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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ウェットブラスト用スラリー
(51)【国際特許分類】
   B24C 11/00 20060101AFI20240312BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B24C11/00 G
B24C11/00 D
B24C11/00 F
C09K3/14 550D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019170694
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021045833
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】増田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】牛田 尚幹
(72)【発明者】
【氏名】内貴 博之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 未那
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171840(JP,A)
【文献】特開2001-233973(JP,A)
【文献】米国特許第05964644(US,A)
【文献】特開2009-256184(JP,A)
【文献】特開2012-250341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 11/00
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が5μm以下であるセラミック粒子と、前記セラミック粒子を分散させた分散媒と、を含有し、
粘度が2.27mPa・s以上であり、
前記平均粒子径は、体積基準の積算粒子径分布において大粒径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径Dv50であるウェットブラスト用スラリー。
【請求項2】
粘度が2.27mPa・s以上20mPa・s以下である請求項1に記載のウェットブラスト用スラリー。
【請求項3】
前記セラミック粒子がアルミナ粒子である請求項1又は請求項2に記載のウェットブラスト用スラリー。
【請求項4】
スラリー全体における前記セラミック粒子の含有量が5質量%以上70質量%以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のウェットブラスト用スラリー。
【請求項5】
前記分散媒に対する前記セラミック粒子の分散性を向上させる分散助剤をさらに含有する請求項1~4のいずれか一項に記載のウェットブラスト用スラリー。
【請求項6】
前記分散助剤がポリウレアウレタンである請求項5に記載のウェットブラスト用スラリー。
【請求項7】
前記分散助剤が、ポリアクリル酸アンモニウム塩とポリアクリル酸エステルの共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム塩とポリアクリル酸エステルの共重合体、ベントナイト、ポリウレアウレタン、またはポリアリルアミンである請求項5に記載のウェットブラスト用スラリー。
【請求項8】
前記分散助剤が、ベントナイト、ポリウレアウレタン、またはポリアリルアミンであり、
スラリー全体における前記分散助剤の含有量は0.1質量%以上1.0質量%以下である請求項5に記載のウェットブラスト用スラリー。
【請求項9】
前記分散助剤が、ポリアクリル酸アンモニウム塩とポリアクリル酸エステルの共重合体、またはポリアクリル酸ナトリウム塩とポリアクリル酸エステルの共重合体であり、
スラリー全体における前記分散助剤の含有量は1.2質量%以上2.0質量%以下である請求項5に記載のウェットブラスト用スラリー。
【請求項10】
平均粒子径が5μm以下であるセラミック粒子と、前記セラミック粒子を分散させた分散媒と、を含有し、
粘度が2mPa・s以上であり、
前記平均粒子径は、体積基準の積算粒子径分布において大粒径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径Dv50であり、
前記分散媒に対する前記セラミック粒子の分散性を向上させる分散助剤をさらに含し、
前記分散助剤がポリウレアウレタンであるウェットブラスト用スラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェットブラスト用スラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットブラストは、粒子を分散媒に分散させたスラリーを加工対象物に噴射してブラストを行う技術である(例えば特許文献1を参照)。ウェットブラスト終了後には、ウェットブラストが行われる加工室の内壁面や加工対象物の表面に、噴射により飛散したスラリーが付着し残存する場合があるので、加工室の内壁面や加工対象物の表面を水で洗い流す水洗浄が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-171840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水洗浄だけでは、スラリーを十分に除去することができない場合があった。特に、粒子径の小さなセラミック粒子においては、付着し残存したスラリーが乾燥固着した場合には、水洗浄で除去することは容易ではなかった。
本発明は、乾燥固着した場合でも水洗浄によって容易に除去することが可能なウェットブラスト用スラリーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るウェットブラスト用スラリーは、平均粒子径が5μm以下であるセラミック粒子と、セラミック粒子を分散させた分散媒と、を含有し、粘度が2mPa・s以上であり、平均粒子径は、体積基準の積算粒子径分布において大粒径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径Dv50であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るウェットブラスト用スラリーは、乾燥固着した場合でも水洗浄によって容易に除去することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の一実施形態について詳細に説明する。本実施形態のウェットブラスト用スラリーは、平均粒子径が5μm以下であるセラミック粒子と、セラミック粒子を分散させた分散媒と、を含有し、且つ、粘度が2mPa・s以上である。上記の平均粒子径は、体積基準の積算粒子径分布において大粒径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径Dv50である。
【0008】
上記構成のウェットブラスト用スラリーは、粘度が2mPa・s以上であり、一定の粘性により飛沫付着するスラリーサイズの極小化を防止することによって、スラリー乾燥物の強固な付着が抑制されるものと考えられる。よって、ウェットブラストが行われる加工室の内壁面やウェットブラストを施す加工対象物の表面に、噴射により飛散したウェットブラスト用スラリーが付着し残存し、付着し残存したウェットブラスト用スラリーが乾燥固着した場合でも、水洗浄によって容易に除去することが可能である。
【0009】
そのため、本実施形態のウェットブラスト用スラリーは、例えば、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等のディスプレイに用いられるガラス等の無機材料製基板の加工に好適に用いることができる。本実施形態のウェットブラスト用スラリーを無機材料製基板や樹脂、プラスチック等の成形体に噴射してブラストを行えば、無機材料製基板の表面を高い加工精度で加工することができる。
【0010】
以下に、本実施形態のウェットブラスト用スラリーについて、さらに詳細に説明する。
〔セラミック粒子〕
本実施形態のウェットブラスト用スラリーには、セラミックからなる粒子が砥粒として含有されている。セラミックの種類は特に限定されるものではないが、例えば、酸化イットリウム(Y23)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、炭化ケイ素(SiC)、ガラスが挙げられる。これらのセラミックの中では、白色アルミナ等の酸化アルミニウムが特に好ましい。
【0011】
セラミック粒子の平均粒子径(Dv50)が5μm以下であると、ウェットブラストによって好適な加工を行うことができるが、4.5μm以下であることが好ましく、4.1μm以下であることがより好ましく、3.5μm以下であることがさらに好ましい。一方、セラミック粒子の平均粒子径(Dv50)の下限値は特に限定されるものではないが、加工の加工能率と加工対象物の被加工面の平滑性とのバランスの観点から、1.0μm以上であることが好ましく、1.2μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることがさらに好ましく、1.6μm以上であることが特に好ましい。なお、セラミック粒子の平均粒子径(Dv50)や体積基準の積算粒子径分布は、例えば、ベックマン・コールター社製の電気抵抗式/精密粒度分布測定装置Multisizer3を用いて測定することができる。
【0012】
本実施形態のウェットブラスト用スラリー全体におけるセラミック粒子の含有量は、特に限定されるものではないが、加工能率の観点から、その下限値は5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、セラミック粒子の含有量の上限値は、スラリーの流動性の観点から、70質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。
【0013】
〔分散媒〕
本実施形態のウェットブラスト用スラリーは液体状の分散媒を含有しており、この分散媒にセラミック粒子が分散してスラリーをなしている。分散媒により加工対象物が冷却されるため、摩擦熱による加工対象物のダメージが抑えられる。また、噴射されたセラミック粒子も分散媒によって洗い流されるため、加工対象物へのセラミック粒子の食い込みが少ないという利点がある。さらに、必要に応じて添加される添加剤を分散媒に溶解させることができるため、ウェットブラストと同時に添加剤による処理を加工対象物に対して行うこともできる。
【0014】
分散媒としては、水が好ましく用いられるが、水に可溶な有機溶媒を分散媒として用いてもよいし、水に可溶な有機溶媒と水との混合物を分散媒として用いてもよい。水に可溶な有機溶媒と水との混合物は、1種の有機溶媒と水との混合物でもよいし、複数種の有機溶媒と水との混合物でもよい。水に可溶な有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール等の低級アルコールや、アセトン等のケトンが挙げられる。
分散媒として用いる水は、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後に、フィルタを通して異物を除去した純水や超純水、あるいは、蒸留水が好ましい。
【0015】
本実施形態のウェットブラスト用スラリーのpHは特に限定されるものではないが、例えば3以上10以下とすることができ、好ましくは4以上9以下である。pHの調整は、pH調整剤を添加することによって行ってもよい。pH調整剤としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硝酸、クエン酸等の酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエタノールアミン等の塩基が挙げられる。
【0016】
〔粘度〕
本実施形態のウェットブラスト用スラリーの粘度は、2mPa・s以上である必要があるが、2mPa・s以上20mPa・s以下であることがより好ましく、2mPa・s以上11mPa・s以下であることがさらに好ましい。上記粘度であれば、ウェットブラスト用スラリーが強固に乾燥固着することを抑制することができる。また、上記粘度であれば、ウェットブラストにおいて、ウェットブラスト用スラリーの円滑な噴射が可能となる。
【0017】
ウェットブラスト用スラリーの粘度は、例えば、B形粘度計を用いて測定することができる。具体例を挙げると、B形粘度計として東機産業株式会社製のB形粘度計TVB-10H、ロータとしてH2ロータを用い、回転速度100rpmの測定条件で、粘度を測定することができる。
【0018】
〔分散助剤〕
本実施形態のウェットブラスト用スラリーは、分散媒に対するセラミック粒子の分散性を向上させる分散助剤をさらに含有してもよい。分散助剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、ポリカルボン酸、ポリウレアウレタン、ポリアリルアミン、リグニンスルホン酸、ベントナイト等が挙げられる。ポリカルボン酸の例としては、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体等のポリアクリル酸誘導体及びその塩が挙げられる。分散助剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本実施形態のウェットブラスト用スラリー全体における分散助剤の含有量は、特に限定されるものではないが、0.03質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.075質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下であることがさらに好ましい。上記含有量であれば、セラミック粒子を分散媒に対してより良好に分散させることができ、ウェットブラスト用スラリー中にセラミック粒子の凝集体がより生成しにくく、凝集体が生成したとしてもより再分散しやすい。
【0020】
なお、本実施形態のウェットブラスト用スラリーは、必要に応じて、分散助剤以外の添加剤をさらに含有してもよい。分散助剤以外の添加剤としては、例えば、エッチング剤、界面活性剤、酸化剤、キレート剤、pH調整剤、粘度調整剤、再分散性向上剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤、防カビ剤、防食剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本実施形態のウェットブラスト用スラリーの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、セラミック粒子及び分散媒と、必要に応じて添加される分散助剤や他の添加剤とを、攪拌し混合することによって得ることができる。各成分を混合する際の温度は特に限定されるものではなく、例えば10℃以上40℃以下であり、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に限定されない。
【0022】
〔加工対象物〕
本実施形態のウェットブラスト用スラリーを用いて加工する加工対象物の種類は、特に限定されるものではないが、ディスプレイ用ガラス基板、シリコンウエハ、水晶ウエハ、光学素子(例えばレンズ、プリズム)、宝石、青色レーザーLED用サファイヤ基板、磁気ディスク用ガラス基板、磁気ヘッド等が挙げられる。本実施形態のウェットブラスト用スラリーを用いるウェットブラストにより、加工対象物の表面平滑化、ピーニング、バリ取り、エッチング(リブ形成)等を行うことができる。
【0023】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。例えば、本実施形態のウェットブラスト用スラリーは、一液型であってもよいし、ウェットブラスト用スラリーの成分の一部又は全部を任意の比率で混合した二液型等の多液型であってもよい。また、加工対象物の加工においては、本実施形態のウェットブラスト用スラリーの原液をそのまま用いてウェットブラストを行ってもよいが、原液を水等の希釈液で例えば10倍以上に希釈したウェットブラスト用スラリーの希釈物を用いてウェットブラストを行ってもよい。
【0024】
〔実施例〕
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
セラミック粒子と、分散助剤と、分散媒である水とを混合し、セラミック粒子を水に分散させて、実施例1のウェットブラスト用スラリーを調製した。得られたウェットブラスト用スラリーの粘度は2.10mPa・sであった。
セラミック粒子は、平均粒子径(Dv50)が3.02μmのアルミナ粒子(白色アルミナ)である。ウェットブラスト用スラリー全体におけるセラミック粒子の含有量は、41.43質量%(60.0質量体積%(w/v%))である。
【0025】
分散助剤は、東亞合成株式会社製の分散剤水溶液アロン(登録商標)A-6114であり、分散剤水溶液中の有効成分はポリアクリル酸アンモニウム塩とポリアクリル酸エステルの共重合体である。分散剤水溶液の添加量は3質量%であり、分散剤水溶液中の有効成分の含有量は40質量%であるので、ウェットブラスト用スラリー全体における分散助剤(有効成分)の含有量は、1.2質量%である。なお、この分散助剤は、セラミック粒子の表面に吸着し、その立体障害効果によってセラミック粒子の分散媒に対する分散性を向上させて、凝集を抑制するという作用を有するものである。
【0026】
次に、得られたウェットブラスト用スラリーの洗浄容易性の評価を行った。まず、ウェットブラスト用スラリー10gをステンレス鋼製の平板に塗布し、温度23℃、相対湿度35%の条件下で3時間乾燥させ、セラミック粒子を平板に乾燥固着させた。そして、平板上に洗浄水を流し、乾燥固着したセラミック粒子を洗い流し、平板上に残存したセラミック粒子の量を目視により評価した。なお、洗浄水による洗浄は、温度23℃の洗浄水を流量1765g/minで3分間流すという条件にて行った。
【0027】
結果を表1に示す。表1においては、洗浄水による洗浄後に、平板上にセラミック粒子が全く残存しなかった場合、又は、セラミック粒子が若干残存した場合は、洗浄容易性が良好と評価して○印で示し、セラミック粒子が多く残存した場合は、洗浄容易性が不十分と評価して×印で示してある。
表1から分かるように、実施例1のウェットブラスト用スラリーは、乾燥固着した場合でも水洗浄によって容易に除去することが可能であった。
【0028】
次に、得られたウェットブラスト用スラリーの分散性及び再分散性の評価を行った。分散性の評価方法は以下のとおりである。ウェットブラスト用スラリーを容器に入れ十分に撹拌した後に、10分間静置した。そして、容器を傾斜させることによりウェットブラスト用スラリーを流動させて、セラミック粒子が凝集してウェットブラスト用スラリーがケーキングを起こしているか否かを、目視により確認した。
【0029】
再分散性の評価方法は以下のとおりである。上記容器を20回振って、分散性を評価した後のウェットブラスト用スラリーを撹拌した後に、目開き20μmの篩を用いて濾過した。そして、篩上に濾取されたセラミック粒子の凝集体の量を、目視により評価した。
表1から分かるように、実施例1のウェットブラスト用スラリーは、ケーキングを起こしていた。また、濾過後の篩上にセラミック粒子の凝集体が確認されたものの量は少量であり、再分散性は良好であった。
【0030】
【表1】
【0031】
(実施例2)
分散助剤として、東亞合成株式会社製の分散剤水溶液アロン(登録商標)T-50を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、ウェットブラスト用スラリーの調製及び評価を行った。得られたウェットブラスト用スラリーの粘度は、2.14mPa・sであった。
【0032】
なお、分散剤水溶液中の有効成分はポリアクリル酸ナトリウム塩である。分散剤水溶液の添加量は3質量%であり、分散剤水溶液中の有効成分の含有量は43質量%であるので、ウェットブラスト用スラリー全体における分散助剤(有効成分)の含有量は、1.29質量%である。
評価の結果を表1に示す。表1から分かるように、実施例2のウェットブラスト用スラリーは、乾燥固着した場合でも水洗浄によって容易に除去することが可能であった。
【0033】
(実施例3)
分散助剤として、東亞合成株式会社製の分散剤水溶液アロン(登録商標)A-6101を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、ウェットブラスト用スラリーの調製及び評価を行った。得られたウェットブラスト用スラリーの粘度は、2.27mPa・sであった。
【0034】
なお、分散剤水溶液中の有効成分はポリアクリル酸ナトリウム塩とポリアクリル酸エステルの共重合体である。分散剤水溶液の添加量は4質量%であり、分散剤水溶液中の有効成分の含有量は50質量%であるので、ウェットブラスト用スラリー全体における分散助剤(有効成分)の含有量は、2.0質量%である。
評価の結果を表1に示す。表1から分かるように、実施例3のウェットブラスト用スラリーは、乾燥固着した場合でも水洗浄によって容易に除去することが可能であった。
【0035】
(実施例4)
分散助剤として、ベントナイトを用いた点を除いては、実施例1と同様にして、ウェットブラスト用スラリーの調製及び評価を行った。ウェットブラスト用スラリー全体におけるセラミック粒子の含有量は、42.00質量%(61.2質量体積%(w/v%))である。また、得られたウェットブラスト用スラリーの粘度は、8.92mPa・sであった。
ウェットブラスト用スラリー全体におけるベントナイト(有効成分)の含有量は、1.0質量%である。
【0036】
評価の結果を表1に示す。表1から分かるように、実施例4のウェットブラスト用スラリーは、乾燥固着した場合でも水洗浄によって容易に除去することが可能であった。また、実施例4のウェットブラスト用スラリーは、ケーキングを起こしていた。さらに、濾過後の篩上にセラミック粒子の凝集体が確認されたものの量は少量であり、再分散性は良好であった。
【0037】
(実施例5)
分散助剤として、BYK社製の液状レオロジー添加剤BYK-7420ESを用いた点を除いては、実施例1と同様にして、ウェットブラスト用スラリーの調製及び評価を行った。ウェットブラスト用スラリー全体におけるセラミック粒子の含有量は、40.91質量%(58.9質量体積%(w/v%))である。また、得られたウェットブラスト用スラリーの粘度は、10.94mPa・sであった。
【0038】
なお、液状レオロジー添加剤中の有効成分はポリウレアウレタンである。液状レオロジー添加剤の添加量は0.5質量%であり、液状レオロジー添加剤中の有効成分の含有量は15質量%であるので、ウェットブラスト用スラリー全体における分散助剤(有効成分)の含有量は、0.075質量%である。
【0039】
評価の結果を表1に示す。表1から分かるように、実施例5のウェットブラスト用スラリーは、乾燥固着した場合でも水洗浄によって容易に除去することが可能であった。また、実施例5のウェットブラスト用スラリーは、ケーキングを起こしておらず、セラミック粒子の分散性が優れていた。さらに、濾過後の篩上にセラミック粒子の凝集体は確認されず、再分散性が優れていた。
【0040】
(実施例6)
分散助剤として、ニットーボーメディカル株式会社製のアリルアミン重合体水溶液PAA-08(商品名)を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、ウェットブラスト用スラリーの調製及び評価を行った。ウェットブラスト用スラリー全体におけるセラミック粒子の含有量は、40.91質量%(58.9質量体積%(w/v%))である。また、得られたウェットブラスト用スラリーの粘度は、2.56mPa・sであった。
【0041】
なお、アリルアミン重合体水溶液中の有効成分は重量平均分子量8000のポリアリルアミンである。アリルアミン重合体水溶液の添加量は0.25質量%であり、アリルアミン重合体水溶液中の有効成分の含有量は15質量%であるので、ウェットブラスト用スラリー全体における分散助剤(有効成分)の含有量は、0.0375質量%である。
【0042】
また、ポリアリルアミンは、実施例1~3のポリアクリル酸系の重合体と同様に、立体障害効果によってセラミック粒子の分散媒に対する分散性を向上させて、凝集を抑制するという作用を有する。
評価の結果を表1に示す。表1から分かるように、実施例6のウェットブラスト用スラリーは、乾燥固着した場合でも水洗浄によって容易に除去することが可能であった。
【0043】
(実施例7)
分散助剤として、ニットーボーメディカル株式会社製のアリルアミン重合体水溶液PAA-15C(商品名)を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、ウェットブラスト用スラリーの調製及び評価を行った。ウェットブラスト用スラリー全体におけるセラミック粒子の含有量は、41.43質量%(60.0質量体積%(w/v%))である。また、得られたウェットブラスト用スラリーの粘度は、3.69mPa・sであった。
【0044】
なお、アリルアミン重合体水溶液中の有効成分は重量平均分子量15000のポリアリルアミンである。アリルアミン重合体水溶液の添加量は0.25質量%であり、アリルアミン重合体水溶液中の有効成分の含有量は15質量%であるので、ウェットブラスト用スラリー全体における分散助剤(有効成分)の含有量は、0.0375質量%である。
評価の結果を表1に示す。表1から分かるように、実施例7のウェットブラスト用スラリーは、乾燥固着した場合でも水洗浄によって容易に除去することが可能であった。
【0045】
(実施例8)
分散助剤として、ニットーボーメディカル株式会社製のアリルアミン重合体水溶液PAA-03(商品名)を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、ウェットブラスト用スラリーの調製及び評価を行った。ウェットブラスト用スラリー全体におけるセラミック粒子の含有量は、41.43質量%(60.0質量体積%(w/v%))である。また、得られたウェットブラスト用スラリーの粘度は、3.69mPa・sであった。
【0046】
なお、アリルアミン重合体水溶液中の有効成分は重量平均分子量3000のポリアリルアミンである。アリルアミン重合体水溶液の添加量は0.25質量%であり、アリルアミン重合体水溶液中の有効成分の含有量は15質量%であるので、ウェットブラスト用スラリー全体における分散助剤(有効成分)の含有量は、0.0375質量%である。
評価の結果を表1に示す。表1から分かるように、実施例8のウェットブラスト用スラリーは、乾燥固着した場合でも水洗浄によって容易に除去することが可能であった。
【0047】
(比較例1)
分散助剤を用いない点を除いては、実施例1と同様にして、ウェットブラスト用スラリーの調製及び評価を行った。ウェットブラスト用スラリー全体におけるセラミック粒子の含有量は、41.43質量%(60.0質量体積%(w/v%))である。また、得られたウェットブラスト用スラリーの粘度は、1.88mPa・sであった。
【0048】
評価の結果を表1に示す。表1から分かるように、比較例1のウェットブラスト用スラリーは、乾燥固着した場合では水洗浄によって完全に除去することができず、セラミック粒子の残存が見られた。また、比較例1のウェットブラスト用スラリーは、ケーキングを起こしていた。さらに、濾過後の篩上にセラミック粒子の凝集体が多量に確認され、再分散性は不十分であった。