IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

特許7452992プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置の運転方法
<>
  • 特許-プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置の運転方法 図1
  • 特許-プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置の運転方法 図2
  • 特許-プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置の運転方法 図3
  • 特許-プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置の運転方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240312BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
H01L21/302 101H
H05H1/46 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019225075
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021097060
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】松林 恵理
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 智行
(72)【発明者】
【氏名】大隈 一暢
(72)【発明者】
【氏名】高妻 豊
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-056248(JP,A)
【文献】特開2003-293138(JP,A)
【文献】特開平10-121252(JP,A)
【文献】特開2008-028140(JP,A)
【文献】特開2013-211521(JP,A)
【文献】特開2009-200410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0289835(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内部の処理室内に配置されその上面に処理対象のウエハが載置される試料台と、前記処理室上方で前記試料台の上面の中心を上下方向に通る軸の周りにこれを囲んで配置され前記試料台上面に載せられた前記ウエハを加熱する電磁波を放射するヒータとを備え、前記処理室内に供給されたラジカルによって前記ウエハ上面に形成された反応層を前記電磁波を用いた加熱により除去するプラズマ処理装置であって、前記処理室内の前記試料台の上面の下方で当該試料台を囲んで配置され前記ヒータからの電磁波を反射して前記試料台の側壁を構成する部材に照射する反射部材を備えたプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、前記反射部材の前記電磁波を反射する面の上端が前記試料台の上面より下方に配置されたプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、前記試料台の上部で前記試料台の上面を囲んで配置された誘電体製のリング状部材を備え、前記反射部材の前記電磁波を反射する面の上端が前記リング状部材の外周側壁面の上端より下方に配置されたプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のプラズマ処理装置であって、前記ヒータが前記反射部材の前記電磁波を反射する面が前記試料台の上面の中心を上下方向に通る軸の周りでこれを囲む少なくとも1つのリング状の放射体を備え、前記反射部材の前記電磁波を反射する面が前記少なくとも1つのリング状の放射体に対して凹まされた曲面を備えたプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかに記載のプラズマ処理装置であって、前記ウエハを加熱して前記反応層を除去する工程が終了した後、前記ヒータから電磁波を放射させて前記試料台またはリング状部材の側壁面を加熱して当該側壁面に付着した付着物を除去する工程を実施するプラズマ処理装置。
【請求項6】
真空容器内部の処理室内に配置された試料台の上面に処理対象のウエハを載置し、前記処理室上方で前記試料台の上面の中心を上下方向に通る軸の周りにこれを囲んで配置されたヒータから電磁波を放射して前記試料台上面に載せられた前記ウエハを加熱して前記処理室内に供給されたラジカルによって前記ウエハ上面に形成された反応層を前記電磁波を用いた加熱により除去するプラズマ処理装置の運転方法であって、前記処理室内の前記試料台の上面の下方で当該試料台を囲んで配置された反射部材により前記ヒータからの電磁波を反射して前記試料台の側壁を構成する部材に照射する工程を備えたプラズマ処理装置の運転方法。
【請求項7】
請求項6に記載のプラズマ処理装置の運転方法であって、前記反射部材の前記電磁波を反射する面の上端が前記試料台の上面より下方に配置されたプラズマ処理装置の運転方法。
【請求項8】
請求項6に記載のプラズマ処理装置の運転方法であって、前記試料台の上部で前記試料台の上面を囲んで配置された誘電体製のリング状部材を備え、前記反射部材の前記電磁波を反射する面の上端が前記リング状部材の外周側壁面の上端より下方に配置されたプラズマ処理装置の運転方法。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れかに記載のプラズマ処理装置の運転方法であって、
前記ヒータが前記反射部材の前記電磁波を反射する面が前記試料台の上面の中心を上下方向に通る軸の周りでこれを囲む少なくとも1つのリング状の放射体を備え、前記反射部材の前記電磁波を反射する面が前記少なくとも1つのリング状の放射体に対して凹まされた曲面を備えたプラズマ処理装置の運転方法。
【請求項10】
請求項6乃至8の何れかに記載のプラズマ処理装置の運転方法であって、前記ウエハを加熱して前記反応層を除去する工程が終了した後、前記ヒータから電磁波を放射させて前記試料台またはリング状部材の側壁面を加熱して当該側壁面に付着した付着物を除去する工程を実施するプラズマ処理装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内部の処理室内に配置された半導体ウエハ等基板状の試料表面に予め配置された処理対象の膜層をエッチング処理するプラズマ処理装置およびその運転方法に係り、処理室の上部に配置されたランプにより試料を加熱して処理対象の膜層を除去して処理するプラズマ処理装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような技術の従来の技術として、特開2017-143186号公報(特許文献1)に、等方性エッチングをドライ処理で高精度に行うため、吸着・脱離方式の原子層エッチング処理を行う装置技術が開示されている。
【0003】
この従来技術においては、真空容器内部の処理室内に配置されたステージ上に載置された処理対象の試料であるウエハに対して、ラジカルによる反応層形成工程と、この反応層形成工程で形成した反応層を赤外線により加熱して気化させ除去する反応層除去工程とを含むエッチング処理を施す技術が開示されている。反応層生成工程では、まず、ウエハが内側に配置された処理室の上方に配置されたラジカル生成空間内に処理ガスを供給するとともにラジカル生成空間に高周波電界を供給して処理ガスの活性種(ラジカル)を形成する。形成されたラジカルの粒子は、下方の処理室に連通されたガス導入管を通して処理室内部に供給され、処理室の下部に配置された試料台上に載置されたウエハ上面に供給されて反応層が形成される。次に、反応層除去工程は、反応層生成工程の後に実施されるものであって、処理室上方に配置したランプからウエハに赤外光が照射され、ウエハ上面の反応層を形成する反応性生物が気化され反応層が除去される。これら工程を1つのものとして複数回に繰り返してウエハ表面の処理対象の膜がエッチングされる。
【0004】
このようなエッチングの工程を行う処理では、工程中に生成された反応生成物が処理室内部の表面に付着し或いは堆積してしまい、付着した生成物が再度遊離してウエハ表面に再付着し汚染してしまうという問題が生じていた。このような汚染による影響としては、例えば、ウエハを処理して製造するデバイスの電気特性がばらついたりデバイスの回路パターンの欠陥が引き起こされたりする問題が挙げられる。また、処理室内に配置されウエハがその上面に載せられて静電気により保持されるステージの当該上面に反応生成物が付着、堆積すると、静電気によるウエハの吸着の機能が損なわれウエハの処理の結果としての加工後の形状がバラついて歩留まりが低下するという問題が挙げられる。
【0005】
これらの問題を解決するためには、処理室内部の表面を所定の間隔毎に洗浄して反応生成物を除去することがもとめられる。このような処理室内部のクリーニングの技術としては、処理室を構成する真空容器の温度を高くして生成物が付着することを抑制あるいは付着しても直ぐに遊離する温度に維持する、例えば、真空容器の外部に配置したヒータから当該真空容器に熱を供給して処理室の内壁を構成する部材表面や処理室内に供給される処理用ガスが通流する配管内部の堆積性の高い反応生成物を気化して除去する方法や、WO2016/056300号公報(特許文献2)に開示されるように、処理室内に導入されるClF3やBrF3等のクリーニング用のガスを加熱することにより、反応性の高いハロゲンラジカルを生成して堆積物と反応させることで反応生成物を気化させ除去するものが知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-143186号公報
【文献】WO2016/056300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のクリーニング技術では、次の点について十分な考慮がなされていなかった。
【0008】
すなわち、真空容器外部に配置されたヒータから受ける熱によって処理室内壁面を昇温させて表面の生成物を除去するものでは、熱源であるヒータと内壁面との距離や内壁面までの間の部材の材料の熱伝達率に応じて処理室内壁の表面に温度のムラが生じてしまう。このような内壁面の相対的に低温となる部分はコールドトラップとなり付着した生成物が除去されずに残ってしまい、このような付着物の溜まりから再度遊離した生成物が再度ウエハに付着して汚染を生起してしまうことになる。
【0009】
例えば、ウエハが載せられ保持される試料台であるステージの上部でウエハの外周を囲んでリング状の部材が配置されている場合、当該リング状部材には反応生成物が付着し易い。しかし、リング状の部材がステージから着脱可能な構造である場合には、ステージとリング状部材との間は両者の接触する面積及び熱の伝達は相対的に小さくなり、リング状部材を所望の温度に達するまで時間も、加熱された後エッチング処理に適した温度までの冷却の時間も長くなってしまうため、所定の時間内でウエハを処理する枚数であるスループットが低下してしまうという問題が生じてしまう。このような問題について、上記従来技術では十分に考慮されていなかった。
【0010】
本発明の目的は、効率的に処理室内部表面をクリーニングして処理のスループットを向上させたプラズマ処理装置及びプラズマ処理装置の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、真空容器内部の処理室内に配置されその上面に処理対象のウエハが載置される試料台と、前記処理室上方で前記試料台の上面の中心を上下方向に通る軸の周りにこれを囲んで配置され前記試料台上面に載せられた前記ウエハを加熱する電磁波を放射するヒータとを備え、前記処理室内に供給されたラジカルによって前記ウエハ上面に形成された反応層を前記電磁波を用いた加熱により除去するプラズマ処理装置であって、前記処理室内の前記試料台の上面の下方で当該試料台を囲んで配置され前記ヒータからの電磁波を反射して前記試料台の側壁を構成する部材に照射する反射部材を備えたプラズマ処理装置により達成できる。
【0012】
または、真空容器内部の処理室内に配置された試料台の上面に処理対象のウエハを載置し、前記処理室上方で前記試料台の上面の中心を上下方向に通る軸の周りにこれを囲んで配置されたヒータから電磁波を放射して前記試料台上面に載せられた前記ウエハを加熱して前記処理室内に供給されたラジカルによって前記ウエハ上面に形成された反応層を前記電磁波を用いた加熱により除去するプラズマ処理装置の運転方法であって、前記処理室内の前記試料台の上面の下方で当該試料台を囲んで配置された反射部材により前記ヒータからの電磁波を反射して前記試料台の側壁を構成する部材に照射する工程を備えたプラズマ処理装置の運転方法により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、処理室内部を広く加熱して当該内部表面の加熱によるクリーニングを効率的に行って運転の効率を向上させたプラズマ処理装置またはプラズマ処理装置の運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図。
図2図1に示す実施例の試料台の構成を示す縦断面図。
図3図1に示す実施例のIRランプユニットから放射されたIR光の照射を模擬した図。
図4図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置にクリーニングシーケンスの流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本願発明に係るプラズマ処理装置の実施の形態を説明する。
【実施例
【0016】
図1は、本発明に実施例に係るプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図である。本図に示す例では、真空容器内部に、ウエハが配置される処理室及びその上方で内側にプラズマが形成される放電部と、処理室の上方で処理室と放電部との間を連通して放電部内のガスやプラズマの粒子が通る通路の周囲を囲んで配置されたランプとを備え、処理室内のウエハ上面の処理対象の膜に放電部で形成され処理室内に導入された反応性を有した粒子を供給して吸着させ反応させて反応生成物の層を形成する工程(吸着工程)を実施した後に、ウエハを加熱して適切な温度にすることで反応生成物の層をウエハの表面から脱離あるいは気化させて除去する工程(脱離工程)を実施して等方的にエッチングする処理を実施するドライエッチング装置が示される。
【0017】
図1に示すプラズマ処理装置100は、大きく分けて真空容器101と、その外周を囲んで配置され真空容器内部に電界を形成するプラズマ形成部と、真空容器101下方に配置され真空容器内部を排気して減圧する排気部とを備えている。真空容器101は、その上部に配置された円筒形状を有した側壁の内側の空間であって内部でプラズマ1011が形成される放電部102と、真空容器下部を構成し円筒形を有した空間であってウエハが上面に載置される試料台103を備えた処理室104と、試料台103上に載せられたウエハに上方から赤外線を照射して加熱するIRランプユニット105と、放電部102と処理室104との間を連結する円筒形を有した通路106およびこの通路の内部に配置されプラズマ1011中に生成されたラジカル等の活性を有した粒子(活性種)が内部を処理室104に向けて通過する複数の貫通孔を備えた円板状の誘電体製の分散板106’とを備えている。なお、通路106及び分散板106’は上下方向の中心軸は試料台103の円形の上面の中心に合致またはこれと見做せる程度に近似した位置に配置され、分散版106’は通路106の下端部でその下面が試料台103の円形の上面の上方でこれにと対向して配置されている。
【0018】
プラズマ処理装置100の処理室104及び放電部102は円筒形を有した空間であって、その中心軸は通路106のものと同じ軸上またはこれと見做せる程度に近似した位置に配置されている。これらの間は円形の分散板106’により区分され、分散板106の上下の空間は分散板106’に同心円状に配置された複数の貫通孔を通して連通されている。
【0019】
放電部102の空間は処理室104と連通され内側が所定の真空度の圧力に保たれた石英等のプラズマ1011からの光が透過可能な材料で構成された円筒型の石英チャンバー107の内部に配置されている。石英チャンバー107の円筒形の側壁の外側にはICPコイル108が側壁の周囲を囲んで配置されされている。ICPコイル108は整合器109を介して高周波電源110と電気的に接続されて当該高周波電源110からの高周波電力が供給されることで、放電部102内部にプラズマ1011を形成するための高周波磁界または電界を形成する。
【0020】
放電部102には処理ガス1013が導入される。放電部102の上方には円形を有した天板1014が配置されている。天板1014の下部には隙間を開けてシャワープレート1014’が天板1014と連結されて配置されており、処理室104に導入される処理ガス1013は天板1014とシャワープレート1014’との間の隙間を介してシャワープレート1014’の中央部に配置された複数の貫通孔を通して放電部102内に上方から導入される。
【0021】
ICPコイル108が形成する電界または磁界により、処理ガス1013の原子または分子が励起され、電離または解離して、ICP放電方式によるプラズマ1011が放電部102に生成される。本実施例のICPコイル108に供給される高周波電力は数十MHzの周波数帯のものが用いられ、本例での高周波電力の周波数は13.56MHzである。
【0022】
本実施例では、プラズマ1011の状態は光学的手法で観測できるように構成されている。放電部102で生成されるプラズマ1011の発光は、放電部102に取り付けられたOES(Optical Emission Spectroscopy)などの光学的検出器を用いて検出される。本例の放電部102を囲む石英チャンバー107の外周の側壁上部には受光面が放電部102内部に向けて分光器1012が取り付けられ、生成されたプラズマ1011の発光が内部から石英チャンバー107を分光器1012の放電部102側の受光面を通して受光される。
【0023】
分光器1012では、受光したプラズマ1011からの発光を所定の範囲の複数の波長毎の光に分け(分光し)て各波長の光の強度を検出する。分光器1012はプラズマ処理装置100の制御器1013と有線あるいは無線による通信可能に接続され、分光器1012からの出力は制御器1013に送信される。制御器1013は、受信した信号から波長ごとの発光の強度を、予め備えられたソフトウエアのアルゴリズムに沿って算出し、当該強度の値あるいはその変化の大きさと基準値とを比較した結果に基づいて放電部102内でのプラズマ1011の状態や放電部102の石英チャンバー107内側壁面の状態を検出できる。
【0024】
また、円形を有した天板1014の外周縁部下面と放電部102を囲む円筒形の石英チャンバー107側壁の上端部上面との間にはOリング等のシール部材が配置されている。シール部材は、放電部102および処理室104内部が排気部の動作により排気され減圧されるに伴って両者に挟まれて変形して、放電部102内部と外部との間を気密に封止する。このように放電部102の周囲を囲む石英チャンバー107と天板1014とは真空容器101を構成する。
【0025】
処理ガスは、ガス種毎のガス源1015から真空容器101に接続された配管を通して供給され、配管上に配置されたマスフローコントローラー1016によって真空容器101に導入される流量が調整される。本実施例では、処理ガスとして、可燃性ガス、支燃性ガス、及びこれらの混合ガス、あるいは不活性ガスにより希釈されたこれらの混合ガスが用いられる。
【0026】
処理室104の底面下方には、内部を排気して減圧するためのターボ分子ポンプ等の真空ポンプ1017が配置されに接続されている。処理室104の底面を構成する真空容器101には、内外を連通する排気用の開口が配置されている。さらに、当該開口と真空ポンプ1017の入り口との間を連結する排気用の経路と当該経路上に配置され排気の流路の面積を増減して排気の流量または速度を調節する調圧バルブ1018とを介して、開口と真空ポンプ1017とが連結されている。
【0027】
なお、処理室104内部には、円筒形を有した放電部102、処理室104及び此等の間を連通する通路104の上下方向の中心軸に合致またはこれと見做せる程度に近似した位置に中心軸を有するウエハ1019用の載置面を備えた試料台103が備えられている。さらに、円筒形を有した試料台103内部には、円筒形を有する金属等の導電性部材から構成された基材が配置され、当該基材内部には試料台103または内部の基材あるいは載置面上のウエハ1019の温度を調節するための冷媒が内側を循環して通流する冷媒流路(図示せず)が配置されている。
【0028】
処理室104の上方には、通路106の外周を囲んでリング状に配置されたIRランプユニット105が配置されている。IRランプユニット105は、円筒形を有する処理室104または通路106の中心軸から外側に向かう半径方向の異なる3つの位置にリング状に配置された3重のIRランプ1020、IRランプ1020の上方でリング状に配置されIRランプ1020から放射される電磁波であるIR光を下方の処理室104あるいは試料台103の載置面及びこの上に載置されたウエハ1019に向かうように反射するための反射板1021を備えている。さらには、IRランプ1020の下方で処理室104の上方を覆うと共に通路106の円筒形の内周側壁を構成しIR光が透過可能な石英等の材料から構成されたIR光透過窓1022とを備えている。
【0029】
本実施例のIRランプ1020には、半径方向の異なる3つの位置に中心軸から同心状に配置されたサークル型(円形状)の3つのランプが用いられる。なお、各々のIRランプ1020から放射される電磁波は、可視光から赤外光領域の光を主とした光(ここではIR光と呼ぶ)が用いられる。なお、IRランプ1020はこれに電力を供給するランプ用電源1023に電気的に接続され、両者の間にはICPコイル108に供給される高周波電力のノイズがランプ用電源1023に到達しないように高周波カットフィルタ1024が配置されている。
【0030】
処理室104及び通路106の上下方向の中心軸位から各々の半径位置で同心円状に配置されたIRランプ1020の3つのランプは、各々がランプ用電源1023から個別に大きさが調節された電力の供給を受け、放射するIR光の強度あるいは量が各々で独立して調節される。ランプ用電源1023はプラズマ処理装置100の動作を調節する制御器1013と通信可能に接続され、制御器1013からの指令信号を受けたランプ用電源1023は当該指令信号に基づいてIRランプ1020の3つのランプの各々の動作、放射するIR光の量や強度を調節する。本例は、中心軸周りに同心状に配置されたIRランプ1020の3つのランプ各々が独立に動作を調節可能に構成されていることで、ウエハ1019に対するIR光の放射による加熱とウエハ1019の半径の方向の温度の分布が所望のものに調節可能に構成され、周方向についてはばらつきを低減してより均一な分布に近づけることが可能に構成されている。
【0031】
IRランプ1020の上方には放射状に出力するIR光を下方(試料台103またはウエハ1019の方向)に向けて反射するため反射板1021が配置されている。さらに、IRランプ1020の下方の処理室104のリング状の天井面およびこれに連なった通路106の内周側壁面は、IR光を通すための石英製の光透過窓1022の内表面で構成され、IRランプ1020の3つのランプから処理室104の内部及び試料台103上のウエハ1019の表面に向かって放射されるIR光が遮られる箇所が小さくなる、あるいは無いように配置されている。特に、通路106の内周側壁面の下部分と処理室104のリング状の天井面部分の内周縁の箇所も同じ石英製で透光性を有した部材で構成されており、処理室104または通路106の中心方向に向かって放射されるIRランプ1020からのIR光が万遍なくウエハ1019に到達し効率よくウエハ1019が加熱される。
【0032】
リング状に配置されたランプユニット105の内周部分は上下方向に中心軸を有した円筒形状を有しており、その内側の空間は上方に配置された放電部102内で形成されたプラズマ1011中の粒子が下方の処理室104に向けて通流する円筒形の流路106である。流路106内の底部には流路106の径よりわずかに小さい径を有した円板形状を有する石英等の誘電体製の分散板106’が配置されている。分散板106’は、試料台103の載置面あるいはこれに載せられたウエハ1019上面の中心部上方でこれと対向して配置され、かつ分散板106’の中央部分には複数の貫通孔が配置され当該貫通孔を通してプラズマ1011中で生成されたイオンや電子等を遮蔽しつつ中性粒子やラジカルが透過され処理室104内に導入される。
【0033】
次に、プラズマ処理装置100の試料台103を含む処理室104の構成を図2を用いて詳細に説明する。図2は、図1に示す実施例の試料台を含む処理室の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
【0034】
図2に示す試料台103は処理室104の中心軸と合致した或いはこれと見做せる程度に近似した位置に配置された円筒形の外形を備え、内部に金属等の導電体製の試料台基材204と、当該試料台基材204の上部の中央部分に配置された円筒形の凸部の円形の上面に配置されたセラミクス等誘電体製の皮膜である試料吸着膜206と、試料台基材204上部の凸部のリング状の底面上に載せられ凸部の外周側でこれを囲んで配置された誘電体製のサセプタリング208とを備えている。本実施例のサセプタリング208は試料台基材204上部の凸部の円筒形の側壁を囲むとともに試料台基材204の側壁の下部を覆って配置され、試料台基材204をプラズマ1011から覆って保護する機能をそうしている。
【0035】
試料台機材204の内部には、試料台103を冷却するため中心軸の周りに同心または螺旋状に配置された冷媒流路201が配置されており、冷媒流路201の内部には、プラズマ処理装置100が配置されるクリーンルーム等の建屋の床面の下方の空間に配置され配管で冷媒流路201または試料台基材204と連結されたチラー205において、所定の範囲内の値の温度に調節された冷媒が当該チラー205から導入および排出されて戻るように循環供給される。
【0036】
試料台機材204上部の凸部上面には、その上方に載せられたウエハ1019が静電気により吸着され保持される試料吸着膜206が配置される。本例では、ウエハ1019を吸着したまま加熱あるいは冷却を行ってもウエハ1019の裏面に傷が生じることを抑制するため、ポリイミド等の樹脂製のシートが貼り付けられて静電吸着膜206としての機能を奏している。また、ウエハ1019を静電吸着により固定するため、複数の膜状の電極202が静電吸着膜206膜内に内蔵されて、各々が電極板202は静電気を形成するための直流電力を出力するDC電源207に電気的に接続され、ウエハ1019を静電気により保持するため各々異なる極性が付与される。
【0037】
また、ウエハ1019の裏面と接するあるいは対向する試料吸着膜206の円形の上面には、中心周りに同心および中心の周りに等しいまたはこれと見做せる程度に近似した値の角度毎の放射状に所定の形状の複数の溝203が予め配置されている。これらの溝203が形成されているため、ウエハ1019が静電吸着膜206上に吸着された状態で、ウエハ1019裏面と静電吸着膜206上面の溝203との間に隙間が形成される。溝203は、試料台基材204内部を貫通する経路を含むガスの供給経路及び当該供給経路上に配置され経路を開閉するバルブ209を介して伝熱ガス源210と連結され、伝熱ガス源210からのHeガス等の熱伝達性を有するガスがウエハ1019と静電吸着膜206との間の隙間に供給され溝203に放射状にあるいは円周上に沿って流れて充満する経路になっている。溝203は、静電吸着膜206上面全体に同心状に形成されており、隙間に供給されたHeガスにより冷媒経路201で温調された試料台103とウエハ1019との間の熱の伝達がHeガスを介して促進され、ウエハ1019の冷却が効率的に行われる。
【0038】
試料台103の試料台基材204の円筒形の側壁の外周側には処理室104内に導入されるガスや反応性生物との相互作用を抑制するため石英製のサセプタリング208が配置されている。サセプタリング208は試料台基材206上に載せられて保持された状態で試料台103または円筒形状を有した試料台基材204の中心軸と中心を合致またはこれと見做せる程度に近似した位置に配置され、そのリング形状の内径は試料台基材204の凸部の静電吸着膜206に覆われた外周側壁の径に合わせてこれよりわずかに大きい寸法を有し、ウエハ1019が載置される凸部上面の外周を囲んで配置され凸部の側壁および底面を覆っている。
【0039】
次に、図3を用いて、IRランプユニット105のIRランプ1020から処理室104内に放射されたIR光の経路について説明する。図3は、図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置においてIRランプユニットから放射されたIR光の経路を模式的に示した縦断面図である。
【0040】
IRランプ1020から出力されたIR光301は、図上上方向に放射された一部は反射板1021に反射され、処理室104内部に上方から放射状に拡散し、試料台103上面に載置されたウエハ1019や、処理室104の側壁に照射される。この際、試料台基材204の側壁を囲むサセプタリング208の円筒形の側壁の表面は、処理室104の天井面を構成するIRランプユニット105の3つのIRランプ1020が同心状に配置された仮想の面(図上破線306)に対して垂直に配置されているため、IR光301はサセプタリング208の側壁に対して斜めに入社せざるを得ず照射量が減縮せざるを得ない。また、試料台103または処理室104の中心軸について円筒形のサセプタリング208側壁面より内側の半径位置に配置されたIRランプ1020から放射されたIR光301は、試料台103のサセプタリング208自体に遮られて、直接サセプタリング208の側壁面には届かない。
【0041】
本実施例では、図3に示すように試料台103およびサセプタリング208の外周側の処理室104の内側壁に沿ってリング状に反射材302が配置されている。反射材302の反射面である内周表面に放射されたIR光301は当該内周表面で反射されて、反射されたIR光(反射光303)がサセプタリング208側壁に照射される。反射光303によりサセプタリング208の側壁面を効率良く加熱して当該壁面に付着した生成物を脱離させる、あるいは付着し堆積することを抑制することができる。
【0042】
図3で示す反射材302は、処理室104の底面上に載せられ円筒形を有する側壁面に沿って配置されたリング状の部材であって、その内周側の表面は図上上方の所定の位置に中心を有する下向きに湾曲した曲面を有し、半径方向について高さ位置が大きくなる形状を有している。特に、本実施例の円筒形を有する処理室104または試料台103の上下方向の中心軸を通る上下方向の断面上で曲線として表される反射材302の湾曲した表面は、処理室104の底面からのサセプタリング208の高さaに位置する処理室104の側壁面上の或る点Aから距離rとなる点に位置するIRランプ1020を焦点304として、この焦点304を通りサセプタリング208の側壁と垂直な仮想な面の上記上下方向の断面上の線306を軸とする放物線305となる。
【0043】
ここで、距離rを最短にすることでIR光301が反射材302までの伝搬中に減衰する強度を最小限に抑えることができるため、本実施例では、反射材302の反射面の上端であって処理室104の内側壁上の位置から距離rの位置にIRランプ1020の最外周の円弧状のランプの中心軸が位置するように配置されている。試料台103の載置面の中心軸を通る任意の上下方向の断面上で放物線305に沿った曲面を有して当該中心軸周りに軸対称に形成された反射材302の表面の曲面上には反射率の高い材料が貼り付けられている。入射したIR光301は、反射材302の表面でサセプタリング208側壁に対し垂直となる方向に反射されてサセプタリング208側壁に入射しこれを加熱する。
【0044】
なお、この反射材302の曲面を構成する部材の材料を放射率0.4程度の酸化アルミニウムにすることで、反射材302自体もIR光301を受光することによって加熱されるため当該反射材302の曲面に反応生成物が付着し難くすることができ、プラズマ処理装置100の稼働率や処理の効率を向上させることができる。
【0045】
本実施例では、反射材302は、そのIR光301を反射する曲面を構成する部分の上端が位置Aと同じかこれより下側の処理室104の内部に配置されている。この構成により、ウエハをエッチングする工程のうちIRランプ1020からのIR光301をウエハ1019に照射してこれを加熱して行う脱離工程において、試料台103上に載せられ保持されたウエハ1019が焦点304以外のIRランプ1020からの反射光303に照射されることが抑制される。このため、放物線305の軸である線306で示される仮想の面の高さ位置は位置Aから上下方向に距離bだけ上方にオフセットを有している。放物線305は、線306をy軸、当該線306に垂直な図上上下方向をx軸として、定数αを用いてy=αx2で表される。
【0046】
y軸方向についての点Aと放物線305の極小点との距離dと定数αは、処理室104の側壁上の点Aと焦点304との間のx軸方向についての距離bとy軸方向についての距離cを用いて、以下のように数1、数2で示される式に沿って求めることができる。
【0047】
【数1】
【0048】
【数2】
【0049】
上記の構成を備えた本実施例のプラズマ処理装置100は、IRランプ1020からのIR光301に照射されたサセプタリング208あるいは反射材302は加熱されて、ウエハ1019のエッチング処理に伴って生成された反応性生物が付着し難いあるいは付着しても直ぐに再遊離し易い構成を備え、これらの部材表面の処理室104内の生成物の堆積が抑制される。このため、処理室104内の表面に付着あるいは堆積した生成物及びこれらによるウエハ1019への汚染を抑制するために行われる処理室104内部の表面の洗浄の作業を短縮する、あるいはプラズマ処理装置100によるウエハ1019の処理を停止して行われる洗浄作業の間隔を長くすることができる。
【0050】
次に、本実施例に係るプラズマ処理装置100の処理室104内部を洗浄する作業の手順を説明する。図4は、図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置の処理室内部をクリーニングする作業の手順の概略を示すフローチャートである。なお、このようなクリーニングの動作あるいは作業は予め定められた期間あるいはウエハ1019の処理を実施した時間の累積値毎、若しくは処理の枚数毎に実施される。本実施例では、前後して処理される2つのウエハ1019のエッチング処理の工程同士の間に実施される。
【0051】
クリーニング動作がスタートされ(ステップ401)、先に処理された任意の1枚のウエハ1019のエッチング処理が終了したことが確認された後、処理済みの当該ウエハ1019は、真空容器101の側壁に連結された別の真空容器である真空搬送容器内部の減圧された真空搬送室内に配置された搬送用ロボットが真空容器101の側壁に配置されたウエハ搬送用の開口であるゲートから処理室104内に進入させたアームの先端部に載せられてゲートを通して真空搬送室に搬出される(ステップ402)。その後、ゲートが気密に閉塞されて処理室104が密封された状態で、クリーニング工程であるステップ403,404を実施する。これらのステップは、試料台103の静電吸着膜206をステップ中の熱から保護するための保護用のウエハを静電吸着膜206の載置面上に載置した状態で行っても良い。
【0052】
先に実施されるステップ403では、密封された焦点304に位置するIRランプ1020を100%の出力で動作させてIR光301を放射させる。放射されたランプIR光301を反射材302表面の曲面で反射させてサセプタリング208の側壁面に照射させてサセプタリング208を所定の時間(本例では20秒)だけ加熱する。
【0053】
この際に、処理室104内部にプラズマを形成しFやO等の堆積性のある反応生成物に対してこれらと相互作用を生起して揮発あるいは昇華させ生成物のクリーニングの効果があるラジカルを供給してもよい。この工程によりサセプタリング208上に堆積していた反応生成物が気化されてサセプタリング208表面から除去される。
【0054】
次に、ステップ404では、IRランプ1020の全てのランプを消灯して調圧バルブ1018の開度を増減して処理室104からの排気の流量または速度を増加または減少させて処理室104内の圧力を増加または減少させて、処理室104内から反応性生物の排出を促進する。これによりステップ403により処理室104に浮遊している反応生成物を処理室104外に排気する。本例では、当該ステップ404は所定の時間(本例では40秒)だけ実施される。必要に応じて上記ステップ403,404を複数回繰り返しても良い。
【0055】
サセプタリング408側壁上の生成物の量が所定の許容範囲内の値となったことが図示しない検出器からの出力に基づいて制御器1013によって検出されると、プラズマ処理装置100のサセプタリング208をクリーニングする工程が終了され(ステップ405)、次のウエハ1019の処理をする工程が開始され、ゲートが開放されて未処理のウエハ1019が処理室104内に搬入されるか、あるいは次に処理すべきウエハ1019が無い場合には、プラズマ処理装置100によるウエハ1019を処理する運転が終了される。
【0056】
以上の実施例によれば、予め定められた間隔毎に処理室104内部の部材の表面がIR光301の照射により加熱されることで当該表面に付着する反応生成物が除去される。このことにより部材表面に付着した反応生成物が遊離して再度ウエハ1019に付着してウエハ1019が汚染されてしまうことが抑制され、ウエハ1019の処理の歩留まりが向上する。さらに、IRランプ1020からのIR光301の照射により処理室104内部の表面を加熱することで効率的に処理室内部表面がクリーニングされ、プラズマ処理装置100のウエハ1019を処理していない時間が短縮され当該装置による処理のスループットと効率とが向上される。
【符号の説明】
【0057】
100…プラズマ処理装置、
101…真空容器、
102…放電部、
103…試料台、
104…処理室、
105…IRランプユニット、
106…通路
107…石英チャンバー、
108…ICPコイル、
109…整合器、
110…高周波電源、
201…冷媒流路、
202…電極板、
203…溝、
204…試料台基材、
205…チラー、
206…静電吸着膜、
207…DC電源、
208…サセプタリング、
209…バルブ、
210…伝熱ガス源、
1011…プラズマ、
1012…分光器、
1013…制御器、
1014…天板、
1015…ガス源、
1016…マスフローコントローラー、
1017…真空ポンプ、
1018…調圧バルブ、
1019…ウエハ、
1020…IRランプ、
1021…反射板、
1022…IR光透過窓、
1023…ランプ用電源、
1024…高周波カットフィルタ。
図1
図2
図3
図4