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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】凝集状態の判断方法及び凝集処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/0205 20240101AFI20240312BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20240312BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20240312BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20240312BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20240312BHJP
   C02F 1/56 20230101ALI20240312BHJP
【FI】
G01N15/0205
G01N21/49 Z
B01D21/01 B
B01D21/30 A
C02F1/52 Z
C02F1/56 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022116997
(22)【出願日】2022-07-22
(65)【公開番号】P2024014288
(43)【公開日】2024-02-01
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】井上 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】長尾 信明
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-026438(JP,A)
【文献】特開2021-183983(JP,A)
【文献】特表2020-514762(JP,A)
【文献】特開2007-262628(JP,A)
【文献】国際公開第2022/168555(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/0205
G01N 21/49
B01D 21/01
B01D 21/30
C02F 1/52
C02F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を含む液体中にレーザ光を照射して前記レーザ光が前記粒子により散乱した散乱光の受光強度変化幅を基に、前記粒子の凝集状態を判断する方法であって、
粒子の粒子径を変化させて受光強度変化幅を測定し、前記粒子の粒子径と前記受光強度変化幅との相関が正の相関又は負の相関のいずれであるかを判定する相関取得ステップと、
前記相関に基づいて前記粒子の凝集状態を判断する判断ステップと、を有し、
前記判断ステップでは、判定された前記正の相関又は前記負の相関に基づいて、前記粒子の凝集状態を判断する、凝集状態の判断方法。
【請求項2】
前記相関取得ステップでは、凝集剤の添加量と前記受光強度変化幅との関係を取得し、前記関係から前記粒子径と前記受光強度変化幅との相関を取得する、請求項1に記載の凝集状態の判断方法。
【請求項3】
前記粒子径と前記受光強度変化幅との相関は、前記粒子径と、前記レーザ光のビーム径との関係で定められる、請求項1又は2に記載の凝集状態の判断方法。
【請求項4】
前記相関は、前記粒子径が前記ビーム径以下である場合に正の相関を示し、前記粒子径が前記ビーム径より大きい場合に負の相関を示す、請求項3に記載の凝集状態の判断方法。
【請求項5】
粒子を含む液体中に凝集剤を添加して前記粒子を凝集する凝集処理方法であって、
前記液体中にレーザ光を照射し、前記レーザ光が前記粒子により散乱した散乱光の受光強度変化幅を基に前記粒子の凝集状態を判断する判断工程と、
前記判断工程において判断された前記粒子の凝集状態に基づいた添加量で前記凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、を有し、
前記判断工程は、粒子の粒子径を変化させて受光強度変化幅を測定し、前記粒子の粒子径と前記受光強度変化幅との相関が正の相関又は負の相関のいずれであるかを判定する相関取得ステップと、前記相関に基づいて前記粒子の凝集状態を判断する判断ステップと、を有し、
前記判断ステップでは、判定された前記正の相関又は前記負の相関に基づいて、前記粒子の凝集状態を判断する、凝集処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集状態の判断方法及び凝集処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種排水・用水から濁質及び有機物等を除去するために凝集処理を行う場合、塩化鉄やポリ塩化アルミニウムなどの無機凝集剤と高分子凝集剤とを併用することがある。これにより、被処理液中の粒子が凝集し、後段の固液分離操作が容易になる。さらに無機凝集剤の添加量を抑えることによる汚泥発生量の削減が可能となる。
【0003】
また、排水の生物処理によって発生した汚泥を脱水処理する場合にも、脱水処理に先立ち、無機凝集剤と高分子凝集剤とを併用して凝集処理することがある。これにより、効率的に汚泥を荷電中和するとともにフロック強度が向上し、脱水処理後の汚泥(脱水ケーキ)の含水率を大きく低下させることが可能となる。
【0004】
凝集剤は、被処理液の水質や被処理汚泥の性状に応じて適切な量を添加する必要がある。排水、用水の凝集処理においては、凝集剤の添加量(薬注量)が不足すると、被処理液中に含まれる濁質や有機物の除去が不十分となり、処理液の水質が悪化する。一方、薬注量が過剰であると、凝集剤が後段へリークし、後段処理での負荷増大や後段の処理装置の汚染を引き起こす可能性がある。
【0005】
また、汚泥処理においては、薬注量が不足すると汚泥の荷電中和が不十分となり、更にはフロック強度が低下して脱水ケーキの含水率が上昇したり、脱水分離液に汚泥がリークしたりすることがある。また、薬注量が過剰となった場合にもフロック強度は低下するため、脱水ケーキの含水率が上昇したり、脱水分離液に汚泥がリークしたりすることがあった。
【0006】
最適な薬注量を決定するためには、ジャーテストや凝集、濾過、圧搾テスト(ヌッチェテスト)等の机上テストを行うことが基本である。また、従来、脱水機の運転管理において、問題が生じた際に操作すべき因子と操作量は、作業者の運転経験による判断や、上記のような机上試験による脱水効果(ろ過性やフロック強度、脱水ケーキ含水率など)の確認結果によって決定される。
【0007】
しかしながら、作業者の経験による判断は、定性的なものであるため、状況改善を達成するために予定以上の時間を必要としたり、間違った操作をすることでかえって脱水効果を悪化させたりしてしまうことがある。また、机上テストによる判断は、定量的ではあるが連続的な評価が困難であるため、机上テストの結果を反映した運転条件の変更までに時間を要する。
【0008】
上記のような問題を解決する方法として、特許文献1には、レーザ光を被処理液中に向けて照射し、被処理液中の粒子によって散乱される散乱光を受光して粒子の凝集状態を測定する凝集状態モニタリングセンサを用いて凝集剤添加を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-26438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の技術によれば、被処理液中の散乱光を利用した凝集モニタリング装置によって得られる散乱光の受光信号強度の振幅(変化幅)から凝集指標を生成し、凝集粒の粒子径分布状態を推定できるとされており、凝集剤の添加量の過不足を評価し、凝集剤の添加量を連続的に調整することが可能であるとされている。しかしながら、本発明者らによる検討の結果、被処理液中の粒子の粒子径が当該粒子径を計測する計測領域の直径より小さい場合と大きい場合とで、粒子径と散乱光の受光信号強度の振幅から生成した凝集に関わる指標の相関関係の正負が逆転してしまうことが見出された。この現象により、計測領域の直径より小さい粒子径を有する粒子と計測領域の直径より大きい粒子径を有する粒子の区別がつかなくなってしまうことがある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被処理液中の粒子の凝集状態をより正確に判断することが可能な凝集状態の判断方法及び凝集処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 本発明の一態様に係る凝集状態の判断方法は、粒子を含む液体中にレーザ光を照射して上記レーザ光が上記粒子により散乱した散乱光の受光強度変化幅を基に、上記粒子の凝集状態を判断する方法であって、上記粒子の粒子径と上記受光強度変化幅との相関を取得する相関取得ステップと、上記相関に基づいて上記粒子の凝集状態を判断する判断ステップと、を有する。
[2] 上記[1]に記載の凝集状態の判断方法において、上記相関取得ステップでは、凝集剤の添加量と上記受光強度変化幅との関係を取得し、上記関係から上記粒子径と上記受光強度変化幅との相関を取得してもよい。
[3] 上記[1]又は[2]に記載の凝集状態の判断方法では、上記粒子径と上記受光強度変化幅との相関は、上記粒子径と、上記レーザ光のビーム径との関係で定められてもよい。
[4] 上記[1]に記載の凝集状態の判断方法では、上記相関は、上記粒子径が上記ビーム径以下である場合に正の相関を示し、上記粒子径が上記ビーム径より大きい場合に負の相関を示してもよい。
【0013】
[5] また、本発明の別の態様に係る凝集処理方法は、粒子を含む液体中に凝集剤を添加して上記粒子を凝集する凝集処理方法であって、上記液体中にレーザ光を照射し、上記レーザ光が上記粒子により散乱した散乱光の受光強度変化幅を基に上記粒子の凝集状態を判断する判断工程と、上記判断工程において判断された上記粒子の凝集状態に基づいた添加量で上記凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、を有し、上記判断工程は、上記粒子の粒子径と上記受光強度変化幅との相関を取得する相関取得ステップと、上記相関に基づいて上記粒子の凝集状態を判断する判断ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、被処理液中の粒子の凝集状態をより正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る凝集状態の判断方法を適用可能な凝集処理装置の構成の一例を示す構成図である。
図2】凝集状態モニタリングセンサが有するプローブの構成の一例を示す構成図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る凝集状態の判断方法の流れを示すフローチャートである。
図4】凝集状態モニタリングセンサの計測領域の模式図である。
図5A】凝集状態モニタリングセンサによる検出波形の一例を示す図である。
図5B】凝集状態モニタリングセンサによる検出波形の一例を示す図である。
図6】粒子径と受光強度変化幅の関係の検討に用いた装置を説明するための図である。
図7】粒子径と大ピーク出現率の関係を示すグラフである。
図8】本発明者らの考察を説明するための図である。
図9】本発明者らの考察を説明するための図である。
図10】受光強度変化幅の累積度数の一例を示す図である。
図11】受光強度の経時変化を示す検出波形図の面積を説明するための図である。
図12】相関関係式を示すグラフ図である。
図13】受光強度変化幅と累積発生頻度の一例を示すグラフである。
図14】本発明の第2の実施形態に係る凝集処理方法の流れを示すフローチャートである。
図15】同実施形態における第1の凝集剤添加工程の流れを示すフローチャートである。
図16】同実施形態における第2の凝集剤添加工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<凝集処理装置の構成例>>
まず、本発明の一実施形態に係る凝集状態の判断方法を適用可能な凝集処理装置の一例を説明する。図1は、本実施形態に係る凝集状態の判断方法を適用可能な凝集処理装置の一例を示す構成図である。
【0017】
図1に示すとおり、この凝集処理装置では、被処理液が流量計2を有する流入管1を介して処理槽3に導入され、薬注装置4によって凝集剤が処理槽3に添加される。処理槽3には撹拌機3aと、凝集状態モニタリングセンサ10が設置されており、凝集状態モニタリングセンサ10により生成される検出信号が制御器8に入力される。制御器8はこの検出信号に基づいて薬注装置4を制御する。
【0018】
凝集剤は、無機凝集剤であってもよく、有機凝集剤であってもよく、それらの併用であってもよい。
【0019】
凝集状態モニタリングセンサ10には、好ましくは、特許文献1に記載のものが用いられる。凝集状態モニタリングセンサ10は、プローブ100を有する。図2は、凝集状態モニタリングセンサ10が有するプローブ100の構成を示している。このプローブ100は、互いに直交する面101a,101b及びそれらが交わる頂部101cを有したブロック101と、面101aに沿って設けられ、被処理液に向ってレーザ光を照射する発光部102と、面101bに沿って設けられ、受光光軸を発光部102の発光光軸と直交方向とした受光部103とを有する。また、凝集状態モニタリングセンサ10は、発光部102の発光作動及び受光部103の受光信号の解析を行うために、発光回路、検波回路及び計測回路(図示せず。)を備えている。計測回路は、タイミング回路、A/D変換部、演算部等を有する。
【0020】
特許文献1と同様に、プローブ100では、発光部102から、頂部101c近傍の計測領域Aに照射されたレーザ光が計測領域A内の粒子によって散乱される。この散乱光が受光部103で受光され、受光部103が受光した散乱光の強度の経時変化に基づいて凝集状態が計測される。なお、ブロック101は不透明材料よりなる。レーザ光Lの光軸と垂直な断面における計測領域Aの直径、言い換えるとレーザ光Lの直径は、例えば、1mmである。後述するように、計測領域Aの直径は、粒子径と受光部103が受ける散乱光の強度である受光強度の変化幅との相関が反転する閾値である。したがって、要求される凝集状態を適切に判断するため、計測領域Aの直径は適宜変更されてもよい。
【0021】
発光回路は、タイミング回路からの信号に応じて発光部に一定の変調周波数を持った電気信号を発光部102に送信する。発光部102は、発光回路からの信号によって、レーザ光を発光する。受光部103は、レーザ光が被処理水に含まれる粒子に当たって発生した散乱光を受けて、散乱光を電気信号に変換する。検波回路は、受光部103からの電気信号に含まれる変調成分を除去し、受光強度に応じた受光電圧を出力する。
【0022】
計測回路は、発光回路に発光のための信号(特定の周波数変調波)を送信すると共に、検波回路からの信号をデジタル信号に変換し、論理演算して凝集に関する情報を出力する。
【0023】
凝集状態モニタリングセンサ10としては、特許文献1のモニタリング装置、特にそれが特許された特許第6281534号公報に記載のモニタリング装置を好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0024】
なお、特許第6281534号の凝集モニタリング装置は、
「 凝集処理される被処理液の処理状態を監視する凝集モニタリング装置であって、
計測光を前記被処理液の計測領域に照射する計測光照射部と、
前記計測領域にある前記被処理液の粒子による散乱光を受光する散乱光受光部と、
前記散乱光受光部に得られる受光信号の振幅を計測する振幅計測手段を含み、計測された前記振幅の出現を監視及び集計し、特定の振幅の発生率又は発生頻度を算出して、前記被処理液中のフロックの粒子径を表す前記被処理液の凝集に関わる指標を算出する計測値演算部と、
を備え、
前記振幅計測手段は、前記受光信号が上昇から下降に変化する第1の変曲点及び下降から上昇に変化する第2の変曲点を検出し、前記第1の変曲点及び第2の変曲点のレベル差から前記振幅を計測することを特徴とする凝集モニタリング装置。」
である。
ここまで、本実施形態に係る凝集状態の判断方法を適用可能な凝集処理装置の一例を説明した。
【0025】
<<凝集状態の判断方法>>
続いて、本発明の第1の実施形態に係る凝集状態の判断方法を説明する。本実施形態に係る凝集状態の判断方法は、粒子を含む液体中にレーザ光を照射して当該レーザ光が粒子により散乱した散乱光の受光強度を基に、前記粒子の凝集状態を判断する方法であって、図3に示すように、粒子の粒子径と受光強度変化幅との相関を取得する相関取得ステップ(ステップS11)と、当該相関に基づいて粒子の凝集状態を判断する判断ステップ(ステップS12)と、を有する。
【0026】
本実施形態に係る凝集状態の判断方法は、粒子を含む液体中にレーザ光を照射して当該レーザ光が当該粒子により散乱した散乱光の受光強度を基に粒子の凝集状態を判断する方法である。レーザ光の照射、散乱光の受光、及び受光強度の算出には、公知の方法を採用することができ、例えば、上述した凝集処理装置に設けられた凝集状態モニタリングセンサ10を用いてもよい。以下では、凝集状態モニタリングセンサ10を用いた場合を例に挙げて凝集状態の判断方法を説明する。
【0027】
<相関取得ステップ(ステップS11)>
相関取得ステップでは、粒子径と受光強度変化幅との相関を取得する。図4に示すように、ある時点では、例えば、計測領域Aに5個の粒子が存在している。図2に示すように、この時点で計測領域Aに照射されたレーザ光Lが、各粒子によって散乱され、散乱光Lsが受光部103に入射する。この時点から所定時間Δtが経過した時点では、計測領域Aに存在する粒子数が変動する。理論上は、粒子数が変化しないこともあるが、粒子がブラウン運動し、また処理槽3内の被処理液が撹拌されているので、通常は該粒子数は変動する。所定時間Δtは、好ましくは0.1~10mSecの間から選定された時間であり、例えば、約1mSecである。
【0028】
粒子数が変動すると、それに連動して散乱光強度が変動し、受光部103による散乱光の受光強度が変動する。
【0029】
粒子径が計測領域Aの直径以下である場合、粒子径が大きいほど、1個の粒子が計測領域Aに出入りしたときの受光強度変化幅が大きくなる。従って、この受光強度変化幅から、計測領域Aに出入りした粒子の粒子径の大小を検出することができる。すなわち、任意の時刻tの受光強度と、Δt経過後の時刻tk+1の受光強度との差は、該Δtの間に計測領域Aに出入りした粒子の表面積に比例した値となる。
【0030】
図5Aは、受光強度の経時変化の一例を示している。図5Aにおける出力信号は、受光部103の受光強度であり、単位は、例えばmVである。
【0031】
図5Aは、時刻t,t…tの各時刻において測定された受光強度をプロットしたグラフであり、各時刻の間隔Δt(すなわちt-tk-1)は前述の通り、好ましくは0.1~10mSec、例えば1mSecである。
【0032】
図5Bは、図5Aにおいて、極小点P,P…と、極大点Q,Q…とを記入し、受光強度変化幅すなわち極小点と極大点との差h,h…を記入した説明図である。なお、以下、極大点の数をピーク数ということがある。
【0033】
上述の通り、任意の時刻tk-1の受光強度と時刻tの受光強度との差hは、時刻tk-1~t間に計測領域A出入りした粒子の表面積に比例した値である。
【0034】
時刻t~tのΔt×z秒間におけるすべての受光強度変化幅h,h…hより、この時刻t~tの間に計測領域A付近に存在する粒子の粒子径分布が検出される。zは例えば200とされ、Δt=1mSecである場合Δt×zは0.2秒となる。ただし、これは一例であり、0.01~900秒程度であればよい。
【0035】
ここで、図6~9を参照して、粒子径と受光強度変化幅の関係を説明する。本発明者らは、粒子径と受光強度変化幅の関係について検討を行った。図6は、粒子径と受光強度変化幅の関係の検討に用いた装置を説明するための図であり、図7は、粒子径と受光強度変化幅の関係の検討により得られた粒子径と大ピーク出現率の関係を示すグラフである。大ピーク出現率とは、全ピーク数に対する受光強度変化幅が4000mV以上のピークの出現率をいう。図8、9は、本発明者らの考察を説明するための図である。
【0036】
濃度が乾燥重量で1.0重量%となるように、黒色の人工粒子を水中に添加した被処理液を製造した。人工粒子には、先端にシリンジを設けたチューブを通じて1質量%塩化カルシウム水溶液に1質量%の塗料を含有するアルギン酸ナトリウム水溶液を添加してゲル化させて製造したものを用いた。アルギン酸ナトリウム水溶液の添加速度は株式会社タクミナ製のスムースフローポンプを用いて流量を調整した。アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度、添加速度、及びシリンジ形状を変更して0.5~3.0μmの人工粒子を製造した。
【0037】
処理槽は、図6に示すように、内径Rが154mm、正面視でθ=90°の角度のテーパを底部に有するものを用いた。被処理液の撹拌には、水平面から45°傾斜した4枚の羽根板を有するピッチドパドル型撹拌翼を用いた。撹拌翼の直径r(回転中心を通る、羽根板先端間の距離r)は75mmであり、各羽根板の上端と下端の距離は10mmであった。当該撹拌翼を、処理槽の中心であってテーパ上端から各羽根板の上端までの距離dを45mmとした。
【0038】
凝集状態モニタリングセンサ(栗田工業株式会社製S.sensing CS-P)を撹拌翼の上部に配置し、3Lの被処理液を処理槽に供給した。凝集状態モニタリングセンサが有するプローブの計測領域の直径は1mmである。そして、撹拌速度を300rpm、解析時間を3分間として、受光強度を測定し、人工粒子の粒子径ごとの大ピーク出現率を算出した。なお、照射するレーザ光のデューティ比は10%(発光時間200mSec、休止時間1800mSec)とした。結果を図7に示す。
【0039】
図7に示すように、粒子径が計測領域の直径より小さい場合、粒子径の増大に伴って大ピーク出現率が高くなり、粒子径が計測領域の直径より大きい場合、粒子径の増大に伴って大ピーク出現率が低くなることが分かった。
【0040】
上記の検討結果について、本発明者らは以下のように考察している。図8に示すように、計測領域A内を通過する粒子径が計測領域Aの直径より小さい範囲では、粒子径が大きくなるほど、レーザ光の投影面積が大きくなるので、大きい散乱光量変化をもたらす。これにより、受光部103が受光する散乱光の光量である受光量の変化も大きくなる。すなわち、粒子径と受光強度変化幅との間で正の相関を示す。一方、図9に示すように、計測領域A内を通過する粒子の粒子径が計測領域の直径より大きい範囲では、粒子径が大きくなるほど粒子表面の曲率が小さくなることで散乱光の散乱角度が小さくなり、受光部103に到達する散乱光が減少するので、小さい散乱光量変化をもたらす。これにより、受光量の変化が小さくなる。すなわち、粒子径と受光強度変化幅との間で負の相関を示す。したがって、計測領域A内を通過する粒子の粒子径に対する受光強度変化幅の相関関係は、計測領域直径を境に反転する。また、上記のとおり、粒子径と受光強度変化幅との相関は、粒子径とレーザ光のビーム径との関係で定めることができる。そして、当該相関は、粒子径がビーム径以下である場合に正の相関を示し、粒子径が前記ビーム径より大きい場合に負の相関を示す。
【0041】
詳細には、粒子径が計測領域Aの直径以下である場合、図5Bにおいて、受光強度変化幅hは小径の粒子が検出されたことを表わし、受光強度変化幅hは大径の粒子が検出されたことを表わし、受光強度変化幅hはそれらの間の粒子径の粒子が検出されたことを表わす。受光強度変化幅hは、hの粒子よりも若干大きい程度の粒子が検出されたことを表わす。
一方、粒子径が計測領域Aの直径よりも大きい場合は、粒子径が計測領域Aの直径以下である場合とは逆になる。すなわち、図5Bにおいて、受光強度変化幅hは大径の粒子が検出されたことを表わし、受光強度変化幅hは小径の粒子が検出されたことを表わし、受光強度変化幅hはそれらの間の粒子径の粒子が検出されたことを表わす。受光強度変化幅hは、hの粒子よりも若干小さい程度の粒子が検出されたことを表わす。
【0042】
一般に、凝集剤の薬注量が多くなるほど凝集が進行して粒子径が大きくなる。したがって、相関取得ステップでは、被処理液に添加する凝集剤の添加量(薬注量)を増加させ、受光強度の変化を取得する。薬注量の増加に伴って受光強度変化幅が大きくなる場合、粒子径を計測領域Aの直径以下であると判断し、被処理液中の粒子径と受光強度変化幅との間に正の相関があると判断する。一方、薬注量の増加に伴って受光強度変化幅が小さくなる場合、粒子径を計測領域Aの直径より大きいと判断し、被処理液中の粒子径と受光強度変化幅との間に負の相関があると判断する。上記のとおり、薬注量と受光強度との関係を取得すれば、当該関係から粒子径と受光強度変化幅との相関を取得することができる。
【0043】
<判断ステップ(ステップS12)>
判断ステップでは、粒子径と受光強度変化幅との相関に基づいて粒子の凝集状態を判断する。
【0044】
被処理液中の粒子の粒子径と受光強度変化幅との間に正の相関がある場合、測定時間範囲t~tにおける、凝集状態モニタリングセンサの受光強度変化幅を、小→大の順番の階級に分類し、各階級に属するピーク数をカウントすることにより、相対度数すなわちピーク総数に占める各階級の度数(ピーク数)が得られ、またピーク数の累積相対度数が得られる。このとき、表1に示すように、受光強度変化幅が大きいほど粒子径が大きい。一方、被処理液中の粒子径と受光強度変化幅との間に負の相関がある場合、測定時間範囲t~tにおける、凝集状態モニタリングセンサの受光強度変化幅を、大→小の順番の階級に分類し、各階級に属するピーク数をカウントすることにより、相対度数すなわちピーク総数に占める各階級の度数(ピーク数)が得られ、またピーク数の累積相対度数が得られる。このとき、受光強度変化幅が小さいほど粒子径が大きい。なお、階級の数は2以上、特に3以上例えば10~100が好ましい。
【0045】
【表1】
【0046】
上記のとおり、粒子径と受光強度変化幅との相関に基づいて粒子の凝集状態を判断することができる。以下では、より詳細に凝集状態の判断方法の例を説明する。
【0047】
(被処理液中の粒子径と受光強度変化幅との間に正の相関がある場合)
[所定受光強度変化幅以上のピーク数の発生頻度と平均受光強度とに基づく凝集状態の判断]
凝集状態の判断は、例えば、以下の方法で行われればよい。被処理液中の粒子径と受光強度変化幅との間に正の相関がある場合、例えば、所定の受光強度変化幅以上のピーク数の発生頻度(すなわち相対度数)が予め設定した閾値以上(例えば、20%以上、累積相対度数に換算すると80%以下)であれば、凝集状態が良好と判断する。具体例を以下に説明する。
【0048】
工程1
目視判断等により凝集状況が良好であると判断される日に、ピーク数の累積相対度数の80%タイル値となるときの受光強度変化幅h80%図10参照)、及び、平均受光強度を求める。平均受光強度は、図11において斜線を付した領域の面積S(受光強度の時間積分値)を測定時間(t-t)で除算した値である。
【0049】
凝集状況が良好な複数の日において、それぞれ工程1を行い、各日における受光強度変化幅h80%値及び平均受光強度を求める。
【0050】
工程2
工程1の各日における受光強度変化幅h80%値と平均受光強度とをグラフにプロットすることにより、図12のような、受光強度変化幅h80%値と平均受光強度との相関図を得る。そして、平均受光強度と発生頻度累計の80%タイル値(h80%値)との関係式(y=ax+b)を決定する。
【0051】
工程3
上記のようにして決定した関係式y=ax+bのxに、薬注量制御時点での平均受光強度の測定値を代入してyすなわちh80%値を算出し、算出したh80%値を「目標受光強度変化幅」として設定する。そして、「目標受光変化幅」以上のピーク数の発生頻度が20%以上(累積発生頻度換算で80%以下)であれば凝集状態が良好と判断する。
【0052】
上記説明では、予め設定した閾値を20%、累積発生頻度を80%としたが、この数値は変えても良い。例えば、閾値20%に対して累積発生頻度を70%や50%などとしても良く、これら数値は、相関が求められる範囲で適宜設定することができる。ただし、閾値X%と累積発生頻度Y%とは、X+Yが100に近い数値であることが好ましい。
【0053】
また、図12では、関係式は一次式とされているが、相関があれば二次式でもその他の式で良い。また、グラフを作成し、グラフから求めても良い。
【0054】
上記説明では、受光強度変化幅情報(受光強度変化幅又はそれに対応する値)として累積発生頻度が所定値のときの受光強度変化幅としたが、これに限定されず、例えば、受光強度変化幅の平均値、中央値、第一四分位、第三四分位などでもよい。平均値や中央値となる受光強度変化幅を「受光強度変化幅情報」とした場合には、これら情報と平均受光強度との相関式より目標とする平均受光強度幅を設定すれば良い。
【0055】
なお、受光強度変化幅の中央値、第一四分位、第三四分位と累積発生頻度との関係の一例を図13に示す。
【0056】
上記説明では、受光強度情報(受光信号強度又はそれに対応する値)として平均受光強度を用いたが、平均受光強度に限定されず、第一四分位、中央値、第三四分位、最大値、その他任意のパーセンタイル値でもよい。
【0057】
ピーク波高値(受光強度変化幅)と受光強度が相関する場合、ピーク波高値と受光信号強度の関係式で補正された値が、測定対象試料の色や濃度に関係なく一定になる。
【0058】
[凝集状態の判断の別の態様]
凝集状態の判断の別の態様においては、凝集状態モニタリングセンサの受光強度から求められる[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]に基づいて凝集状態が判断されてもよい。この場合には、粒子径が小さ過ぎないようにするための第1閾値と、粒子径が大き過ぎないようにするための第2閾値を設定する。
【0059】
[平均受光強度変化幅]と[平均受光強度]との関係を示すグラフと、第1閾値及び第2閾値を求めるには、例えば、凝集処理装置を現場に設置し、所定期間(例えば1週間~1か月程度)当該現場の実排水を、凝集処理装置をマニュアル運転することにより凝集処理する。この場合、作業員が、凝集状況を見ながら経験に基づいて薬注量を制御するとともに、この間、凝集状態モニタリングセンサの信号強度の経時変化を記録する。そして、このマニュアル運転期間中で、凝集状態(粒子径)が適正範囲の下限になった時の[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]を第1閾値として求める。また、このマニュアル運転期間中で、凝集状態(フロック径)が適正範囲の上限になった時の[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]を第2閾値として求める。
【0060】
[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]に基づいて凝集状態を判断すれば、粒子の色と濃度が異なる場合であっても、凝集状態モニタリングセンサの受光信号強度に基づいて適切に凝集状態を判断することができる。
【0061】
(被処理液中の粒子径と受光強度変化幅との間に負の相関がある場合)
被処理液中の粒子径と受光強度変化幅との間に負の相関がある場合、例えば、所定受光強度変化幅以上のピーク数の発生頻度(すなわち相対度数)が予め設定した閾値以下であれば、凝集状態が良好と判断する。
【0062】
また、被処理液中の粒子径と受光強度変化幅との間に負の相関がある場合にも、[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]によって、凝集状態を判断してもよい。
【0063】
<<凝集処理方法>>
続いて、図14を参照して、本発明の第2の実施形態に係る凝集処理方法を説明する。図14は、本実施形態に係る凝集処理方法の流れを示すフローチャートである。本実施形態に係る凝集処理方法は、粒子を含む液体中に凝集剤を添加して粒子を凝集する凝集処理方法であって、粒子を含む液体中にレーザ光を照射し、当該レーザ光が粒子により散乱した散乱光の受光強度変化幅を基に粒子の凝集状態を判断する判断工程(ステップS1)と、前記判断工程において判断された前記粒子の凝集状態に基づいた添加量で前記凝集剤を添加する凝集剤添加工程(ステップS2)と、を有し、前記判断工程は、前記粒子の粒子径と前記受光強度変化幅との相関を取得する相関取得ステップ(ステップS11)と、前記相関に基づいて前記粒子の凝集状態を判断する判断ステップ(ステップS12)と、を有する。本実施形態に係る凝集処理方法における判断工程では、第1の実施形態に係る凝集状態の判断方法による判断がなされる。したがって、ここでは判断工程の説明を省略し、凝集剤添加工程の例について、図15、16を参照して詳細に説明する。図15は、本実施形態における第1の凝集剤添加工程の流れを示すフローチャートである。図16は、本実施形態における第2の凝集剤添加工程の流れを示すフローチャートである。
【0064】
<凝集剤添加工程(ステップS2)>
(第1の凝集剤添加工程)
第1の凝集剤添加工程は、判断工程で所定受光強度変化幅以上のピーク数の発生頻度と平均受光強度とに基づく凝集状態の判断がされた場合の凝集剤添加工程である。第1の凝集剤添加工程では、所定受光強度変化幅以上のピーク数の発生頻度が該閾値以上となるまで凝集剤を添加する。例えば、上述した関係式y=ax+bのxから算出したh80%値を「目標受光変化幅」として設定し、「目標受光変化幅」以上のピーク数の発生頻度が20%以上(累積発生頻度換算で80%以下)となるように凝集剤の添加量を制御する。
【0065】
詳細には、まず、図15に示すように、被処理液が撹拌されている処理槽に凝集剤を添加する(ステップS21)。凝集剤は、少量を連続的に添加してもよいし、必要な添加剤量を1回又は数回に分けて添加してもよい。次いで、目標受光強度変化幅以上のピーク数の発生頻度が所定の閾値以上か否かを判定する。上記判定は、例えば、制御器8が行う。目標受光強度変化幅以上のピーク数の発生頻度が所定の閾値以上である場合(ステップS22/YES)、撹拌が停止され、処理槽から処理液が排出されて凝集処理工程は終了する。一方、目標受光強度変化幅以上のピーク数の発生頻度が所定の閾値未満である場合(ステップS22/NO)、凝集剤の添加が継続され、凝集剤不足のときは薬注装置の出力(ポンプストローク、ポンプパルス、回転速度等)を上昇させ、凝集剤過剰のときは薬注装置の出力を低下させる。
以上により、粒子径が適正な範囲となるように凝集剤の添加量を制御することができる。
【0066】
(第2の凝集剤添加工程)
第2の凝集剤添加工程では、[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]に基づいて凝集状態が判断された場合の凝集剤添加工程である。第2の凝集剤添加工程では、[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]が第1閾値よりも大きくなるように凝集剤を添加し、凝集粒子が過大とならないようにするために、[受光強度変化幅]/[平均受光強度]が第2閾値(第1閾値よりも大きい)以下となるように凝集剤を添加する。
【0067】
詳細には、まず、図16に示すように、被処理液が撹拌されている処理槽に凝集剤を添加する(ステップS23)。凝集剤は、少量を連続的に添加することが好ましい。次いで、[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]値は第1閾値以上第2閾値以下であるか否かを判定する(ステップS24)。上記判定は、例えば、制御器8が行う。[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]値が第1閾値以上である場合(ステップS24/YES)、撹拌が停止され、処理槽から処理液が排出されて凝集処理工程は終了する。一方、[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]値が第1閾値未満である場合(ステップS24/NO)、凝集剤の添加が継続され、凝集剤不足のときは薬注装置の出力(ポンプストローク、ポンプパルス、回転速度等)を上昇させ、凝集剤過剰のときは薬注装置の出力を低下させる。なお、[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]値が第2閾値超である場合、粒子径が過大であるため、この場合も凝集剤添加工程は終了する。
【0068】
[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]に基づいて凝集剤添加を制御することにより、粒子の色と濃度が異なる場合であっても、凝集状態モニタリングセンサの受光信号強度に基づいて適切に(いわば、粒子の色及び濃度を考慮して補正した粒子径測定値にもとづいて)、凝集剤の添加を制御することができる。
【0069】
(被処理液中の粒子径と受光強度変化幅との間に負の相関がある場合)
被処理液中の粒子径と受光強度変化幅との間に負の相関がある場合、例えば、所定受光強度変化幅以上のピーク数の発生頻度(すなわち相対度数)が予め設定した閾値以下であれば、凝集状態が良好と判断する。そして、所定受光強度変化幅以上のピーク数の発生頻度が該閾値以下となるように凝集剤の添加量を制御すればよい。
【0070】
また、被処理液中の粒子径と受光強度変化幅との間に負の相関がある場合にも、[平均受光強度変化幅]/[平均受光強度]によって、凝集剤の添加量を制御してもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態に基づき、本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。上記はあくまでも例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0072】
例えば、上述した凝集処理装置は、あくまでも一例であり、図1では、制御器8と凝集状態モニタリングセンサ10とを別個に設置しているが、凝集状態モニタリングセンサ10の信号処理部に制御器8の制御プログラムを組み込み、凝集状態モニタリングセンサ10から薬注装置4に制御信号を与えるようにしてもよい。
【0073】
また、凝集状態モニタリングセンサ10は、処理槽3からの凝集液流出配管に設置されてもよい。また、処理槽3内の液が導入される計測槽を設け、この計測槽に凝集状態モニタリングセンサ10を設置してもよい。
【0074】
また、上述したプローブでは、発光部102と受光部103とは互いに直交しているが、これに限らず、発光部102と受光部103とは他の角度をなすように配置されていてもよい。発光部102と受光部103とのなす角は、例えば、10°以上170°以下とすることができる。
【0075】
また、所定の時間間隔で発光、非発光を繰り返すことで発光素子の使用時間を延長することができる。例えば、発光時間を0.2秒/回、発光間隔を2秒とした場合、連続で発光した場合に比較して発光素子の使用時間(寿命)を10倍に延長することが可能となる。
【0076】
また、上述した凝集剤添加工程の例は、あくまでも一例であり、本発明に係る凝集状態の判断方法により判断された凝集状態に基づいて凝集剤は添加されればよい。
【符号の説明】
【0077】
3 処理槽
4 薬注装置
8 制御器
10 凝集状態モニタリングセンサ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16