(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、及び、工業用ベルト
(51)【国際特許分類】
C08G 18/30 20060101AFI20240313BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240313BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20240313BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240313BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20240313BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20240313BHJP
F16G 1/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C08G18/30
C08G18/10
C08G18/65
C08G18/76 057
C09J175/06
C09J175/08
F16G1/00
(21)【出願番号】P 2023574811
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2022039039
(87)【国際公開番号】W WO2023166782
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2022032513
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】樋口 大地
(72)【発明者】
【氏名】竹中 雅美
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104847(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024917(WO,A1)
【文献】特開2020-097653(JP,A)
【文献】特開2002-363247(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038968(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113861852(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)の反応物である、イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(X)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、
前記ポリオール(A)が、
ポリカーボネートポリオール(a1)
(脂環式ポリカーボネートポリオールを除く。)、及び/又は、ポリテトラメチレングリコール(a2)と、
ポリエステルポリオール(a3)と、
鎖伸長剤(a4)と、を含有し、
前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(b1)、及び、前記ジイソシアネート(b1)以外の多官能イソシアネート(b2)を含有することを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項2】
前記鎖伸長剤(a4)が、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、シクロヘキサンジメタノール、及び、1,4-ブタンジオールからなる群より選ばれる1種以上の化合物である請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオール(A)が、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を原料とするポリエステルポリオールを含まないものである請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項4】
前記ジイソシアネート(b1)が、ジフェニルメタンジイソシアネートである請求項1項記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項5】
前記多官能イソシアネート(b2)が、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートである請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項7】
請求項6記載の接着剤を使用したことを特徴とする工業用ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、及び、工業用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
湿気硬化型ポリウレタンホットメルト系接着剤は、内装建材用や衣料用、電子機器組み立て用途向け用の接着剤として広く使用されている。ウレタン系接着剤としての用途の一つとして工業用ベルトがあるが、現在は溶剤系ウレタン接着剤が使用されている。溶剤規制など背景から、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト系接着剤は無溶剤系接着剤として使用が望まれているが、性能的に不十分でこの用途ではほとんど使用されていない。
【0003】
工業用ベルトは、高い接着強度と耐久性が求められるが、従来の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト系接着剤では、接着剤としての強度、弾性等の機械的物性、耐久性などが不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)の反応物である、イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(X)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記ポリオール(A)が、ポリカーボネートポリオール(a1)、及び/又は、ポリテトラメチレングリコール(a2)と、ポリエステルポリオール(a3)と、鎖伸長剤(a4)と、を含有し、前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(b1)、及び、前記ジイソシアネート(b1)以外の多官能イソシアネート(b2)を含有することを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤を提供するものである。また、本発明は、前記接着剤を使用したことを特徴とする工業用ベルトを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度に優れるものである。よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、工業用ベルトの製造に用いる接着剤として特に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト組成物は、ポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)の反応物である、イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(X)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記ポリオール(A)が、ポリカーボネートポリオール(a1)、及び/又は、ポリテトラメチレングリコール(a2)と、ポリエステルポリオール(a3)と、鎖伸長剤(a4)と、を含有し、前記ポリイソシアネート(B)が、ジイソシアネート(b1)、及び、前記ジイソシアネート(b1)以外の多官能イソシアネート(b2)を含有するものである。
【0010】
本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト組成物は、上記構成を採用することにより、ウレタン樹脂のソフトセグメントはソフトに、かつ、架橋点の増加によりハードセグメントが強化される設計となり、本願発明が解決しようとする各種課題を満足することができるが
【0011】
前記ポリカーボネートポリオール(a1)、及び/又は、ポリテトラメチレングリコール(a2)は、優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度を得るうえで必須の成分である。
【0012】
前記ポリカーボネートポリオール(a1)としては、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、水酸基を2個以上有する化合物とを反応させて得られるものを用いることができる。
【0013】
前記炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記水酸基を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオールからなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることが好ましい。
【0015】
前記ポリカーボネートポリオール(a1)の数平均分子量としては、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、700~8,000が好ましく、1,000~5,000がより好ましい。なお、前記ポリカーボネートポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0016】
前記ポリテトラメチレングリコール(a2)の数平均分子量としては、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、700~8,000が好ましく、1,000~5,000がより好ましい。なお、前記ポリカーボネートポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0017】
前記ポリカーボネートポリオール(a1)、及び、前記ポリテトラメチレングリコール(a2)の合計量としては、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、ポリオール(A)中30~70質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましい。
【0018】
前記ポリエステルポリオール(a3)は、優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度を得るうえで必須の成分である。
【0019】
前記ポリエステルポリオール(a3)としては、例えば、2個以上の水酸基を有する化合物、及び、多塩基酸の反応物を用いることができる。
【0020】
前記2個以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチルプロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA、そのアルキレンオキサイド付加物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記多塩基酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、水添無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、エイコサ二酸、シトラコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などを用いることができる。tet
【0022】
前記ポリエステルポリオール(a3)の数平均分子量としては、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、700~8,000が好ましく、1,000~5,000がより好ましい。なお、前記ポリエステルポリオール(a3)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0023】
前記ポリエステルポリオール(a3)の使用量としては、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、ポリオール(A)中30~60質量%が好ましく、40~55質量%がより好ましい。
【0024】
前記鎖伸長剤(a4)は、優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度を得るうえで必須の成分である。前記鎖伸長剤(a4)は、前記(a1)~(a3)とは異なるものであり、数平均分子量が50~500のものである。前記鎖伸長剤(a4)の数平均分子量は、化学構造式から算出される値を示す。
【0025】
前記鎖伸長剤(a4)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の水酸基を有する鎖伸長剤;エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミノ基を有する鎖伸長剤を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、水酸基を有する鎖伸長剤が好ましく、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール及び、1,3-ブタンジオールからなる群より選ばれる1種以上の鎖伸長剤がより好ましい。なお、前記ビスフェノールAに付加されるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、及び/又は、プロピレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイドがより好ましい。また、前記アルキレンオキサイドの付加モル数としては、1~5が好ましく、2~3がより好ましい。
【0026】
前記鎖伸長剤(a4)の使用量としては、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、ポリオール(A)中1~7質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい。
【0027】
前記ポリオール(A)としては、前記(a1)~(a4)を必須成分とするが、必要に応じてその他のポリオールを含有してもよい。
【0028】
前記その他のポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記その他のポリオールとしては、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、ビスフェノールAのアルキレン付加物を原料とするポリエステルポリオールを含まないことが好ましい。前記鎖伸長剤(a4)の好ましい化合物として、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドが挙げられるが、前記鎖伸長剤(a4)として導入した場合には、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られるが、ビスフェノールAのアルキレン付加物を原料としたポリエステルポリオールとして導入した場合には、満足する機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られない。
【0029】
前記ポリイソシアネート(B)は、優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度を得るうえで、ジイソシアネート(b1)、及び、前記ジイソシアネート(b1)以外の多官能イソシアネート(b2)を含有することが必須である。
【0030】
前記ジイソシアネート(b1)としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートなどのジイソシアネートを用いることができる。これらのジイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0031】
前記ジイソシアネート以外の多官能イソシアネート(b2)としては、例えば、ジイソシアネート(b1)のイソシアヌレート化合物;アダクト化合物;ビュレット化合物;アロファネート化合物;ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等の多官能ポリイソシアネートを用いることができる。これらの多官能イソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、本発明において前記「多官能イソシアネート(B-2)」の「多官能」とは、イソシアネート基を3個以上有することを示す。前記多官能イソシアネート(b2)としては、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが好ましい。
【0032】
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとしては、具体的には下記式(2)で示されるものであり、好ましくは式(2)中、nが1~5の整数を示すものである。
【0033】
【化1】
(式(2)中、nは1以上の整数である。)
【0034】
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとしては、例えば、東ソー株式会社製「ミリオネート MR-100」、「ミリオネート MR-200」、万華ジャパン株式会社製「WANNATE PM-200」、「WANNATE PM-400」、三井化学株式会社製「コスモネートM-1500」、ダウケミカル株式会社製「ボラネートM-595」等を市販品として入手することができる。
【0035】
前記ジイソシアネート(b1)と前記多官能イソシアネート(b2)との質量比[(b1)/(b2)]としては、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、5/1~3/1が好ましく、4.8/1~3.2/1がより好ましい。
【0036】
前記イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(X)は、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される筐体や被着体中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基をポリマー末端や分子内に有するものである。
【0037】
前記ウレタンプレポリマー(X)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(A)を入れた反応容器に、前記ポリイソシアネート(B)を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0038】
前記ウレタンプレポリマー(X)を製造する際の、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と、前記ポリオール(A)が有する水酸基の当量比([イソシアネート基/水酸基])としては、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、1.1~5であることが好ましく、1.3~3がより好ましい。
【0039】
前記ウレタンプレポリマー(X)のイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、より一層優れた機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度が得られる点から、0.5~10質量%が好ましく、1.7~5質量%がより好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマー(X)のNCO%は、JISK1603-1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0040】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物は、前記ウレタンプレポリマー(X)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有していてもよい。
【0041】
前記その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス、熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【0042】
以上、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度に優れるものである。よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、工業用ベルトの製造に用いる接着剤として特に好適に用いることができる。
【0043】
次に、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を接着剤として使用した工業用ベルトについて説明する。
【0044】
前記工業用ベルトとしては、例えば、工場の生産ラインの搬送に用いられるものが挙げられ、自動車、機械部品、食品、鉄鋼など様々な用途において使用することができる。
【0045】
前記工業用ベルトの構成としては、例えば、以下の態様が挙げられる。
(1)汎用タイプ
上から、熱可塑性ポリウレタン(TPU)層/接着剤/ポリエステル帆布が順次積層されたもの。
(2)食品用
上から、ポリエステル帆布/接着剤/ポリエステル帆布が順次積層されたもの。
(3)鉄鋼用
上から、ケプラー帆布/接着剤/ケプラー帆布が順次積層されたもの。
【0046】
前記工業用ベルトにおける前記接着剤層の厚さとしては、例えば、100~500μmが挙げられる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0048】
[実施例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000、以下「PTMG」と略記する。)を41.8質量部、ポリエステルポリオール(ネオペンチルグリコール、及び、オルトフタル酸の反応物、数平均分子量;1,000、以下「PEs(1)」と略記する。)を37.4質量部、ポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオール、及び、セバシン酸の反応物、数平均分子量;2,000、以下「PEs(2)」と略記する。)15.8質量部、鎖伸長剤(ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物、以下「BisA/EO」と略記する。)5質量部を仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融した4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する。)28質量部、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(東ソー株式会社製「ミリオネート MR-200」、以下「cMDI」と略記する。)6.1質量部を加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(X-1)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物(1)を得た。
【0049】
[実施例2]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、ポリカーボネートポリオール(数平均分子量:2,000、旭化成株式会社製「デュラノールT5652」、以下「PC」と略記する。)を56.9質量部、PEs(1)を20質量部、PEs(2)を20質量部、BisA/EOを3.1質量部を仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを25.8質量部、cMDIを7.7質量部を加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(X-2)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物(2)を得た。
【0050】
[実施例3]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、PCを55.1質量部、PEs(1)を19.4質量部、PEs(2)を19.4質量部、BisA/EOを6.1量部を仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを25質量部、cMDIを7.5質量部を加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(X-3)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物(3)を得た。
【0051】
[実施例4]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、PCを57.9質量部、PEs(1)を20.4質量部、PEs(2)を20.4質量部、シクロヘキサンジメタノール(以下「CHDM」と略記する。)を1.4質量部を仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを26.3質量部、cMDIを7.9質量部を加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(X-4)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物(4)を得た。
【0052】
[実施例5]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、PCを58.1質量部、PEs(1)を20.5質量部、PEs(2)を20.5質量部、1,4-ブタンジオール(以下「BG」と略記する。)を1質量部を仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを26.4質量部、cMDIを7.9質量部を加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(X-5)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物(5)を得た。
【0053】
[実施例6]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、PTMGを47.3質量部、PEs(1)を31.9質量部、PEs(2)を15.8質量部、BisA/EOを5質量部を仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを29質量部、cMDIを6.1質量部を加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(X-6)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物(6)を得た。
【0054】
[比較例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、ポリプロピレングリコール(数平均分子量;2,000、以下「PPG」と略記する。)を65.4質量部、PEs(1)を32質量部、BisA/EOを2.6質量部を仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを28.6質量部を加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(XR-1)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物(R1)を得た。
【0055】
[比較例2]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、PTMGを67.1量部、PEs(1)を32.9質量部を仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを29.3質量部を加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(XR-2)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物(R2)を得た。
【0056】
[比較例3]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、PTMGを49.1質量部、PEs(1)を25.5質量部、PEs(2)を25.5質量部を仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを22.2質量部、cMDIを6.7質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(XR-3)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物(R3)を得た。
【0057】
[比較例4]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、PCを70質量部、PTMGを10質量部、その他のポリエステルポリオール(ビスフェノールAのプロピレンオキサイド6モル付加物、及び、セバシン酸の反応物、数平均分子量;2,000、以下「その他PEs」と略記する。)を20質量部を仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを25質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(XR-4)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物(R4)を得た。
【0058】
[比較例5]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、PCを70質量部、PTMGを10質量部、その他PEsを20質量部を仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを20.1質量部、cMDI4.9質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(XR-5)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物(R5)を得た。
【0059】
[数平均分子量の測定方法]
実施例及び比較例で用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0060】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0061】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0062】
[機械的強度の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を、それぞれ120℃の温度で1時間溶融させ、離型ポリエチレンテレフタレートシート上に厚さが100μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、25℃、湿度90%の条件下で3日間放置した。得られたウレタンフィルムについて、A&D株式会社製「RTI-1225」を使用して、抗張力、100%モジュラス、弾性率、伸度を測定し、いずれも以下の評価基準以上であれば機械的強度に優れると評価した。
・強度;30MPa以上
・100%モジュラス ;5MPa以上
・弾性率;5MPa以上
・伸度;300%以上
【0063】
[耐久性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を、それぞれ120℃の温度で1時間溶融させ、ポリエチレンテレフタレートシート上に厚さが50μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。該塗布層の上に、MDF(ミディアム・デンシティ・ファイバーボード)を貼り合せ、圧着ローラーで圧着し、3日間養生した。得られた積層体について、イマダ株式会社製「デジタルフォースゲージDS2-200N」を使用して剥離強度を測定した。次いで、積層体を80℃のお湯に40日間浸漬し、取り出した積層体について同様に剥離強度を測定し、剥離強度の維持率により以下のように評価した。
「〇」;剥離強度の維持率が80%以上である。
「×」;剥離強度の維持率が80%未満である。
【0064】
[初期接着強度の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を、それぞれ120℃の温度で1時間溶融させ、ポリエチレンテレフタレートシート上に厚さが50μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。該塗布層の上に、MDF(ミディアム・デンシティ・ファイバーボード)を貼り合せ、圧着ローラーで圧着し、3分後の積層体について、イマダ株式会社製「デジタルフォースゲージDS2-200N」を使用して剥離強度を測定し、その値が30N/inch以上であれば初期接着強度に優れると評価した。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物である実施例1~6は、機械的強度、耐久性、及び、初期接着強度に優れることがわかった。
【0069】
比較例1は、多官能イソシアネート(b2)を含有しない態様であるが、強度、100%モジュラス、弾性率、耐久性、初期接着強度が不良であった。
【0070】
比較例2は、鎖伸長剤(a4)、及び、多官能イソシアネート(b2)を含有しない態様であるが、強度、100%モジュラス、耐久性、初期接着強度が不良であった。
【0071】
比較例3は、鎖伸長剤(a4)を含有しない態様であるが、強度、100%モジュラス、弾性率、伸度、初期接着強度が不良であった。
【0072】
比較例4は、ポリオール(a1)、(a2)、及び、多官能イソシアネート(b2)を含有しない態様であるが、100%モジュラス、耐久性、初期接着強度が不良であった。
【0073】
比較例5は、ポリオール(a1)、(a2)を含有しない態様であるが、耐久性、初期接着強度が不良であった。