス装置には様々な種類がある。
【0003】
その一種として、ヘッドキャップと廃液を貯留するタンクとを配管で接続し、液滴吐出ヘッドにヘッドキャップを装着させた状態で「液滴捨て吐出動作(以下、「パージ」とする。)」を実行し、ノズル近傍の余分な液体を排除する装置が知られている。なお、ヘッドキャップは、液滴吐出ヘッドのノズル側を覆うように密着可能な構造を有する保護部材である。
【0004】
また、液滴吐出ヘッドに吐出動作をさせていない待機時などにおいて、液滴吐出ヘッドのノズル面にヘッドキャップを被せておき、ノズル面及びノズル面近傍と貯留タンクとの間の経路を閉空間にして乾燥を防ぐ技術も知られている。当該技術は、ノズル面を含むノズル近傍や経路を保湿して、液体が固化することを防止することを目的としている。
【0005】
液滴吐出ヘッドとヘッドキャップを被せると、その当接部分(ニップ面)に液体が付着
する。ニップ面に付着した液体が乾燥すると、ノズル面とニップ面の密着度合いが低下して、ノズル面の乾燥防止やパージにおける吐出性能の回復度合いに悪影響を与える。また、ノズル面とヘッドキャップの密着度が低下すると、ヘッドキャップと貯留タンクを連通させる配管に液体が固化して詰まり、パージを実行したときに廃液の回収ができないことも懸念される。
【0006】
従来、ノズル面などの乾燥を防ぐ目的で、ヘッドキャップと貯蔵タンクとの間に、液体を回収するための配管と蒸気管とを備え、貯液タンクをヒーターで加熱して発生させた蒸気で加湿をする技術が知られている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、速乾性の液体を使用しているときに待機時間が長くなり、ニップ面が空気にさらされる時間が長くなると、ニップ面での液体の乾燥や、タンクまでの経路内における液体の乾燥を防ぐためには、加湿のための蒸気の発生を多くさせる必要がある。特許文献1の技術では経路内の加湿、ニップ面の加湿のためには、経路内を蒸気で満たす必要がある。そのためには、ヒーターの設定温度を高くする必要があり、消費エネルギーが多くなるという課題が生ずる。
【0008】
本発明は、液滴吐出ヘッドに当接させたヘッドキャップから貯蔵タンクへの経路の乾燥防止に係るエネルギー消費を低減できる液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、液体吐出装置に関し、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドが有するノズル面をカバーするヘッドキャップと、前記ヘッドキャップの下流側に設置され、液を一時的に貯留するバッファタンクと、前記ヘッドキャップと前記バッファタンクを連通する第一連通路と、前記バッファタンクに貯留された前記液を加温する第一ヒーターと、装置内の熱源から排出される排熱を前記バッファタンクに導入する第一排熱導入路と、前記排熱を一時的に蓄熱する蓄熱装置と、を備え、前記第一排熱導入路は、前記熱源からの排熱を前記蓄熱装置に導入する第一部分導入路と、前記蓄熱装置から前記バッファタンクに前記排熱を導入する第二部分導入路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液滴吐出ヘッドに当接させたヘッドキャップから貯蔵タンクへの経路の乾燥防止に係るエネルギー消費を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る液体吐出装置の一実施形態を示す側面説明図。
図2】上記液体吐出装置が備える液滴吐出ヘッドの構成を説明する構成図。
図3】上記液体吐出装置が備えるメンテナンス装置の例を説明する構成図。
図4】上記液体吐出装置が備えるメンテナンス装置の別の例を説明する構成図。
図5】上記液体吐出装置が備えるメンテナンス装置のさらに別の例を説明する構成図。
図6】上記液体吐出装置が備えるメンテナンス装置のさらに別の例を説明する構成図。
図7】上記液体吐出装置が備えるメンテナンス装置のさらに別の例を説明する構成図。
図8】上記液体吐出装置が備えるメンテナンス装置のさらに別の例を説明する構成図。
図9】上記液体吐出装置が備えるメンテナンス装置のさらに別の例を説明する構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施形態について説明する。図1は、液体吐出装置の実施形態であるインクジェットプリンタ10の概要を説明するための図である。
【0013】
図1に示すインクジェットプリンタ10は、液滴吐出ヘッド52から液滴を出力し、出力した液滴を記録媒体としての対象物Pに対して付与する装置である。インクジェットプリンタ10は、例えば、液体インクを液滴吐出ヘッド52から出力させて、用紙等の対象物Pに画像を形成する画像形成装置の一例である。
【0014】
図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、液滴出力時に対象物Pを周面に保持して搬送する搬送ドラム11と、対象物Pを積載して搬送ドラム11に供給する給紙トレイ12と、搬送ドラム11の周面で液体が吐出されて搬送させる対象物Pを受け取り積載する排紙トレイ13と、搬送ドラム11の周面に保持された対象物Pに対して液体を出力する液体出力機構30と、を備える。
【0015】
搬送ドラム11は、例えば、給紙トレイ12から送られてきた対象物Pをドラムの周面方向に搬送する。搬送ドラム11の周面には、搬送ドラム11の内周側に設けられている負圧空間部に貫通する複数の小孔が設けられており、当該負圧空間部が負圧発生ポンプで負圧状態になることで、対象物Pは、搬送ドラム11の周面に密着状態に保持される。対象物Pは、例えば、シート状の用紙である。搬送ドラム11は周面に対象物Pを密着させならば、回動する。このとき、液体出力機構30との対向位置を対象物Pが移動するので、その移動のタイミングに応じて液滴吐出ヘッド52から液滴が出力される。
【0016】
給紙トレイ12に積載されている対象物Pは、分離ローラ14と給紙ローラ16により捌かれて一枚ずつ搬送ドラム11の搬送部(給紙位置と排紙位置との間のドラム上半周面側の領域)へ送られる。また、搬送ドラム11の周面の排紙位置に搬送される、液体が付与された対象物Pは、排紙ローラ15,送り込みローラ17により捌かれて排紙トレイ13に積載される。
【0017】
また、図1に示すように、液体出力機構30は、搬送ドラム11の搬送部に対応する周面の上側外方に放射状に六つ設けられているヘッドアレイ50(50a,50b,50c,50d,50e,50f)と、各ヘッドアレイ50に対応して搬送ドラム11の周面と各ヘッドアレイ50との間に配設されたヘッドキャップ70(70a,70b,70c,70d,70e,70f)と、を備える。
【0018】
図1に示すように、ヘッドアレイ50は、ヘッドアレイ本体51と、ヘッドアレイ本体51に保持される複数の液滴吐出ヘッド52と、を有する。各ヘッドアレイ本体51は、長手方向(Z軸方向)がドラム軸方向に一致し、長手方向の両端が搬送ドラム11の長手方向の端部に対応している。また、ヘッドアレイ本体51は、液滴吐出ヘッド52からの液体の出力動作を担う出力機構を含む。出力機構は、例えば、液滴吐出ヘッド52から出力される液体を貯留するヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを含む。
【0019】
液滴吐出ヘッド52は、液体を出力し、対象物Pに対して液体を付与するものである。図2は、実施形態に係るヘッドアレイの構成の一例を示す概略平面図である。図2に示すヘッドアレイ50は、千鳥配列(staggered array, staggered arrangement)に設けられた複数の液滴吐出ヘッド52を有する。液滴吐出ヘッド52は、搬送ドラム11の回転方向である主走査方向(X軸方向)と直交する副走査方向(Z軸方向)に沿って配列される。異なる列に設けられた液滴吐出ヘッド52は、それぞれ半ピッチずれた状態で設けられている。複数の液滴吐出ヘッド52は、第1の方向(Z軸方向)に沿って配列され、第1の方向に直交する第2の方向(X軸方向)から透視した場合に第1の方向に沿って隣
接するヘッドと重なり領域が生じるように設けられる。
【0020】
複数の液滴吐出ヘッド52は、図2の例では、一方の列が五つ並びに、他方の列が六つ並びに設けられている。なお、液滴吐出ヘッド52の個数は、これに限定されず、各列に設けられる液滴吐出ヘッド52の数は、五つまたは六つ以上であってもよい。また、各列に同じ数の液滴吐出ヘッド52が設けられてもよい。図1に戻り、ヘッドキャップ70は、液滴吐出ヘッド52に対して、液体の付与面(ノズル形成面)およびその周辺のメンテナンス処理を行う装置の一部を構成する部材である。メンテナンス処理は、例えば、液体出力ヘッドにおける液体の増粘や固着が原因で発生する目詰まりを予防または解消するための整備、保守、点検または手入れを行う処理である。
【0021】
ヘッドキャップ70は、図1に示すように、搬送ドラム11の周面と各ヘッドアレイ50との間に設けられる。各ヘッドキャップ70は、各ヘッドアレイ50に対応させて設けられ、ヘッドアレイ50の数だけ設けられている。ヘッドキャップ70のそれぞれは、対応するヘッドアレイ50に備えられた液滴吐出ヘッド52に対するメンテナンス処理を行う。なお、ヘッドキャップ70は、各ヘッドアレイ50のおけるノズル面全体を覆って密着するために開口部を有している。
【0022】
インクジェットプリンタ10が稼働しているとき、すなわち、対象物Pが給紙トレイ12から供給されて搬送ドラム11の周面に密着して搬送されるように搬送ドラム11が回動しているときや、液体出力機構30において液滴吐出動作が実行されているときには、それぞれの構成物において熱を発する。これらの熱は排熱であって、インクジェットプリンタ10の動作には直接必要ではない。一方、これらの熱を放置すると、搬送ドラム11や液体出力機構30の動作環境が悪化して障害が発生する原因にもなり得る。したがって、排熱はインクジェットプリンタ10の外部に排出する必要がある。以下の実施形態の説明において、インクジェットプリンタ10が稼働することで排熱を発生する機構及び構成物を総称して「熱源700」と表記する。
【0023】
[第一実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の実施形態について、図3を用いて説明する。図3は、インクジェットプリンタ10が備えるメンテナンス装置20を中心に記載した構成図である。
【0024】
図3において、メンテナンス装置20は、ヘッドキャップ70と液滴吐出ヘッド52とのノズル面(ノズルプレート)との接触領域である「ニップ面」、およびヘッドキャップ70から廃液タンク220までの経路を保湿する構造を備えている。また、保湿のために廃液を蒸気にするために、廃液を一時的に貯留させる一時貯留部としてのバッファタンク210を備えている。また、バッファタンク210の内部の温度を上昇させるために熱源700から排熱を導入するための排熱導入路と、バッファタンク210に貯留されている廃液に加熱する加熱手段とを備えている。これらによって、「ニップ面」に付着した液体が空気に触れて乾燥しないようできる。
【0025】
メンテナンス装置20は、排熱をバッファタンク210に導入する第一排熱導入路としての第一排熱連通路500aを備える。第一排熱連通路500aの途中には、制御弁としての第一排熱バルブ400eが設置されている。メンテナンス装置20は、ニップ面の乾燥を防ぐための蒸気を発生させる熱として排熱を利用可能にする構成を備える。
【0026】
熱源700からバッファタンク210に送る排熱の量は、第一排熱バルブ400eによって制御される。
【0027】
バッファタンク210は、パージによって吐出されヘッドキャップ70で回収された液体(廃液)を廃液タンク220に直接送るのではなく、一時的に貯留するための一時貯留部に相当する。メンテナンス装置20は、ヘッドキャップ70と廃液タンク220を直接的に連通させず、ヘッドキャップ70とバッファタンク210を連通する第一連通路としての第一連通経路300aと、バッファタンク210と廃液タンク220とを連通する廃液連通路300bを介して連通させる。なお、廃液連通路300bには、廃液の移動量を制御するための廃液制御弁としての第一廃液バルブ400bが取り付けられている。
【0028】
バッファタンク210には、一時的に貯留される廃液(液体インク)を加熱する加熱手段としての第一ヒーター211が設置されている。第一ヒーター211は、バッファタンク210に貯留する液体を直接的に加熱する熱源として、バッファタンク210の底部近傍に設置される。
【0029】
また、バッファタンク210には、バッファタンク210の内部空間の環境条件(温度・湿度)を検出する温湿度検知センサ212と、貯留している液量を検出する液面検知センサ213も設けられている。
【0030】
なお、廃液タンク220には、廃液の貯留量を検知するための廃液面検知センサ223が設置されている。廃液タンク220は交換可能な構成になっていて、廃液の貯留量が所定の閾値を超えたときに空の廃液タンク220と交換される。
【0031】
以上説明をした本実施形態に係るメンテナンス装置20を備えるインクジェットプリンタ10によれば、廃液を貯留したバッファタンク210において、熱源700からの排熱の送風量と第一ヒーター211による加温によって所定の温湿度環境になるように制御し、蒸気を発生させる。この蒸気の発生に要するエネルギーは、第一ヒーター211だけではなく排熱を利用できるので、エネルギー消費を低減できる。そして、省エネルギー化した蒸気発生構造を利用して、第一連通経路300aとヘッドキャップ70及び液滴吐出ヘッド52のノズル面を湿潤させることができ、これらの乾燥を防止できる。
【0032】
すなわち、本実施形態に係るメンテナンス装置20によれば、速乾性の液体を使用して乾燥しやすい状況であっても、効果的に液体の乾燥を防止しつつ、それに要するエネルギーの消費量を低減できる。
【0033】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の別の実施形態について、図4を用いて説明する。図4に示すインクジェットプリンタ10が備えるメンテナンス装置20aは、熱源700からの排熱を一時的に蓄熱する蓄熱手段としての蓄熱装置230を備える。
【0034】
メンテナンス装置20aは、熱源700から排熱をバッファタンク210に導入させる第一排熱導入路の構成において、蓄熱装置230を含む。熱源700と蓄熱装置230は第一部分導入路としての第二排熱連通路500bによって連通し、蓄熱装置230とバッファタンク210は第二部分導入路としての第三排熱連通路500cに連通するように構成されている。
【0035】
また、第二排熱連通路500bには熱源700からの排熱の送風量を制御するための第一排熱バルブ400eが配置されている。第三排熱連通路500cには蓄熱装置230からバッファタンク210に送風される熱の量を制御するための第二排熱バルブ400fが配置されている。
【0036】
本実施形態に係るメンテナンス装置20aは、熱源700からの排熱を蓄熱装置230において一旦蓄熱することで、インクジェットプリンタ10がメンテナンスや予期せぬ不具合で動作しない状態が継続したときに、蓄熱装置230にある熱を利用する。
【0037】
すなわち、インクジェットプリンタ10の動作が停止して熱源700からの排熱量が少なくなったときは、バッファタンク210に設置されている第一ヒーター211と蓄熱装置230からの熱を用いて、バッファタンク210が所定の温湿度環境になるように制御する。これによってヘッドキャップ70などを湿潤させるための蒸気を継続的に発生させる。この蒸気の発生に要するエネルギーは、第一ヒーター211だけではなく排熱を利用できるので、エネルギー消費を低減できる。そして、省エネルギー化した蒸気発生構造を利用して、第一連通経路300aとヘッドキャップ70及び液滴吐出ヘッド52のノズル面を湿潤させることができ、これらの乾燥を防止できる。
【0038】
すなわち、本実施形態に係るメンテナンス装置20aによれば、速乾性の液体を使用し、また、液滴吐出ヘッド52の待機時間が長時間になり乾燥しやすい状況下においても、効果的に液体の乾燥を防止しつつ、それに要するエネルギーの消費量を低減できる。
【0039】
[第三実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の別の実施形態について、図5を用いて説明する。図5に示すインクジェットプリンタ10が備えるメンテナンス装置20bは、注水タンク240と、注水タンク240とヘッドキャップ70を接続する注水管路としての液体流路300cを、備える。
【0040】
注水タンク240には、注水タンク240内の液面を検出する液面検知センサ241が設置されている。また、注水タンク240とヘッドキャップ70を接続する液体流路300cには、注水タンク240からヘッドキャップ70への送液流量を制御するための液体用バルブ400cが設置されている。注水タンク240は、バッファタンク210の内部の液体の粘性を調整するための調整液体を貯留する。
【0041】
バッファタンク210の貯留される廃液の量やその粘性は、経時的に変化する。バッファタンク210内の液量が低下することでも粘性は高くなる。粘性が高くなると蒸発しにくくなる。そこで、バッファタンク210に貯留されている廃液の粘性が上がりすぎたときには、蒸発しやすさを維持するために、ヘッドキャップ70と第一連通経路300aを介して、注水タンク240から調整液体(水など)をバッファタンク210に流入させて、適切な粘性を維持する。粘性を下げて蒸発しやすくする。
【0042】
すなわち、本実施形態に係るメンテナンス装置20bによれば、ニップ近傍やヘッドキャップ70及び第一連通経路300aの湿潤状況を適切に維持するために、バッファタンク210に貯留されている廃液の粘性を適切に制御することができる。これによって、液滴吐出ヘッド52の待機時間が長時間になり乾燥しやすい状況下においても、効果的に液体の乾燥を防止しつつ、それに要するエネルギーの消費量を低減できる。
【0043】
[第四実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の別の実施形態について、図6を用いて説明する。図6に示すインクジェットプリンタ10が備えるメンテナンス装置20cは、注水タンク240に対して、さらに、第二ヒーター242を備える。
【0044】
第二ヒーター242は、注水タンク240に貯留されている調整液体を加熱するための第二加熱手段である。第二ヒーター242によって、注水タンク240から液体流路300cを介してヘッドキャップ70に供給される調整液体の温度を制御することができる。
【0045】
第三実施形態において説明したとおり、バッファタンク210の貯留される廃液の量やその粘性は、経時的に変化する。バッファタンク210内の液量が低下することでも粘性は高くなる。粘性が高くなると蒸発しにくくなる。そこで、バッファタンク210に貯留されている廃液の粘性が上がりすぎたときには、蒸発しやすさを維持するために、ヘッドキャップ70と第一連通経路300aを介して、注水タンク240から適正な温度に調整された調整液体(温水など)をバッファタンク210に流入させて、適切な粘性を維持しつつ、蒸発のしやすさを向上させる。
【0046】
すなわち、本実施形態に係るメンテナンス装置20cによれば、ニップ近傍やヘッドキャップ70及び第一連通経路300aの湿潤状況を適切に維持するために、バッファタンク210に貯留されている廃液の粘性を適切に制御し、かつ、蒸発しやすさを向上できる。これによって、液滴吐出ヘッド52の待機時間が長時間になり乾燥しやすい状況下においても、効果的に液体の乾燥を防止しつつ、それに要するエネルギーの消費量を低減できる。
【0047】
[第五実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の別の実施形態について、図7を用いて説明する。図7に示すインクジェットプリンタ10が備えるメンテナンス装置20dは、液滴吐出ヘッド52から離間したヘッドキャップ70と、第一連通経路300aの湿潤を維持するために、ヘッドキャップ70の開口部を閉じる開閉機構としてのシャッター250を備える。
【0048】
シャッター250は、ヘッドキャップ70の上側開口部を開閉する開閉部材である。シャッター250を備えることで、液滴吐出ヘッド52が吐出停止時(液滴吐出ヘッド52のメンテナンス時やノズル面の清掃時)などにおいて、ヘッドキャップ70が液滴吐出ヘッド52から離間したときの乾燥を防止できる。すなわち、液滴吐出ヘッド52からヘッドキャップ70が離間したときに、ヘッドキャップ70の開口部分となる。シャッター250によれば、この開口部分を閉じることができる。
【0049】
すなわち、メンテナンス装置20eによれば、液滴吐出ヘッド52からヘッドキャップ70が離間しているときの乾燥も効果的に防止できる。
【0050】
[第六実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の別の実施形態について、図8を用いて説明する。図8に示すメンテナンス装置20eは、バッファタンク210の加温制御をより細かくできるようにし、ニップ部等の乾燥防止のための消費エネルギーの省力化をより促進できるように、蓄熱装置230への排熱連通路を分岐させた構造を備える。
【0051】
メンテナンス装置20eは、第一分岐導入路としての第二排熱連通路500bから排熱を分岐して導入する第二分岐導入路としての第四排熱連通路500dを備える。第四排熱連通路500dには、熱源700から風量を制御する第三排熱バルブ400gを備える。
【0052】
また、メンテナンス装置20eは、蓄熱装置230から第二排熱連通路500bに合流する第三分岐導入路としての第五排熱連通路500eを備える。そして、第五排熱連通路500eには、蓄熱装置230からの風量を制御する第四排熱バルブ400hを備える。
【0053】
蓄熱装置230からの排熱をバイパス経路で送ることができるので、バッファタンク210への排熱の導入を熱源700のみ、蓄熱装置230のみ、熱源700と蓄熱装置230の、異なる態様から選択的に切り替えることができる。それにより、バッファタンク210内の加温制御を細かくできることや印刷装置が何らかの原因で電源オフとなった際も蓄熱装置230の放熱によりバッファタンク210内の加温が可能である。
【0054】
本実施形態に係るメンテナンス装置20eは、熱源700からの排熱を蓄熱装置230において一旦蓄熱することで、インクジェットプリンタ10がメンテナンスや予期せぬ不具合で動作しない状態が継続したときに、蓄熱装置230にある熱を利用することができる。
【0055】
すなわち、インクジェットプリンタ10の動作が停止して熱源700からの排熱量が少なくなったときは、バッファタンク210に設置されている第一ヒーター211と蓄熱装置230からの熱を用いて、バッファタンク210が所定の温湿度環境になるように制御する。また、インクジェットプリンタ10が動作中においても、熱源700と蓄熱装置230からの熱を利用してバッファタンク210が所定の温湿度環境になるように制御すれば、さらに消費エネルギーを抑制でき、ヘッドキャップ70などを湿潤させるための蒸気を継続的に発生させることができる。
【0056】
また、メンテナンス装置20eは、排熱の供給形態を細かく選択することができ、さらに、熱源700が停止しても、蓄熱装置230の放熱によりバッファタンク210内の加温が可能であるから、ヘッドキャップ70などの湿潤環境の維持をより確実に行うことができる。
【0057】
[第七実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の別の実施形態について、図9を用いて説明する。図9に示すメンテナンス装置20fは、バッファタンク210と廃液タンク220を連通する経路を湿潤するため、第二排熱導入路としての第六排熱連通路500fと、第三ヒーターとしての廃液ヒーター222とを備える。
【0058】
第六排熱連通路500fは、熱源700の排熱を廃液タンク220に導入するための連通路である。第六排熱連通路500fには、廃液タンク220に導入する排熱の量を制御するための第四排熱バルブ400kが設置されている。
【0059】
また、廃液タンク220には、廃液タンク220内の廃液加温するための第三加熱手段としての廃液ヒーター222が設置されている。また、廃液タンク220には、廃液タンク220内の環境条件を検出する廃液温湿度検知センサ221が設置されている。そして、廃液タンク220には、廃液の液量を検出する廃液面検知センサ223が設置されている。また、廃液タンク220には、大気連通を制御する大気バルブ400mが設置されている。
【0060】
以上の構成を備えることでメンテナンス装置20fは、廃液タンク220内が所望の温湿度になるように、熱源700からの排熱の送風量と廃液ヒーター222による加温を制御することができる。これによって、廃液連通路300bの保湿と廃液タンク220内の液量の制御ができ、バッファタンク210と廃液タンク220を連通する廃液連通路300bの経路閉塞の発生率を低減できる。また、廃液タンク220内の廃液量がより制御し易くなる。
【0061】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10 :インクジェットプリンタ
11 :搬送ドラム
12 :給紙トレイ
13 :排紙トレイ
14 :分離ローラ
15 :排紙ローラ
16 :給紙ローラ
17 :送り込みローラ
20 :メンテナンス装置
20a :メンテナンス装置
20b :メンテナンス装置
20c :メンテナンス装置
20d :メンテナンス装置
20e :メンテナンス装置
20f :メンテナンス装置
30 :液体出力機構
50 :ヘッドアレイ
51 :ヘッドアレイ本体
52 :液滴吐出ヘッド
70 :ヘッドキャップ
210 :バッファタンク
211 :第一ヒーター
212 :温湿度検知センサ
213 :液面検知センサ
220 :廃液タンク
221 :廃液温湿度検知センサ
222 :廃液ヒーター
223 :廃液面検知センサ
230 :蓄熱装置
240 :注水タンク
241 :液面検知センサ
242 :第二ヒーター
250 :シャッター
300a :第一連通経路
300b :廃液連通路
300c :液体流路
400b :第一廃液バルブ
400c :液体用バルブ
400e :第一排熱バルブ
400f :第二排熱バルブ
400g :第三排熱バルブ
400h :第四排熱バルブ
400m :大気バルブ
500a :第一排熱連通路
500b :第二排熱連通路
500c :第三排熱連通路
500d :第四排熱連通路
500e :第五排熱連通路
500f :第六排熱連通路
700 :熱源
P :対象物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【文献】特開2008-178998号公報
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9