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特許7452959カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、及び樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240312BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20240312BHJP
   C08K 7/22 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G02B5/20 101
C08L33/06
C08K7/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019150047
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2021032944
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 武広
(72)【発明者】
【氏名】武内 弘明
(72)【発明者】
【氏名】井上 朋之
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-075691(JP,A)
【文献】特開2006-295125(JP,A)
【文献】特開2008-242175(JP,A)
【文献】特開2017-032716(JP,A)
【文献】特開2018-166159(JP,A)
【文献】特開2012-093690(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130807(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/051794(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/163439(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0003423(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0068076(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C08L 33/06
C08K 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、透光性の着色層と、隣接する前記着色層の双方に隙間なく接しつつ隣接する前記着色層を隔て、前記着色層の屈折率よりも屈折率の低い隔壁(ただし、ブラックマトリックス層に該当するものを除く)と、を備えるカラーフィルターの製造方法であって、
前記基板上に、前記隔壁に相当する位置に空隙を有するように配置された複数の着色層を形成する着色層形成工程と、
前記空隙に、気泡を含有する樹脂組成物、又は気泡を含有する樹脂組成物の硬化物が充填された前記隔壁を形成する隔壁形成工程と、を含み、
前記隔壁が、(A)樹脂と(B)シェル部分が樹脂により構成される中空粒子とを含む樹脂組成物、又は前記樹脂組成物の硬化物からなり、
記樹脂組成物、又は前記樹脂組成物の硬化物(ただし、前記樹脂組成物が溶剤を含む場合は、溶剤を含む液状の組成物から溶剤を除去したものである)の無機成分の含有量が5質量%以下である、カラーフィルターの製造方法。
【請求項2】
基板上に、透光性の着色層と、隣接する前記着色層の双方に隙間なく接しつつ隣接する前記着色層を隔て、前記着色層の屈折率よりも屈折率の低い隔壁(ただし、ブラックマトリックス層に該当するものを除く)と、を備えるカラーフィルターの製造方法であって、
前記基板上に、前記隔壁の前駆膜を形成する前駆膜形成工程と、
前記前駆膜上の前記隔壁に相当する位置に、マスクを形成するマスク形成工程と、
前記マスク及び前記前駆膜に対してアッシング処理を行い、前記前駆膜の前記マスクで被覆されていない部分を除去しつつ、前記前駆膜の前記マスクで被覆されている部分を前記隔壁として残存させるアッシング工程と、
前記マスクを除去する工程と、
前記隔壁で区画された領域内に前記着色層を形成する着色層形成工程と、を含み、
前記前駆膜が、気泡を含有する樹脂組成物、又は気泡を含有する樹脂組成物の硬化物からなり、
前記前駆膜が、(A)樹脂と(B)シェル部分が樹脂により構成される中空粒子とを含む樹脂組成物、又は前記樹脂組成物の硬化物からなり、
記樹脂組成物、又は前記樹脂組成物の硬化物(ただし、前記樹脂組成物が溶剤を含む場合は、溶剤を含む液状の組成物から溶剤を除去したものである)の無機成分の含有量が5質量%以下である、カラーフィルターの製造方法。
【請求項3】
前記(A)樹脂が、下記式(a1)で表される構造単位と、下記式(a2)で表される構造単位とを含む樹脂である、請求項1又は2に記載のカラーフィルターの製造方法。
【化1】
(式(a1)及び(a2)中、Rは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、Rは、単結合、又は炭素原子数1以上5以下のアルキレン基であり、Rは、構造中にエポキシ基を含む炭素原子数2以上30以下の1価の有機基であり、Rは、2価の炭化水素基である。)
【請求項4】
前記式(a1)で表される構造単位と、前記式(a2)で表される構造単位とを含む樹脂の全構造単位中の、前記式(a1)で表される構造単位の割合が20モル%以上である、請求項に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項5】
前記式(a1)で表される構造単位と、前記式(a2)で表される構造単位とを含む樹脂の全構造単位中の、前記式(a2)で表される構造単位の割合が3モル%以上40モル%以下である、請求項3又は4に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項6】
前記(B)中空粒子の平均粒径が20nm以上300nm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項7】
前記樹脂組成物中の前記(A)樹脂の含有割合が20質量%以上90質量%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂組成物中の前記(B)中空粒子の含有割合が10質量%以上80質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項9】
基板上に、透光性の着色層と、隣接する前記着色層の双方に隙間なく接しつつ隣接する前記着色層を隔て、前記着色層の屈折率よりも屈折率の低い隔壁(ただし、ブラックマトリックス層に該当するものを除く)と、を備えるカラーフィルターであって、
前記隔壁が、気泡を含有する樹脂組成物、又は気泡を含有する樹脂組成物の硬化物からなり、
前記隔壁が、(A)樹脂と(B)シェル部分が樹脂により構成される中空粒子とを含む樹脂組成物、又は前記樹脂組成物の硬化物からなり、
記樹脂組成物、又は前記樹脂組成物の硬化物(ただし、前記樹脂組成物が溶剤を含む場合は、溶剤を含む液状の組成物から溶剤を除去したものである)の無機成分の含有量が5質量%以下である、カラーフィルター。
【請求項10】
前記(A)樹脂が、下記式(a1)で表される構造単位と、下記式(a2)で表される構造単位とを含む樹脂である、請求項に記載のカラーフィルター。
【化2】
(式(a1)及び(a2)中、Rは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、Rは、単結合、又は炭素原子数1以上5以下のアルキレン基であり、Rは、構造中にエポキシ基を含む炭素原子数2以上30以下の1価の有機基であり、Rは、2価の炭化水素基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルターの製造方法と、当該カラーフィルターの製造方法により製造され得るカラーフィルターと、前述のカラーフィルターの製造方法において好適に使用し得る樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固体撮像素子や、液晶表示装置等の種々の画像表示装置において、マトリックス状に配置された赤(R)、緑(G)、青(B)色等の着色層と、前述の着色層を仕切る隔壁とからなるカラーフィルターが使用されている。
【0003】
かかるカラーフィルターとして、例えば、マトリックス状に配置された着色層と、複数の着色層を仕切る隔壁としてのフッ素樹脂からなる低屈折率層とを備える、固体撮像装置用のカラーフィルターが提案されている(特許文献1)。かかるカラーフィルターは、簡素化された製造工程により製造可能であって、カラーフィルターに対して斜めに入射する光に起因する混色を良好に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-295125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のカラーフィルターは、簡素化された製造工程により製造され得る利点の一方で、隔壁が撥液性に富むフッ素樹脂からなることによる不具合がある。具体的には、特許文献1に記載の方法では、マトリックス状に配置された着色層の間の隙間に、スピンコート法によりフッ素樹脂を含む塗布液を充填して隔壁を形成する方法が開示されている。しかし、特許文献1に記載の方法では、フッ素樹脂の撥液性に起因して、隙間のサイズによってはフッ素樹脂を含む塗布液が隙間に良好に侵入しにくい場合がある。
【0006】
また、隔壁の材質には、低屈折率であることとともに、隔壁製造時の加工や、カラーフィルター製造時に不良が発生した場合の除去を容易にする目的で、アッシングにより容易に除去可能であることが望まれる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、必ずしも隔壁の材質としてフッ素樹脂を用いる必要がなく、且つ、アッシングにより容易に除去可能である材質を用いて、低屈折率の隔壁を形成できるカラーフィルターの製造方法と、当該カラーフィルターの製造方法により製造され得るカラーフィルターと、前述のカラーフィルターの製造方法において好適に使用し得る樹脂組成物とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、気泡を含有し、且つ無機成分の含有量が5質量%以下である樹脂又は樹脂組成物を用いて隔壁を形成することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の第1の態様は、
基板上に、透光性の着色層と、隣接する着色層の双方に隙間なく接しつつ隣接する着色層を隔て、着色層の屈折率よりも屈折率の低い隔壁と、を備えるカラーフィルターの製造方法であって、
基板上に、隔壁に相当する位置に空隙を有するように配置された複数の着色層を形成する着色層形成工程と、
空隙に、気泡を含有する樹脂、気泡を含有する樹脂組成物、気泡を含有する樹脂の硬化物、又は気泡を含有する樹脂組成物の硬化物を充填して隔壁を形成する隔壁形成工程と、を含み、
樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物の無機成分の含有量が5質量%以下である、カラーフィルターの製造方法である。
【0010】
本発明の第2の態様は、
基板上に、透光性の着色層と、隣接する前記着色層の双方に隙間なく接しつつ隣接する着色層を隔て、着色層の屈折率よりも屈折率の低い隔壁と、を備えるカラーフィルターの製造方法であって、
基板上に、隔壁の前駆膜を形成する前駆膜形成工程と、
前駆膜上の隔壁に相当する位置に、マスクを形成するマスク形成工程と、
マスク及び前駆膜に対してアッシング処理を行い、前駆膜のマスクで被覆されていない部分を除去しつつ、前駆膜のマスクで被覆されている部分を隔壁として残存させるアッシング工程と、
マスクを除去する工程と、
隔壁で区画された領域内に着色層を形成する着色層形成工程と、を含み、
前駆膜が、気泡を含有する樹脂、気泡を含有する樹脂組成物、気泡を含有する樹脂の硬化物、又は気泡を含有する樹脂組成物の硬化物からなり、
樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物の無機成分の含有量が5質量%以下である、カラーフィルターの製造方法である。
【0011】
本発明の第3の態様は、基板上に、透光性の着色層と、隣接する着色層の双方に隙間なく接しつつ隣接する着色層を隔て、着色層の屈折率よりも屈折率の低い隔壁と、を備えるカラーフィルターであって、
隔壁が、気泡を含有する樹脂、気泡を含有する樹脂組成物、気泡を含有する樹脂の硬化物、又は気泡を含有する樹脂組成物の硬化物からなり、
樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物の無機成分の含有量が5質量%以下である、カラーフィルターである。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1の態様、又は第2の態様にかかるカラーフィルターの製造方法であって、隔壁、又は前駆膜が、(A)樹脂と(B)シェル部分が樹脂により構成される中空粒子とを含む樹脂組成物、又は当該樹脂組成物の硬化物からなる方法において用いられる、
(A)樹脂と、(B)シェル部分が樹脂により構成される中空粒子と、(S)有機溶剤とを含む樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、必ずしも隔壁の材質としてフッ素樹脂を用いる必要がなく、且つ、アッシングにより容易に除去可能である材質を用いて、低屈折率の隔壁を形成できるカラーフィルターの製造方法と、当該カラーフィルターの製造方法により製造され得るカラーフィルターと、前述のカラーフィルターの製造方法において好適に使用し得る樹脂組成物とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の態様にかかるカラーフィルターの製造方法を模式的に示す図である。
図2】第2の態様にかかるカラーフィルターの製造方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪第1の態様≫
第1の態様にかかるカラーフィルターの製造方法は、
基板上に、透光性の着色層と、隣接する着色層の双方に隙間なく接しつつ隣接する着色層を隔て、着色層の屈折率よりも屈折率の低い隔壁と、を備えるカラーフィルターの製造方法であって、
基板上に、隔壁に相当する位置に空隙を有するように配置された複数の着色層を形成する着色層形成工程と、
空隙に、気泡を含有する樹脂、気泡を含有する樹脂組成物、気泡を含有する樹脂の硬化物、又は気泡を含有する樹脂組成物の硬化物を充填して隔壁を形成する隔壁形成工程と、を含み、
樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物の無機成分の含有量が5質量%以下である、カラーフィルターの製造方法である。
【0016】
以下、図1を参照しつつ、第1の態様にかかるカラーフィルターの製造方法について説明する。
【0017】
<着色層形成工程>
図1(a)に示されるように、上記の方法では、まず、基板10上に、隔壁12に相当する位置に空隙を有するように配置された複数の着色層11が形成される。
基板10としては特に限定されず、カラーフィルター1が適用される装置の種類に応じて、公知の基板10から適宜選択される。
【0018】
典型的には、基板10上に、マトリックス状に配置された赤(R)、緑(G)、青(B)等の着色層11が基板10のサイズに応じて、それぞれ複数形成される。マトリックス状に配置された複数の着色層11を形成する方法は特に限定されない。
赤(R)、緑(G)、青(B)の着色層11を基板10上にマトリックス状に配置して形成する方法としては、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の感光性組成物を用いて、フォトリソグラフィー法による各色の着色層の形成操作を3回繰り返し行う方法が挙げられる。
【0019】
形成される着色層11の厚さは、特に限定されず、カラーフィルター1が適用される装置の種類や性能等を考慮して適宜定められる。着色層11の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上5μm以下がより好ましい。
【0020】
着色層11間の空隙の幅は、特に限定されず、カラーフィルター1が適用される装置の種類や性能等を考慮して適宜定められる。着色層11間の空隙の幅は、例えば、0.1μm以上5μm以下が好ましく、0.3μm以上2μm以下がより好ましい。
着色層11間の空隙の幅が、上記の範囲内であると、続く隔壁形成工程での、空隙への隔壁12の材料の充填が容易である。
【0021】
<隔壁形成工程>
隔壁形成工程では、図1(b)に示されるように、着色層形成工程において形成された着色層11間の空隙に、気泡を含有する樹脂、気泡を含有する樹脂組成物、気泡を含有する樹脂の硬化物、又は気泡を含有する樹脂組成物の硬化物を充填して隔壁12を形成する。
ここで、空隙に充填される樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物は、気泡を含有する(すなわち、隔壁12中に気泡が含有される。)。樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物が気泡を含有することにより、着色層よりも屈折率が低い隔壁12を形成できる。
【0022】
樹脂又は樹脂組成物は、樹脂及び溶剤を含む液状の組成物を空隙に充填した後、溶剤を加熱等の方法により除去することにより空隙内に充填されてもよい。空隙への樹脂又は樹脂組成物の充填が容易であることから、液状の組成物に含まれる樹脂は、フッ素を含まない樹脂であるのが好ましい。液状の組成物に含まれる樹脂としては、これらに限定されないが、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、環状オレフィン樹脂等を用いることができる。
【0023】
また、樹脂又は樹脂組成物は、硬化性の材料の硬化物であってもよい。この場合、未硬化の状態の樹脂前駆体を含む液状の組成物を空隙に充填した後、空隙に充填された液状の組成物を、加熱又は露光等の方法により硬化させることで、空隙内に樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物を充填することができる。
【0024】
樹脂前駆体として用いることができる硬化性の材料としては、透光性の硬化物を与える材料であれば特に限定されない。硬化性の材料は、熱硬化性材料であっても、光硬化性材料であってもよい。また、硬化性材料は、必要に応じて硬化剤とともに使用されるのが好ましい。硬化剤としては、感光性の硬化剤や、感熱性の硬化剤を用いることもできる。
【0025】
熱硬化性の材料の典型的な例としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、オキセタン化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。これらの中では、硬化性が良好であること等から、エポキシ化合物、及びオキセタン化合物が好ましく、エポキシ化合物がより好ましい。エポキシ化合物としては、多官能エポキシ化合物が好ましい。ここで多官能エポキシ化合物は、1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物である。
【0026】
光硬化性材料の典型的な例としては、種々の(メタ)アクリレートのような、不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。かかる光硬化性の化合物としては、単官能化合物と多官能化合物とがある。
【0027】
単官能化合物としては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
多官能化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能化合物や、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
気泡は、樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物からなるマトリックス中に、シェル(外殻)を備えない状態で含まれてもよく、シェルを備える状態で含まれていてもよい。樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物中での気泡のサイズの調整や、気泡の安定した分散が容易であることから、シェルを備える気泡が樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物からなるマトリックス中に含まれるのが好ましい。シェルを備える気泡は、中空粒子を樹脂又は樹脂組成物中に加えることにより、樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物中に包含される。
後述する通り、隔壁12を構成する樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物は、無機成分を少量しか含まない。このため、上記の中空粒子としては、シェル部分が樹脂により構成される中空粒子が好ましく使用される。
【0030】
樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物中に気泡を含ませる方法としては、例えば、周知のマイクロバブル発生装置やナノバブル発生装置を用いて、微小な気泡を隔壁12の形成に用いられる液状の組成物に吹き込む方法や、熱分解や化学反応により気体を発生させる発泡剤を隔壁12の形成に用いられる液状の組成物に含ませ、液状の組成物中で発泡を生じさせる方法等が挙げられる。
【0031】
隔壁12の気泡の含有量は特に限定されず、隔壁12の屈折率を考慮して適宜決定される。
【0032】
隔壁12を構成する樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物の無機成分の含有量は5質量%以下であり、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0質量%であるのが特に好ましい。
無機成分の含有量が5質量%以下であることにより、隔壁12を構成する材料をアッシングにより容易に除去することができる。着色層11も無機成分を含まないかほとんど含まない場合、カラーフィルター1形成後に着色層11又は隔壁12に不良が発見された場合に、アッシングにより着色層11と隔壁12とを除去して、基板10を再利用することができる。
他方、隔壁12を構成する樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物が無機成分を多量に含む場合、無機成分に由来する残渣が大量に発生することによって、アッシングによる隔壁の除去は困難である。
【0033】
隔壁12について説明した理由と同様の理由により、アッシングを容易に実施できる観点から、着色層11も、例えば銅フタロシアニンのような無機成分を含まないのが好ましい。
【0034】
アッシングは、基板10に対して許容できない程度のダメージを与えない方法であれば特に限定されない。
好ましいアッシング処理方法としては酸素プラズマを用いる方法が挙げられる。基板10上の着色層11及び隔壁12を酸素プラズマを用いてアッシングするためには、公知の酸素プラズマ発生装置を用いて酸素プラズマを発生させ、当該酸素プラズマを基板10上の着色層11及び隔壁12に対して照射すればよい。
【0035】
酸素プラズマの発生に用いられるガスとしては、従来、酸素とともにプラズマ処理に用いられている種々のガスを混合することができる。かかるガスとしては、例えば、窒素ガス、水素ガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
酸素プラズマを用いるアッシング条件は、特に限定されないが、処理時間は、例えば10秒以上20分以下の範囲であり、好ましくは20秒以上18分以下の範囲であり、より好ましくは30秒以上15分以下の範囲である。
【0036】
着色層11間の空隙に、樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物を充填する方法は特に限定されない。例えば、基板10全面に、樹脂又は樹脂組成物や、硬化性の材料を含む液状の組成物を塗布した後、空隙に充填された液状の組成物から溶媒を除去したり、空隙に充填された硬化性の材料を硬化させたりすることにより、空隙内に樹脂又は樹脂組成物が充填される。
液状の組成物を基板10全面に塗布する方法としては、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いる方法が好ましく、スピンナーを用いる方法がより好ましい。
また、インクジェット印刷法等の印刷法によって、空隙にのみ液状の組成物を供給してもよい。
【0037】
液状の組成物の塗布後に、着色層11の空隙以外の部分の表面を被覆する塗布膜が形成された場合、アッシング等によって、前述の塗布膜を除去することができる。
【0038】
以上説明した方法において、隔壁12を構成する材料としては、屈折率の低さや、気泡のサイズや分布にムラが少ないことや、アッシングによる除去が容易であること等から、(A)樹脂と(B)シェル部分が樹脂により構成される中空粒子とを含む樹脂組成物が好ましい。この好ましい樹脂組成物については詳細に後述する。
【0039】
以上説明した方法により、基板10上に、着色層11と、着色層11間の空隙に充填された隔壁12とを形成することにより、着色層11と隔壁12とからなるカラーフィルターが得られる。
【0040】
<第2の態様>
第2の態様にかかるカラーフィルターの製造方法は、
基板上に、透光性の着色層と、隣接する着色層の双方に隙間なく接しつつ隣接する着色層を隔て、着色層の屈折率よりも屈折率の低い隔壁と、を備えるカラーフィルターの製造方法であって、
基板上に、隔壁の前駆膜を形成する前駆膜形成工程と、
前駆膜上の隔壁に相当する位置に、マスクを形成するマスク形成工程と、
マスク及び前駆膜に対してアッシング処理を行い、前駆膜のマスクで被覆されていない部分を除去しつつ、前駆膜のマスクで被覆されている部分を隔壁として残存させるアッシング工程と、
マスクを除去する工程と、
隔壁で区画された領域内に着色層を形成する着色層形成工程と、を含み、
前駆膜が、気泡を含有する樹脂、気泡を含有する樹脂組成物、気泡を含有する樹脂の硬化物、又は気泡を含有する樹脂組成物の硬化物からなり、
樹脂、樹脂組成物、樹脂の硬化物、又は樹脂組成物の硬化物の無機成分の含有量が5質量%以下である、カラーフィルターの製造方法である。
【0041】
なお、前駆膜の材質は、最終的に形成される隔壁の材質と同様である。このため、第2の態様にかかるカラーフィルターの製造方法における前駆膜の材質と、隔壁の材質とは、第1の態様にかかるカラーフィルターの製造方法について説明した隔壁の材質と同様である。
【0042】
以下、図2を参照しつつ、第2の態様にかかるカラーフィルターの製造方法について説明する。
【0043】
<前駆膜形成工程>
前駆膜形成工程では、図2(a)に示されるように、まず、基板10上に、隔壁12の前駆膜13を形成する。前駆膜13を形成するためには、第1の態様にかかるカラーフィルターの製造方法において隔壁12の形成に好適に用いられる、前述の液状の組成物が用いられる。液状の組成物を基板10に塗布した後、塗布膜から必要に応じて溶剤を加熱等の方法により除去したり、塗布膜を加熱又は露光等の方法により硬化させることにより前駆膜13が形成される。
【0044】
液状の組成物を基板10に塗布する方法としては、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いる方法が好ましく、スピンナーを用いる方法がより好ましい。
また、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法等の印刷法によって、塗布膜を形成することもできる。
【0045】
前駆膜13の膜厚は、着色層11の厚さと同様である。着色層11の厚さと、前駆膜13の厚さとは、例えば、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上5μm以下がより好ましい。
【0046】
<マスク形成工程>
マスク形成工程では、図2(b)に示されるように、前駆膜13上の隔壁12に相当する位置に、マスク14を形成する。続くアッシング工程では、前駆膜13のマスク14で被覆された位置のみが、アッシングされずに残存し隔壁12となる。
【0047】
マスク14は、アッシングに対する耐久性を有する材料からなってもよく、アッシングされる材質からなってもよい。前者の場合、続くアッシング工程後に、隔壁12とマスク14との積層物(不図示)が基板上に残存する。かかる積層物から、溶剤やアルカリ等を用いる処理によりマスク14のみを除去することによって、基板10上に隔壁が形成される。後者の場合については、アッシング工程として説明する。なお、図2(c)及び図2(d)には、アッシングされる材質からなるマスク14を用いた場合を示す。
【0048】
<アッシング工程、及びマスク除去工程>
アッシング工程では、マスク14及び前駆膜13に対してアッシング処理を行い、前駆膜13のマスク14で被覆されていない部分を除去しつつ、前駆膜13のマスク14で被覆されている部分を隔壁12として残存させる。
【0049】
マスク除去工程では、マスク14を除去する。マスクの除去は、アッシング工程後、又はアッシング工程と同時に行われる。
【0050】
ここでは、アッシングされる材質からなるマスク14を用いた場合について説明する。この場合、アッシングによりマスク14も徐々に消失していくため、アッシング工程と、マスク除去工程図2(c)に、アッシングされる材質からなるマスク14を備える前駆膜13に対してアッシングを開始した状態を示す。図2(c)では、アッシングにより前駆膜13のマスク14で被覆されていない位置の膜厚が減少するとともに、マスク14の厚さもアッシングにより減少している。
図2(c)に示される状態から、さらにアッシングを継続することにより、図2(d)に示されるように、前駆膜13のマスク14で被覆されていない位置が完全に除去されるとともに、マスク14もアッシングにより除去され、前駆膜13のマスク14で被覆された位置のみが、アッシングされずに残存し隔壁12となる。
【0051】
アッシングの条件は、所望する状態の隔壁12を形成できる限り特に限定されない。
好ましいアッシング処理方法としては酸素プラズマを用いる方法が挙げられる。酸素プラズマの発生に用いられるガスとしては、従来、酸素とともにプラズマ処理に用いられている種々のガスを混合することができる。かかるガスとしては、例えば、窒素ガス、水素ガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
酸素プラズマを用いるアッシング条件は、特に限定されないが、処理時間は、例えば10秒以上20分以下の範囲であり、好ましくは20秒以上18分以下の範囲であり、より好ましくは30秒以上15分以下の範囲である。
【0052】
<着色層形成工程>
着色層形成工程では、図2(e)に示されるように、隔壁12で区画された領域内に着色層11を形成する。着色層形成工程では、典型的には、赤(R)、緑(G)、青(B)の着色層11が、隔壁12で区画された領域内に形成される。かかる着色層11の形成方法としては、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の感光性組成物を用いて、フォトリソグラフィー法による各色の着色層の形成操作を3回繰り返し行う方法が挙げられる。また、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の着色層11形成用のインクを用いて、インクジェット印刷法等の印刷法によって、隔壁12で区画された領域内に着色層11を形成することもできる。
【0053】
≪樹脂組成物≫
上記の第1の態様にかかるカラーフィルターの製造方法、及び第2の態様にかかるカラーフィルターの製造方法において、隔壁又は前駆膜の形成に用いられる、樹脂組成物としては、(A)樹脂と、(B)シェル部分が樹脂により構成される中空粒子と、(S)有機溶剤とを含む樹脂組成物が好ましい。以下、好ましい樹脂組成物に含まれる必須成分及び任意成分について説明を続ける。
【0054】
<(A)樹脂>
(A)樹脂は特に限定されない。(A)樹脂としては、アッシング含め隔壁形成時の加工性が良好であることから(メタ)アクリル樹脂が好ましい。(メタ)アクリル樹脂としては、アッシングにより良好に除去しやすい点と、エポキシ基間の硬化反応によって耐溶剤性や耐薬品性に優れる架橋物を与えることから、下記式(a1)で表される構造単位、及び下記式(a2)で表される構造単位を含む樹脂が好ましい。
このため、第1の態様にかかるカラーフィルターの製造方法、及び第2の態様にかかるカラーフィルターの製造方法において、形成される隔壁又は前駆膜は、(B)シェル部分が樹脂により構成される中空粒子とともに、(A)樹脂として、下記式(a1)で表される構造単位、及び下記式(a2)で表される構造単位を含む樹脂の架橋物を含むのが好ましい。
【化1】
(式(a1)及び(a2)中、Rは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、Rは、単結合、又は炭素原子数1以上5以下のアルキレン基であり、Rは、構造中にエポキシ基を含む炭素原子数2以上30以下の1価の有機基であり、Rは、2価の炭化水素基である。)
【0055】
以下、式(a1)で表される構造単位について「構造単位A1」とも記し、式(a2)で表される構造単位について「構造単位A2」とも記す。
【0056】
〔構造単位A1〕
上記式(a1)で表される構造単位A1は、R中にエポキシ基を含み、これにより樹脂としての硬化性を発現する。
【0057】
として用いることのできるアルキレン基の炭素原子数1以上5以下であり、好ましく1以上4以下、より好ましくは1以上3以下、さらに好ましくは1又は2である。アルキレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0058】
は構造中にエポキシ基を含む炭素原子数2以上30以下の1価の有機基であるが、当該エポキシ基は脂環式エポキシ基も包含し、またRはその構造中にエポキシ基を構成する酸素原子以外のヘテロ原子やハロゲン原子を含んでいてもよい。
当該ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられ、また、当該ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0059】
構造単位A1は、例えばエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルを重合反応に供することにより形成することができる。
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、鎖状脂肪族エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであっても、後述するような、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、芳香族基を含んでいてもよい。エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの中では、鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルや、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
なお、構造単位A1は、樹脂中に、ブロック状に存在していてもよく、ランダムに存在していてもよい。
【0060】
芳香族基を含み、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、4-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、2-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、及び2-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの例としては、エポキシアルキル(メタ)アクリレート、及びエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレート等のような、エステル基(-O-CO-)中のオキシ基(-O-)に鎖状脂肪族エポキシ基が結合する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルが有する鎖状脂肪族エポキシ基は、鎖中に1又は複数のオキシ基(-O-)を含んでいてもよい。鎖状脂肪族エポキシ基の炭素原子数は、特に限定されないが、3以上20以下が好ましく、3以上15以下がより好ましく、3以上10以下が特に好ましい。
【0062】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキル(メタ)アクリレート;2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシ-n-プロピル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、5-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート、6-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0063】
脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば下記式(a1-1)~(a1-15)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、下記式(a1-1)~(a1-5)で表される化合物が好ましく、下記式(a1-1)~(a1-3)で表される化合物がより好ましい。また、これら各化合物に関し、脂環に対するエステル基の酸素原子の結合部位はここで示されているものに限られず、一部位置異性体を含んでいてもよい。
【0064】
【化2】
【0065】
【化3】
【0066】
【化4】
【0067】
上記式中、Ra1は水素原子又はメチル基を示し、Ra2は炭素原子数1以上6以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra3は炭素原子数1以上10以下の2価の炭化水素基を示し、tは0以上10以下の整数を示す。Ra2としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra3としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0068】
(A)樹脂における構造単位A1の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(A)樹脂中の構造単位A1の含有量は、硬化性の点から、樹脂の全構造単位に対して、例えば20モル%以上であり、20モル%以上95モル%以下が好ましく、30モル%以上90モル%以下がより好ましく、50モル%以上85モル%以下がさらに好ましい。
【0069】
〔構造単位A2〕
構造単位A2は、前述の式(a2)で表される構造単位である。
【0070】
式(a2)中、Rは2価の炭化水素基である。Rとしての炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても、芳香族炭化水素基であっても、脂肪族部分と芳香族部分とを有する炭化水素基であってもよい。樹脂の硬化性の点からは、Rは2価の脂肪族炭化水素基であるのが好ましい。Rが2価の脂肪族炭化水素基である場合、脂肪族炭化水基の構造は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であっても、これらを組み合わせた構造であってもよく、直鎖状が好ましい。
【0071】
としての炭化水素基の炭素原子数は特に限定されない。炭化水素基が脂肪族炭化水素基である場合、炭素原子数は1以上20以下が好ましく、2以上10以下がより好ましく、2以上6以下が特に好ましい。炭化水素基が、芳香族基であるか、脂肪族部分と芳香族部分とを有する炭化水素基である場合、炭素原子数は6以上20以下が好ましく、6以上12以下がより好ましい。
【0072】
2価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1.1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ペンタデカン-1,15-ジイル基、ヘキサデカン-1,16-ジイル基、ヘプタデカン-1,17-ジイル基、オクタデカン-1,18-ジイル基、ノナデカン-1,19-ジイル基、及びイコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。
これらの中では、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ペンタデカン-1,15-ジイル基、ヘキサデカン-1,16-ジイル基、ヘプタデカン-1,17-ジイル基、オクタデカン-1,18-ジイル基、ノナデカン-1,19-ジイル基、及びイコサン-1,20-ジイル基が好ましく、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、及びデカン-1,10-ジイル基がより好ましく、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、及びヘキサン-1,6-ジイル基がより好ましい。
【0073】
2価の芳香族炭化水素基の具体例としては、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、及びナフタレン-2,7-ジイル基等が挙げられ、p-フェニレン基、m-フェニレン基が好ましく、p-フェニレン基がより好ましい。
【0074】
構造単位A2は、下記式(a-II)で表される(メタ)アクリル酸エステルを、他の構造単位を与える単量体と共重合させることにより、樹脂中に組み入れられる。
構造単位A2は、樹脂中に、ブロック状に存在していてもよく、ランダムに存在していてもよい。
【化5】
(式(a-II)中、R及びRは、式(a2)と同様である。)
【0075】
構造単位A2を与える(メタ)アクリル酸エステルの好適な具体例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシフェニルアクリレート、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート、3-ヒドロキシフェニルアクリレート、及び3-ヒドロキシフェニルメタクリレート等が挙げられる。
これらの中では、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、4-ヒドロキシフェニルアクリレート及び4-ヒドロキシフェニルメタクリレートが好ましい。
【0076】
(A)樹脂における構造単位A2の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
(A)樹脂中の構造単位A2の含有量は、硬化性の点から、樹脂の全構造単位に対して、3モル%以上40モル%以下が好ましく、5モル%以上30モル%以下がより好ましく、10モル%以上25モル%以下がさらに好ましい。
【0077】
〔その他の構造単位〕
(A)樹脂は、上述の構造単位A1及び構造単位A2のみから構成されてもよいが、本発明の目的を阻害しない範囲において、前述の構造単位A1、及び構造単位A2以外にその他構造単位を含んでいてもよい。
【0078】
その他の構造単位としては、例えば、上記以外の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位が挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルは、下記式(a-III)で表されるものであって、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。
【0079】
【化6】
【0080】
上記式(a-III)中、Ra4は、水素原子又はメチル基である。Ra5は、活性水素を含む基を有さない有機基である。
活性水素を含む基としては、例えば、水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0081】
a5の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、シリル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、アリールオキシアルキル基、アリールチオアルキル基、N,N-ジ置換アミノ基(-NRR’:R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基を示す)等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0082】
a5としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又は複素環基が好ましく、これらの基は、ハロゲン原子、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよい。また、これらの基がアルキレン部分を含む場合、アルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
【0083】
アルキル基が、直鎖状又は分岐鎖状のものである場合、その炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上15以下がより好ましく、1以上10以下が特に好ましい。好適なアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。
【0084】
a5が、脂環式基、又は脂環式基を含む基である場合、好適な脂環式基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等単環の脂環式基や、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、及びテトラシクロドデシル基等の多環の脂環式基が挙げられる。
【0085】
その他の構造単位を与える、上記の(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体としては、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらのモノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0086】
アリル化合物としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0087】
ビニルエーテル類としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0088】
ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0089】
スチレン類としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0090】
(A)樹脂が、前述の構造単位A1及び構造単位A2以外にその他構造単位を含む場合、(A)樹脂中の構造単位A1及び構造単位A2の総量は、(A)樹脂中の全構造単位に対して80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上が特に好ましい。
【0091】
〔(A)樹脂の製造方法〕
以上説明した(A)樹脂の製造方法は特に限定されない。一般的には、前述の構造単位A1、及び構造単位A2を与える単量体と、必要に応じてその他の構造単位を与える単量体とを、それぞれ所定量混合した後、適当な溶剤中にて、重合開始剤の存在下に、例えば、50℃以上120℃以下の温度範囲において重合を行うことにより、(A)樹脂が得られる。(A)樹脂は、有機溶媒との溶液として得られることが多いが、溶液として得られた(A)樹脂を、そのまま樹脂組成物に配合してもよいし、一旦固形状のポリマーとして析出させた(A)樹脂を樹脂組成物に配合してもよい。
【0092】
上記の方法により得られる(A)樹脂の重量平均分子量は、5000以上が好ましく、7500以上100000以下がより好ましく、10000以上80000以下が特に好ましい。重量平均分子量は、GPCにより測定される、ポリスチレン換算の分子量である。樹脂の重量平均分子量がある程度大きいことにより、耐溶剤性や、耐熱分解性に優れる硬化物を形成しやすい。
【0093】
上記(A)樹脂の含有量は組成物の全固形分を基準として、20質量%以上90質量%以下とすることが好ましく、30質量%以上85質量%以下とすることがより好ましく、40質量%以上80質量%以下とすることが特に好ましい。
このような範囲に設定することにより、耐溶剤性に優れる硬化物を得やすくなる。
【0094】
<(B)中空粒子>
本実施形態の樹脂組成物に含まれる(B)中空粒子は、シェル部分が樹脂により構成されることが特徴である。
【0095】
この(B)中空粒子は、外殻となるシェル部分と内部の空隙によって構成される粒子であるが、当該シェル部分は、単層であっても複数の層であってもよく、シェル部分が複数の層となる場合は、各々の層がことなる樹脂成分により構成されていてもよい。
また、(B)中空粒子は、前述の(A)樹脂等との親和性を高めるため、公知の手法により表面処理が施されていてもよい。
【0096】
具体的な(B)中空粒子の例としては、W/O/Wエマルジョンを懸濁重合したポリエステル系多孔粒子、アクリル系多孔粒子、シード重合法で作られるスチレン-アクリル系の中空ラテックス、塩化ビニリデン-アクリロニトリル系、アクリロニトリル系の熱膨張性マイクロカプセル等が挙げられる。
また、上市されている中空粒子として、テクポリマー(登録商標) NH(積水化成品工業株式会社)等も使用できる。
【0097】
上記(B)中空粒子の平均粒径は、隔壁の屈折率等を考慮して適宜設定できるが、例えば、20nm以上300nm以下の範囲であり、25nm以上200nm以下の範囲が好ましく、30nm以上150nm以下の範囲がさらに好ましい。
上記(B)中空粒子のシェル層の厚さは、(B)中空粒子の平均粒径をX[nm]としたときに、例えば0.03×X以上0.60×X以下の範囲に設定され、0.05×X以上0.50×X以下の範囲に設定されることが好ましく、0.10×X以上0.40×X以下の範囲に設定されることがより好ましい。
より典型的には、上記(B)中空粒子の平均粒径は、30nm以上150nm以下の範囲に設定され、(B)中空粒子のシェル層の厚さは、5nm以上30nm以下の範囲に設定されることが好ましい。
このような範囲に設定されることで、樹脂組成物を硬化させた際の機械強度と、屈折率の低さの双方のバランスをとることができる。
なお、(B)中空粒子の平均粒径は例えば動的光散乱法を用いて測定することができ、(B)中空粒子のシェル層の厚さは、無作為に選んだ粒子50個について、その断面を観察することで測定することができる。
【0098】
上記(B)中空粒子の含有量は樹脂組成物の全固形分を基準として、10質量%以上80質量%以下とすることが好ましく、15質量%以上70質量%以下とすることがより好ましく、20質量%以上60質量%以下とすることが特に好ましい。
このような範囲に設定することにより、耐溶剤性に優れる硬化物を得やすくなる。
【0099】
<(S)有機溶媒>
前述の隔壁又は前駆膜の形成に好適に用いられる樹脂組成物は、(S)有機溶媒を含む。
この(S)有機溶媒の好適な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、及びプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール類のモノアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコール類のモノアルキルエーテルアセテート;トルエン、及びキシレン等の芳香族溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びγ-ブチロラクトン等のエステル類が挙げられる。
【0100】
これらの(S)有機溶媒のなかでは、樹脂組成物を塗布する際の塗膜のレベリング性の点等から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、及び乳酸ブチルが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノンがより好ましい。
樹脂組成物に含まれる(S)有機溶媒は1種であっても複数種の組み合わせであってもよい。
【0101】
樹脂組成物における(S)有機溶媒の使用量は特に限定されず、樹脂組成物の用途に応じて、粘度等を勘案のうえ適宜決定される。
(S)有機溶媒の使用量は、樹脂組成物における固形分濃度が1質量%以上となるように設定することが好ましく、2質量%以上となるように設定することがより好ましく、3質量%以上となるように設定することがさらに好ましい。また、(S)有機溶媒の使用量は、樹脂組成物における固形分濃度が45質量%以下となるように設定することが好ましく、30質量%以下となるように設定することがより好ましく、25質量%以下となるように設定することがさらに好ましい。
【0102】
以下、樹脂組成物に任意成分として含ませてもよい成分について説明する。
【0103】
<(C)エポキシ化合物>
前述の隔壁又は前駆膜の形成に好適に用いられる樹脂組成物は、(C)エポキシ化合物を含んでいてもよい。
なお、ここでの(C)エポキシ化合物は、前述の成分(A)には該当しないものである。
【0104】
(C)エポキシ化合物としては、従来から広く知られる種々のエポキシ化合物を用いることができる。かかるエポキシ化合物の分子量は特に限定されない。エポキシ化合物の中では、耐熱性、耐化学薬品性、機械的特性等に優れる硬化膜を形成しやすい点から、分子内に2以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物が好ましい。
【0105】
多官能エポキシ化合物は、2官能以上のエポキシ化合物であれば特に限定されない。多官能エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、及びトリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0106】
また、脂環式エポキシ化合物も、高硬度の硬化物を与える点で多官能エポキシ化合物として好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β-メチル-δ-バレロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、及びエポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、トリシクロデセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
樹脂組成物に(C)エポキシ化合物を含ませる場合、その含有量は、上記(A)樹脂100質量部に対して1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは、3質量部以上50質量部以下である。
【0107】
≪(D)界面活性剤≫
界面活性剤としては、フッ素原子含有界面活性剤、ケイ素原子含有界面活性剤等が挙げられ、フッ素原子含有界面活性剤としては、アルキレンオキサイド鎖を有するフッ素系界面活性剤が好ましく、ケイ素原子含有界面活性剤としては、アルキレンオキサイド鎖を有するポリシロキサン系界面活性剤が好ましい。
フッ素原子含有界面活性剤の好適な具体例としては、例えば、ポリフォックスシリーズのPF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(いずれも商品名、オムノバ社製)等が挙げられる。
ケイ素原子含有界面活性剤の好適な具体例としては、BYK-307、BYK-333、BYK-378(いずれも商品名、ビックケミー社製)等が挙げられる。
樹脂組成物に(D)界面活性剤を含ませる場合、その含有量は、上記(A)樹脂100質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下であることが好ましい。さらに好ましくは、0.03質量部以上0.8質量部以下である。
【0108】
前述の隔壁又は前駆膜の形成に好適に用いられる樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、さらに種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例としては、架橋剤、紫外線吸収剤、増感剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、密着助剤、酸発生剤、及びラジカル発生剤等が挙げられる。
【0109】
〔樹脂脂組成物の調製方法〕
前述の隔壁又は前駆膜の形成に好適に用いられる樹脂組成物は、上記の各成分を通常の方法で混合、撹拌して調製される。上記の各成分を、混合、撹拌する際に使用できる装置としては、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等が挙げられる。上記の各成分を均一に混合した後に、得られた混合物を、さらにメッシュ、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0110】
〔硬化物〕
上記の樹脂組成物は、加熱工程に付すことにより硬化物へと変換される。
硬化物の屈折率は、1.50以下が好ましく、1.48以下がより好ましく、1.45以下がより好ましい。屈折率の下限は特に限定されないが、例えば、1.20以上である。
【0111】
以上説明した、構造単位A1と構造単位A2とを含む樹脂は、加熱されることで耐溶剤性や耐薬品性に優れる架橋物を与える。加熱温度は、基板への過度のダメージが生じない限り特に限定されない。加熱温度の上限は、例えば、300℃以下が好ましく、280℃以下が好ましい。加熱温度の下限は、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。
【符号の説明】
【0112】
1 カラーフィルター
10 基板
11 着色層
12 隔壁
13 前駆膜
14 マスク
図1
図2