IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 星和電機株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人東京理科大学の特許一覧 ▶ 株式会社ネクスコ東日本エンジニアリングの特許一覧

特許7453654コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法
<>
  • 特許-コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法 図1
  • 特許-コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法 図2
  • 特許-コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法 図3
  • 特許-コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法 図4
  • 特許-コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法 図5
  • 特許-コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法 図6
  • 特許-コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法 図7
  • 特許-コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法 図8
  • 特許-コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法 図9
  • 特許-コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法 図10
  • 特許-コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法 図11
  • 特許-コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240313BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023079363
(22)【出願日】2023-05-12
【審査請求日】2023-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和 4年 8月 1日に、令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演会のウェブサイトにて公開 https://confit.atlas.jp/guide/event/jsce2022/subject/CS9-21/advanced 令和 4年 9月15日に、令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演会にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】597165618
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】松井 真吾
(72)【発明者】
【氏名】兼本 丈資
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】川又 忠司
(72)【発明者】
【氏名】島田 裕明
(72)【発明者】
【氏名】菅原 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 昌之
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-021646(JP,A)
【文献】特開2022-186575(JP,A)
【文献】特開2015-064348(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112834193(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、

取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数の固有振動数を推定し、
取得した時系列データをフーリエ変換して加速度のXYZ成分の周波数スペクトルを算出し、
前記固有振動数での前記周波数スペクトルの振幅に基づいてXYZ成分の特徴量を算出し、
算出した特徴量により固有モード次数を同定し、
同定した固有モード次数及び前記固有振動数に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する、
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記固有振動数及び前記固有振動数を間にして離隔する複数の振動数でのXYZ成分の周波数スペクトルの振幅に基づいてXYZ成分の特徴量を算出する、
処理をコンピュータに実行させる請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
前記固有振動数及び前記固有振動数を間にして前後に離隔する複数の振動数でのXYZ成分の周波数スペクトルの振幅の実効値を算出し、
算出した実効値を正規化してXYZ成分の特徴量を算出する、
処理をコンピュータに実行させる請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
XYZ成分のうち特徴量の最大値から同定される固有モード次数、及び前記固有モード次数における前記固有振動数の経時変化に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する、
処理をコンピュータに実行させる請求項1から請求項のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記固有振動数の経時変化を検知するための閾値を設定する、
処理をコンピュータに実行させる請求項1から請求項のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記固有振動数及び前記XYZ成分の特徴量に基づいて前記構造物の1又は複数の振動モードを特定する、
処理をコンピュータに実行させる請求項1から請求項のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記構造物と同等の同等構造物の所定箇所及び前記所定箇所から離隔した箇所に設けられた第1センサ部及び第2センサ部から取得した加速度のXYZ成分の第1時系列データ及び第2時系列データに基づいて算出されたXYZ成分の第1特徴量及び第2特徴量、並びに前記同等構造物の同等固有振動数と前記同等構造物の振動モードとを関連付けた関連情報を取得し、
前記センサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データに基づいて算出されたXYZ成分の特徴量及び固有振動数と前記第1特徴量及び同等固有振動数とを対応付けて前記構造物の振動モードを特定する、
処理をコンピュータに実行させる請求項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、
取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数のモード解を推定し、推定したモード解を特徴量としてモード次数を同定し、同定したモード次数における特徴量の経時変化に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する、
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項9】
処理部を備え、
前記処理部は、
支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、
取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数の固有振動数を推定し、
取得した時系列データをフーリエ変換して加速度のXYZ成分の周波数スペクトルを算出し、
前記固有振動数での前記周波数スペクトルの振幅に基づいてXYZ成分の特徴量を算出し、
算出した特徴量により固有モード次数を同定し、
同定した固有モード次数及び前記固有振動数に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する、
構造物異常判定装置。
【請求項10】
処理部を備え、
前記処理部は、
支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、
取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数のモード解を推定し、推定したモード解を特徴量としてモード次数を同定し、同定したモード次数における特徴量の経時変化に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する、
構造物異常判定装置。
【請求項11】
支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、
取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数の固有振動数を推定し、
取得した時系列データをフーリエ変換して加速度のXYZ成分の周波数スペクトルを算出し、
前記固有振動数での前記周波数スペクトルの振幅に基づいてXYZ成分の特徴量を算出し、
算出した特徴量により固有モード次数を同定し、
同定した固有モード次数及び前記固有振動数に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する、
構造物異常判定方法。
【請求項12】
支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、
取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数のモード解を推定し、推定したモード解を特徴量としてモード次数を同定し、同定したモード次数における特徴量の経時変化に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する、
構造物異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、構造物に振動を加えて弾性波を取得し、取得した弾性波をフーリエ変換して弾性波の周波数スペクトルを取得し、正常な弾性波の参照周波数スペクトルと取得した周波数スペクトルとを比較して構造物を診断する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-81212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような周波数スペクトルに基づいて構造物の異常を判断する場合、取得した周波数スペクトルから構造物の固有振動数を目視で確認して推定し、推定した固有振動数を含む近傍周波数の周波数スペクトルを逆フーリエ変換して加速度の時系列波形を生成し、加速度の時系列波形に基づいてパーティクルモーションを取得して振動モードを特定する方法も取られている。しかし、このような方法は、すべて手動で行われる。このため、例えば、固有振動数を推定する際の探索周波数範囲は解析者の裁量に依存する。また、固有振動周波数が近接する場合には、探索周波数範囲を設定することが困難である。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、解析者が介在することなく計測から構造物の異常の有無を自動で判定できるコンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、コンピュータプログラムは、支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数の固有振動数を推定し、取得した時系列データをフーリエ変換して加速度のXYZ成分の周波数スペクトルを算出し、前記固有振動数での前記周波数スペクトルの振幅に基づいてXYZ成分の特徴量を算出し、算出した特徴量及び前記固有振動数に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、解析者が介在することなく計測から構造物の異常の有無を自動で判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の構造物異常判定システムの構成の一例を示す図である。
図2】道路情報板(支柱を含む)の座標系の一例を示す図である。
図3】加速度の時系列データの一例を示す図である。
図4】ERA法による解析結果の一例を示す図である。
図5】周波数スペクトルの一例を示す図である。
図6】固有振動数及び特徴量の一例を示す図である。
図7】固有振動数の経時変化の一例を示す図である。
図8】異常再現試験の結果の一例を示す図である。
図9】道路情報板の2箇所にセンサ部を設けた例を示す図である。
図10】2つの加速度センサを用いた場合の固有振動数及び特徴量の一例を示す図である。
図11】状態監視装置によるERA法適用時の構造物の異常判定の処理手順の一例を示す図である。
図12】状態監視装置によるERA法以外の手法適用時の構造物の異常判定の処理手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の構造物異常判定システムの構成の一例を示す図である。本実施形態の構造物異常判定システムは、構造物異常判定装置としての状態監視装置50を備える。状態監視装置50は、判定対象である施設構造物10(特に、施設構造物10を支える支柱)の異常の有無を判定する。施設構造物は構造物とも称する。異常の有無は、構造物の健全性に関して正常・異常を判定するものであり、例えば、施設構造物10(施設構造物10を支える支柱を含む)を支える支柱の亀裂や損傷等の事象の有無を表す。施設構造物10は、例えば、道路に設置され、支柱によって支えられる道路情報板であるが、施設構造物10は道路情報板に限定されるものではなく、照明装置、監視装置、ITS(Intelligent Transport Systems)スポット、道路標識など支柱によって支えられる付属物などを含む。本明細書では、施設構造物10として、道路情報板10(道路情報板10を支える支柱を含む)を用いて説明する。
【0010】
道路情報板10は、LED表示板、LED表示板を支える支柱、及び大地や橋梁に設置された基礎部(アンカーボルトを含む)などの機能部品や装置に加えて、センサ端末11を備える。センサ端末11は、データ収集処理部12、及び加速度センサ16を備える。データ収集処理部12は、データ収集機能13、データ蓄積機能14、及び通信機能15を備える。支柱の形状は、F型でもよく、あるいは門型やI型などでもよい。道路情報板10の電源は、外部からの商用電源を用いてもよく、電源がない設置個所では、内蔵のバッテリ等を用いてもよい。センサ端末11は、例えば、道路情報板10の支柱側と反対側(所定箇所)に設けてある。なお、センサ端末11の設置個所はこれに限定されない。加速度センサ16は、例えば、1個の3軸加速度センサを有する。加速度センサ16は、道路情報板10の加速度を計測し、計測データをデータ収集処理部12へ送信する。データ収集処理部12は、加速度センサ16からの計測データを収集・処理し、状態監視装置50に対して計測データを送信する。
【0011】
加速度センサ16は、道路情報板10(支柱を含む)の振動を計測し、正常時の他、支柱基礎部の補強リブ、通信線や電源線を配線するための開口部の溶接部分の破断時、アンカーボルトの破断やナットの脱落などの軸力喪失状態における振動を常時、または任意の時間帯に計測する。加速度センサ16は、加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、取得した時系列データは、データ収集処理部12のデータ収集機能13によって収集され、データ蓄積機能14に一旦記録される。風や通行車両によって道路情報板10(支柱を含む)は振動し、センサ端末11は、道路情報板10(支柱を含む)の振動を計測して時系列データとして取得する。加速度の時系列データは、例えば、所定時間のインタバール時間(例えば、10分など)を空けて3分の間の振動を計測できるが、これに限定されない。またサンプリング周波数は200Hzとすることができるが、これに限定されない。
【0012】
道路情報板10のデータ収集処理部12は、通信機能15を介して状態監視装置50に接続される。データ収集処理部12で収集された加速度の時系列データは、道路情報板10の識別子と共に状態監視装置50に保存される。図1では、便宜上、道路情報板10を1つだけ図示しているが、実際には複数(多数)の道路情報板10から加速度の時系列データが識別子と共に状態監視装置50へ送信される。状態監視装置50は、道路情報板10の識別子と当該道路情報板10で取得した加速度の時系列データとを対応付けて記録する。
【0013】
状態監視装置50は、処理部51、警告灯60、表示部61、及び操作部62を備える。処理部51は、構造物属性データ管理機能52、データ収集機能53、データ処理・検知機能54、データ蓄積機能55、データ出力機能56、異常検知機能57、時刻補正機能58、及びセンサ端末時刻補正機能59を備える。
【0014】
処理部51は、道路情報板10に実装したセンサ端末11と接続され、計測データを受信するとともに、計測データの解析処理を行う。
【0015】
警告灯60は、構造物異常検知時及び加速度センサ16異常時に点滅と鳴動により注意喚起するものである。
【0016】
表示部61は、表示パネルを備え、処理部51を通じて道路情報板10の状態監視を行うことができる。
【0017】
操作部62は、キーボードやマウスなどを備え、処理部51を通じて道路情報板10の状態を監視するための操作を行うことができる。
【0018】
構造物属性データ管理機能52は、構造物の属性データを管理する。構造物の属性データは、例えば、当該属性データの更新日時、道路情報板10固有の識別情報やIPアドレス、道路情報板10の緒元データ、設置場所の情報、機器仕様、施工方法、支柱仕様、基礎仕様、設置環境などの情報を含む。
【0019】
データ収集機能53は、道路情報板10のデータ収集処理部12に記録されている計測データを、例えば、1時間に1回程度の周期で要求することで、計測データを道路情報板10から自動受信できる。なお、自動受信に限定されるものではなく、手動でのデータ収集も可能である。
【0020】
データ処理・検知機能54は、収集した計測データを処理し、例えば、(1)支柱の健全性に対する評価、(2)アンカーボルトの軸力喪失検出、(3)支柱の亀裂の検出、(4)飛来物等による損傷の検知、などの構造物異常検知を行う。
【0021】
データ蓄積機能55は、構造物の属性データ、所要年数(例えば、3年程度)の計測データ及び異常検知結果を保存する。
【0022】
データ出力機能56は、データ蓄積機能55に蓄積された各種データをUSBメモリ等の記録媒体等に出力する。
【0023】
異常検知機能57は、構造物異常検知時又は加速度センサ16異常時に警告灯60を点滅、鳴動させて注意喚起を行うことができる。加速度センサ16異常は、例えば、計測データが有効範囲を超える場合、計測データが継続して変化が見られない場合を含む。なお、構造物異常検知時と加速度センサ16異常時とで警告灯60の灯色を変えてもよい。
【0024】
時刻補正機能58は、通信ネットワークを介して状態監視装置50に接続されているNTP(Network Time Protocol)サーバ30に接続して、状態監視装置50の現在時刻を自動補正するものである。NTPサーバ30は、ネットワーク上のクライアント機器に対して時刻を提供するサーバである。
【0025】
センサ端末時刻補正機能59は、状態監視装置50が管理する現在時刻をもとに、接続されているセンサ端末11の現在時刻を補正する。これにより、状態監視装置50とセンサ端末11との間で現在時刻の同期を行うことができる。
【0026】
処理部51は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等が所要数組み込まれて構成されてもよい。また、処理部51は、DSP(Digital Signal Processors)、FPGA(Field-Programmable Gate Arrays)等を組み合わせて構成してもよい。
【0027】
データ蓄積機能55は、例えば、ハードディスク又は半導体メモリ等で構成することができ、コンピュータプログラム(プログラム製品)を記憶してもよい。
【0028】
コンピュータプログラムは、処理部51を介して外部の装置からダウンロードして処理部51に記憶してもよい。また、記録媒体(例えば、CD-ROM等の光学可読ディスク記憶媒体)に記録されたコンピュータプログラムを記録媒体読取部で読み取って処理部51に記憶してもよい。コンピュータプログラムは、単一のコンピュータ上で、または通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0029】
コンピュータプログラムを処理部51内のメモリに展開して、処理部51がコンピュータプログラムを実行することができる。処理部51は、コンピュータプログラムで定められた処理を実行することができる。すなわち、処理部51による処理は、コンピュータプログラムによる処理でもある。
【0030】
なお、表示部61及び操作部62を、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末又はスマートフォン等で構成された監視端末装置としてもよい。監視端末装置は、監視員によって操作され、状態監視装置50に対する処理コマンドを入力し、あるいは状態監視装置50による処理結果を表示する。
【0031】
図2は道路情報板10(支柱を含む)の座標系の一例を示す図である。本明細書では、図2に示すように、道路情報板10のXYZ座標系を図2のとおりとする。すなわち、X軸方向は、道路直交方向(横断方向)であり、便宜上「左右」方向と称する。Y軸方向は、道路平行方向(縦断方向)であり、便宜上「前後」方向と称する。Z軸方向は、鉛直方向である。センサ部11の加速度センサは、加速度のXYZ方向それぞれの時系列データを取得する。
【0032】
図3は加速度の時系列データの一例を示す図である。道路情報板10が、風や付近を走行する車両によって振動すると、加速度センサは、図3に示すような加速度波形を取得する。図3において、縦軸は加速度(m/s2 )を示し、横軸は時間(秒)を示す。図3の例では、X軸成分(左右)の加速度が、Y軸及びZ軸成分の加速度よりも大きいことが分かる。なお、加速度波形は一例であって、図3の例に限定されない。
【0033】
処理部51は、異常の有無を判定する判定対象である道路情報板10のセンサ端末11で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得する。処理部51は、取得した時系列データに基づいて道路情報板10(支柱を含む)の1又は複数の固有振動数を推定する。固有振動数の推定方法は、公知の技術を用いることができる。本実施形態では、ERA(Eigensystem Realization Algorithm)法を用いるが、他の手法、例えば、(1)フーリエスペクトルのピークに該当する周波数を固有振動数とする方法、(2)フーリエスペクトルに曲線をフィッティングさせてピークを推定する方法、(3)相関関数を計算し、そのフーリエスペクトルのピークから固有振動数を推定する方法、(4)AR(Auto-Regressive)法、(5)部分空間法、(6)イブラヒムの方法などを用いてもよい。ERA法は、常時微動観測データをNExT(National Excitation Technique)を用いて相互相関関数の形にすることで自由減衰波形とみなし、ハンケル行列の特異値分解から特性行列を決定し、さらに状態遷移行列の固有値解析を行ってモード解(固有振動数、減衰比、モード振幅)を推定するものである。
【0034】
図4はERA法による解析結果の一例を示す図である。図4において、縦軸は周波数を示し、横軸は解析回数を示す。図4において、固有振動数は、周波数の小さい方から1.863Hz、1.932Hz、5.257Hz、8.102Hzの4つが推定されている。また、各固有振動数が近接する場合や、偽モードが推定値に混在する場合に別の振動モードの固有振動数を誤選択しないよう、推定された固有振動数の特徴量よりモード次数を同定する。モード次数を特定することにより、そのモードの固有振動数変化を追跡することができる。固有振動数の特徴量については後述する。なお、処理部51は、ERA法による解析結果を表示部61に表示させることができる。
【0035】
ERA法を用いる場合、処理部51は、支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、取得した時系列データに基づいて構造物の1又は複数のモード解を推定し、推定したモード解を特徴量としてモード次数を同定し、同定したモード次数における特徴量の経時変化に基づいて構造物の異常の有無を判定することができる。これにより、解析者が介在することなく計測から構造物の異常の有無を自動で判定できる。
【0036】
ERA法以外の他の手法(例えば、AR法など)を用いる場合には、処理部51は、取得した時系列データをフーリエ変換して加速度のXYZ成分の周波数スペクトルを算出してもよい。
【0037】
図5は周波数スペクトルの一例を示す図である。図5において、縦軸は振幅を示し、横軸は周波数を示す。図5Aは、加速度のX軸成分(左右)の周波数スペクトルを示し、図5Bは、加速度のY軸成分(前後)の周波数スペクトルを示す。なお、加速度のZ軸成分の周波数スペクトルは、特段の周波数ピークが得られなかったので図示していない。図5に示すように、加速度の周波数スペクトルから4つの振動モードが存在することが分かる。図5Aでは、X軸成分で2つの周波数ピークが見られ、図5Bでは、Y軸成分で2つの周波数ピークが見られる。なお、処理部51は、周波数スペクトルを表示部61に表示させてもよい。
【0038】
ERA法以外の他の手法(例えば、AR法など)を用いる場合には、処理部51は、推定した固有振動数での周波数スペクトルの振幅に基づいてXYZ成分の特徴量を算出してもよい。具体的には、処理部51は、推定した固有振動数及び当該固有振動数を間にして前後に離隔する複数の振動数でのXYZ成分の周波数スペクトルの振幅に基づいてXYZ成分の特徴量を算出してもよい。
【0039】
例えば、固有振動数をf0 とし、固有振動数を間にして離隔する複数の振動数をf-1、f+1とする。周波数fでのX成分の周波数スペクトルの振幅をαx (f)とすると、X成分の振幅実効値(特徴量)Ax は、Ax =√[{αx (f-12 +αx (f0 2 +αx (f+12 }/3]という式で算出できる。Y成分の振幅実効値(特徴量)Ay及びZ成分の振幅実効値(特徴量)Azも同様に算出できる。
【0040】
より具体的には、制御部51は、推定した固有振動数及び当該固有振動数を間にして前後に離隔する複数の振動数でのXYZ成分の周波数スペクトルの振幅の実効値を算出し、算出した実効値を正規化してXYZ成分の特徴量を算出してもよい。この場合、Ax =√[{αx (f-12 +αx (f0 2 +αx (f+12 }/3]という式でX成分の振幅実効値を算出し、XYZ成分の振幅実効値Ax、Ay、Azをベクトル表現(Ax,Ay,Az)し、正規化(ベクトルの大きさを1とする)してベクトルのXYZ成分を特徴量とする。
【0041】
ERA法以外の他の手法(例えば、AR法など)を用いる場合には、処理部51は、算出した特徴量が、振動モードの特徴に合致する場合、推定した固有振動数は正しく同定されたものと判定してもよい。
【0042】
図6は固有振動数及び特徴量の一例を示す図である。前述の周波数スペクトルにおいて、X軸成分の周波数スペクトルにおいて、周波数が1.93Hz及び8.10Hz付近、Y軸成分の周波数スペクトルにおいては、周波数が1.86Hz及び5.26Hz付近で周波数ピークが見られた。図6においても同様の固有振動数が同定されており、かつ特徴量のX成分Ax 、Y成分Ay、Z成分Aの大小関係が各次数振動モードの特徴に合致していることが分かる。
【0043】
図6において、モードは、固有モード次数を示す。1次モードは、道路情報板10の表示部が前後に振動するモードで、支柱上端と表示部は同位相で振動するモードである。支柱は曲げと捻じりを含む。2次モードは、道路情報板10の表示部が左右に振動するモードで、支柱上端と表示部は同位相で振動する。支柱は曲げを含む。3次モードは、道路情報板10の表示部が前後に振動するモードであるが、支柱の捻じりが大きく、支柱上端と表示部は逆位相で振動するモードである。4次モードは、道路情報板10の表示部が左右に振動するモードであるが、左右の動きよりも、鉛直の動きが大きく、顎を引くように首を縦に振る振動モードである。支柱は曲げを含む。
【0044】
XYZ成分の特徴量に注目した場合、Y成分の特徴量が最も大きくなるのは、1次モードと3次モードであり、特徴量だけでは1次モードと3次モードの分離が困難となる。そこで、固有振動数に着目することで、特徴量及び固有振動数に基づいて振動モードを特定することができる。この場合、固有振動数に加えて、あるいは固有振動数に代えて、他の成分の特徴量に注目してもよい。すなわち、1次モードと3次モードとでは、Z成分の特徴量に比較的大きな差が存在するので、Z成分の特徴量も考慮することで振動モードをさらに精度よく特定できる。また、XYZ成分のすべての特徴量に着目してその傾向類似度によりモード次数を特定してもよい。
【0045】
すなわち、処理部51は、固有振動数及びXYZ成分の特徴量に基づいて道路情報板10(支柱を含む)の1又は複数の振動モードを特定することができる。また、処理部51は、XYZ成分の特徴量のうち、少なくとも2つ以上の成分の特徴量に基づいて道路情報板10(支柱を含む)の1又は複数の振動モードを特定してもよい。
【0046】
図7は固有振動数の経時変化の一例を示す図である。処理部51は、推定した固有振動数及びXYZ成分の特徴量に基づいて特定した各振動モードについて、固有振動数の経時変化(時間推移)を求めることができる。図7Aは1次モードでの固有振動数の時間推移を示し、図7Bは2次モードでの固有振動数の時間推移を示し、図7Cは3次モードでの固有振動数の時間推移を示し、図7Dは4次モードでの固有振動数の時間推移を示す。
【0047】
処理部51は、算出した特徴量及び推定した固有振動数に基づいて道路情報板10(支柱を含む)の異常の有無を判定する。これにより、解析者が介在することなく計測から構造物の異常の有無を自動で判定できる。
【0048】
また、処理部51は、算出した特徴量により固有モード次数を同定し、同定した固有モード次数及び固有振動数に基づいて構造物の異常の有無を判定することができる。具体的には、処理部51は、XYZ成分のうち特徴量の最大値から同定される固有モード次数及び当該固有モード次数における固有振動数に基づいて振動モードを特定し、特定した振動モードにおける固有振動数の経時変化に基づいて道路情報板10(支柱を含む)の異常の有無を判定することができる。例えば、固有振動数が健全時の固有振動数と比較して閾値(固有振動数の経時変化を検知するための閾値)以上変化(低下)した場合、異常があると判定できる。
【0049】
また、処理部51は、固有振動数の経時変化を検知するための閾値を設定することができる。具体的には、監視員が操作部62を用いて状態監視装置50に対して閾値を入力することで、入力された閾値が設定される。設定する閾値は、様々な場所に設置された複数の道路情報板10の正常・異常の判定履歴(異常発生履歴)などを参照して、設置個所や、四季変動(季節、気温、気象など)に応じて適切な閾値を選定することができる。また閾値は、構造物の種類や形状等に応じて適切な閾値を選定してもよい。なお、固有振動数の経時変化を検知するための閾値を監視員が入力する方法に変えて、温度、時間帯、日射量、季節などに応じて自動設定してもよい。
【0050】
道路情報板10(支柱を含む)などの構造物の剛性は温度によって変化する。温度が上昇すると構造物の剛性が弱くなり固有振動数が変化(低下)する傾向がある。例えば、屋外に設置された構造物の固有振動数は、気温や日射が影響し、日周変動が見られ、日中は固有振動数が低く、深夜には固有振動数が高くなる。そこで、温度の影響を補正するため、例えば、短期間の日周変動(昼夜)での固有振動数の標準偏差を算出し、算出した標準偏差を考慮して、閾値を設定することができる。固有振動数の標準偏差が、例えば、0.008Hz程度である場合、閾値を0.008Hzより大きくすればよい(最小閾値を0.008Hzとする)。
【0051】
本実施形態の状態監視装置50は、構造物に対して外部振動装置を用いることなく構造物の異常の有無を判定できる。道路に設置される構造物の場合、概ね常時交通振動や風による振動が生じているので、人工的な加振は不要である。
【0052】
図8は異常再現試験の結果の一例を示す図である。異常再現試験は、図8に示すような道路情報板10(支柱を含む)を試験場に設置し、符号A~Dで示す各異常項目に対して、本実施形態の状態監視装置50が異常を検出できるかの確認試験である。異常項目Aは、道路情報板10を支える支柱のアンカーボルトの破断又はナット脱落である。健全状態(規定トルクで締結)では、1次モードから4次モードまでの各モードの固有振動数は、順番に1.86Hz、1.90Hz、5.45Hz、8.01Hzである。引張中央のボルトを1本撤去した異常状態では、各モードの固有振動数は、順番に1.86Hz、1.86Hz、5.44Hz、7.93Hzである。2次モードでの固有振動数は、0.04Hz低下しており、最小閾値0.008Hzの変動を考慮しても、異常を検知できることが分かる。また、4次モードでの固有振動数は、0.08Hz低下しており、最小閾値0.008Hzの変動を考慮しても、異常を検知できることが分かる。
【0053】
異常項目Bは、道路情報板10を支える支柱のベースリブ取付溶接部の亀裂である。健全状態(溶接長310mm)では、1次モードから4次モードまでの各モードの固有振動数は、順番に1.86Hz、1.90Hz、5.45Hz、8.01Hzである。溶接長を230mmとした異常状態では、各モードの固有振動数は、順番に1.84Hz、1.88Hz、5.44Hz、7.98Hzである。1次モード及び2次モードでの固有振動数は、0.02Hz低下しており、最小閾値0.008Hzの変動を考慮しても、異常を検知できることが分かる。
【0054】
異常項目Cは、道路情報板10を支える支柱のベースリブ上端部の支柱の亀裂である。健全状態では、1次モード、3次モード及び4次モードの各モードの固有振動数は、順番に1.85Hz、5.46Hz、8.02Hzである。亀裂長を100mmとした異常状態では、各モードの固有振動数は、順番に1.86Hz、5.46Hz、7.98Hzである。4次モードでの固有振動数は、0.04Hz低下しており、最小閾値0.008Hzの変動を考慮しても、異常を検知できることが分かる。
【0055】
異常項目Dは、道路情報板10を支える支柱の開口部コーナの亀裂である。健全状態では、1次モードから4次モードまでの各モードの固有振動数は、順番に1.87Hz、1.92Hz、5.47Hz、8.04Hzである。亀裂長を200mmとした異常状態では、各モードの固有振動数は、順番に1.83Hz、1.91Hz、5.41Hz、8.03Hzである。1次モードでの固有振動数は、0.04Hz低下しており、最小閾値0.008Hzの変動を考慮しても、異常を検知できることが分かる。また、3次モードでの固有振動数は、0.06Hz低下しており、最小閾値0.008Hzの変動を考慮しても、異常を検知できることが分かる。
【0056】
上述のように、本実施形態によれば、周波数スペクトルから目視で固有振動数を推定する必要がなく、また、正しく固有モードが推定できているかを確認するために、周波数スペクトルを固有振動数で逆フーリエ変換して同定周波数のパーティクルモーション(粒子運動)を求める作業も不要であり、解析者が介在することなく自動で構造物の異常の有無を判定できる。
【0057】
次に、状態監視装置50による構造物の異常判定におけるセンサ部の数量について説明する。構造物の振動モードを特定(同定)するには、一般的に複数点(例えば、2箇所)にセンサ部を設置して、複数点での加速度の時系列データを取得する必要がある。
【0058】
図9は道路情報板10の2箇所にセンサ部を設けた例を示す図である。図9に示す道路情報板は、図1に示す道路情報板10と同等の道路情報板であるが、同一でなくてもよい。加速度センサAは、道路情報板10の支柱側と反対側に設置されている。加速度センサBは、支柱上部に設置されている。
【0059】
図10は2つの加速度センサA、Bを用いた場合の固有振動数及び特徴量の一例を示す図である。図10において、固有振動数(周波数)及び特徴量は、前述の同様の方法を用いて推定又は算出される。特徴量Ax 、Ay 、Az は加速度センサAで計測された加速度の時系列データを用いており、特徴量Bx 、By 、Bz は加速度センサBで計測された加速度の時系列データを用いている。
【0060】
処理部51は、構造物(例えば、図1の道路情報板10)と同等の構造物(例えば、図9の道路情報板)の所定箇所(図1の例と同様の箇所)に設けられた加速度センサA(第1センサ部)及び所定箇所から離隔した箇所(図9の例では、支柱上部)に設けられた加速度センサB(第2センサ部)から取得した加速度のXYZ成分の第1時系列データ及び第2時系列データに基づいて算出されたXYZ成分の特徴量Ax 、Ay 、Az (第1特徴量)及び特徴量Bx 、By 、Bz (第2特徴量)、並びに同等の構造物の同等固有振動数と同等構造物の振動モードとを関連付けた関連情報を取得する。関連情報は、図10に示すような情報であり、予め取得又は収集しておくことができる。なお、関連情報は、複数の同等構造物に関する関連情報の統計値(例えば、平均値、中央値、最頻値など)でもよい。
【0061】
一方、異常判定対象の道路情報板10(支柱を含む片持ち梁構造)には、前述のとおり、1個のセンサ端末11が設置されている。処理部51は、センサ端末11で計測された加速度のXYZ成分の時系列データに基づいて算出されたXYZ成分の特徴量及び固有振動数と、図10に示す関連情報内の特徴量Ax 、Ay 、Az (第1特徴量)及び同等固有振動数とを対応付けることにより、1個の加速度センサを設置するだけで、複数(例えば、2個)の加速度センサを設けた場合と同等の精度で構造物の振動モードを特定することができる。例えば、XYZ成分の特徴量のうち、値が最大の特徴量成分と固有振動数との組み合わせが合致(数値は一致しなくてもよい)する組合せを関連情報の中から選定し、選定した組み合わせに対応する振動モードが求める振動モードとしてもよい。具体的には、XYZ成分の特徴量のうち、値が最大の特徴量成分がAy であり、固有振動数が1.863Hz又はその近傍である場合、1次モードの振動モード(前後・捻じり)であり、固有振動数が5.261Hz又はその近傍である場合、3次モードの振動モード(前後・捻じり)であると分かる。これにより、1個のセンサを用いた場合でも、振動モードを特定することができる。また、図10の例では、2個の加速度センサを用いた関連情報を示しているが、加速度センサは3個以上であってもよい。
【0062】
上述のように、本実施形態の状態監視装置50は、1個のセンサ端末11を用いるだけで、構造物の異常の有無を判定できる。
【0063】
図11は状態監視装置50によるERA法適用時の構造物の異常判定の処理手順の一例を示す図である。処理部51は、構造物(例えば、道路情報板10)の所定箇所に設置されたセンサ端末11で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し(S11)、取得した時系列データにERA法を適用して構造物のモード解(固有振動数、減衰比、モード振幅)を推定する(S12)。
【0064】
処理部51は、推定したモード解を特徴量としてモード次数を同定し(S13)、同定したモード次数における特徴量の時間変化に基づいて構造物の異常の有無を判定する(S14)。処理部51は、処理を終了するか否かを判定し(S15)、処理を終了しない場合(S15でNO)、ステップS11以降の処理を続ける。処理を終了する場合(S15でYES)、処理部51は、処理を終了する。
【0065】
上述のように、処理部51は、支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、取得した時系列データに基づいて構造物の1又は複数のモード解を推定し、推定したモード解を特徴量としてモード次数を同定し、同定したモード次数における特徴量の経時変化に基づいて構造物の異常の有無を判定することができる。これにより、解析者が介在することなく計測から構造物の異常の有無を自動で判定できる。
【0066】
図12は状態監視装置50によるERA法以外の手法適用時の構造物の異常判定の処理手順の一例を示す図である。処理部51は、構造物(例えば、道路情報板10)の所定箇所に設置されたセンサ端末11で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し(S21)、取得した時系列データにAR法など(ERA法以外の手法)を適用して構造物の固有振動数を推定する(S22)。
【0067】
処理部51は、取得した時系列データにフーリエ変換を適用して加速度のXYZ成分の周波数スペクトルを算出し(S23)、推定した固有振動数での周波数スペクトルの振幅実効値を算出する(S24)。処理部51は、算出した振幅実効値をベクトル表現にして、正規化してXYZ成分の特徴量を算出する(S25)。
【0068】
処理部51は、算出した特徴量及び推定した固有振動数に基づいて振動モードを特定し(S26)、振動モード毎に、算出した特徴量及び推定した固有振動数に基づいて構造物の異常の有無を判定する(S27)。処理部51は、処理を終了するか否かを判定し(S28)、処理を終了しない場合(S28でNO)、ステップS21以降の処理を続ける。処理を終了する場合(S28でYES)、処理部51は、処理を終了する。
【0069】
上述の実施形態において、道路情報板10のセンサ端末11は、基板上に実装することで小型一体化してもよい。また、センサ端末11は、新設設備や既設設備を問わずに道路情報板10に実装し、異常の有無の判定や監視などを運用することができる。また、地震検知器を道路情報板10の近傍に設けることで、地震が発生した場合には、道路情報板10のデータ収集処理部12が、記録した加速度の時系列データと共に解析要求を直接、状態監視装置50に送信して、状態監視装置50で直ちに構造物の異常を判定するようにしてもよい。
【0070】
上述の実施形態において、状態監視装置50の判定機能を道路情報板10などの構造物それぞれに内蔵するようにして、当該構造部で判定した判定結果を状態監視装置50へ送信するようにしてもよい。すなわち、道路情報板10などの構造物に、状態監視装置50の処理部51と同等の構成を設けて、構造物が図11に示すような処理を実行するようにしてもよい。
【0071】
(付記1)コンピュータプログラムは、支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数の固有振動数を推定し、取得した時系列データをフーリエ変換して加速度のXYZ成分の周波数スペクトルを算出し、前記固有振動数での前記周波数スペクトルの振幅に基づいてXYZ成分の特徴量を算出し、算出した特徴量及び前記固有振動数に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する、処理をコンピュータに実行させる。
【0072】
(付記2)コンピュータプログラムは、付記1において、算出した特徴量により固有モード次数を同定し、同定した固有モード次数及び前記固有振動数に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する、処理をコンピュータに実行させる。
【0073】
(付記3)コンピュータプログラムは、付記1又は付記2において、前記固有振動数及び前記固有振動数を間にして離隔する複数の振動数でのXYZ成分の周波数スペクトルの振幅に基づいてXYZ成分の特徴量を算出する、処理をコンピュータに実行させる。
【0074】
(付記4)コンピュータプログラムは、付記1から付記3のいずれか一つにおいて、前記固有振動数及び前記固有振動数を間にして離隔する複数の振動数でのXYZ成分の周波数スペクトルの振幅の実効値を算出し、算出した実効値を正規化してXYZ成分の特徴量を算出する、処理をコンピュータに実行させる。
【0075】
(付記5)コンピュータプログラムは、付記1から付記4のいずれか一つにおいて、XYZ成分のうち特徴量の最大値から同定される固有モード次数、及び前記固有モード次数における前記固有振動数の経時変化に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する、処理をコンピュータに実行させる。
【0076】
(付記6)コンピュータプログラムは、付記1から付記5のいずれか一つにおいて、前記固有振動数の経時変化を検知するための閾値を設定する、処理をコンピュータに実行させる。
【0077】
(付記7)コンピュータプログラムは、付記1から付記6のいずれか一つにおいて、前記固有振動数及び前記XYZ成分の特徴量に基づいて前記構造物の1又は複数の振動モードを特定する、処理をコンピュータに実行させる。
【0078】
(付記8)コンピュータプログラムは、付記7において、前記構造物と同等の同等構造物の所定箇所及び前記所定箇所から離隔した箇所に設けられた第1センサ部及び第2センサ部から取得した加速度のXYZ成分の第1時系列データ及び第2時系列データに基づいて算出されたXYZ成分の第1特徴量及び第2特徴量、並びに前記同等構造物の同等固有振動数と前記同等構造物の振動モードとを関連付けた関連情報を取得し、前記センサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データに基づいて算出されたXYZ成分の特徴量及び固有振動数と前記第1特徴量及び同等固有振動数とを対応付けて前記構造物の振動モードを特定する、処理をコンピュータに実行させる。
【0079】
(付記9)コンピュータプログラムは、支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数のモード解を推定し、推定したモード解を特徴量としてモード次数を同定し、同定したモード次数における特徴量の経時変化に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する、処理をコンピュータに実行させる。
【0080】
(付記10)構造物異常判定装置は、処理部を備え、前記処理部は、支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数の固有振動数を推定し、取得した時系列データをフーリエ変換して加速度のXYZ成分の周波数スペクトルを算出し、前記固有振動数での前記周波数スペクトルの振幅に基づいてXYZ成分の特徴量を算出し、算出した特徴量及び前記固有振動数に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する。
【0081】
(付記11)構造物異常判定装置は、処理部を備え、前記処理部は、支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数のモード解を推定し、推定したモード解を特徴量としてモード次数を同定し、同定したモード次数における特徴量の経時変化に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する。
【0082】
(付記12)構造物異常判定方法は、支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数の固有振動数を推定し、取得した時系列データをフーリエ変換して加速度のXYZ成分の周波数スペクトルを算出し、前記固有振動数での前記周波数スペクトルの振幅に基づいてXYZ成分の特徴量を算出し、算出した特徴量及び前記固有振動数に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する。
【0083】
(付記13)構造物異常判定方法は、支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、取得した時系列データに基づいて前記構造物の1又は複数のモード解を推定し、推定したモード解を特徴量としてモード次数を同定し、同定したモード次数における特徴量の経時変化に基づいて前記構造物の異常の有無を判定する。
【0084】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 道路情報板(施設構造物)
11 センサ端末
12 データ収集処理部
13 データ収集機能
14 データ蓄積機能
15 通信機能
16 加速度センサ
30 NTPサーバ
50 状態監視装置
51 処理部
52 構造物属性データ管理機能
53 データ収集機能
54 データ処理・検知機能
55 データ蓄積機能
56 データ出力機能
57 異常検知機能
58 時刻補正機能
59 センサ端末時刻補正機能
60 警告灯
61 表示部
62 操作部
【要約】
【課題】解析者が介在することなく計測から構造物の異常の有無を自動で判定できるコンピュータプログラム、構造物異常判定装置及び構造物異常判定方法を提供する。
【解決手段】コンピュータプログラムは、支柱によって支えられた構造物の所定箇所に設けられたセンサ部で計測された加速度のXYZ成分の時系列データを取得し、取得した時系列データに基づいて構造物の1又は複数の固有振動数を推定し、取得した時系列データをフーリエ変換して加速度のXYZ成分の周波数スペクトルを算出し、固有振動数での周波数スペクトルの振幅に基づいてXYZ成分の特徴量を算出し、算出した特徴量及び固有振動数に基づいて構造物の異常の有無を判定する、処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12