(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】光学異方性積層体及びその製造方法、円偏光板、並びに画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240312BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240312BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240312BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240312BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240312BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F9/00 313
G09F9/30 365
H10K50/86
H10K59/10
(21)【出願番号】P 2020562994
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047519
(87)【国際公開番号】W WO2020137409
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018244307
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大里 和弘
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/043124(WO,A1)
【文献】特開2003-014931(JP,A)
【文献】特開2014-228864(JP,A)
【文献】特開2009-251442(JP,A)
【文献】特開2007-004120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 50/00-102/20
H05B 33/00-33/28
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光学異方性層及び第2光学異方性層を含む光学異方性積層体であって、
前記第1光学異方性層が、下記式(1)を満たし、
前記第2光学異方性層が、下記式(2)を満たし、
前記光学異方性積層体が、下記式(3)を満たし、
前記第1光学異方性層のNZ係数NZ1及び前記第2光学異方性層のNZ係数NZ2が下記式(4)を満たし、
前記第1光学異方性層の遅相軸と前記第2光学異方性層の遅相軸とのなす角度が、85°~95°である、光学異方性積層体。
nx1>ny1≧nz1 式(1)
nz2>nx2>ny2 式(2)
Re(450)<Re(550)<Re(650) 式(3)
-0.3≦NZ1+NZ2≦0.8 式(4)
但し、
nx1は、前記第1光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny1は、前記第1光学異方性層の面内方向であって、nx1を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz1は、前記第1光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
nx2は、前記第2光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny2は、前記第2光学異方性層の面内方向であって、nx2を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz2は、前記第2光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、波長450nm、550nm、及び650nmにおける前記光学異方性積層体の面内位相差をそれぞれ表す。
【請求項2】
波長550nmにおける前記第1光学異方性層の面内位相差Re1(550)、
波長450nmにおける前記第1光学異方性層の面内位相差Re1(450)、
波長550nmにおける前記第2光学異方性層の面内位相差Re2(550)及び、
波長450nmにおける前記第2光学異方性層の面内位相差Re2(450)が、下記式(5)および式(6)を満たす、請求項1に記載の光学異方性積層体。
Re1(450)/Re1(550)<Re2(450)/Re2(550) 式(5)
Re1(550)>Re2(550) 式(6)
【請求項3】
前記Re1(550)と前記Re2(550)との差が、100nm以上180nm以下である、請求項2に記載の光学異方性積層体。
【請求項4】
前記第1光学異方性層が、第1樹脂フィルムの延伸フィルムであり、
前記第1樹脂フィルムは、正の固有複屈折値を有する樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学異方性積層体。
【請求項5】
前記第1光学異方性層が、液晶配向層を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学異方性積層体。
【請求項6】
前記第2光学異方性層が、第2樹脂フィルムの延伸フィルムであり、
前記第2樹脂フィルムは、負の固有複屈折値を有する樹脂を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学異方性積層体。
【請求項7】
前記第2光学異方性層が、前記第2樹脂フィルムを二方向延伸した延伸フィルムであり、前記NZ2が-2.0以上-0.2以下である、請求項6に記載の光学異方性積層体。
【請求項8】
前記NZ2が-2.0以上-0.6以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学異方性積層体。
【請求項9】
直線偏光子と、
請求項1~
8のいずれか1項記載の光学異方性積層体と、を備える円偏光板。
【請求項10】
前記直線偏光子の吸収軸または前記直線偏光子の透過軸と、前記第1光学異方性層の遅相軸とのなす角が40°~50°である、請求項
9に記載の円偏光板。
【請求項11】
前記直線偏光子、前記第1光学異方性層、及び前記第2光学異方性層をこの順で備えるか、または、
前記直線偏光子、前記第2光学異方性層、及び前記第1光学異方性層をこの順で備える、請求項
9または10に記載の円偏光板。
【請求項12】
請求項
9~11のいずれか1項に記載の円偏光板と、有機エレクトロルミネッセンス素子と、を備える画像表示装置であって、
前記直線偏光子と、前記光学異方性積層体と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子と、をこの順に備える、画像表示装置。
【請求項13】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の光学異方性積層体の製造方法であって、
正の固有複屈折値を有する樹脂を含む第1樹脂フィルムを延伸して第1光学異方性層を得る工程1と、
負の固有複屈折値を有する樹脂を含む第2樹脂フィルムを延伸して第2光学異方性層を得る工程2と、
前記第1光学異方性層と前記第2光学異方性層とを重ねる工程3と、を含み、
前記工程1において、前記第1樹脂フィルムを、一方向延伸し、
前記工程2において、前記第2樹脂フィルムを、二方向延伸し、
前記工程3において、前記第1光学異方性層の遅相軸と、前記第2光学異方性
層の遅相軸とのなす角が85°~95°となるように重ねる、光学異方性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性積層体及びその製造方法、円偏光板、並びに画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置などの画像表示装置は、外光を反射することにより、画像表示の品質が低下する場合がある。以下、有機エレクトロルミネッセンスを「有機EL」ということがある。特に反射電極を備えた有機EL画像表示装置の場合、画像表示の品質低下が顕著である。このような反射を抑制するため、画像表示装置の表示面に、円偏光板が設けられることがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
外光は、円偏光板によりある方向の円偏光に変換され、画像表示装置により反射される際にある方向とは逆方向の円偏光となる。逆方向の円偏光となった反射光は、円偏光板を透過しないため、反射が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/047465号
【文献】特開2010-266723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、円偏光板が、直線偏光子と、直線偏光子の吸収軸に対して所定の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/2板と、直線偏光子の吸収軸に対して所定の角度をなす方向に遅相軸を有するλ/4板とを備え、λ/2板の波長分散とλ/4板の波長分散とが相違し、かつλ/4板のNZ係数が所定値であるとの構成を具備することにより、反射を効果的に抑制しうることが記載されている。
しかしながら、画像表示装置の表示面に、かかる円偏光板を設けた場合であっても、表示面を傾斜方向から観察すると、表示面で反射した光が視認されることによって、表示面が色付いて見えることがあった。
【0006】
また上記文献2には、円偏光板が、直線偏光子と、二枚の延伸フィルムを遅相軸を平行に積層して作製したλ/4板において、そのNZ係数を所定値とすることにより、反射を抑制しうることが記載されている。
しかしながら、画像表示装置の表示面に、かかる円偏光板を設けた場合には、表示面を正面方向および傾斜方向から観察した場合に、反射抑制効果が不十分であり、表示面が色付いて見えることがあった。
【0007】
よって、依然として、傾斜方向から見た表示面の色付きが抑制された画像表示装置を実現できる、光学異方性積層体及びその製造方法;傾斜方向から見た表示面の色付きが抑制された画像表示装置を実現できる円偏光板;ならびに傾斜方向から見た表示面の色付きが抑制された画像表示装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するべく、発明者は鋭意検討した結果、所定の光学的条件を満たす第1光学異方性層及び所定の光学的条件を満たす第2光学異方性層を含む光学異方性層積層体であって、第1光学異方性層のNZ係数NZ1と第2光学異方性層のNZ係数NZ2との和が所定範囲であり、第1光学異方性層の遅相軸と第2光学異方性層の遅相軸とが直交する態様とすることによって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0009】
[1] 第1光学異方性層及び第2光学異方性層を含む光学異方性積層体であって、
前記第1光学異方性層が、下記式(1)を満たし、
前記第2光学異方性層が、下記式(2)を満たし、
前記光学異方性積層体が、下記式(3)を満たし、
前記第1光学異方性層のNZ係数NZ1及び前記第2光学異方性層のNZ係数NZ2が下記式(4)を満たし、
前記第1光学異方性層の遅相軸と前記第2光学異方性層の遅相軸とのなす角度が、85°~95°である、光学異方性積層体。
nx1>ny1≧nz1 式(1)
nz2>nx2>ny2 式(2)
Re(450)<Re(550)<Re(650) 式(3)
-0.3≦NZ1+NZ2≦0.8 式(4)
但し、
nx1は、前記第1光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny1は、前記第1光学異方性層の面内方向であって、nx1を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz1は、前記第1光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
nx2は、前記第2光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny2は、前記第2光学異方性層の面内方向であって、nx2を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz2は、前記第2光学異方性層の厚み方向の屈折率を表し、
Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、波長450nm、550nm、及び650nmにおける前記光学異方性積層体の面内位相差をそれぞれ表す。
[2]波長550nmにおける前記第1光学異方性層の面内位相差Re1(550)、
波長450nmにおける前記第1光学異方性層の面内位相差Re1(450)、
波長550nmにおける前記第2光学異方性層の面内位相差Re2(550)及び、
波長450nmにおける前記第2光学異方性層の面内位相差Re2(450)が、下記式(5)および式(6)を満たす、[1]に記載の光学異方性積層体。
Re1(450)/Re1(550)<Re2(450)/Re2(550) 式(5)
Re1(550)>Re2(550) 式(6)
[3] 前記Re1(550)と前記Re2(550)との差が、100nm以上180nm以下である、[2]に記載の光学異方性積層体。
[4] 前記第1光学異方性層が、第1樹脂フィルムの延伸フィルムであり、
前記第1樹脂フィルムは、正の固有複屈折値を有する樹脂を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の光学異方性積層体。
[5] 前記第1光学異方性層が、液晶配向層を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載の光学異方性積層体。
[6] 前記第2光学異方性層が、第2樹脂フィルムの延伸フィルムであり、
前記第2樹脂フィルムは、負の固有複屈折値を有する樹脂を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の光学異方性積層体。
[7] 前記第2光学異方性層が、前記第2樹脂フィルムを二方向延伸した延伸フィルムであり、前記NZ2が-2.0以上-0.2以下である、[6]に記載の光学異方性積層体。
[8] 直線偏光子と、
[1]~[7]のいずれか1項記載の光学異方性積層体と、を備える円偏光板。
[9] 前記直線偏光子の吸収軸または前記直線偏光子の透過軸と、前記第1光学異方性層の遅相軸とのなす角が40°~50°である、[8]に記載の円偏光板。
[10] 前記直線偏光子、前記第1光学異方性層、及び前記第2光学異方性層をこの順で備えるか、または、
前記直線偏光子、前記第2光学異方性層、及び前記第1光学異方性層をこの順で備える、[8]または[9]に記載の円偏光板。
[11] [8]~[10]のいずれか1項に記載の円偏光板と、有機エレクトロルミネッセンス素子と、を備える画像表示装置であって、
前記直線偏光子と、前記光学異方性積層体と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子と、をこの順に備える、画像表示装置。
[12] [1]~[7]のいずれか1項に記載の光学異方性積層体の製造方法であって、
正の固有複屈折値を有する樹脂を含む第1樹脂フィルムを延伸して第1光学異方性層を得る工程1と、
負の固有複屈折値を有する樹脂を含む第2樹脂フィルムを延伸して第2光学異方性層を得る工程2と、
前記第1光学異方性層と前記第2光学異方性層とを重ねる工程3と、を含み、
前記工程1において、前記第1樹脂フィルムを、一方向延伸し、
前記工程2において、前記第2樹脂フィルムを、二方向延伸し、
前記工程3において、前記第1光学異方性層の遅相軸と、前記第2光学異方性の遅相軸とのなす角が85°~95°となるように重ねる、光学異方性積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、傾斜方向から見た表示面の色付きが抑制された画像表示装置を実現できる、光学異方性積層体及びその製造方法;傾斜方向から見た表示面の色付きが抑制された画像表示装置を実現できる円偏光板;ならびに、傾斜方向から見た表示面の色付きが抑制された画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る円偏光板を模式的に示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態2に係る円偏光板を模式的に示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例及び比較例でのシミュレーションにおいて、色度の計算を行う際に設定した評価モデルの様子を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0013】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長尺のフィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0014】
以下の説明において、別に断らない限り、ある層の面内位相差Reは、Re=(nx-ny)×dで表される値を示す。ある層の厚み方向の位相差Rthは、別に断らない限り、Rth={(nx+ny)/2-nz}×dで表される値である。さらに、ある層のNZ係数(NZ)は、別に断らない限り、NZ=(nx-nz)/(nx-ny)で表される値を示す。NZ係数は、NZ=Rth/Re+0.5により算出されうる。
ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向(遅相軸方向)の屈折率を表し、nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表し、nzは、層の厚み方向の屈折率を表し、dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
【0015】
以下の説明において、ある層の遅相軸とは、別に断らない限り、当該層の面内における遅相軸を表す。
【0016】
以下の説明において、ある面の正面方向とは、別に断らない限り、当該面の法線方向を意味し、具体的には前記面の極角0°且つ方位角0°の方向を指す。
【0017】
以下の説明において、ある面の傾斜方向とは、別に断らない限り、当該面に平行でも垂直でもない方向を意味し、具体的には当該面の極角が0°より大きく90°より小さい範囲の方向を指す。
【0018】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0019】
以下の説明において、長尺状のフィルムの長手方向は、通常は製造ラインにおけるフィルムの流れ方向と平行である。
【0020】
以下の説明において、「偏光板」、「円偏光板」、「プレート」、及び「λ/2板」、「λ/4板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0021】
以下の説明において、複数の層を備える部材における各層の光学軸(吸収軸、透過軸、遅相軸等)がなす角度は、別に断らない限り、前記の層を厚み方向から見たときの角度を表す。
【0022】
以下の説明において、「正の固有複屈折値を有する重合体」及び「正の固有複屈折値を有する樹脂」とは、「延伸方向の屈折率が延伸方向に直交する方向の屈折率よりも大きくなる重合体」及び「延伸方向の屈折率が延伸方向に直交する方向の屈折率よりも大きくなる樹脂」をそれぞれ意味する。また、「負の固有複屈折値を有する重合体」及び「負の固有複屈折値を有する樹脂」とは、「延伸方向の屈折率が延伸方向に直交する方向の屈折率よりも小さくなる重合体」及び「延伸方向の屈折率が延伸方向に直交する方向の屈折率よりも小さくなる樹脂」をそれぞれ意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算しうる。
【0023】
以下の説明において、接着剤とは、別に断らない限り、狭義の接着剤のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。狭義の接着剤とは、エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa~500MPaである接着剤を表す。
【0024】
[実施形態1]
以下、本発明の実施形態1に係る円偏光板及び、当該円偏光板を備える画像表示装置について
図1を参照しつつ、説明する。
図1は、実施形態1に係る円偏光板を模式的に示す分解斜視図である。
【0025】
本実施形態の円偏光板500は、
図1に示すように、直線偏光子130と、本実施形態の光学異方性積層体100と、を備える。
【0026】
[1.光学異方性積層体]
[1-1.光学異方性積層体の構成]
本実施形態の光学異方性積層体100は、第1光学異方性層110及び第2光学異方性層120を含む。光学異方性積層体100は、必要に応じて、任意の層(図示せず)を備えていてもよい。
【0027】
本実施形態において、第1光学異方性層110は、下記式(1)を満たし、第2光学異方性層120は、下記式(2)を満たし、光学異方性積層体100は、式(3)を満たし、第1光学異方性層及び第2光学異方性層が、下記式(4)を満たし、第1光学異方性層110の遅相軸111と第2光学異方性層120の遅相軸121とのなす角度が85°~95°である。
【0028】
式(1)~式(4)を満たす光学特性を有し、かつ、第1光学異方性層110の遅相軸111と第2光学異方性層120の遅相軸121とのなす角度が85°~95°である光学異方性積層体100を、直線偏光子130と組み合わせて得られる円偏光板500を画像表示装置に設けることにより、その画像表示装置の表示面を傾斜方向から見た場合に外光の反射を抑制して、色付きを効果的に抑制できる。
【0029】
nx1>ny1≧nz1 式(1)
nz2>nx2>ny2 式(2)
Re(450)<Re(550)<Re(650) 式(3)
-0.3≦NZ1+NZ2≦0.8 式(4)
【0030】
前記式(1)において、nx1は、第1光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny1は、第1光学異方性層の面内方向であって、nx1を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz1は、第1光学異方性層の厚み方向の屈折率を表す。
【0031】
前記式(1)は、第1光学異方性層が、いわゆるポジティブAプレート又はネガティブBプレートとして機能しうることを示す。
【0032】
前記式(1)を満たす層の材料としては、耐熱性が高い材料を用いうるので、このような材料を第1光学異方性層の材料として採用することにより、加熱試験後に表示面の色味が変化することが抑制された画像表示装置を容易に実現できる。
【0033】
前記式(2)において、nx2は、第2光学異方性層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、ny2は、第2光学異方性層の面内方向であって、nx2を与える方向に直交する方向の屈折率を表し、nz2は、第2光学異方性層の厚み方向の屈折率を表す。
【0034】
前記式(2)は、第2光学異方性層が、いわゆるポジティブBプレートとして機能しうることを示す。第2光学異方性層が、式(2)を満たすことにより、反射光による色付きを効果的に抑制できる画像表示装置を実現できる。式(2)は、第2光学異方性層が、3方向の屈折率(nx2、ny2およびnz2)が相違する層であること、即ち、二軸性を有する層であることを示す。
【0035】
前記式(3)において、Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、波長450nm、550nm、及び650nmにおける光学異方性積層体の面内位相差をそれぞれ表す。
【0036】
前記式(3)は、光学異方性積層体の面内位相差が、逆波長分散性であることを示す。光学異方性積層体が、式(3)を満たすことにより、広い波長範囲において、光学異方性積層体を透過する光の偏光状態を均一に変換できる。よって、反射光による色付きを、広い波長範囲において効果的に抑制できる画像表示装置を実現できる。
【0037】
前記式(4)において、NZ1は第1光学異方性層のNZ係数を表し、NZ2は第2光学異方性層のNZ係数を表す。NZ1とNZ2の和(NZ1+NZ2)は、-0.3以上、好ましくは0以上、より好ましくは0.15以上であり、0.8以下、好ましくは0.75以下、より好ましくは0.65以下である。NZ1とNZ2との和を前記の範囲に収めることにより、表示面を傾斜方向から見た場合の反射光による色付きをより効果的に抑制できる画像表示装置を実現できる。
【0038】
NZ1は(nx1-nz1)/(nx1-ny1)で算出される値であり、式(1)から、NZ1は正の値である。NZ1は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.05以上であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0039】
NZ2は(nx2-nz2)/(nx2-ny2)で算出される値であり、式(2)から、NZ2は負の値である。NZ2は、好ましくは-2.0以上、より好ましくは-1.5以上であり、好ましくは-0.2以下、より好ましくは-0.4以下である。NZ2を前記範囲に収めることにより、2軸性を高めることができる。
【0040】
第1光学異方性層及び、第2光学異方性層は下記式(5)および(6)を満たす光学特性を有していることが好ましい。
Re1(450)/Re1(550)<Re2(450)/Re2(550) 式(5)
Re1(550)>Re2(550) 式(6)
【0041】
前記式(5)において、Re1(550)は、波長550nmにおける第1光学異方性層の面内位相差を表し、Re1(450)は波長450nmにおける第1光学異方性層の面内位相差を表し、Re2(550)は、波長550nmにおける第2光学異方性層の面内位相差を表し、Re2(450)は波長450nmにおける第2光学異方性層の面内位相差を表す。
【0042】
前記式(5)は、第2光学異方性層において第1光学異方性層よりも波長分散性が大きいことを示す。
【0043】
前記式(6)において、Re1(550)は、波長550nmにおける第1光学異方性層の面内位相差を表し、Re2(550)は、波長550nmにおける第2光学異方性層の面内位相差を表す。式(6)は第1光学異方性層のRe1(550)が第2光学異方性層のRe2(550)よりも大きいことを示す。
【0044】
Re1(550)とRe2(550)との差は、好ましくは100nm以上、より好ましくは110nm以上であり、好ましくは180nm以下、より好ましくは160nm以下である。
【0045】
波長590nmにおける第1光学異方性層の面内位相差Re1(590)は、好ましくは240nm以上、より好ましくは260nm以上であり、好ましくは320nm以下、より好ましくは300nm以下である。第1光学異方性層の面内位相差Re1(590)が、前記範囲に収まることにより、表示面を傾斜方向から見た場合の反射光の色付きをより効果的に抑制できる画像表示装置を実現できる。
【0046】
波長590nmにおける第2光学異方性層の面内位相差Re2(590)は、好ましくは100nm以上、より好ましくは120nm以上であり、好ましくは190nm以下、より好ましくは170nm以下である。第2光学異方性層の面内位相差Re2(590)が前記範囲に収まることにより、表示面を傾斜方向から見た場合の反射光による色付きをより効果的に抑制できる画像表示装置を実現できる。
【0047】
第1光学異方性層の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。
第2光学異方性層の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0048】
第1光学異方性層のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。
第2光学異方性層のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。
【0049】
第1光学異方性層の厚み及び第2光学異方性層の厚みは、前記の光学特性を有する範囲で任意に調整しうる。
第1光学異方性層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下である。
第2光学異方性層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0050】
光学異方性積層体の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0051】
光学異方性積層体のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。
【0052】
光学異方性積層体の厚みは、前記の光学特性を有する範囲で任意に調整しうる。具体的な厚みは、薄型化の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0053】
[1-2.第1光学異方性層及び第2光学異方性層の材料]
第1光学異方性層及び第2光学異方性層を形成するための材料としては、例えば樹脂が挙げられ、中でも熱可塑性樹脂が好ましい。
第1光学異方性層及び第2光学異方性層を形成するための材料としては、正の固有複屈折値を有する重合体を含む樹脂であっても、負の固有複屈折値を有する重合体を含む樹脂であっても、正の固有複屈折値を有する重合体及び負の固有複屈折値を有する重合体を含む樹脂であってもよい。
【0054】
正の固有複屈折値を有する重合体としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル、ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリールスルホン;ポリ塩化ビニル;環状オレフィン重合体、ノルボルネン重合体等の脂環式構造含有重合体;棒状液晶ポリマーが挙げられる。
【0055】
負の固有複屈折値を有する重合体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン類化合物の単独重合体、並びに、スチレン類化合物と任意のモノマーとの共重合体を含むポリスチレン系重合体;ポリアクリロニトリル重合体;ポリメチルメタクリレート重合体;あるいはこれらの多元共重合ポリマーが挙げられる。また、スチレン類化合物に共重合させうる前記任意のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート、及びブタジエンが挙げられ、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート、及びブタジエンから選ばれる1種以上が好ましい。
【0056】
前記の重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。
また、前記の重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0057】
第1光学異方性層及び第2光学異方性層を形成するための樹脂は、前記重合体以外に、任意の配合剤を含んでいてもよい。配合剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;可塑剤;などが挙げられる。配合剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0058】
第1光学異方性層は、液晶配向層を含む層であってもよい。液晶配向層については[1-3-2]において、説明する。
【0059】
[1-3.好適な第1光学異方性層の材料]
[1-3-1.正の固有複屈折値を有する樹脂]
第1光学異方性層は、第1樹脂フィルムの延伸フィルムとしうる。第1樹脂フィルムは、正の固有複屈折値を有する樹脂を含むことが好ましい。このような正の固有複屈折値を有する樹脂としては、脂環式構造含有重合体を含む樹脂、セルロースエステルを含む樹脂、及びポリカーボネートを含む樹脂が挙げられる。第1樹脂フィルムとしては、脂環式構造含有重合体を含む樹脂、セルロースエステルを含む樹脂、及びポリカーボネートを含む樹脂から選ばれる1種以上を含むことがより好ましく、脂環式構造含有重合体を含む樹脂を含むことが更に好ましい。正の固有複屈折値を有する樹脂を材料として用いることにより、該樹脂で形成された第1樹脂フィルムを延伸することにより、容易に式(1)を満たす第1光学異方性層を製造しうる。第1光学異方性層は、正の固有複屈折値を有する樹脂からなるフィルム(第1樹脂フィルム)を延伸してなる層としうる。第1樹脂フィルムは第1光学異方性層を形成する延伸前の樹脂フィルムのことをいう。
【0060】
脂環式構造含有重合体は、繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、通常は非晶質の重合体である。脂環式構造含有重合体としては、主鎖中に脂環式構造を含有する重合体及び側鎖に脂環式構造を含有する重合体のいずれも用いうる。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。
1つの脂環式構造の繰り返し単位を構成する炭素原子数に特に制限はないが、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、特に好ましくは6個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。
【0061】
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されうるが、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位を前記のように多くすることにより、第1光学異方性層の耐熱性を高くできる。
【0062】
脂環式構造含有重合体は、例えば、(1)ノルボルネン重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、環状オレフィン重合体及びノルボルネン重合体がより好ましい。
【0063】
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネンモノマーの開環重合体、ノルボルネンモノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物;ノルボルネンモノマーの付加重合体、ノルボルネンモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネンモノマーの開環重合体水素添加物が特に好ましい。
【0064】
前記の脂環式構造含有重合体は、例えば特開2002-321302号公報等に開示されている公知の重合体から選ばれる。
【0065】
セルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステル(例:セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネート)が代表的である。低級脂肪酸は、1分子あたりの炭素原子数6以下の脂肪酸を意味する。セルロースアセテートには、トリアセチルセルロース(TAC)及びセルロースジアセテート(DAC)が含まれる。
【0066】
セルロースエステルの総アシル基置換度は、好ましくは2.20以上2.70以下であり、より好ましくは2.40以上2.60以下である。ここで、総アシル基は、ASTM D817-91に準じて測定しうる。
【0067】
セルロースエステルの重量平均重合度は、好ましくは350以上800以下であり、より好ましくは370以上600以下である。セルロースエステルの数平均分子量は、好ましくは60000以上230000以下であり、より好ましくは70000以上230000以下である。
【0068】
ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位及びカーボネート構造(-O-(C=O)-O-で表される構造)を有する重合体が挙げられる。
ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAが挙げられる。ポリカーボネート中に含まれる、ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位は、1種であっても2種以上であってもよい。
【0069】
第1光学異方性層は、トリアセチルセルロースを含む樹脂を含むことが更に好ましい。トリアセチルセルロースを含む樹脂から形成されたフィルムのレターデーションは、一般に逆波長分散性を有することから、反射光による色付きを、広い波長範囲においてより効果的に抑制できる画像表示装置を実現できる。
【0070】
第1光学異方性層を、トリアセチルセルロースを含む樹脂で形成する場合、第1光学異方性層は、溶液流延法により形成された層であることが好ましい。これにより、容易に式(1)を満たす第1光学異方性層を製造しうる。
【0071】
[1-3-2.液晶配向層]
第1光学異方性層は液晶配向層を含む層としうる。
液晶配向層は、配向した液晶化合物を含む液晶組成物の層を硬化させた硬化物層である。よって、液晶配向層は、液晶組成物の硬化物で形成されているので、液晶化合物の分子を含む。
【0072】
液晶化合物は、重合性を有することが好ましい。よって、液晶化合物は、その分子が、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びエポキシ基等の重合性基を含むことが好ましい。液晶化合物の分子1つ当たりの重合性基の数は、1個でもよいが、2個以上が好ましい。重合性を有する液晶化合物は、液晶相を呈した状態で重合し、液晶相における分子の屈折率楕円体において最大の屈折率を示す方向を変化させないように重合体となることができる。よって、液晶配向層において液晶化合物の配向状態を固定したり、液晶化合物の重合度を高めて液晶配向層の機械的強度を高めたりすることが可能である。
【0073】
液晶化合物の分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、特に好ましくは800以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。このような範囲の分子量を有する液晶化合物を用いる場合に、液晶組成物の塗工性を特に良好にできる。
【0074】
測定波長590nmにおける液晶化合物の複屈折Δnは、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下である。このような範囲の複屈折Δnを有する液晶化合物を用いる場合に、配向欠陥の少ない液晶硬化層を得やすい。
【0075】
液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0076】
このような液晶化合物の例としては、下記式(I)で表される液晶化合物が挙げられる。
【0077】
【0078】
式(I)において、Arは、芳香族複素環、複素環、および芳香族炭化水素環の少なくとも1つを有し、置換されていてもよい、炭素原子数6~67の2価の有機基を表す。芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾピラノン環等が挙げられる。複素環としては、例えば、1,3-ジチオラン環、ピロリジン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族炭化水素環としては、例えば、フェニル環、ナフタレン環等が挙げられる。
【0079】
式(I)において、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH2-、-CH2-O-、-O-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF2-O-、-O-CF2-、-CH2-CH2-、-CF2-CF2-、-O-CH2-CH2-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH2-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH2-、-CH2-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH2-、-CH2-CH2-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH2-CH2-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH3)-、-C(CH3)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0080】
式(I)において、A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表す。A1、A2、B1及びB2が表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、3~100である。中でも、A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数5~20の環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の芳香族基が好ましい。
【0081】
A1、A2、B1及びB2における環状脂肪族基としては、例えば、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘプタン-1,4-ジイル基、シクロオクタン-1,5-ジイル基等の、炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基;デカヒドロナフタレン-1,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基等の、炭素原子数5~20のビシクロアルカンジイル基;等が挙げられる。中でも、置換されていてもよい炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が特に好ましい。環状脂肪族基は、トランス体であってもよく、シス体であってもよく、シス体とトランス体との混合物であってもよい。中でも、トランス体がより好ましい。
【0082】
A1、A2、B1及びB2における環状脂肪族基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0083】
A1、A2、B1及びB2における芳香族基としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;フラン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;等が挙げられる。中でも、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が好ましく、フェニレン基がさらに好ましく、1,4-フェニレン基が特に好ましい。
【0084】
A1、A2、B1及びB2における芳香族基が有しうる置換基としては、例えば、A1、A2、B1及びB2における環状脂肪族基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0085】
式(I)において、Y1~Y4は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0086】
式(I)において、G1及びG2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH2-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表す。G1及びG2の前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、G1及びG2の両末端のメチレン基(-CH2-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはない。
【0087】
G1及びG2における炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数1~20のアルキレン基が挙げられる。
【0088】
G1及びG2における炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数3~20のアルキレン基が挙げられる。
【0089】
式(I)において、P1及びP2は、それぞれ独立して、重合性基を表す。P1及びP2における重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の、CH2=CR31-C(=O)-O-で表される基;ビニル基;ビニルエーテル基;p-スチルベン基;アクリロイル基;メタクリロイル基;カルボキシル基;メチルカルボニル基;水酸基;アミド基;炭素原子数1~4のアルキルアミノ基;アミノ基;エポキシ基;オキセタニル基;アルデヒド基;イソシアネート基;チオイソシアネート基;等が挙げられる。R31は、水素原子、メチル基、又は塩素原子を表す。中でも、CH2=CR31-C(=O)-O-で表される基が好ましく、CH2=CH-C(=O)-O-(アクリロイルオキシ基)、CH2=C(CH3)-C(=O)-O-(メタクリロイルオキシ基)がより好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0090】
式(I)において、p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
【0091】
式(I)で表される液晶化合物は、例えば、国際公開第2012/147904号に記載される、ヒドラジン化合物とカルボニル化合物との反応により製造しうる。
【0092】
式(I)で表される液晶化合物としては、具体的には、例えば、下記の式で表される化合物が挙げられる。
【0093】
【0094】
液晶組成物は、必要に応じて、液晶化合物に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組合わせて用いてもよい。
【0095】
例えば、液晶化合物の重合を促進するため、液晶組成物は、任意の成分として重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれを用いてもよい。
【0096】
液晶組成物は、任意の成分として、界面活性剤を含んでいてもよい。特に、配向性に優れた液晶硬化層を安定して得る観点から、界面活性剤としては、分子中にフッ素原子を含む界面活性剤が好ましい。
【0097】
また、液晶組成物は、任意の成分として、例えば、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤を用いることにより、液晶組成物のゲル化を抑制できるので、液晶組成物のポットライフを長くできる。酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類状を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0098】
液晶組成物は、任意の成分として、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、逆分散液晶化合物を溶解できるものが好ましい。このような溶媒としては、通常、有機溶媒を用いる。
【0099】
液晶組成物が含みうる任意のその他の成分としては、例えば、金属;金属錯体;酸化チタン等の金属酸化物;染料、顔料等の着色剤;蛍光材料、燐光材料等の発光材料;レベリング剤;チキソ剤;ゲル化剤;多糖類;紫外線吸収剤;赤外線吸収剤;抗酸化剤;イオン交換樹脂;等が挙げられる。これらの成分の量は、液晶化合物の合計100重量部に対して、各々0.1重量部~20重量部としうる。
【0100】
液晶組成物の硬化は、通常、当該液晶組成物が含む重合性の化合物の重合によって達成される。よって、液晶配向層は、通常、液晶組成物が含んでいた成分の一部又は全部の重合体を含む。したがって、液晶化合物が重合性を有する場合、液晶配向層は、液晶化合物の重合体を含む層でありうる。通常、重合によって液晶化合物の液晶性は失われるが、本願においては、そのように重合した液晶化合物も、用語「液晶配向層に含まれる液晶化合物」に含める。
【0101】
液晶配向層においては、液晶組成物が有していた流動性が失われる。よって、通常、液晶配向層においては、液晶化合物の配向状態が、固定されうる。用語「配向状態を固定された液晶化合物」には、前記の液晶化合物の重合体が包含される。液晶配向層は、配向状態を固定された液晶化合物の分子に組み合わせて配向状態を固定されていない液晶化合物の分子を含んでいてもよいが、液晶配向層に含まれる液晶化合物の分子の全てが配向状態を固定されていることが好ましい。
【0102】
液晶配向層の形成方法は特に限定されないが、例えば、基材となるフィルムに、液晶化合物を含む液晶組成物の層を形成する工程、液晶組成物の層に含まれる液晶化合物を配向させる工程、及び、液晶組成物の層を硬化させる工程を行うことにより形成しうる。
【0103】
[1-4.好適な第2光学異方性層の材料]
[1-4-1.負の固有複屈折値を有する樹脂]
第2光学異方性層は、第2樹脂フィルムの延伸フィルムとしうる。第2樹脂フィルムは、負の固有複屈折値を有する樹脂を含むことが好ましい。負の固有複屈折値を有する樹脂を材料として用いることにより、該樹脂で形成された第2樹脂フィルムを延伸して容易に式(2)を満たす第2光学異方性層を製造しうる。よって、第2光学異方性層は、負の固有複屈折値を有する樹脂からなるフィルム(第2樹脂フィルム)を延伸してなる層としうる。第2樹脂フィルムは第2光学異方性層を形成する延伸前の樹脂フィルムのことをいう。
【0104】
負の固有複屈折値を有する樹脂は負の固有複屈折値を有する重合体を含む。
負の固有複屈折値を有する重合体としては、位相差の発現性が高いという観点から、ポリスチレン系重合体が好ましく、さらに耐熱性が高いという点で、スチレン又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。この場合、ポリスチレン系重合体100重量部に対して、無水マレイン酸単位の量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、特に好ましくは15重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは28重量部以下、特に好ましくは26重量部以下である。前記の無水マレイン酸単位とは、無水マレイン酸を重合して形成される構造を有する構造単位のことをいう。
【0105】
負の固有複屈折値を有する樹脂における重合体の割合は、好ましくは50重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、特に好ましくは90重量%~100重量%である。重合体の割合を前記範囲にすることにより、第2光学異方性層が適切な光学特性を発現しうる。
【0106】
負の固有複屈折値を有する樹脂のガラス転移温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上、中でも好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。負の固有複屈折値を有する樹脂のガラス転移温度がこのように高いことにより、負の固有複屈折値を有する樹脂の配向緩和を低減することができる。また、負の固有複屈折値を有する樹脂のガラス転移温度の上限に特に制限は無いが、通常は200℃以下である。ガラス転移温度は、示差走査熱量分析計を用いて、JIS K 6911に基づき、昇温速度10℃/分の条件で測定しうる。
【0107】
負の固有複屈折値を有する樹脂には、機械的強度が低いものがある。例えば、ポリスチレン系重合体を含む樹脂は、機械的強度が低い傾向がある。そこで、負の固有複屈折値を有する樹脂からなる層を含む第2光学異方性層は、負の固有複屈折値を有する樹脂を含む層に組み合わせて、負の固有複屈折値を有する樹脂を含む層を保護できる保護層を備えることが好ましい。
【0108】
保護層としては、特に限定はないが、例えば、正の固有複屈折値を有する樹脂からなる層を用いうる。その際、第2光学異方性層における位相差の調整を容易にする観点から、保護層が有する面内位相差及び厚み方向の位相差はゼロに近いことが好ましい。このように保護層の面内位相差及び厚み方向の位相差をゼロに近づける方法としては、例えば、保護層に含まれる樹脂のガラス転移温度を負の固有複屈折値を有する樹脂のガラス転移温度よりも低くする方法が挙げられる。
保護層は、負の固有複屈折値を有する樹脂からなる層の片側だけに設けられていてもよく、両側に設けられていてもよい。
【0109】
[1-5.光学異方性積層体]
本実施形態の光学異方性積層体において、第1光学異方性層及び第2光学異方性層のいずれか一方を、λ/2板により構成し、他方をλ/4板により構成しうる。λ/2板は、測定波長590nmにおいて、通常200nm以上通常300nm以下の面内位相差を有する光学部材である。λ/4板は、測定波長590nmにおいて、通常75nm以上通常154nm以下の面内位相差を有する光学部材である。λ/2板及びλ/4板を組み合わせることにより広帯域λ/4板を実現できる。
そのため、本実施形態に係る円偏光板は、広い波長範囲において、右円偏光及び左円偏光の一方の光を吸収し、残りの光を透過させうる機能を発現できる。したがって、このような態様の光学異方性積層体を備える円偏光板により、正面方向及び傾斜方向の両方において、広い波長範囲の光の反射を低減することが可能となる。
【0110】
[1-6.光学異方性積層体の製造方法]
本実施形態の光学異方性積層体は、正の固有複屈折値を有する樹脂を含む第1樹脂フィルムを延伸して第1光学異方性層を得る工程1と、負の固有複屈折値を有する樹脂を含む第2樹脂フィルムを延伸して第2光学異方性層を得る工程2と、前記第1光学異方性層と前記第2光学異方性層とを重ねる工程3と、を含む製造方法により製造しうる。
【0111】
[1-6-1.工程1]
工程1は、正の固有複屈折値を有する樹脂を含む第1樹脂フィルムを延伸して第1光学異方性層を得る工程である。
【0112】
工程1で用いる正の固有複屈折値を有する樹脂を含む第1樹脂フィルムは、溶融成形法又は溶液流延法によって製造でき、溶融成形法が好ましい。また、溶融成形法の中でも、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、押出成形法が特に好ましい。
【0113】
通常、第1樹脂フィルムは、長尺の樹脂フィルムとして得られる。第1樹脂フィルムを長尺の樹脂フィルムとして用意することにより、第1光学異方性層を製造する場合に各工程の一部または全部をインラインで行うことが可能であるので、製造を簡便且つ効率的に行なうことできる。
【0114】
第1樹脂フィルムの延伸方法は、延伸により発現させたい光学特性に応じて適切な方法を任意に採用しうる。本実施形態において、第1樹脂フィルムの延伸方法としては特に限定はないが、一方向延伸(一軸延伸)が好ましい。第1樹脂フィルムを一方向延伸することにより正の固有複屈折率値を有する樹脂を含む層の一軸性を高めることができ、NZ1を1.0に近づけることができる。一方向延伸には、例えば、自由端一軸延伸および固定端一軸延伸が含まれる。工程1において、第1樹脂フィルムを、一方向又は二方向に一回延伸してもよい。
【0115】
第1樹脂フィルムの延伸方向は、特に限定されない。第1樹脂フィルムの延伸は、斜め方向への延伸を含んでいてもよい。斜め方向への延伸を含む製造方法により、斜め延伸フィルムとしての第1光学異方性層を得ることができる。斜め延伸フィルムとは、斜め方向への延伸を含む製造方法によって製造されたフィルムを意味する。通常、斜め延伸フィルムには、その幅手方向に平行でなく垂直でもない遅相軸が発現する。よって、この斜め延伸フィルムとしての第1光学異方性層には、幅手方向に対して所定の角度をなす遅相軸を容易に発現させることができる。したがって、斜め延伸フィルムとしての第1光学異方性層は、幅手方向に透過軸を有する偏光フィルム及び第2光学異方性層とロールトゥロールで貼り合わせて、円偏光板を容易に製造できる。
【0116】
第1樹脂フィルムの延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.3倍以上、特に好ましくは1.5倍以上であり、好ましくは4倍以下、より好ましくは3倍以下、特に好ましくは2.5倍以下である。2以上の方向へ延伸を行う場合、各方向への延伸倍率の積が、前記の範囲に収まることが望ましい。延伸倍率を前記範囲に収めることにより、所望の光学特性を有する第1光学異方性層を得やすい。
【0117】
第1樹脂フィルムの延伸温度は、好ましくはTg1℃以上、より好ましくは「Tg1+2℃」以上、特に好ましくは「Tg1+5℃」以上であり、好ましくは「Tg1+40℃」以下、より好ましくは「Tg1+35℃」以下、特に好ましくは「Tg1+30℃」以下である。ここでTg1とは、正の固有複屈折値を有する樹脂のガラス転移温度を表す。延伸温度を前記の範囲にすることにより、第1樹脂フィルムに含まれる分子を確実に配向させることができるので、所望の光学特性を有する第1光学異方性層を容易に得ることができる。
【0118】
工程1(第1光学異方性層の製造方法)では、前述した工程以外に任意の工程を更に行ってもよい。例えば、長尺の第1樹脂フィルムを用いて長尺の第1光学異方性層を製造した場合には、当該第1光学異方性層を所望の形状に切り出すトリミング工程を行ってもよい。トリミング工程を行うことにより、所望の形状を有する枚葉の第1光学異方性層が得られる。また、例えば、第1光学異方性層に保護層を設ける工程を行なってもよい。
【0119】
[1-6-2.工程2]
工程2は、負の固有複屈折値を有する樹脂を含む第2樹脂フィルムを延伸して第2光学異方性層を得る工程である。
【0120】
工程2で用いる負の固有複屈折値を有する樹脂を含む第2樹脂フィルムは、溶融成形法又は溶液流延法によって製造でき、溶融成形法が好ましい。また、溶融成形法の中でも、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、押出成形法が特に好ましい。
【0121】
第2樹脂フィルムが例えば負の固有複屈折値を有する樹脂からなる層と保護層とを備える複層フィルムである場合、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形方法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法;ある層に対してそれ以外の層を構成する樹脂溶液をコーティングするようなコーティング成形方法などの方法を用いうる。中でも、製造効率が良く、第2光学異方性層に溶媒などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出成形方法が好ましい。共押出成形法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。さらに共押出Tダイ法にはフィードブロック方式、マルチマニホールド方式が挙げられるが、層の厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式がさらに好ましい。
【0122】
通常、第2樹脂フィルムは、長尺の樹脂フィルムとして得られる。第2樹脂フィルムを長尺の樹脂フィルムとして用意することにより、第2光学異方性層を製造する場合に各工程の一部または全部をインラインで行うことが可能であるので、製造を簡便且つ効率的に行なうことできる。
【0123】
第2樹脂フィルムの延伸方法は、延伸により発現させたい光学特性に応じて適切なものを任意に採用しうる。本実施形態において、第2樹脂フィルムの延伸方法としては特に限定はないが、二方向延伸(二軸延伸)が好ましい。第2樹脂フィルムを二方向延伸することにより負の固有複屈折率値を有する樹脂を含む層の二軸性を高めることができ、NZ2を0より小さくすることができる。二方向延伸には、例えば、遂次二軸延伸および同時二軸延伸が含まれる。
【0124】
第2樹脂フィルムの延伸方向は、特に限定されない。第2樹脂フィルムの延伸は、斜め方向への延伸を含むことが好ましい。斜め方向への延伸を含む製造方法により、斜め延伸フィルムとしての第2光学異方性層を得ることができる。通常、斜め延伸フィルムには、その幅手方向に平行でなく垂直でもない遅相軸が発現する。よって、この斜め延伸フィルムとしての第2光学異方性層には、幅手方向に対して所定の角度をなす遅相軸を容易に発現させることができる。したがって、斜め延伸フィルムとしての第2光学異方性層は、幅手方向に透過軸を有する偏光フィルム及び第1光学異方性層とロールトゥロールで貼り合わせて、円偏光板を容易に製造できる。
【0125】
第2樹脂フィルムの延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上、特に好ましくは1.3倍以上であり、好ましくは4倍以下、より好ましくは3倍以下、特に好ましくは2.5倍以下である。2以上の方向へ延伸を行う場合、各方向への延伸倍率の積が、前記の範囲に収まることが望ましい。延伸倍率を前記範囲に収めることにより、所望の光学特性を有する第2光学異方性層を得やすい。
【0126】
第2樹脂フィルムの延伸温度は、好ましくはTg2℃以上、より好ましくは「Tg2+2℃」以上、特に好ましくは「Tg2+5℃」以上であり、好ましくは「Tg2+40℃」以下、より好ましくは「Tg2+35℃」以下、特に好ましくは「Tg2+30℃」以下である。ここでTg2とは、負の固有複屈折値を有する樹脂のガラス転移温度を表す。延伸温度を前記の範囲にすることにより、第2樹脂フィルムに含まれる分子を確実に配向させることができるので、所望の光学特性を有する第2光学異方性層を容易に得ることができる。
【0127】
工程2は工程1と同時に行ってもよいし、工程1よりも先に行ってもよい。また、工程2(第2光学異方性層の製造方法)においては、前述した工程以外に任意の工程を更に行ってもよい。例えば、工程1(第1光学異方性層の製造方法)で例示した任意の工程と同じ工程を行ってもよい。
【0128】
[1-6-3.工程3]
工程3は、第1光学異方性層と第2光学異方性層とを重ねる工程である。
工程3においては、第1光学異方性層と第2光学異方性層とを、第1光学異方性層の遅相軸と、第2光学異方性層の遅相軸とのなす角が85°~95°となるように重ねる。つまり、第1光学異方性層の遅相軸と第2光学異方性層の遅相軸とが直交するように重ねる。
第1光学異方性層の遅相軸と第2光学異方性層の遅相軸とのなす角は、好ましくは90°であるが、例えば±5°、±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。よって、第1光学異方性層の遅相軸と第2光学異方性層の遅相軸とのなす角は、例えば、85°~95°、87°~93°、88°~92°、又は、89°~91°、でありうる。このような態様とすることにより、得られた光学異方性積層体を備える円偏光板を、表示装置に用いることにより、外光の反射を抑制でき、表示面を傾斜方向から見た場合に、外光の反射を抑制して、色付きを効果的に抑制できる。
【0129】
[1-6-4.貼合工程(任意工程)]
第1光学異方性層と、第2光学異方性層とを重ねた後に、当該2つの層を貼り合せることにより光学異方性積層体を製造しうる。貼り合わせには、適切な接着剤を用いうる。接着剤としては、例えば、下記偏光板の製造に用いうる接着剤と同様の接着剤を用いうる。この貼合工程は任意の工程である。
【0130】
[2.円偏光板]
本実施形態の円偏光板500は、直線偏光子130と、上記の光学異方性積層体100と、を備える。本実施形態の円偏光板500を、画像表示装置の表示面に設けることにより、外光の反射を抑制できる。本実施形態の光学異方性積層体100を備える本実施形態の円偏光板500によれば、表示面を傾斜方向から見た場合に、外光の反射を抑制して、色付きを効果的に抑制できる。
【0131】
本実施形態の円偏光板500は、
図1に示すように、直線偏光子130、第1光学異方性層110、及び前記第2光学異方性層120を、この順で備える。
【0132】
図1において、132は直線偏光子130の透過軸131を第1光学異方性層110に投影した軸であり、133は直線偏光子130の透過軸131を第2光学異方性層120に投影した軸である。角度θA1は、直線偏光子130の透過軸131に対して第1光学異方性層110の遅相軸111が時計回りになす角度である。角度θB1は、直線偏光子130の透過軸131に対して第2光学異方性層120の遅相軸121が時計回りになす角度である。
【0133】
本実施形態の円偏光板500において、直線偏光子130の透過軸131と、第1光学異方性層110の遅相軸111とのなす角度θA1は45°に近いのが好ましい。角度θA1は、具体的には、好ましくは45°±5°(即ち、好ましくは40°~50°)、より好ましくは45°±4°(即ち、より好ましくは41°~49°)、特に好ましくは45°±3°(即ち、特に好ましくは42°~48°)である。
なお、ここでは直線偏光子130の透過軸131に対して第1光学異方性層110の遅相軸111が時計回りに前記の角度θA1をなす例を示したが、直線偏光子130の透過軸131に対して第1光学異方性層110の遅相軸111が前記の角度θA1をなす向きは、時計回りでもよく、反時計回りでもよい。さらに、直線偏光子130の透過軸131に対して第2光学異方性層120の遅相軸121が前記の角度θB1をなす向きは、時計回りでもよく、反時計回りでもよい。
【0134】
又は、円偏光板500において、直線偏光子130の吸収軸(図示せず)と、第1光学異方性層110の遅相軸111とのなす角は45°に近いのが好ましい。直線偏光子130の吸収軸と第1光学異方性層110の遅相軸111とのなす角は、具体的には、好ましくは45°±5°(即ち、好ましくは40°~50°)、より好ましくは45°±4°(即ち、より好ましくは41°~49°)、特に好ましくは45°±3°(即ち、特に好ましくは42°~48°)である。直線偏光子130の吸収軸に対して第1光学異方性層110の遅相軸111が前記の角をなす向きは、時計回りでもよく、反時計回りでもよい。
【0135】
直線偏光子130としては、任意の直線偏光子を用いうる。直線偏光子の例としては、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一方向延伸することによって得られるフィルム;ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるフィルム;が挙げられる。また、直線偏光子の他の例としては、グリッド偏光子、多層偏光子、などの、偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。これらのうち、直線偏光子130としては、ポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。
【0136】
直線偏光子130に自然光を入射させると、一方の偏光だけが透過する。この直線偏光子130の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。
また、直線偏光子130の厚みは、好ましくは5μm~80μmである。
【0137】
円偏光板は、更に、直線偏光子と光学異方性積層体とを貼り合わせるための、接着層を備えていてもよい。接着層としては、粘着性の接着剤からなる粘着層を用いてもよく、硬化性接着剤を硬化させてなる層を用いてもよい。硬化性接着剤としては、熱硬化性接着剤を用いてもよいが、光硬化性接着剤を用いることが好ましい。光硬化性接着剤としては、重合体又は反応性の単量体を含んだものを用いうる。また、接着剤は、必要に応じて溶媒、光重合開始剤、その他の添加剤などを含みうる。
【0138】
光硬化性接着剤は、可視光線、紫外線、赤外線などの光を照射すると硬化しうる接着剤である。中でも、操作が簡便なことから、紫外線で硬化しうる接着剤が好ましい。
【0139】
接着層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。接着層の厚みを前記範囲内とすることにより、光学異方性層の光学的性質を損ねずに、良好な接着を達成しうる。
【0140】
上述した円偏光板は、更に、任意の層を含みうる。任意の層としては、例えば、偏光子保護フィルム層、耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層、フィルムの滑り性を良くするマット層、反射抑制層、防汚層、帯電抑制層等が挙げられる。これらの任意の層は、1層だけを設けてもよく、2層以上を設けてもよい。
【0141】
[3.画像表示装置]
本実施形態の円偏光板は画像表示装置に用いうる。本実施形態の画像表示装置は、本実施形態の円偏光板と、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜「有機EL素子」ということがある。)と、を備える。この画像表示装置は、通常、直線偏光子、光学異方性積層体及び有機EL素子を、この順に備える。
【0142】
また、画像表示装置は、直線偏光子、第1光学異方性層、第2光学異方性層及び有機EL素子をこの順に備えうる。
【0143】
有機EL素子は、透明電極層、発光層及び電極層をこの順に備え、透明電極層及び電極層から電圧を印加されることにより発光層が光を生じうる。有機発光層を構成する材料の例としては、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、及びポリビニルカルバゾール系の材料を挙げることができる。また、発光層は、複数の発光色が異なる層の積層体、あるいはある色素の層に異なる色素がドーピングされた混合層を有していてもよい。さらに、有機EL素子は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、等電位面形成層、電荷発生層等の機能層を備えていてもよい。
【0144】
前記の画像表示装置は、表示面における外光の反射を抑制できる。具体的には、装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが直線偏光子を通過し、次にそれが光学異方性積層体を通過することにより、円偏光となる。円偏光は、表示装置内の光を反射する構成要素(有機EL素子中の反射電極(図示せず)等)により反射され、再び光学異方性積層体を通過することにより、入射した直線偏光の振動方向と直交する振動方向を有する直線偏光となり、直線偏光子を通過しなくなる。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。これにより、反射抑制の機能が達成される。
【0145】
さらに、画像表示装置は、光学異方性積層体が所定の光学特性を有するので、前記の反射抑制の機能を、表示面の正面方向だけでなく、傾斜方向においても発揮できる。そして、これにより、反射光による表示面の色付きを抑制できる。したがって、画像表示装置は、表示面の正面方向及び傾斜方向の両方において、外光の反射を効果的に抑制して、色付きを抑制することが可能である。
【0146】
前記の色付きの程度は、表示面を傾斜方向から観察して測定される色度と、反射の無い黒色の表示面の色度との色差ΔE*abによって、評価しうる。前記の色度は、表示面で反射した光のスペクトルを測定し、このスペクトルから、人間の目に対応する分光感度(等色関数)を乗じて三刺激値X、Y及びZを求め、色度(a*,b*,L*)を算出することにより求めうる。また、前記の色差ΔE*abは、外光によって表示面が照らされていない場合の色度(a0*,b0*,L0*)、及び、外光によって照らされている場合の色度(a1*,b1*,L1*)から、下記の式(X)から求めうる。
【0147】
【0148】
また、一般に、反射光による表示面の色付きは、観察方向の方位角によって異なりうる。そのため、表示面の傾斜方向から観察した場合、観察方向の方位角によって、測定される色度は異なりうるので、色差ΔE
*abも異なりうる。そこで、前記のように表示面の傾斜方向から観察したときの色付きの程度を評価する場合には、複数の方位角方向から観察して得られる色差ΔE
*abの平均値によって、色付きの評価を行うことが好ましい。具体的には、方位角方向に5°刻みで、方位角φ(
図3参照。)が0°以上360°未満の範囲で、色差ΔE
*abの測定を行い、測定された色差ΔE
*abの平均値(平均色差)によって、色付きの程度を評価する。前記の平均色差が小さいほど、表示面の傾斜方向から観察した場合の表示面の色付きが小さいことを表す。
【0149】
[実施形態2]
以下、本発明の実施形態2に係る光学異方性積層体を備える円偏光板及び、当該円偏光板を備える画像表示装置について
図2を参照しつつ、説明する。
図2は、実施形態2に係る円偏光板600を模式的に示す分解斜視図である。
【0150】
本実施形態の光学異方性積層体200は、第2光学異方性層120及び第1光学異方性層110の配置が実施形態1と相違すること以外は、実施形態1と同じに設けられている。以下において、実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付し、重複した説明は省略する。
【0151】
本実施形態の円偏光板600は、
図2に示すように、直線偏光子130と、本実施形態の光学異方性積層体200と、を備える。本実施形態の円偏光板600は、
図2に示すように、直線偏光子130、前記第2光学異方性層120及び第1光学異方性層110を、この順で備える。
【0152】
図2において、132は直線偏光子の透過軸を第1光学異方性層110に投影した軸であり、133は直線偏光子の透過軸を第2光学異方性層120に投影した軸である。角度θA2は、直線偏光子130の透過軸131に対して第1光学異方性層110の遅相軸111が時計回りになす角度である。角度θB2は、直線偏光子130の透過軸131に対して第2光学異方性層120の遅相軸121が時計回りになす角度である。角度θA2及び角度θB2は、それぞれ、実施形態1で説明した角度θA1及び角度θB1と同じ範囲にあることが好ましい。
【0153】
本実施形態の円偏光板は画像表示装置に用いうる。画像表示装置は、通常、直線偏光子、光学異方性積層体及び有機EL素子を、この順に備える。よって、本実施形態の円偏光板を備える画像表示装置は、直線偏光子、第2光学異方性層、第1光学異方性層及び有機EL素子をこの順に備えうる。
【0154】
本実施形態においても、光学異方性積層体200は、上記式(1)~式(4)を満たす光学特性を有し、かつ、第1光学異方性層110の遅相軸111と第2光学異方性層120の遅相軸121とのなす角度が85°~95°である。よって、このような光学異方性積層体200を直線偏光子130と組み合わせて得られる円偏光板600を画像表示装置に設けることにより、その画像表示装置の表示面を傾斜方向から見た場合に外光の反射を抑制して、色付きを効果的に抑制できる。
【実施例】
【0155】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0156】
[評価方法]
(位相差及びNZ係数の測定方法)
位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて、評価対象(第1光学異方性層、第2光学異方性層、光学異方性積層体)の幅手方向に50mm間隔の複数の地点で、位相差を測定した。これらの地点での測定値の平均値を計算し、この平均値を、当該測定対象の位相差とした。
【0157】
第1光学異方性層については、波長450nm、波長550nm、波長590nm、及び波長650nmにおける面内位相差Re1(450)、Re1(550)、Re1(590)、Re1(650)、波長590nmにおける厚み方向の位相差Rth1(590)、並びに、遅相軸方向を測定した。また、第2光学異方性層については、波長450nm、波長550nm、波長590nm、及び波長650nmにおける面内位相差Re2(450)、Re2(550)、Re2(590)、Re2(650)、波長590nmにおける厚み方向の位相差Rth2(590)、並びに、遅相軸方向を測定した。得られた面内位相差を用いて、Re1(450)/Re1(550)及びRe1(450)/Re1(550)を算出した。また、得られた面内位相差及び厚み方向の位相差の比率から、NZ係数(NZ1、NZ2)を算出した。
【0158】
また、光学異方性積層体の、波長450nm、波長550nm、及び波長650nmにおける面内位相差Re(450)、Re(550)、Re(650)は、第1光学異方性層及び第2光学異方性層の光学特性値から計算により求めた。
【0159】
(シミュレーションによる色差の計算方法)
シミュレーション用のソフトウェアとしてシンテック社製「LCD Master」を用いて、各実施例及び比較例で製造された円偏光板をモデル化し、下記の計算を行った。
【0160】
シミュレーション用のモデルでは、平面状の反射面を有するミラーの前記反射面に、第2光学異方性層、第1光学異方性層及び偏光フィルムを前記反射面側からこの順に有する円偏光板を設けた構成を設定した。第1光学異方性層及び第2光学異方性層としては、各実施例及び比較例で用いたものを設定した。また、偏光フィルムとしては、一般的に使用されている偏光度99.99%の偏光板を設定した。また、ミラーとして、入射した光を反射率100%で鏡面反射しうる理想ミラーを設定した。
【0161】
図3は、実施例及び比較例でのシミュレーションにおいて、色空間座標の計算を行う際に設定した評価モデルの様子を模式的に示す斜視図である。
図3に示すように、D65光源(図示せず。)によって照らされたときに、円偏光板を設けられたミラーの反射面10で観察される色空間座標を計算した。また、光源によって照らされていないときの色空間座標をa0
*=0,b0
*=0,L0
*=0とした。そして、(i)光源で照らされたときの色空間座標と、(ii)光源で照らされていないときの色空間座標とから、前述の式(X)を用いて、色差ΔE
*abを求めた。
【0162】
前記の色差ΔE*abの計算を、反射面10に対する極角ρが0°の観察方向20で行って、正面方向での色差ΔE*abを求めた。極角ρとは、反射面10の法線方向11に対してなす角を表す。
【0163】
また、前記の色差ΔE*abの計算を、反射面10に対する極角ρが60°の観察方向20で行った。この極角ρ=60°での計算は、観察方向20を方位角方向に、方位角φを0°以上360°未満の範囲で5°刻みに移動させて、複数行った。方位角φとは、反射面10に平行な方向が、反射面10に平行なある基準方向12に対してなす角を表す。そして、計算された複数の観察方向20での色差ΔE*abの平均を計算して、極角ρ=60°の傾斜方向での色差ΔE*abを得た。
【0164】
(正面方向における目視による円偏光板の評価方法)
ミラーを備える画像表示装置として、Apple社の「AppleWatch」(登録商標)を用意した。この画像表示装置のミラーに貼合されていた偏光板を剥離し、ミラーを露出させた。そのミラーの表面と、評価対象の円偏光板の第2光学異方性層の面とを粘着層(日東電工製「CS9621」)を介して貼り合せた。
【0165】
晴れた日に日光で円偏光板を照らした状態で、ミラー上の円偏光板を目視で観察した。観察は、円偏光板の、極角0°、方位角0°の正面方向で行った。観察の結果、有彩色が視認された場合に「B」と判定し、有彩色が視認されなかった場合に「A」と判定した。
【0166】
(傾斜方向における目視による円偏光板の評価方法)
ミラーを備える画像表示装置として、Apple社の「AppleWatch」(登録商標)を用意した。この画像表示装置のミラーに貼合されていた偏光板を剥離し、ミラーを露出させた。そのミラーの表面と、評価対象の円偏光板の第2光学異方性層の面とを粘着層(日東電工製「CS9621」)を介して貼り合せた。
晴れた日に日光で円偏光板を照らした状態で、ミラー上の円偏光板を目視で観察した。観察は、円偏光板の極角60°、方位角0°~360°の傾斜方向で行った。観察の結果、反射輝度及び色付きの優劣を総合的に判定して、実施例及び比較例を順位づけした。そして、順位づけられた実施例及び比較例に、その順位に相当する点数(1位8点、2位7点、3位6点、4位5点、5位4点、6位3点、7位2点、8位1点)を与えた。
【0167】
前記の観察を多人数が行い、各実施例及び比較例について、与えられた点数の合計点を求めた。実施例及び比較例を前記の合計点の順に並べ、その合計点のレンジを5等分して、上位グループからA、B、C、D及びEの順に評価した。
【0168】
[製造例]
[製造例1:偏光フィルム(直線偏光子)の製造]
ヨウ素で染色した、ポリビニルアルコール樹脂製の長尺の延伸前フィルムを用意した。この延伸前フィルムを、当該延伸前フィルムの幅手方向に対して90°の角度をなす長手方向に延伸して、長尺の偏光フィルムを得た。この偏光フィルムは、当該偏光フィルムの長手方向に吸収軸を有し、当該偏光フィルムの幅手方向に透過軸を有していた。
【0169】
[製造例2-1:λ/2板Aの製造]
環状オレフィン重合体を溶融押出法でフィルム状に成形して得られた長尺の環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」、ガラス転移温度126℃)を、第1樹脂フィルム(延伸前フィルム)として用意した。当該第1樹脂フィルムを形成する環状オレフィン樹脂は正の固有複屈折値を有する樹脂である。
この環状オレフィン樹脂フィルムに対し、当該環状オレフィン樹脂フィルムの幅手方向への延伸処理を施して、長尺のλ/2板を得た。前記の幅手方向への延伸処理は、延伸温度120℃~150℃、延伸倍率2.0倍~5.0倍の範囲において、下記表1の実施例1の第1光学異方性層の欄に記載の物性値(Re1、Rth1)のλ/2板が得られるように設定した。このようにして長尺のλ/2板Aを得た。このλ/2板Aの膜厚は50μmであった。このλ/2板Aについて、面内位相差及び厚み方向の位相差の測定を上記方法によって行った。測定されたRe1(590)は280nm、Rth1(590)は168nm、nx1は1.5339、ny1は1.5283、nz1は1.5278であった。この結果からnx1、ny1、及びnz1の関係は、nx1>ny1>nz1であり、式(1)を満たしていた。
【0170】
[製造例2-2:λ/2板Bの製造]
環状オレフィン重合体を溶融押出法でフィルム状に成形して得られた長尺の環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」、ガラス転移温度126℃)を、延伸前フィルムとして用意した。当該延伸前フィルムを形成する環状オレフィン樹脂は正の固有複屈折値を有する樹脂である。
この環状オレフィン樹脂フィルムに対し、当該環状オレフィン樹脂フィルムの幅手方向への延伸処理を施して、長尺のλ/2板を得た。前記の幅手方向への延伸処理は、延伸温度120℃~150℃、延伸倍率2.0倍~5.0倍の範囲において、下記表2の比較例2の第1光学異方性層の欄に記載の物性値(Re1、Rth1)のλ/2板が得られるように設定した。このようにして長尺のλ/2板Bを得た。このλ/2板Bの膜厚は50μmであった。このλ/2板Bについて、面内位相差及び厚み方向の位相差の測定を上記方法によって行った。測定されたRe1(590)は280nm、Rth1(590)は190nm、nx1は1.5341、ny1は1.5285、nz1は1.5275であった。この結果からnx1、ny1、及びnz1の関係は、nx1>ny1>nz1であり、式(1)を満たしていた。
【0171】
[製造例3-1:λ/4板A~E(実施例1~4および比較例3の第2光学異方性層)の製造]
(3-1-1:第2樹脂フィルム(延伸前フィルム)の製造)
負の固有複屈折値を有する樹脂として、スチレン-マレイン酸共重合体樹脂(ノヴァ・ケミカル社製「Daylark D332」、ガラス転移温度130℃、オリゴマー成分含有量3重量%)を用意した。
保護層用のアクリル樹脂として、住友化学社製「スミペックスHT-55X」(ガラス転移温度105℃)を用意した。
接着剤として、変性したエチレン-酢酸ビニル共重合体(三菱化学社製「モディックAP A543」、ビカット軟化点80℃)を用意した。
【0172】
用意したスチレン-マレイン酸共重合体樹脂、アクリル樹脂及び接着剤を共押出して、アクリル樹脂の層、接着剤の層、スチレン-マレイン酸共重合体樹脂の層、接着剤の層及びアクリル樹脂の層をこの順に備える長尺の第2樹脂フィルムを得た。
【0173】
(3-1-2:λ/4板の製造)
(3-1-1)で製造した第2樹脂フィルムに対し、当該第2樹脂フィルムの幅手方向及び長手方向への延伸処理(二方向延伸処理)を施して、長尺のλ/4板を得た。前記の二方向延伸処理の条件は、下記表1の実施例1~4及び比較例3の第2光学異方性層の欄に記載の物性値(Re2、Rth2)のλ/4板が得られるように設定した。具体的には、各例で用いるλ/4板が得られるようにフィルム幅手方向への延伸処理の条件を、延伸温度110℃~140℃、延伸倍率1.5~4.0の範囲で設定し、フィルム長手方向への延伸処理の条件を、延伸温度110℃~140℃、延伸倍率1.5~4.0の範囲で設定した。このようにしてλ/4板A~Fを得た。得られたλ/4板A~Fの膜厚は、それぞれ、40μmであった。
得られたλ/4板A~Eについて、それぞれ、面内位相差及び厚み方向の位相差の測定を上記方法によって行った。各λ/4板の、アクリル樹脂の層及び接着剤の層には、位相差が発現しなかった。
λ/4板Aの測定結果は、Re2(590)は147nm、Rth2(590)は-132nm、nx2は1.5582、ny2は1.5545、nz2は1.5597であった。
λ/4板Bの測定結果は、Re2(590)は147nm、Rth2(590)は-162nm、nx2は1.5580、ny2は1.5543、nz2は1.5602であった。
λ/4板Cの測定結果は、Re2(590)は147nm、Rth2(590)は-191nm、nx2は1.5577、ny2は1.5540、nz2は1.5607であった。
λ/4板Dの測定結果は、Re2(590)は147nm、Rth2(590)は-220nm、nx2は1.5575、ny2は1.5538、nz2は1.5611であった。
λ/4板Eの測定結果は、Re2(590)は147nm、Rth2(590)は-162nm、nx2は1.5580、ny2は1.5543、nz2は1.5602であった。
これらの結果から、λ/4板A~Eのいずれも、nx2、ny2、及びnz2の関係は、nz2>nx2>ny2であり、式(2)を満たしていた。
【0174】
[製造例3-2:λ/4板Fの製造]
製造例3-1の(3-1-1)で製造した延伸前フィルムを用いて、以下の方法によりλ/4板Fを製造した。
延伸前フィルムに対し、当該延伸前フィルムの幅手方向への延伸処理を施して、長尺のλ/4板Fを得た。前記の幅手方向への延伸処理は、延伸温度110℃~140℃、延伸倍率1.5倍~4.0倍の範囲において、下記表2の比較例1の第2光学異方性層の欄に記載の物性値(Re2、Rth2)のλ/4板が得られるように設定した。このようにして長尺のλ/4板Fを得た。λ/4板Fの膜厚は40μmであった。
λ/4板Fについて、面内位相差及び厚み方向の位相差の測定を上記方法によって行った。得られたλ/4板のアクリル樹脂の層及び接着剤の層には、位相差が発現しなかった。測定されたRe2(590)は147nm、Rth2(590)は-88nm、nx2は1.5586、ny2は1.5549、nz2は1.5589であった。この結果から、nx2、ny2、及びnz2の関係は、nz2>nx2>ny2であった。
【0175】
[実施例1]
長尺の偏光フィルム、長尺のλ/2板A及び長尺のλ/4板Aをそれぞれ切り出して、枚葉の偏光フィルム、枚葉のλ/2板A及び枚葉のλ/4板Aを得た。これらの枚葉の偏光フィルム、枚葉のλ/2板A及び枚葉のλ/4板Aを、粘着剤(日東電工社製「CS9621」)を用いて貼り合わせて、偏光フィルム、粘着層、λ/2板A(第1光学異方性層)、粘着層及びλ/4板A(第2光学異方性層)をこの順に備える円偏光板を得た。この円偏光板は実施形態1に対応する態様である(
図1を参照)。この円偏光板において、λ/2板Aが第1光学異方性層であり、λ/4板Aが第2光学異方性層である。前記の貼り合わせは、偏光フィルム側から見て、偏光フィルムの透過軸に対してλ/2板Aの遅相軸が時計回りになす角度θA1が45°、及び、偏光フィルムの透過軸に対してλ/4板Aの遅相軸が時計回りになす角度θB1が135°となるように行った。得られた円偏光板を、前記の方法で評価した。
本例の円偏光板に含まれる光学異方性積層体の、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は、下記式(3)を満たすものであった。
Re(450)<Re(550)<Re(650) 式(3)
また、光学異方性積層体において、第1光学異方性層は下記式(1)を満たし、第2光学異方性層は下記式(2)を満たし、NZ1とNZ2との和は0.7であった。
nx1>ny1≧nz1 式(1)
nz2>nx2>ny2 式(2)
【0176】
[実施例2]
長尺のλ/4板Aを長尺のλ/4板Bに変更したこと以外は実施例1と同じ操作を行って、偏光フィルム、粘着層、λ/2板A、粘着層及びλ/4板Bをこの順に備える円偏光板を得た。この円偏光板において、λ/2板Aが第1光学異方性層であり、λ/4板Bが第2光学異方性層である。得られた円偏光板を前記の方法により評価した。この円偏光板に含まれる光学異方性積層体の、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は、上記式(3)を満たすものであった。また、光学異方性積層体において、第1光学異方性層は上記式(1)を満たし、第2光学異方性層は上記式(2)を満たし、NZ1とNZ2との和は0.5であった。
【0177】
[実施例3]
長尺のλ/4板Aを長尺のλ/4板Cに変更したこと以外は実施例1と同じ操作を行って、偏光フィルム、粘着層、λ/2板A、粘着層及びλ/4板Cをこの順に備える円偏光板を得た。この円偏光板において、λ/2板Aが第1光学異方性層であり、λ/4板Cが第2光学異方性層である。得られた円偏光板を前記の方法により評価した。この円偏光板に含まれる光学異方性積層体の、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は、上記式(3)を満たすものであった。また、光学異方性積層体において、第1光学異方性層は上記式(1)を満たし、第2光学異方性層は上記式(2)を満たし、NZ1とNZ2との和は0.3であった。
【0178】
[実施例4]
長尺のλ/4板Aを長尺のλ/4板Dに変更したこと以外は実施例1と同じ操作を行って、偏光フィルム、粘着層、λ/2板A、粘着層及びλ/4板Dをこの順に備える円偏光板を得た。この円偏光板において、λ/2板Aが第1光学異方性層であり、λ/4板Dが第2光学異方性層である。得られた円偏光板を前記の方法により評価した。この円偏光板に含まれる光学異方性積層体の、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は、上記式(3)を満たすものであった。また、光学異方性積層体において、第1光学異方性層は上記式(1)を満たし、第2光学異方性層は上記式(2)を満たし、NZ1とNZ2との和は0.1であった。
【0179】
[比較例1]
長尺のλ/4板Aを長尺のλ/4板Fに変更したこと以外は実施例1と同じ操作を行って、偏光フィルム、粘着層、λ/2板A、粘着層及びλ/4板Fをこの順に備える円偏光板を得た。この円偏光板において、λ/2板Aが第1光学異方性層であり、λ/4板Fが第2光学異方性層である。得られた円偏光板を前記の方法により評価した。この円偏光板に含まれる光学異方性積層体の、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は、Re(450)<Re(550)<Re(650)であり上記式(3)を満たすものであった。光学異方性積層体において、第1光学異方性層は上記式(1)を満たし、第2光学異方性層は上記式(2)を満たし、NZ1とNZ2との和は1.0であった。
【0180】
[比較例2]
以下の点を変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行って、偏光フィルム、粘着層、λ/2板B、粘着層及びλ/4板Fをこの順に備える円偏光板を得た。この円偏光板において、λ/2板Bが第1光学異方性層であり、λ/4板Fが第2光学異方性層である。得られた円偏光板を前記の方法により評価した。また、この円偏光板に含まれる光学異方性積層体の、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は、Re(450)<Re(550)<Re(650)であり上記式(3)を満たすものであった。光学異方性積層体において、第1光学異方性層は上記式(1)を満たし、第2光学異方性層は上記式(2)を満たし、NZ1とNZ2との和は1.08であった。
(変更点)
・長尺のλ/2板Aを長尺のλ/2板Bに変更した。
・長尺のλ/4板Aを長尺のλ/4板Fに変更した。
・層の貼り合わせは、偏光フィルム側から見て、偏光フィルムの透過軸に対してλ/2板Bの遅相軸が時計回りになす角度θA1が22.5°、及び、偏光フィルムの透過軸に対してλ/4板Fの遅相軸が時計回りになす角度θB1が90°となるように行った。
【0181】
[比較例3]
以下の点を変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行って、偏光フィルム、粘着層、λ/2板B、粘着層及びλ/4板Eをこの順に備える円偏光板を得た。この円偏光板において、λ/2板Bが第1光学異方性層であり、λ/4板Eが第2光学異方性層である。得られた円偏光板を前記の方法により評価した。また、この円偏光板に含まれる光学異方性積層体の、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は、Re(450)<Re(550)<Re(650)であり上記式(3)を満たすものであった。また、光学異方性積層体において、第1光学異方性層は上記式(1)を満たし、第2光学異方性層は上記式(2)を満たし、NZ1とNZ2との和は0.58であった。
(変更点)
・長尺のλ/2板Aを長尺のλ/2板Bに変更した。
・長尺のλ/4板Aを長尺のλ/4板Eに変更した。
・層の貼り合わせは、偏光フィルム側から見て、偏光フィルムの透過軸に対してλ/2板Bの遅相軸が時計回りになす角度θA1が22.5°、及び、偏光フィルムの透過軸に対してλ/4板Fの遅相軸が時計回りになす角度θB1が90°となるように行った。
【0182】
[比較例4]
下記の方法(特開2010-266723号公報の実施例1と同じ方法)で比較例4の円偏光板を製造した。
(C4-1)フィルムC1(固有複屈折値が正の樹脂を含むフィルム)の製造
ノルボルネン系重合体(日本ゼオン社製、「ZEONOR1420」、ガラス転移温度:136℃)からなる第1未延伸フィルムのロール巻状体を溶融押出し成形により得た。次いで、この第1未延伸フィルムのロール巻状体を、テンター延伸機(特開2010-266723号公報の
図2参照)を用いて、延伸温度147℃、延伸倍率1.7倍、延伸速度13mm/分で、幅手方向に対して45°の方向へ斜め延伸を行うことにより、フィルムC1のロール巻状体を得た。得られたフィルムC1は、Nz係数(NZ1)が1.1、Re1(590)が66nm、幅手方向に対して遅相軸がなす角度は44.8°であり、その厚みが120μmであった。
【0183】
(C4-2)フィルムC2(固有複屈折値が負の樹脂を含むフィルム)の製造
数平均粒径0.4μmの弾性体粒子を含むポリメチルメタクリレート樹脂からなるa層と、スチレン-マレイン酸共重合体(ノヴァ・ケミカル社製、商品名「Daylark D332」、ガラス転移温度:130℃、オリゴマー成分含有量:3重量%)からなるb層とを、a層(30μm)-b層(30μm)-a層(30μm)の順で備える未延伸積層体のロール巻状体(第2未延伸フィルムのロール巻状体)を共押出し成形により得た。次いで、このロール巻状体から未延伸積層体を引き出し、(C4-1)と同じテンター延伸機を用いて、延伸温度138℃、延伸倍率1.7倍、延伸速度8mm/minで幅手方向に対して45°方向への斜め延伸を行うことにより、フィルムC2のロール巻状体を得た。得られたフィルムC2は、Nz係数(NZ2)が-0.1、Re2(590)が66nm、幅手方向に対して遅相軸がなす角度は-45.2°であり、その厚みが130μmであった。
【0184】
(C4-3)光学異方性積層体の製造
(C4-1)で得られたフィルムC1と、(C4-2)で得られたフィルムC2とを、それぞれ引き出して、面内遅相軸が互いに平行となるように、積層装置(特開2010-266723号公報の
図3参照)を用いてロールトゥーロール法により積層して、光学異方性積層体C3のロール巻状体を得た。
【0185】
(C4-4)円偏光板の製造
(C4-3)で得られた光学異方性積層体C3と、偏光フィルム(サンリッツ社製、HLC2-5618S、厚さ180μm)とを、積層装置(特開2010-266723号公報の
図4参照)を用いてロールトゥロール法により積層して、円偏光フィルムを製造し、これを所定の大きさに裁断して、円偏光板を得た。
【0186】
得られた円偏光板を、実施例1と同様に、前記の評価方法で評価した。本例の円偏光板に含まれる光学異方性積層体の、Re(450)、Re(550)及びRe(650)の関係は、Re(450)>Re(550)>Re(650)であり、式(3)を満たさなかった。また、光学異方性積層体において、第1光学異方性層は下記式(1)を満たし、第2光学異方性層は下記式(2)を満たし、NZ1とNZ2との和は1.0であった。
【0187】
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表1及び表2に示す。表1及び表2において、略称の意味は、下記の通りである。
COP:環状オレフィン樹脂
PSt:スチレン-マレイン酸共重合体樹脂
Re1(590):測定波長590nmにおけるλ/2板(第1光学異方性層)の面内位相差。
Re1(550):測定波長550nmにおけるλ/2板(第1光学異方性層)の面内位相差。
Re1(450):測定波長450nmにおけるλ/2板(第1光学異方性層)の面内位相差。
Rth1(590):測定波長590nmにおけるλ/2板(第1光学異方性層)の厚み方向の位相差。
θA1:偏光フィルム側から見て、偏光フィルムの透過軸に対してλ/2板(第1光学異方性層)の遅相軸が時計回りになす角度。
NZ1:λ/2板(第1光学異方性層)のNZ係数。
Re2(590):測定波長590nmにおけるλ/4板(第2光学異方性層)の面内位相差。
Re2(550):測定波長550nmにおけるλ/4板(第2光学異方性層)の面内位相差。
Re2(450):測定波長4590nmにおけるλ/4板(第2光学異方性層)の面内位相差。
Rth2(590):測定波長590nmにおけるλ/4板(第2光学異方性層)の厚み方向の位相差。
θB1:偏光フィルム側から見て、偏光フィルムの透過軸に対してλ/4板(第2光学異方性層)の遅相軸が時計回りになす角度。
NZ2:λ/4板(第2光学異方性層)のNZ係数。
遅相軸のなす角:第1光学異方性層の遅相軸と、第2光学異方性層の遅相軸とのなす角。
ΔE*ab(正面方向):極角ρ=0°から観察したときの色差。
目視(正面方向):極角ρ=0°から目視観察したときの色差。
ΔE*ab(斜め方向):極角ρ=60°から観察したときの色差の平均。
目視(斜め方向):極角ρ=60°から目視観察したときの色差。
*1:本例のように、第1光学異方性層の遅相軸と第2光学異方性層の遅相軸とが直交しない場合、測定装置によってRe1とRe2との差が相違することがあるが、他の例と同様に、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)で測定したRe1(550)とRe2(550)との差を記載した。
【0188】
【0189】
【0190】
以上の結果によれば、実施例1~4の光学異方性積層体を備えた画像表示装置は、比較例1~4の光学異方性積層体を備えた画像表示装置と比較して、正面方向から観察した場合の表示面の色付きが同等に抑制されており、かつ傾斜方向から観察した場合の表示面の色付きが抑制されていることが分かる。上記結果から、本発明の光学異方性積層体を備える実施例1~4によれば、正面方向及び傾斜方向から観察した場合の表示面の色付きが抑制された画像表示装置を実現しうる。
【0191】
[他の実施形態]
(1)上記実施例1~4においては、λ/2板を第1光学異方性層に用い、λ/4板を第2光学異方性層に用いた光学異方性積層体を示したが、本発明はこれに限定されない。λ/2板を第2光学異方性層に用い、λ/4板を第1光学異方性層に用いた光学異方性積層体であってもよい。
(2)上記実施例1~4においては、直線偏光子(偏光フィルム)の透過軸に対してλ/2板(第1光学異方性層)の遅相軸が時計回りになす角度θA1が45°の光学異方性積層体を示したが、本発明はこれに限定されない。直線偏光子の吸収軸と、第1光学異方性層の遅相軸とのなす角が45°の光学異方性積層体であってもよい。
【符号の説明】
【0192】
100,200…光学異方性積層体
110…第1光学異方性層
111…遅相軸
120…第2光学異方性層
121…遅相軸
130…直線偏光子
131…透過軸
500,600…光学異方性積層体