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特許7452810固定化触媒を用いたフロー反応によるドネペジルの製造方法
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  • 特許-固定化触媒を用いたフロー反応によるドネペジルの製造方法 図1
  • 特許-固定化触媒を用いたフロー反応によるドネペジルの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】固定化触媒を用いたフロー反応によるドネペジルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/32 20060101AFI20240312BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C07D211/32
C07B61/00 300
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019112062
(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2020203851
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年3月1日 日本化学会第99春季年会(2019)講演予稿集DVD「Development of Atom-economical C-C and C-N Bond Forming Reactions for Flow Fine Synthesis」の講演論文にて公開した。 平成31年3月1日 日本化学会第99春季年会(2019)講演予稿集DVD「アルドール縮合・芳香環水素化によるドネペジルの連続フロー合成法の開発」の講演論文にて公開した。 平成31年3月16日 日本化学会第99春季年会(2019)講演番号1F4-25にて公開した。 平成31年3月16日 日本化学会第99春季年会(2019)講演番号1F4-27にて公開した。 平成31年3月26日 American Chemical Society Organic Process Research&Developmentのウェブサイト「https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.oprd.9b00048」を通じて公開した。
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
(72)【発明者】
【氏名】石谷 暖郎
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ラロッシュ
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 由樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】赤松 久
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-079151(JP,A)
【文献】特開平04-021670(JP,A)
【文献】国際公開第2007/108011(WO,A2)
【文献】国際公開第2007/013395(WO,A1)
【文献】特開平11-171861(JP,A)
【文献】Niphade, Navanath; Mali, Anil; Jagtap, Kunal; Ojha, Ramesh Chandra; et al,"An Improved and Efficient Process for the Production of Donepezil Hydrochloride: Substitution of Sodium Hydroxide for n-Butyl Lithium via Phase Transfer Catalysis",Organic Process Research & Development,2008年,Vol.12(4),p.731-735
【文献】Miyamura, Hiroyuki; Suzuki, Aya; Yasukawa, Tomohiro; Kobayashi, Shu,"Polysilane-Immobilized Rh-Pt Bimetallic Nanoparticles as Powerful Arene Hydrogenation Catalysts: Synthesis, Reactions under Batch and Flow Conditions and Reaction Mechanism",Journal of the American Chemical Society,2018年,Vol.140(36),p.11325-11334
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 211/32
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)
【化1】

で表されるドネペジルの製造方法であって、
下記式(III)
【化2】

で表される5,6-ジメトキシ-1-インダノンと、下記式(IV)
【化3】

で表される1-ベンジル-4-ホルミルピペリジンとをアルドール縮合反応させて下記式(V)
【化4】

で表される1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを得るアルドール縮合ステップと、
1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを水素化反応させて上記式(II)で表されるドネペジルを得る水素化ステップとを含み、
前記アルドール縮合ステップおよび前記水素化ステップの少なくともいずれかを、触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって連続的に行い、
ここにおいて前記アルドール縮合ステップに用いる触媒が塩基性樹脂である、ドネペジルの製造方法。
【請求項2】
前記塩基性樹脂が架橋剤で架橋された樹脂である、請求項に記載のドネペジルの製造方法。
【請求項3】
前記アルドール縮合ステップに用いる触媒が第三級アミノ基または第四級アンモニウム基が導入された樹脂である、請求項またはに記載のドネペジルの製造方法。
【請求項4】
前記アルドール縮合ステップに用いる触媒がジアルキルアミノ基、トリアルキルアンモニウム基またはジアルキルアルコールアンモニウム基が導入された樹脂である、請求項に記載のドネペジルの製造方法。
【請求項5】
前記アルドール縮合ステップに用いる触媒がジメチルアミノ基、トリメチルアンモニウム基またはジメチルエタノールアンモニウム基が導入された樹脂である、請求項に記載のドネペジルの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂が、ジメチルアミノ基、トリメチルアンモニウム基またはジメチルエタノールアンモニウム基が導入され、ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン樹脂またはポリアクリル酸エステル樹脂である、請求項に記載のドネペジルの製造方法。
【請求項7】
前記樹脂が、ジメチルアミノ基、トリメチルアンモニウム基またはジメチルエタノールアンモニウム基が導入され、ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン樹脂である、請求項に記載のドネペジルの製造方法。
【請求項8】
前記水素化ステップに用いる触媒が、パラジウム系触媒、白金系触媒およびニッケル系触媒からなる群から選ばれる少なくともいずれかである、請求項1に記載のドネペジルの製造方法。
【請求項9】
前記水素化ステップに用いる触媒が、ジメチルポリシリル-パラジウムアルミナ、ジメチルポリシリル-パラジウムシリカゲル、白金炭素、白金アルミナおよびジメチルポリシリル-白金炭素から選ばれる少なくともいずれかである、請求項に記載のドネペジルの製造方法。
【請求項10】
前記アルドール縮合反応を行うための第1反応器と、前記水素化反応を行うための第2反応器とを連結し、前記第1反応器において前記アルドール縮合ステップをフロー法によって連続的に行って得られた1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを前記第2反応器に供し、前記第2反応器において前記水素化ステップをフロー法によって連続的に行う、請求項1~のいずれか1項に記載のドネペジルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルドール縮合ステップと水素化ステップとを含み、アルドール縮合ステップおよび水素化ステップの少なくともいずれかを触媒を固定化した反応器を用いたフロー法により連続的に行う、ドネペジルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドネペジル塩酸塩はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤であり、アルツハイマー型認知症の治療に用いられ、日本では「アリセプト」という製品名で販売されている。
【0003】
ドネペジル塩酸塩は、化学名(2RS)-2-[(1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル]-5,6-ジメトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1H-オン塩酸塩で表され、構造式は下記式(I)で表される。
【0004】
【化1】
【0005】
以下に特許文献に記載の代表的なドネペジル塩酸塩の製造スキームを示す。
【0006】
【化2】
【0007】
これまでに報告されている代表的なドネペジル塩酸塩の製造方法は、上記製造スキームに示すように、まず、式(III)で表される5,6-ジメトキシ-1-インダノンと、式(IV)で表される1-ベンジル-4-ホルミルピペリジンとのアルドール縮合反応にて、式(V)で表される1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを得て、水素化反応を行うことで、式(II)で表されるドネペジルを得る。そしてドネペジルに塩酸を加えることで、式(I)で表されるドネペジル塩酸塩を得ることができる。
【0008】
米国第4895841号明細書(特許文献1)、特許第5001151号公報(特許文献2)においては、5,6-ジメトキシ-1-インダノンと1-ベンジル-4-ホルミルピペリジンを用いるアルドール縮合反応を、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、ナトリウムメトキシド/メタノール溶液などの有機金属塩基を用いた均一系反応で行い、1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを製造する方法が開示されている。また、Navanath Niphade et al., "An Improved and Efficient Process for the Production of Donepezil Hydrochloride: Substitution of Sodium Hydroxide for n-Butyl Lithium via Phase Transfer Catalysis", Org. Process Res. Dev., 2008, 12 (4), pp 731-735(非特許文献1)では、水と、トルエンまたはジクロロメタンとの混合溶媒系中で、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)などの相間移動触媒(PTC)の存在下で、水酸化ナトリウムを用いてアルドール縮合反応を行うことが提案されている。また、これらの製造方法では、各反応終了後に中間体を単離し、次の工程を行っている。
【0009】
国際公開第2007/108011号(特許文献3)、国際公開第2007/043440号(特許文献4)においては、触媒としてパラジウム、白金を用いて1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを水素化反応を行うことでドネペジルを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国第4895841号明細書
【文献】特許第5001151号公報
【文献】国際公開第2007/108011号
【文献】国際公開第2007/043440号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Navanath Niphade et al., "An Improved and Efficient Process for the Production of Donepezil Hydrochloride: Substitution of Sodium Hydroxide for n-Butyl Lithium via Phase Transfer Catalysis", Org. Process Res. Dev., 2008, 12 (4), pp 731-735
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これまでドネペジルは、アルドール縮合反応および水素化反応を行い、製造していたが、アルドール縮合反応では塩基の中和や分液、晶析や結晶の取り出しなどの煩雑な操作が必要であり、また、水素化反応はパラジウムや白金などの金属触媒を用いるため、分離操作が必要である。また、水素化反応が一般に加圧条件で行っているため、反応の制御が難しく、過反応生成物である脱ベンジル体が生成する問題がある。
【0013】
これまで開示されているドネペジルの製造はバッチ法で実施されており、バッチサイズが生産量に影響するため、生産量の調整が難しい。また、バッチ法では製造規模が大きくなるほど温度調節が困難になるという問題がある。
【0014】
従って、より簡便で、容易に反応が制御でき、かつ、容易に生産量が調整できるドネペジルの製造方法が求められているのが現状である。
【0015】
本発明はこれらの課題を解決するものであり、精密に反応時間および温度を制御しながら必要なときに必要な量を製造することができ、反応後の中和、分離操作、中間体の単離、精製工程を省略できるため、労働力、作業時間を大幅に削減することができる、ドネペジルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者はこの課題解決のため鋭意研究を重ねた結果、下記式(II)
【0017】
【化3】
【0018】
で表されるドネペジルの製造方法であって、下記式(III)
【0019】
【化4】
【0020】
で表される5,6-ジメトキシ-1-インダノンと、下記式(IV)
【0021】
【化5】
【0022】
で表される1-ベンジル-4-ホルミルピペリジンとをアルドール縮合反応させて下記式(V)
【0023】
【化6】
【0024】
で表される1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを得るアルドール縮合ステップと、1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを水素化反応させて上記式(II)で表されるドネペジルを得る水素化ステップとを含み、前記アルドール縮合ステップおよび前記水素化ステップの少なくともいずれかを、触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって連続的に行う、ドネペジルの製造方法を見出した。
【0025】
本発明のドネペジルの製造方法において、前記アルドール縮合ステップに用いる触媒は、塩基性樹脂であることが好ましく、この塩基性樹脂は架橋剤で架橋された樹脂であることがより好ましい。さらに、前記アルドール縮合ステップに用いる触媒は、第三級アミノ基または第四級アンモニウム基が導入された樹脂であることが好ましく、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアンモニウム基またはジアルキルアルコールアンモニウム基が導入された樹脂であることがより好ましく、ジメチルアミノ基、トリメチルアンモニウム基またはジメチルエタノールアンモニウム基が導入された樹脂であることがさらに好ましく、ジメチルアミノ基、トリメチルアンモニウム基またはジメチルエタノールアンモニウム基が導入され、ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン樹脂またはポリアクリル酸エステル樹脂であることがよりさらに好ましく、ジメチルアミノ基、トリメチルアンモニウム基またはジメチルエタノールアンモニウム基が導入され、ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン樹脂であることが特に好ましい。
【0026】
本発明のドネペジルの製造方法において、前記水素化ステップに用いる触媒は、パラジウム系触媒、白金系触媒およびニッケル系触媒からなる群から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましく、ジメチルポリシリル-パラジウムアルミナ、ジメチルポリシリル-パラジウムシリカゲル、白金炭素、白金アルミナおよびジメチルポリシリル-白金炭素から選ばれる少なくともいずれかであることがより好ましい。
【0027】
本発明のドネペジルの製造方法において、前記アルドール縮合反応を行うための第1反応器と、前記水素化反応を行うための第2反応器とを連結し、前記第1反応器において前記アルドール縮合ステップをフロー法によって連続的に行って得られた1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを前記第2反応器に供し、前記第2反応器において前記水素化ステップをフロー法によって連続的に行うことが、好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、精密に反応時間および温度を制御しながら必要なときに必要な量を製造することができ、反応後の中和、分離操作、中間体の単離、精製工程を省略できるため、労働力、作業時間を大幅に削減することができる、ドネペジルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明のドネペジルの製造方法の一例を利用して、ドネペジル塩酸塩を製造する場合を示すフローチャートである。
図2図2は、従来のバッチ法でドネペジル塩酸塩を製造する場合を示すフローチャートであり、図2(a)は特許第5001151号公報(特許文献2)の実施例1に従ってドネペジル中間体を得るまでを示し、図2(b)は国際公開第2007/043440号(特許文献4)の実施例1に従ってドネペジル中間体を用いてドネペジル塩酸塩を得るまでを示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明は、下記反応スキームで示すように、下記式(II)で表されるドネペジルの製造方法であって、下記式(III)で表される5,6-ジメトキシ-1-インダノンと、下記式(IV)で表される1-ベンジル-4-ホルミルピペリジンとをアルドール縮合反応させて下記式(V)で表される1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを得るアルドール縮合ステップ(下記反応スキーム中、ステップA)と、1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを水素化反応させて上記式(II)で表されるドネペジルを得る水素化ステップ(下記反応スキーム中、ステップB)とを含み、前記アルドール縮合ステップおよび前記水素化ステップの少なくともいずれか(すなわち、下記反応スキーム中、ステップAのみ、ステップBのみ、または、ステップA、Bの両方)を、触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって(固定化触媒を用いたフロー反応によって)連続的に行うドネペジルの製造方法である。ここで、「フロー法」とは、反応器に連続的に物質が流入し、反応器から連続的に生成物が流出する方法を指す。また、「触媒を固定化」とは、触媒それ自体は液相に溶解せず、固相表面で反応を触媒するように、固体の触媒を反応器の内部空間に担持(好ましくは充填)させることを指す。本発明において、目的物は塩基であるドネペジルであり、通常、これに塩酸を加えることで、日本では「アリセプト」という製品名で販売されているドネペジル塩酸塩を製造することができる。
【0032】
【化7】
【0033】
ここで、図1は、本発明のドネペジルの製造方法の一例を利用して、ドネペジル塩酸塩を製造する場合を示すフローチャートである。図1は、後述する実施例1であり、ステップAおよびステップBの両方をフロー法によって連続的に行う場合を例として挙げている。図1に示す例において、フロー反応開始のステップから反応液収集のステップまでが本発明のドネペジルの製造方法に相当し、これら2つのステップを経てドネペジルが製造される。図1に示す例では、得られたドネペジルを用いて最終的にドネペジル塩酸塩を製造している。
【0034】
これに対し、図2は、従来のバッチ法でドネペジル塩酸塩を製造する場合を示すフローチャートであり、図2(a)は特許第5001151号公報(特許文献2)の実施例1に従ってドネペジル中間体(式(V)で表される1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジン)を得るまでを示す。図2(a)に示すように、バッチ法では、アルドール縮合反応により1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを得るために、(1)仕込み、(2)攪拌、(3)昇温、(4)滴下、(5)反応、(6)冷却、(7)濾取、(8)水での結晶洗浄、(9)メタノールでの結晶洗浄、(10)乾燥、のステップを経る必要がある。
【0035】
図2(b)は国際公開第2007/043440号(特許文献4)の実施例1に従ってドネペジル中間体(1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジン)を用いてドネペジル塩酸塩を得るまでを示している。図2(b)に示すように、バッチ法では、1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンから水素化反応によってドネペジルを得るために、(11)仕込み、(12)水素置換、(13)反応、(14)濾過、のステップを経る必要がある。
【0036】
図1および図2を対比すると明らかなように、本発明のドネペジルの製造方法によれば、バッチ法では必要となる反応後の中和、分離操作、中間体の単離、精製工程を省略でき、バッチ法と比較して格段に少ない工程数でドネペジルを製造することができ、労働力、作業時間を大幅に削減することができる。さらに、本発明のドネペジルの製造方法によれば、精密に反応時間および温度を制御しながら必要なときに必要な量を製造することができるという利点もある。
【0037】
〔1〕アルドール縮合ステップ(ステップA)
本発明のドネペジルの製造方法において、触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によってアルドール縮合ステップ(ステップA)を連続的に行う場合、原料溶液としては5,6-ジメトキシ-1-インダノンと1-ベンジル-4-ホルミルピペリジンを溶媒に完全に溶解させたものを使用し、一定流量での送液が好ましいが、送液ポンプを用いて送液することがより好ましい。
【0038】
原料溶液の濃度は、原料が溶解する濃度以下であれば良いが、1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンが系内で析出する可能性があるため、好ましくは0.5M以下であり、より好ましくは0.01~0.2Mであり、特に好ましくは0.1Mである。
【0039】
5,6-ジメトキシ-1-インダノンに対する1-ベンジル-4-ホルミルピペリジンの当量は0.8~2当量の範囲内であることが好ましく、1.0~1.2当量の範囲内であることがより好ましく、1.05~1.1当量の範囲内であることが特に好ましい。5,6-ジメトキシ-1-インダノンに対する1-ベンジル-4-ホルミルピペリジンの当量が0.8当量未満である場合には、未反応の5,6-ジメトキシ-1-インダノンが残留する、不純物が増加するなどの虞があり、また、5,6-ジメトキシ-1-インダノンに対する1-ベンジル-4-ホルミルピペリジンの当量が2当量を超える場合には、未反応の1-ベンジル-4-ホルミルピペリジンが残留する、不純物が増加するなどの虞がある。
【0040】
原料溶液に用いられる溶媒としては、一般的な有機合成反応に使用する有機溶媒であればよく、特に制限されるものではないが、1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンはトルエン、テトラヒドロフランへの溶解性が高い、また、後述するようにアルドール縮合ステップにおいて触媒として塩基性樹脂を用いる場合には、塩基性樹脂がアルコール系溶媒により膨潤し活性化されるという理由からは、トルエン、テトラヒドロフラン、アルコール系溶媒を単独または混合溶媒として使用することが好ましい。また、後述するようにアルドール縮合ステップにおいて触媒として塩基性樹脂を用いる場合には、樹脂の膨潤の度合いを制御でき、水の効果により、樹脂触媒の活性および寿命が向上するという利点があることから、溶媒は水を含んでいてもよい。溶媒が水を含む場合、その量は0.1~20%(v/v)であることが好ましく、1~10%(v/v)であることがより好ましく、2~5%(v/v)であることがさらに好ましく、2%(v/v)であることが特に好ましい。
【0041】
触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によってアルドール縮合ステップ(ステップA)を連続的に行う場合、原料溶液の送液量としては、アルドール縮合反応に用いる触媒の量、反応器の容積などに応じ、任意の量を送液するようにすればよく、特に制限されるものではない。
【0042】
アルドール縮合反応を行うために用いられる反応器としては、フロー法によって連続的に反応を行い得るように、反応器の内部空間と外部空間とを連通する流入口および流出口を有するものであればその形状は特に制限されないが、筒状の反応器を用いることが好ましく、後述する実施例で例示するような市販のカラムを好適に用いることができる。反応器の材質は、使用する溶媒に対し耐性を有するものであれば特に制限されないが、ステンレスまたはガラスが好ましい。
【0043】
触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によってアルドール縮合ステップ(ステップA)を連続的に行う場合、反応器は、流入口、流出口をいずれの方向に設置して送液してもよい。反応器の流入口および流出口には、送液のためのチューブ(送液チューブ)が取り付けられ、その送液チューブの材質も、使用する溶媒に対し耐性を有するものであれば特に制限されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはステンレスが好ましい。
【0044】
アルドール縮合反応の反応温度は、反応器および送液チューブを加熱または冷却することで制御でき、この目的のために水浴、油浴、氷浴、恒温槽、カラムオーブンなどを用いることができる。触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によってアルドール縮合ステップ(ステップA)を連続的に行う場合、反応温度は0℃から溶媒の沸点以下であればよいが、20~80℃の範囲内であることが好ましい。
【0045】
触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によってアルドール縮合ステップ(ステップA)を連続的に行う場合、アルドール縮合反応の触媒としては、塩基性樹脂を用いることが好ましい。本発明のように触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって連続的にアルドール縮合反応を行う場合には、従来のバッチ法でのアルドール縮合反応の触媒としては通常用いられない塩基性樹脂を触媒として用いることが好ましい。
【0046】
触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によってアルドール縮合ステップ(ステップA)を連続的に行う場合に触媒として用いられる塩基性樹脂は、強塩基性、弱塩基性のいずれであってもよいが、弱塩基性と比較して、強塩基性の方が反応性が高かったことから、強塩基性であることが好ましい。また、この塩基性樹脂は、架橋剤で架橋された樹脂であることが好ましい。
【0047】
また塩基性樹脂は、市販されているという理由から、第三級アミノ基または第四級アンモニウム基が導入された樹脂であることが好ましい。ここで、第三級アミノ基は、
【0048】
【化8】
【0049】
(上記式中、R、Rは、水素以外のどのような置換基であってもよい。)
という状態の基を指し、また、第四級アンモニウム基は、
【0050】
【化9】
【0051】
(上記式中、R、R、Rは、水素以外のどのような置換基であってもよい。)
という状態の基を指すものとする。中でも、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアンモニウム基またはジアルキルアルコールアンモニウム基が導入された樹脂であることがより好ましく、ジメチルアミノ基、トリメチルアンモニウム基またはジメチルエタノールアンモニウム基が導入された樹脂であることがさらに好ましい。また、対アニオンとして水酸化物イオンを持つ第四級アンモニウム基が導入された樹脂は強塩基性の樹脂となり、第三級アミノ基が導入された樹脂は弱塩基性の樹脂となるが、上述のように弱塩基性と比較して強塩基性の方が反応性が高かったことから、第三級アミノ基よりも第四級アンモニウム基の方が好ましい。
【0052】
また、塩基性樹脂は、製造・入手の容易性、適した粒径・形状、本反応条件に耐え得る強度を有するなどの理由からは、ジメチルアミノ基、トリメチルアンモニウム基またはジメチルエタノールアンモニウム基が導入され、ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン樹脂、または、ポリアクリル酸エステル樹脂であることが好ましく、ポリアクリル酸エステル樹脂に比べ、ポリスチレン樹脂の方が反応性が高かったという理由からは、ジメチルアミノ基、トリメチルアンモニウム基またはジメチルエタノールアンモニウム基が導入され、ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン樹脂であることがより好ましい。
【0053】
このような塩基性樹脂は、たとえば、陰イオン交換樹脂Amberlyst(商標) A26(Sigma-Aldrich、542571-1KG)、陰イオン交換樹脂IRA900(オルガノ、アンバーライト(商標)IRA900J)、陰イオン交換樹脂IRA958(オルガノ、アンバーライト(商標)IRA958)、陰イオン交換樹脂WA30(三菱化学、ダイヤイオン(商標))、ORLITE DS-5(オルガノ)、陰イオン交換樹脂IRA910(オルガノ、アンバーライト(商標)IRA910CT)、陰イオン交換樹脂IRA904(オルガノ、アンバーライト(商標)IRA904)などの市販品を好適に用いることができる。
【0054】
触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によってアルドール縮合ステップ(ステップA)を連続的に行う場合に用いられる触媒は、粒状物、球状物、カートリッジに内包されて市販されているものなどその形状は特に制限されるものではなく、また、任意の大きさのものを用いることができるが、粒状物である場合、用いるカラムから触媒が流出せずに、本反応条件に耐え得る強度を有するという理由から、その粒径は好ましくは30μm~3mmである。
【0055】
〔2〕水素化ステップ(ステップB)
本発明のドネペジルの製造方法において、触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって水素化ステップ(ステップB)を連続的に行う場合、1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンの溶媒としては、アルドール縮合ステップについて上述したのと同様の溶媒を好ましく用いることができる。
【0056】
触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって水素化ステップ(ステップB)を連続的に行う場合、1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンの送液量としては、水素化反応に用いる触媒の量、反応器の容積などに応じ、任意の量を送液するようにすればよく、特に制限されるものではない。また、アルドール縮合ステップについて上述したのと同様に、一定流量での送液が好ましいが、送液ポンプを用いて送液することがより好ましい。
【0057】
水素化反応を行うために用いられる反応器およびそれに取り付けられる送液チューブとしては、アルドール縮合ステップについて上述したのと同様の反応器、送液チューブを好ましく用いることができる。
【0058】
触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって水素化ステップ(ステップB)を連続的に行う場合も、反応器は、流入口、流出口をいずれの方向に設置して送液してもよいが、水素の比重が空気よりも小さいため、下から上に流すと流速に関係なく系外へ排出されるという理由からは、流入口を上側、流出口を下側にし、地面に対して垂直に設置して送液することが好ましい。
【0059】
水素化反応の反応温度も、アルドール縮合反応について上述したのと同様に、反応器および送液チューブを加熱または冷却することで制御でき、この目的のために水浴、油浴、氷浴、恒温槽、カラムオーブンなどを用いることができる。触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって水素化ステップ(ステップB)を連続的に行う場合、反応温度は0℃から溶媒の沸点以下であればよいが、触媒活性を十分維持しつつ、不純物である脱ベンジル体の生成を抑制するという理由からは、15~55℃の範囲内であることが好ましく、25~55℃の範囲内であることがより好ましい。
【0060】
触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって水素化ステップ(ステップB)を連続的に行う場合、水素化反応の触媒としては、パラジウム系触媒、白金系触媒およびニッケル系触媒からなる群から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。これら触媒は、炭素、ポリアルキルシランおよび金属酸化物のいずれかまたは複数の組み合わせを固相担体として、固相担持されたものであることが好ましい。このような触媒の好ましい例としては、ジメチルポリシリル-パラジウムアルミナ、ジメチルポリシリル-パラジウムシリカゲル、白金炭素、白金アルミナ、ジメチルポリシリル-白金炭素などが挙げられる。このような水素化反応の触媒としても、後述する実施例で例示するように、市販品を好適に用いることができる。
【0061】
触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって水素化ステップ(ステップB)を連続的に行う場合に用いられる触媒は、粒状物、球状物、ペレット状物、カートリッジに内包されて市販されているものなどその形状は特に制限されるものではなく、また、任意の大きさのものを用いることができるが、粒状物である場合、用いるカラムから触媒が流出するのを防ぐという理由から、その粒径は好ましくは30μm~3mmである。
【0062】
また、触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって水素化ステップ(ステップB)を連続的に行う場合、上述の触媒に、共充填剤を添加してもよい。共充填剤を添加した場合、共充填剤を添加しない場合と比較して、水素圧力を制御できる、カラムからの触媒の流出を防ぐことができるという利点がある。このような共充填剤としては、1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジン、溶媒、触媒と反応または溶解しないものであれば使用できるが、粒径・形状の選択肢が豊富で、市販されているという理由からは、アルミナ、ガラスビーズ、セルロース、セライトなどが好ましい。
【0063】
触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって水素化ステップ(ステップB)を連続的に行う場合、水素化反応は反応器の容積と送液量により任意の水素線速度で水素を流すことができるが、線速度が大きいと反応効率が低下するという理由からは、反応器内の線速度は0.02~0.95cm/secの範囲内であることが好ましい。
【0064】
触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって水素化ステップ(ステップB)を連続的に行う場合、反応器内の圧力は、反応器の大きさにより任意に設定できるが、圧力が下記設定値以下の条件であると、未反応の1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンが残留する傾向にあり、圧力が下記設定値以上の条件であると、脱ベンジル体が増加するという理由からは、18~120kPaの範囲内であることが好ましい。
【0065】
本発明のドネペジルの製造方法は、触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によってアルドール縮合ステップ(ステップA)のみを連続的に行ってもよいし、触媒を固定化した反応器を用いたフロー法によって水素化ステップ(ステップB)のみを連続的に行ってもよい。触媒を固定化した反応器を用いたフロー法で連続的に行う場合、アルドール縮合ステップで得られた生成物を単離精製した後水素化反応を行ってもよいし、単離精製することなく水素化ステップに用いてもよい。
【0066】
本発明のドネペジルの製造方法は、好ましくは、前記アルドール縮合反応を行うための第1反応器と、前記水素化反応を行うための第2反応器とを連結し、前記第1反応器において前記アルドール縮合ステップをフロー法によって連続的に行って得られた1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを前記第2反応器に供し、前記第2反応器において前記水素化ステップをフロー法によって連続的に行う。このようにアルドール縮合ステップ(ステップA)および水素化ステップ(ステップB)の両方を、フロー法によって連続的に行うようにすることで、原料溶液から、精密に反応時間および温度を制御しながら必要なときに必要な量のドネペジルを製造することができ、反応後の中和、分離操作、中間体の単離、精製工程を省略できるため、労働力、作業時間を大幅に削減することができる。
【0067】
本発明の方法で製造されたドネペジルは、医薬品として用いるために塩酸塩化するが、その塩酸塩化工程においてドネペジルは医薬品として適切な純度に精製される。塩酸塩化工程は公知の方法(特許文献3、4に記載の方法)またはそれに準ずる方法で行うことができるが、溶媒としてアセトニトリルまたは水を含むアセトニトリル、塩酸源としては濃塩酸を用いる方法が精製効果が高く、好ましい。
【0068】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例
【0069】
<実施例1>
100gの強塩基性スチレン系陰イオン交換樹脂Amberlyst(商標) A26(Sigma-Aldrich、542571-1KG)(以下、「陰イオン交換樹脂A26」)を水170mL×3、エタノール170mL×3、テトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒170mL×3の順で洗浄した。アルドール縮合ステップをフロー法によって連続的に行うための第1反応器として、直径23mm、長さ300mmのステンレス製カラム(東京理化器械)に100gの前記陰イオン交換樹脂A26を充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(東京理化器械)に設置した。これを第1カラムとし、送液ポンプ1(フロム製、UI-22-410D)に繋げたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製チューブを第1カラム下部に接続し、第1カラム上部にはアルドール縮合反応実施後の溶液を次の水素化ステップをフロー法によって連続的に行うための第2反応器である、水素化反応を行うカラムに誘導するためのチューブを取り付けた。
【0070】
12.47gの5% 白金アルミナ(エヌ・イーケムキャット、AA1501)と90.52gの活性アルミナ(富士フイルム和光純薬、カラムクロマトグラフ用、019-08295、約75μm)を量り取り、均一に混合した後、直径23mm、長さ300mmのステンレス製カラム(東京理化器械)に充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(東京理化器械)に設置した。これを第2カラムとした。第2カラム上部は、2本の流路が接続可能な形状であり、片方の流路は第1カラム上部に接続してあるチューブの出口側と繋ぎ、もう一方の流路には送液ポンプ2(フロム製、U1-22-110D)に繋がったチューブに予め水素用流路を合流させたチューブを繋いだ。第2カラム下部にチューブを繋ぎ、チューブの先は反応液を貯蔵する容器に導入した。その後、第1カラムのカラムオーブンを55℃に、第2カラムのカラムオーブンを45℃に設定し、加温した。
【0071】
送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒を毎分2.4mLの流量で、送液ポンプ2からテトラヒドロフランを毎分1.4mLの流量で1時間送液した。
【0072】
1時間送液後、送液を継続しながら水素を0.95cm/sec(毎分240mL)で1時間送気した。水素は水素ボンベから供給し、供給量は水素ボンベに接続したレギュレーターおよびマスフローコントローラー(ブルックス、SLA5850S/H2型)で制御した。
【0073】
19.22gの5,6-ジメトキシ-1-インダノン(100mmol)と21.98gの1-ベンジル-4-ホルミルピペリジン(108mmol)をテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒1000mLに完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を調製し、送液ポンプ1より毎分2.4mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0074】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に5分間フロー溶液を回収し、そこから500μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で25mLにすることで調製した。反応開始7時間後のドネペジルの純度は93.9%であった。得られた反応液全量をHPLCにて定量を行い、33.6gのドネペジルを得た(収率:88%)。
【0075】
得られた反応液からドネペジル22.7g相当の反応液を分割し、減圧下、濃縮した。残渣を180mLの3%含水アセトニトリルに溶解し、70℃に加熱後、6.3mLの濃塩酸を加え、3時間攪拌した。ドネペジル塩酸塩を種晶として加え、0℃まで冷却した。得られた結晶を濾過し、乾燥を行い、18.3gのドネペジル塩酸塩を得た(収率:74%)。得られたドネペジル塩酸塩の純度は99.6%であった。
【0076】
<実施例2>
10gの陰イオン交換樹脂A26を水17mL×3、エタノール17mL×3、テトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=90:10:2の混合溶媒17mL×3の順で洗浄した。アルドール縮合ステップをフロー法によって連続的に行うための第1反応器として、直径10mm、長さ100mmのステンレス製カラム(東京理化器械、CLM-1010)に6.8gの前記陰イオン交換樹脂A26を充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(東京理化器械、XCR-1000)に設置した。これを第1カラムとし、送液ポンプ1(フロム製、UI-22-110)に繋げたPTFE製チューブを第1カラム下部に接続し、第1カラム上部にはアルドール縮合反応実施後の溶液を次の水素化ステップをフロー法によって連続的に行うための第2反応器である、水素化反応を行うカラムに誘導するためのチューブを取り付けた。
【0077】
0.46gの5% 白金炭素(エヌ・イーケムキャット、5% Ptカーボン粉末(含水品))と6.0gの活性アルミナ(実施例1と同じ)を量り取り、均一に混合した後、直径10mm、長さ100mmのステンレス製カラム(東京理化器械、CLM-1010)に充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(東京理化器械、XCR-1000)に設置した。これを第2カラムとした。第2カラム上部は、2本の流路が接続可能な形状であり、片方の流路は第1カラム上部に接続してあるチューブの出口側と繋ぎ、もう一方の流路には送液ポンプ2(フロム製、KP-22-01)に繋がったチューブに予め水素用流路を合流させたチューブを繋いだ。第2カラム下部にチューブを繋ぎ、チューブの先は反応液を貯蔵する容器に導入した。その後、第1カラムのカラムオーブンを55℃に、第2カラムのカラムオーブンを25℃に設定し、加温した。送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒を毎分1.0mLの流量で25分間送液した。
【0078】
送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒を毎分0.15mLの流量で、送液ポンプ2からテトラヒドロフランを毎分0.09mLの流量で送液しながら、水素を0.32cm/sec(毎分15mL)で1時間送気した。水素は水素ボンベから供給し、供給量は水素ボンベに接続したレギュレーターおよびマスフローコントローラー(KOFLOC、D8500MC)で制御した。
【0079】
9.6gの5,6-ジメトキシ-1-インダノン(50mmol)と10.7gの1-ベンジル-4-ホルミルピペリジン(52.5mmol)をテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒500mLに完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を調製し、送液ポンプ1より毎分0.15mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0080】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから200μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で10mLにすることで調製した。
【0081】
反応開始6時間後のドネペジルの純度は95.3%、反応開始21時間後のドネペジルの純度は94.3%であった。
【0082】
回収したフロー溶液224mLを減圧下で濃縮し、残渣を45mLのトルエンに溶解し、25mLの水で一回洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、6.8gのドネペジルの粗体を得た。得られたドネペジルの粗体0.91gを7.6mLのアセトニトリルに溶解し、0.26mLの水を加えた。この溶液をHPLCにて定量したところ、ドネペジルが0.77g含まれていた。この溶液を70℃で30分攪拌し、その後0.20mLの濃塩酸を加え、3時間攪拌し、種晶を加え、0℃まで冷却した。得られた結晶を濾過し、乾燥を行い、0.59gのドネペジル塩酸塩を得た(収率:70%)。得られたドネペジル塩酸塩の純度は99.7%であった。
【0083】
<実施例3>
110.7gの陰イオン交換樹脂A26を水185mL×3、エタノール185mL×3、テトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒185mL×3の順で洗浄した。アルドール縮合ステップをフロー法によって連続的に行うための第1反応器として、直径23mm、長さ300mmのステンレス製カラム(実施例1と同じ)に103.0gの前記陰イオン交換樹脂A26を充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(実施例1と同じ)に設置した。これを第1カラムとし、送液ポンプ1(実施例1と同じ)に繋げたPTFE製チューブを第1カラム下部に接続し、第1カラム上部にはアルドール縮合反応実施後の溶液を次の水素化ステップをフロー法によって連続的に行うための第2反応器である、水素化反応を行うカラムに誘導するためのチューブを取り付けた。
【0084】
4.3gのジメチルポリシリル-パラジウムアルミナ(日揮触媒化成、PPD-100)と101.5gの活性アルミナ(実施例1と同じ)を量り取り、均一に混合した後、直径23mm、長さ300mmのステンレス製カラム(実施例1と同じ)に充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(実施例1と同じ)に設置した。これを第2カラムとした。第2カラム上部は、2本の流路が接続可能な形状であり、片方の流路は第1カラム上部に接続してあるチューブの出口側と繋ぎ、もう一方の流路には送液ポンプ2(実施例1と同じ)に繋がったチューブに予め水素用流路を合流させたチューブを繋いだ。第2カラム下部にチューブを繋ぎ、チューブの先は反応液を貯蔵する容器に導入した。その後、第1カラムのカラムオーブンを55℃に、第2カラムのカラムオーブンを25℃に設定し、加温した。
【0085】
送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒を毎分2.4mLの流量で、送液ポンプ2からテトラヒドロフランを毎分1.4mLの流量で1時間送液した。
【0086】
1時間送液後、送液を継続しながら水素を0.36cm/sec(毎分90mL)で1時間送気した。水素は水素ボンベから供給し、供給量は水素ボンベに接続したレギュレーターおよびマスフローコントローラー(実施例1と同じ)で制御した。
【0087】
57.7gの5,6-ジメトキシ-1-インダノン(300mmol)と64.0gの1-ベンジル-4-ホルミルピペリジン(315mol)をテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒3000mLに完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を調製し、送液ポンプ1より毎分2.4mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0088】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから200μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で10mLにすることで調製した。反応開始7時間後のドネペジルの純度は92.8%であった。
【0089】
回収したフロー溶液2000mLを減圧下で濃縮し、残渣を180mLのトルエンに溶解し、150mLの水で二回洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、42.8gのドネペジルの粗体を得た。
【0090】
得られたドネペジルの粗体1.0gを9.7mLのアセトニトリルに溶解し、0.3mLの水を加えた。この溶液を70℃で30分間攪拌し、その後0.26mLの濃塩酸を加え、3時間攪拌し、種晶を加え、0℃まで冷却した。得られた結晶を濾過し、乾燥を行い、0.79gのドネペジル塩酸塩を得た(収率:72%)。得られたドネペジル塩酸塩の純度は99.6%であった。
【0091】
<実施例4>
10gの陰イオン交換樹脂A26を水17mL×3、エタノール17mL×3、テトラヒドロフラン:エタノール=90:10の混合溶媒17mL×3の順で洗浄した。直径10mm、長さ100mmのステンレス製カラム(実施例2と同じ)に7.4gの前記陰イオン交換樹脂A26を充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(実施例2と同じ)に設置した。送液ポンプ1(実施例2と同じ)に繋げたPTFE製チューブをカラム下部に接続し、カラム上部にチューブを取り付け、アルドール縮合反応実施後の溶液を回収する容器に導入した。その後、カラムオーブンを20℃に設定し、加温した。送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:エタノール=90:10の混合溶媒を毎分0.3mLの流量で1時間送液した。
【0092】
1.92gの5,6-ジメトキシ-1-インダノン(10mmol)と2.19gの1-ベンジル-4-ホルミルピペリジン(10.8mmol)をテトラヒドロフラン:エタノール=90:10の混合溶媒100mLに完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を調製し、送液ポンプ1より毎分0.3mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0093】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから200μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で10mLにすることで調製した。
【0094】
反応開始6時間後の1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンの純度は85.5%であった。
【0095】
<実施例5>
30gの強塩基性スチレン系陰イオン交換樹脂IRA900(オルガノ、アンバーライト(商標)IRA900J)(以下、「陰イオン交換樹脂IRA900」)を水17mL×3、エタノール17mL×3、テトラヒドロフラン17mL×3、トルエン17mL×3の順で洗浄した。直径10mm、長さ300mmのステンレス製カラム(東京理化器械、CLM-1030)に22.0gの前記陰イオン交換樹脂IRA900を充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(東京理化器械、XCR-1000 300L)に設置した。送液ポンプ1(実施例2と同じ)に繋げたPTFE製チューブをカラム下部に接続し、カラム上部にチューブを取り付け、アルドール縮合反応実施後の溶液を回収する容器に導入した。その後、カラムオーブンを80℃に設定し、加温した。送液ポンプ1からトルエンを毎分0.3mLの流量で1時間送液した。
【0096】
1.92gの5,6-ジメトキシ-1-インダノン(10mmol)と2.19gの1-ベンジル-4-ホルミルピペリジン(10.8mmol)をトルエンに完全に溶解させ、0.05Mとした溶液を200mL調製し、送液ポンプ1より毎分0.3mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0097】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、NMRにて純度測定を行った。サンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから正確に4mL抜き取り、濃縮・乾燥後、重クロロホルムに溶解し、NMRを測定し、純度測定を行った。
【0098】
反応開始7時間後の1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンの純度は87.0%であった。
【0099】
<実施例6>
10gの陰イオン交換樹脂A26を水17mL×3、エタノール17mL×3、テトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒17mL×3の順で洗浄した。直径10mm、長さ100mmのステンレス製カラム(実施例2と同じ)に6.3gの前記陰イオン交換樹脂A26を充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(実施例2と同じ)に設置した。送液ポンプ1(実施例2と同じ)に繋げたPTFE製チューブをカラム下部に接続し、カラム上部にチューブを取り付け、アルドール縮合反応実施後の溶液を回収する容器に導入した。その後カラムオーブンを60℃に設定し、加温した。送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒を毎分0.15mLの流量で1時間送液した。
【0100】
1.92gの5,6-ジメトキシ-1-インダノン(10mmol)と2.19gの1-ベンジル-4-ホルミルピペリジン(10.8mmol)をテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒100mLに完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を調製し、送液ポンプ1より毎分0.15mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0101】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから200μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で10mLにすることで調製した。
【0102】
反応開始7時間後の1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンの純度は88.3%であった。
【0103】
<実施例7>
10gの陰イオン交換樹脂A26を水17mL×3、エタノール17mL×3、テトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒17mL×3の順で洗浄した。直径10mm、長さ100mmのステンレス製カラム(実施例2と同じ)に6.4gの前記陰イオン交換樹脂A26を充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(実施例2と同じ)に設置した。送液ポンプ1(実施例2と同じ)に繋げたPTFE製チューブをカラム下部に接続し、カラム上部にチューブを取り付け、アルドール縮合反応実施後の溶液を回収する容器に導入した。その後、カラムオーブンを55℃に設定し、加温した。送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒を毎分0.15mlの流量で35分間送液した。
【0104】
11.54gの5,6-ジメトキシ-1-インダノン(60mmol)と13.19gの1-ベンジル-4-ホルミルピペリジン(64.8mmol)をテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒600mLに完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を調製し、送液ポンプ1より毎分0.15mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0105】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから200μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で10mLにすることで調製した。
【0106】
反応開始74時間後の1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンの純度は91.8%であった。
【0107】
収集した516.3gの反応液(1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジン定量値として20.4g)に4.0gの5% 白金炭素を加え、攪拌下、室温にて14時間、バッチ法で水素化反応を行った。水素化反応後、触媒をセライト濾過により除去し、HPLC定量値21.2gでドネペジルを純度95.4%で得た。
【0108】
<実施例8>
0.28gのジメチルポリシリル-パラジウムアルミナPPD-100(実施例3と同じ)と6.4gの活性アルミナ(実施例1と同じ)を量り取り、均一に混合した後、直径10mm、長さ100mmのステンレス製カラム(実施例2と同じ)に充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(実施例2と同じ)に設置した。カラム上部は、2本の流路が接続可能な形状であり、片方の流路は送液ポンプ1(実施例2と同じ)に繋がったPTFE製チューブを繋ぎ、もう一方の流路には送液ポンプ2(実施例2と同じ)に繋がったチューブにあらかじめ水素用流路を合流させたチューブを繋いだ。カラム下部にチューブを繋ぎ、チューブの先は反応液を貯蔵する容器に導入した。その後、カラムオーブンを25℃に設定した。送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒を毎分0.15mLの流量で、送液ポンプ2からテトラヒドロフランを毎分0.09mLの流量で1時間送液した。
【0109】
1時間送液後、送液を継続しながら水素を0.13cm/sec(毎分6mL)で1時間送気した。水素は水素ボンベから供給し、供給量は水素ボンベに接続したレギュレーターおよびマスフローコントローラー(実施例2と同じ)で制御した。
【0110】
1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを3.77g(10mmol)量り取り、テトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒100mLに完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を調製し、送液ポンプ1より毎分0.15mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0111】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから200μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で10mLにすることで調製した。反応開始6時間後のドネペジルの純度は93.3%であった。
【0112】
<実施例9>
0.46gのジメチルポリシリル-パラジウムアルミナPPD-60(日揮触媒化成)と6.4gの活性アルミナ(実施例1と同じ)を量り取り、均一に混合した後、直径10mm、長さ100mmのステンレス製カラム(実施例2と同じ)に充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(実施例2と同じ)に設置した。カラム上部は、2本の流路が接続可能な形状であり、片方の流路は送液ポンプ1(実施例2と同じ)に繋がったPTFE製チューブを繋ぎ、もう一方の流路には送液ポンプ2(実施例2と同じ)に繋がったチューブに予め水素用流路を合流させたチューブを繋いだ。カラム下部にチューブを繋ぎ、チューブの先は反応液を貯蔵する容器に導入した。その後、カラムオーブンを25℃に設定した。送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒を毎分0.15mLの流量で、送液ポンプ2からテトラヒドロフランを毎分0.09mLの流量で1時間送液した。
【0113】
1時間送液後、送液を継続しながら水素を0.13cm/sec(毎分6mL)で1時間送気した。水素は水素ボンベから供給し、供給量は水素ボンベに接続したレギュレーターおよびマスフローコントローラー(実施例2と同じ)で制御した。
【0114】
1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを3.77g(10mmol)量り取り、テトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒100mLに完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を調製し、送液ポンプ1より毎分0.15mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0115】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから200μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で10mLにすることで調製した。反応開始7時間後のドネペジルの純度は94.7%であった。
【0116】
<実施例10~12>
10gの陰イオン交換樹脂A26を水17mL×3、エタノール17mL×3、下記表1にそれぞれ記載の溶媒組成の混合溶媒17mL×3の順で洗浄した。直径10mm、長さ100mmのステンレス製カラム(実施例2と同じ)に6.4gの前記陰イオン交換樹脂A26を充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(実施例2と同じ)に設置した。送液ポンプ1(実施例2と同じ)に繋げたPTFE製チューブをカラム下部に接続し、カラム上部にチューブを取り付け、アルドール縮合反応実施後の溶液を回収する容器に導入した。その後、カラムオーブンを55℃に設定し、加温した。送液ポンプ1から、下記表1にそれぞれ記載の溶媒組成の混合溶媒を毎分0.15mLの流量で1時間送液した。
【0117】
3.84gの5,6-ジメトキシ-1-インダノン(20mmol)と4.27gの1-ベンジル-4-ホルミルピペリジン(21mmol)を、下記表1にそれぞれ記載の溶媒組成の混合溶媒に完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を調製し、送液ポンプ1より毎分0.15mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0118】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから200μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で10mLにすることで調製した。
【0119】
各実施例の反応開始5時間後の1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンの純度は下記表1に示す通りである。
【0120】
【表1】
【0121】
<実施例13>
0.28gのジメチルポリシリル-パラジウムアルミナPPD-100(実施例3と同じ)と5.0gの活性アルミナ(実施例1と同じ)を量り取り、均一に混合した後、直径10mm、長さ100mmのガラス製カラム(実施例2と同じ)に充填し、蓋を閉めた。カラム下部は、2本の流路が接続可能な形状であり、片方の流路は送液ポンプ1(実施例2と同じ)に繋がったPTFE製チューブを繋ぎ、もう一方の流路には送液ポンプ2(実施例2と同じ)に繋がったチューブに予め水素用流路を合流させたチューブを繋いだ。カラム上部にチューブを繋ぎ、チューブの先は反応液を貯蔵する容器に導入した。送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:2-プロパノール=90:10の混合溶媒を毎分0.3mLの流量で、送液ポンプ2からテトラヒドロフランを毎分0.06mLの流量で1時間送液した。
【0122】
室温にて1時間送液後、送液を継続しながら水素を0.13cm/sec(毎分6mL)で1時間送気した。水素は水素ボンベから供給し、供給量は水素ボンベに接続したレギュレーターおよびマスフローコントローラー(実施例2と同じ)で制御した。
【0123】
1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンを11.3g(30mmol)量り取り、テトラヒドロフラン:2-プロパノール=90:10混合溶媒に完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を300mL調製し、送液ポンプ1より毎分0.3mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0124】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから200μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で10mLにすることで調製した。反応開始6時間後のドネペジルの純度は98.1%であった。
【0125】
<実施例14~16>
水素流量および送液ポンプ2の送液量を変更した以外は実施例13と同様の操作を行い、水素化ステップの水素流量の検討を行った。それぞれの実施例において反応開始6時間後のドネペジルの純度を表2に記載した。
【0126】
【表2】
【0127】
<実施例17>
10gの陰イオン交換樹脂A26を水17mL×3、エタノール17mL×3、テトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒17mL×3の順で洗浄した。アルドール縮合ステップをフロー法によって連続的に行うための第1反応器として、直径10mm、長さ100mmのステンレス製カラム(実施例2と同じ)に6.5g充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(実施例2と同じ)に設置した。これを第1カラムとし、送液ポンプ1(実施例2と同じ)に繋がったPTFE製チューブを第1カラム下部に接続し、第1カラム上部にはアルドール縮合反応実施後の溶液を次の水素化ステップをフロー法によって連続的に行うための第2反応器である、水素化反応を行うカラムに誘導するためのチューブを取り付けた。
【0128】
1.7gの5% 白金炭素(実施例2と同じ)と5.4gの活性アルミナ(実施例1と同じ)を量り取り、均一に混合した後、直径10mm、長さ100mmのステンレス製カラム(実施例2と同じ)に充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(実施例2と同じ)に設置した。これを第2カラムとした。第2カラム上部は、2本の流路が接続可能な形状であり、片方の流路は第1カラム上部に接続してあるチューブの出口側と繋ぎ、もう一方の流路には送液ポンプ2(実施例2と同じ)に繋がったチューブに予め水素用流路を合流させたチューブを繋いだ。第2カラム下部にチューブを繋ぎ、チューブの先は反応液を貯蔵する容器に導入した。その後、第1カラムのカラムオーブンを55℃に、第2カラムのカラムオーブンを25℃に設定した。送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒を毎分0.15mLの流量で、送液ポンプ2からテトラヒドロフランを毎分0.09mLの流量で1時間送液した。
【0129】
1時間送液後、送液を継続しながら水素を0.32cm/sec(毎分15mL)で1時間送気した。水素は水素ボンベから供給し、供給量は水素ボンベに接続したレギュレーターおよびマスフローコントローラー(実施例2と同じ)で制御した。
【0130】
1.92gの5,6-ジメトキシ-1-インダノン(10mmol)と2.19gの1-ベンジル-4-ホルミルピペリジン(10.8mmol)をテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2混合溶媒100mLに完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を調製し、送液ポンプ1より毎分0.15mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0131】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから200μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で10mLにすることで調製した。反応開始5時間後のドネペジルの純度は95.6%であった。
【0132】
<実施例18~20>
水素化ステップの触媒共充填剤とその充填量を変更した以外は実施例17と同様の操作を行い、水素化ステップの共充填剤の検討を行った。それぞれの実施例において反応開始5時間後のドネペジルの純度を表3に記載した。
【0133】
【表3】
【0134】
<実施例21>
弱塩基性スチレン系陰イオン交換樹脂WA30(三菱化学、ダイヤイオン(商標))(以下、「陰イオン交換樹脂WA30」)を200mL太口ナスフラスコに20.2g量り取り、水100mLと水酸化ナトリウム3.97gを加え、エバポレーターを用いて常温常圧で15時間攪拌した。攪拌後の前記陰イオン交換樹脂WA30を濾取し、水17mL×3、エタノール17mL×3、テトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒17mL×3の順で洗浄した。直径10mm、長さ100mmのステンレス製カラム(実施例2と同じ)に洗浄した前記陰イオン交換樹脂WA30を5.9g充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(実施例2と同じ)に設置した。送液ポンプ1(実施例2と同じ)に繋げたPTFE製チューブをカラム下部に接続し、カラム上部にチューブを取り付け、アルドール縮合反応実施後の溶液を回収する容器に導入した。その後、カラムオーブンを55℃に設定し、加温した。送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒を毎分0.15mLの流量で1時間送液した。
【0135】
0.961gの5,6-ジメトキシ-1-インダノン(5.0mmol)と1.097gの1-ベンジル-4-ホルミルピペリジン(5.4mmol)をテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒50mLに完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を調製し、送液ポンプ1より毎分0.15mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0136】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから200μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で10mLにすることで調製した。
【0137】
反応開始5時間後の1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンの純度は86.2%であった。
【0138】
<実施例22>
強塩基性アクリル系陰イオン交換樹脂IRA958(オルガノ、アンバーライト(商標)IRA958)(以下、「陰イオン交換樹脂IRA958」)を200mL太口ナスフラスコに12.2g量り取り、水100mLと水酸化ナトリウム2.6gを加え、エバポレーターを用いて常温常圧で15時間攪拌した。攪拌後の前記陰イオン交換樹脂IRA958を濾取し、水17mL×3、エタノール17mL×3、テトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒17mL×3の順で洗浄した。直径10mm、長さ100mmのステンレス製カラム(実施例2と同じ)に洗浄した前記陰イオン交換樹脂IRA958を6.0g充填し、蓋を閉め、カラムオーブン(実施例2と同じ)に設置した。送液ポンプ1(実施例2と同じ)に繋げたPTFE製チューブをカラム下部に接続し、カラム上部にチューブを取り付け、アルドール縮合反応実施後の溶液を回収する容器に導入した。その後、カラムオーブンを55℃に設定し、加温した。送液ポンプ1からテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒を毎分0.15mLの流量で1時間送液した。
【0139】
1.345gの5,6-ジメトキシ-1-インダノン(7.0mmol)と1.536gの1-ベンジル-4-ホルミルピペリジン(7.6mmol)をテトラヒドロフラン:2-プロパノール:蒸留水=88:10:2の混合溶媒70mLに完全に溶解させ、0.1Mとした溶液を調製し、送液ポンプ1より毎分0.15mLの流量で送液した。この送液開始時間を反応開始時間とした。
【0140】
反応開始2時間後より一定時間サンプリングを行い、HPLCにて純度測定を行った。HPLC測定のためのサンプルは、容器に10分間フロー溶液を回収し、そこから200μL抜き取り、希釈溶液(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1)で10mLにすることで調製した。
【0141】
反応開始5時間後の1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イリデン]メチルピペリジンの純度は67.1%であった。
【0142】
今回開示された実施の形態及び実施例、実験例は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。
図1
図2