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特許7452403ウェーハの研磨方法およびウェーハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ウェーハの研磨方法およびウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240312BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20240312BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20240312BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20240312BHJP
【FI】
H01L21/304 621A
H01L21/304 622A
B24B37/00 H
B24B1/00 A
B24B37/005 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020210662
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097206
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】林 志豪
(72)【発明者】
【氏名】高石 和成
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-184733(JP,A)
【文献】特開2018-074086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
B24B 1/00
B24B 37/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ濃度が異なる複数の研磨液を用いて、アルカリ濃度と化学研磨率との相関性である第1の相関性を求め、且つ、砥粒濃度が異なる複数の研磨液を用いて、砥粒濃度と機械研磨率との相関性である第2の相関性を求める工程と、
前記第1の相関性及び前記第2の相関性に基づいて、前記複数の研磨液の、化学研磨率に対する機械研磨率の比率である、機械研磨率/化学研磨率を算出する工程と、
前記化学研磨率に対する機械研磨率の比率とウェーハの平坦度の指標との関係を得ると共に、前記化学研磨率に対する機械研磨率の比率の特定範囲を決定する工程と、
前記第1の相関性および前記第2の相関性に基づいて、前記化学研磨率に対する機械研磨率の比率の特定範囲を満たす第1の目標研磨液を選択する工程と、
前記第1の目標研磨液を用いてウェーハに対し研磨を行う工程と、
を含むことを特徴とする、ウェーハの研磨方法。
【請求項2】
前記ウェーハ平坦度の指標がGBIRを含む、請求項1に記載のウェーハの研磨方法。
【請求項3】
前記機械研磨率/化学研磨率の比率の特定範囲が0.70以上であって1.60以下の範囲である、請求項1又は2に記載のウェーハの研磨方法。
【請求項4】
前記ウェーハ平坦度の指標がESFQRを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のウェーハの研磨方法。
【請求項5】
前記機械研磨率/化学研磨率の比率の特定範囲が1.20以上であって1.70以下の範囲である、請求項4に記載のウェーハの研磨方法。
【請求項6】
前記ウェーハ平坦度の指標がGBIRをさらに含み、かつ前記機械研磨率/化学研磨率の比率の特定範囲が1.20以上であって1.40以下の範囲である、請求項4に記載のウェーハの研磨方法。
【請求項7】
前記研磨を行う工程は、第1の段階でウェーハのGBIRを制御する工程、および第2の段階でウェーハのESFQRを制御する工程をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のウェーハの研磨方法。
【請求項8】
前記研磨を行う工程は、前記第1の目標研磨液を用い第1の研磨機で前記第1の段階を実行し、かつ前記第1の目標研磨液を用い第2の研磨機で前記第2の段階を実行する工程をさらに含む、請求項7に記載のウェーハの研磨方法。
【請求項9】
前記研磨を行う工程は、前記第1の目標研磨液を用い第1の研磨機で前記第1の段階および前記第2の段階を実行し、かつ前記第1の目標研磨液を用い第2の研磨機で前記第1の段階および前記第2の段階を実行する工程をさらに含む、請求項7に記載のウェーハの研磨方法。
【請求項10】
前記機械研磨率/化学研磨率の比率の特定範囲を満たす第2の目標研磨液を選択する工程をさらに含む、請求項7に記載のウェーハの研磨方法。
【請求項11】
前記研磨を行う工程は、前記第1の目標研磨液を用い第1の研磨機で前記第1の段階を実行し、かつ前記第2の目標研磨液を用い第2の研磨機で前記第2の段階を実行する工程をさらに含む、請求項10に記載のウェーハの研磨方法。
【請求項12】
前記研磨を行う工程は、前記第1の目標研磨液を用い第1の研磨機で前記第1の段階および前記第2の段階を実行し、かつ前記第2の目標研磨液を用い第2の研磨機で前記第1の段階および前記第2の段階を実行する工程をさらに含む、請求項10に記載のウェーハの研磨方法。
【請求項13】
チョクラルスキー法で育成した単結晶インゴットをスライスして研磨前ウェーハを得た後、得られた研磨前ウェーハに対して、請求項1~12のいずれか一項に記載のウェーハの研磨方法により研磨処理を施すことを特徴とする、ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウェーハの研磨方法およびウェーハの製造方法に関し、詳細には、化学研磨率に対する機械研磨率の大きさに基づいてウェーハの平坦度を制御する、ウェーハの研磨方法およびウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に進む半導体デバイスの高集積化に伴い、その材料であるシリコンウェーハに要求される平坦度がより厳しいものとなってきている。また、半導体デバイスのさらなる製造コストを低減するためにシリコンウェーハの大口径化が進んでおり、これに伴い求められる平坦度を有するウェーハに研磨する難度も高まっている。
【0003】
これに対し、特許文献1には、シリコンウェーハをキャリアプレート内に保持し、ウェーハを研磨布が貼付された上下定盤の間に挟み込み、次いで、研磨液を研磨布とシリコンウェーハ表面との間に流し入れ、サンギアとインターナルギアとでキャリアプレートを公転及び自転させ、上記研磨液中に含まれる砥粒(例えばシリカ:SiO)が研磨布表面に残っていることにより、シリコンウェーハの両面が研磨される、シリコンウェーハの両面研磨方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-285262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、両面研磨において、研磨後のウェーハの厚さがキャリアプレートの厚さ以下となる状態まで行う研磨を「定寸研磨」と称する。一方で、研磨後のウェーハの厚さがキャリアプレートの厚さよりも厚い状態となる研磨を「非定寸研磨」と称する。両面研磨後のウェーハの形状は、非定寸研磨の状態では、そのグローバルな厚さ分布は、中心部が薄く外周部が厚い、「凹状形状」となる。定寸研磨では、「凹状形状」の凹状が過度に凹んでしまう傾向がある他、キャリアプレートの摩耗が大きくなり、研磨時間が長くなってしまうという問題が生じる。
【0006】
こうした状況において、ウェーハの平坦度を高めると同時に、キャリアプレートの摩耗を抑制し、研磨時間を短縮するためには、試験を幾度も行わなって最適な研磨条件を把握しなければならず、特に研磨環境等の大幅な変更がある(例えば機械を交換する)場合、複数ロットのウェーハを幾度も繰り返し研磨して試験を行う必要があり、大きなコストと時間を投入しなければ最適な研磨条件を求めることができない。したがって、試験時間を有効に短縮できると同時に、ウェーハの良好な平坦度を得ることのできる研磨条件が求められる。
【0007】
上述の問題に鑑みて、本発明は、試験時間を有効に短縮すると同時に、ウェーハの形状を精度良く制御することができる、ウェーハの研磨方法およびウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
一実施形態において、ウェーハの研磨方法は、
アルカリ濃度が異なる複数の研磨液を用いて、アルカリ濃度と化学研磨率との相関性である第1の相関性を求め、且つ、砥粒濃度が異なる複数の研磨液を用いて、砥粒濃度と機械研磨率との相関性である第2の相関性を求める工程と、
前記第1の相関性及び前記第2の相関性に基づいて、前記複数の研磨液の、化学研磨率に対する機械研磨率の比率である、機械研磨率/化学研磨率を算出する工程と、
前記化学研磨率に対する機械研磨率の比率とウェーハの平坦度の指標との関係を得ると共に、前記化学研磨率に対する機械研磨率の比率の特定範囲を決定する工程と、
前記第1の相関性および前記第2の相関性に基づいて、前記化学研磨率に対する機械研磨率の比率の特定範囲を満たす第1の目標研磨液を選択する工程と、
前記第1の目標研磨液を用いてウェーハに対し研磨を行う工程と、
を含む。
一実施形態において、ウェーハの製造方法は、チョクラルスキー法で育成した単結晶インゴットをスライスして研磨前ウェーハを得た後、得られた研磨前ウェーハに対して、上記のウェーハの研磨方法により研磨処理を施す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試験時間を有効に短縮すると同時に、ウェーハの形状を精度良く制御することができる、ウェーハの研磨方法およびウェーハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本開示の第1から第4実施形態によるウェーハの研磨に用いる両面研磨装置の概略斜視図である。
図1B】本開示の第1から第4実施形態によるウェーハの研磨に用いる両面研磨装置の要部の断面図である。
図2】本開示の第1実施形態によるウェーハの研磨方法のフローチャートである。
図3】本開示の第2実施形態によるウェーハの研磨方法のフローチャートである。
図4】本開示の第3実施形態によるウェーハの研磨方法のフローチャートである。
図5】本開示の第4実施形態によるウェーハの研磨方法のフローチャートである。
図6】本開示の実施例による研磨率と各研磨液のアルカリ濃度および砥粒濃度との相関性のグラフである。
図7】本開示の実施例による機械研磨率/化学研磨率の比率(M/C比率)の変化とウェーハの厚さ分布(GBIR)との相関性を示すグラフである。
図8】本開示の実施例による機械研磨率/化学研磨率の比率(M/C比率)の変化と外周平坦度(ESFQR)との相関性を示すグラフである。
図9】本開示の実施例による、それぞれ異なる研磨装置の機械研磨率/化学研磨率の比率(M/C比率)の変化とウェーハの厚さ分布(GBIR)との相関性を示すグラフである。
図10】本開示の実施例による、それぞれ異なる研磨装置の機械研磨率/化学研磨率の比率(M/C比率)の変化と外周平坦度(ESFQR)との相関性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の特徴および利点がより明瞭となるよう、以下にいくつかの実施形態を提示し、添付の図面と対応させながら、詳細に説明する。
【0012】
本発明の各観点をより明瞭かつ分かり易くするため、以下、添付の図面と対応させて詳細に説明する。なお、工業における慣例にしたがって、各種装置および設備は必ずしも縮尺で描かれるとは限らない。実際に、説明を明確とする目的で各種装置および設備の寸法は任意に拡大または縮小することができる。
【0013】
以下、本発明のウェーハの研磨方法のいくつかの実施形態を説明する。しかしながら、本発明の実施形態が多くの適した創作概念を提供するもので、各種特定の場面において広く実施可能であるということは、容易に理解されるであろう。開示される特定の実施形態は、特定の方法で本発明を用いることを説明するものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0014】
特に定義しない限り、ここで使用するすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解する意味と同じ意味を有する。これらの用語、例えば通常使用される辞書において定義されているような用語は、ここで特に定義されない限り、関連技術および本発明の背景または前後文脈に合致する意味に解釈されるべきであり、過度に厳密な方式で解釈されるべきではない。
【0015】
本明細書において使用される「約」、「およそ」などの用語は通常、所定の値または範囲の+/-20%以内、好ましくは+/-10%以内、より好ましくは+/-5%以内、または+/-3%以内、または+/-2%以内、または+/-1%以内、または+/-0.5%以内を表す。ここに示される所定の数はおよその数である、つまり特に「約」、「およそ」の記載が無くとも、「約」、「およそ」の意味が含まれ得る。
【0016】
本明細書で用いられる「基本的に」、「実質的に」などの用語は通常、所定の値または範囲の90%以内、例えば95%以内、または98%以内、または99%以内を表す。
【0017】
図1A図1Bは、ウェーハの研磨に用いる両面研磨装置100の概略斜視図および要部の断面図である。本開示の第1から第4実施形態では、例えば図1A図1Bに示されるような両面研磨装置100を用いることができるが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態においては片面研磨装置を用いて研磨を行うこともできる。
【0018】
図1Aは、本実施形態における両面研磨装置の構成を表す概略斜視図であり、図1Bは、図1Aにおける要部の断面図である。図1Aに示すように、両面研磨装置100は、上定盤10、下定盤20、サンギア40、インナーナルギア50、および、複数のキャリアプレート30を備えて構成される。キャリアプレート30内には、単数又は複数のシリコンウェーハWFが収納される。一般に両面研磨装置の大きさはキャリアプレート30の直径により表され、キャリア直径が約28インチの場合はType_28Bと呼ばれ、キャリア直径が約20インチの場合はType_20Bと呼ばれる。図1Aでは、1枚のキャリアプレート30内に3枚のウェーハ(例えばシリコンウェーハ)WFが収納されるように構成されている。Type_28Bの両面研磨装置100において、シリコンウェーハWFの直径が300mmの場合、1枚のキャリアプレート30内にシリコンウェーハWFを3枚収納するのが通常である。
【0019】
また、上定盤10は、上定盤10を下定盤20に対して接近離間させる昇降機構110とを備えて構成される。上定盤10と下定盤20は、略円板状に形成され、図1Bに示すように、上定盤10の下面には、シリコンウェーハWFを研磨する際にシリコンウェーハWFの上面と当接する上研磨パッド11が設けられる。更に、上定盤10には、研磨時に研磨液60の供給や純水でリンスするための、複数の供給孔(図示せず)が穿設され、研磨液60や純水を上定盤10および下定盤20の間に供給できるようになっている。
【0020】
下定盤20は、両面研磨装置100の台座上に回転自在に設けられる円板状体であり、この下定盤20の上定盤10と対向する面には下研磨パッド21が設けられる。そして、研磨する際にはこの下研磨パッド21がシリコンウェーハWFの下面と当接する。サンギア40は、下定盤20の円板の略中心に、下定盤20と独立して回転するように設けられ、その外周側面には、キャリアプレート30と噛合する歯部が形成されている。インナーナルギア50は、下定盤20を囲むリング状体から構成され、リングの内側面にはキャリアプレート30と噛合する歯部が形成されている。
【0021】
上定盤10、下定盤20、サンギア40、および、インナーナルギア50の回転中心には、それぞれ駆動モータの回転軸が結合され、各駆動モータによってそれぞれが独立して回転するようになっている。キャリアプレート30は、円板状体から構成され、その外周側面には上記のサンギア40およびインナーナルギア50と噛合する歯部が形成される。また、円板状体内部には、単数又は複数のウェーハ保持孔31が形成され、このウェーハ保持孔31内部にシリコンウェーハWFが収納される。
【0022】
両面研磨装置100は、サンギア40とインナーナルギア50とを回転させることにより、キャリアプレート30に、公転運動および自転運動の遊星運動をさせることができる、遊星歯車方式の両面研磨装置である。このような両面研磨装置100により、シリコンウェーハWFを研磨する際には、まず、下定盤20上にキャリアプレート30をセットし、ウェーハ保持孔31内にシリコンウェーハWFを収納した後、昇降機構110により上定盤10を下降させ、上定盤10を下方向に所定の圧力で加圧した状態で、上定盤10に形成された供給孔から研磨液60を供給しながら、それぞれの駆動モータを駆動させることにより、シリコンウェーハWFの両面研磨が行われる。
【0023】
上記研磨ステップにおいて使用される研磨液60には、通常、アルカリ性化学品および砥粒が含まれており、アルカリ性化学品による化学研磨作用(アルカリエッチング作用)と砥粒の機械研磨作用との複合作用によって研磨プロセスを進行する。アルカリ性化学品中の水酸化物イオン(OH)はシリコンウェーハ表面で化学作用を生じて反応層を生成するため、化学エッチング作用によりシリコン原子は化学反応層から除去される。よって、この研磨液の化学研磨作用がシリコンウェーハ表面に対して及ぼす影響は、水酸化物イオン濃度および研磨中の熱分布によって決まる。
【0024】
さらに、機械研磨作用は、砥粒とシリコンウェーハ表面の化学反応層とが接触した後、シリコン原子の一部がシリカ表面に凝集し、除去されるというメカニズムである。通常、シリコンウェーハ内周部と外周部の取代量は異なり、一般には外周部の取代量の方が多い。
【0025】
本開示のいくつかの実施形態によれば、アルカリ性化学品の具体例としては、無機アルカリ性化合物,例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等;アンモニウム;アンモニウム塩類、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等;アミン類、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン (N-(β-aminoethyl) ethanolamine, AEEA)、ヘキサメチレンジアミン(hexamethylenediamine, HMDA)、ジエチレントリアミン(diethylenetriamine, DETA)、トリエチレンテトラアミン(triethylenetetramine, TETA)、ピペラジン無水物(piperazine anhydrous, PIZ)、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン(1-(2-aminoethyl)piperazine, AEPIZ)、N-メチルピペラジン(N-methylpiperazine, MPIZ)等を挙げることができる。
【0026】
本開示のいくつかの実施形態によれば、砥粒の材質または性質に特に制限はなく、使用の目的または使用の状態等により適宜選択すればよい。砥粒としては、無機粒子、有機粒子および有機無機複合粒子等が挙げられる。無機粒子の具体例としては、酸化物粒子、例えばシリカ粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、赤色酸化鉄粒子等;窒化物粒子、例えば窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等;炭化物粒子、例えば炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等;ダイヤモンド粒子;炭酸塩、例えば炭酸カルシウムまたは炭酸バリウム等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子またはポリ(メタ)クリル酸、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。これら砥粒は単独で用いてもよいし、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。このうちシリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ(fumed silica)、沈降シリカ等が挙げられる。シリカ粒子は単独で用いてもよいし、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
さらに、砥粒の比表面積(BET)径(以下、単に「BET径」という)に特に限定はなく、研磨効率の点から、5nm以上が好ましく、10nm以上であるとより好ましい。より良好な研磨効果を得るという点、例えばヘイズ低減または欠陥の除去等といった効果をより発揮するという点からは、上記BET径は、例えば15nm以上が好ましく、20nm以上であるとより好ましく、20nm超であると最も好ましい。また、砥粒の形状(外形)は球形であってもよいし、非球形であってもよい。非球形粒子の具体例としては、ピーナッツ形、繭形、金平糖形、ラグビーボール形等が挙げられる。例として、多数の粒子がピーナッツ形である砥粒を用いるのが好ましい。
【0028】
以下、図1および2を参照にして、この両面研磨装置100により実行されるウェーハの両面研磨方法の一例を説明する。本開示の第1実施形態にかかるウェーハの研磨方法は、下記ステップS110~S140を含む。
【0029】
ステップS110において、アルカリ濃度が異なる複数の研磨液を用いて、アルカリ濃度と化学研磨率との相関性である第1の相関性を求め、且つ、砥粒濃度が異なる複数の研磨液を用いて、砥粒濃度と機械研磨率との相関性である第2の相関性を求める。具体的には、本例では、アルカリ濃度が異なる複数の研磨液を用いて、アルカリ濃度と化学研磨率との関係を示す研磨率標準曲線を求め、且つ、砥粒濃度が異なる複数の研磨液を用いて、砥粒濃度と機械研磨率との関係を示す研磨率標準曲線を求める。具体的には、上述したように、研磨液は化学研磨作用および機械研磨作用両者の複合作用によって化学機械研磨を達成するため、化学研磨作用および機械研磨作用それぞれの単独の作用力を求めるべく、先ずは、アルカリ性化学品のみを含んで砥粒を含まない研磨液を異なるアルカリ濃度で用いて研磨を行い、異なるアルカリ濃度での各々の研磨率を求める。次いで(なお、求める順序は逆でも良い)、固定濃度のアルカリ性化学品を含みかつ砥粒を含む研磨液を異なる砥粒濃度で用いて研磨を行い、異なる砥粒濃度における各々の研磨率を求める。
【0030】
つまり、化学機械研磨の基本法則は、プレストンのCMPの式(Preston’s CMP Rate)=k(研磨係数)×p(圧力)×V(相対速度)に基づいており、P(圧力)およびV(相対速度)は研磨装置の影響を受ける。よって、P(圧力)およびV(相対速度)が一定であるという条件の下、研磨液の研磨率計算式は下記の(式1)に示される通りとなる。
(式1)
f([砥粒],[OH])≒f([砥粒],0)+f(0,[OH])
式中、f([砥粒],[OH])は研磨率を表し、f([砥粒],0)は機械研磨率を表し、f(0,[OH])は化学研磨率を表す。本開示のいくつかの実施形態において、砥粒をシリカとすることができると例示しているが、本発明はこれに限定されないということが理解されなければならない。
【0031】
アルカリ性化学品のみを含んで砥粒を含まない研磨液を異なるアルカリ濃度で用いて研磨を行い、各々の研磨率を求めた後に、二次線形回帰により下記の(式2)を求めることができる。
(式2)
f(0,[OH])=a1*X+b1*X+C1
式中、Xは[OH]濃度を表し、a1、b1およびC1は回帰係数を表す。
さらに、上記(式2)から、化学研磨率を表す標準曲線を求めることができる。
【0032】
類似する方式で、固定濃度のアルカリ性化学品を含みかつ砥粒を含む研磨液を異なる砥粒濃度で用いて研磨を行い、それぞれの研磨率を求めた後、二次線形回帰により下記(式3)を求めることができる。
(式3)
f([砥粒],0)=a2*Y+b2*Y+C2
式中、Yは砥粒濃度を表し、a2、b2およびC2は回帰係数である。[OH]濃度が一定であるとき、C2はf(0,[OH])を表す。
つまり、(式3)からf([砥粒],0)=a2*Y+b2*Y+f(0,[OH])を導き出すことができる。
さらに、上記(式3)から、機械研磨率を表す標準曲線を求めることができる。
【0033】
上記研磨率標準曲線は二次線形回帰によって演算しているが、本発明はこれに限定されず、つまり、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、当該分野における通常の知識に基づいて好ましい演算方式を選択して曲線あてはめを行い、より理想的な研磨率標準曲線を求めることができるという点が理解されなければならない。例として、三次線形回帰等の多項式回帰、S関数、三角関数等を挙げることができる。
【0034】
次いで、ステップS120において、上記第1の相関性及び第2の相関性(本例では各研磨率標準曲線)に基づき、各研磨液の、化学研磨率に対する機械研磨率の比率である、機械研磨率/化学研磨率の比率(以下、M/C比率と称することもある)を算出する。具体的には、研磨液のM/C比率の定量化の計算を行う際、その式は下記(式4)に示されるとおりとなる。
(式4)
【0035】
ところで、機械研磨を実行するにあたり、一定の[OH]濃度がなければ研磨ステップを進行することはできない。このため実際の機械研磨率は、研磨率からこの一定の[OH]濃度下の化学研磨率を減じて求められる、つまり、機械研磨率=研磨率-化学研磨率(f([砥粒],0)=f([砥粒],[OH])-f(0,[OH]))であり、よってこれを(式4)に代入すると、(式5)を導き出すことができる。
(式5)
【0036】
したがって、(式2)、(式3)を(式5)に代入すれば、各研磨液のM/C比率が求められる。
【0037】
ステップS130において、各研磨液で研磨を行った後に得られたウエーハ平坦度の指標(例えば、厚さ分布(Global Backsurface-referenced Ideal plane/Range,GBIR)(以下、「GBIR」と略称する)または外周平坦度(Edge Site Front least sQuares Range,ESFQR)(以下、「ESFQR」と略称する)とM/C比率とに基づいて、M/C比率とGBIRまたはESFQRとの関係性(関係図)を得ることができる。この関係図により、特定範囲のM/C比率で所望のウェーハ形状が得られる、ということを知得できる。つまり、目標のウェーハ形状を得るには、この関係性(関係図)によりM/C比率の特定範囲を決めればよい。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ウェーハ平坦度の指標がGBIRであるとき、ウェーハのグローバル形状を理想形状に近づけるという点から、M/C比率の下限値は0.70以上が好ましく、0.80以上であるとより好ましく、0.85以上であるとさらに好ましく、0.90以上であると一層好ましく、0.95以上であるとより一層好ましく、1.15以上であると最も好ましく、1.20以上が最も好適である。ウェーハのグローバル形状が過度に凸状となってしまうのを回避するという点からは、M/C比率の上限値は、1.60以下が好ましく、1.55以下であるとより好ましく、1.50以下であるとさらに好ましく、1.45以下であると一層好ましく、1.40以下であるとより一層好ましい。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ウェーハ平坦度の指標がESFQRであるとき、ウェーハの外周平坦度を微ダレに近づけるという点から、M/C比率の下限値は、1.00以上であると好ましく、1.05以上であるとより好ましく、1.10以上であるとさらに好ましく、1.15以上であると一層好ましく、1.20以上であるとより一層好ましく、1.25以上であると最も好ましく、1.30以上が最も好適である。ESFQRを考慮する場合、M/C比率の上限値に特に制限はないが、1.70以下が好ましく、1.65以下であるとより好ましく、1.60以下であるとさらに好ましく、1.55以下であると一層好ましく、1.50以下であるとより一層好ましい。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態によれば、GBIRはウェーハ平坦度測定器を用いて測定することができる、裏面基準のグローバルフラットネス(Global Flatness)指標であって、ウェーハの裏面を基準面としたときのウェーハ表面のその基準面に対する最大厚さと最小厚さとの偏差として定義される。
【0041】
また、ESFQRはウェーハ平坦度測定器を用いて測定されるもので、両面研磨がなされたシリコンウェーハのエッジのESFQRを評価することができる。ESFQRは平坦度が低下し易いエッジの平坦度の評価指標であって(サイトフラットネス(site flatness))、ダレ(edge roll off)量の大きさを表す。ESFQRは、基準面(Site Best Fit Surface)からの偏差の最大値と最小値との差として定義され、この基準面は、ウエーハのエッジに沿う環状の領域を周方向にさらに均等に分割して得られる単位領域(サイト)を対象とし、サイト内の厚さ分布に基づいて、最小二乗法により求められるものである。
【0042】
上述のウェーハ平坦度の指標はGBIRおよびESFQRに限定されず、例えばその他の半導体の平坦度を評価する評価指標であってもよく、例としてSFQR(Site Frontsurface referenced least sQuares/Range)、SBIR (Site Backsurface-referenced Ideal plane/Range)等を挙げることができる。
【0043】
次いで、ステップS140において、M/C比率の特定範囲を満たす第1の目標研磨液を選択する。具体的には、上述したM/C比率とGBIRまたはESFQRとの関係図から、特定のM/C比率の範囲において理想的なウェーハ形状が得られることを知得でき、第1の相関性および第2の相関性(本例では各研磨率標準曲線)に基づいて、当該特定のM/C比率に対応する砥粒濃度および[OH]濃度を決定する。例えば、第1の目標研磨液中における砥粒濃度および[OH]濃度を調整することで、第1の目標研磨液のM/C比率が上記特定範囲内に入るようにする。
【0044】
ステップS150において、第1の目標研磨液を用いてウェーハに対し研磨を行う。本開示のいくつかの実施形態によれば、ウェーハ研磨は、必要に応じて定寸研磨または非定寸研磨とすることができる。さらに、第1の目標研磨液のM/C比率は特定範囲内にあるため、研磨されたウェーハのGBIRおよびESFQRを容易に理想値内に収め、ウェーハを目標の形状にすることができる。一般に、ウェーハの理想の形状はグローバル形状が微凹状を呈し、かつ外周形状が微ダレを呈する形状であるが、本発明はこれに限定はされず、つまり所望のウェーハ形状に応じて、必要なM/C比率の特定範囲を設定することができる。
【0045】
図3は、本開示の第2実施形態によるウェーハの研磨方法のフローチャートを示しており、図2におけるものと同じステップには同じ符号を用い、その説明は省略する。図3を参照にされたい。図2と異なるのは、第1の目標研磨液を2つの段階に分けて用いウェーハを研磨する点である。
【0046】
本開示の第2実施形態では、ステップS151において、第1の段階で第1の目標研磨液を用いてウェーハのGBIRを制御し、かつ第2の段階で第1の目標研磨液を用いてウェーハのESFQRを制御する。具体的には、M/C比率とGBIRまたはESFQRとの関係性(関係図)に基づいて、M/C比率がGBIRおよびESFQR両方の理想を満たす特定の範囲内に入るように選択し、第1の目標研磨液を用い第1の段階でウェーハのGBIRを制御し、第1の目標研磨液を用い第2の段階でウェーハのESFQRを制御して、ウェーハ形状をより精度よく制御する。また、第1の段階および第2の段階で用いる研磨機は同じでも、または異なっていてよいという点が理解されなければならない。また、第1の段階および第2の段階のステップの順序は例示に過ぎず、本発明はこれに限定されない、つまり、先ずESFQRを制御するステップを行ってから、GBIRを制御するステップを行ってもよい。
【0047】
図4は、本開示の第3実施形態によるウェーハの研磨方法のフローチャートを示し、図2におけるものと同じステップには同じ符号を用い、その説明は省略する。図4を参照にされたい。図2と異なるのは、M/C比率とウェーハ平坦度指標との関係図に基づいて第1の目標研磨液および第2の目標研磨液をそれぞれ選択し、第1の段階で第1の目標研磨液を用いてGBIRの制御を行い、第2の段階で第2の目標研磨液を用いてESFQRの制御を行うという点である。
【0048】
本開示の第3実施形態では、ステップS141において、M/C比率の特定範囲を満たす第1の目標研磨液およびM/C比率の特定範囲を満たす第2の目標研磨液を選択する。具体的には、M/C比率とGBIRまたはESFQRとの関係図に基づき、GBIRに対する特定範囲のM/C比率を決定すると共に、ESFQRに対する特定範囲のM/C比率を決定することができる。つまり、GBIRおよびESFQRのM/C比率の特定範囲は異なっていてもよく、上述の決定したM/C比率に基づいて、第1の目標研磨液をGBIRに対するM/C比率を満たすように調整し、同時に第2の目標研磨液をESFQRに対するM/C比率を満たすように調整する。
【0049】
次いで、ステップS152において、第1の段階で第1の目標研磨液を用いてウェーハのGBIRを制御し、かつ第2の段階で第2の目標研磨液を用いてウェーハのESFQRを制御する。具体的には、第1の段階で第1の目標研磨液を用いて研磨したウェーハが理想的なGBIRを満たすウェーハ形状を有し、次いで第2の段階で第2の目標研磨液を用いて研磨したウェーハが理想的なESFQRを満たすウェーハ外周形状を有し得るようになる。
【0050】
また、第2実施形態と同じように、第1の段階および第2の段階で用いる研磨機は同じでも、または異なっていてもよいという点が理解されなければならない。また、第1の段階および第2の段階のステップの順序は例示に過ぎず、本発明はこれに限定されない、つまり、先ず第2の目標研磨液を用いてESFQRを制御するステップを行ってから、第1の目標研磨液を用いてGBIRを制御するステップを行ってもよい。
【0051】
図5は、本開示の第4実施形態によるウェーハの研磨方法のフローチャートを示しており、図2におけるものと同じステップには同じ符号を用い、その説明は省略する。図5を参照にされたい。図2と異なるのは、M/C比率とウェーハ平坦度指標との関係図に基づいて第1の目標研磨液および第2の目標研磨液をそれぞれ選択し、第1の段階で第1の目標研磨液を用いてウェーハのGBIRおよびESFQRの制御を行い、第2の段階で第2の目標研磨液を用いてGBIRおよびESFQRの制御を行うという点である。
【0052】
本開示の第4の実施形態によれば、ステップS141において、M/C比率の特定範囲を満たす第1の目標研磨液およびM/C比率の特定範囲を満たす第2の目標研磨液を選択する。具体的には、M/C比率とGBIRまたはESFQRとの関係図に基づき、GBIRまたはESFQRに対する特定範囲のM/C比率を決定すると共に、上述の決定した上記M/C比率に基づいて第1の目標研磨液をGBIRおよびESFQRに対するM/C比率を満たすように調整し、同時に第2の目標研磨液をGBIRおよびESFQRに対するM/C比率を満たすように調整する。ただし、第1の目標研磨液および第2の目標研磨液両者のM/C比率はいずれも上記M/C比率の特定範囲を満たすものであるが、そのM/C比率は互いに異なっていてもよい。
【0053】
次いで、ステップS153において、第1の段階で第1の目標研磨液を用いてウェーハのGBIRおよびESFQRを制御し、かつ第2の段階で第2の目標研磨液を用いてウェーハのGBIRおよびESFQRを制御する。具体的には、第1の段階で第1の目標研磨液を用いて研磨したウエーハが理想的なGBIRおよびESFQRに近いウェーハ形状を有し、次いで第2の段階で第2の目標研磨液を用いて研磨したウェーハがより理想的なGBIRおよびESFQRのウェーハ外周形状を有し得るようになる。また、第4実施形態では、第1の段階および第2の段階でそれぞれ異なる研磨機を用いることが好ましいが、本発明はこれに限定はされず、同じ研磨機を用いてもよい。ただしこの場合は2段階の研磨を行う。
【実施例
【0054】
以下、実施例等を通してより具体的に本発明を説明するが、本発明の範囲はこれら実施例等に限定されない。
【0055】
既定の方法で製造して得られたシリコンウェーハに対し、図1に示すようなType1_28B両面研磨機を使用し、シリコンウェーハの研磨を行った。以下、加工の研磨試験は非定寸条件下で行った。実施例1として、砥粒を含まずアルカリ性化学品([OH]濃度0.00026mol/L)を含む研磨液を供給して研磨を行い、研磨時間は60分に設定した。研磨後のシリコンウェーハからその研磨率を得た。
【0056】
下記する実施例において、アルカリ性化学品濃度および砥粒濃度の条件の他は実施例1と類似する方式で、シリコンウェーハに対し表1に示される各研磨液の条件で研磨を行った。具体的には、実施例2および比較例1ではそれぞれ、砥粒を含まずアルカリ性化学品を含む([OH]濃度はそれぞれ0.00118および0.00186 mol/L)研磨液で研磨を行って、各研磨液の研磨率を求め、さらに比較例1の研磨レートを基準とし、各実施例の研磨レートの変化率を求めた。
【0057】
さらに、実施例3~5では、固定濃度のアルカリ性化学品(0.00186 mol/L)を含み、かつそれぞれ異なる濃度の砥粒を含む研磨液で研磨行って、各研磨液の研磨率を得た。これら実施例において、砥粒には、平均粒径(BET)20~30nmのシリカ(SiO)粒子を例として用いた。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1~2および比較例1の各濃度および研磨率の結果から、二次線形回帰により上記(式2)を求めた。これは化学研磨率の標準曲線を表すものである。同様に、実施例3~5および比較例1の各濃度および研磨率の結果から、二次線形回帰により上記(式3)を求めた。これは機械研磨率の標準曲線を表すものである。上記の結果は図6に示すとおりである。
【0060】
次いで、(式2)および(式3)を上記(式5)に代入して、各研磨液のM/C比率を下記のように求めた。
【0061】
実施例6~8において、表2に示される各研磨液条件で研磨を行い、各研磨液の研磨率を得ると共に、実施例3~8および比較例1の研磨率、アルカリ性化学品濃度、シリカ濃度を上式に代入して各実施例のM/C比率を求めた。
【0062】
<GBIRの測定>
実施例3~8及び比較例1の各ウェーハの表面を、ウェーハ平坦度測定器(KLA Tecnor社製、Wafersight)を用いて測定し(測定範囲298mm、外周1mm除外)、各ウェーハの厚さおよびGBIRを求めると共に、比較例1のGBIRを基準とし、各実施例3~8のGBIR変化率を求め、かつGBIR変化率とM/C比率との関係図を作成した。その結果は図7に示すとおりである。
【0063】
<ESFQRの測定>
実施例3~8および比較例1の各ウェーハを、ウェーハ平坦度測定器(KLA Tecnor社製、Wafersight)を用い、測定範囲298mm(外周1mm除外)で、ESFQR(角度5度×長さ35mm)を測定し、比較例1のESFQRを基準とし、各実施例3~8のESFQR変化率を求め、かつESFQR変化率とM/C比率との関係図を作成した。その結果は図8に示すとおりである。
【0064】
【表2】
【0065】
図7に示されるように、両面研磨を行う際、ウェーハ表面のGBIRを最適化するため、M/C比率は0.7以上1.4以下の範囲が好ましい。研磨後の形状を微凸状としたい場合、M/C比率を1.0以上であって1.4以下の範囲とすることが好ましい。また、図8に示されるように、ESFQRを最適化して、研磨後のウェーハを微ダレから平坦な状態とするためには、M/C比率を1.2であって1.7の範囲とすることが好ましい。よって、GBIRおよびESFQRを同時に考慮する場合、M/C比率は1.2以上であって1.4以下の範囲とするのが好適である。故に、上記M/C比率の特定の範囲によって、容易に所定の研磨液中の条件を調整することができ、これにより後続におけるウェーハが所望のウェーハ形状を有するようになる。
【0066】
異なる研磨機で研磨を行う場合でのM/C比率とGBIRおよびESFQRとの相関性を考慮するため、実施例4、7と同じ研磨液を用いてそれぞれ実施例9、10とし、キャリア直径を約20inchとした以外、図1の両面研磨機と同一構成と作動のType_20B両面研磨機を使用して、シリコンウェーハの研磨を行った。研磨時間は60分に設定した。研磨後のシリコンウェーハからその研磨率を得た。次いで、上述と同じ方式でそのGBIRおよびESFQR変化率を求めた。その結果が表3に示されている。
【0067】
実施例9、10のM/C比率に関し、同じ研磨液を同一濃度で用いるとすると、
で表される化学研磨率のCは一定である。よって、Type_28BとType_20B両面研磨機の差異は、機械研磨率のMの数値変化のみにあると認められる。故に、この結果から、実施例9、10のM/C比率を下記(式6)により推定することができる。
(式6)
【0068】
表3に示すM/C比率、GBIRおよびESFQRに基づいて、M/C比率とGBIRおよびESFQRとの関係図を作成した。その結果が図9および図10に示されている。図9および図10の関係図から、そのM/C比率がなおもGBIRおよびESFQRと上述の実施例に一致する相関性を呈していることがわかる。つまり、研磨機を変えても、依然そのM/C比率を推測することができ、さらには使用したい異なる研磨機に応じて適したM/C比率の特定範囲を別途決定することができるため、異なる研磨機を用い、別途決定した新たな研磨液で研磨を行う際に、なおも理想的なウェーハ形状を得ることが可能となる。
【0069】
【表3】
【0070】
以上、本発明のいくつかの実施形態の特徴を概略的に説明して、当該技術分野において通常の知識を有する者が本開示の形態をより容易に理解できるようにした。当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、本開示を他の製造プロセスや設計のベースとして容易に利用して、本明細書で記載された実施形態と同じ目的を達成するおよび/または同じ利点が得られる旨を理解するはずである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、上述と同等の構造は本開示の精神から逸脱せずに保護の範囲内にあって、本開示の精神および範囲を逸脱することなく変更、置換および修飾が可能であるということを理解するであろう。
【符号の説明】
【0071】
100:両面研磨装置
10:上定盤
11:上研磨パッド
20:下定盤
21:下研磨パッド
30:キャリアプレート
31:ウェーハ保持孔
40:サンギア
50:インターナルギア
60:研磨液
110:昇降機構
S110、S120、S130、S140、S141、S142、S150、S151、S152、S153:ステップ
WF:シリコンウェーハ
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10