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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】発振調整方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/14 20060101AFI20240313BHJP
   H01S 5/0225 20210101ALN20240313BHJP
【FI】
H01S5/14
H01S5/0225
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020034944
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021141106
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高野 哲至
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-286503(JP,A)
【文献】特開平11-068248(JP,A)
【文献】特表2008-536333(JP,A)
【文献】特開昭60-262480(JP,A)
【文献】特開2015-088505(JP,A)
【文献】特開2005-175049(JP,A)
【文献】特開2014-063933(JP,A)
【文献】特開2011-077523(JP,A)
【文献】特開2017-183758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0205201(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103259189(CN,A)
【文献】特開昭63-164380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザからの光を第1の光路と第2の光路に分岐して、前記第1の光路に配置した反射器で外部共振器を形成して単一縦モード発振させ、
前記第2の光路に配置した波長計で、分岐された透過光を測定して、単一縦モードの発振波長を測定し、
前記波長計で測定される発振波長が、ブラッグ波長の近傍の発振波長であって、使用する体積ブラッグ回折格子の設計波長よりも短波長側になるように前記反射器の角度を調整し、
前記第2の光路に前記体積ブラッグ回折格子を配置し、前記体積ブラッグ回折格子による回折光が前記半導体レーザに戻るように、前記第2の光路の光軸に対する前記体積ブラッグ回折格子の角度を調整し、
前記体積ブラッグ回折格子の角度調整の後に、前記第1の光路を遮断して、前記体積ブラッグ回折格子単体単一縦モード発振するように前記体積ブラッグ回折格子を前記第2の光路に沿って前記半導体レーザに近づけるように移動させて置調整する、
ことを特徴とする発振調整方法。
【請求項2】
前記体積ブラッグ回折格子の前記位置調整は、前記移動と同時に、または前記移動の後に、前記体積ブラッグ回折格子を前記体積ブラッグ回折格子の配置面と平行な面内で回転させる調整を含むことを特徴とする請求項に記載の発振調整方法。
【請求項3】
前記体積ブラッグ回折格子の前記位置調整が完了した後に、前記反射器を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の発振調整方法。
【請求項4】
前記反射器は、回折格子である請求項1~3のいずれか1項に記載の発振調整方法。
【請求項5】
前記反射器は、干渉フィルタまたは分布ブラッグ反射器のいずれかと、ミラーと、を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の発振調整方法。
【請求項6】
前記半導体レーザからの光を、偏光ビームスプリッタによって前記第1の光路と前記第2の光路に分岐し、
前記体積ブラッグ回折格子の前記位置調整が完了した後に、前記偏光ビームスプリッタを除去することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の発振調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振調整方法に関し、特に体積ブラッグ回折格子を用いた外部共振器半導体レーザの発振調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体積ブラッグ回折格子を使用して外部共振器を構成することで単一縦モード動作させた外部共振器半導体レーザが知られている(たとえば、特許文献1参照)。外部共振器半導体レーザでは、波長選択格子によって一部のスペクトルのみを選択的に光フィードバックすることにより、特定の波長のみで狭線幅のレーザ発振が可能である。特に、体積ブラッグ回折格子を用いた外部共振器半導体レーザは、従来の手法(例えば、回折格子の波長選択性を用いる方法)と比較し、ブラッグ回折を用いるために角度のずれに対しても発振波長が変わりづらい等の性質を有する。
【0003】
通常の回折格子は、入射光線を、波長に応じて様々な角度に回折する。幅広い入射角で回折が見えるため、回折光線を目安にして発振調整が可能である。これに対し、体積ブラッグ回折格子は、ブラッグ回折を基本にするため、高度の波長選択性を有する。体積ブラッグ回折格子は、所定の入射角に対して、ブラッグ条件を満たす波長(ブラッグ波長)成分のみを回折し、それ以外の光を透過させる。体積ブラッグ回折格子を用いて外部共振器を構成する場合、半導体レーザ単体のスペクトル幅が、体積ブラッグ回折格子の波長幅よりも広いため、ごく一部の光しか回折しない。したがって、目安となる回折光が見えにくく、レーザの発振調整が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-88505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、体積ブラッグ回折格子を用いた外部共振器半導体レーザの発振調整を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面において、発振調整方法は、
半導体レーザからの光を第1の光路と第2の光路に分岐して、前記第1の光路で外部共振器を形成して単一縦モード発振させ、
前記第2の光路に体積ブラッグ回折格子を配置し、前記体積ブラッグ回折格子による回折光が前記半導体レーザに戻るように、前記第2の光路の光軸に対する前記体積ブラッグ回折格子の角度を調整し、
前記体積ブラッグ回折格子の角度調整の後に、前記第1の光路を遮断して、前記体積ブラッグ回折格子で発振するように前記体積ブラッグ回折格子の位置を調整する。
【発明の効果】
【0007】
上記の手法により、体積ブラッグ回折格子を用いた外部共振器半導体レーザの発振調整が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施形態の発振調整方法の第1ステップの模式図である。
図1B】実施形態の発振調整方法の第2ステップの模式図である。
図1C】実施形態の発振調整方法の第3ステップの模式図である。
図1D】実施形態の発振調整方法の第4ステップの模式図である。
図2】反射器による単一縦モード発振と、レーザ出力光、及び体積ブラッグ回折格子の設計波長を示す模式図である。
図3】体積ブラッグ回折格子の特性を説明する模式図である。
図4】体積ブラッグ回折格子の特性を説明する模式図である。
図5】実施形態の発振調整方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1A図1Dは、実施形態の発振調整方法の手順を示す模式図である。上述したように、体積ブラッグ回折格子(Volume Bragg Grating;以下、適宜「VBG」と略称する)は通常の回折格子と異なり、特定の波長の光が特定の角度で入射したときのみ光を回折する。そのため、VBGで外部共振器を構成して半導体レーザを単一縦モード発振させるときに、可視光レーザであっても調整の目安となる光が見えにくく、発振調整が難しい。そこで、実施形態では、スペクトルをブラッグ波長近傍にあらかじめ集中させることで発振調整を容易とする。
【0010】
実施形態では、図1A図1Dの手順で調整することで、VBGを用いた外部共振器半導体レーザ(External Cavity Laser Diode;以下、「ECLD」と称する)の発振調整が容易になる。
【0011】
(第1ステップ)
図1Aで、半導体レーザ1(以下、「LD1」と称する)の出力光を、偏光ビームスプリッタ4(以下、「PBS4」と称する)や部分反射ミラー等で、第1の光路P1と第2の光路P2に分岐し、第1の光路P1で外部共振器を形成して単一縦モード発振させる。LD1の一方の端面は反射防止(AR)面、もしくは部分反射(PR)面1aとなっており、他方の端面は高反射面1bである。AR面の反射率は5%未満が好ましく、1%以下がより好ましい。PR面の反射率は5%~50%が好ましく、10%~30%がより好ましい。高反射面の反射率は95%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。
【0012】
第1の光路P1に波長選択性の反射器3が配置され、反射器3と、LD1の高反射面1bとで、共振器が形成される。反射器3として、通常の回折格子を用いてもよいし、干渉フィルタまたは分布ブラッグ反射器のいずれかと、ミラーとを組み合わせた構成を採用してもよい。反射器3で形成される外部共振器を、便宜上、「第1共振器(以下、「ER1」と称する)」と呼ぶ。後のステップでVBGとLD1との間に構成される外部共振器と区別するためである。
【0013】
LD1とPBS4との間に、半波長板2が挿入されてもよい。半波長板2は、入射光が直交する2つの直線偏光成分に180度の位相差を与える。その結果、直線偏光を入射した際に、その偏光面を任意の角度に回転することができる。LD1からの出力光の偏光方向を回転させることにより、PBS4への入射角と反射角を調整できる。また、LD1と半波長板2との間に、コリメートレンズが挿入されていてもよい。
【0014】
PBS4の分岐比は、たとえば1対1であるが、これに限定されず、適切な分岐比を設計することができる。PBS4で反射された偏光成分は、反射器3に入射し、反射器3からの戻り光は、PBS4で反射され、半波長板2を通ってLD1の活性層に入射する。反射器3とLD1との間の光の反復により、LD1はER1の共振波長で単一縦モード発振する。
【0015】
第2の光路P2上に波長計5が配置され、PBS4の透過光を測定して、ER1を用いた単一縦モードの発振波長をモニタする。波長計5で測定される波長が、目的の波長になるように、第1の光路P1の光軸に対する反射器3の波長選択域が調整される。第1ステップは、LD1を単一縦モード発振させる手順である。換言すると、発振前のLD1のブロードな波長スペクトルを、ブラッグ波長を含む特定の波長範囲に絞り込む手順である。可視光を出力するLD1を用いる場合でも、最初からLD1の発振波長を、狭い幅のVBG波長に合わせ込むのは困難である。第1ステップを行うことで、LD1の出力光のスペクトルを、ブラッグ波長の近傍の発振波長に絞り込むことができる。
【0016】
反射器3の角度は、ER1の共振波長、すなわち、単一縦モード発振の中心波長が、VBGの設計波長(入射した方向と回折する方向とが等しくなるブラッグ波長)よりも若干、短波長側にシフトするように調整されてもよい。後のステップで、VBGを第2の光路P2に組み込む際に、VBGで回折される光の量は入射光の光量に比べて少ない。VBGで回折された光が、単一縦モード発振してVBGに入射した光と同じ光路をたどってLD1に向かうと、VBGの回折光が入射レーザ光に埋もれて、回折光をLD1の活性層へ戻す調整が困難になる。波長計5でモニタする共振波長を、VBGの設計波長よりも若干短波長側に設定することで、VBGの回折光を入射光の光路からわずかに逸れた状態で、LD1に戻すことができる。この詳細については、図1Bを参照して後述する。
【0017】
図2は、ER1による発振波長の絞り込みを説明する図である。LD1が一般的な利得導波路型のレーザダイオードである場合、単一縦モード発振する前のLD1の出力光のスペクトルには、多数のピークが含まれている。マルチ縦モードの平均的な分布をとると、図2のように、広い波長範囲に拡がるスペクトルとなる。
【0018】
第1の光路P1に適切な角度で反射器3を配置することで、LD1をER1の共振波長で単一縦モード発振させることができる。ER1の共振ピーク波長が、VBGの設計波長λよりもやや短波長側にあるように、反射器3の角度が調整される。
【0019】
VBGの回折波長幅をΔλとすると、ER1の共振の中心波長λresntが、
λresnt=λ-bΔλ (0.5<b<3.0)
となるように、反射器3の角度を調整してもよい。ここで、bは係数である。bの値は、一例として、0.5よりも大きく、3.0よりも小さい範囲、より好ましくは、1.0以上、2.5以下である。bの値が0.5以下では、VBGの回折光と入射光を区別することが難しい。bの値が3.0を超えると、VBGの回折光の方向が第2の光路P2から逸脱しすぎて、回折光をLD1に戻すことが難しい。第1の光路P1で、反射器3の角度を適切に調整することで、ER1によるLD1の単一縦モード発振波長を、VBGの回折光の波長よりもやや短波長側に設定することができる。
【0020】
(第2ステップ)
LD1を単一縦モード発振させた後に、図1Bで、VBG7を第2の光路P2に配置して、VBG7による回折光LdifがLD1に戻るように、第2の光路P2の光軸に対するVBG7の角度を調整する。
【0021】
VBG7は、ガラスに屈折率異方性の層が幾千も形成された回折格子であり、層(界面)の積み重ね方向の厚さは、立体と呼べる程度に厚く形成されている。実施形態では、一例として、5mm×5mm×2.5mmのVBG7を用いた。VBG7内部の界面で反射された光が強め合う条件のときに、回折が起きる。
【0022】
図3、及び図4は、VBG7の特性を説明する模式図である。図3は、VBG7を上面から見た図である。VBG7には、多くの屈折率異方性の層71が一定の周期Λで形成されている。VBG7の内部の周期的な屈折率分布により、限られた入射角θと波長λの組み合わせの光だけが回折され、それ以外の光は透過する。一般的には、屈折率異方性の層71は、VBG7の入射面と平行に配置されるのではなく、所定の角度を持って形成されている。
【0023】
図4で、説明を簡単にするために、多数の屈折率異方性の層がVBG7の入射面と平行に設けられる場合を考える。VBG7でブラッグ回折が起きる条件は、
2nΛcosθ=λ
が満たされるときである。ここで、nはガラス本体の屈折率である。ここでは、一般的な光学の分野で用いられる入射角(入射面の法線と入射光が成す角度)をθとして説明する。この条件をブラッグ条件と呼ぶ。
【0024】
θ=0のとき、すなわち、入射光が回折面に対して垂直に入射するときに、λは最大になる(cosθ=1)。入射光の波長λがλ=2nΛを満たすときに、θ=0であり、光は入射した方向に回折される。ここでは、このλをVBGの設計波長と定義する。
【0025】
実際は、VBG7への入射光線波長λinが、
【0026】
【数1】
を満たすとき、入射光は効率よく回折される。同様に、
【0027】
【数2】
の範囲の入射角θinで入射した光が効率よく回折される。
【0028】
実施形態では、一例として、設計波長λが、496.23±0.12nm、回折波長幅Δλが、0.05nm程度のVBG7を用いた。第2ステップでは、このVBG7を、VBG7の最終的な配置位置よりもLD1から離れた位置において、回折面の角度を調整する。VBG7の角度をLD1から離れた位置で調整するのは、VBG7がLD1から離れるほど、第2の光路P2でVBG7に入射する光と、VBG7の回折光Ldifとを区別しやすくなるからである。実施形態では、一例として、VBG7をLD1から30cm程度離して、第2の光路P2上に配置した。
【0029】
LD1からPBS4を透過してVBG7に入射する光は、ER1により単一縦モード発振した光である。上述のように、単一縦モード発振した光の中心波長は、VBG7の設計波長よりも若干、短波長側に設定されている。そのため、入射レーザ光に含まれるほぼすべての光が、ブラッグ条件を満たす、入射レーザ光の光軸からわずかに逸れた方向に回折される。LD1からVBG7までの距離を長くとることで、回折光Ldifの偏向が認識しやすくなる。回折光Ldifが見える状態で、VBG7の角度を調整して回折光Ldifの方向を第2の光路P2に合わせ込むことで、回折光Ldifを精度良く、LD1の活性層に入射させる。
【0030】
VBG7の角度調整で、VBG7への入射光と、VBG7からの回折光Ldifは、同じ高さ位置(Y方向の位置)にある。VBG7への入射光のうち、所定の角度で入射したVBG波長の光だけが回折され、入射光の光軸から若干逸れて、X-Z面内をLD1に向かって伝搬する。
【0031】
VBG7の角度調整は、LD1の発振パワーやモニタ電流値が最大となるように調整されてもよい。発振パワーをモニタする場合は、パワーメータをVBG7の透過側に配置してパワーを測定してもよい。LD1の出力を電流測定する場合は、LDパッケージに設置されたフォトダイオード(PD)8の電流値が最大となるように角度調整してもよい。
【0032】
PD8でモニタされる電流値は、ER1で得られる中心波長λresntの光と、VBG7で得られる中心波長λの回折光を足し合わせた光の強さを表わす。反射器3の角度は、第1ステップで単一縦モード発振させるときに調整されているので、PD8の電流値を最大にするVBG7の角度が、回折光LdifをLD1の活性層に戻すことのできる正しい角度である。
【0033】
(第3ステップ)
図1Cで、反射器3が置かれた第1の光路P1を遮断し、VBG7を、第2ステップで角度調整した位置から、第2の光路P2に沿って徐々にLD1に近づけて、VBG7単体で単一縦モード発振するように調整する。この時点では、反射器3を第1の光路P1上に置いたままの状態で、第1の光路P1を遮る。VBG7からの回折光Ldifを見失ったときに、直ちに第1の光路P1を光学的に接続して、LD1を単一縦モード発振させるためである。
【0034】
第1の光路P1を遮断するときに、半波長板2をX-Z面内で回転させて、LD1の出力光のほぼすべてがVBG7が配置された第2の光路P2に透過するように調整してもよい。
【0035】
第2ステップでの角度調整により、VBG7からの回折光LdifがLD1の活性層に入射するように調整されている。第3ステップでは、VBG7を適切な位置までLD1に近づけることで、VBG7だけでLD1を単一縦モード発振させ、かつ最終的なレーザ装置のサイズをコンパクトにすることができる。
【0036】
たとえば、VBG7の透過側にパワーメータ12を接続して、単一のピークが最大パワーで発生するように、VBG7の位置を調整する。一例として、VBG7を、LD1から30cm程度離れた位置から、5mm程度の距離まで近づけてもよい。第2の光路P2に沿ったVBG7の位置移動の間に、あるいは、VBG7の最終位置が決まった時点で、単一ピークの強度が最大となるように、VBG7の角度を、VBG7の配置面と平行な面内で回転させて、再度調整してもよい。
【0037】
(第4ステップ)
図1Dで、VBG7単体でのLD1の単一縦モード発振の後に、VBG7とLD1を除く不要な光学素子を除去する。実施形態の構成では、半波長板2、反射器3、PBS4を除去する。LD1とVBG7は調整された位置関係と角度関係で、レーザ装置のパッケージ内に配置されてもよい。これにより、高強度かつ狭帯域の外部共振器型の半導体レーザ装置が得られる。
【0038】
図5は、実施形態の発振調整方法のフローチャートである。LDの出力光を、第1の光路(P1)と第2の光路(P2)に分岐する(S1)。上述した実施形態ではPBS4を用いて、s偏光の反射光とp偏光の透過光に分岐させていたが、1対1の分割比率を持つ無偏光ビームスプリッタで、LDの出射光を第1の光路(P1)と第2の光路(P2)に分割してもよい。
【0039】
次に、第1の光路(P1)で外部共振器を形成して、LDを単一縦モード発振させる(S2)。実施形態では、第1の光路(P1)に配置される反射器として通常の回折格子を用い、LDの高反射面との間に外部共振器を形成していたが、干渉フィルタとミラーの組み合わせ、分布ブラッグ反射器とミラーの組み合わせなどを用いてもよい。
【0040】
上述のように、反射器でLD1を単一縦モード発振させるときに、第1の光路(P1)に対する反射器の角度を調整することで、単一縦モードの発振波長を、VBG波長よりも若干、短波長側に設定してもよい。
【0041】
次に、第2の光路(P2)にVBGを配置して、第2の光路(P2)に対する回折面の角度を調整する(S3)。角度調整は、VBGがLDから十分に離れた位置で行うことが望ましい。単一縦モード発振した入射光の波長よりも、VBGの設計波長をわずかに長波長とすることで、VBGの回折光を入射光と区別しやすくなる。
【0042】
次に、第1の光路(P1)を遮断して、VBG単独で発振するようにVBGの位置、及び/または角度を調整する(S4)。この位置調整で、ECLDを単一かつ最大のピークで発振させる。
【0043】
最後に、反射器、ビームスプリッタ等の不要な光学素子を除去して、VBGとLDで形成されるレーザ装置から、高強度、かつ狭帯域のレーザ光を出力する(S5)。実施形態の発振調整方法により、VBGを用いた半導体レーザの発振調整が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
このように発振調整されたレーザ装置は、非常に狭いスペクトル幅の光を出力することができ、環境計測、分光分析、医療など、多様な分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 半導体レーザ
2 半波長板
3 反射器
4 偏光ビームスプリッタ
5 波長計
7 体積ブラッグ回折格子
12 パワーメータ
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5