(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】アンジュレータユニットおよびアンジュレータ
(51)【国際特許分類】
H05H 13/04 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
H05H13/04 F
(21)【出願番号】P 2020125083
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】幸田 勉
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-318767(JP,A)
【文献】特開平05-303000(JP,A)
【文献】特開平10-022099(JP,A)
【文献】国際公開第2015/189805(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石が列状に配置され、互いに並んで配置される第1駆動磁石列および第1固定磁石列と、前記第1駆動磁石列および第1固定磁石列が取り付け支持される第1駆動磁石支持体および第1固定磁石支持体と、
複数の磁石が列状に配置されるとともに、前記第1駆動磁石列および第1固定磁石列とギャップを介して対向する第2固定磁石列および第2駆動磁石列と、前記第2固定磁石列および第2駆動磁石列が取り付け支持される第2固定磁石支持体および第2駆動磁石支持体と、
前記第1駆動磁石支持体および第1固定磁石支持体と各々一体的に連結された第1駆動連結ビームおよび第1固定連結ビームと、
前記第2固定磁石支持体および第2駆動磁石支持体と各々一体的に連結された第2固定連結ビームおよび第2駆動連結ビームと、
1本の支柱と、
前記ギャップに、電子ビームが通過するための真空槽と、を備え、
前記第1駆動磁石列および前記第2駆動磁石列、前記第1固定磁石列および前記第2固定磁石列は互いに斜め向かいに配置されており、
前記第1駆動磁石列および前記第2固定磁石列は前記支柱に近い側、前記第1固定磁石列および前記第2駆動磁石列は前記支柱から遠い側、に配置されており、
前記第1駆動磁石列を前記第1固定磁石列に対して前記複数の磁石の配列方向に駆動する第1位相駆動機構が前記第1固定連結ビームに取り付けられており、前記第2駆動磁石列を前記第2固定磁石列に対して前記複数の磁石の配列方向に駆動する第2位相駆動機構が前記第2駆動連結ビームに取り付けられており、
前記第1駆動連結ビームと前記第1固定連結ビーム、および、前記第2固定連結ビームと前記第2駆動連結ビームは、リニアガイドによって相対的に移動可能に連結されており、
前記第1駆動磁石支持体および第1固定磁石支持体、および/または、前記第2固定磁石支持体および第2駆動磁石支持体を磁石が向かい合う方向に駆動するためのギャップ駆動機構と、前記第1固定連結ビームおよび前記第2固定連結ビームの少なくとも一方と、前記ギャップ駆動機構とを連結するための駆動連動機構を有し、
前記第1固定連結ビームが第1サドル、および、前記第2固定連結ビームが第2サドルによって、前記駆動連動機構を介して前記支柱に連結されている、
ことを特徴とするアンジュレータユニット。
【請求項2】
前記第1固定連結ビームおよび前記第2駆動連結ビームは窓部を有し、前記第1位相駆動機構および前記第2位相駆動機構が前記窓部を通じて各々前記第1駆動連結ビームおよび前記第2固定連結ビームに連結されていることを特徴とする、請求項1記載のアンジュレータユニット。
【請求項3】
請求項1または2記載のアンジュレータユニットを単独で含んで形成したことを特徴とするアンジュレータ。
【請求項4】
請求項1または2記載のアンジュレータユニットを複数組み合わせて形成したことを特徴とするアンジュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子貯蔵リング等に設置されるアンジュレータ(挿入光源)に関する。
【背景技術】
【0002】
真空中において光速近くまで加速された電子ビームが磁界中で曲げられると、電子ビームの移動軌跡の接線方向に放射光を発光し、これをシンクロトロン放射光と呼んでいる。このようなシンクロトロン放射光を発生させる光源を、電子貯蔵リング(電子ビーム蓄積リング)の直線部に設置し、高指向性、高強度、高偏光性などの特性を生かした種々の技術の実用化のための研究が行われている。今日の電子貯蔵リングには、より高いビーム電流、より小さなビーム断面積による高輝度光源であるアンジュレータ(挿入光源)が複数設けられている。
【0003】
アンジュレータのうち、可変偏光アンジュレータの一つとして、APPLE(Advanced Planar Polarized Light Emitter)II 型アンジュレータ(以下APPLEII)が知られており、特許文献1や非特許文献1などに紹介されている。APPLEIIは、ギャップ間隔の変更だけでなく、上下2列の対向する磁石列のうち、斜め向かいに対向する1対の磁石列の位置関係を保持したまま、もう1対の磁石列を電子ビームの方向(磁石列の配列方向)に機械的に駆動する構造(以下、APPLEIIの構造と称する)によって、電子軌道上での磁場を変化させ、水平直線偏光~左(右)円偏光~垂直直線偏光の偏光を発生させることが可能であるという特徴を有している。
【0004】
一方、SPring-8など大型の放射光施設に設置されるアンジュレータは、通常ビーム方向の長さが2m程度以上の大きなものであるが、大学などの研究機関にあるような小型の放射光施設においては、できるだけ磁石列の長さが短いアンジュレータが求められることがある。さらに、昨今APPLEIIで発生させる異なる偏光を組み合わせて任意の偏光を得る分割型APPLEIIが望まれており、このタイプのアンジュレータでは、磁石列の長さが従来より短いものを組み合わせて使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】角野和義、他3名、「新型可変偏光アンジュレータの解析」JAERI-Mレポート、日本原子力研究所、1993年8月、93-156号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10は従来型のAPPLEIIであり、
図10(a)は正面側斜視図、
図10(b)は背面側斜視図である。APPLEIIでは上に述べたように、上下2列の対向する磁石列m1~m4において、斜め向かいに対向する1対の磁石列を電子ビームの方向に機械的に駆動する。このため、位相駆動機構71、72は駆動する磁石列に対応して斜め向かいに対向する位置にそれぞれ必要となる。したがって、連結ビーム74の背面側(支柱側)に位相駆動機構を取り付けるスペースが必要となる。
図10のような従来のAPPLEIIであれば連結ビーム74の背面側の支柱75と支柱76の間に位相駆動機構を取り付けるための十分なスペースがあるが、磁石列の長さが短くなるにつれて支柱を1本にせざるを得なくなり、連結ビームの背面側に駆動機構を設置するスペースがなくなって、APPLEIIの構造を実現することが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、支柱が1本でもAPPLEIIの構造が実現可能なアンジュレータユニットおよび該アンジュレータユニットで形成したアンジュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明に係るアンジュレータユニットは、
複数の磁石が列状に配置され、互いに並んで配置される第1駆動磁石列および第1固定磁石列と、前記第1駆動磁石列および第1固定磁石列が取り付け支持される第1駆動磁石支持体および第1固定磁石支持体と、
複数の磁石が列状に配置されるとともに、前記第1駆動磁石列および第1固定磁石列とギャップを介して対向する第2固定磁石列および第2駆動磁石列と、前記第2固定磁石列および第2駆動磁石列が取り付け支持される第2固定磁石支持体および第2駆動磁石支持体と、
前記第1駆動磁石支持体および第1固定磁石支持体と各々一体的に連結された第1駆動連結ビームおよび第1固定連結ビームと、
前記第2固定磁石支持体および第2駆動磁石支持体と各々一体的に連結された第2固定連結ビームおよび第2駆動連結ビームと、
1本の支柱と、
前記ギャップに、電子ビームが通過するための真空槽と、を備え、
前記第1駆動磁石列および前記第2駆動磁石列、前記第1固定磁石列および前記第2固定磁石列は互いに斜め向かいに配置されており、
前記第1駆動磁石列および前記第2固定磁石列は前記支柱に近い側、前記第1固定磁石列および前記第2駆動磁石列は前記支柱から遠い側、に配置されており、
前記第1駆動磁石列を前記第1固定磁石列に対して前記複数の磁石の配列方向に駆動する第1位相駆動機構が前記第1固定連結ビームに取り付けられており、前記第2駆動磁石列を前記第2固定磁石列に対して前記複数の磁石の配列方向に駆動する第2位相駆動機構が前記第2駆動連結ビームに取り付けられており、
前記第1駆動連結ビームと前記第1固定連結ビーム、および、前記第2固定連結ビームと前記第2駆動連結ビームは、リニアガイドによって各々相対的に移動可能に連結されており、
前記ギャップの大きさを変更するため、前記第1駆動磁石支持体および第1固定磁石支持体、および/または、前記第2固定磁石支持体および第2駆動磁石支持体を磁石が向かい合う方向に駆動するためのギャップ駆動機構と、前記第1固定連結ビームおよび前記第2固定連結ビームの少なくとも一方と、前記ギャップ駆動機構とを連結するための駆動連動機構を有し、
前記第1固定連結ビームが第1サドル、および、前記第2固定連結ビームが第2サドルによって、前記駆動連動機構を介して前記支柱に連結されていることを特徴とする。
【0010】
ある実施形態において、前記第1固定連結ビームおよび前記第2駆動連結ビームは窓部を有し、前記第1位相駆動機構および前記第2位相駆動機構が前記窓部を通じて各々前記第1駆動連結ビームおよび前記第2固定連結ビームに連結されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るアンジュレータは、前記アンジュレータユニットを単独で含んで形成されている。
【0012】
本発明に係るアンジュレータは、前記アンジュレータユニットを複数組み合わせて形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、支柱が1本でもAPPLEIIの構造が実現可能なアンジュレータユニットおよび該アンジュレータユニットで形成したアンジュレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るアンジュレータユニット100の正面側斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るアンジュレータユニット100の左側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアンジュレータユニット100の左側面図のうち、磁石列付近の拡大図である。
【
図4】磁石列の動きを説明するための、第1駆動磁石列MD1、第1固定磁石列MF1、第2駆動磁石列MD2、第2固定磁石列MF2近傍の拡大斜視図である。
【
図5】第1連結ビームユニット110の図であり、(a)は正面から見て左側面図、(b)は正面図である。
【
図6】第2連結ビームユニット120の図であり、(a)は正面から見て左側面図、(b)は正面図である。
【
図7】アンジュレータユニット100を4台連結して1台のアンジュレータとしたアンジュレータ200の正面側斜視図である。
【
図10】従来のアンジュレータを示す斜視図であり、(a)は正面側斜視図。(b)は背面側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明のアンジュレータユニットについて説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係るアンジュレータユニット100の正面側斜視図である。
図1においては、アンジュレータユニット100を載置する架台および磁石列の間(ギャップσ)に配置される真空槽や真空槽につながるポンプなどの真空系は省略されている。これらについては次の実施形態において説明する。アンジュレータユニット100は、単独で1台のアンジュレータとしても、複数組み合わせて1台のアンジュレータとしても用いることができる。なお、本明細書における説明では便宜上、支柱10と反対側をアンジュレータユニット100の正面、支柱10側を背面と呼ぶが、アンジュレータユニット100の設置方向等を限定するものではない。
【0017】
図2は本発明の実施形態に係るアンジュレータユニット100の正面から見て左側面図であり、
図3はその磁石列付近の拡大図である。
図2、3においても架台と真空系は省略されている。
【0018】
本発明のアンジュレータユニット100において磁場を調整する方法としては、磁石列を各々が対向する方向に動かしてギャップσの大きさを調整する方法と、磁石列を磁石の配列方向(電子ビーム方向)に動かして電子ビーム方向の磁石列間の位相を調整することで磁場を変える方法の両方を用いることができる。ギャップの大きさを調整する方法に関しては、従来の公知の方法と同様であるので、以下においては、磁石間の位相の調整を可能にする構成を中心に説明する。ギャップの大きさの調整を可能にする構成についてはその後で簡単に説明する。
【0019】
まず、磁石列の周辺の構成について説明する。第1駆動磁石列MD1、第1固定磁石列MF1、第2固定磁石列MF2、第2駆動磁石列MD2には、複数の磁石が列状に配置されており、
図1~3に示すように、第1駆動磁石列MD1と第1固定磁石列MF1、第2固定磁石列MF2と第2駆動磁石列MD2が並んで近接配置されている。
図3に示すように、第1駆動磁石列MD1、第1固定磁石列MF1、第2固定磁石列MF2、第2駆動磁石列MD2はそれぞれ第1駆動磁石支持体1、第1固定磁石支持体2、第2固定磁石支持体3、第2駆動磁石列支持体4に支持されており、取付板5を介してそれぞれ第1駆動連結ビーム11、第1固定連結ビーム12、第2固定連結ビーム13、第2駆動連結ビーム14に一体的に連結されている。第1駆動磁石支持体1、第1固定磁石支持体2、第2固定磁石支持体3、第2駆動磁石列支持体4は、取付板5を介さずにそれぞれ直接第1駆動連結ビーム11、第1固定連結ビーム12、第2固定連結ビーム13、第2駆動連結ビーム14に連結されてもよい。第1駆動磁石列MD1と第1固定磁石列MF1、および、第2固定磁石列MF2と第2駆動磁石列MD2はギャップσを介して対向しており、第1駆動磁石列MD1と第2駆動磁石列MD2、第1固定磁石列MF1と第2固定磁石列MF2はそれぞれが対になって斜め向かいに対向(交差するように対向)している。
【0020】
続いて、連結ビーム周辺の構成について説明する。本発明においては、連結ビームを駆動側と固定側にわけ、それぞれに磁石列および磁石列支持体を一体的に連結する。そして駆動側の連結ビームを動かすことによって駆動側の磁石列を動かす。
【0021】
具体的には、
図1~3の例において、第1固定磁石列MF1が連結されている第1固定連結ビーム12は、第1サドル41によって駆動連動機構22を介して支柱10に連結されている。そして、第1駆動磁石列MD1が連結されている第1駆動連結ビーム11は2本のリニアガイド15によって第2固定連結ビーム12に磁石の配列方向に相対的に移動可能に連結されている。
【0022】
同様に、第2固定磁石列MF2が連結されている第2固定連結ビーム13は、第2サドル42によって駆動連動機構22を介して支柱10に連結されている。そして、第2駆動磁石列MD2が連結されている第2駆動連結ビーム14は2本のリニアガイド15によって第2固定連結ビーム13に磁石の配列方向に相対的に移動可能に連結されている。
【0023】
第1駆動磁石列MD1を第1固定磁石列MF1に対して磁石の配列方向に駆動させる第1位相駆動機構31が第1固定連結ビーム12に、第2駆動磁石列MD2を第2固定磁石列MF2に対して磁石の配列方向に駆動させる第2位相駆動機構32が第2駆動連結ビーム14に、すなわち、位相駆動機構は両方とも正面側の連結ビームに取り付けられている。
【0024】
この、連結ビームを駆動側と固定側で別々にし、第1サドル41および第2サドル42によって固定側の連結ビーム(第1固定連結ビーム12および第2固定連結ビーム13)を支柱10に連結し、固定側の連結ビームと駆動側の連結ビーム(第1駆動連結ビーム11および第2駆動連結ビーム14)をリニアガイド15によって連結する構造によって、第1位相駆動機構31および第2位相駆動機構32を共に支柱10と反対側に配置することができるので、支柱10が1本であり、支柱10側に位相駆動機構を配置する十分なスペースがなくても、両方の位相駆動機構をアンジュレータユニット100に配置することが可能となる。なお、本発明におけるアンジュレータユニットに含まれる支柱10は1本のみであるが、数本の部材が合わさって形成され、当該部材間に他の機構を配置できるような隙間がない場合も実質的に1本の支柱10とみなすこととする。
【0025】
次に、磁石列の動きについて説明する。
図4は第1駆動磁石列MD1、第1固定磁石列MF1、第2固定磁石列MF2、第2駆動磁石列MD2近傍の拡大斜視図である。
図4でも真空槽などの真空系は省略されている。第1位相駆動機構31によって第1駆動連結ビーム11が磁石の配列方向に移動するのに伴って、第1駆動連結ビーム11に取付板5を介して連結されている第1駆動磁石列MD1および第1駆動磁石支持体1が図の矢印の方向に移動し、同じく、第2位相駆動機構32によって第2駆動連結ビーム14が磁石の配列方向に移動するのに伴って、第2駆動連結ビーム14に取付板5を介して連結されている第2駆動磁石列MD2および第2駆動磁石支持体4が図の矢印の方向に移動する。
図4の例は、第1固定磁石列MF1と第2固定磁石列MF2に対して、第1駆動磁石列MD1と第2駆動磁石列MD2が磁石の配列方向(アンジュレータユニット100の正面から見て右側)に動いたところである。
【0026】
続いて、第1位相駆動機構31および第2位相駆動機構32による連結ビームの動きについて説明する。
図5は、第1連結ビームユニット110の図であり、
図5(a)は正面側から見て左側面図、
図5(b)は正面図である。第1連結ビームユニット110は、第1駆動磁石列MD1、第1固定磁石列MF2、第1駆動磁石支持体1、第1固定磁石支持体2、第1駆動連結ビーム11、第1固定連結ビーム12、リニアガイド15、第1位相駆動機構31、第1サドル41、スライダー43を含む。
図5の例では、第1駆動磁石支持体1、第1固定磁石支持体2は、取付板5を介してそれぞれ第1駆動連結ビーム11、第1固定連結ビーム12に一体的に連結されている。
【0027】
第1位相駆動機構31は、モータ33、ボールねじ34、ボールねじホルダ35を含む。第1位相駆動機構31はボールねじホルダ35が第1固定連結ビーム12の窓部16を通じて第1駆動連結ビーム11に固定されることによって第1駆動連結ビーム11に連結されている。また、第1駆動連結ビーム11と第1固定連結ビーム12はリニアガイド15によって磁石の配列方向に移動可能に連結されている。モータ33の回転に伴ってボールねじ34が回転するとボールねじホルダ35が磁石の配列方向(電子ビーム方向)に移動する。第1固定連結ビーム12は第1サドル41によって支柱10(
図5(a)(b)では不図示)に磁石の配列方向が固定されており、ボールねじホルダ35は第1駆動連結ビーム11に固定されているので、ボールねじホルダ35の動きに伴って第1駆動連結ビーム11が磁石の配列方向(ボールねじホルダ35の移動方向と逆方向)に移動し、それに伴い第1駆動磁石列MD1が磁石の配列方向に移動する。第1固定連結ビーム12は第1サドル41によって固定されているので、第1固定磁石列MF1は動かない。
【0028】
同様に、
図6は、第2連結ビームユニット120の図であり、
図6(a)は正面側から見て左側面図、
図6(b)は正面図である。第2連結ビームユニット120は、第2固定磁石列MF2、第2駆動磁石列MD2、第2固定磁石支持体3、第2駆動磁石支持体4、第2固定連結ビーム13、第2駆動連結ビーム14、リニアガイド15、第2位相駆動機構32、第2サドル42、スライダー43を含む。
図6の例では、第2固定磁石支持体3、第2駆動磁石列支持体4は、取付板5を介してそれぞれ第2固定連結ビーム13、第2駆動連結ビーム14に一体的に連結されている。
【0029】
第2位相駆動機構32は、モータ33、ボールねじ34、ボールねじホルダ35を含む。
図5と同じ働きをするものについては同じ符号で説明する。第2位相駆動機構32はボールねじホルダ35が第2駆動連結ビーム14の窓部16を通じて第2固定連結ビーム13に固定されることによって、第2固定連結ビーム13に連結されている。また、第2固定連結ビーム13と第2駆動連結ビーム14はリニアガイド15によって磁石の配列方向に移動可能に連結されている。モータ33の回転に伴ってボールねじ34が回転するとボールねじホルダ35が磁石の配列方向(電子ビーム方向)に移動する。第2固定連結ビーム13は第2サドル42によって支柱10(
図6(a)(b)では不図示)に固定されており、ボールねじホルダ35は第2固定連結ビーム13に固定されているので、
図6(a)(b)の場合は、ボールねじホルダ35の動きに伴って固定されていない第2駆動連結ビーム14が磁石の配列方向(ボールねじホルダ35の移動方向)に移動し、それに伴い第2駆動磁石列MD2が磁石の配列方向に移動する。第2固定連結ビーム13は第2サドル42によって固定されているので、第2固定磁石列MF2は動かない。
【0030】
以上のように、第1位相駆動機構31および第2位相駆動機構32は、ボールねじホルダ35によって
図5、
図6の両方において、窓部16を通じて支柱10側の連結ビームに連結されているので、第1位相駆動機構31および第2位相駆動機構32が動くこと、すなわち、ボールねじ34が回ることによってボールねじホルダ35が動くこと、によって、位相駆動機構が固定されている連結ビームが固定側の場合、反対側の駆動側の連結ビームが動き、位相駆動機構が固定されている連結ビームが駆動側の場合、駆動側の連結ビームが動く。それにより、斜め向かいに対向する1対の磁石列を動かし他方を固定する、APPLEIIの動きを実現することができる。
【0031】
なお、本明細書の図面においては便宜上、第1連結ビームユニット110が上側、第2連結ビームユニット120が下側に配置されているが、上下が逆でもよい。さらに、支柱10は垂直方向、各々の磁石列は水平方向に配置されているが、図面の方向に限定されない。例えば支柱10が水平方向でも斜め方向でもよく、各々の磁石列が垂直方向でも斜め方向でもよい。
【0032】
次に、ギャップσの大きさを調整する方法であるが、例えば国際公開第2018/143253号などに記載の公知の方法を用いることができる。本明細書では
図1、2を参照して簡単に説明する。ギャップ駆動機構21は、モータ23、変換部24を含む。変換部24は駆動伝達の方向を90°変換する。駆動連動機構22はボールねじ25を含む。ボールねじ25にはサドル41とサドル42の少なくとも一方がスライダー43によって連結されている。第1駆動連結ビーム11と第1固定連結ビーム12、および第2固定連結ビーム13と第2駆動連結ビーム14はお互いにリニアガイド15によって連結されているので、サドル41および/またはサドル42の位置を変えることによって第1駆動連結ビーム11および第1固定連結ビーム12と第2固定連結ビーム13および第2駆動連結ビーム14の磁石列が対向する方向の位置、延いては、第1駆動磁石列MD1および第1固定磁石列MF2と第2固定磁石列MF2および第2駆動磁石列MD2の磁石列が対向する方向の位置が決まる。したがって、ギャップ駆動機構21を駆動する(モータ23の回転を変換部24によって駆動連動機構に伝え、ボールねじ25を回転させる)ことで、サドル41とサドル42の少なくとも一方を動かしてギャップσの大きさを変更することができる。
【0033】
続いて、本発明のアンジュレータユニットを複数連結して1台のアンジュレータとして用いる実施形態について説明する。なお、磁石列や駆動機構の動きについてはアンジュレータユニット100と同様であるので省略する。
【0034】
図7は、アンジュレータユニット100を4台連結して1台のアンジュレータとしたアンジュレータ200の正面側斜視図である。
図8は、アンジュレータ200の正面から見て左側側面図であり、
図9はアンジュレータ200の正面図である。連結するアンジュレータユニット100の台数に制限はなく、アンジュレータ200が設置される放射光施設のスペースや、偏光の組み合わせなどによって適宜選定される。
【0035】
図7~9には、
図1~3で省略した架台や真空系も示している。電子ビームが通過する薄型の真空槽51はギャップσの中央に配置され、正面側に並列配置されたポンプ室52を通じてポンプ53につながっている。これらは、支持体62の上に設置された支持部材63がポンプ室52を固定することによって、支持体62、支持部材63により架台61の上に支持されている。
【0036】
例えば、アンジュレータユニット100Aとその隣のアンジュレータユニット100Bの間に不図示の位相器を設置し、アンジュレータユニット100Aで発生する偏光とアンジュレータユニット100Bで発生する偏光の間の位相を変えることによって、アンジュレータユニット100Aで発生する偏光とアンジュレータユニット100Bで発生する偏光を重ね合わせて任意の偏光を発生させることができる。
【0037】
アンジュレータユニット100を単独で1台のアンジュレータとして用いる場合は、1台分の長さの真空槽や架台などの部材をアンジュレータ200と同様に設置すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、支柱が1本でもAPPLEIIの構造が実現可能であるAPPLEII型アンジュレータユニット、および複数のアンジュレータユニットを組み合わせたアンジュレータを提供できるという点で産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0039】
100 アンジュレータユニット
200 アンジュレータ
MD1 第1駆動磁石列
MF1 第1固定磁石列
MD2 第2駆動磁石列
MF2 第2固定磁石列
1 第1駆動磁石支持体
2 第1固定磁石支持体
3 第2固定磁石支持体
4 第2駆動磁石支持体
10 支柱
11 第1駆動連結ビーム
12 第1固定連結ビーム
13 第2固定連結ビーム
14 第2駆動連結ビーム
15 リニアガイド
16 窓部
21 ギャップ駆動機構
22 駆動連動機構
31 第1位相駆動機構
32 第2位相駆動機構
41 第1サドル
42 第2サドル
51 真空槽
61 架台