(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】転写用積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/20 20060101AFI20240313BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20240313BHJP
H05K 3/40 20060101ALI20240313BHJP
H05K 3/42 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H05K3/20 B
H05K1/11 H
H05K1/11 N
H05K3/40 K
H05K3/42 630
(21)【出願番号】P 2023549889
(86)(22)【出願日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2023017673
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2022092146
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】冨士川 亘
(72)【発明者】
【氏名】深澤 憲正
(72)【発明者】
【氏名】萩原 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】田村 礼
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/037512(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/146195(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/003877(WO,A1)
【文献】特開2012-227301(JP,A)
【文献】特開2021-102806(JP,A)
【文献】特開2010-028107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/20
H05K 1/11
H05K 3/40
H05K 3/42
H05K 1/03
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体(A)の少なくとも一面に、分散剤(b1)及び導電性物質(b2)を含有するめっき下地層(B)と、官能基[X]を有する化合物(c1)を含有する樹脂層(C)が順次積層された積層体であって、
前記めっき下地層(B)において、グロー放電発光分光法で測定した炭素原子の信号強度が、仮支持体(A)側よりも樹脂層(C)側が大きいことを特徴とする転写用積層体。
【請求項2】
前記めっき下地層(B)において、さらに、グロー放電発光分光法の信号強度が、仮支持体(A)側が樹脂層(C)側の2/3以下であることを特徴とする請求項1記載の転写用積層体。
【請求項3】
前記めっき下地層(B)に含まれる前記
分散剤(b1)が有する塩基性窒素原子含有基またはリン酸エステル基と、前記樹脂層(C)に含まれる前記化合物(c1)が有する官能基[X]とを反応させることによって化学結合を形成したものであることを特徴とする請求項1または2記載の転写用積層体。
【請求項4】
前記官能基[X]がエポキシ基、カルボン酸基、無水カルボン酸基、ケト基、アルキロールアミド基、イソシアネート基、ビニル基、アルキルハライド基、アクリロイル基、シアナマイド基、カルバミド基、アシルハライド基から選択される一つ以上の官能基、または、エポキシ基、アミノ基から選択される一つ以上の官能基であることを特徴とする請求項3記載の転写用積層体。
【請求項5】
前記導電性物質(b2)が、銀であることを特徴とする請求項1または2記載の転写用積層体。
【請求項6】
前記樹脂層(C)が1層以上であることを特徴とする請求項1または2記載の転写用積層体。
【請求項7】
前記仮支持体(A)のレーザー顕微鏡で測定したときの表面粗さ(最大高さSz)が、0.001~20μmであることを特徴とする請求項1または2記載の転写用積層体。
【請求項8】
前記仮支持体(A)の表面に離型層を有するものである請求項1または2記載の転写用積層体。
【請求項9】
前記仮支持体(A)がフィルムまたは金属であることを特徴とする請求項1または2記載の転写用積層体。
【請求項10】
支持体Dの少なくとも一面に、請求項1または2記載の転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面側を貼り合わせたものであること特徴とする積層体。
【請求項11】
支持体Dが熱硬化性樹脂であって、完全に硬化しているものを用いること特徴とする請求項10記載の積層体。
【請求項12】
前記仮支持体(A)の少なくとも一面に、塩基性窒素原子含有基またはリン酸エステル基を含有する分散剤(b1)、及び導電性物質(b2)を含有するめっき下地層(B)を形成する工程1、
その上に、官能基[X]を有する化合物(c1)を含有する樹脂層(C)を形成し、
前記めっき下地層(B)に含まれる前記分散剤(b1)が有する塩基性窒素原子含有基またはリン酸エステル基と、前記樹脂層(C)に含まれる前記化合物(c1)が有する官能基[X]とを反応させることによって化学結合を形成する工程2、
を有することを特徴とする請求項1または2記載の転写用積層体の製造方法。
【請求項13】
前記仮支持体(A)の少なくとも一面に、塩基性窒素原子含有基またはリン酸エステル基を含有する分散剤(b1)、及び導電性物質(b2)を含有するめっき下地層(B)をパターン化して形成する工程1、
パターンを形成した前記めっき下地層(B)の上に、前記樹脂層(C)を形成し、
前記めっき下地層(B)に含まれる前記分散剤(b1)が有する塩基性窒素原子含有基またはリン酸エステル基と、前記樹脂層(C)に含まれる前記化合物(c1)が有する官能基[X]とを反応させることによって結合を形成する工程2、
を有することを特徴とする請求項1または2記載転写用積層体の製造方法。
【請求項14】
前記仮支持体(A)に、離型性を有する層を形成する工程1’を含むことを特徴とする請求項12記載の転写用積層体の製造方法。
【請求項15】
請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
貼り合わせた前記転写用積層体の前記仮支持体(A)を剥がし、前記支持体(D)の少なくとも一面に前記樹脂層(C)と前記めっき下地層(B)を形成する工程2、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項16】
前記めっき下地層(B)の上に、金属めっき層(E)を形成する工程を含むことを特徴とする請求項15記載の導電性パターンの製造方法。
【請求項17】
請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程2、
前記転写用積層体および貫通孔の表面に、パラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボンのいずれかを付与して、貫通孔表面を導電化する工程3、
前記仮支持体(A)を剥がし、前記めっき下地層(B)及び貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程4、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項18】
請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程2、
前記転写用積層体および貫通孔の表面に、乾式めっき法を用いて金属膜を形成し、貫通孔表面を導電化する工程3、
前記仮支持体(A)を剥がし、前記めっき下地層(B)及び貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程4、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項19】
請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程2、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面に金属めっき層(E)を形成する工程3、
前記貫通孔に導電性ペーストを充填し、貫通孔を導電化する工程4、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項20】
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程3、
前記転写用積層体および非貫通孔の表面に、パラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボンのいずれかを付与して、非貫通孔表面を導電化する工程4、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)及び非貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程5、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項21】
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程3、
前記転写用積層体および非貫通孔の表面に、乾式めっき法を用いて金属膜を形成し、非貫通孔表面を導電化する工程4、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)及び非貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程5、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項22】
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程3、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面に金属めっき層(E)を形成する工程4、
前記非貫通孔に導電性ペーストを充填し、非貫通孔を導電化する工程5、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項23】
請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程2、
前記転写用積層体および貫通孔の表面上に、パラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボンのいずれかを付与して、貫通孔表面を導電化する工程3、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程4、
前記めっき下地層(B)及び貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程5、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程6、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項24】
請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程2、
前記転写用積層体および貫通孔の表面上に、乾式めっき法を用いて金属膜を形成し、貫通孔表面を導電化する工程3、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程4、
前記めっき下地層(B)及び貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程5、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程6、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項25】
請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程2、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程3、
前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成する工程4、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程5、
前記貫通孔に導電性ペーストを充填し、貫通孔を導電化する工程6、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項26】
請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記仮支持体(A)を剥がし、支持体(D)の表面に、前記
樹脂層(C)と前記めっき下地層(B)を形成する工程2、
めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程3、
前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成する工程4、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程5、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程6、
前記貫通孔に導電性ペーストを充填し、貫通孔を導電化する工程7、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項27】
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程3、
前記転写用積層体および非貫通孔の表面に、パラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボンのいずれかを付与して、非貫通孔表面を導電化する工程4、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程5、
前記めっき下地層(B)及び非貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程6、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程7、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項28】
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程3、
前記転写用積層体および非貫通孔の表面に、乾式めっき法を用いて金属膜を形成し、非貫通孔表面を導電化する工程4、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程5、
前記めっき下地層(B)及び非貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程6、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程7、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項29】
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程3、
前記仮支持体(A)を剥がし、前記めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程4、
前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成する工程5、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程6、
前記非貫通孔に導電性ペーストを充填し、非貫通孔を導電化する工程7、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項30】
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、請求項12記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記仮支持体(A)を剥がし、支持体(D)の表面に、前記
樹脂層(C)と前記めっき下地層(B)を形成する工程3、
前記めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程4、
前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成する工程5、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程6、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程7、
前記非貫通孔に導電性ペーストを充填し、非貫通孔を導電化する工程8、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
【請求項31】
前記支持体(D)の表面を平滑化する工程を有することを特徴とする請求項15記載の導電性パターンの製造方法。
【請求項32】
請求項15記載の導電性パターンの製造方法を用いることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項33】
請求項15記載の導電性パターンの製造方法を用い、前記支持体(D)がリジット基材、フィルム、ビルドアップフィルム、セラミック、ガラス、シリコンウエハー、金属から選択される1種類以上であることを特徴とするプリント配線板、電磁波シードフィルムの製造方法。
【請求項34】
請求項15記載の導電性パターンの製造方法を用い、前記支持体(D)が成形品であることを特徴とする成形回路部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮支持体にめっき下地層と樹脂層を順次設けた転写用積層体に関する。また、転写用積層体を用いた、プリント配線板、高周波伝送用プリント配線板、リジットプリント配線板、フレキシブルプリント配線板、パッケージ基板、電磁波シールド及び成型回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高速化により、プリント配線基板の高密度化、高性能化が要求されており、この要求に応えるため、表面が平滑で充分薄い金属層を有するプリント配線板が求められている。また、このプリント配線基板を構成するものとしてフレキシブル銅張積層板(以下、「FCCL」と略記する。)やリジット銅張積層板(以下、「RCCL」と略する。)が知られている。
【0003】
FCCLは、主に耐熱性高分子フィルムと銅箔とをエポキシ樹脂系接着剤を用いて張り合わせる方法や、銅箔の表面にポリイミドなどのワニスを塗工乾燥しフィルム化する方法(キャスト法)、銅箔と熱可塑性樹脂層を有するポリイミドフィルムを熱圧着する方法(ラミネート法)、ポリイミドフィルムの表面にスパッタ法で金属膜を形成し、その後銅めっきする方法(スパッタ法)、ポリイミドフィルムの表面にプライマー層を塗工し、その上に金属ナノ粒子層を塗工し、金属ナノ粒子層をめっきの下地として銅めっきする方法(特許文献1)で製造されている。
【0004】
一方、RCCLは、完全硬化した樹脂やセラミックと銅箔をエポキシ樹脂系接着剤を用いて貼り合わせる方法、エポキシ樹脂を含浸したガラスクロスを加熱し半硬化の状態の基材(プリプレグ)と銅箔を貼り合わせる方法、樹脂と無機フィラーを混合したワニスを離型フィルム上に塗工乾燥し、乾燥後得られた樹脂皮膜を銅箔や銅配線の表面に熱圧着で貼り合わせる方法(ビルドアップフィルム)で製造されている。
【0005】
しかし、FCCLやRCCLのいずれにおいても、銅箔を用いた方法の場合、貼り合わせる基材や接着剤層との密着力を確保するため、銅箔もしくは基材を粗化する必要があるため、プリント配線板の狭ピッチ化や、現在普及しつつある5Gや、今後拡大が予想されるBeyond 5Gで求められる高周波伝送においては、ミリ波帯のような高周波数の領域で伝送損失を生じる問題がある。
【0006】
一方、スパッタ法や、金属ナノ粒子層を用いる塗工法は、基材を粗化することなく、銅めっき膜と基材を平滑界面で密着させることができるため、銅箔を使った方法に比べ、プリント配線板の狭ピッチ化が容易であり、高周波信号の伝送損失が小さいというメリットがある。
【0007】
しかし、スパッタ法は、金属薄膜を形成するために、蒸着又はスパッタを用いるため、大がかりな真空設備が必要となり、設備上、基材サイズが限定されるなどの問題があった。また、基材の両面にスパッタ法を適用した場合、真空にするまでの時間が片面の場合に比べ2倍となり、片面ずつ両面を加工している間に、スパッタ法で形成した金属層表面に欠陥が発生し、歩留まりの低下が起こり、生産コストが高くなるという欠点があった。
【0008】
また、プライマー層と金属ナノ粒子層を用いた塗工法は、例えば、片面板を製造する際、基材上にプライマー層を塗工した後、金属ナノ粒子層を塗工する必要があり、さらに、両面板を製造する場合は、始めに塗工した面とは反対側にプライマー層と金属ナノ粒子層を塗工する必要があるため、加工に要する時間が長くなる。また、塗工する間に塗工面に欠陥が発生する品質上の問題もあった。また、両面に塗工する場合、最初に塗工した面と最後に塗工した面で乾燥機を通った回数が変わり熱履歴が異なるため、始めに塗工した面と後に塗工した面の品質が異なるという問題がった。
【0009】
そこで、銅層など導電性パターンを、銅層や基材の表面を粗化することなく、高分子フィルムやリジット基材等の支持体と充分な密着性を有し、またその金属層の形成に際して、大がかりな真空設備を必要とせず、安価かつ簡便な方法で、品質が安定する製造方法が求められていた。
【0010】
また従来、プラスチック成形品への装飾めっきとしては、携帯電話、パソコン、鏡、容器、各種スイッチ、シャワーヘッド等に用いられてきた。これらの用途の支持体は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(以下、「ABS」と略記する。)やABSとポリカーボネートとのポリマーアロイ(以下、「ABS-PC」と略記する。)にのみ限定されてきた。この理由として、基材とめっき膜の密着性を確保するため基材表面を粗化する必要があり、例えばABSであれば、ポリブタジエン成分を六価クロム酸、過マンガン酸塩等の強力な酸化剤でエッチングし、除去することで表面粗化が可能である。しかしながら、六価クロム酸などは、環境負荷物質であるため、使用しないことが好ましく、代替方法が開発されてきた(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
このように、プラスチック成形品への装飾などを目的としためっきでは、基材がABS又はABS-PCに限定されることなく、他の種類のプラスチックでも密着性に優れるめっき膜が得られ、また環境負荷物質の使用量を低減することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】WO2019/013038号
【文献】WO2015/060196号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、支持体表面を粗化することなく、簡便でかつ安価に、めっき下地層に塗工時の塗工装置への接触や搬送ロールへの接触による傷が発生しないなど品質が安定する方法で、めっきの下地となるシード層が形成でき、支持体と金属層(金属めっき層)との間の密着性に優れた積層体、並びにそれを用いたリジットプリント配線板、フレキシブルプリント配線板及び成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、仮支持体に、分散剤と導電性物質を含むめっき下地層を形成し、その上に樹脂層を形成した後、めっき下地層と樹脂層の官能基同士を反応させることで転写用積層体を作製した。また、この転写用積層体を用い、支持体の表面と裏面の両面、もしくは、片面にのみ貼り合わせ、転写用積層体の仮支持体のみを剥がすことで、簡便かつ安価に、高い品質でめっき下地層を支持体の表面に形成することを見い出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は、以下を含む。
【0016】
[1]仮支持体(A)の少なくとも一面に、分散剤(b1)及び導電性物質(b2)を含有するめっき下地層(B)と、官能基[X]を有する化合物(c1)を含有する樹脂層(C)が順次積層された積層体であって、
前記めっき下地層(B)において、グロー放電発光分光法で測定した炭素原子の信号強度が、仮支持体(A)側よりも樹脂層(C)側が大きいことを特徴とする転写用積層体。
[2]前記めっき下地層(B)において、さらに、グロー放電発光分光法の信号強度が、仮支持体(A)側が樹脂層(C)側の2/3以下であることを特徴とする1記載の転写用積層体。
[3]前記めっき下地層(B)に含まれる前記化合物(b1)が有する塩基性窒素原子含有基またはリン酸エステル基と、前記樹脂層(C)に含まれる前記化合物(c1)が有する官能基[X]とを反応させることによって化学結合を形成したものであることを特徴とする1または2記載の転写用積層体。
[4]前記官能基[X]がエポキシ基、カルボン酸基、無水カルボン酸基、ケト基、アルキロールアミド基、イソシアネート基、ビニル基、アルキルハライド基、アクリロイル基、シアナマイド基、カルバミド基、アシルハライド基から選択される一つ以上の官能基、または、エポキシ基、アミノ基から選択される一つ以上の官能基であることを特徴とする1~3いずれか1つに記載の転写用積層体。
[5]前記導電性物質(b2)が、銀であることを特徴とする1~4いずれか1つに記載の転写用積層体。
[6] 前記樹脂層(C)が1層以上であることを特徴とする1~5いずれか1つに記載の転写用積層体。
[7]前記仮支持体(A)のレーザー顕微鏡で測定したときの表面粗さ(最大高さSz)が、0.001~20μmであることを特徴とする1~6いずれか1つに記載の転写用積層体。
[8]前記仮支持体(A)の表面に離型層を有するものである1~7いずれか1つに記載の転写用積層体。
[9]前記仮支持体(A)がフィルムまたは金属であることを特徴とする1~8いずれか1つに記載の転写用積層体。
[10]支持体Dの少なくとも一面に、1~9いずれか1つに記載の転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面側を貼り合わせたものであること特徴とする積層体。
[11]支持体Dが熱硬化性樹脂であって、完全に硬化しているものを用いること特徴とする10記載の積層体。
[12]前記仮支持体(A)の少なくとも一面に、塩基性窒素原子含有基またはリン酸エステル基を含有する分散剤(b1)、及び導電性物質(b2)を含有するめっき下地層(B)を形成する工程1、
その上に、官能基[X]を有する化合物(c1)を含有する樹脂層(C)を形成し、
前記めっき下地層(B)に含まれる分散剤(b1)が有する塩基性窒素原子含有基、またはリン酸エステル基と、前記樹脂層(C)に含まれる前記化合物(c1)が有する官能基[X]とを反応させることによって化学結合を形成する工程2、
を有することを特徴とする1~9いずれか1つに記載の転写用積層体の製造方法。
[13]前記仮支持体(A)の少なくとも一面に、塩基性窒素原子含有基またはリン酸エステル基を含有する分散剤(b1)、及び導電性物質(b2)を含有するめっき下地層(B)をパターン化して形成する工程1、
パターンを形成した前記めっき下地層(B)の上に、前記樹脂層(C)を形成し、
前記めっき下地層(B)に含まれる分散剤(b1)が有する塩基性窒素原子含有基またはリン酸エステル基と、前記樹脂層(C)に含まれる前記化合物(c1)が有する官能基[X]とを反応させることによって結合を形成する工程2、
を有することを特徴とする1~9いずれか1つに記載転写用積層体の製造方法。
[14]前記仮支持体(A)に、離型性を有する層を形成する工程1’を含むことを特徴とする12または13記載の転写用積層体の製造方法。
[15]12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
貼り合わせた前記転写用積層体の前記仮支持体(A)を剥がし、前記支持体(D)の少なくとも一面に前記樹脂層(C)と前記めっき下地層(B)を形成する工程2、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[16]前記めっき下地層(B)の上に、金属めっき層(E)を形成する工程を含むことを特徴とする15記載の導電性パターンの製造方法。
[17]12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程2、
前記転写用積層体および貫通孔の表面に、パラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボンのいずれかを付与して、貫通孔表面を導電化する工程3、
前記仮支持体(A)を剥がし、前記めっき下地層(B)及び貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程4、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[18]12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程2、
前記転写用積層体および貫通孔の表面に、乾式めっき法を用いて金属膜を形成し、貫通孔表面を導電化する工程3、
前記仮支持体(A)を剥がし、前記めっき下地層(B)及び貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程4、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[19]12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程2、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面に金属めっき層(E)を形成する工程3、
前記貫通孔に導電性ペーストを充填し、貫通孔を導電化する工程4、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[20]導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程3、
前記転写用積層体および非貫通孔の表面に、パラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボンのいずれかを付与して、非貫通孔表面を導電化する工程4、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)及び非貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程5、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[21]導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程3、
前記転写用積層体および非貫通孔の表面に、乾式めっき法を用いて金属膜を形成し、非貫通孔表面を導電化する工程4、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)及び非貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程5、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[22]導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程3、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面に金属めっき層(E)を形成する工程4、
前記非貫通孔に導電性ペーストを充填し、非貫通孔を導電化する工程5、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[23]12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程2、
前記転写用積層体および貫通孔の表面上に、パラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボンのいずれかを付与して、貫通孔表面を導電化する工程3、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程4、
前記めっき下地層(B)及び貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程5、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程6、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[24]12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程2、
前記転写用積層体および貫通孔の表面上に、乾式めっき法を用いて金属膜を形成し、貫通孔表面を導電化する工程3、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程4、
前記めっき下地層(B)及び貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程5、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程6、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[25]12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程2、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程3、
前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成する工程4、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程5、
前記貫通孔に導電性ペーストを充填し、貫通孔を導電化する工程6、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[26]12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、
前記仮支持体(A)を剥がし、支持体(D)の表面に、前記樹脂(C)と前記めっき下地層(B)を形成する工程2、
めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程3、
前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成する工程4、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程5、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成する工程6、
前記貫通孔に導電性ペーストを充填し、貫通孔を導電化する工程7、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[27]導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程3、
前記転写用積層体および非貫通孔の表面に、パラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボンのいずれかを付与して、非貫通孔表面を導電化する工程4、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程5、
前記めっき下地層(B)及び非貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程6、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程7、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[28]導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程3、
前記転写用積層体および非貫通孔の表面に、乾式めっき法を用いて金属膜を形成し、非貫通孔表面を導電化する工程4、
前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程5、
前記めっき下地層(B)及び非貫通孔に金属めっき層(E)を形成する工程6、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程7、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[29]導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程3、
前記仮支持体(A)を剥がし、前記めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程4、
前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成する工程5、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程6、
前記非貫通孔に導電性ペーストを充填し、非貫通孔を導電化する工程7、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[30]導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)を貼り合わせる工程1、
前記支持体(D)の表面に、12または13記載の製造方法で得られた前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を貼り合わせる工程2、
前記仮支持体(A)を剥がし、支持体(D)の表面に、前記樹脂(C)と前記めっき下地層(B)を形成する工程3、
前記めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成する工程4、
前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成する工程5、
パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程6、
前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する工程7、
前記非貫通孔に導電性ペーストを充填し、非貫通孔を導電化する工程8、
を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
[31]前記支持体(D)の表面を平滑化する工程を有することを特徴とする15~30いずれか1つに記載の導電性パターンの製造方法。
[32]15~31いずれか1つに記載の導電性パターンの製造方法を用いることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
[33]15~31いずれか1つに記載の導電性パターンの製造方法を用い、前記支持体(D)がリジット基材、フィルム、ビルドアップフィルム、セラミック、ガラス、シリコンウエハー、金属から選択される1種類以上であることを特徴とするプリント配線板、電磁波シードフィルムの製造方法。
[34]15~31いずれか1つに記載の導電性パターンの製造方法を用い、前記支持体(D)が成形品であることを特徴とする成形回路部品の製造方法。
を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の転写用積層体は、仮支持体にめっき下地層と樹脂層を形成し、めっき下地層と樹脂層の官能基同士を反応させたものである。また、この転写用積層体を支持体の片面、もしくは、両面に一度に貼り合わせることで、従来の金属ナノ粒子層を用いた塗工法にくらべ、簡便かつ安価に、高い品質で支持体に樹脂層とめっき下地層を容易に形成することができる導電性パターンの製造方法をである。
【0018】
また、本発明の導電性パターンの製造方法は、例えば、プリント配線板、高速伝送プリント配線板、リジットプリント配線版、フレキシブルプリント配線板、パッケージ基板、セラミック基板、ガラス基板、シリコンウエハー基板、金属基板、タッチパネル向け導電性フィルム、タッチパネル用メタルメッシュ、有機太陽電池、有機EL素子、有機トランジスタ、非接触ICカード等のRFID、電磁波シールド、LED照明基材、デジタルサイネージなどの電子部材として好適に用いることができる。特に、リジットプリント配線板、フレキシブルプリント配線板用途に最適である。
【0019】
また、成形品へ適用することにより、成形回路基板(MID)、光通信等の配線を接続するコネクター、電装部材、電気モーター周辺部材、電池部材などの電子部材;自動車用装飾部品、ランプリフレクター、携帯電話、パソコン、鏡、容器、家電、各種スイッチ、水栓部品、シャワーヘッド、などの装飾に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、仮支持体(A)に、導電性物質(b2)が銀である流動体を塗工し乾燥した塗膜をグロー放電発光分光法で測定した結果である。
【
図2】
図2は、仮支持体(A)に、導電性物質(b2)が銀である流動体を塗工し乾燥した塗膜をグロー放電発光分光法で測定した結果である。
【
図3】
図3は、本発明の転写用積層体の製造方法に関する工程別断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の転写用積層体の製造方法に関する工程別断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の転写用積層体の製造方法に関する工程別断面図である。
【
図6】
図6は、支持体(D)の表面を平滑化する製造方法に関する工程別断面図である。
【
図7】
図7は、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせた後、仮支持体(A)を剥離し、金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図8】
図8は、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせた後、仮支持体(A)を剥離し、金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図9】
図9は、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせた後、貫通孔を形成し導電化処理した後、仮支持体(A)を剥離して金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図10】
図10は、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせた後、貫通孔を形成し導電化処理した後、仮支持体(A)を剥離して金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図11】
図11は、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせた後、貫通孔を形成し、金属めっき層(E)を形成した後、導電性ペーストで貫通孔を充填する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図12】
図12は、導電性パターンに支持体(D)を積層し、転写用積層体を貼り合わせた後、非貫通孔を形成し導電化処理した後、仮支持体(A)を剥離して金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図13】
図13は、導電性パターンに支持体(D)を積層し、転写用積層体を貼り合わせた後、非貫通孔を形成し導電化処理した後、仮支持体(A)を剥離して金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図14】
図14は、導電性パターンに支持体(D)を積層し、転写用積層体を貼り合わせた後、非貫通孔を形成し、金属めっき層(E)を形成した後、導電性ペーストで非貫通孔を充填する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図15】
図15は、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせた後、貫通孔を形成し導電化処理した後、仮支持体(A)を剥離してセミアディティブ工法で金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図16】
図16は、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせた後、貫通孔を形成し導電化処理した後、仮支持体(A)を剥離してセミアディティブ工法で金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図17】
図17は、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせた後、貫通孔を形成し、仮支持体(A)を剥離してセミアディティブ工法で金属めっき層(E)を形成した後、導電性ペーストで貫通孔を充填する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図18】
図18は、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせた後、仮支持体(A)を剥離してセミアディティブ工法で金属めっき層(E)を形成し、貫通孔を形成した後、導電性ペーストで貫通孔を充填する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図19】
図19は、導電性パターンの両面に支持体(D)を積層し、転写用積層体を貼り合わせた後、非貫通孔を形成し導電化処理した後、仮支持体(A)を剥離してセミアディティブ工法で金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図20】
図20は、導電性パターンの両面に支持体(D)を積層し、転写用積層体を貼り合わせた後、非貫通孔を形成し導電化処理した後、仮支持体(A)を剥離してセミアディティブ工法で金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図21】
図21は、導電性パターンの両面に支持体(D)を積層し、転写用積層体を貼り合わせた後、非貫通孔を形成し、仮支持体(A)を剥離してセミアディティブ工法で金属めっき層(E)を形成した後、導電性ペーストで非貫通孔を充填する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【
図22】
図22は、導電性パターンの両面に支持体(D)を積層し、転写用積層体を貼り合わせた後、仮支持体(A)を剥離してセミアディティブ工法で金属めっき層(E)を形成し、非貫通孔を形成した後、導電性ペーストで非貫通孔を充填する導電性パターンの製造方法に関する工程別断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、仮支持体(A)の少なくとも一面に、分散剤(b1)及び導電性物質(b2)を含有するめっき下地層(B)と、官能基[X]を有する化合物(c1)を含有する樹脂層(C)が順次積層された積層体であって、前記めっき下地層(B)に含まれる前記化合物(b1)が有する官能基と、前記樹脂層(C)に含まれる前記化合物(c1)が有する官能基[X]とを反応させることによって化学結合を形成したものである転写用積層体、および、その製造方法である。
【0022】
また、前記転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の少なくとも一面に貼り合わせる工程1、貼り合わせた前記転写用積層体の前記仮支持体(A)を剥がし、前記支持体(D)の少なくとも一面に前記樹脂層(C)と前記めっき下地層(B)を形成する工程2、を有することを特徴とする導電性パターンの製造方法である。
【0023】
本発明の転写用積層体は、仮支持体(A)の少なくとも一面に、前記めっき下地層(B)と前記樹脂層(C)を順次積層した積層体であってもよく、前記仮支持体(A)の両面に、前記めっき下地層(B)と前記樹脂層(C)を順次積層した積層体であってもよい。
【0024】
前記仮支持体(A)としては、前記転写用積層体を貼り合わせた後、最終的に剥がす必要があるため、前記仮支持体(A)と前記めっき下地層(B)は界面で容易に剥離できる前記仮支持体(A)を選択することが好ましい。例えば、高分子フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステル;ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレンー六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレンーエチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレンーエチレン共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロジオキシソール共重合体、フッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂;ポリメチルペンテン(TPX)、ポリプロピレン(PP)[二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)も含む]、及びポリエチレン(PE)[高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む]などのオレフィン樹脂;ポリスチレン(PS);ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド、透明ポリイミドなどのポリイミド樹脂;ポリアミドイミド、ポリアミドなどのポリアミド樹脂;ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ABSとポリカーボネートとのポリマーアロイ、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、エポキシ樹脂などが上げられる。中でも、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、オレフィン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、LCP、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレンを前記仮支持体として用いることが好ましい。
【0025】
また、前記仮支持体(A)として、金属を用いることができ、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、ステンレス、ベリリウム銅、燐青銅、ニッケル、ニクロム、ニッケル合金、錫、亜鉛、鉛、金、亜鉛、鉛、タンタル、モリブデン、ニオブ、鉄、銀、を用いることが出来る。その他、無機基材としては、シリコン、セラミックス、ガラス等からなる前記仮支持体(A)として用いることができる。
【0026】
前記仮支持体(A)の形状は、特に限定されるものではないが、フィルム状又はシート状の場合が取り扱い易い。前記仮支持体(A)の膜厚としては、通常、1~5,000μmの範囲が好ましく、1~300μmの範囲がより好ましく、1~200μmの範囲がより好ましく、1~100μmの範囲がより好ましく、1~50μmの範囲がさらに好ましい。前記仮支持体(A)は、後述する支持体(D)に貼り合わせ、めっき下地層(B)と樹脂層(C)を支持体(D)を転写し積層した後、不要となるため、作業性を失わない程度に薄膜であることが好ましい。
【0027】
仮支持体(A)の表面は、転写用積層体からめっき下地層(B)と樹脂層(C)を転写し易くするため、平滑であることが好ましい。具体的には、レーザー顕微鏡で測定した時の表面粗さ(最大高さSz)が0.001~30μmの範囲が好ましく、0.01~20μmの範囲が好ましく、0.05~10μmの範囲がより好ましい。なお、表面粗さ(最大高さSz)とは、ISO 25178に記された評価方法で測定したものであり、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
【0028】
また、これら前記仮支持体(A)の表面に離型層を形成したものを用いることができる。離型層は、前記仮支持体(A)に、シリコーン系離型剤や、非シリコーン系離型剤を塗工することで形成できる。非シリコーン系離型剤としては、アルキド樹脂 、メラミン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、尿素樹脂、ポリオレフィン、パラフィン、シリカ複合アクリル樹脂、シリカ複合メラミン樹脂、シリカ複合ウレタン樹脂、シリカ複合エポキシ系樹脂、シリカ複合フェノール樹脂、シリカ複合ポパール樹脂、シリカ複合ポリスチレン系樹脂、シリカ複合ポリ酢酸ビニル系樹脂、シリカ複合ポリイミド系樹脂、シリカ複合ポリアミドイミド系樹脂を用いることができる。シリコーン樹脂の離型層は、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)を剥がす際に、前記めっき下地層(B)の表面にシリコーン樹脂が移行し、後述する前記めっき下地層(B)へ金属めっき層を形成する際に、前記めっき下地層(B)と前記金属めっき層(E)の密着性を阻害する。そのため、離型層としては、非シリコーン系離型剤を用いることが好ましく、ポリオレフィン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリカ複合アクリル樹脂、シリカ複合メラミン樹脂、シリカ複合ウレタン樹脂、シリカ複合エポキシ系樹脂、シリカ複合フェノール樹脂、シリカ複合ポパール樹脂、シリカ複合ポリスチレン系樹脂、シリカ複合ポリ酢酸ビニル系樹脂、シリカ複合ポリイミド系樹脂、シリカ複合ポリアミドイミド系樹脂を用いることが好ましい。
【0029】
離型層の膜厚は、離型性を確保できれば特に限定されることはないが、離型層が後述するめっき下地層(B)の表面に付着するのを防止するため薄膜であることが好ましい。具体的には、0.01~50μmが好ましく、さらに0.01~10μmがより好ましく、さらに0.01~1μmがより好ましい。
【0030】
前記仮支持体(A)としては、金属を用いることが好ましい。後述する前記仮支持体(A)の表面に、金属ナノ粒子を用いた前記めっき下地層(B)を形成する際、金属を用いると高分子フィルムを用いた場合に比べ、より高温で乾燥することができ、めっき下地層(B)の表面抵抗を下げることで、めっき下地層自体の導電性を上げることができる。また、導電性パターンを形成する工程において、後述する前記転写用積層体の樹脂(C)の面を支持体(D)に貼り合わせたあと、前記仮支持体(A)の面から両面を貫通する貫通孔、もしくは、内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する際、ドリルやレーザーで孔を形成することになるが、高分子フィルムを前記仮支持体(A)として用いた場合は、孔開け加工の際、高分子のスミアが発生し、貫通孔もしくは非貫通孔を導電化する工程で、めっき析出不具合が発生する場合がある。一方、金属を使うと、従来のプリント基板のドリルやレーザーを用いた孔開け加工の工法が適用でき、前記仮支持体(A)としては、銅やアルミニウムを用いることが好ましい。
【0031】
前記仮支持体(A)に後述する前記めっき下地層(B)を塗工する際、必要に応じて、前記仮支持体(A)の表面に、塗料を濡れ易くする目的で表面処理をしてもよい。具体的には、コロナ放電処理等のプラズマ放電処理、紫外線処理等の乾式処理、水、酸・アルカリ等の水溶液又は有機溶剤等を用いる湿式処理等の方法が挙げられる。前記仮支持体(A)を過剰に表面処理をすると、後述する前記仮支持体(A)と前記めっき下地層(B)の界面で剥離しにくくなるため、適度に表面処理を実施することが好ましい。
【0032】
次に、めっき下地層(B)について説明する。
前記めっき下地層(B)は、分散剤(b1)及び導電性物質(b2)を含有する層であり、後述する方法で仮支持体(A)にめっき下地層(B)を形成すると、前記分散剤(b1)をめっき支持体層(B)と空気の界面、めっき下地層(B)と仮支持体(A)の界面に局在化させることができる。
【0033】
めっき下地層(B)と空気の界面は、後述する樹脂層(C)を形成する面であり、空気界面に前記分散剤(b1)が多く局在化することで、前記分散剤(b1)が有する官能基と樹脂層(C)に含まれる化合物(c1)が有する官能基[X]と化学結合を形成しやすくなるため、めっき下地層(B)と樹脂層(C)の密着性が向上する。一方、めっき下地層(B)と仮支持体(A)の界面は、後述する転写用積層体を支持体(D)に転写した後、金属めっき層(E)を形成する面であるため、局在化した分散剤(b1)が多い場合、めっき下地層(B)と金属めっき層(E)の密着性を低下させる。
【0034】
そこで、鋭意検討の結果、仮支持体(A)にめっき下地層(B)を形成し、グロー放電発光分光法を用いて測定した分散剤(b1)由来の炭素原子の存在状態について、めっき下地層(B)と空気の界面(最終的に樹脂層(C)側)の炭素原子と、めっき下地層(B)と仮支持体(A)の界面(最終的に金属めっき層(E)側)の炭素原子に、最適な量があることを見出した。
【0035】
グロー放電発光分光法は、アルゴングロー放電領域内で、めっき下地層(B)を高周波スパッタリングし、スパッタされた原子の発光線を連続的に分光することで、めっき下地層(B)の深さ方向の元素分布を測定する方法である。グロー放電発光分光法としては、堀場製作所株式会社製高周波グロー放電発光表面分析装置(GDS)GD-Profiler2を用いることができる。測定条件としては、アルゴンガス、ガス圧1000Pa、電力20W、アノード径4mmとした。なお、グロー放電発光分光法の測定で得られる信号強度は、それぞれ独立した検出機から同時に得られた各元素の発光強度になるため、各元素を定量するためには元素の数だけ検量線を作成する必要がある。ただし、一つの元素に着目すれば、信号強度からめっき下地層(B)の深さ方向に対する元素プロファイルを得ることができる。
【0036】
図1と
図2は、導電性物質(b2)として銀を用いた場合のグロー放電発光分光法の結果である。
図1は、横軸にスパッタ時間、縦軸に各元素の信号強度をとったグラフである。銀原子のプロファイルに対し、炭素原子は、スパッタリング開始後約0.5秒付近に、空気とめっき下地層(B)の界面(最終的に樹脂層(C)側)があり、炭素原子が多く存在することが分かる。その後、スパッタ時間が経過するにつれて炭素原子が少なくなる。これはめっき下地層(B)の内部に炭素原子が比較的少ないことを示している。さらにスパッタリングを進めると、スパッタリング開始後約16秒付近に、めっき下地層(B)と仮支持体(A)の界面(最終的に金属めっき層(E)側)があり、炭素原子が多く存在することが分かる。よって、空気とめっき下地層(B)の界面に分散剤(b1)由来の炭素原子が多く存在するため、分散剤(b1)が有する官能基と、後述する樹脂層(C)に含まれる化合物(c1)が有する官能基[X]が反応し、化学結合を形成しやすいことが分かる。
【0037】
図2は、
図1とは異なるめっき下地層(B)を仮支持体(A)に形成したものである。銀原子のプロファイルに対し、炭素原子は、スパッタリング開始後約1秒付近に、空気とめっき下地層(B)の界面(最終的に樹脂層(C)側)に炭素原子が多く存在し、その後、スパッタ時間が経過しても炭素原子の信号強度が変化せず、銀原子の信号強度が落ちるスパッタ時間約21秒当たりがめっき下地層(B)と仮支持体(A)の界面(最終的に金属めっき層(E)側)であるが、炭素原子の増加は見られない。
【0038】
前記めっき下地層(B)は、前記仮支持体(A)の表面全体に設けられた層であってもよく、また、前記仮支持体(A)の表面の一部に設けられた層であってもよい。前記めっき下地層(B)から得られる導電性パターンは、前記仮支持体(A)の全面に前記めっき下地層(B)を形成したもので良く、表面の一部に前記めっき下地層(B)を形成したものでも良い。前記仮支持体(A)の表面の一部に存在する前記めっき下地層(B)としては、具体的には、前記仮支持体(A)の表面に、パターンレジストを使って形成された導電性パターンや、印刷法を用いて必要な部分にのみめっき下地層(B)を形成した導電性パターン、前記仮支持体(A)の表面全体にめっき下地層(B)を形成した後、レーザーなどを使って不要な部分をレーザーで除去(トリミング)し、必要な部分のみ残すことによってえられた導電性パターンなどが挙げられる。
【0039】
前記めっき下地層(B)は、前記めっき下地層(B)全体に対し、導電性物質(b2)は80質量%~99.9質量%の範囲で含有し、前記分散剤(b1)は0.1質量%~20質量%の範囲で含有するものであり、さらに、0.1質量%~10質量%の範囲がより好ましい。
【0040】
前記めっき下地層(B)に含まれる分散剤(b1)として、塩基性窒素原子含有基、または、リン酸エステル基を有する化合物を用い、後述する樹脂層(C)に含まれる化合物(c1)が有する官能基[X]と反応させることで、化学結合を形成させることができる。前記塩基性窒素原子含有基、または、前記リン酸エステル基は、前記官能基[X]と一部反応して化学結合を形成しても良く、全部が反応して化学結合を形成しても良い。
【0041】
前記塩基性窒素原子含有基としては、例えばイミノ基、1級アミノ基、2級アミノ基等が挙げられる。
【0042】
前記分散剤(b1)として複数の塩基性窒素原子含有基を分子中に有するものを使用する場合、前記塩基性窒素原子含有基の一方は、前記めっき下地層(B)を形成した際に、後述する樹脂層(C)に含まれる化合物(c1)の官能基[X]との結合に関与し、他方は、めっき下地層(B)中の銀等の導電性物質(b2)との相互作用に寄与することが、前記めっき下地層(B)と前記樹脂層(C)との密着性を向上するうえで好ましい。
【0043】
塩基性窒素含有基を有する前記分散剤(b1)は、前記めっき下地層(B)を多孔質状とすることで前記めっき下地層(B)と後述する金属めっき層(E)との密着性を向上できることから、高分子分散剤が好ましく、この高分子分散剤としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン、前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物を用いることが好ましい。前記分散剤に高分子分散剤を用いることで、低分子分散剤と比較して、前記めっき下地層(B)中の分散剤を除去して多孔質状とし、その空隙サイズを大きくすることができ、ナノオーダーからサブミクロンオーダーの大きさの空隙を形成することができる。この空隙に後述する金属めっき層(E)を構成する金属が充填されやすくなり、充填された金属がアンカーとなり、前記めっき下地層(B)と後述する金属めっき層(E)との密着性を大幅に向上することができる。
【0044】
前記分散剤(b1)としてリン酸エステル基を分子中に有するものを使用する場合、リン酸エステル基を導入しやすいアクリル樹脂を用いることが好ましい。アクリル樹脂にリン酸エステル基を導入する場合は、アクリル樹脂の原料として、リン酸エステル基を有する単量体を用いる。リン酸エステル基を有する単量体としては、例えば、リン酸2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル、リン酸2-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル、リン酸ジフェニル(2-アクリロイルオキシエチル)、リン酸ジフェニル(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、リン酸フェニル(2-アクリロイルオキシエチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0045】
また、前記分散剤(b1)に前記リン酸エステル基以外の官能基[Y]を併用することが、前記めっき下地層(B)と樹脂層(C)の密着性を向上させるため好ましい。例えば、官能基[Y]としては、カルボキシル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、水酸基、オキサゾリン基、N-メチロール基、N-アルコキシメチル基、アミノ基、アルコキシシリル基等が挙げられる。また、前記分散材(b1)は、これらの官能基を2種以上有していてもよい。
【0046】
前記分散材(b1)中の前記官能基[Y]の含有量は、前記樹脂層(C)との密着性をより向上できることから、0.001~5mmol/gの範囲が好ましく、0.01~3mmol/gの範囲がより好ましく、0.01~2mmol/gの範囲がさらに好ましい。
【0047】
前記めっき下地層(B)を構成する導電性物質(b2)としては、遷移金属又はその化合物が挙げられ、中でもイオン性の遷移金属が好ましい。このイオン性の遷移金属としては、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト等が挙げられる。これらの中でも、後述する金属めっき層(E)を形成しやすいことから銀や銅が好ましく、めっき下地層を表面抵抗が低くなることから銀を使うことがより好ましい。また、ニッケルやコバルトなど磁性を有する金属は、高周波伝送で要求される伝送特性を低下させるため、銀や銅を用いることが好ましく、銀を用いることがより好ましい。
【0048】
前記めっき下地層(B)の形成に用いる導電性物質(b2)の形状は、粒子状又繊維状のものが好ましい。また、導電物質(b2)が粒子の場合、その大きさは、ナノサイズのものが好ましい。具体的には、より緻密な塗膜にし、抵抗値をより低減できることから、平均粒子径が1~100nmの範囲が好ましく、1~50nmの範囲がより好ましい。この平均粒子径の測定には、マイクロトラック社製「ナノトラックUPA-150」を用いることができる。
【0049】
一方、前記導電性物質(b2)の形状が繊維状の場合も、より緻密な塗膜にし、抵抗値をより低減できることから、繊維の直径が5~100nmの範囲以下が好ましく、5~50nmの範囲以下がより好ましい。また、繊維の長さは、0.1~100μmの範囲以下が好ましく、0.1~30μmの範囲がより好ましい。
【0050】
めっき下地層(B)は、前記分散剤(b1)と前記導電性物質(b2)を含有する流動体を調整し、塗布することで層を形成することができる。前記流動体中の前記導電性物質(b2)の含有率は、1~90質量%の範囲が好ましく、1~60質量%の範囲がより好ましく、1~10質量%の範囲がさらに好ましい。
【0051】
前記流動体に配合してもよい成分としては、前記導電性物質(b2)を溶媒中に分散させるための分散剤や溶媒、また必要に応じて、後述する界面活性剤、レベリング剤、粘度調整剤、成膜助剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0052】
前記導電性物質(b2)を溶媒中に分散させるため、分散剤を併用しても良い。前記分散剤としては、例えば、ドデカンチオール、1-オクタンチオール、トリフェニルホスフィン、ドデシルアミン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン;ミリスチン酸、オクタン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;コール酸、グリシルリジン酸、アビエチン酸等のカルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、前記ウレタン樹脂や前記アクリル樹脂にリン酸基を含有する化合物等が挙げられる。
【0053】
前記導電性物質(b2)を分散させるために用いる前記分散剤の使用量は、前記導電性物質(b2)100質量部に対し、0.01~50質量部の範囲が好ましく、0.01~10質量部の範囲がより好ましい。
【0054】
また、前記めっき下地層(B)と後述する金属めっき層(E)との密着性をより向上する目的で、焼成により分散剤を除去して多孔質状の前記めっき下地層(B)を形成する場合は、前記金属粒子(c)100質量部の範囲に対し、0.1~10質量部の範囲が好ましく、0.1~5質量部の範囲がより好ましい。
【0055】
前記流動体に用いる溶媒としては、水性媒体や有機溶剤を用いることができる。前記水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。また、前記有機溶剤としては、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0056】
前記アルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0057】
また、前記流動体には、溶媒の他に、必要に応じてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、イソプレングリコール、グリセリン等を用いることができる。
【0058】
前記界面活性剤としては、一般的な界面活性剤を用いることができ、例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等が挙げられる。
【0059】
前記レベリング剤としては、一般的なレベリング剤を用いることができ、例えば、シリコーン系化合物、アセチレンジオール系化合物、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0060】
前記粘度調整剤としては、一般的な増粘剤を用いることができ、例えば、アルカリ性に調整することによって増粘可能なアクリル重合体や合成ゴムラテックス、分子が会合することによって増粘可能なウレタン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、水添加ヒマシ油、アマイドワックス、酸化ポリエチレン、金属石鹸、ジベンジリデンソルビトールなどが挙げられる。
【0061】
前記成膜助剤としては、一般的な成膜助剤を用いることができ、例えば、アニオン系界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ塩など)、疎水性ノニオン系界面活性剤(ソルビタンモノオレエートなど)、ポリエーテル変性シロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0062】
前記消泡剤としては、一般的な消泡剤を用いることができ、例えば、シリコーン系消泡剤、ノニオン系界面活性剤、ポリエーテル,高級アルコール、ポリマー系界面活性剤等が挙げられる。
【0063】
前記防腐剤としては、一般的な防腐剤を用いることができ、例えば、イソチアゾリン系防腐剤、トリアジン系防腐剤、イミダゾール系防腐剤、ピリジン系防腐剤、アゾール系防腐剤、ピリチオン系防腐剤等が挙げられる。
【0064】
前記流動体の粘度(25℃でB型粘度計を用いて測定した値)は、0.1~500,000mPa・sの範囲が好ましく、0.2~10,000mPa・sの範囲がより好ましい。また、前記流動体を、後述するインクジェット印刷法、凸版反転印刷等の方法によって塗工(印刷)する場合には、その粘度は5~20mPa・sの範囲が好ましい。
【0065】
本発明の転写用積層体の製造方法としては、まず、仮支持体(A)の上に、分散剤(b1)と導電性物質(b2)を含有する流動体を塗工し、流動体中に含まれる有機溶剤等を乾燥により除去することによって、めっき下地層(B)を形成した後、官能基[X]を有する化合物(c1)を含有する流動体を塗工することで樹脂層(C)を形成し、その後、、前記めっき下地層(B)に含まれる分散剤(b1)が有する塩基性窒素原子含有基、または、リン酸エステル基と、前記樹脂層(C)に含まれる前記化合物(c1)が有する官能基[X]とを反応させることによって結合を形成する方法が挙げられる。
【0066】
前記仮支持体(A)の上に前記流動体を塗工や印刷する方法としては、例えば、インクジェット印刷法、反転印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、パッド印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法、ロータリーコート法、キャピラリーコート法、小径グラビア塗工法、ドクターロール方式等が挙げられる。
【0067】
前記分散剤(b1)と導電性物質(b2)を含有する前記流動体を塗工や印刷した後の乾燥温度としては、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~340℃の範囲がより好ましく、120℃~320℃の範囲が好ましく、150℃~300℃の範囲が好ましく、180℃~280℃の範囲がさらに好ましい。
【0068】
前記乾燥は、送風を行っても良いし、特に送風を行わなくても良い。また、乾燥は大気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガスの置換雰囲気下、もしくは気流下で行っても良く、真空下で行っても良い。めっき下地層(B)が分散剤で分散された金属ナノ粒子を用いた層である場合、大気下で乾燥することによって、金属ナノ粒子の層が酸化され、後述する金属めっき層(E)との密着性を向上させることができる。また、大気下で乾燥することにより、めっき下地層(B)の表面に存在する分散剤や界面活性剤、レベリング剤、粘度調整剤、成膜助剤、消泡剤、防腐剤等を酸化分解することができ、密着性を阻害する化合物を減らすことができるため、めっき下地層(B)と金属めっき層(E)の密着性を向上させることができる。
【0069】
前記めっき下地層(B)の単位面積当たりの質量は、1~30000mg/m2の範囲が好ましく、1~5,000mg/m2の範囲が好ましい。めっき下地層(B)に対し、無電解めっきを施す場合は、めっき下地層(B)を触媒として使うため、めっき下地層の膜厚が薄くて良く、具体的には、1~5000mg/m2が好ましく、10~1000mg/m2が好ましく、10~500mg/m2が好ましく、50~500mg/m2がより好ましい。一方、めっき下地層(B)に電解めっきを施す場合は、めっき下地層(B)に導電性があり、低抵抗である方が良いため、膜厚が厚い方が良く、100~30000mg/m2が好ましく、100~10000mg/m2が好ましく、300~5000mg/m2が好ましく、後述する金属めっき層(E)とめっき下地層(B)の密着性や、高価なめっき下地層(B)を薄くし低コスト化するため、500~2000mg/m2がより好ましい。
【0070】
前記めっき下地層(B)に電解めっきを施す場合の前記めっき下地層(B)の表面抵抗は、電解めっきを均質に形成するため、低抵抗であることが好ましい。表面抵抗は、0.1~10000Ω/□の範囲であることが好ましく、0.15~1000Ω/□の範囲がより好ましく、0.15~500Ω/□の範囲がより好ましく、0.2~100Ω/□の範囲がより好ましく、0.2~10Ω/□の範囲がより好ましく、0.2~5Ω/□の範囲がさらに好ましい。
【0071】
次に、樹脂層(C)について説明する。
前記樹脂層(C)は、後述する転写用積層体を支持体(D)に貼り合わせて前記めっき下地層(B)を転写する際の転写できた面積の割合(転写率)を高め、前記めっき下地層(B)と後述する支持体(D)との密着性を高めることを目的として設けられている層である。
【0072】
前記樹脂層(C)は、前記めっき下地層(B)の表面に、官能基[X]を有する化合物(c1)を含有する組成物(c1-1)を塗布、乾燥等することによって形成された塗膜(c)中に存在する前記化合物(c1)の官能基[X]が、前記めっき下地層(B)に含まれる前記分散剤(b1)の塩基性窒素原子含有基、または、リン酸エステル基と反応することによって化学結合を形成する。常温でも反応は進み化学結合を形成するが、加熱することで、より反応が進み化学結合を形成する。
【0073】
これにより、前記めっき下地層(B)と樹脂層(C)との界面で密着性が高くなり、後述する前記転写用積層体を支持体(D)に貼り合わせ、前記転写用積層体の仮支持体(A)を剥がす際に、前記めっき下地層(B)と樹脂層(C)が容易に剥離せず、また、後述する支持体(D)に、樹脂層(C)とめっき下地層(B)を積層した構成において、経時的な剥離を引き起こすことのない優れた密着性を備えた導電性パターンを得ることができる。
【0074】
前記樹脂層(C)の前駆体といえる前記塗膜(c)は、支持体の表面に、官能基[X]を有する化合物(c1)を含有する組成物を塗布し、乾燥等することによって形成されたものである。前記塗膜(c)に含まれる化合物(c1)は、前記めっき下地層(B)に含まれる前記分散剤(b1)の塩基性窒素原子含有基、または、リン酸エステル基と反応する官能基[X]を有する。
【0075】
前記塩基性窒素原子含有基と反応する前記官能基[X]としては、ケト基、エポキシ基、カルボン酸基、無水カルボン酸基、アルキロールアミド基、イソシアネート基、ビニル基、アルキルハライド基、アクリロイル基、シアナマイド基、カルバミド基(尿素結合)、アシルハライド基等が挙げられ、これらから選択される1つ以上の官能基を用いることができる。前記ケト基は、ケトン由来のカルボニル基を指す。前記イソシアネート基は、常温下での反応を防止する観点から、ブロック化剤によって封止されていてもよい。
【0076】
なかでも、官能基[X]としては、前記化合物(b1)の塩基性窒素原子含有基と反応した際に、ハロゲン、酸、アミン等の副生成物の生成を防止する観点から、エポキシ基、ケト基、カルボン酸基、無水カルボン酸基、アルキロールアミド基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上を使用することが好ましい。
【0077】
前記リン酸エステル基と反応する前記官能基[X]としては、エポキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらから選択される1つ以上の官能基を用いることができる。また、前記官能基[Y]を含有する場合は、官能基[Y]と反応する官能基として、例えば、カルボキシル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、水酸基、オキサゾリン基、N-メチロール基、N-アルコキシメチル基、アミノ基、アルコキシシリル基等が挙げられる。また、前記樹脂(a1)は、これらの官能基を2種以上有していてもよい。さらに、前記カルボキシル基は、酸無水物由来のものでもよい。また、前記アミノ基は、1~3級アミノ基のいずれであってもよい。
【0078】
前記官能基[X]は、前記樹脂層(C)全体に対して、50mmol/kg~10,000mmol/kgの範囲で存在することが好ましく、100mmol/kg~8,000mmol/kgの範囲であることがより好ましく、100mmol/kg~5,000mmol/kgの範囲であることが、密着性をより一層向上するうえでより好ましい。
【0079】
前記樹脂層(C)としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネートポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。なお、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂は、例えば、ウレタン樹脂存在下でアクリル単量体を重合することにより得られる。また、これらの樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0080】
上記の樹脂層(C)を形成する樹脂の中でも、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂を含有するものを用いることが好ましい。アミノトリアジンノボラック樹脂のフェノール性水酸基(官能基[X])と、めっき下地層(B)に含有する塩基性窒素原子含有基が酸―塩基反応でイオン結合を形成するため、めっき下地層(B)と樹脂層(C)の界面の密着性が向上する。
【0081】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、アミノトリアジン環構造とフェノール構造とがメチレン基を介して結合したノボラック樹脂である。前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノトリアジン化合物と、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、ビスフェノールA、フェニルフェノール、ナフトール、レゾルシン等のフェノール化合物と、ホルムアルデヒドとをアルキルアミン等の弱アルカリ性触媒の存在下又は無触媒で、中性付近で共縮合反応させるか、メチルエーテル化メラミン等のアミノトリアジン化合物のアルキルエーテル化物と、前記フェノール化合物とを反応させることにより得られる。
【0082】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、メチロール基を実質的に有していないものが好ましい。また、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂には、その製造時に副生成物として生じるアミノトリアジン構造のみがメチレン結合した分子、フェノール構造のみがメチレン結合した分子等が含まれていても構わない。さらに、若干量の未反応原料が含まれていてもよい。
【0083】
前記フェノール構造としては、例えば、フェノール残基、クレゾール残基、ブチルフェノール残基、ビスフェノールA残基、フェニルフェノール残基、ナフトール残基、レゾルシン残基等が挙げられる。また、ここでの残基とは、芳香環の炭素に結合している水素原子が少なくとも1つが抜けた構造を意味する。例えば、フェノールの場合は、ヒドロキシフェニル基を意味する。
【0084】
前記トリアジン構造としては、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノトリアジン化合物由来の構造が挙げられる。
【0085】
前記フェノール構造及び前記トリアジン構造は、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、密着性をより向上できることから、前記フェノール構造としてはフェノール残基が好ましく、前記トリアジン構造としてはメラミン由来の構造が好ましい。
【0086】
また、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂の水酸基価は、密着性をより向上できることから、50~200mgKOH/gの範囲が好ましく、80~180mgKOH/gの範囲がより好ましく、100~150mgKOH/gの範囲がさらに好ましい。
【0087】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0088】
また、前記アミノトリアジン環を有する化合物として、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂を併用することが好ましい。
【0089】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド誘導体由来の構造を有する含リンエポキシ化合物、ジシクロペンタジエン誘導体由来の構造を有するエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油等の油脂のエポキシ化物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0090】
前記エポキシ樹脂の中でも、密着性をより向上できることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ基(官能基[X])と、めっき下地層(B)に含有する塩基性窒素原子含有基が反応し、共有結合を形成するため、めっき下地層(B)と樹脂層(C)の界面の密着性が向上する。
【0091】
また、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、密着性をより向上できることから、100~300g/当量の範囲が好ましく、120~250g/当量の範囲がより好ましく、150~200g/当量の範囲がさらに好ましい。
【0092】
前記樹脂層(C)が、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂を含有する層とする場合、密着性をより向上できることから、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂中のフェノール性水酸基と前記エポキシ樹脂中のエポキシ基とのモル比[(x)/(y)]は、0.1~5の範囲以下が好ましく、0.2~3の範囲以下がより好ましく、0.3~2の範囲がさらに好ましい。
【0093】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂とエポキシ樹脂との反応を促進するため、硬化促進剤を併用してもよい。前記硬化促進剤としては、例えば、一級、二級又は三級のアミノ基を有するアミン化合物が挙げられる。また、前記アミン化合物としては、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれのものも用いることができる。また、前記硬化促進剤として、メルカプタン、酸無水物、酸フッ化ホウ素、ホウ酸エステル、有機酸ヒドラジット、ルイス酸、有機金属化合物、オニウム塩、カチオン性化合物等も用いることができる。
【0094】
また、フェノキシ樹脂を含有するものを用いることが好ましい。樹脂層(C)は、後述の通り、支持体(D)とめっき下地層(B)との密着性を向上させる機能を有するものである。本発明において、フェノキシ樹脂は、重量平均分子量が10,000~100,000の範囲にあるものを用いることが好ましい。樹脂層(C)に高分子量のフェノキシ樹脂を用いることにより、ポリマーの伸度を向上させ、さらに弾性率を向上させることにより、転写用積層体を用いて樹脂層(C)の面を支持体(A)に熱圧着し、仮支持体(A)を引き剥がした後の前記めっき下地層(B)の転写率が向上する。また、支持体(D)と金属めっき層(E)との密着性を向上させることができる。さらに、高分子量のフェノキシ樹脂の使用により、長期耐熱試験中の熱によるポリマーの分解などの劣化を抑制できることから、長期耐熱試験後においても、金属めっき層(E)の密着性を維持することができる。
【0095】
フェノキシ樹脂は、2価のフェノール化合物とエピクロロヒドリンとの反応、または、2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる、ポリヒドロキシポリエーテルである。2価のフェノール化合物としてはビスフェノール類が挙げられる。フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA構造(骨格)を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF構造を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS構造を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールM構造を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールP構造を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールZ構造を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。その他、ノボラック構造、アントラセン構造、フルオレン構造、ジシクロペンタジエン構造、ノルボルネン構造、ナフタレン構造、ビフェニル構造、アダマンタン構造等の骨格構造を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。これらフェノキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのなかでも、ビスフェノール構造を有するものが好ましく、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格がより好ましい。また、フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基であってもよい。
【0096】
本発明において、使用するフェノキシ樹脂の重量平均分子量は10,000~100,000の範囲が好ましい。分子量が10,000以上であると長期耐熱試験後のめっき密着力が高くなり、また、分子量が100,000以下であると有機溶剤への溶解性が向上し、樹脂層(C)を形成する際の塗工液の粘度が適当になるため、ハンドリングが良好となる。フェノキシ樹脂の好ましい重量平均分子量は20,000~80,000であり、より好ましくは22,000~50,000である。なお、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は上記反応において、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とのモル比や反応時間により調整することができる。なお、本明細書において、重量平均分子量は、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、標準ポリスチレンで換算した値を採用した。GPCの測定には、測定装置として高速GPC装置(HLC-8420GPC、東ソー株式会社製)を用い、カラムはTSKgelG5000HxL/G4000HxL/G3000HxL/G2000HxL(東ソー株式会社製)を直列に連結して使用し、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、RI検出器を用いて測定した。また、フェノキシ樹脂とは、一般的に高分子量のエポキシ樹脂を意味するが、本明細書において「エポキシ樹脂」とは、重量平均分子量が10,000未満のものを意味するものとし、上記したフェノキシ樹脂とは区別するものとする。
【0097】
上記したフェノキシ樹脂として市販のものを使用してもよく、例えば、三菱ケミカル株式会社製の1256、1255HX30(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、4250、4275(ビスA/ビスF混合タイプ)、YL6794、YL7213、YL7290、YL7482、YL7553、YX8100(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、X6954(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂、YX7200(シクロヘキサン骨格含有フェノキシ樹脂)、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYP-70(ビスフェノールF型フェノキシ樹脂)、ZX356-2(ビスフェノールAおよびビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂)、YPB-40PXM40(臭素含有フェノキシ樹脂)、ERF-001M30(リン含有フェノキシ樹脂)、FX―280、FX―293、FX-310(フルオレン骨格含有フェノキシ樹脂)、Gabriel Phenoxies社製のPKHA、PKHB、PKHB+、PKHC、PKHH、PKHJ、PKFE等が挙げられる。
【0098】
本発明において、樹脂層(C)には、上記したフェノキシ樹脂と併用してエポキシ樹脂が含まれていることが好ましい。フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂とを併用することにより、より一層、常態時および長期耐熱試験後のめっき層密着性が向上する。
【0099】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド誘導体由来の構造を有するリン含有エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン誘導体由来の構造を有するエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油等の油脂のエポキシ化物等が挙げられる。これらエポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
フェノキシ樹脂と併用するエポキシ樹脂としては、後述する金属めっき層(E)の密着性をより向上できることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂が好ましく、さらに、液状のエポキシ樹脂が好ましく、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0101】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、密着性をより向上できることから、100~5,000g/当量であることが好ましく、120~2,000g/当量であることがより好ましく、120~250g/当量であることがさらに好ましい。
【0102】
樹脂層中のフェノキシ樹脂に加えてエポキシ樹脂がさらに含まれる場合、フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂との配合割合は、質量基準におい90:10~10:90であることが好ましく、85:15~15:80であることがより好ましい。
【0103】
また、本発明において、樹脂層(C)にフェノキシ樹脂を用いた場合、フェノキシ樹脂の末端にあるエポキシ基と、めっき下地層(B)に含まれる塩基性窒素原子含有基とが反応するため、めっき下地層(B)と樹脂層(C)の界面の密着性が向上する。また、フェノキシ樹脂は、その他樹脂を併用して用いてもよい。
【0104】
前記加熱工程を経ることによって形成された樹脂層(C)は、前記化合物(b1)に有する前記塩基性窒素原子含有基、または、前記リン酸エステル基と反応せずに一部残存する官能基[X]を有していてもよい。
【0105】
前記樹脂層(C)は、前述の通り、めっき下地層(B)に含有する塩基性窒素原子含有基、または、リン酸エステル基と、前記樹脂層(C)に含有する官能基[X]を加熱などにより反応させる必要があるが、乾燥したあとの前記樹脂層(C)は、完全に硬化していても良く、半硬化でも良い。後述する転写用積層体の樹脂層(C)の面を支持体(D)に貼り合わせ、転写用積層体の仮支持体(A)を剥離することで、支持体(D)に導電性パターンを形成する方法となるため、支持体(D)との密着性を確保するため樹脂層(C)は半硬化であることが好ましい。
【0106】
前記樹脂層(C)は、仮支持体層(A)の表面に存在する前記めっき下地層(B)の一部または全部に設けられてもよく、前記仮支持体(A)の片面または両面に設けられてもよい。例えば、後述する支持体(D)の表面に、導電性パターンを形成したい場合、仮支持体(A)の表面の全面に樹脂層(C)を有し、その樹脂層(C)のうち必要な部分にのみ、前記めっき下地層(B)を有するものを使用することができる。また、仮支持体(A)の表面のうち、前記めっき下地層(B)が設けられる部分にのみ、前記樹脂層(C)が設けられた導電性パターンであってもよい。
【0107】
前記樹脂層(C)は、1層でも良く、2層以上あっても良い。2層以上の樹脂層(C)を形成した場合、例えば、めっき下地層に近い層は、前記めっき下地層(B)との密着性を向上させ、一方で、最終的に後述する支持体(D)に近い樹脂層(C)は、支持体(D)との密着性を向上させることができる。また、前記めっき下地層(C)に近い1層目の樹脂層(C)は、前記めっき下地層(B)や後述する金属めっき層(E)に近い層になり、導電性パターンを形成した際に、銅配線に近い部分となるため、絶縁信頼性を向上させる目的で、樹脂層(C)の樹脂組成物を選択し、形成することができる。
【0108】
また、前記樹脂層(C)の塗料は、前記仮支持体(A)の表面に形成した前記めっき下地層(B)の表面に塗工することになるので、塗工しやすい粘度とするため、有機溶剤を配合することが好ましい。前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソプロピルアルコール、ダイアセトンアルコール、エチレングリコール、トルエン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0109】
前記有機溶剤の使用量は、前記めっき下地層(B)へ塗工する際に用いる塗工方法、前記樹脂層(C)の所望とする膜厚により、適宜調整することが好ましい。
【0110】
また、前記樹脂層(C)の塗料には、必要に応じて、皮膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を適宜添加してもよい。
【0111】
前記樹脂層(C)は、前記仮支持体(A)の表面に形成しためっき下地層(B)の一部又は全部に前記樹脂層(C)を塗工し、前記樹脂層(C)の塗料中に含まれる有機溶剤を除去することによって形成できる。
【0112】
前記樹脂層(C)の塗料を塗工する方法としては、例えば、インクジェット印刷法、反転印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、パッド印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法、ロータリーコート法、キャピラリーコート法、小径グラビア塗工法、ドクターロール方式等が挙げられる。
【0113】
前記樹脂層(C)の塗料を、前記仮支持体(A)の表面に形成しためっき下地層(B)の表面に塗工した後、その塗工層に含まれる有機溶剤を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、有機溶剤を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、用いた有機溶剤を揮発させることが可能で、かつ前記支持体(A)に熱変形等の悪影響を与えず、前述のとおり、樹脂層(C)に含有する官能基[X]とめっき下地層(B)に含有する前記塩基性窒素原子含有基、または、前記リン酸エステル基を反応させる範囲の温度に設定する必要がある。
【0114】
前記樹脂層(C)の乾燥温度としては、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~340℃の範囲がより好ましく、120℃~280℃の範囲が好ましく、150℃~200℃の範囲がさらに好ましい。
【0115】
前記樹脂層(C)の膜厚は、用途によって異なるが、前記樹脂層(C)と後述する支持体(D)との密着性をより向上する範囲が好ましく、前記樹脂層(C)の膜厚は、10nm~30μmの範囲が好ましく、50nm~1μmの範囲がより好ましく、100nm~800nmの範囲がより好ましく、200nm~500nmの範囲がさらに好ましい。
【0116】
前記樹脂層(C)の表面は、後述する、転写用積層体の樹脂層(C)の面を支持体(D)に貼り合わせて、仮支持体(A)を剥がした後の積層体において、前記樹脂層(C)と支持体(D)の密着性をより向上できることから、必要に応じて、前もってコロナ放電処理法等のプラズマ放電処理法、紫外線処理法等の乾式処理法、水や酸性又はアルカリ性薬液、有機溶剤等を用いた湿式処理法によって、表面処理してもよい。
【0117】
次に、支持体(D)について説明する。
支持体(D)は、導電性パターンを形成するための基材となるため、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、リジットプリント配線板、パッケージ基板、セラミック基板、ガラス基板、シリコンウエハー基板、金属基板、電磁波シールドフィルム、成形回路基板の用途によって、変更する必要がある。
【0118】
前記支持体(D)の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、モディファイドポリイミド樹脂(MPI)、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂をグラフト共重合化した塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ビスマレイミドートリアジン樹脂(BT樹脂)、フッ素樹脂複合ポリイミド樹脂(ポリイミド樹脂の表面にフッ素樹脂層を形成したフィルム)、熱可塑性ポリイミド樹脂複合ポリイミド樹脂(ポリイミド樹脂の表面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を形成したフィルム)、セルロースナノファイバー、シリコン、シリコンカーバイド、窒化ガリウム、サファイア、セラミックス、ガラス、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、アルミナ等が挙げられる。
【0119】
また、前記支持体(D)として、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含有する樹脂基材を好適に用いることもできる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)等が挙げられる。一方、前記無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ珪酸ガラス等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂と無機充填剤は、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0120】
また、無機充填材は、粉末状、フレーク状、繊維状等のものを使用することができる。
【0121】
前記支持体(D)の形態としては、平面状のフレキシブル材、リジッド材、リジッドフレキシブル材のいずれのものも用いることができる。より具体的には、前記支持体(D)にフィルム、シート、板状に成形された市販材料を用いてもよいし、上記した樹脂の溶液、溶融液、分散液から、平面状に成形した材料を用いてもよい。また、前記支持体(D)は、金属等の導電性材料の上に、上記した樹脂の材料を形成した基材であってもよく、回路パターンが形成されたプリント配線板の上に、上記した樹脂の材料を積層形成した基材であっても良い。積層する方法として、プリプレグのような半硬化の前記支持体(D)であれば、熱と圧力で回路パターンが形成されたプリント配線板の上に貼り付ければ良く、完全硬化の前記支持体(D)であれば、ボンディングシートのような接着シートを使って積層すれば良い。
【0122】
フレキシブル配線板の場合は、ポリイミド樹脂、モディファイドポリイミド樹脂(MPI)、透明ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド、フッ素樹脂複合ポリイミド樹脂(ポリイミド樹脂の表面にフッ素樹脂層を形成したフィルム、ポリイミド樹脂とフッ素樹脂を交互に積層した多層フィルム)、熱可塑性ポリイミド樹脂複合ポリイミド樹脂(ポリイミド樹脂の表面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を形成したフィルム)等を用いることができる。
【0123】
前記支持体(D)の形状がフィルム状またはシート状である場合、特に厚さは限定されるものではないが、柔軟性や折り曲げ性を考慮すると、通常、1~5,000μm程度であり、1~500μmであることがより好ましく、1~200μmであることがより好ましい。
【0124】
リジット配線板の場合は、ガラス繊維とエポキシ樹脂の複合基材(ガラスエポキシ樹脂、FR-4、FR-5)、紙とエポキシ樹脂の複合基材(FR-3)、ガラス不織布とエポキシ樹脂の複合基材(CEM-3)、紙とガラス不織布とエポキシ樹脂の複合基材(CEM-1)、紙とフェノール樹脂の複合基材(紙フェノール樹脂、FR-1、FR-2)、ガラス繊維とPPE樹脂の複合基材(例えばパナソニック製メグトロン6)、ビスマレイミドートリアジン樹脂(BT樹脂)、シリカとエポキシ樹脂の複合基材(例えば味の素社製ビルドアップフィルム)、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シクロオレフィンポリマー、ガラス、シリコン、シリコンカーバイド、窒化ガリウム、酸化ガリウム、サファイア、セラミックス、アルミナセラミック、アルミナ、ガラス、ダイアモンドライクカーボン、アルミニウム、ステンレス、銅、銀、金、鉄、ニッケル、等を用いることができる。
【0125】
また、支持体(D)としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維等の合成繊維、カーボンファイバー等の無機繊維、セルロースナノファイバー等の天然繊維等が挙げられる。
【0126】
支持体(D)の表面は、高周波伝送が必要となるプリント配線板において、平滑であることが好ましい。第5世代移動通信システム(5G)やミリ波による通信では、高速通信のため交流電流の周波数が高くなっており、周波数が高くなるほど銅配線の表層に電流が流れる表皮効果が起こるため、電流が流れる銅配線の最表層の凹凸が大きいと、抵抗となり伝送損失が大きくなる。そのため、支持体(D)の表面は平滑であることが好ましく、レーザー顕微鏡で測定した時の表面粗さ(最大高さSz)が0.001~30μmの範囲が好ましく、0.01~20μmの範囲が好ましく、0.05~10μmの範囲がより好ましい。なお、表面粗さ(最大高さSz)とは、ISO 25178に記された評価方法で測定したものであり、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
【0127】
支持体(D)を平滑化する方法としては、支持体(D)の表面を物理的に平滑にする方法、化学処理により平滑にする方法がある。物理的に平滑にする方法としては、平滑なロールとロールの間に前記支持対(D)を通して表面を平滑にするカレンダー加工、切削加工、研削加工、砥粒研磨、放電加工、レーザー加工、ウォータージェット加工などが挙げられる。また、化学処理により平滑にする方法としては、電解研磨、エッチング研磨などが上げられる。
【0128】
また、支持体(D)が未硬化もしくは半硬化の熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂の場合、平滑な銅箔やアルミ箔などの金属箔、平滑なポリイミドフィルムやフッ素樹脂フィルムなどの耐熱性フィルムを平滑化処理基材として用い、支持体(D)の表面に平滑面を熱圧着で貼り合わせ、その後剥がすことで、支持体(D)の表面に平滑面を転写する方法で平滑化処理することができる。特に、支持体(D)がエポキシ樹脂やポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂とガラス繊維、無機フィラーを含むリジット基板用の基材の場合、銅箔の平滑面をプレスなどを用い基材に熱圧着し、その後銅箔を塩化銅や塩化鉄でエッチングすることで銅箔を除去し、基材表面を平滑にすることができる。前記平滑化処理基材の表面粗さが、最終的に平滑にしたい支持体(D)の表面粗さに影響する。そのため、平滑化処理基材の表面粗さは、平滑であることが好ましく、レーザー顕微鏡で測定した時の表面粗さ(最大高さSz)が0.001~30μmの範囲が好ましく、0.01~20μmの範囲が好ましく、0.05~10μmの範囲がより好ましい。なお、表面粗さ(最大高さSz)とは、ISO 25178に記された評価方法で測定したものであり、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
【0129】
支持体(D)の表面は、後述する、転写用積層体の樹脂層(C)の面を支持体(D)に貼り合わせ、転写用積層体の仮支持体(A)を剥離した後、前記支持体(D)の表面に樹脂層(C)とめっき下地層(B)を形成した積層体において、樹脂層(C)と支持体(D)の密着性をより高めるため、前記支持体(D)を、必要に応じて、平滑性を失わない程度の微細な凹凸を形成したり、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基等の官能基の導入のために表面処理されていてもよい。例えば、コロナ放電処理等のプラズマ放電処理、紫外線処理等の乾式処理、水、酸・アルカリ等の水溶液または有機溶剤等を用いる湿式処理等の方法が挙げられる。
【0130】
次に、転写用積層体を支持体(D)に転写する方法について説明する。
転写方法としては、転写用積層体の樹脂層(C)の面を支持体(D)に、熱と圧力を用いて貼り合わせる方法を用いることができる。特に限定されることはないが、例えば、熱ラミネート法、無溶剤ラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法、熱ロール転写法、インモールド転写法、プレス法、真空プレス法、水圧転写法等を用いることができる。
【0131】
支持体(D)がフレキシブル材でロールフィルムである場合は、熱ラミネート法、無溶剤ラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法を用いることが好ましい。特に簡便に処理できることから、熱ラミネート法がより好ましい。一方、支持体(D)がリジット材の場合は、枚葉で熱圧着する場合が多いため、プレス法、真空プレス法を用いることが好ましい。
【0132】
熱圧着条件について、加熱条件は、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~350℃の範囲がより好ましく、80℃~280℃の範囲がより好ましく、100℃~200℃の範囲がより好ましく、120~180℃の範囲がより好ましい。圧力条件としては、0.05MPa~35MPaの範囲が好ましく、0.3MPa~20MPaの範囲がより好ましく、0.3MPa~20MPaの範囲がより好ましい。
【0133】
熱圧着の処理時間としては、熱ラミネートの場合、搬送しながらロールの線圧により熱圧着することになるため、1秒以内で処理することになる。一方で、プレスや真空プレスの場合は、1秒~120分の範囲が好ましく、30秒~60分の範囲が好ましく、30秒~15分の範囲がより好ましく、生産性の観点から1分~5分の範囲で処理することが好ましい。
【0134】
また、熱圧着する場合、転写用積層体と支持体(D)の間に空気が入り込んだり、支持体(D)や転写用積層体から発生するガスで、転写用積層体と支持体(D)の間にガスがたまり転写率が低下するため、真空プレスを用いて真空下で熱圧着をすることが好ましい。真空条件としては、絶対圧力として100hPa以下が好ましく、50hPa以下がより好ましく、13hPa以下がより好ましい。加熱条件や圧力条件は、前述と同じ条件で処理することが好ましい。
【0135】
次に、転写用積層体の樹脂層(C)の面を支持体(D)に貼り合わせ、仮支持体(A)を剥離する方法について説明する。
仮支持体(A)を剥離する方法は特に限定されないが、前記熱圧着時に前記支持体(D)と樹脂層(C)の密着性が低い場合(仮接着状態)は、支持体(D)に樹脂層(C)とめっき下地層(B)が十分転写せず、一部転写用積層体側に残る場合があるため、剥離する際の仮支持体(A)の引き剥がす方向と速度が重要となる。具体的には、支持体(D)に対し、90度~180度方向に引き剥がすことが好ましく、120度~180度の範囲で引き剥がすことが好ましく、150度~180度方向に引き剥がすことが好ましい。引き剥がす際は、支持体(D)側ではなく、仮支持体(A)側を前述の角度で引き剥がすこと好ましい。引き剥がす速度は0.01m/分~20m/分の範囲であることが好ましく、0.05~10m/分の範囲であることがより好ましく、0.5~5m/分の範囲であることがより好ましい。
【0136】
次に、転写用積層体の樹脂層(C)の面を支持体(D)に貼り合わせ、その後、転写用積層体の仮支持体(A)を引き剥がした後の積層体の後処理について説明する。
前述の通り、めっき下地層の低抵抗化や、半硬化の樹脂層(C)を完全硬化させ、樹脂層(C)に含まれる化合物(c1)が有する官能基[X]と、めっき下地層(B)に含まれる前記分散剤(b1)が有する塩基性窒素原子含有基、または、リン酸エステル基を反応させて結合を形成させ、また、支持体(D)と樹脂層(C)の密着性をより向上させるため、熱処理を実施しても良い。熱処理条件としては、80℃~400℃の範囲が好ましく、100℃~350℃の範囲がより好ましく、120℃~325℃の範囲がより好ましく、150℃~300℃の範囲がより好ましい。熱処理時間としては、1秒~168時間の範囲が好ましく、30秒~72時間の範囲がより好ましく、生産性の観点から1分~30分の範囲がさらに好ましい。
【0137】
次の工程では、めっき下地層(B)の表面に、後述する金属めっき層(E)やパターンレジストを形成するため、これらの密着性を低下させる成分を洗浄する洗浄処理を実施することが好ましい。密着性を低下させる成分としては、例えば、仮支持体(A)が樹脂フィルムの場合はフィルム中に存在しフィルム表面にブリードしてくるオリゴマー成分、仮支持体(A)に離型層を形成した場合、離型剤の成分が一部めっき下地層(C)に移染した成分、金属の仮支持体(A)の場合は仮支持体上の金属酸化物の皮膜がある。前記洗浄処理としては、めっき下地層(B)の表面に存在する有機物の加熱による酸化分解、コロナ放電処理等のプラズマ放電処理、紫外線処理等の乾式処理、水、酸・アルカリ等の水溶液、オゾンを含む水(オゾンナノバブル)、または有機溶剤等を用いる湿式処理等の方法が挙げられる。
【0138】
本発明の積層体を構成する金属めっき層(E)は、例えば、前記積層体をプリント配線板等に用いる場合に、長期間にわたり断線等を生じることなく、良好な通電性を維持可能な信頼性の高い配線パターンを形成することを目的として設けられる層である。
【0139】
また、前記金属めっき層(E)は、前記めっき下地層(B)が前記支持体(D)の表面全体に形成している場合は、金属めっき層(E)も前記支持体(D)の表面全体に形成され、一方、前記支持体(D)の一部にめっき下地層(B)が存在する場合は、めっき下地層(B)の部分にのみ、金属めっき層(E)が形成される。
【0140】
前記金属めっき層(E)は、前記めっき下地層(B)の上に形成される層であるが、その形成方法としては、乾式めっき法や湿式めっき法を用いることができる。乾式めっき法としては、金属蒸着法や金属スパッタ法が挙げられる。また湿式めっき法は電解めっき法、無電解めっき法等が挙げられる。簡便に前記金属めっき層(E)を形成できるため、湿式めっき法を用いることが好ましい。また、これらのめっき法を2つ以上組み合わせてもよい。例えば、無電解めっきを施した後、電解めっきを施して、前記金属めっき層(E)を形成してもよい。めっき下地層(B)に導電性がある場合は、導電性パターンを形成する際のめっきのコストを下げることができるため、めっき下地層(B)に直接電解めっきを実施することが好ましい。
【0141】
上記の無電解めっき法は、例えば、前記めっき下地層(B)を構成する金属に、無電解めっき液を接触させることで、無電解めっき液中に含まれる銅等の金属を析出させ金属皮膜からなる無電解めっき層(皮膜)を形成する方法である。
【0142】
前記無電解めっき液としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属と、還元剤と、水性媒体、有機溶剤等の溶媒とを含有するものが挙げられる。
【0143】
前記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノボラン、次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、フェノール等が挙げられる。
【0144】
また、前記無電解めっき液としては、必要に応じて、酢酸、蟻酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマール酸等のジカルボン酸化合物;リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸化合物;グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸化合物;イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノポリカルボン酸化合物などの有機酸、又はこれらの有機酸の可溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物等の錯化剤を含有するものを用いることができる。
【0145】
前記電解めっき法は、例えば、前記めっき下地層(B)を構成する金属、又は、前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に、電解めっき液を接触した状態で通電することにより、前記電解めっき液中に含まれる銅等の金属を、カソードに設置した前記めっき下地層(B)を構成する導電物質(b2)又は前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に析出させ、電解めっき層(金属皮膜)を形成する方法である。
【0146】
前記電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属の硫化物と、硫酸と、水性媒体とを含有するもの等が挙げられる。具体的には、硫酸銅と硫酸と水性媒体とを含有するものが挙げられる。
【0147】
前記無電解めっき液及び前記電解めっき液は、20~98℃の範囲で用いることが好ましい。
【0148】
前記金属めっき層(E)の膜厚は、0.01μm以上100μm以下の範囲が好ましく、0.5μm以上50μm以下の範囲がより好ましい。前記金属めっき層(E)の膜厚は、前記金属めっき層(E)を形成する際のめっき処理工程における処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整することができる。
【0149】
前記金属めっき層(E)のパターニング方法としては、例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法等のフォトリソ-エッチング法、前記金属粒子層(C)の印刷パターン上にめっきする方法等が挙げられる。
【0150】
前記サブトラクティブ法は、予め製造した本発明の積層体を構成する前記金属めっき層(E)の上に、所望のパターン形状に対応した形状のエッチングレジスト層を形成し、その後の現像処理によって、前記レジストの除去された部分の前記金属めっき層(E)及び前記めっき下地層(B)を薬液で溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する方法である。前記薬液としては、塩化銅、塩化鉄等を含有する薬液を使用することができる。
【0151】
前記セミアディティブ法は、転写用積層体の樹脂層(C)の面を支持体(D)に貼り合わせ、転写用積層体の仮支持体(A)を剥離した後、前記支持体(D)の表面に樹脂層(C)とめっき下地層(B)を形成した積層体において、必要に応じてめっき下地層(B)の表面処理を行った後、その表面に、所望のパターンに対応した形状のめっきレジスト層を形成し、次いで、無電解めっき法、電解めっき法、又はそれらの組み合わせによって前記金属めっき層(E)を形成した後、前記めっきレジスト層とそれに接触した前記めっき下地層(B)を薬液等に溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する方法である。めっき下地層(B)が銀の場合は、後述する銀を選択的にエッチングする薬剤でエッチングすることが好ましい。
【0152】
また、前記セミアディティブ法において、支持体(D)の表面と裏面を導通させる必要がある場合、又は、支持体(D)の表面と内層の銅層を導通させる必要がある場合は、転写用積層体の樹脂層(C)の面を支持体(D)に貼り合わせた後、仮支持体(A)を剥離せずに、後述する、めっき下地層表面を保護する役割を仮支持体(A)にもたせることができる。具体的には、転写用積層体を支持体(D)に貼り合わせた後、仮支持体(A)の表面からドリルやレーザなどを用いて貫通孔もしくは非貫通孔を穴を開け、その後、貫通孔もしくは非貫通孔の表面(壁面)に、パラジウム、導電性ポリマー、カーボン、導電性ペーストの群から少なくとも一つを付与し、貫通孔もしくは非貫通孔を導電化処理した後、転写用積層体の仮支持体(A)を剥離し、必要に応じてめっき下地層(B)の表面処理を行った後、その表面に、所望のパターンに対応した形状のめっきレジスト層を形成し、次いで、電解めっき法によって前記金属めっき層(E)を形成した後、前記めっきレジスト層とそれに接触した前記めっき下地層(B)を薬液等に溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する方法である。めっき下地層(B)が銀の場合は、後述する銀を選択的にエッチングする薬剤でエッチングすることが好ましい。
【0153】
また、前記貫通孔もしくは前記非貫通孔を乾式めっき法を用いて導電化処理することで表面と裏面の導通させることができる。具体的には、前記セミアディティブ法において、支持体(D)の表面と裏面を導通させる必要がある場合、又は、支持体(D)の表面と内層の銅層を導通させる必要がある場合は、転写用積層体の樹脂層(C)の面を支持体(D)に貼り合わせた後、仮支持体(A)を剥離せずに、後述する、めっき下地層表面を保護する役割を仮支持体(A)にもたせることができる。具体的には、転写用積層体を支持体(D)に貼り合わせた後、仮支持体(A)の表面からドリルやレーザなどを用いて貫通孔もしくは非貫通孔を穴を開け、その後、貫通孔もしくは非貫通孔の表面(壁面)に、乾式めっき法をを用い、貫通孔もしくは非貫通孔を導電化処理した後、転写用積層体の仮支持体(A)を剥離し、必要に応じてめっき下地層(B)の表面処理を行った後、その表面に、所望のパターンに対応した形状のめっきレジスト層を形成し、次いで、電解めっき法によって前記金属めっき層(E)を形成した後、前記めっきレジスト層とそれに接触した前記めっき下地層(B)を薬液等に溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する方法である。また、めっき下地層(B)が銀の場合は、後述する銀を選択的にエッチングする薬剤でエッチングすることが好ましい。
【0154】
また、前記貫通孔もしくは前記非貫通孔を導電性ペーストを充填して表面と裏面の導通させることができる。具体的には、転写用積層体を支持体(D)に貼り合わせた後、仮支持体(A)の表面からドリルやレーザなどを用いて貫通孔もしくは非貫通孔の穴を開けた後、転写用積層体の仮支持体(A)を剥離し、必要に応じてめっき下地層(B)の表面処理を行った後、その表面に、所望のパターンに対応した形状のめっきレジスト層を形成し、次いで、電解めっき法によって前記金属めっき層(E)を形成する。その後、前記めっきレジスト層とそれに接触した前記めっき下地層(B)を薬液等に溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する。次いで、スクリーン印刷法などを用い、前記貫通孔及び非貫通孔を導電性ペーストで充填し加熱することで表面と裏面を導通する方法である。
【0155】
前記仮支持体(A)は、前記めっき下地層(B)上に積層したままにすることで、本発明のプリント配線板の製造方法における、後述する両面を貫通する貫通孔を形成する工程において、発生する有機物や無機物のゴミ(スミア)が、めっき下地層(B)の表面に付着することを防ぎ、また、形成された貫通孔の内壁表面を導電化する工程において、パラジウム、導電性ポリマー、カーボン、導電性ペーストのいずれかが、導電性のめっき下地層(B)上に付着するのを防ぎ、めっき下地層(B)を保護するものである。
【0156】
前記セミアディティブ法で、前記貫通孔もしくは非貫通孔を形成する方法としては、公知慣用の方法を、適宜選択すれば良いが、例えば、ドリル加工、レーザー加工、レーザー加工と酸化剤、アルカリ性薬剤、酸性薬剤等を用いた絶縁性基材の薬剤エッチングを組み合わせた加工法などの方法が挙げられる。
【0157】
前記穴開け加工で形成する穴の孔径(直径)は、0.01~1mmの範囲が好ましく、0.02~0.5mmの範囲がより好ましく、0.03~0.1mmの範囲がさらに好ましい。
【0158】
孔開け加工時に発生する有機物や無機物のゴミ(スミア)が、両面の電気的接続、及び、金属めっき層(E)を形成する金属めっき工程でめっき析出性の不良や、めっき密着性の低下、めっき外観を損なう原因となる可能性があるため、ゴミを除去すること(デスミア)が好ましい。デスミアの方法としては、例えば、プラズマ処理、逆スパッタ処理等の乾式処理、過マンガン酸カリウム等の酸化剤水溶液による洗浄処理、アルカリや酸の水溶液による洗浄処理、有機溶剤による洗浄処理等の湿式処理などが挙げられる。
【0159】
次に、前記貫通孔もしくは非貫通孔の表面上に、パラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボンのいずれかを付与して、貫通孔表面もしくは非貫通孔を導電化する工程である。
【0160】
前記貫通孔表面を導電化する方法は、例えば、豊永 実、サーキットテクノロジ、vol.8,No.1(1993)pp.47-59に『ダイレクトプレーティング』として記載されている方法を参考にして行うことができる。
【0161】
前記貫通孔表面を導電化する方法としては、前記文献に記載されている、(1)パラジウム-スズコロイドシステム、(2)スズフリーパラジウムシステム、(3)導電性ポリマーシステム、(4)グラファイトシステムの4種類のいずれかを用いれば良い。また導電性ペーストで前記貫通孔表面を導電化処理しても良い。
【0162】
前記貫通孔表面をパラジウム-スズコロイドを用いて導電化する方法としては、貫通孔の形成された前記積層体表面をクリーナー-コンディショナー処理した後、スズ-パラジウムコロイドを表面に吸着させ、アクセレレータ処理してスズを除去することにより実施される。また、パラジウムを、さらに硫化パラジウムに転換させて導電性を高める方法も用いることができる。
【0163】
また、前記貫通孔表面を導電性ポリマーで導電化する方法としては、ピロール誘導体のモノマーを酸化重合させる方法を用いることができる。貫通孔の形成された前記積層体表面をコンディショナー処理した後、過マンガン酸塩水溶液で処理し、前記支持体(D)に形成された貫通孔の表面にMnO2を形成する。高沸点アルコールを溶かしたモノマー水溶液を基板時表面に浸漬した後、希硫酸水溶液に浸漬すると、MnO2で被覆された表面で重合化が進み、導電性ポリマーを形成することで導電化を行う。
【0164】
さらに、前記貫通孔表面をグラファイトで導電化する方法としては、貫通孔の形成された前記積層体表面を懸濁したカーボンブラックの溶液で処理し、基板全面にカーボンを吸着させることで行うことができる。貫通孔の形成された前記積層体表面をコンディショナー処理することによって、基材表面を正帯電させた後、負電荷をもったカーボンブラックを表面に吸着させて導電性を確保することができる。
【0165】
さらに、前記貫通孔表面を導電性ペーストで導電化する方法としては、貫通孔の形成された前記積層体表面に導電性ペーストで壁に導電性を付与し、その後の工程である電解めっきのシード層とする方法である。
【0166】
貫通孔表面を導電化する方法としては、前記のパラジウム、導電性ポリマー、カーボン、導電性ペーストを用いるいずれの方法を用いることも可能であり、市販の公知慣用のプロセスを利用することができる。例えば、スズーパラジウムプロセスでは、クリムソンプロセスとして知られている方法を用いることができ、グラファイトシステムでは、例えば、ブラックホールプロセスやシャドープロセスとして知られているプロセスを利用することができる。これらの方法のうち、材料、および、プロセスコストの観点からカーボンを用いて導電化する方法を用いることが好ましい。
【0167】
さらに、貫通孔及び非貫通孔表面を導電化する方法としては、貫通孔の形成された前記積層体表面を、乾式めっき法で処理する方法がある。例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いて貫通孔表面に成膜し、導電化する方法も好適に用いることができる。乾式のめっき法を用いて導電化する場合、導電化に用いる金属種は、貫通孔表面を導電化でき、後工程の電解銅めっきによる両面接続が阻害されない限り制限はなく、種々の金属、金属酸化物を用いることができるが、例えば、チタン、ニッケル、銅、銀、金、白金などの金属を1種類、もしくは複数種を組み合わせて用いることができる。複数種を組み合わせる場合、複数種の金属を同時に製膜しても良いし、逐次的に製膜しても良い。これらの金属種の中でも、導電性の観点から、銅、もしくは、銀を用いることが好ましい。
【0168】
次に、前記仮支持体(A)を剥離して、めっき下地層(B)を露出させる。本工程は、後工程の金属めっき層(E)を形成するためのめっきシード層となるめっき下地層(B)を露出する工程であり、前記貫通孔を導電化するために用いたパラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボン、スパッタ金属、もしくは金属酸化物を、貫通孔以外の表面上から除去する目的を有する。
【0169】
前記仮支持体層(A)の剥離は、機械的に引き剥がせば良く、各種市販の剥離装置を用いても良い。また、前記仮支持体(A)として、アルカリ溶解性の樹脂を用いた場合には、アルカリ性溶液への浸漬によって剥離することが可能である。剥離に用いるアルカリ性溶液、剥離条件としては、後述する、パターンレジスト用の剥離液を適宜用いることができる。
【0170】
次に、仮支持体(A)を剥離した後、露出させためっき下地層(B)上に、回路パターンのパターンレジストを形成する。
【0171】
前記パターンレジストを形成する工程においては、前記めっき下地層(B)の表面は、レジスト形成前に、レジスト層との密着性向上を目的として、酸性又はアルカリ性の洗浄液による洗浄処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理、気相オゾン処理、液相オゾン処理、表面処理剤による処理等の表面処理を行ってもよい。これらの表面処理は、1種の方法で行うことも2種以上の方法を併用することもできる。
【0172】
前記の表面処理剤による処理としては、例えば、特開平7-258870号公報に記載されている、トリアゾール系化合物、シランカップリング剤および有機酸からなる防錆剤を用いて処理する方法、特開2000-286546号公報に記載されている、有機酸、ベンゾトリアゾール系防錆剤およびシランカップリング剤を用いて処理する方法、特開2002-363189号公報に記載されている、トリアゾールやチアジアゾール等の含窒素複素環と、トリメトキシシリル基やトリエトキシシリル基等のシリル基が、チオエーテル(スルフィド)結合等を有する有機基を介して結合された構造の物質を用いて処理する方法、WO2013/186941号公報に記載されている、トリアジン環とアミノ基を有するシラン化合物を用いて処理する方法、特開2015-214743号公報に記載されている、ホルミルイミダゾール化合物と、アミノプロピルシラン化合物とを反応させて得られるイミダゾールシラン化合物を用いて処理する方法、特開2016-134454号公報に記載されているアゾールシラン化合物を用いて処理する方法、特開2017-203073号公報に記載されている、一分子中にアミノ基および芳香環を有する芳香族化合物と2以上のカルボキシル基を有する多塩基酸、ならびにハロゲン化物イオンを含む溶液で処理する方法、特開2018-16865号公報に記載されているトリアゾールシラン化合物を含有する表面処理剤で処理する方法、などを用いることができる。
【0173】
次に、表面に金属パターンを形成するためには、前記レジスト層の感光性レジストにフォトマスクを通すか、ダイレクト露光機を用いて、活性光でパターンを露光する。露光量は、必要に応じて適宜設定すればよい。露光により感光性レジストに形成された潜像を、現像液を用いて除去することによって、パターンレジストを形成する。
【0174】
前記現像液としては、0.3~2質量%の炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の希薄アルカリ水溶液が挙げられる。前記希薄アルカリ水溶液中には、界面活性剤、消泡剤や、現像を促進させるために、少量の有機溶剤等を添加してもよい。また、上記で露光した基材を、現像液に浸漬するか、現像液をスプレー等でレジスト上に噴霧することにより現像を行ない、この現像によって、パターン形成部が除去されたパターンレジストを形成できる。
【0175】
パターンレジストを形成する際には、さらに、プラズマによるデスカム処理や、市販のレジスト残渣除去剤を用いて、硬化レジストと基板との境界部分に生じた裾引き部分や基板表面に残存したレジスト付着物などのレジスト残渣を除去してもよい。
【0176】
本発明で用いる感光性レジストとしては、市販のレジストインキ、液体レジスト、ドライフィルムレジストを用いることができ、目的とするパターンの解像度、使用する露光機の種類、後工程のめっき処理で用いる薬液の種類、pH等によって適宜選択すればよい。
【0177】
市販のレジストインキとしては、例えば、太陽インキ製造株式会社製の「めっきレジストMA-830」、「エッチングレジストX-87」;NAZDAR社のエッチングレジスト、めっきレジスト;互応化学工業株式会社製の「エッチングレジスト PLAS FINE PER」シリーズ、「めっきレジスト PLAS FINE PPR」シリーズ等が挙げられる。また、電着レジストとしては、例えば、ダウ・ケミカル・カンパニー社の「イーグルシリーズ」、「ペパーシリーズ」等が挙げられる。さらに、市販のドライフィルムとしては、例えば、日立化成株式会社製の「フォテック」シリーズ;ニッコーマテリアルズ株式会社製の「ALPHO」シリーズ;旭化成株式会社製の「サンフォート」シリーズ、デュポン社製の「リストン」シリーズ等が挙げられる。
【0178】
効率良くプリント配線板を製造するためには、ドライフィルムレジストを用いることが簡便で、特に微細回路を形成する場合には、セミアディティブ工法用のドライフィルムを用いればよい。この目的に用いる市販のドライフィルムとしては、例えば、ニッコーマテリアルズ株式会社製の「ALFO LDF500」、「NIT2700」、旭化成株式会社製の「サンフォート UFG―258」、日立化成株式会社製の「RDシリーズ(RD-2015、1225)」、「RYシリーズ(RY-5319、5325)」、デュポン社製の「PlateMasterシリーズ(PM200、300)」等を用いることができる。
【0179】
次に、めっきレジストを形成した前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成する。前記金属めっき層は、電解めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法が挙げられる。また、これらのめっき法を2つ以上組み合わせてもよい。感光性レジストがアルカリ性の水溶液に浸漬すると剥離してしまうため、電解めっき法で金属めっき層(E)を形成することが好ましい。
【0180】
前記めっき下地層(B)を、電解銅めっきのカソード電極として使用し、上記のようにして、現像により露出した前記めっき下地層(B)上に、電解銅めっき法による処理を行うことにより、積層体の貫通孔を銅めっきで接続すると同時に、導電性パターンを形成することができる。
【0181】
前記の電解銅めっき法により導電性パターンを形成する前において、必要に応じて、前記めっき下地層(B)表面の表面処理を行ってもよい。この表面処理としては、前記めっき下地層(B)の表面や形成したレジストパターンが損傷しない条件で、酸性又はアルカリ性の洗浄液による洗浄処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理、気相オゾン処理、液相オゾン処理、表面処理剤による処理等が挙げられる。これらの表面処理は、1種の方法で行うことも2種以上の方法を併用することもできる。
【0182】
また、前記銅めっき後に導電性パターンを形成する際、めっき膜の応力緩和や密着力向上を目的として、めっき後にアニーリングを行ってもよい。アニーリングは、後述するエッチング工程の前に行ってもよいし、エッチング工程の後に行ってもよく、エッチングの前後で行ってもよい。
【0183】
アニーリングの温度は、用いる基材の耐熱性や使用目的によって40~300℃の温度範囲で適宜選択すればよいが、40~250℃の範囲が好ましく、めっき膜の酸化劣化を抑制する目的から、40~200℃の範囲がより好ましい。また、アニーリングの時間は、40~200℃の温度範囲の場合には、10分~10日間、200℃を超える温度でのアニーリングは、5分~10時間程度がよい。また、めっき膜をアニーリングする際には、適宜、めっき膜表面に防錆剤を付与してもよい。
【0184】
次に、パターンレジストを剥離する。前記のめっきにより導電性パターンを形成した後に、前記感光性レジストを用いて形成したパターンレジストを剥離し、非パターン形成部の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する。パターンレジストの剥離は、用いた感光性レジストのカタログ、仕様書等に記載されている推奨条件で行えばよい。また、パターンレジストの剥離の際に用いるレジスト剥離液としては、市販のレジスト剥離液や、45~60℃に設定した水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムの1.5~3質量%水溶液を用いることができる。レジストの剥離は、パターンを形成した基材を、剥離液に浸漬するか、剥離液をスプレー等で噴霧することによって行うことができる。
【0185】
また、非パターン形成部のめっき下地層(B)を除去する際に用いるエッチング液は、前記めっき下地層(B)のみを選択的にエッチングし、前記金属めっき層(E)を形成する銅は、エッチングしないものが好ましい。めっき下地層(B)に銀を用いた場合、このようなエッチング液としては、カルボン酸と過酸化水素との混合物が挙げられる。
【0186】
前記カルボン酸としては、例えば、酢酸、クエン酸、蟻酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、アミノ酸等が挙げられる。これらのカルボン酸は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。これらのカルボン酸の中でも、エッチング液としての製造、取り扱いが容易であることから、主として酢酸やクエン酸を用いることが好ましい。
【0187】
エッチング液として、カルボン酸と過酸化水素との混合物を用いると、過酸化水素がカルボン酸と反応することによって、過カルボン酸(ぺルオキシカルボン酸)が生成すると考えられる。生成した過カルボン酸は、導電性パターンを構成する銅の溶解を抑制しながら、前記めっき下地層(B)を構成する銀を優先的に溶解するものと推測される。
【0188】
前記カルボン酸と過酸化水素との混合物の混合割合としては、銅の導電性パターンの溶解を抑制できることから、カルボン酸1モルに対して、過酸化水素を2~100モルの範囲が好ましく、過酸化水素2~50モルの範囲がより好ましい。
【0189】
前記カルボン酸と過酸化水素との混合物は、水で希釈された水溶液が好ましい。また、前記水溶液中の前記カルボン酸と過酸化水素との混合物の含有比率は、エッチング液の温度上昇の影響を抑制できることから、2~65質量%の範囲が好ましく、2~30質量%の範囲がより好ましい。
【0190】
上記の希釈に用いる水としては、イオン交換水、純水、超純水等のイオン性物質や不純物を除去した水を用いることが好ましい。
【0191】
前記エッチング液には、前記銅の導電性パターンを保護して、溶解を抑制するための保護剤をさらに添加してもよい。保護剤としては、アゾール化合物を用いることが好ましい。
【0192】
前記アゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキソゾール、チアゾール、セレナゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール等が挙げられる。
【0193】
前記アゾール化合物の具体例としては、例えば、2-メチルベンゾイミダゾール、アミノトリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、4-アミノベンゾトリアゾール、1-ビスアミノメチルベンゾトリアゾール、アミノテトラゾール、フェニルテトラゾール、2-フェニルチアゾール、ベンゾチアゾール等が挙げられる。これらのアゾール化合物は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0194】
前記アゾール化合物のエッチング液中の濃度は、0.001~2質量%の範囲が好ましく、0.01~0.2質量%の範囲がより好ましい。
【0195】
また、前記エッチング液には、前記銅の導電性パターンの溶解を抑制できることから、保護剤として、ポリアルキレングリコールを添加することが好ましい。
【0196】
前記ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の水溶性ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレングリコールが好ましい。また、ポリアルキレングリコールの数平均分子量としては、200~20,000の範囲が好ましい。
【0197】
前記ポリアルキレングリコールのエッチング液中の濃度は、0.001~2質量%の範囲が好ましく、0.01~1質量%の範囲がより好ましい。
【0198】
前記エッチング液には、pHの変動を抑制するため、有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
【0199】
非パターン形成部のめっき下地層(B)の除去は、前記導電性パターンを形成した後、前記感光性レジストを用いて形成したパターンレジストを剥離した基材を、前記エッチング液に浸漬するか、前記基材上にエッチング液をスプレー等で噴霧することによって行うことができる。
【0200】
エッチング装置を用いて、非パターン形成部のめっき下地層(B)を除去する場合には、例えば、前記エッチング液の全成分を所定の組成になるように調製した後、エッチング装置に供給してもよく、前記エッチング液の各成分を個別にエッチング装置に供給し、装置内で、前記各成分を混合して、所定の組成になるように調製してもよい。
【0201】
前記エッチング液は、10~35℃の温度範囲で用いることが好ましく、特に過酸化水素を含有するエッチング液を使用する場合には、過酸化水素の分解を抑制できることから、30℃以下の温度範囲で用いることが好ましい。
【0202】
前記めっき下地層(B)を、前記エッチング液で除去処理した後、エッチング液中に溶解した銀成分がプリント配線板上に付着、残留するのを防ぐ目的で、水洗以外に、さらに洗浄操作を行ってもよい。洗浄操作には、酸化銀、硫化銀、塩化銀を溶解するが、銀をほとんど溶解しない洗浄溶液を用いることが好ましい。具体的には、チオ硫酸塩もしくはトリス(3-ヒドロキシアルキル)ホスフィンを含有する水溶液、又は、メルカプトカルボン酸もしくはその塩を含有する水溶液を洗浄薬液として用いることが好ましい。
【0203】
前記、チオ硫酸塩としては、例えば、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム等が挙げられる。また、前記トリス(3-ヒドロキシアルキル)ホスフィンとしては、例えば、トリス(3-ヒドロキシメチル)ホスフィン、トリス(3-ヒドロキシエチル)ホスフィン、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィン等が挙げられる。これらのチオ硫酸塩又はトリス(3-ヒドロキシアルキル)ホスフィンは、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0204】
チオ硫酸塩を含有する水溶液を用いる場合の濃度としては、工程時間、用いる洗浄装置の特性等によって適宜設定すればよいが、0.1~40質量%の範囲が好ましく、洗浄効率や連続使用時の薬液の安定性の観点から、1~30質量%の範囲がより好ましい。
【0205】
また、前記トリス(3-ヒドロキシアルキル)ホスフィンを含有する水溶液を用いる場合の濃度としては、工程時間、用いる洗浄装置の特性等によって適宜設定すればよいが、0.1~50質量%の範囲が好ましく、洗浄効率や連続使用時の薬液の安定性の観点から、1~40質量%の範囲がより好ましい。
【0206】
前記メルカプトカルボン酸としては、例えば、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、システイン、N―アセチルシステイン等が挙げられる。また、前記メルカプトカルボン酸の塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。
【0207】
メルカプトカルボン酸又はその塩の水溶液を用いる場合の濃度としては、0.1~20質量%の範囲が好ましく、洗浄効率や大量に処理する場合のプロセスコストの観点から、0.5~15質量%の範囲がより好ましい。
【0208】
上記の洗浄操作を行う方法としては、例えば、前記非パターン形成部のめっき下地層(B)をエッチング除去して得られたプリント配線板を前記洗浄薬液に浸漬する方法、前記プリント配線板にスプレー等で洗浄薬液を噴霧する方法等が挙げられる。洗浄薬液の温度は、室温(25℃)で用いることができるが、外気温に影響を受けずに安定的に洗浄処理を行えることから、例えば、30℃に温度設定して用いてもよい。
【0209】
また、前記非パターン形成部のめっき下地層(B)をエッチング液により除去する工程と洗浄操作は、必要に応じて繰り返して行うことができる。
【0210】
本発明のプリント配線板は、上記のように、前記エッチング液で非パターン形成部のめっき下地層(B)を除去処理した後、非パターン形成部の絶縁性を、さらに向上させる目的で、必要に応じて、さらに洗浄操作を行ってもよい。この洗浄操作には、例えば、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムの水溶液に、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液を用いることができる。
【0211】
前記アルカリ性過マンガン酸溶液を用いた洗浄は、20~60℃に設定したアルカリ性過マンガン酸溶液に、上記の方法により得られたプリント配線板を浸漬する方法、前記プリント配線板にスプレー等でアルカリ性過マンガン酸溶液を噴霧する方法等が挙げられる。前記プリント配線板は、アルカリ性過マンガン酸溶液の基材表面への濡れ性をよくし、洗浄効率を向上させる目的で、洗浄前に、アルコール性水酸基を有する水溶性の有機溶媒に接触させる処理を行ってもよい。前記有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0212】
前記アルカリ性過マンガン酸溶液の濃度は、必要に応じて適宜選択すればよいが、0.1~10質量%の水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム水溶液100質量部に、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを0.1~10質量部溶解させたものが好ましく、洗浄効率の観点から、1~6質量%の水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム水溶液100質量部に、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを1~6質量部溶解させたものがより好ましい。
【0213】
上記のアルカリ性過マンガン酸溶液を用いた洗浄を行う場合には、アルカリ性過マンガン酸溶液の洗浄後に、洗浄した前記プリント配線板を、中和・還元作用のある液を用いて処理することが好ましい。前記中和・還元作用のある液としては、例えば、0.5~15質量%の希硫酸、又は有機酸を含有する水溶液が挙げられる。また、前記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸、メチオニン等が挙げられる。
【0214】
上記のアルカリ性過マンガン酸溶液による洗浄は、前記エッチング液中に溶解した銀成分がプリント配線板上に付着、残留するのを防ぐ目的で行う洗浄の後に行ってもよいし、前記エッチング液中に溶解した銀成分がプリント配線板上に付着、残留するのを防ぐ目的で、洗浄を行う代わりに、アルカリ性過マンガン酸溶液による洗浄のみを行ってもよい。
【0215】
また、本発明のプリント配線板用積層体を用いて得られたプリント配線板は、適宜、必要に応じて、回路パターン上へのカバーレイフィルム積層、ソルダーレジスト層の形成、及び、回路パターンの最終表面処理として、ニッケル/金めっき、ニッケル/パラジウム/金めっき、パラジウム/金めっきを施してもよい。
【0216】
次に、転写用積層体の製造方法及び導電性パターンの製造方法に関する図ついて説明する。
図3は、転写用積層体の製造方法である。仮支持体(A)の全面に、めっき下地層(B)形成し、その後、樹脂層(C)を形成することで得られる。
【0217】
図4は、転写用積層体の製造方法である。仮支持体(A)表面に、めっき下地層(B)を形成し、パターンレジストを使いエッチングで導電性パターンを形成し、パターンレジストを除去した後、仮支持体(A)の全面に樹脂(C)を形成することで得られる。
【0218】
図5は、転写用積層体の製造方法である。仮支持体(A)表面に、印刷法を使ってめっき下地層(B)のパターンを形成した後、仮支持体(A)の全面に樹脂(C)を形成することで得られる。
【0219】
図6は、支持体(D)の表面を平滑化する工程である。支持体(D)の表面が十分に平滑な場合は、必ずしも実施する必要はない。表面の凹凸が大きい支持体(D)に、平滑な金属箔や耐熱性フィルムなどの平滑化処理基材を熱プレスや真空プレスなどを用い、平滑面を支持体(D)に貼り合わせ後、貼り合わせた金属箔や耐熱性フィルムを物理的または化学的に剥離することで、平滑な支持体(D)が得られる。
【0220】
図7は、
図3で得た転写用積層体を用いた導電性パターンの製造方法である。仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の両面に貼り合わせ、
貼り合わせた前記転写用積層体の前記仮支持体(A)を剥がし、前記支持体(D)の両面に前記樹脂層(C)と前記めっき下地層(B)を形成した後、金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法である。
図7では、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせているが、片面にのみ転写用積層体を貼り合わせることもできる。
【0221】
図8は、
図4または
図5で得た転写用積層体を用いた導電性パターンの製造方法である。仮支持体(A)表面の一部にパターンレジストや印刷法などを使ってめっき下地層(B)のパターンを形成した後、仮支持体(A)の全面に樹脂(C)を形成した転写用積層体を用い、前記樹脂層(C)が形成された面を支持体(D)に貼り合わせ、次いで、貼り合わせた前記転写用積層体の前記仮支持体(A)を剥がし、前記支持体(D)の両面に前記樹脂層(C)と前記めっき下地層(B)を形成した後、金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの形成方法である。
図8では、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせているが、片面にのみ転写用積層体を貼り合わせも良い。
【0222】
図9は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、支持体(D)の表面と裏面が貫通孔を通じて電気的に導通している導電性パターンの製造方法である。
凹凸がある支持体(D)の少なくとも一面に、平滑な金属箔や耐熱性フィルムを熱プレスなどを用いて平滑面を貼り合わせた後、貼り合わせた金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、次いで、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成し、次いで、前記転写用積層体および貫通孔の表面に、パラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボンのいずれかを付与して、貫通孔表面を導電化し、次いで、前記仮支持体(A)を剥がし、前記めっき下地層(B)及び貫通孔に金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法である。
図9では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。また、
図3で得た転写用積層体を用いた例であるが、
図4や
図5のように転写用積層体上にめっき下地層(B)のパターンを形成したものを用いても良い。さらに、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせているが、片面にのみ転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0223】
図10は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、支持体(D)の表面と裏面が貫通孔を通じて電気的に導通している導電性パターンの製造方法である。
凹凸がある支持体(D)の少なくとも一面に、平滑な金属箔や耐熱性フィルムを熱プレスなどを用いて平滑面を貼り合わせた後、貼り合わせた金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、次いで、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成し、前記転写用積層体および貫通孔の表面に、蒸着法やスパッタ法などの乾式めっき法を用いて金属膜を形成し、貫通孔表面を導電化し、次いで、前記仮支持体(A)を剥がし、前記めっき下地層(B)及び貫通孔に金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法である。
図10では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。また、
図3で得た転写用積層体を用いた例であるが、
図4や
図5のように転写用積層体上にめっき下地層(B)のパターンを形成したものを用いても良い。さらに、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせているが、片面にのみ転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0224】
図11は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、支持体(D)の表面と裏面が貫通孔を通じて電気的に導通している導電性パターンの製造方法である。
凹凸がある支持体(D)の少なくとも一面に、平滑な金属箔や耐熱性フィルムを熱プレスなどを用いて平滑面を貼り合わせた後、貼り合わせた金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、次いで、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、次いで、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成し、次いで、前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面に金属めっき層(E)を形成し、次いで、前記貫通孔に導電性ペーストを充填し、貫通孔を導電化する導電性パターンの製造方法である。
図11では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。また、
図3で得た転写用積層体を用いた例であるが、
図4や
図5のように転写用積層体上にめっき下地層(B)のパターンを形成したものを用いても良い。さらに、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせているが、片面にのみ転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0225】
図12は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、導電性パターンを形成した基材に支持体(D)を貼り合わせると同時に支持体(D)の表面を平滑化処理し、支持体(D)の表面と内層の導電性パターンが非貫通孔を通じて電気的に導通している導電性パターンの製造方法である。
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)と平滑な金属箔や耐熱性フィルムとを順次積層し、熱圧着することで貼り合わせた後、金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、前記支持体(D)の表面に、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成し、前記転写用積層体および非貫通孔の表面に、パラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボンのいずれかを付与して、非貫通孔表面を導電化し、前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)及び非貫通孔に金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法である。
図12では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。また、
図12では、
図3で得た転写用積層体を用いた例であるが、
図4や
図5のように転写用積層体上にめっき下地層(B)のパターンを形成したものを用いても良い。また、
図12は、導電性パターンを形成した基材の両面に支持体(D)を貼り合わせ、さらに、転写用積層体を貼り合わせているが、片面にのみに支持体(D)及び転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に支持体(D)と銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0226】
図13は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、導電性パターンを形成した基材に支持体(D)を貼り合わせると同時に支持体(D)の表面を平滑化処理し、支持体(D)の表面と内層の導電性パターンが非貫通孔を通じて電気的に導通している導電性パターンの製造方法である。
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)と平滑な金属箔や耐熱性フィルムとを順次積層し、熱圧着することで貼り合わせた後、金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、前記支持体(D)の表面に、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成し、前記転写用積層体および非貫通孔の表面に、蒸着法やスパッタ法などの乾式めっき法を用いて金属膜を形成し、非貫通孔表面を導電化し、前記仮支持体(A)を剥がした後、めっき下地層(B)及び非貫通孔に金属めっき層(E)を形成する導電性パターンの製造方法である。
図13では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。また、
図13では、
図3で得た転写用積層体を用いた例であるが、
図4や
図5のように転写用積層体上にめっき下地層(B)のパターンを形成したものを用いても良い。また、
図13は、導電性パターンを形成した基材の両面に支持体(D)を貼り合わせ、さらに、転写用積層体を貼り合わせているが、片面にのみに支持体(D)及び転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に支持体(D)と銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0227】
図14は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、導電性パターンを形成した基材に支持体(D)を貼り合わせると同時に支持体(D)の表面を平滑化処理し、支持体(D)の表面と内層の導電性パターンが非貫通孔を通じて電気的に導通している導電性パターンの製造方法である。
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)と平滑な金属箔や耐熱性フィルムとを順次積層し、熱圧着することで貼り合わせた後、金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、前記支持体(D)の表面に、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、次いで、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成し、前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面に金属めっき層(E)を形成し、その後、前記非貫通孔に導電性ペーストを充填し、非貫通孔を導電化する導電性パターンの製造方法である。
図14では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。また、
図14では、
図3で得た転写用積層体を用いた例であるが、
図4や
図5のように転写用積層体上にめっき下地層(B)のパターンを形成したものを用いても良い。また、
図14は、導電性パターンを形成した基材の両面に支持体(D)を貼り合わせ、さらに、転写用積層体を貼り合わせているが、片面にのみに支持体(D)及び転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に支持体(D)と銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0228】
図15は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、支持体(D)の表面と裏面が貫通孔を通じて電気的に導通しているセミアディティブ工法よる導電性パターンの製造方法である。
凹凸がある支持体(D)の少なくとも一面に、平滑な金属箔や耐熱性フィルムを熱プレスなどを用いて平滑面を貼り合わせた後、貼り合わせた金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、次いで、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成し、前記転写用積層体および貫通孔の表面上に、パラジウム、導電性ポリマー、導電性ペースト、カーボンのいずれかを付与して、貫通孔表面を導電化し、次いで、前記仮支持体(A)を剥がした後、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成し、次いで、前記めっき下地層(B)及び貫通孔に金属めっき層(E)を形成し、次いで、パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する導電性パターンの製造方法である。
図15では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。また、
図15では、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせたが、片面にのみ転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0229】
図16は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、支持体(D)の表面と裏面が貫通孔を通じて電気的に導通しているセミアディティブ工法よる導電性パターンの製造方法である。
凹凸がある支持体(D)の少なくとも一面に、平滑な金属箔や耐熱性フィルムを熱プレスなどを用いて平滑面を貼り合わせた後、貼り合わせた金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成し、前記転写用積層体および貫通孔の表面上に、乾式めっき法を用いて金属膜を形成し、貫通孔表面を導電化し、次いで、前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成し、次いで、前記めっき下地層(B)及び貫通孔に金属めっき層(E)を形成し、次いで、パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する導電性パターンの製造方法である。また、
図16では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。
図16では、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせたが、片面にのみ転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0230】
図17は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、支持体(D)の表面と裏面が貫通孔を通じて電気的に導通しているセミアディティブ工法よる導電性パターンの製造方法である。
凹凸がある支持体(D)の少なくとも一面に、平滑な金属箔や耐熱性フィルムを熱プレスなどを用いて平滑面を貼り合わせた後、貼り合わせた金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、次いで、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から両面を貫通する貫通孔を形成し、次いで、前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成し、次いで、前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成し、次いで、パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去し、次いで、前記貫通孔に導電性ペーストを充填し、貫通孔を導電化する導電性パターンの製造方法である。
図17では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。また、
図17では、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせたが、片面にのみ転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0231】
図18は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、支持体(D)の表面と裏面が貫通孔を通じて電気的に導通しているセミアディティブ工法よる導電性パターンの製造方法である。
凹凸がある支持体(D)の少なくとも一面に、平滑な金属箔や耐熱性フィルムを熱プレスなどを用いて平滑面を貼り合わせた後、貼り合わせた金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、次いで、前記仮支持体(A)を剥がし、支持体(D)の表面に、前記樹脂(C)と前記めっき下地層(B)を形成し、次いで、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成し、次いで、前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成し、次いで、パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去し、次いで、前記金属めっき層(E)の表面から両面を貫通する貫通孔を形成し、次いで、前記貫通孔に導電性ペーストを充填し、貫通孔を導電化する導電性パターンの製造方法である。
図18では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。
図18では、支持体(D)の両面に転写用積層体を貼り合わせたが、片面にのみ転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0232】
図19は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、導電性パターンを形成した基材に支持体(D)を貼り合わせると同時に支持体(D)の表面を平滑化処理し、支持体(D)の表面と内層の導電性パターンが非貫通孔を通じて電気的に導通しているセミアディティブ工法よる導電性パターンの製造方法である。
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)と平滑な金属箔や耐熱性フィルムとを順次積層し、熱圧着することで貼り合わせた後、金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、前記支持体(D)の表面に、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、次いで、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成し、次いで、前記転写用積層体および非貫通孔の表面に、パラジウム、導電性ポリマー、カーボン、導電性ペーストのいずれかを付与して、非貫通孔表面を導電化し、次いで、前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成し、次いで、前記めっき下地層(B)及び非貫通孔に金属めっき層(E)を形成し、次いで、パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去しする導電性パターンの製造方法である。
図19では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。また、
図19は、導電性パターンを形成した基材の両面に支持体(D)を貼り合わせ、さらに、転写用積層体を貼り合わせているが、片面にのみに支持体(D)及び転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に支持体(D)と銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0233】
図20は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、導電性パターンを形成した基材に支持体(D)を貼り合わせると同時に支持体(D)の表面を平滑化処理し、支持体(D)の表面と内層の導電性パターンが非貫通孔を通じて電気的に導通しているセミアディティブ工法よる導電性パターンの製造方法である。
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)と平滑な金属箔や耐熱性フィルムとを順次積層し、熱圧着することで貼り合わせた後、金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)の表面を平滑化した後、前記支持体(D)の表面に、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、次いで、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成し、次いで、前記転写用積層体および非貫通孔の表面に、蒸着法やスパッタ法などの乾式めっき法を用いて金属膜を形成し、非貫通孔表面を導電化し、次いで、前記仮支持体(A)を剥がし、めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成し、次いで、前記めっき下地層(B)及び非貫通孔に金属めっき層(E)を形成し、次いで、パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去する導電性パターンの製造方法である。
図20では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。また、
図20は、導電性パターンを形成した基材の両面に支持体(D)を貼り合わせ、さらに、転写用積層体を貼り合わせているが、片面にのみに支持体(D)及び転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に支持体(D)と銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0234】
図21は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、導電性パターンを形成した基材に支持体(D)を貼り合わせると同時に支持体(D)の表面を平滑化処理し、支持体(D)の表面と内層の導電性パターンが非貫通孔を通じて電気的に導通しているセミアディティブ工法よる導電性パターンの製造方法である。
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)と平滑な金属箔や耐熱性フィルムとを順次積層し、熱圧着することで貼り合わせた後、金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、前記支持体(D)の表面に、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、次いで、前記転写用積層体の前記仮支持体(A)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成し、次いで、前記仮支持体(A)を剥がし、前記めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成し、次いで、前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成し、次いで、パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去し、次いで、前記非貫通孔に導電性ペーストを充填し、非貫通孔を導電化する導電性パターンの製造方法である。
図21では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。また、
図21は、導電性パターンを形成した基材の両面に支持体(D)を貼り合わせ、さらに、転写用積層体を貼り合わせているが、片面にのみに支持体(D)及び転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に支持体(D)と銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0235】
図22は、
図3で得た転写用積層体を用いた場合であって、導電性パターンを形成した基材に支持体(D)を貼り合わせると同時に支持体(D)の表面を平滑化処理し、支持体(D)の表面と内層の導電性パターンが非貫通孔を通じて電気的に導通しているセミアディティブ工法よる導電性パターンの製造方法である。
導電性パターンを形成した基材の少なくとも一面に、支持体(D)と平滑な金属箔や耐熱性フィルムとを順次積層し、熱圧着することで貼り合わせた後、金属箔や耐熱性フィルムを除去することで支持体(D)を平滑化した後、前記支持体(D)の表面に、仮支持体(A)の全面にめっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成した転写用積層体の前記樹脂層(C)が形成された面を、支持体(D)の平滑化した面に貼り合わせ、次いで、前記仮支持体(A)を剥がし、支持体(D)の表面に、前記樹脂(C)と前記めっき下地層(B)を形成し、次いで、前記めっき下地層(B)の表面にパターンレジストを形成し、次いで、前記めっき下地層(B)に金属めっき層(E)を形成し、次いで、パターンレジストを剥離し、導電性パターンとなる金属めっき層(E)の形成部以外の前記めっき下地層(B)をエッチング液により除去し、次いで、前記金属めっき層(E)から内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成し、次いで、前記非貫通孔に導電性ペーストを充填し、非貫通孔を導電化する導電性パターンの製造方法である。
図22では、支持体(D)の平滑化処理をしているが、表面が十分平滑な場合は必ずしも実施する必要はない。また、
図22は、導電性パターンを形成した基材の両面に支持体(D)を貼り合わせ、さらに、転写用積層体を貼り合わせているが、片面にのみに支持体(D)及び転写用積層体を貼り合わせ、もう一方に支持体(D)と銅箔など別の導電性パターンを貼り合わせても良い。
【0236】
以上に述べた本発明の転写用積層体の積層体、及び、転写用積層体を用いた導電性パターンの製造方法により、めっき下地層に塗工時の塗工装置への接触や搬送ロールへの接触による傷が発生しないなど品質が安定化し、めっきの下地となるシード層が形成でき、支持体と金属層(金属めっき層)との間の密着性に優れ、種々の平滑基材上に密着性の高い、設計再現性が良く、良好な矩形断面形状の平滑表面の回路パターンを有する、両面接続された基板を製造することが可能である。したがって、本発明のセミアディティブ工法用積層体を用いることで、種々の形状、サイズの高密度、高性能のプリント配線板用基板、プリント配線板を、低コストで、良好に提供することができ、プリント配線板分野における産業上の利用性が高い。また、本発明の転写用積層体の積層体や転写用積層体を用いた導電性パターンの製造方法により、高速伝送用プリント配線板、リジットプリント配線板、フレキシブルプリント配線板、タッチパネル向け導電性フィルム、タッチパネル用メタルメッシュ、有機太陽電池、有機EL素子、有機トランジスタ、非接触ICカード等のRFID、電磁波シールド、LED照明基材、デジタルサイネージ、パッケージ基板、セラミック基板、ガラス基板、シリコンウエハー基板、金属基板などの電子部材として好適に用いることができる。また、成形品の装飾めっき、成形回路部品(MID)として好適に用いることができる。特に、高周波伝送が求められる高速リジットプロント配線板、高速フレキシブルプリント配線板用途に最適である。
【実施例】
【0237】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によりなんら制限されるものではない。
【0238】
[調製例1:めっき下地層(B)形成用の塗工液(1)の調製]
窒素雰囲気下、メトキシポリエチレングリコール(数平均分子量2,000)20質量部、ピリジン8.0質量部およびクロロホルム20mlを含む混合物に、p-トルエンスルホン酸クロライド9.6質量部を含むクロロホルム(30ml)溶液を、氷冷撹拌しながら30分間滴下した後、浴槽温度40℃で4時間攪拌し、クロロホルム50mlを混合した。
次いで、得られた生成物を、5質量%塩酸水溶液100mlで洗浄し、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで洗浄し、次いで飽和食塩水溶液100mlで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過、減圧濃縮し、ヘキサンで数回洗浄した後、濾過し、80℃で減圧乾燥することによって、p-トルエンスルホニルオキシ基を有するメトキシポリエチレングリコールを得た。
【0239】
p-トルエンスルホニルオキシ基を有するメトキシポリエチレングリコール5.39質量部、ポリエチレンイミン(アルドリッチ社製、分子量25,000)20質量部、炭酸カリウム0.07質量部およびN,N-ジメチルアセトアミド100mlを混合し、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。
次いで、酢酸エチルとヘキサンとの混合溶液(酢酸エチル/ヘキサンの体積比=1/2)300mlを加え、室温で強力攪拌した後、生成物の固形物を濾過した。その固形物を、酢酸エチルとヘキサンの混合溶液(酢酸エチル/ヘキサンの体積比=1/2)100mlを用いて洗浄した後、減圧乾燥することによって、ポリエチレンイミンにポリエチレングリコールが結合した化合物を得た。
【0240】
得られたポリエチレンイミンにポリエチレングリコールが結合した化合物を0.592質量部含む水溶液138.8質量部と、酸化銀10質量部とを混合し、25℃で30分間攪拌した。次いで、ジメチルエタノールアミン46質量部を攪拌しながら徐々に加え、25℃で30分間攪拌した。続いて、10質量%アスコルビン酸水溶液15.2質量部を攪拌しながら徐々に加え20時間攪拌を続けることによって銀の分散体を得た。
【0241】
得られた銀の分散体にイソプロピルアルコール200mlとヘキサン200mlの混合溶剤を加え2分間攪拌した後、3000rpmで5分間遠心濃縮を行った。上澄みを除去した後、沈殿物にイソプロピルアルコール50mlとヘキサン50mlの混合溶剤を加えて2分間攪拌した後、2000rpm10分間遠心濃縮を行った。上澄みを除去した後、沈殿物にさらに水20質量部を加えて2分間攪拌して、減圧下有機溶剤を除去した。さらに水10質量部を加えて攪拌分散した後、該分散体を-40℃の冷凍機に1昼夜放置して凍結し、これを凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製 FDU-2200)で24時間処理することによって、灰緑色の金属光沢があるフレーク状の塊からなる塩基性窒素原子含有基を有する分散剤を含有する銀粒子を得た。
【0242】
得られた塩基性窒素原子含有基を有する分散剤を含有する銀粒子の粉末を、エタノール45質量部と、イオン交換水55質量部との混合溶媒に分散させて、5質量%のめっき下地層(B)形成用の塗工液(1)を調製した。得られた銀粒子について、電気炉で500℃1時間加熱した灰分から分散剤の割合を計算した結果、銀固形分100質量%に対し5質量%であることを確認した。
【0243】
[調製例2:めっき下地層(B)形成用の塗工液(2)の調製]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に、メチルエチルケトン32質量部及びエタノール32質量部を加え、窒素気流下で80℃に昇温した。次いで、窒素雰囲気下で撹拌しながら、リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル20質量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(分子量1,000)70質量部、グリシジルメタクリレート10質量部、メルカプトプロピオン酸メチル4.1質量部及びメチルエチルケトン80質量部の混合物と、重合開始剤(和光純薬株式会社製「V-65」、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))0.5質量部及びメチルエチルケトン5質量部の混合物とを、それぞれ別の滴下漏斗から2時間で滴下した。
【0244】
次いで、4時間ごとに重合開始剤(日油株式会社製「パーブチルO」、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)0.3質量部を2回加え、80℃で12時間攪拌した。得られた樹脂溶液に脱イオン水を加え転相乳化し、減圧脱溶剤した後、脱イオン水を加えて濃度を調整し、リン酸エステル基及びエポキシ基を有するアクリル樹脂の不揮発物76.8質量%水溶液を得た。このアクリル樹脂の重量平均分子量は4,200であり、酸価は96.2mgKOH/gであった。
【0245】
次いで、N,N-ジエチルヒドロキシルアミンの85質量%水溶液5.56g(53mmol)、リン酸エステル基及びエポキシ基を有するアクリル樹脂の76.8質量%水分散液138mg及び脱イオン水15gを混合して還元剤溶液を調製した。
【0246】
一方、リン酸エステル基及びエポキシ基を有するアクリル樹脂の76.8質量%水分散液200mgを水5gに溶解し、これに硝酸銀6.00g(35.3mmol)を水10gに溶かした溶液を加えて攪拌した。この混合物に、上記で得られた還元剤溶液を25℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間攪拌して反応を完結させた。その後、得られた液をメンブレンフィルター(細孔径0.45μm)で濾過した。次いで、イオン交換水を添加して不揮発分が5質量%になるように調整し、めっき下地層(B)形成用の塗工液(2)を得た。得られた銀粒子について、電気炉で500℃1時間加熱した灰分から分散剤の割合を計算した結果、銀固形分100質量%に対し8質量%であることを確認した。
【0247】
[調製例3:樹脂層(C)形成用の塗工液(1)の調製]
フェノキシ樹脂4250(三菱ケミカル株式会社製ビスフェノールA/ビスフェノールF混合タイプ、分子量60,000、固形分100質量%)を60質量部、アミノトリアジンノボラック樹脂(DIC株式会社製「フェノライトLA-7052」、固形分60質量%)33質量部、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON EXA-830CRP」;ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ基当量162g/当量)17質量部、トリメリット酸無水物を3質量部、および、硬化触媒として四国化成株式会社製「TBZ」0.5質量部を混合し、シクロヘキサノンを用いて不揮発分が2質量%となるように希釈し、均一に混合することで、樹脂層(C)形成用の塗工液(1)を得た。
【0248】
[調製例4:樹脂層(C)形成用の塗工液(2)の調製]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエステルポリオール(1,4-シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール)100質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸17.6質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール21.7質量部及びジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート106.2質量部を、メチルエチルケトン178質量部の混合溶剤中で反応させることによって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
【0249】
次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にトリエチルアミン13.3質量部を加えて、前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基を中和し、さらに水380質量部を加えて十分に攪拌することにより、ウレタンプレポリマーの水性分散液を得た。
【0250】
上記で得られたウレタンプレポリマーの水性分散液に、25質量%エチレンジアミン水溶液8.8質量部を加え、攪拌することによって、ウレタンプレポリマーを鎖伸長した。次いでエージング・脱溶剤することによって、ウレタン樹脂の水性分散液(不揮発分30質量%)を得た。前記ウレタン樹脂の重量平均分子量は53,000であった。
【0251】
次に、攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗、重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水140質量部、上記で得られたウレタン樹脂の水分散液100質量部を入れ、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。その後、攪拌しながら、メタクリル酸メチル60質量部、アクリル酸n-ブチル30質量部及びN-n-ブトキシメチルアクリルアミド10質量部からなる単量体混合物と、0.5質量%過硫酸アンモニウム水溶液20質量部とを別々の滴下漏斗から、反応容器内温度を80℃に保ちながら120分間かけて滴下した。
【0252】
滴下終了後、さらに同温度にて60分間攪拌した後、反応容器内の温度を40℃に冷却して、不揮発分が2質量%になるように脱イオン水で希釈した後、200メッシュ濾布で濾過することによって、前記ウレタン樹脂をシェル層とし、メタクリル酸メチル等を原料とするビニル樹脂をコア層とするコア・シェル型複合樹脂である樹脂層(C)形成用の塗工液(2)を得た。
【0253】
<調整例5:転写用積層体(1)の調整>
離型フィルム(東洋紡株式会社製「TN-200」、離型PETフィルム;厚さ38μm)の離型層を形成している面に、調整例1で得られためっき下地層(B)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、150℃で5分間乾燥することによって、前記めっき下地層(B)に相当する銀層を乾燥後の厚さが0.1μmとなるように塗工した。離型フィルム上のめっき下地層(B)について、グロー放電発光分析装置で分析した結果、空気とめっき下地層(B)の界面に存在する炭素原子の信号強度は0.89、めっき下地層(B)と離型フィルムの界面に存在する炭素原子の信号強度は0.43であった。
その後、調整例3で得られた樹脂層(C)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、180℃で3分間乾燥することによって、前記樹脂層(C)に相当する層を乾燥後の厚さが0.3μmとなるように塗工することによって、前記仮支持体(A)に相当する離型フィルムの表面に、めっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成し、転写用積層体(1)を得た。樹脂層(C)を形成した面に、カッターで1mm角100目の切り込みを入れ、粘着テープによる碁盤目剥離試験を行った結果、100目全てが離型フィルムとめっき下地層(B)の界面で剥離したことから、めっき下地層(B)に含まれる分散剤(b1)が有する塩基性窒素原子含有基と樹脂層(C)に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ基、トリメリット酸由来のカルボン酸が反応し、化学結合を形成していることを確認した。
【0254】
<調整例6:転写用積層体(2)の調整>
銅箔(古河電工株式会社製「F2-WS」銅箔;厚さ18μm)の光沢面(非粗化面)に、調整例1で得られためっき下地層(B)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、200℃で5分間乾燥することによって、前記めっき下地層(B)に相当する銀層を乾燥後の厚さが0.1μmとなるように塗工した。銅箔上のめっき下地層(B)について、グロー放電発光分析装置で分析した結果、空気とめっき下地層(B)の界面に存在する炭素原子の信号強度は0.85、めっき下地層(B)と銅箔の界面に存在する炭素原子の信号強度は0.3であった。
その後、調整例3で得られた樹脂層(C)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、180℃で3分間乾燥することによって、前記樹脂層(C)に相当する層を乾燥後の厚さが0.3μmとなるように塗工した。さらに、調整例4で得られた樹脂層(C)形成用の塗工液(2)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、120℃で5分間乾燥することによって、前記樹脂層(C)に相当する層を乾燥後の厚さが0.2μmとなるように塗工することによって、前記仮支持体(A)に相当する銅箔の表面に、めっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成し、転写用積層体(2)を得た。樹脂層(C)を形成した面に、カッターで1mm角100目の切り込みを入れ、粘着テープによる碁盤目剥離試験を行った結果、100目全てが銅箔とめっき下地層(B)の界面で剥離したことから、めっき下地層(B)に含まれる分散剤(b1)が有する塩基性窒素原子含有基と樹脂層(C)に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ基やトリメリット酸無水物由来のカルボン酸が反応し、化学結合を形成していることを確認した。
【0255】
<調整例7:転写用積層体(3)の調整>
離型フィルム(東洋紡株式会社製「TN-200」、離型PETフィルム;厚さ38μm)の離型層を形成している面に、調製例2で得られためっき下地層(B)形成用の塗工液(2)を、インクジェットプリンター(コニカミノルタ株式会社製「インクジェット試験機EB100」、評価用プリンタヘッドKM512L、吐出量42pL)を用い、線幅が5mm、線間が5mmの格子状パターン形成し、150℃で5分間乾燥することによって、前記めっき下地層(B)に相当する銀層を乾燥後の厚さが0.1μmとなるように印刷した。銅箔上のめっき下地層(B)について、グロー放電発光分析装置で分析した結果、空気とめっき下地層(B)の界面に存在する炭素原子の信号強度は0.5、めっき下地層(B)と離型フィルムの界面に存在する炭素原子の信号強度は0.1であった。
その後、調整例3で得られた樹脂層(C)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、180℃で3分間乾燥することによって、前記樹脂層(C)に相当する層を乾燥後の厚さが0.3μmとなるように塗工することによって、前記支持体(A)に相当する離型フィルムの表面に、めっき下地層(B)と樹脂層(C)を形成し、転写用積層体(3)を得た。樹脂層(C)を形成した面に、カッターで1mm角100目の切り込みを入れ、粘着テープによる碁盤目剥離試験を行った結果、100目全てが離型フィルムとめっき下地層(B)の界面で剥離したことから、めっき下地層(B)に含まれる分散剤(b1)が有するリン酸エステル基と、樹脂層(C)に含まれるアミノトリアジンノボラック樹脂由来のアミノ基が反応し、化学結合を形成していることを確認した。
【0256】
<調整例8:ビルドアップフィルムの調整>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製「ZX059」、ビスフェノールA型:ビスフェノールF型=1:1混合品、エポキシ当量約169)3質量部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「HP―4032D」、エポキシ当量約144)3質量部、結晶性2官能エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)12質量部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「HP7200H」、エポキシ当量約275)9質量部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製「YX7200B35」、固形分35質量%のMEK溶液)10質量部を、ソルベントナフサ30質量部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへ、活性エステル化合物(DIC株式会社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)40質量部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン、固形分5質量%のMEK溶液)3質量部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業株式会社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.25μm、株式会社アドマテックス製「SO-C1」、単位表面積当たりのカーボン量0.36mg/m2)140質量部、を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次いで、離型PETフィルム(厚さ38μm)の離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが30μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗工し、80~120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて、ビルドアップフィルムを作製した。
<調整例9:銀用エッチング液(1)の調整>
水47.4質量部に、酢酸2.6質量部を加え、さらに、35質量%過酸化水素水50質量部を加えて、銀用エッチング液(1)を調製した。この銀用エッチング液(1)の過酸化水素とカルボン酸とのモル比(過酸化水素/カルボン酸)は13.6であり、銀用エッチング液(1)中の過酸化水素及びカルボン酸の混合物の含有比率は22.4質量%であった。
【0257】
(実施例1)
ポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製カプトン150EN-A)の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を実施した。その後、調整例5で得た転写用積層体(1)の前記樹脂層(C)が形成された面を、ポリイミドフィルムの両面に貼り合わせ、ラミネーター(テスター産業株式会社製「小型卓上テストラミネーター」)を用い、ラミネート条件をロール材質が金属―金属、ロール温度160℃、エアー入力圧力0.4MPa、ロール速度:1m/分で熱圧着した。次いで、ポリイミドフィルムの両面に熱圧着した転写用積層体(1)の離型フィルムのみを剥離することによって、ポリイミドフィルムの両面に前記樹脂層(C)と前記めっき下地層(B)を形成した。めっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に20Ω/□であった。その後、250℃5分間乾燥することで、めっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に1Ω/□であった。
【0258】
その後、前記で得られためっき下地層(B)をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で27分間電解めっきを行うことによって、めっき下地層(B)上に、金属めっき層(E)に相当する銅めっき層(膜厚12μm)を形成した。電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(トップルチナSF-M、奥野製薬工業株式会社)5ml/Lを用いた。
このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層された積層体(1)を得た。
【0259】
(実施例2)
実施例1で用いた転写用積層体(1)に代えて、調整例6で作製した転写用積層体(2)を用いた以外は同様の方法で、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層された積層体(2)を得た。また、転写用積層体を熱圧着し、仮支持体(A)を剥離した後のめっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に10Ω/□であった。また、250℃5分間乾燥後のめっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に0.5Ω/□であった。
【0260】
(実施例3)
実施例1で用いた転写用積層体(1)に代えて、調整例7で作製した転写用積層体(3)を用いた以外は同様の方法で、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層された積層体(3)を得た。金属めっき層(E)は、めっき下地層(B)の導電性パターンの通り、格子状のパターンとなった。また、転写用積層体を熱圧着し、仮支持体(A)を剥離した後のめっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に50Ω/□であった。また、250℃5分間乾燥後のめっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に10Ω/□であった。
【0261】
(実施例4)
プリプレグ(パナソニック株式会社製R-5670KG、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)の両面に銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の光沢面(非粗化面)を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。その後、40℃の塩化第二鉄エッチング液(含有量40質量%)に3分間浸漬し、銅箔を全面エッチングすることで、前記支持体(D)に相当するプリプレグが硬化したリジット基材を得た。リジット基材の表面粗さはSz4.215μmであり、平滑化されていることを確認した。その後、前記リジット基材の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を行った。次いで、調整例6で得た転写用積層体(2)の樹脂層(C)を形成した面を前記リジット基材の両面に貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)で175℃1分間圧着した。
【0262】
次いで、転写用積層体(2)の仮支持体(A)となる銅箔の表面から反対側の仮支持体となる銅箔まで、ドリルを用いて100μm径のスルーホール(貫通孔)を形成した。次いで、ドリル加工によって発生したゴミ(スミア)を除去するため、プラズマ処理でデスミアを行った。その後、このようにして得られた貫通孔付き基材を、マクダーミッド社のブラックホールプロセス(コンディショニング-カーボン吸着処理-エッチング)に通して、スルーホールの表面にカーボンを付着させ、フィルムを乾燥させた。次いで、カーボンの付着した仮支持体(A)に相当する銅箔を剥離することにより、リジット基材の表面に、樹脂層(C)とめっき下地層(B)を形成し、貫通孔にカーボンが付着した積層体を作製した。リジット基材上のめっき下地層(B)の表裏面をテスターで検査することにより、表裏面が電気的に接続され、導電性が確保されていることを確認した。また、めっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に10Ω/□であった。
【0263】
その後、前記で得られためっき下地層(B)をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で27分間電解めっきを行うことによって、めっき下地層(B)上及び貫通孔に、金属めっき層(E)に相当する銅めっき層(膜厚12μm)を形成した。電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(トップルチナSF-M、奥野製薬工業株式会社)5ml/Lを用いた。
このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、貫通孔内が導電化処理された積層体(4)を得た。
【0264】
(実施例5)
実施例4の貫通孔の導電化処理で用いたマクダーミッド社のブラックホールプロセス(コンディショニング-カーボン吸着処理-エッチング)の代わりに、スパッタリング法を用いた以外は実施例4と同様の方法で実施した。スパッタリング法の条件について、貫通孔付き基材をスパッタリング装置に装入し、スパッタリングターゲットとして銅を装着した。その後、チャンバー内圧力が1.0×10-3Pa以下になるまで排気した後、スパッタリングガスとしてアルゴンガスを流量200sccmでチャンバーに供給し、チャンバー内圧力を0.3Paとした。貫通孔付き基材の温度を75℃に維持しながら、銅ターゲットのスパッタリングにより銅からなる金属層を100nmの厚さに積層した。また、転写用積層体を熱圧着し、仮支持体(A)を剥離した後のめっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に10Ω/□であった。このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、貫通孔が導電化処理された積層体(5)を得た。
【0265】
(実施例6)
プリプレグ(パナソニック株式会社製R-5670KG、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)の両面に銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の光沢面(非粗化面)を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。その後、40℃塩化第二鉄エッチング液(含有量40質量%)に3分間浸漬し、銅箔を全面エッチングすることで、前記支持体(D)に相当するプリプレグが硬化したリジット基材を得た。リジット基材の表面粗さはSz4.215μmであり、平滑化されていることを確認した。その後、前記リジット基材の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を行い、次いで、調整例5で得た転写用積層体(1)の樹脂層(C)を形成した面を前記リジット基材の両面に貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)で175℃1分間圧着した。
【0266】
次いで、転写用積層体(1)の仮支持体(A)に相当する離型フィルムの表面から反対側の仮支持体(A)に相当する離型フィルムまで、ドリルを用いて100μm径のスルーホール(貫通孔)を形成した。次いで、ドリル穴加工によって発生したゴミ(スミア)を除去するため、プラズマ処理でデスミアを行った。その後、このようにして得られた貫通孔付き基材から、仮支持体(A)に相当する離型フィルムのみを剥離し、リジット基材の表面に、樹脂層(C)とめっき下地層(B)を形成した。めっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に20Ω/□であった。その後、250℃5分間乾燥することで、めっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に1Ω/□であった。
【0267】
その後、前記で得られためっき下地層(B)をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で27分間電解めっきを行うことによって、めっき下地層(B)上に、金属めっき層(E)に相当する銅めっき層(膜厚12μm)を形成した。電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(トップルチナSF-M、奥野製薬工業株式会社)5ml/Lを用いた。
次いで、貫通孔付き基材のスルホールを導電化処理するため、導電性ペースト(株式会社アサヒ化学研究所製「LS―411MK」)を用い、スクリーン印刷法で印刷することにより、貫通孔を埋め、150℃30分乾燥した。
このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、貫通孔が導電化処理された積層体(6)を得た。
【0268】
(実施例7)
両面に銅箔を貼り合わせたコア材(三菱ガス化学株式会社製「CCL-HL832NB」、基材厚0.1mm、銅箔12μm)を準備し、導電性パターンを形成した内層板を作製した。その後、調整例8で作製したビルドアップフィルムの離型PETフィルムとは反対側の面を内層板の導電性パターンの面にセットし、バッチ式真空加圧ラミネーターで貼り合わせた。30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後100℃、0.7MPaで30秒間圧着した。その後、170℃で15分間加温し、離型PETフィルムを剥離した。表面粗さはSz8.010μmであった。
次いで、ビルドアップフィルムの表面に銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の光沢面(非粗化面)を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。次いで、40℃塩化第二鉄エッチング液(含有量40質量%)に3分間浸漬し、銅箔を全面エッチングすることで、前記支持体(D)に相当する硬化したビルドアップフィルムを得た。ビルドアップフィルムの表面粗さはSz2.125μmであり、平滑化されていることを確認した。
【0269】
その後、前記ビルドアップフィルムの表面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を行い、次いで、調整例6で得た転写用積層体(2)の樹脂層(C)を形成した面を前記ビルドアップの表面に貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)で175℃1分間圧着した。
【0270】
次いで、転写用積層体(2)の仮支持体(A)に相当する銅箔の表面から内層板の導電性パターンまで非貫通孔を形成するため、レーザーを用いて100μm径のブラインドビアホールを形成した。次いで、レーザー加工によって発生したゴミ(スミア)を除去するため、プラズマ処理でデスミアを行った。その後、このようにして得られた非貫通孔付き基材を、マクダーミッド社のシャドープロセス(コンディショニング-カーボン吸着処理-エッチング)に通して、非貫通孔の表面にカーボンを付着させ、フィルムを乾燥させた。次いで、カーボンの付着した仮支持体(A)に相当する銅箔を剥離することにより、ビルドアップフィルムの表面に、樹脂層(C)とめっき下地層(B)を形成し、非貫通孔にカーボンが付着した積層体を作製した。ビルドアップフィルム上のめっき下地層(B)と内層板の導電性パターンをテスターで検査することにより、表面と内層板が電気的に接続され、導電性が確保されていることを確認した。また、めっき下地層(B)の表面抵抗は、10Ω/□であった。
【0271】
その後、前記で得られためっき下地層(B)をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で27分間電解めっきを行うことによって、めっき下地層(B)上及び非貫通孔表面に、金属めっき層(E)に相当する銅めっき層(膜厚12μm)を形成した。電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(トップルチナSF-M、奥野製薬工業株式会社)5ml/Lを用いた。
このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、非貫通孔内が導電化処理された積層体(7)を得た。
【0272】
(実施例8)
実施例7の非貫通孔の導電化処理で用いたマクダーミッド社のシャドープロセス(コンディショニング-カーボン吸着処理-エッチング)の代わりに、スパッタリング法を用いた以外は実施例7と同様の方法で実施した。スパッタリング法の条件について、非貫通孔付き基材をスパッタリング装置に装入し、スパッタリングターゲットとして銅を装着した。その後、チャンバー内圧力が1.0×10-3Pa以下になるまで排気した後、スパッタリングガスとしてアルゴンガスを流量200sccmでチャンバーに供給し、チャンバー内圧力を0.3Paとした。非貫通孔付き基材の温度を75℃に維持しながら、銅ターゲットのスパッタリングにより銅からなる金属層を100nmの厚さに積層した。また、仮支持体(A)を剥離し、金属めっき層(E)を形成する前のめっき下地層(B)の表面抵抗を測定した結果、10Ω/□であった。このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、貫通孔が導電化処理された積層体(8)を得た。
【0273】
(実施例9)
両面に銅箔を貼り合わせたコア材(パナソニック株式会社製「R-5775KH」、基材厚0.1mm、銅箔18μm)を準備し、導電性パターンを形成した内層板を作製した。その後、内層板の表面にプリプレグ(パナソニック株式会社製「R-5670KG」、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)と、銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の光沢面(非粗化面)を順次貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。次いで、40℃塩化第二鉄エッチング液(含有量40重量%)に3分間浸漬し、銅箔を全面エッチングすることで、前記支持体(D)に相当するプリプレグが硬化したリジット基材を得た。リジット基材の表面粗さはSz4.215μmであり、平滑化されていることを確認した。その後、前記リジット基材の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を行い、次いで、調整例6で得た転写用積層体(2)の樹脂層(C)を形成した面を前記リジット基材の両面に貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)で175℃1分間圧着した。
【0274】
次いで、転写用積層体(2)の仮支持体(A)に相当する銅箔の表面から内層板の導電性パターンまで、レーザーを用いて100μm径のブラインドビアホール(非貫通孔)を形成した。次いで、レーザー穴加工によって発生したゴミ(スミア)を除去するため、プラズマ処理でデスミアを行った。その後、このようにして得られた非貫通孔付き基材から、仮支持体(A)に相当する銅箔のみを剥離し、リジット基材の表面に、樹脂層(C)とめっき下地層(B)を形成した。めっき下地層(B)と内層板の導電性パターンをテスターで検査することにより、表面と内層板が電気的に接続され、導電性が確保されていることを確認した。また、めっき下地層(B)の表面抵抗は、10Ω/□であった。
【0275】
その後、前記で得られためっき下地層(B)をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で40分間電解めっきを行うことによって、めっき下地層(B)上に、金属めっき層(E)に相当する銅めっき層(膜厚18μm)を形成した。電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(トップルチナSF-M、奥野製薬工業株式会社)5ml/Lを用いた。
次いで、非貫通孔付き基材のブラインドビアホールを導電化処理するため、導電性ペースト(株式会社アサヒ化学研究所製「LS―411MK」)を用い、スクリーン印刷法で印刷することにより、非貫通孔を埋め、150℃30分乾燥した。
このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、非貫通孔が導電化処理された積層体(9)を得た。
【0276】
(実施例10)
プリプレグ(パナソニック株式会社製R-5670KG、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)の両面に銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の光沢面(非粗化面)を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。その後、40℃塩化第二鉄エッチング液(含有量40重量%)に5分間浸漬し、銅箔を全面エッチングすることで、前記支持体(D)に相当するプリプレグが硬化したリジット基材を得た。リジット基材の表面粗さはSz4.215μmであり、平滑化されていることを確認した。その後、前記リジット基材の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を行い、次いで、調整例5で得た転写用積層体(1)の樹脂層(C)を形成した面を前記リジット基材の両面に貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)で175℃1分間圧着した。
【0277】
次いで、転写用積層体(1)の仮支持体(A)に相当する離型フィルムの表面から反対側の仮支持体(A)に相当する離型フィルムまで、ドリルを用いて100μm径のスルーホール(貫通孔)を形成した。次いで、ドリル加工によって発生したゴミ(スミア)を除去するため、プラズマ処理でデスミアを行った。その後、このようにして得られた貫通孔付き基材を、パラジウム法により導電化した。パラジウム法の処理条件としては、塩化パラジウム1g/l、塩酸1ml/lおよびジメチルチオ尿素1g/lを含む触媒液に25℃で3分間浸漬した。次いで、基板を水洗し、ジメチルアミンボラン10g/lおよび水酸化ナトリウム5g/lを含む還元液により50℃で2分間処理することで、スルーホールをパラジウムにより導電化した。次いで、パラジウムが付着した仮支持体(A)に相当する離型フィルムを剥離することにより、リジット基材の表面に、樹脂層(C)とめっき下地層(B)を形成し、貫通孔にパラジウムが付着した積層体を作製した。リジット基材上のめっき下地層(B)の表裏面をテスターで検査することにより、表裏面が電気的に接続され、導電性が確保されていることを確認した。めっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に20Ω/□であった。
その後、セミアディティブ法で導電性パターンを形成した。めっきレジスト(昭和電工マテリアルズ株式会社製「RY-5125」、厚み25μm)を110℃、0.4MPa、1m/分で前記めっき下地層(B)の表面に貼り合わせ、露光機(サンハヤト株式会社製「BOX-W10」)で、2分間処理(316mJ/cm2)の露光処理を行い、次いで現像液(1質量%炭酸ナトリウム水溶液)に5分浸漬し、現像処理を行うことでパターンレジストを形成した。貫通孔はめっきレジストで塞がない状態にした。
【0278】
その後、前記で得られたパターンレジストを形成しためっき下地層(B)及び貫通孔を銅めっき処理をした。パターンレジストを形成しためっき下地層(B)をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で40分間電解めっきを行うことによって、めっき下地層(B)上に、金属めっき層(E)に相当する銅めっき層(膜厚18μm)を形成した。電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(トップルチナSF-M、奥野製薬工業株式会社)5ml/Lを用いた。
【0279】
次いで、3質量%水酸化ナトリウムに3分間浸漬することで、めっきレジストを剥離した。その後、調整例9で得られた銀用エッチング液(1)を用い、上記で得られた基材を25℃30秒浸漬することで、金属めっき層の導電性パターン以外のめっき下地層を除去し、プリント配線板を得た。作製したプリント配線板の回路形成部の断面形状は、配線高さ、及び、配線幅の減少がなく、かつ、アンダーカットのない矩形形状を示し、平滑な表面の導電性パターンであった。このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、貫通孔が導電化処理された積層体(10)を得た。
【0280】
(実施例11)
実施例10のパラジウム法に代えて、スパッタリング法に変えた以外は同様の方法で実施した。スパッタリング法の条件について、貫通孔付き基材をスパッタリング装置に装入し、スパッタリングターゲットとして銅を装着した。その後、チャンバー内圧力が1.0×10-3Pa以下になるまで排気した後、スパッタリングガスとしてアルゴンガスを流量200sccmでチャンバーに供給し、チャンバー内圧力を0.3Paとした。非貫通孔付き基材の温度を75℃に維持しながら、銅ターゲットのスパッタリングにより銅からなる金属層を100nmの厚さに積層した。また、仮支持体(A)を剥離した後、めっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に20Ω/□であった。
このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、貫通孔が導電化処理された積層体(11)を得た。
【0281】
(実施例12)
プリプレグ(パナソニック株式会社製R-5670KG、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)の両面に銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の光沢面(非粗化面)を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。その後、40℃塩化第二鉄エッチング液(含有量40質量%)に3分間浸漬し、銅箔を全面エッチングすることで、前記支持体(D)に相当するプリプレグが硬化したリジット基材を得た。リジット基材の表面粗さはSz4.215μmであり、平滑化されていることを確認した。その後、前記リジット基材の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を行い、次いで、調整例5で得た転写用積層体(1)の樹脂層(C)を形成した面を前記リジット基材の両面に貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)で175℃1分間圧着した。
【0282】
次いで、転写用積層体(1)の仮支持体(A)に相当する離型フィルムの表面から反対側の仮支持体(A)に相当する離型フィルムまで、ドリルを用いて100μm径のスルーホール(貫通孔)を形成した。次いで、ドリル穴加工によって発生したゴミ(スミア)を除去するため、プラズマ処理でデスミアを行った。その後、仮支持体(A)に相当する離型フィルムを剥離し、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)を形成した積層体を作製した。仮支持体(A)を剥離した後のめっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に20Ω/□であった。
【0283】
その後、セミアディティブ法で導電性パターンを形成した。めっきレジスト(昭和電工マテリアルズ株式会社製「RY-5125」、厚み25μm)を110℃、0.4MPa、1m/分で前記めっき下地層(B)の表面に貼り合わせ、露光機(サンハヤト株式会社製「BOX-W10」)で、2分間処理(316mJ/cm2)の露光処理を行い、次いで現像液(1質量%炭酸ナトリウム水溶液)に5分浸漬することで現像処理を行うことでパターンレジストを形成した。
【0284】
その後、前記で得られたパターンレジストを形成しためっき下地層(B)を銅めっき処理をした。パターンレジストを形成しためっき下地層(B)をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で40分間電解めっきを行うことによって、めっき下地層(B)上に、金属めっき層(E)に相当する銅めっき層(膜厚18μm)を形成した。電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(トップルチナSF-M、奥野製薬工業株式会社)5ml/Lを用いた。
【0285】
次いで、3質量%水酸化ナトリウムに3分間浸漬することで、めっきレジストを剥離した。その後、調整例9で得られた銀用エッチング液(1)を用い、上記で得られた基材を25℃30秒浸漬することで、金属めっき層の導電性パターン以外のめっき下地層を除去し、プリント配線板を得た。作製したプリント配線板の回路形成部の断面形状は、配線高さ、及び、配線幅の減少がなく、かつ、アンダーカットのない矩形形状を示し、平滑な表面の導電性パターンであった。
その後、貫通孔付き基材のスルホールを導電化処理するため、導電性ペースト(株式会社アサヒ化学研究所製「LS―411MK」)を用い、スクリーン印刷法で印刷することにより、貫通孔を埋め、150℃30分乾燥した。
このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、貫通孔が導電化処理された積層体(12)を得た。
【0286】
(実施例13)
プリプレグ(パナソニック株式会社製R-5670KG、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)の両面に銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の光沢面(非粗化面)を貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。その後、40℃塩化第二鉄エッチング液(含有量40質量%)に3分間浸漬し、銅箔を全面エッチングすることで、前記支持体(D)に相当するプリプレグが硬化したリジット基材を得た。リジット基材の表面粗さはSz4.215μmであり、平滑化されていることを確認した。その後、前記リジット基材の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を行い、次いで、調整例6で得た転写用積層体(2)の樹脂層(C)を形成した面を前記リジット基材の両面に貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)で175℃1分間圧着した。その後、仮支持体(A)に相当する銅箔を剥離し、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)を形成した積層体を作製した。仮支持体(A)を剥離した後のめっき下地層(B)の表面抵抗は、表面と裏面が共に10Ω/□であった。
【0287】
その後、セミアディティブ法で導電性パターンを形成した。めっきレジスト(昭和電工マテリアルズ株式会社製「RY-5125」、厚み25μm)を110℃、0.4MPa、1m/分で前記めっき下地層(B)の表面に貼り合わせ、露光機(サンハヤト株式会社製「BOX-W10」)で、2分間処理(316mJ/cm2)の露光処理を行い、次いで現像液(1質量%炭酸ナトリウム水溶液)に5分浸漬することで現像処理を行うことでパターンレジストを形成した。
【0288】
その後、前記で得られたパターンレジストを形成しためっき下地層(B)に銅めっき処理をした。パターンレジストを形成しためっき下地層(B)をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で40分間電解めっきを行うことによって、めっき下地層(B)上に、金属めっき層(E)に相当する銅めっき層(膜厚18μm)を形成した。電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(トップルチナSF-M、奥野製薬工業株式会社)5ml/Lを用いた。
【0289】
次いで、3質量%水酸化ナトリウムに3分間浸漬することで、めっきレジストを剥離した。その後、調整例9で得られた銀用エッチング液(1)を用い、上記で得られた基材を25℃30秒浸漬することで、金属めっき層の導電性パターン以外のめっき下地層を除去し、プリント配線板を得た。作製したプリント配線板の回路形成部の断面形状は、配線高さ、及び、配線幅の減少がなく、かつ、アンダーカットのない矩形形状を示し、平滑な表面の導電性パターンであった。
次いで、上記のパターンエッチングで得られた金属めっき層(E)の導電性パターンの表面から反対側の導電性パターンまで、レーザーを用いて100μm径のスルーホール(貫通孔)を形成した。次いで、レーザー加工によって発生したゴミ(スミア)を除去するため、プラズマ処理でデスミアを行った。
その後、貫通孔付き基材のスルホールを導電化処理するため、導電性ペースト(株式会社アサヒ化学研究所製「LS―411MK」)を用い、スクリーン印刷法で印刷することにより、貫通孔を埋め、160℃30分乾燥した。
このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、貫通孔が導電化処理された積層体(13)を得た。
【0290】
(実施例14)
両面に銅箔を貼り合わせたコア材(パナソニック株式会社製「R-5775KH」、基材厚0.1mm、銅箔18μm)を準備し、導電性パターンを形成した内層板を作製した。その後、内層板の表面にプリプレグ(パナソニック株式会社製「R-5670KG」、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)と、銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の光沢面(非粗化面)を順次貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。次いで、40℃塩化第二鉄エッチング液(含有量40質量%)に3分間浸漬し、銅箔を全面エッチングすることで、前記支持体(D)に相当するプリプレグが硬化したリジット基材を得た。リジット基材の表面粗さはSz4.215μmであり、平滑化されていることを確認した。その後、前記リジット基材の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を行い、次いで、調整例5で得た転写用積層体(1)の樹脂層(C)を形成した面を前記リジット基材の両面に貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)で175℃1分間圧着した。
【0291】
次いで、転写用積層体(1)の仮支持体(A)に相当する離型フィルムの表面から内層板の導電性パターンまでブラインドビアホール(非貫通孔)を形成するため、レーザーを用いて100μm径のブラインドビアホールを形成した。次いで、レーザー加工によって発生したゴミ(スミア)を除去するため、プラズマ処理でデスミアを行った。その後、このようにして得られた非貫通孔付き基材を、マクダーミッド社のシャドープロセス(コンディショニング-カーボン吸着処理-エッチング)に通して、非貫通孔の表面にカーボンを付着させ、フィルムを乾燥させた。次いで、カーボンの付着した仮支持体(A)に相当する離型フィルムを剥離することにより、リジット基材の表面に、樹脂層(C)とめっき下地層(B)を形成し、非貫通孔にカーボンが付着した積層体を作製した。リジット基板上のめっき下地層(B)と内層板の導電性パターンをテスターで検査することにより、表面と内層板が電気的に接続され、導電性が確保されていることを確認した。また、仮支持体(A)を剥離した後、めっき下地層(B)の表面抵抗は20Ω/□であった。
【0292】
その後、セミアディティブ法で導電性パターンを形成した。めっきレジスト(昭和電工マテリアルズ株式会社製「RY-5125」、厚み25μm)を110℃、0.4MPa、1m/分で前記めっき下地層(B)の表面に貼り合わせ、露光機(サンハヤト株式会社製「BOX-W10」)で、2分間処理(316mJ/cm2)の露光処理を行い、次いで現像液(1質量%炭酸ナトリウム水溶液)に5分浸漬することで現像処理を行うことでパターンレジストを形成した。現像後、非貫通孔はめっきレジストで塞がない状態にした。
【0293】
その後、前記で得られたパターンレジストを形成しためっき下地層(B)及び非貫通孔を銅めっき処理をした。パターンレジストを形成しためっき下地層(B)をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で40分間電解めっきを行うことによって、めっき下地層(B)上に、金属めっき層(E)に相当する銅めっき層(膜厚18μm)を形成した。電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(トップルチナSF-M、奥野製薬工業株式会社)5ml/Lを用いた。
【0294】
次いで、3質量%水酸化ナトリウムに3分間浸漬することで、めっきレジストを剥離した。その後、調整例9で得られた銀用エッチング液(1)を用い、上記で得られた基材を25℃30秒浸漬することで、金属めっき層の導電性パターン以外のめっき下地層を除去し、プリント配線板を得た。作製したプリント配線板の回路形成部の断面形状は、配線高さ、及び、配線幅の減少がなく、かつ、アンダーカットのない矩形形状を示し、平滑な表面の導電性パターンであった。このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、非貫通孔が導電化処理された積層体(14)を得た。
【0295】
(実施例15)
実施例14のシャドープロセス(コンディショニング-カーボン吸着処理-エッチング)に代えて、スパッタリング法に変えた以外は同様の方法で実施した。スパッタリング法の条件について、非貫通孔付き基材をスパッタリング装置に装入し、スパッタリングターゲットとして銅を装着した。その後、チャンバー内圧力が1.0×10-3Pa以下になるまで排気した後、スパッタリングガスとしてアルゴンガスを流量200sccmでチャンバーに供給し、チャンバー内圧力を0.3Paとした。非貫通孔付き基材の温度を75℃に維持しながら、銅ターゲットのスパッタリングにより銅からなる金属層を100nmの厚さに積層した。リジット基板上のめっき下地層(B)と内層板の導電性パターンをテスターで検査することにより、表面と内層板が電気的に接続され、導電性が確保されていることを確認した。また、仮支持体(A)を剥離した後、めっき下地層(B)の表面抵抗は20Ω/□であった。
このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、貫通孔が導電化処理された積層体(15)を得た。
【0296】
(実施例16)
両面に銅箔を貼り合わせたコア材(パナソニック株式会社製「R-5775KH」、基材厚0.1mm、銅箔18μm)を準備し、導電性パターンを形成した内層板を作製した。その後、内層板の表面にプリプレグ(パナソニック株式会社製「R-5670KG」、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)と、銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の光沢面(非粗化面)を順次貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。次いで、40℃塩化第二鉄エッチング液(含有量40質量%)に5分間浸漬し、銅箔を全面エッチングすることで、前記支持体(D)に相当するプリプレグが硬化したリジット基材を得た。リジット基材の表面粗さはSz4.215μmであり、平滑化されていることを確認した。その後、前記リジット基材の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を行い、次いで、調整例6で得た転写用積層体(2)の樹脂層(C)を形成した面を前記リジット基材の両面に貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)で175℃1分間圧着した。
【0297】
次いで、転写用積層体(2)の仮支持体(A)に相当する銅箔の表面から内層板の導電性パターンまでブラインドビアホール(非貫通孔)を形成するため、レーザーを用いて100μm径のブラインドビアホールを形成した。次いで、レーザー加工によって発生したゴミ(スミア)を除去するため、プラズマ処理でデスミアを行った。次いで、仮支持体(A)に相当する銅箔を剥離することにより、リジット基材の表面に、樹脂層(C)とめっき下地層(B)を形成した積層体を作製した。仮支持体(A)を剥離した後、めっき下地層(B)の表面抵抗は10Ω/□であった。
【0298】
その後、セミアディティブ法で導電性パターンを形成した。めっきレジスト(昭和電工マテリアルズ株式会社製「RY-5125」、厚み25μm)を110℃、0.4MPa、1m/分で前記めっき下地層(B)の表面に貼り合わせ、露光機(サンハヤト株式会社製「BOX-W10」)で、2分間処理(316mJ/cm2)の露光処理を行い、次いで現像液(1質量%炭酸ナトリウム水溶液)に5分浸漬することで現像処理を行うことでパターンレジストを形成した。現像後、非貫通孔はめっきレジストで塞がない状態にした。
【0299】
その後、前記で得られたパターンレジストを形成しためっき下地層(B)に銅めっき処理をした。パターンレジストを形成しためっき下地層(B)をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で40分間電解めっきを行うことによって、めっき下地層(B)上に、金属めっき層(E)に相当する銅めっき層(膜厚18μm)を形成した。電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(トップルチナSF-M、奥野製薬工業株式会社)5ml/Lを用いた。
【0300】
次いで、3質量%水酸化ナトリウムに3分間浸漬することで、めっきレジストを剥離した。その後、調整例9で得られた銀用エッチング液(1)を用い、上記で得られた基材を25℃30秒浸漬することで、金属めっき層の導電性パターン以外のめっき下地層(B)を除去し、プリント配線板を得た。作製したプリント配線板の回路形成部の断面形状は、配線高さ、及び、配線幅の減少がなく、かつ、アンダーカットのない矩形形状を示し、平滑な表面の導電性パターンであった。
その後、非貫通孔付き基材のブラインドビアホールを導電化処理するため、導電性ペースト(株式会社アサヒ化学研究所製「LS―411MK」)を用い、スクリーン印刷法で印刷することにより、非貫通孔を埋め、160℃30分乾燥した。
このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、非貫通孔が導電化処理された積層体(16)を得た。
【0301】
(実施例17)
両面に銅箔を貼り合わせたコア材(パナソニック株式会社製「R-5775KH」、基材厚0.1mm、銅箔18μm)を準備し、導電性パターンを形成した内層板を作製した。その後、内層板の表面にプリプレグ(パナソニック株式会社製「R-5670KG」、ガラス繊維含有、厚み0.1mm、表面粗さSz:20.815μm)と、銅箔(古河電工株式会社製F2-WS、厚み18μm)の光沢面(非粗化面)を順次貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、195℃90分間熱圧着した。次いで、40℃塩化第二鉄エッチング液(含有量40質量%)に5分間浸漬し、銅箔を全面エッチングすることで、前記支持体(D)に相当するプリプレグが硬化したリジット基材を得た。リジット基材の表面粗さはSz4.215μmであり、平滑化されていることを確認した。その後、前記リジット基材の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を行い、次いで、調整例6で得た転写用積層体(2)の樹脂層(C)を形成した面を前記リジット基材の両面に貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)で175℃1分間圧着した。次いで、仮支持体(A)に相当する銅箔を剥離することにより、リジット基材の表面に、樹脂層(C)とめっき下地層(B)を形成した積層体を作製した。また、仮支持体(A)を剥離した後、めっき下地層(B)の表面抵抗は10Ω/□であった。
【0302】
その後、セミアディティブ法で導電性パターンを形成した。めっきレジスト(昭和電工マテリアルズ株式会社製「RY-5125」、厚み25μm)を110℃、0.4MPa、1m/分で前記めっき下地層(B)の表面に貼り合わせ、露光機(サンハヤト株式会社製「BOX-W10」)で、2分間処理(316mJ/cm2)の露光処理を行い、次いで現像液(1質量%炭酸ナトリウム水溶液)に5分浸漬することで現像処理を行うことでパターンレジストを形成した。現像後、非貫通孔はめっきレジストで塞がない状態にした。
【0303】
その後、前記で得られたパターンレジストを形成しためっき下地層(B)に銅めっき処理をした。パターンレジストを形成しためっき下地層(B)をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で40分間電解めっきを行うことによって、めっき下地層(B)上に、金属めっき層(E)に相当する銅めっき層(膜厚18μm)を形成した。電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(トップルチナSF-M、奥野製薬工業株式会社)5ml/Lを用いた。
【0304】
次いで、3質量%水酸化ナトリウムに3分間浸漬することで、めっきレジストを剥離した。その後、調整例9で得られた銀用エッチング液(1)を用い、上記で得られた基材を25℃30秒浸漬することで、金属めっき層の導電性パターン以外のめっき下地層(B)を除去し、プリント配線板を得た。作製したプリント配線板の回路形成部の断面形状は、配線高さ、及び、配線幅の減少がなく、かつ、アンダーカットのない矩形形状を示し、平滑な表面の導電性パターンであった。
次いで、上記でパターン形成した金属めっき層(E)の表面から内層板の導電性パターンまでブラインドビアホール(非貫通孔)を形成するため、レーザーを用いて100μm径のブラインドビアホールを形成した。次いで、レーザー加工によって発生したゴミ(スミア)を除去するため、プラズマ処理でデスミアを行った。
その後、非貫通孔付き基材のブラインドビアホールを導電化処理するため、導電性ペースト(株式会社アサヒ化学研究所製「LS―411MK」)を用い、スクリーン印刷法で印刷することにより、非貫通孔を埋め、150℃30分乾燥した。
このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層され、非貫通孔が導電化処理された積層体(17)を得た。
【0305】
(比較例1)
ポリイミドフィルム(東レデュポン式会社製「カプトン150EN-A」、厚さ38μm)の片面(始めに塗工した面をA面とする)に、調整例3で得られた樹脂層(C)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、180℃で3分間乾燥することによって、前記樹脂層(C)に相当する層を乾燥後の厚さが0.3μmとなるようにポリイミドフィルム上に塗工した。その後、裏返しにしもう片面(次に塗工した面をB面とする)に、調整例3で得られた樹脂層(C)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、180℃で3分間乾燥することによって、前記樹脂層(C)に相当する層を乾燥後の厚さが0.3μmとなるように塗工した。B面に調整例3で得られた樹脂層(C)形成用の塗工液(1)を塗工する際、A面が塗工装置に接触することで、塗膜に傷が発生した。その後、裏返しにし、A面に調製例1で得られためっき下地層(B)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、180℃で3分間乾燥することによって、前記めっき下地層(B)に相当する銀層を乾燥後の厚さが0.1μmとなるように塗工した。A面に調製例1で得られためっき下地層(B)形成用の塗工液(1)を塗工する際、B面が塗工装置に接触することで、塗膜に傷が発生した。その後、裏返しにし、B面に調整例1で得られた塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、180℃で3分間乾燥することによって、前記めっき下地層(B)に相当する銀層を乾燥後の厚さが0.1μmとなるように塗工した。B面に調製例1で得られためっき下地層(B)形成用の塗工液(1)を塗工する際、A面が塗工装置に接触することで、塗膜に傷が発生した。
その後、めっき下地層(B)の表面抵抗は、A面が10000Ω/□、B面が20000Ω/□であった。さらに、250℃5分間乾燥することで、めっき下地層(B)の表面抵抗は、A面が30Ω/□、B面が500Ω/□となった。
その後、上記で得られためっき下地層(B)に銅めっき処理をした。めっき下地層(B)をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で40分間電解めっきを行うことによって、めっき下地層(B)上に、金属めっき層(E)に相当する銅めっき層(膜厚18μm)を形成した。電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(トップルチナSF-M、奥野製薬工業株式会社)5ml/Lを用いた。
このようにして、支持体(D)、樹脂層(C)、めっき下地層(B)、および金属めっき層(E)が順次積層された積層体(R1)を得た。
【0306】
<表面抵抗の測定方法>
めっき下地層(B)の表面抵抗は、ロレスタGX MCP-T700を用い、PSPプローブで測定した。単位はΩ/□とした。
【0307】
<めっき下地層(B)表面と樹脂層(C)表面の傷の評価方法>
めっき支持体層(B)表面と樹脂層(C)表面の傷を下記の基準を用いて目視で評価した。
A:めっき下地層(B)の塗膜表面と樹脂層(C)の塗膜表面の両方で傷はなかった。
B:めっき下地層(B)の塗膜表面に傷はなく、樹脂層(C)の塗膜表面に傷が発生した。
C:めっき下地層(B)の塗膜表面に傷が発生し、樹脂層(C)の塗膜表面に傷はなかった。
D:めっき下地層(B)の塗膜表面と樹脂層(C)の塗膜表面の両方で傷が発生した。
【0308】
【0309】
本発明の積層体である実施例1から17で得られた積層体(1)から(17)は、転写用積層体を用い支持体(D)に貼り合わせ、仮支持体(A)のみを剥離した後のめっき下地層(B)の表面抵抗が、A面とB面が同等で比較的低く、比較例のように塗工面が塗工装置への接触がないため、塗工面に傷が無かった。
一方、比較例1は、表面(A面)と裏面(B面)を交互に塗工し、A面とB面の熱履歴が異なるため表面抵抗がA面とB面で大きく異なり、表面抵抗が比較的高かった。さらに、塗工面が塗工装置に接触するため塗工面に傷が多かった。表面抵抗がA面とB面で異なる場合、一度に両面を電解銅めっきをすると、表面抵抗の低い側に銅めっきが集中するため、めっき膜が厚くなった。また、塗工面に傷があるため、パターンエッチングにより、導電性パターンを形成した際に断線の原因となり、品質が低下した。
【符号の説明】
【0310】
1:仮支持体
2:めっき下地層
3:樹脂層
4:支持体
5:レジスト
6:金属めっき層
7:平滑化処理基材
8:貫通孔
9:パラジウム、導電性ポリマー、
導電性ペースト、カーボンのいずれか
10:金属膜(乾式めっき法)
11:導電性ペースト
12:コア材
13:銅層(内層)
14:非貫通孔
【要約】
支持体表面を粗化することなく、簡便でかつ安価に、めっき下地層に塗工時の塗工装置への接触や搬送ロールへの接触による傷が発生しないなど品質が安定する方法で、めっきの下地となるシード層が形成でき、支持体と金属層(金属めっき層)との間の密着性に優れた積層体、並びにそれを用いたリジットプリント配線板、フレキシブルプリント配線板及び成形品を提供することである。
仮支持体に、分散剤と導電性物質を含むめっき下地層を形成し、その上に樹脂層を形成した後、めっき下地層と樹脂層の官能基同士を反応させることで転写用積層体を作製した。また、この転写用積層体を用い、支持体の表面と裏面の両面、もしくは、片面にのみ貼り合わせ、転写用積層体の仮支持体のみを剥がすことで、簡便かつ安価に、高い品質でめっき下地層を支持体の表面に形成することを見出し、本発明を完成させた。