(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】発光装置及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/54 20100101AFI20240313BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20240313BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/60
(21)【出願番号】P 2020563188
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2019050031
(87)【国際公開番号】W WO2020137855
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2018248307
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小関 健司
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳資
(72)【発明者】
【氏名】中井 千波
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-128121(JP,A)
【文献】特開2012-094689(JP,A)
【文献】特開2014-158011(JP,A)
【文献】特開2015-154007(JP,A)
【文献】特開2018-082034(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102738356(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域を囲む溝部を備えた基板と、
前記第1領域に載置された発光素子と、
前記溝部の溝内に設けられると共に、前記発光素子の上面を露出し、前記発光素子の側面の少なくとも一部を被覆する第1被覆部材と、
前記第1被覆部材
上及び前記発光素子上に設けられた光透過性部材と、を備え、
前記第1被覆部材は、第1反射材を含有する樹脂を含み、前記第1反射材を含有する含有層と、前記含有層の上方に位置する透光層と、を備え
、
前記光透過性部材と前記透光層とは、同じ材料又は異なる材料であり、前記光透過性部材と前記透光層とが同じ材料である場合には、前記光透過性部材は、前記透光層と異なり、波長変換部材、拡散材、及び、フィラーのうちのいずれか1つ以上を含有する発光装置。
【請求項2】
前記基板からなる底面と樹脂壁による側面とからなる凹部を有するパッケージを備え、前記凹部の側面から前記溝部の外側上端縁まで連続して被覆する、第2反射材を含有する第2被覆部材を更に備える請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記溝部の幅は、30μm以上200μm以下である請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記溝部の深さは、10μm以上150μm以下である請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記溝部は、前記発光素子からの距離が100μm以下の位置に形成されている請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記光透過性部材は、波長変換部材を含有する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
第1領域を囲む溝部を備えた基板を準備する工程と、
前記第1領域に発光素子を載置する工程と、
前記溝部の溝内に第1反射材を含有する第1樹脂を充填する工程と、
前記第1樹脂に遠心力をかけ、前記第1樹脂に含有される前記第1反射材を沈降させて、前記溝部の溝内に設けられる前記第1反射材を含有する含有層と前記発光素子の側面の少なくとも一部を被覆する透光層とを有する第1被覆部材を形成する工程と、
前記第1被覆部材
上及び前記発光素子上に光透過性部材を形成する工程と、を含む発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記基板を準備する工程は、前記基板からなる底面と樹脂壁による側面とからなる凹部を有するパッケージを準備し、前記第1樹脂を充填する工程の前に、前記凹部の側面から前記溝部の外側上端縁まで連続して第2樹脂で被覆して第2被覆部材を形成する工程を含む請求項7に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1被覆部材を形成する工程は、前記遠心力がかかった状態で前記第1樹脂を硬化させる請求項7又は請求項8に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1樹脂を硬化させる温度が40℃以上200℃以下である請求項9に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1樹脂の粘度が、0.3Pa・s以上15Pa・s以下である請求項7乃至請求項10のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1樹脂を充填する工程の前に、前記第1樹脂を準備する工程を含み、
前記第1樹脂を準備する工程は、2液硬化性の樹脂材料の主剤と前記第1反射材とを混合し、2時間以上経過後に硬化剤を混合する請求項7乃至請求項11のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記光透過性部材は、波長変換部材を含有する請求項7乃至請求項12のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に発光素子を載置した発光装置が知られている。例えば、特許文献1には、側面と底面を備えた凹部を有し、前記底面において前記側面と離間し素子載置領域を取り囲む線状又は点状の溝部を備えたパッケージと、前記素子載置領域に実装される発光素子と、前記発光素子を被覆し、前記溝部の内面に接する透光性樹脂と、前記凹部の側面から前記溝部の外側上端縁まで連続して形成された光反射性樹脂と、を備える発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献の技術では、発光効率について、更なる改善の余地がある。
本開示に係る実施形態は、発光効率が高い発光装置及び発光装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態に係る発光装置は、第1領域を囲む溝部を備えた基板と、前記第1領域に載置された発光素子と、前記溝部の溝内に設けられると共に前記発光素子の側面の少なくとも一部を被覆する第1被覆部材と、前記第1被覆部材及び前記発光素子上に設けられた光透過性部材と、を備え、前記第1被覆部材は、前記溝部の溝内に設けられる第1反射材を含有する含有層と、前記発光素子の側面の少なくとも一部を被覆する透光層と、を備える。
【0006】
本開示の実施形態に係る発光装置の製造方法は、第1領域を囲む溝部を備えた基板を準備する工程と、前記第1領域に発光素子を載置する工程と、前記溝部の溝内に第1反射材を含有する第1樹脂を充填する工程と、前記第1樹脂に遠心力をかけ、前記第1樹脂に含有される前記第1反射材を沈降させて、前記溝部の溝内に設けられる前記第1反射材を含有する含有層と前記発光素子の側面の少なくとも一部を被覆する透光層とを有する第1被覆部材を形成する工程と、前記第1被覆部材及び前記発光素子上に光透過性部材を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る実施形態の発光装置は、発光効率を高くすることができる。
本開示に係る実施形態の発光装置の製造方法は、発光効率が高い発光装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図1B】実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す平面図であり、一部を透過させて見た状態の平面図である。
【
図2】実施形態に係る発光装置の製造方法のフローチャートである。
【
図3A】実施形態に係る発光装置の製造方法において、発光素子を載置する工程を示す断面図である。
【
図3B】実施形態に係る発光装置の製造方法において、第2被覆部材を形成する工程を示す断面図である。
【
図3C】実施形態に係る発光装置の製造方法において、第1樹脂を充填する工程を示す断面図である。
【
図3D】実施形態に係る発光装置の製造方法において、第1被覆部材を形成する工程を示す模式図であり、遠心力によって第1反射材を沈降させる工程を示す模式図である。
【
図3E】実施形態に係る発光装置の製造方法において、第1被覆部材を形成する工程を示す断面図であり、遠心力によって第1反射材を沈降させた後の状態を示す断面図である。
【
図3F】実施形態に係る発光装置の製造方法において、光透過性部材を形成する工程を示す断面図である。
【
図4】他の実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図5A】他の実施形態に係る発光装置について、溝部の構成を模式的に示す平面図である。
【
図5B】他の実施形態に係る発光装置について、溝部の構成を模式的に示す平面図である。
【
図5C】他の実施形態に係る発光装置について、溝部の構成を模式的に示す平面図である。
【
図6】第1実施例に用いた発光装置の構造を示す画像である。
【
図7A】第1実施例における第1樹脂の塗布量と光束との関係を示すグラフである。
【
図7B】第1実施例における指向角による色度座標xのずれを示すグラフである。
【
図7C】第1実施例における指向角による色度座標yのずれを示すグラフである。
【
図7D】第1実施例における指向角による色度座標xのずれを示すグラフである。
【
図7E】第1実施例における指向角による色度座標yのずれを示すグラフである。
【
図8A】第2実施例に用いた発光装置について、発光素子載置後、第2樹脂を塗布した後の状態を示す画像である。
【
図8B】第2実施例に用いた発光装置について、更に第1樹脂を塗布した後の状態を示す画像である。
【
図8C】第2実施例に用いた発光装置について、更に第1樹脂に遠心力をかけ、反射材を遠心沈降した後の状態を示す画像である。
【
図8D】第2実施例に用いた発光装置について、素子電極を示す画像である。
【
図8E】第2実施例に用いた発光装置について、光透過性部材を形成した後の状態を示す画像である。
【
図9A】第2実施例における色調と光束との関係を示すグラフである。
【
図9B】第2実施例における各サンプルと光束との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための発光装置及び発光装置の製造方法を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる例示に過ぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0010】
《実施形態》
[発光装置]
図1Aは、実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図1Bは、実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す平面図であり、一部を透過させて見た状態の平面図である。
図1Cは、
図1AのIC-IC線における断面図である。
【0011】
発光装置100は、第1領域を囲む溝部17を備えた基板2と、第1領域に載置された発光素子20と、溝部17の溝内に設けられると共に発光素子20の側面の少なくとも一部を被覆する第1被覆部材30と、第1被覆部材30及び発光素子20上に設けられた光透過性部材50と、を備えている。更に、発光装置100は、第1被覆部材30が、溝部17の溝内に設けられる第1反射材を含有する含有層30aと、発光素子20の側面の少なくとも一部を被覆する透光層30bと、を備えている。
【0012】
つまり、発光装置100は、基板2を含むパッケージ10と、発光素子20と、第1被覆部材30と、第2被覆部材40と、光透過性部材50と、を備えている。
以下、発光装置100の各構成について説明する。
【0013】
パッケージ10は、基板2からなる底面と樹脂壁3による側面とからなる凹部15を有する。凹部15の開口は、例えば、平面視において1つの角部を他の角部と形を変えて略矩形に形成されている。
基板2は、第1リード電極2aと第2リード電極2bとからなる一対のリード電極と、第1リード電極2aと第2リード電極2bとを保持する樹脂成形体2cと、からなる。
第1リード電極2aは、凹部15の底面に露出し、発光素子20及びワイヤ23と接続される。第2リード電極2bは、凹部15の底面に露出し、ワイヤ24と接続される。
【0014】
第1リード電極2aは、発光素子20を載置する領域である第1領域16を囲む溝部17を備えている。溝部17は、ここでは、発光素子20の側面の直下の部位が溝部17の内側上端縁に位置するように形成されている。すなわち、溝部17は、発光素子20の外側面に沿った位置に形成されている。溝部17は、ここでは、平面視で矩形環状に第1領域16を囲んでいる。ただし、溝部17は、第1領域16を円環状、菱形環状等のその他の形状で囲んでもよい。
【0015】
第1領域を囲む溝部17の幅は、全周に亘って略同じであってもよいし、部分的に太くなっていてもよい。溝部17の幅は、30μm以上200μm以下が好ましい。溝部17の幅が30μm以上であれば、後記する含有層30aが溝部17の溝内に収納され易くなる。一方、200μm以下であれば、第1被覆部材30の量を低減することができる。また、基板2の強度が向上する。
溝部17の深さは、10μm以上150μm以下が好ましい。溝部17の深さが10μm以上であれば、後記する含有層30aが溝部17の溝内に収納され易くなる。また、第1反射材を沈降させ易くなる。一方、150μm以下であれば、第1被覆部材30の量を低減することができる。
【0016】
溝部17は、発光素子20に近接して設けられることが好ましい。具体的には、溝部17は、発光素子20からの距離が100μm以下の位置に形成されていることが好ましい。すなわち、発光素子20の側面と溝部17の内側上端縁との距離が100μm以下となるように形成されていることが好ましい。発光素子20からの距離が100μm以下であれば、発光素子20からの光が含有層30aで反射され易くなり、発光効率が向上する。なお、発光効率をより向上させ易くする場合は、溝部17は、発光素子20により近いほうが好ましく、発光素子20の外側面に溝部17の溝内側面が沿うように発光素子20から0μmの位置に形成されていることがより好ましい。なお、溝部17の外側上端縁が、平面視で発光素子20の外縁より外側に位置していれば、発光素子20の側面の直下の部位は溝部17上に位置していてもよい。この場合、発光素子20の実装性及び放熱性を考慮して、発光素子20の側面と溝部17の内側上端縁との距離は、50μm以下の距離とすることが好ましい。
【0017】
第1リード電極2a及び第2リード電極2bとしては、例えば、Fe、Cu、Ni、Al、Ag、Au、又は、これらの一種を含む合金を用いることができる。
また、第1リード電極2a及び第2リード電極2bは、表面にめっき層が形成されていてもよい。めっき層は、例えば、Au、Ag、Cu、Pt、又は、これらの一種を含む合金を用いることができる。めっき層がこれらの材料であれば、発光素子20からリード電極側に出射される光の反射率をより高めることができる。
【0018】
樹脂壁3は、基板2の上面側の周縁に形成されている。樹脂壁3は、基板2の外側面に沿って外壁面が形成され、内壁面は、基板2から凹部15の開口方向に向けて開口を広くするように傾斜して形成されている。なお、樹脂壁3は、基板2の上面に形成された溝内にも設けられており、これにより、樹脂壁3と基板2との密着性が向上する。
樹脂壁3及び樹脂成形体2cとしては、例えば、PA(ポリアミド)、PPA(ポリフタルアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、又は、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、又は、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
樹脂壁3及び樹脂成形体2cは、同一の部材で一体に成形されていてもよい。
【0019】
発光素子20は、電圧を印加すると自ら発光する半導体素子である。発光素子20は、ここでは、透光性の支持基板21と支持基板21上に形成された半導体層22を含む。支持基板21は絶縁性のものを使用できる他、導電性のものも使用することができる。発光素子20の形状や大きさ等は任意のものを選択できる。発光素子20の発光色としては、用途に応じて任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色(波長430~490nmの光)、緑色(波長495~565nmの光)の発光素子20としては、窒化物系半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaP等を用いたものを使用することができる。赤色(波長610~700nmの光)の発光素子20としては、窒化物系半導体素子の他にもGaAlAs、AlInGaP等を用いることができる。
発光素子20の厚み(例えば支持基板21の下面から半導体層22の上面までの高さ)は、例えば、100μm以上300μm以下である。
【0020】
発光素子20は、上面に一対の素子電極を備え、パッケージ10の凹部15の底面で第1リード電極2aにフェイスアップ実装されている。そして、ここでは、発光素子20の一方の素子電極がワイヤ23等の導電部材を介して第1リード電極2aに接合され、他方の素子電極がワイヤ24等の導電部材を介して第2リード電極2bに接合されている。
発光素子20をフェイスアップ実装することで、発光素子20の半導体層22を上面側(つまり発光装置100の光取り出し面側)に配置することができる。これにより、半導体層22の側面が第1被覆部材30に被覆されないようにすることができる。
このような構成とすることで、発光素子20側面での反射による一次光のロスを低減することができる。また、発光素子20の側面から取り出せる一次光が増えることで、発光装置100の配光特性をより改善することができる。
【0021】
第1被覆部材30は、溝部17の溝内に設けられると共に発光素子20の側面の一部を被覆して形成されている。第1被覆部材30は、第1反射材を含有する第1樹脂により形成されている。ここでは、第1被覆部材30は、第1反射材を含有する含有層30aと、第1反射材を含有しない透光層30bとがこの順に溝部17の部位において凹部15の底面側から設けられている。含有層30aは、溝部17の溝内に設けられており、溝部17の溝内に充填されている。含有層30aが溝部17の溝内に設けられていることで、発光素子20の側面に含有層30aが対向しないようにすることができると共に、発光素子20からの光をより反射し易くなり、発光効率が向上する。
透光層30bは、含有層30a上に設けられると共に、第2被覆部材40の一部を被覆している。また、透光層30bは、発光素子20の側面の一部を被覆しているが、側面の全てを被覆するものであってもよい。
なお、発光素子20の側面とは、ここでは、支持基板21の側面と半導体層22の側面とを合わせた部分である。
【0022】
含有層30aは第1反射材が沈降してできた層であり、第1被覆部材30の深さ方向において、第1反射材が高濃度に配置される領域である。透光層30bは第1反射材が沈降することにより上方にできる樹脂を主体とする層である。つまり、含有層30aと透光層30bとの間には明確な界面は形成されていない。
なお、含有層30aは、発光素子20の側面を被覆しないように設けられることが好ましい。このような構成によれば、発光素子20の側面からの光取り出し効率が向上し、発光素子20の側方の領域における配光特性を改善することができる。
【0023】
第1樹脂に用いる樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
第1樹脂の粘度は、室温(20±5℃)で、0.3Pa・s以上15Pa・s以下であることが好ましい。第1樹脂の粘度が0.3Pa・s以上であれば、ポッティングにより凹部15の底面に第1樹脂を容易に配置しやすい。また、第1樹脂の粘度が15Pa・s以下であれば、遠心力による第1被覆部材30の形状変化が容易となる。更に遠心力により第1反射材を沈降させ易くなる。なお、上述した効果を得るためのより好ましい第1樹脂の粘度は、0.5Pa・s以上6Pa・s以下である。
なお、ここでの第1樹脂の粘度は、第1反射材を含有した状態の粘度であり、後記するように、遠心力によって第1樹脂に含有される第1反射材を沈降させる前の粘度である。
【0024】
第1反射材に用いる光反射材としては、例えば、酸化チタン、シリカ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、酸化亜鉛、窒化硼素等が挙げられる。なかでも、光反射の観点から、屈折率が比較的高い酸化チタンを用いることが好ましい。
第1反射材としては、第1樹脂に用いる樹脂材料よりも比重の大きいものを用いることが好ましい。第1反射材と樹脂材料との比重差により、遠心力で第1反射材を溝部17の溝内に沈降させ易くなる。更に、第1反射材に粒径の大きいものを使用することにより、より早く第1反射材を溝部17の溝内に沈降させることができる。
また、遠心力を用いることで第1反射材が高密度に配置されるため、粒子間の間隔が小さくなり、光の漏れや光透過が抑制され、含有層30aにおける光反射率を向上させることができる。
第1反射材の粒径は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。第1反射材の粒径が0.1μm以上であれば、遠心力により第1反射材を沈降させ易くなる。また、第1反射材の粒径が1.0μm以下であれば、可視光を光反射させ易い。第1反射材の粒径は、上記観点から、より好ましくは0.4μm以上0.6μm以下である。
【0025】
第2被覆部材40は、発光素子20から出射された光を反射させる部材である。
発光素子20から出射される光が凹部15の底面や側面で透過、吸収されないように、溝部17が存在する部位以外の凹部15内の表面は第2被覆部材40で被覆されることが好ましい。
【0026】
第2被覆部材40は、パッケージ10の凹部15の側面を被覆して形成されている。また、第2被覆部材40は、凹部15の側面から溝部17の外側上端縁まで連続して被覆している。すなわち、第2被覆部材40は、凹部15の側面の上端から、溝部17の外側上端縁まで連続して被覆して形成されている。第2被覆部材40は、第2反射材を含有する第2樹脂により形成されている。第2被覆部材40は凹部15の側面の高さ方向の略全てを被覆することがより好ましいが、少なくとも、発光装置100の断面視において発光素子20の上面よりも第2反射材の上端が高くなるように凹部15の側面を被覆することが好ましい。第2被覆部材40は、樹脂壁3の内壁面から溝部17の直前までの間に設けられている。なお、第2被覆部材40は、溝部17の外側から所定位置までの間において透光層30bが上面を覆うように形成されている。
【0027】
第2被覆部材40は、第2反射材が第2樹脂中に分散している。ここで、第2反射材が第2樹脂中に分散しているとは、反射層としての機能を有する程度に反射材が分散していればよいこと意味し、例えば、従来公知の方法で反射材を含有する樹脂を塗布した場合の分散状態であればよい。なお、第2被覆部材40は、反射層としての機能を有していれば、第2反射材が部分的に偏って配置されていても構わない。
第2被覆部材40に対する第2反射材の含有濃度は、例えば10質量%以上50質量%以下である。
第2被覆部材40が凹部15の底面及び側面を被覆することで、凹部15の底面及び側面による光の透過及び吸収を防止することができる。
【0028】
第2樹脂に用いる樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。第2反射材に用いる光反射材としては、例えば、酸化チタン、シリカ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、酸化亜鉛、窒化硼素等が挙げられる。なかでも、光反射の観点から、屈折率が比較的高い酸化チタンを用いることが好ましい。
【0029】
光透過性部材50は、第1被覆部材30、発光素子20及び第2被覆部材40上に配置されて形成されている。光透過性部材50は、光を透過する樹脂により形成されている。
光透過性部材50の樹脂に用いる樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。光透過性部材50の樹脂に用いる樹脂材料は、前記した第1樹脂及び第2樹脂と同じ樹脂材料であってもよいし、異なる樹脂材料であってもよい。また、第1樹脂及び第2樹脂に耐熱性の高い樹脂を用い、光透過性部材50の樹脂に硬質の樹脂を用いることもできる。
【0030】
なお、前記の第1樹脂は、光透過性部材50の樹脂よりも軟質であることが好ましい。第1樹脂は発光素子20と基板2との接合領域近傍に配置される部材であるため、熱膨張により過剰な応力がかからないように、熱に対して膨張しにくい、熱に対して柔軟性のある材料を用いることが好ましい。
シリコーン樹脂は、エポキシ樹脂よりも一般に450nm以上500nm以下付近での耐光性が高く、また、エポキシ樹脂はシリコーン樹脂よりも硬質である。そのため、第1樹脂及び第2樹脂にシリコーン樹脂を用い、光透過性部材50の樹脂にエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0031】
光透過性部材50は、波長変換部材を含有してもよい。波長変換部材としては、例えば、蛍光体が挙げられる。また、光透過性部材50は、目的に応じて、拡散材、フィラー等を含有してもよい。
蛍光体としては、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、YAG(Y3Al5O12:Ce)やシリケート等の黄色蛍光体、CASN(CaAlSiN3:Eu)やKSF(K2SiF6:Mn)等の赤色蛍光体、或いは、クロロシリケートやBaSiO4:Eu2+等の緑色蛍光体を用いることができる。
拡散材としては、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等を用いることができる。
【0032】
[発光装置の動作]
発光装置100を駆動すると、第1リード電極2a及び第2リード電極2bを介して外部電源から発光素子20に電流が供給され、発光素子20が発光する。発光素子20が発光した光は、上方へ進む光は、発光装置100の上方の外部に取り出される。また、下方へ進む光は、含有層30a及び第2被覆部材40で反射され、凹部15の開口方向に放出されて発光装置100の外部に取り出される。また、横方向へ進む光は、第2被覆部材40で反射され、凹部15の開口方向に放出されて発光装置100の外部に取り出される。これにより発光素子20から出射された光が凹部15の底面及び側面から漏れるのを極力抑えることができ、発光装置100は、光取り出し効率が向上する。また、発光装置100は、色ムラが低減する。また、発光装置100は、溝部17の溝内に含有層30aが設けられているため、取り出し効率が向上し、発光効率が向上する。
【0033】
[発光装置100の製造方法]
次に、実施形態に係る発光装置の製造方法の一例について説明する。
図2は、実施形態に係る発光装置の製造方法のフローチャートである。
図3Aは、実施形態に係る発光装置の製造方法において、発光素子を載置する工程を示す断面図である。
図3Bは、実施形態に係る発光装置の製造方法において、第2被覆部材を形成する工程を示す断面図である。
図3Cは、実施形態に係る発光装置の製造方法において、第1樹脂を充填する工程を示す断面図である。
図3Dは、実施形態に係る発光装置の製造方法において、第1被覆部材を形成する工程を示す模式図であり、遠心力によって第1反射材を沈降させる工程を示す模式図である。
図3Eは、実施形態に係る発光装置の製造方法において、第1被覆部材を形成する工程を示す断面図であり、遠心力によって第1反射材を沈降させた後の状態を示す断面図である。
図3Fは、実施形態に係る発光装置の製造方法において、光透過性部材を形成する工程を示す断面図である。
【0034】
発光装置100の製造方法は、第1領域16を囲む溝部17を備えた基板2を準備する工程である、基板を準備する工程S101と、第1領域16に発光素子20を載置する工程である、発光素子を載置する工程S102と、凹部15の側面から溝部17の外側上端縁まで連続して第2樹脂で被覆して第2被覆部材40を形成する工程である、第2被覆部材を形成する工程S103と、第1樹脂を準備する工程S104と、溝部17の溝内に第1反射材を含有する第1樹脂を充填する工程である、第1樹脂を充填する工程S105と、第1樹脂に遠心力をかけ、第1樹脂に含有される第1反射材を沈降させて、溝部17の溝内に設けられる第1反射材を含有する含有層30aと発光素子20の側面の少なくとも一部を被覆する透光層30bとを有する第1被覆部材30を形成する工程である、第1被覆部材を形成する工程S106と、第1被覆部材30及び発光素子20上に光透過性部材50を形成する工程である、光透過性部材を形成する工程S107と、を含む。
なお、各部材の材質や配置等については、前記した発光装置100の説明で述べた通りであるので、ここでは適宜、説明を省略する。
【0035】
(基板を準備する工程)
基板を準備する工程S101は、第1領域16を囲む溝部17を備えた基板を準備する工程である。
この工程S101では、基板2からなる底面と樹脂壁3による側面とからなる凹部15を有するパッケージ10を準備する。
この工程S101では、まず、第1リード電極2aに第1領域16を囲む溝部17を形成する。溝部17は、例えば、エッチングやプレスにより形成することができる。なお、第1リード電極2a及び第2リード電極2bは、必要に応じて、無電解めっき或いは電解めっきにより、表面にめっき層を形成する。また、第1リード電極2a及び第2リード電極2bは、樹脂壁3が設けられる溝を、溝部17を形成するときに併せて形成してもよい。次に、第1リード電極2a及び第2リード電極2bをパッケージ製造用の金型に配置し、樹脂壁3及び樹脂成形体2cを形成するための樹脂を金型に注入して樹脂を硬化させる。これにより、基板2に溝部17を備えたパッケージ10を製造する。
なお、工程S101として、予め溝部が形成された基板を準備してもよい。
【0036】
(発光素子を載置する工程)
発光素子を載置する工程S102は、第1領域16に発光素子20を載置する工程である。
この工程S102では、パッケージ10の凹部15の底面に発光素子20を載置する。ここでは、第1リード電極2a上に発光素子20を載置する。発光素子20は、電極形成面を主な光取り出し面として、電極形成面と反対側の面を実装面として、非導電性接着材により凹部15の底面にフェイスアップ実装されている。非導電性接着材としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の接着材を用いればよい。また、発光素子20はフリップチップ実装されていてもよく、この場合、導電性接着材を用いて実装される。導電性接着材としては、例えば、共晶はんだ、導電ペースト、バンプ等を用いればよい。
【0037】
(第2被覆部材を形成する工程)
第2被覆部材を形成する工程S103は、凹部15の側面から溝部17の外側上端縁まで連続して第2樹脂で被覆して第2被覆部材40を形成する工程である。
この工程S103では、例えば、ポッティングにより、凹部15の側面を被覆する第2樹脂を配置する。第2樹脂の凹部15への配置は、第2樹脂が充填された樹脂吐出装置の先端のノズルから未硬化の樹脂材料を凹部15の底面の外縁近傍(好ましくは側面との境界)に吐出することで行うことができる。未硬化の第2樹脂は凹部15の側面に濡れ広がり、凹部15の側面を被覆する。この際、凹部15の底面にも第2樹脂が流動するため、第2樹脂は凹部15の底面の一部を被覆している。ここでは、凹部15の底面を流動する第2樹脂が、溝部17の外側上端縁に達し、かつ溝部17に濡れ広がらないように、かつ、凹部15の側面の上方に這い上がるように、第2樹脂の粘度及び配置位置を調整しておくことが好ましい。第2被覆部材40をポッティングにより形成する場合、第2樹脂の粘度は、例えば室温(20±5℃)で、1Pa・s以上50Pa・s以下に調整される。
溝部17の溝内に第2樹脂が流動すると、第2樹脂が溝部17の内側上端縁を越えて、発光素子20の側面まで濡れ広がり、側面からの光取り出しを妨げる虞があるため、第2樹脂は溝部17の溝内を被覆しないことが好ましい。
【0038】
なお、パッケージ10は、予め凹部15の内面を有機溶剤で浸す処理をしておくこともできる。予め凹部15の内面を有機溶剤で浸す処理をしておくことで、第2樹脂の凹部15の側面への這い上がりを促進することができる。また、凹部15の側面に濡れ性の高い材料を用いたり、側面の表面を粗面加工したりすること等でも、凹部15の側面への這い上がりを促進することができる。
なお、硬化前の第2樹脂には第2反射材が混合されており、第2樹脂中に含有される第2反射材の含有濃度は、10質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。
第2樹脂は、第2樹脂をポッティングにより凹部15の底面の外縁近傍に配置することで、第2樹脂が凹部15の側面に濡れ広がる。なおこの際、第2被覆部材40は、第2反射材が第2樹脂中に分散した状態である。
その後、例えば、120℃以上200℃以下の温度で第2樹脂を硬化させ、第2被覆部材40を形成する。第2樹脂の硬化は、第2樹脂が凹部15の側面に濡れ広がった後で、パッケージが静置した状態で行うことが好ましい。
【0039】
(第1樹脂を準備する工程)
第1樹脂を準備する工程S104は、2液硬化性の樹脂材料の主剤と第1反射材とを混合し、一定時間以上経過後に硬化剤を混合する工程である。
このようにして作製した第1樹脂を用いることで、第1反射材と樹脂材料とのなじみを良くし、遠心力により第1反射材を沈降させ易くすることができる。硬化剤混合前の温度は室温程度とする。
2液硬化性の樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
2液硬化性の樹脂材料の主剤と第1反射材とを混合して経過させる時間は、第1反射材をより沈降させ易くする観点から、好ましくは2時間以上である。また、経過させる時間は、製造時間を短縮させる観点から、好ましくは8時間以下である。なお、硬化剤を混合した後は、第1樹脂が硬化する前に次工程に移る。
なお、未硬化の第1樹脂に対する第1反射材の含有濃度は、例えば15質量%以上60質量%以下程度である。
【0040】
(第1樹脂を充填する工程)
第1樹脂を充填する工程S105は、溝部17の溝内に第1反射材を含有する第1樹脂31を充填する工程である。
この工程S105では、例えば、ポッティングにより、凹部15の側面と溝部17の外側上端縁との間に未硬化の第1樹脂31を配置する。具体的には、凹部15の側面から溝部17の外側上端縁まで連続して被覆する第2被覆部材40上に未硬化の第1樹脂31を配置する。溝部17近傍の第2被覆部材40上に第1樹脂を配置することにより、第1樹脂が溝部17内に流動し、溝部17内に充填される。未硬化の第1樹脂31は、例えば発光素子20の対向する側面近傍2か所に配置し、第1樹脂自身の重さ、又は遠心力によって、溝内に流動し、溝内に充填されることが好ましい。これにより、溝内に流動した第1樹脂は、溝内を凹部15の底面と平行に移動するため、第1樹脂が溝内に充填される前に、垂直方向に第1樹脂が濡れ広がることを抑制することができる。
つまり、溝部17内に直接第1樹脂31をポッティングしないことにより、第1樹脂の発光素子20側への流動が抑制され、遠心回転させる前に第1樹脂が発光素子20の側面へ這い上がってしまうことを抑制することができる。発光素子20の側面への第1樹脂の這い上がりは、遠心回転で第1樹脂の形状が変化することにより解消されるが、第1樹脂の粘度や遠心回転速度によっては、第1樹脂中の第1反射材が発光素子20の側面に残ってしまう虞がある。このため、遠心回転させる前の第1樹脂は、発光素子20の側面を被覆していないことが好ましい。
なお、樹脂の粘度等により、溝内に第1樹脂が流動されにくいときには、直接溝内に第1樹脂31をポッティング等により配置してもよい。
【0041】
(第1被覆部材を形成する工程)
第1被覆部材を形成する工程S106は、溝部17に第1樹脂が配置された基板に遠心力をかけ、第1樹脂に含有される第1反射材を沈降させて、溝部17の溝内に設けられる第1反射材を含有する含有層30aと発光素子20の側面の少なくとも一部を被覆する透光層30bとを有する第1被覆部材30を形成する工程である。
【0042】
この工程S106では、凹部15の底面に遠心力がかかる方向に基板2、すなわちパッケージ10を遠心回転させる。この遠心力を利用して、第1樹脂中の第1反射材を凹部15の底面側に強制的に沈降させることにより、第1反射材の沈降層として第1反射材が高密度に配置される含有層30aと、上澄み液として透光層30bと、が形成される。このように、遠心沈降により含有層30aを形成することにより、第1樹脂中に含有される第1反射材の含有量を少なくしながらも、第1反射材の粒子を底面側に高密度に配置することができる。これにより、溝部17の溝内に設けられる含有層30aと、発光素子20の側面の一部を被覆する透光層30bとを形成することができる。
なお、第1樹脂を充填する工程S105で、遠心力により第1樹脂を溝内に流動させる場合は、第1樹脂を溝内に流動させるための遠心回転と、本工程S106で行う遠心回転とを同時に行うことができる。
【0043】
図3Dに示すように、パッケージ10の回転は、基板2の上面、すなわち凹部15の底面が外側になるような回転軸90でパッケージ10に遠心力をかけることにより行うことが好ましい。具体的には、パッケージ10の上面側に回転軸90を有するように、回転軸90を軸として公転するA方向にパッケージ10を移動させる。なお、
図3DにおけるB方向は、凹部15の底面に平行な方向である。
図3D中、B方向はパッケージ10の移動に伴うように3つ記載しているが、実際には連続している。
回転軸90は、凹部15の底面の略中心を通る垂直線上に位置する凹部15の底面に平行な軸であり、かつ、パッケージ10に対して凹部15の開口部側に位置する。これにより、凹部15の底面方向に遠心力が働き、第1樹脂のパッケージ10の高さ方向への広がりが抑制されると共に、第1樹脂に含有されている第1反射材が凹部15の底面側(
図3Dにおける矢印C方向)に強制的に沈降される。この状態で第1樹脂を硬化させることにより、第1反射材を含有する含有層30aと透光層30bとがこの順に溝部17の部位において凹部15の底面に形成される。
【0044】
また、第1被覆部材30は、塗布する量や第1樹脂に含有される第1反射材の含有量が適宜調整される。
パッケージ10を遠心回転させる際の回転速度や回転数は、第1反射材の含有量や粒径等にもよるが、例えば200xg以上の遠心力がかかるように、回転数や回転半径を調整すればよい。
【0045】
なお、製造工程において、個片化前の集合基板の状態でパッケージ10を遠心回転させる際には、集合基板が平板状であると、集合基板の平面積が大きくなるほど(より詳細には回転方向Aにおける基板長さが長くなるほど)、集合基板の中心から離れた位置のパッケージ10は回転軸90からのずれが生じる。例えば、集合基板において、公転する円周上からB方向へのずれが大きくなると、第1樹脂の表面が凹部15の底面に対して傾斜してしまい、集合基板の中で第1樹脂の表面状態にばらつきが生じる虞がある。このずれを抑制するために、回転半径を大きくすることで抑制することができる。具体的には、回転方向に配置される集合基板の長さの70倍以上の回転半径とすることで、ずれを抑制することができる。
なお、遠心力により、集合基板が回転半径の円周に沿って撓むような可撓性を有する樹脂パッケージ10を用いる場合は、上記ずれが生じにくくなるため、非可撓性のパッケージ10の集合基板よりも大きい集合基板で遠心回転することができる。これにより、一回の処理数を多くすることができる。このような可撓性を有する集合基板としては、例えばリードで連結した樹脂パッケージが挙げられる。
【0046】
また、この工程S106では、第1反射材を沈降させながら、すなわち遠心力がかかった状態で、第1樹脂を硬化させることが好ましい。第1反射材は、粒径の小さいものを使用することが好ましいが、粒径が小さくなるほど沈降しにくくなるため、この工程S106では遠心力により凹部15の底面側に第1反射材を強制的に沈降させている。このため、第1反射材を沈降させた状態で硬化させるために、この工程S106では、回転を維持したまま、つまり回転させながら第1樹脂の硬化工程を行うことが好ましい。
なお、回転を止めてから硬化させることも可能であるが、回転が止まると、濡れ性により樹脂が発光素子20の側面に広がりやすくなってしまう。このため、パッケージ10を回転させながら第1樹脂を硬化させることで、第1樹脂が発光素子20の側面に這い上がることを防止することができる。発光素子20の側面が第1樹脂から露出することにより、光取り出し効率をより向上させることができると共に、発光装置100の配光特性をより良好にすることができる。
【0047】
この際、第1樹脂を硬化させる温度は、40℃以上200℃以下が挙げられる。硬化させる温度を高くすることで、第1樹脂を硬化させる時間を短縮でき、効率的である。また、遠心沈降させる装置の金属が熱により膨張することで回転軸90がぶれることを考慮すると、硬化させる温度はなるべく低いことが好ましい。つまり、第1樹脂を硬化させる温度は、効率性の観点から、好ましくは50℃以上である。また、第1樹脂を硬化させる温度は、回転軸90がぶれることを考慮し、好ましくは60℃以下である。80℃以上で硬化させる際には、少なくとも遠心回転装置の金属部分が80℃以上とならないように、装置を調整することが好ましい。
なお、第1樹脂を構成する樹脂材料としては、回転するパッケージ10を40℃以上の温度に保つことで少なくとも仮硬化状態が得られる樹脂材料を選択することが好ましい。
第1反射材を沈降させながら第1樹脂を硬化させる方法としては、例えば、熱風をかけたり、パネルヒータ等を用いたりすることが挙げられる。
【0048】
(光透過性部材を形成する工程)
光透過性部材を形成する工程S107は、第1被覆部材30、第2被覆部材40及び発光素子20上に光透過性部材50を形成する工程である。
この工程S107では、ポッティングやスプレー等により、凹部15内に光透過性部材50の樹脂を配置する。その後、例えば、120℃以上200℃以下の温度で光透過性部材50の樹脂を硬化させ、光透過性部材50を形成する。
【0049】
以上、発光装置及び発光装置の製造方法について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれる。
【0050】
《他の実施形態》
図4は、他の実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す断面図である。
図5Aは、他の実施形態に係る発光装置について、溝部の構成を模式的に示す平面図である。
図5Bは、他の実施形態に係る発光装置について、溝部の構成を模式的に示す平面図である。
図5Cは、他の実施形態に係る発光装置について、溝部の構成を模式的に示す平面図である。
【0051】
図4に示す発光装置100Aは、保護素子60を備えている。保護素子60は、上面に素子電極を備え、パッケージ10の凹部15の底面で第2リード電極2bにフェイスアップ実装されている。そして、ここでは、保護素子60の電極がワイヤ25等の導電部材を介して第1リード電極2aに接合されている。保護素子60は、例えば、ツェナーダイオードである。
保護素子60は、発光素子を載置する工程S102において、パッケージ10の凹部15の底面に載置すればよい。
【0052】
また、発光装置は、発光素子20を複数備えるものであてもよい。そして、例えば、発光素子20を2つ備える場合、
図5Aに示すように、溝部17は、2つの発光素子20を1つの平面視で矩形環状の溝部17で囲むものであってもよい。また、
図5Bに示すように、溝部17は、2つの発光素子20のそれぞれを平面視で矩形環状の溝部17で囲むものであってもよい。また、
図5Cに示すように、溝部17は、2つの発光素子20の隣り合う部分の溝部17が、一体となった形状であってもよい。
【0053】
また、以上説明した発光装置は、発光素子をフェイスアップ実装するものとしたが、発光素子をフリップチップ実装したものであってもよい。発光素子をフリップチップ実装した場合、台座としてサブマウントやバンプやポスト電極等を用いて、発光素子を、発光素子の高さ方向へかさ上げすることが好ましい。発光素子をフリップチップ実装した場合、半導体層が基板の凹部の底面側(発光装置の基板側)に配置されるが、発光素子を、発光素子の高さ方向へかさ上げすることで、半導体層の側面の一部又は全体を第1被覆部材で被覆しないようにすることができる。
また、以上説明した発光装置は、凹部を有するパッケージを用い、凹部の底面に発光素子を載置するものとしたが、発光装置は、平板の基板を用い、基板上に発光素子を載置したものであってもよい。
【0054】
また、発光装置の製造方法は、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間、或いは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、製造途中に混入した異物を除去する異物除去工程等を含めてもよい。
【0055】
また、発光装置の製造方法において、一部の工程は、順序が限定されるものではなく、順序が前後してもよい。例えば、前記した発光装置の製造方法は、第2被覆部材を形成する工程の後に、第1樹脂を準備する工程を設けるものとしたが、第1樹脂を準備する工程は、第2被覆部材を形成する工程の前に行ってもよく、発光素子を載置する工程の前に行ってもよく、基板を準備する工程の前に行ってもよい。また、第1樹脂を準備する工程は設けないものであってもよい。
また、第2被覆部材を形成する工程は、発光素子を載置する工程の後、第1樹脂を準備する工程の前に行うものとしたが、第2被覆部材を形成する工程は、発光素子を載置する工程の前に行ってもよく、また、第1被覆部材を形成する工程の後、光透過性部材を形成する工程の前に行ってもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例について説明する。
図6は、第1実施例に用いた発光装置の構造を示す画像である。
図7Aは、第1実施例における第1樹脂の塗布量と光束との関係を示すグラフである。
図7Bは、第1実施例における指向角による色度座標xのずれを示すグラフである。
図7Cは、第1実施例における指向角による色度座標yのずれを示すグラフである。
図7Dは、第1実施例における指向角による色度座標xのずれを示すグラフである。
図7Eは、第1実施例における指向角による色度座標yのずれを示すグラフである。
図8Aは、第2実施例に用いた発光装置について、発光素子載置後、第2樹脂を塗布した後の状態を示す画像である。
図8Bは、第2実施例に用いた発光装置について、更に第1樹脂を塗布した後の状態を示す画像である。
図8Cは、第2実施例に用いた発光装置について、更に第1樹脂に遠心力をかけ、反射材を遠心沈降した後の状態を示す画像である。
図8Dは、第2実施例に用いた発光装置について、素子電極を示す画像である。
図8Eは、第2実施例に用いた発光装置について、光透過性部材を形成した後の状態を示す画像である。
図9Aは、第2実施例における色調と光束との関係を示すグラフである。
図9Bは、第2実施例における各サンプルと光束との関係を示すグラフである。
【0057】
[第1実施例]
図6に示す構造の発光装置を作製した。
図6に示す構造の発光装置は、それぞれ第1樹脂の塗布量が異なる以外は、ほぼ同じである。まず、凹部の底面に溝部が形成されたパッケージを準備した。凹部の底面には第1リード電極と第2リード電極が配置され、溝部は第1リード電極上に形成されている。リード電極にはAuめっきが施されている。溝部は、幅を100μm、深さを100μmの断面視略半円形状である。
次に、凹部の底面に発光素子を載置した。次に、第2反射材を含有する第2樹脂で凹部の底面及び側面を被覆して第2被覆部材を形成した。次に、実施例については、溝部の溝内に、第1反射材を含有する第1樹脂を充填し、遠心沈降により第1反射材を沈降させた後に硬化し、第1被覆部材を形成した。第1樹脂の塗布量は、
図6、
図7A~
図7Eの通り、0.10mg、0.12mg、0.14mg、0.16mgとし、塗布位置Dは2点とした。なお、
図7B~
図7Eの項目欄の数値は第1樹脂の塗布量である。第1樹脂に含まれる第1反射材の濃度は37.5質量%とした。また、比較例については、第1被覆部材を設けなかった。次に、第1被覆部材、第2被覆部材及び発光素子上に、蛍光体を含有する光透過性部材を形成した。
【0058】
発光素子としては、発光ピーク波長が約442nmの窒化物系半導体素子を用いた。第1反射材としては平均粒径約280nmの酸化チタンを用い、第2反射材としては平均粒径約500nmの酸化チタンを用いた。蛍光体としてはYAG:Ceを用いた。第1樹脂としては樹脂粘度3.5Pa・sのシリコーン樹脂を用い、第2樹脂としては樹脂粘度1.0Pa・sのシリコーン樹脂を用い、光透過性部材の樹脂としては第1樹脂と同様の樹脂粘度3.5Pa・sのシリコーン樹脂を用いた。
【0059】
このようにして作製した各サンプルについて、色調x=0.32での光束を測定した。光束の測定は、積分球を使用した全光束測定装置を用いて、比較例の発光装置の光束を100%として、各サンプルの相対光束を算出した。この結果を
図7Aに示す。
図7Aに示すように、溝部の溝内に第1被覆部材を設けたサンプルは、溝部の溝内に第1被覆部材を設けないサンプルに比べ、光束が高くなった。また、実施例のサンプルでは、溝部を設けずに第1被覆部材を形成する場合に比べ、第1反射材を遠心沈降させる前の第1樹脂が発光素子側に流動しない。そのため、製造工程での作業が安易であり、量産性に優れる。
【0060】
なお、参考として、各サンプルについて、指向角による色度座標x,yのずれを測定した。指向角を
図1AのIC-IC線と直交する方向(0°方向)を基準とした場合の配光色度Δx,Δyをそれぞれ
図7B、
図7Cに示し、指向角を
図1AのIC-IC線の方向(90°方向)を基準とした場合の配光色度Δx,Δyをそれぞれ
図7D、
図7Eに示す。ここで、配光色度Δx,Δyとは、正面方向の色度座標を基準として、発光装置の指向角による色度座標のずれを表すものである。
図7B~
図7Eに示すように、溝部の溝内に第1被覆部材を設けたサンプルは、溝部の溝内に第1被覆部材を設けないサンプルに比べ、配光色度Δx,Δyに顕著な差は見られなかった。
つまり、実施例のサンプルでは遠心沈降により第1反射材を含有する含有層が溝内に形成され、発光素子の側面の略全てが含有層から露出するため、発光素子側面からの光取り出しが含有層により妨げられない。このため、配光色度を悪化させることなく、光束のみを向上させることが可能となる。
【0061】
[第2実施例]
第1実施例の発光装置の作製方法に準じて、各サンプルを作成した。第2実施例では、実施例として、第1反射材を技術機I(回転半径0.65m)を用いて回転数700rpmにより遠心沈降させたもの、第1反射材を技術機II(回転半径0.1m)を用いて回転数3000rpmにより遠心沈降させたものを各9サンプル作製した。第1樹脂塗布量は、全て0.09mgとした。また、比較例として、溝部の溝内に第1被覆部材を設けなかったもの(遠沈無し)を9サンプル作製した。
図8A~
図8Eは、技術機Iを用いたサンプルの各作製工程での画像である。
【0062】
このようにして作製した各サンプルについて、色調と光束との関係を調べた。光束の測定は、積分球を使用した全光束測定装置を用い、室温約25℃の環境下で行った。この結果を
図9Aに示す。また、
図9Aの結果から、色調x=0.32での光束を算出した。この結果を
図9Bに示す。
図9Bに示すように、溝部の溝内に第1被覆部材を設けたサンプルは、溝部の溝内に第1被覆部材を設けないサンプルに比べ、光束が高くなった。また、技術機Iよりも遠心力が高い技術機IIを用いたサンプルのほうがより光束が高くなった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示の実施形態に係る発光装置は、液晶ディスプレイのバックライト光源、各種照明器具、大型ディスプレイ、広告や行き先案内等の各種表示装置、更には、デジタルビデオカメラ、ファクシミリ、コピー機、スキャナ等における画像読取装置、プロジェクタ装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
2 基板
2a 第1リード電極
2b 第2リード電極
2c 樹脂成形体
3 樹脂壁
10 パッケージ
15 凹部
16 第1領域
17 溝部
20 発光素子
21 支持基板
22 半導体層
23 ワイヤ
24 ワイヤ
25 ワイヤ
30 第1被覆部材
30a 含有層
30b 透光層
31 第1樹脂
40 第2被覆部材
50 光透過性部材
60 保護素子
90 回転軸
100,100A 発光装置
A パッケージの回転方向
B 凹部の底面に平行な方向
C 第1反射材が沈降する方向
D 塗布位置