IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤森工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-複合成型体および複合成型体の製造方法 図1
  • 特許-複合成型体および複合成型体の製造方法 図2
  • 特許-複合成型体および複合成型体の製造方法 図3
  • 特許-複合成型体および複合成型体の製造方法 図4
  • 特許-複合成型体および複合成型体の製造方法 図5
  • 特許-複合成型体および複合成型体の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】複合成型体および複合成型体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/02 20060101AFI20240313BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240313BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240313BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240313BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20240313BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240313BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B32B5/02 B
B32B27/00 E
B32B27/00 C
B32B27/30 A
C09J7/38
C09J4/00
C09J133/00
C09J11/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020030452
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021133573
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】藤田 志朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝之
(72)【発明者】
【氏名】五町 勝義
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-051681(JP,A)
【文献】特開2019-098659(JP,A)
【文献】特開2018-140625(JP,A)
【文献】特開2016-141706(JP,A)
【文献】特開2013-202922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 5/02
B32B 27/00
B32B 27/30
C09J 7/38
C09J 4/00
C09J 133/00
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維強化樹脂を形成材料とする成型体と、
加飾フィルムと、
前記成型体に接着された接着層と、
前記接着層と前記加飾フィルムとに挟持され両者を貼り合わせる粘着層と、を有し、
前記接着層は、少なくともアクリル系ポリマーと、アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方と、重合開始剤とを含有する接着性樹脂組成物の硬化物であり、
前記粘着層は、少なくともアクリル系ポリマーを有し、前記接着層よりも前記アクリル系モノマーまたは前記アクリル系オリゴマーが重合した重合体の含有率が少ない複合成型体。
【請求項2】
前記粘着層は、前記アクリル系モノマーまたは前記アクリル系オリゴマーが重合した重合体を含まない請求項1に記載の複合成型体。
【請求項3】
少なくともアクリル系ポリマーと、アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方と、重合開始剤とを含有し、常温で両面に粘着性を有する接着性樹脂層を、炭素繊維強化樹脂を形成材料とする成型体に押圧して貼り合わせる工程と、
前記接着性樹脂層を硬化させて接着層を得る工程と、
少なくともアクリル系ポリマーを有する粘着層を介して、前記接着層に加飾フィルムを貼合する工程と、を有する複合成型体の製造方法。
【請求項4】
前記加飾フィルムを貼合する工程は、前記粘着層と前記加飾フィルムとを貼り合わせる工程と、
前記加飾フィルムに貼り合わせた前記粘着層と、前記成型体に貼り合わせた前記接着層とを貼り合わせる工程と、を有する請求項3に記載の複合成型体の製造方法。
【請求項5】
前記加飾フィルムを貼合する工程は、前記粘着層と前記成型体に貼り合わせた前記接着層とを貼り合わせる工程と、
前記粘着層と前記加飾フィルムとを貼り合わせる工程と、を有する請求項3に記載の複合成型体の製造方法。
【請求項6】
少なくともアクリル系ポリマーと、アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方と、重合開始剤とを含有し、常温で両面に粘着性を有する接着性樹脂層を、炭素繊維強化樹脂を形成材料とする成型体に押圧して貼り合わせる工程と、
前記接着性樹脂層に、少なくともアクリル系ポリマーを有する粘着層を貼り合わせる工程と、
前記接着性樹脂層を硬化させて接着層を得る工程と、
前記粘着層と加飾フィルムとを貼り合わせる工程と、を有する複合成型体の製造方法。
【請求項7】
前記重合開始剤が、熱重合開始剤である請求項4から6のいずれか1項に記載の複合成型体の製造方法。
【請求項8】
前記熱重合開始剤が、過酸化物である請求項7に記載の複合成型体の製造方法。
【請求項9】
前記接着性樹脂層が、前記アクリル系ポリマー100質量部に対して、前記アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方を5~50質量部含有する請求項4から8のいずれか1項に記載の複合成型体の製造方法。
【請求項10】
前記接着性樹脂層が、前記アクリル系モノマーを含み、
前記アクリル系モノマーが、水酸基を含有するアクリル系モノマーである請求項4から9のいずれかに記載の複合成型体の製造方法。
【請求項11】
前記接着性樹脂層が、前記アクリル系モノマーを含み、
前記アクリル系モノマーが、硬化性ウレタンアクリレートである請求項4から10のいずれかに記載の複合成型体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成型体および複合成型体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭素繊維強化樹脂(以下、CFRPと略することがある)を形成材料とする成型体が提案されている。CFRPは、金属材料と比べ軽量でありながら機械的強度が高い。そのため、CFRP製の成型体は、例えば、金属代替部品として採用されている。
【0003】
一方、CFRP製の成型体の色は、材料の色である黒色に限定されてしまう。そこで、CFRP製の成型体を装飾するため、色や模様が付された加飾フィルムを成型体の表面に積層した複合成型体が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-202924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記複合成型体は、成型体から加飾フィルムが剥離してしまうことがあった。また、上記複合成型体では、加飾フィルムを貼り合わせた後に、複合成型体の全体に反りが生じることがあり、改善が求められていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、反りと加飾フィルムの剥離とが抑制された新規な複合成型体を提供することを目的とする。
また、反りと加飾フィルムの剥離とが抑制された複合成型体を容易に製造可能とする複合成型体の製造方法を提供することを併せて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、炭素繊維強化樹脂を形成材料とする成型体と、加飾フィルムと、前記成型体に接着された接着層と、前記接着層と前記加飾フィルムとに挟持され両者を貼り合わせる粘着層と、を有し、前記接着層は、少なくともアクリル系ポリマーと、アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方と、重合開始剤とを含有する接着性樹脂組成物の硬化物であり、前記粘着層は、少なくともアクリル系ポリマーを有し、前記接着層よりも前記アクリル系モノマーまたは前記アクリル系オリゴマーが重合した重合体の含有率が少ない複合成型体を提供する。
【0008】
本発明の一態様においては、前記粘着層は、前記重合体を含まない構成としてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様は、少なくともアクリル系ポリマーと、アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方と、重合開始剤とを含有し、常温で両面に粘着性を有する接着性樹脂層を、炭素繊維強化樹脂を形成材料とする成型体に押圧して貼り合わせる工程と、前記接着性樹脂層を硬化させて接着層を得る工程と、少なくともアクリル系ポリマーを有する粘着層を介して、前記接着層に加飾フィルムを貼合する工程と、を有する複合成型体の製造方法を提供する。
【0010】
前記加飾フィルムを貼合する工程は、前記粘着層と前記加飾フィルムとを貼り合わせる工程と、前記加飾フィルムに貼り合わせた前記粘着層と、前記成型体に貼り合わせた前記接着層とを貼り合わせる工程と、を有する製造方法としてもよい。
【0011】
本発明の一態様においては、前記加飾フィルムを貼合する工程は、前記粘着層と前記成型体に貼り合わせた前記接着層とを貼り合わせる工程と、前記粘着層と前記加飾フィルムとを貼り合わせる工程と、を有する製造方法としてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様は、少なくともアクリル系ポリマーと、アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方と、重合開始剤とを含有し、常温で両面に粘着性を有する接着性樹脂層を、炭素繊維強化樹脂を形成材料とする成型体に押圧して貼り合わせる工程と、前記接着性樹脂層に、少なくともアクリル系ポリマーを有する粘着層を貼り合わせる工程と、前記接着性樹脂層を硬化させて接着層を得る工程と、前記粘着層と加飾フィルムとを貼り合わせる工程と、を有する複合成型体の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の一態様においては、前記重合開始剤が、熱重合開始剤である製造方法としてもよい。
【0014】
本発明の一態様においては、前記熱重合開始剤が、過酸化物である製造方法としてもよい。
【0015】
本発明の一態様においては、前記接着性樹脂層が、前記アクリル系ポリマー100質量部に対して、前記アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方を5~50質量部含有する製造方法としてもよい。
【0016】
本発明の一態様においては、前記接着性樹脂層が、前記アクリル系モノマーを含み、前記アクリル系モノマーが、水酸基を含有するアクリル系モノマーである上記の複合成型体の製造方法としてもよい。
【0017】
本発明の一態様においては、前記接着性樹脂層が、前記アクリル系モノマーを含み、前記アクリル系モノマーが、硬化性ウレタンアクリレートである製造方法としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、反りと加飾フィルムの剥離とが抑制された新規な複合成型体を提供することができる。また、反りと加飾フィルムの剥離とが抑制された複合成型体を容易に製造可能とする複合成型体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の複合成型体1を説明する概略断面図である。
図2】本実施形態の複合成型体1の製造に用いられる接着性樹脂フィルム15の一例を示す断面図である。
図3】本実施形態の複合成型体1の製造に用いられる粘着性樹脂フィルム19の一例を示す断面図である。
図4】本実施形態の複合成型体1の製造方法を示す工程図である。
図5】本実施形態の複合成型体1の製造方法を示す工程図である。
図6】本実施形態の複合成型体1の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1図6を参照しながら、本実施形態に係る複合成型体、複合成型体の製造方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0021】
<複合成型体>
図1は、本実施形態の複合成型体を説明する概略断面図である。図1に示すように、本実施形態の複合成型体1は、成型体20と、加飾フィルム30と、成型体20および加飾フィルム30に接して成型体20および加飾フィルム30に挟持され、両者を貼り合わせる樹脂層10と、を有する。
【0022】
成型体20は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)を形成材料とする。CFRPは、通常知られているものを用いることができる。CFRPは、炭素繊維に硬化剤を含む熱硬化性樹脂を含浸させてプリプレグとし、プリプレグを適宜成型して硬化させることで得られる。
【0023】
CFRPに含まれる炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維のいずれも用いることができる。また、炭素繊維は、炭素繊維の糸を一方向に多数引き揃えたものや、炭素繊維の織物を用いることができる。織物の織り方には制限が無く、織布、不織布のいずれも採用することができる。
【0024】
CFRPに含まれる熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリイミド、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、エポキシ樹脂が好ましい。
【0025】
また、CFRPは、上述した熱硬化性樹脂の代わりに熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性CFRP(CFRTP)としてもよい。
【0026】
CFRTPに含まれる熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイドなどを用いることができる。これらの樹脂は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
成型体20は、例えば10μm以上1000μm以下の厚みのものを用いることができる。
【0028】
加飾フィルム30は、例えば、熱可塑性樹脂を形成材料とするシート状の基材に、色および模様のいずれか一方または両方が付されたものを用いることができる。また、加飾フィルム30において、色や模様は必須ではなく、無色で且つ模様の無い透明シートを加飾フィルムとして用いてもよい。
【0029】
加飾フィルム30の形成材料である熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)などを挙げることができる。
【0030】
加飾フィルム30の色や模様は、基材を直接染色または成型することで設けられていてもよく、基材の表面に加飾層を設け、加飾層に色や模様を設けることとしてもよい。加飾層には、基材に印刷することで設けられる印刷層を含む。
【0031】
樹脂層10は、成型体20に接し成型体20に接着された接着層101と、加飾フィルム30と接する粘着層102と、を有する。
【0032】
接着層101は、接着層101の厚さ方向の全体にわたり、少なくとも(A)アクリル系ポリマーと、(B)アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方、(C)重合開始剤とを含有する接着性樹脂組成物の硬化物からなる。接着層101は、光透過性を有していてもよく、光透過性を有していなくてもよい。
【0033】
以下、「(B)アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方」を、「(B)成分」と称することがある。
【0034】
粘着層102は、少なくとも(A)アクリル系ポリマーを含有する。また、粘着層102は、発明の効果を損なわない範囲において(B)成分が重合した重合体を含んでいてもよい。粘着層102は、接着層101よりも(B)成分が重合した重合体の含有率が少ない。硬化反応後の粘着層102は、硬化反応後の接着層101よりも相対的に粘着性が高い。
【0035】
ここで、「(B)成分が重合した重合体の含有率」とは、接着層101および粘着層102のそれぞれにおいて、単位体積当たりに含まれる(B)成分が重合した重合体の割合を示す。
【0036】
粘着層102が、(B)成分が重合した重合体を含む場合、粘着層102は、少なくとも(A)アクリル系ポリマーと、(B)成分、(C)重合開始剤とを含有する接着性樹脂組成物の硬化物からなる。
【0037】
粘着層102が、(B)成分が重合した重合体を含まない場合、粘着層102は、少なくとも(A)アクリル系ポリマーを含有する粘着層である。
【0038】
粘着層102は、(B)成分が重合した重合体を含まない方が好ましい。
【0039】
接着層101および粘着層102は、例えば、以下の接着性樹脂フィルムを用いて製造することができる。
【0040】
<接着性樹脂フィルム>
図2は、本実施形態の複合成型体の製造に用いられる接着性樹脂フィルム15の一例を示す断面図である。接着性樹脂フィルム15は、2枚のセパレーター12,13と、これらの間に積層された接着性樹脂層11とを有する。接着性樹脂層11を構成する接着性樹脂組成物は、(A)アクリル系ポリマーと、(B)アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方((B)成分)と、(C)重合開始剤とを含有する。
【0041】
接着性樹脂層11の両面11a,11bは、常温で粘着性を有し、粘着面となっている。
【0042】
接着性樹脂層11は、厚さ方向の全体にわたり、接着性樹脂組成物からなる。接着性樹脂層11は、単層であってもよく、同種または異種の接着性樹脂組成物からなる2層以上から構成されてもよい。接着性樹脂層11が単層の接着性樹脂層からなる場合、層構成を単純化してコストを低減できるので、好ましい。接着性樹脂組成物は、アクリル系の接着性樹脂(ポリマー)を含む。接着性樹脂組成物の光学特性は限定されないが、透明性を有してもよく、半透明や不透明でもよい。
【0043】
セパレーター12,13は、接着性樹脂層11と接する側の面12a,13aが剥離面となっている。セパレーター12,13の構成としては、樹脂フィルムの片面または両面に剥離剤層を設けた構成や、樹脂フィルムの樹脂内に剥離剤を含む構成など、通常知られた構成を採用することができる。樹脂フィルムの代わりに、紙、合成紙、金属箔などの各種シートを用いることもできる。セパレーター12,13が透明性を有すると、セパレーター12,13を剥離しない接着性樹脂フィルム15のまま、接着性樹脂層11の光学的な検査を行うことができるため好ましい。
【0044】
接着性樹脂フィルム15は、接着性樹脂層11からセパレーター12,13を剥離して露出される粘着面11a,11bにより、2枚の基材を貼合することができる。
【0045】
接着性樹脂層11を製造する際の材料は、接着性樹脂層11を構成する接着性樹脂組成物の組成に、溶剤を加えたものであってもよい。接着性樹脂層11は、硬化前においては粘着剤層として機能することができる。
【0046】
図3は、本実施形態の複合成型体の製造に用いられる粘着性樹脂フィルム19の一例を示す断面図である。粘着性樹脂フィルム19は、2枚のセパレーター12,13と、これらの間に積層された粘着層18とを有する。粘着層18を構成する樹脂組成物は、少なくとも(A)アクリル系ポリマーを含有する。
【0047】
粘着層18の両面18a,18bは、常温で粘着性を有し、粘着面となっている。
【0048】
粘着層18は、接着性樹脂フィルム15が有する接着性樹脂層11と比べ、(B)成分の含有率が低い。粘着層18は、(B)成分を含まないことが好ましい。
【0049】
((A)アクリル系ポリマー)
(A)アクリル系ポリマーを構成するモノマーは、エステル基(-COO-)を有するアクリル系モノマー、カルボキシ基(-COOH)を有するアクリル系モノマー、アミド基(-CONR,Rは水素原子またはアルキル基等の置換基)を有するアクリル系モノマー、ニトリル基(-CN)を有するアクリル系モノマー、オレフィン類、スチレン、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルシラン等の非アクリル系モノマーが挙げられる。
【0050】
(A)アクリル系ポリマーは、2種以上のモノマーからなる共重合体が好ましい。光重合前における(A)アクリル系ポリマーの数平均分子量は、例えば5~100万程度が好ましい。粘度は、例えば1000~10000mPa・s程度が挙げられる。
【0051】
エステル基を有するアクリル系モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基(水酸基)を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基またはポリエーテル基を有する(メタ)アクリレート、アミノ基または置換アミノ基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0053】
カルボキシ基を有するアクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
アミド基を有するアクリル系モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
【0055】
ニトリル基を有するアクリル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0056】
(A)アクリル系ポリマーは、構成モノマーの50質量%以上が、アクリル系モノマーからなることが好ましい。特に、構成モノマーの50質量%以上が、一般式CH=CR-COOR(式中、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1~14のアルキル基を示す。)で表わされるアルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上からなることが好ましい。
【0057】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。特に、アルキル基Rの炭素数が4~12のアルキル(メタ)アクリレートを必須として、例えば50~100モル%用いることが好ましい。
【0058】
また、水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクタン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等の1種または2種以上が挙げられる。
【0059】
((B)アクリル系モノマーとアクリル系オリゴマーとのいずれか一方または両方)
(B)成分は、重合することにより、接着性樹脂層11を硬化させる。接着性樹脂層11は、硬化することにより接着層101となる。
【0060】
接着性樹脂層11に含まれる(B)成分が重合前であることにより、接着性樹脂層11は粘着性を発現する。また、接着性樹脂層11において(B)成分が重合することにより、接着性樹脂層11の柔軟性が徐々に失われて硬化し、接着層101が得られる。
【0061】
このように、接着性樹脂フィルム15は、接着性樹脂層11に(B)成分を含むことにより、(B)成分の重合前と重合後とで接着性樹脂層11の硬さが変化する。これにより、得られる接着層101が変形しにくくなり、剥離しにくくなる。
【0062】
(B)成分のうち、アクリル系モノマーとしては、(A)アクリル系ポリマーを構成するモノマーと同様なモノマーを挙げることができる。例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基を含有する(メタ)アクリレート、アクリルアミド等の1種または2種以上が挙げられる。1分子中の(メタ)アクリロイル基等の重合性官能基の数は、ひとつでも2以上でもよい。
【0063】
特に、(B)成分の少なくとも一部として、水酸基を有する(メタ)アクリレートのモノマーを含有する場合、極性を有する水酸基が接着性樹脂層の全体に分散しやすくなる。これにより、湿度の高い(さらに高温の)環境でも、水分が凝集しにくく、接着性樹脂層の白濁が抑制されるため、好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリレートにおいて、1分子中の水酸基の数は、ひとつでも2以上でもよい。
【0064】
また、(B)成分の少なくとも一部として、硬化性ウレタンアクリレートを用いることができる。
【0065】
ウレタンアクリレートは、同一分子中にウレタン結合(-NH-COO-)及び(メタ)アクリロイルオキシ基(X=HまたはCHとして、CH=CX-COO-)を有する化合物である。
【0066】
硬化性ウレタンアクリレートは、ウレタンアクリレートのうち、重合性官能基である(メタ)アクリロイルオキシ基により硬化性を有する化合物である。1分子中のウレタン結合の数は、ひとつでも2以上でもよい。また、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数は、ひとつでも2以上でもよい。
【0067】
ウレタンアクリレートとしては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とイソシアネート化合物とを反応させて得られる化合物、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーに、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られる化合物等が挙げられる。ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0068】
アクリル系モノマーとしては、水酸基を含有するアクリル系モノマーが好ましい。また、アクリル系モノマーとしては、硬化性ウレタンアクリレートも好ましい。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0069】
(B)成分は、(C)重合開始剤による硬化によりポリマーの一部になり、かつポリマーよりも粘度が低い液体(流動体)であることが好ましい。アクリル系モノマー及びアクリル系オリゴマーを併用することも可能である。アクリル系オリゴマーとして、ウレタンアクリレートオリゴマー等のアクリレートオリゴマーが挙げられる。(B)成分の有する重合性官能基の数は、例えば1~10であり、2~5であってもよい。
【0070】
(B)成分は、平均分子量が大きいほど、(B)成分を重合させて得られる重合体の分子量が上がりやすく、接着層を十分に硬化させやすい。また、(B)成分の平均分子量が大きいと、接着性樹脂層を硬化させて得られる接着層を硬くするために、(B)成分の使用量を少なくすることができる。
そのため、(B)成分は、アクリル系オリゴマーを含むことが好ましい。
【0071】
一方で、(B)成分は、平均分子量が大きいほど重合時の反応性が低くなる。これに対し、(B)成分が重合性官能基を複数有すると、重合しやすく、接着性樹脂層が硬化しやすい。そのため、得られる接着層が変形しにくくなり、剥離しにくくなる。
【0072】
(B)成分が有する重合性官能基が多すぎると、得られる接着層が固くなりすぎて反応時の収縮で逆に剥がれてしまうことがある。
【0073】
そのため、(B)成分が有する重合性官能基の量は、重合して得られる接着層の固さと、反応時の収縮性とを考慮して選択すると好ましい。
【0074】
接着性樹脂組成物は、(A)アクリル系ポリマー100質量部に対して、(B)成分を5~50質量部含有することが好ましい。(B)成分の添加量が多すぎると、接着性樹脂層11を重合させたときに、接着性樹脂層11の接着力が低下しすぎる場合がある。
【0075】
((C)重合開始剤)
本実施形態においては、(C)重合開始剤は、エネルギーを供給することにより自身が分解し、重合を開始させる活性種を生じる材料を指す。別表現によれば、(C)重合開始剤は、(C)重合開始剤の活性化エネルギーを供給することで、重合を開始させる活性種を生じる材料を指す。(C)重合開始剤を分解させる因子は、熱エネルギーであってもよく、光エネルギーであってもよく、電子線エネルギーであってもよい。熱エネルギーにより分解する(C)重合開始剤は、一般に熱重合開始剤と呼ばれることが多い。光エネルギーにより分解する(C)重合開始剤は、一般に光重合開始剤と呼ばれることが多い。
【0076】
(C)重合開始剤として熱反応開始剤を用いると、例えば、一定温度に保たれているオーブンを用いて接着性樹脂層11を加熱することで、接着性樹脂層11全体に均一に熱を伝えやすい。これにより、接着性樹脂層11における(B)成分の重合反応を、均一に開始させることができる。
【0077】
また、(C)重合開始剤として熱反応開始剤を用いると、熱反応開始剤の使用量や加熱温度を調整することで、(B)成分の重合速度を遅く調整しやすい。そのため、後述する複合成型体の製造方法においては、熱プレス中にまず(B)成分が被着体の凹凸に入り込み、その後反応して凹凸構造に追従した形で重合反応が終わるように反応を設計しやすくなる。
【0078】
一方、(C)重合開始剤として光重合開始剤用いる場合、被着体に接着性樹脂層11を貼合して被着体の表面の凹凸構造に接着性樹脂層を追従させた後、接着性樹脂層に光照射を行って(B)成分を重合させる。
【0079】
その際、接着性樹脂層を被着体側に押し付ける方向に圧力を加えた状態で、重合反応を進めることが好ましい。接着性樹脂層を被着体に貼合した後、貼合時の圧力を解放してから光照射すると、条件によっては貼合時には気泡が見られなかった部分に気泡が生じることがある。「遅れ気泡」と呼ばれる気泡は、接着性樹脂層を被着体側に押し付ける方向に圧力を加えた状態で光照射することにより抑制することができる。
【0080】
(C)重合開始剤としては、重合反応の制御が容易である熱重合開始剤がより好ましい。また、熱重合開始剤は、用いる加飾フィルム30やセパレーター12,13の色によらず、反応を開始可能である点からも好ましい。
さらには、接着性樹脂層11は、(B)成分として分子量が高いアクリル系オリゴマーを用い、(C)重合性開始剤として熱反応開始剤を用いることが好ましい。
【0081】
熱重合開始剤としては、分解して、モノマーの重合と樹脂の硬化を開始するラジカル開始剤が挙げられる。ラジカル開始剤としては、低温で作用するレドックス開始剤や有機金属化合物なども知られているが、接着性樹脂層の取り扱い性の点では、より高温で作用する、(有機)過酸化物系、アゾ系等が好ましい。
【0082】
熱重合開始剤の半減期が1分間となる温度(以下、「1分間半減期温度」と称する場合がある。)は、接着性樹脂組成物が含有する有機溶剤の沸点よりも高いことが好ましい。このような(C)重合開始剤を用いると、接着性樹脂フィルム15の製造過程において、特に、溶媒の乾燥工程において反応しにくいため好ましい。
【0083】
また、熱重合開始剤は、熱プレス時の温度において、一定時間で十分に反応させるために、熱プレス設定温度よりも50℃以上低い1分間半減期温度を有する材料が好ましい。
【0084】
(有機)過酸化物系の熱重合開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル等のジアシルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等のアルキルペルオキシエステル、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド等が挙げられる。中でも、上記の1分間半減期温度が100℃以上である有機過酸化物が好ましく、1分間半減期温度が200℃以下である有機過酸化物がより好ましい。
【0085】
このような有機過酸化物としては、t-ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、ジラウロイルペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジスクシニックアシッドペルオキシド、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシマレイン酸、t-ブチルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシラウレート、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ヘキシルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド等が挙げられる。
【0086】
アゾ系の熱重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-シアノバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレート)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。
【0087】
また、重合開始剤は反応性の制御のために、かご状の分子を有する分子カプセルの中に封入された熱重合開始剤を用いることができる。かご状分子はアントラセン構造であることが好ましい。
【0088】
光重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0089】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、アセトフェノン、p-(tert-ブチル)1’,1’,1’-トリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2’,2’-ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2’-フェニルアセトフェノン、2-アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等が挙げられる。
【0090】
ベンゾイン系光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等が挙げられる。
【0091】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシルベンゾフェノン、ヒドロキシルプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0092】
チオキサントン系光重合開始剤としては、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
【0093】
その他の光重合開始剤としては、α-アシルオキシムエステル、ベンジル-(o-エトキシカルボニル)-α-モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、フェニルグリオキシル酸エステル、3-ケトクマリン、2-エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバレート等が挙げられる。
【0094】
なお、「t-ブチルペルオキシピバレート」については、熱重合開始剤としても光重合開始剤としても使用可能である。
【0095】
(B)成分100質量部に対して、(C)重合開始剤の添加量は0.001~1質量部であることが好ましく、0.001~0.5質量部であることがより好ましい。
【0096】
接着性樹脂層11には、重合遅延剤を加えることができる。重合遅延剤の使用により、重合度の制御が容易になる。また、基材の変形に対する追従性を向上させる観点から好ましい。なお、重合遅延剤は、過度に使用すると成形加工時に反応が終了せずに、剥がれる可能性が生じる。そのため、重合遅延剤を用いた場合には、成形加工時に重合反応が終了するための十分な反応時間を確保できるよう、加工時間を調整するとよい。
【0097】
重合遅延剤としては、例えば、ヒドロキシアニソール類、ジアルコキシフェノール類、カテコール類、ヒドロキノン類、ベンゾキノン類が挙げられ、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールなどのヒドロキシアニソール類が特に好ましい。重合遅延剤は1種単独また2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合遅延剤の含有量は、重合開始剤と重合遅延剤とのモル比(重合開始剤:重合遅延剤)で、通常1:0.001~1:1、好ましくは1:0.01~1:1である。
【0098】
その他、重合遅延剤としては、p-メトキシフェノール、ピロガロール、レソルシノール、フェナントラキノン、2,5-トルキノン、ベンジルアミノフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)等のフェノール類;
o-ジニトロベンゼン、p-ジニトロベンゼン、m-ジニトロベンゼンなどのニトロベンゼン類;
N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、クペロン、フェノチアジン、タンニン酸、p-ニトロソアミン、クロラニル、アニリン、ヒンダードアニリン、塩化鉄(III)、塩化銅(II)、トリエチルアミンなどを挙げることができる。
【0099】
接着性樹脂層11は、(A)~(C)以外の任意成分をさらに含有することができる。
【0100】
((D)架橋剤)
例えば、接着性樹脂層11は、任意成分として、(D)架橋剤(硬化剤)を含有することができる。(D)架橋剤(硬化剤)としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート化合物等を挙げることができる。
【0101】
(D)架橋剤(硬化剤)は、(A)アクリル系ポリマー、または(B)成分を架橋させるため、好適に用いられる。この場合、必要に応じて、(A)アクリル系ポリマーまたは(B)成分の少なくとも一部に、(D)架橋剤と反応する官能基を有するポリマーまたはモノマーが使用される。
【0102】
(D)架橋剤と反応する官能基は、例えばイソシアネート系架橋剤の場合、水酸基やカルボキシ基等である。
【0103】
(D)架橋剤の添加量は、ポリマーの官能基に対して例えば1.5当量以下が好ましい。
【0104】
(D)架橋剤(硬化剤)による(A)アクリル系ポリマーの硬化は、被着体に貼合する前の接着性樹脂層11を製造する段階で、エージングにより進行させてもよい。
【0105】
その他の任意成分としては、例えば、酸化防止剤、充填剤、可塑剤等が挙げられる。接着性樹脂層の製造に用いられる接着性樹脂組成物は、水や有機溶剤等の溶剤を含んでもよく、無溶剤のシロップ状組成物でもよい。
【0106】
また、(B)成分としてアクリル系オリゴマーを用いる場合、アクリル系ポリマーもアクリル系オリゴマーも分子量が大きく、塗料としての相溶性が悪くなることがしばしば発生する。そのため、接着性樹脂層11は、任意成分として相溶剤を添加することが望ましい。
【0107】
相溶剤は、熱反応時にアクリル系オリゴマーと一緒に硬化可能な、反応性基を有する材料が好ましい。
【0108】
<複合成型体の製造方法>
図4~6は、本実施形態の複合成型体の製造方法を示す工程図である。以下の製造方法においては、接着性樹脂層11が有する(C)重合性開始剤が、熱重合性開始剤であることとして説明する。
【0109】
まず、図4に示すように、接着性樹脂フィルム15から、一方のセパレーター12を剥離して、接着性樹脂層11を露出させる。露出した接着性樹脂層11の粘着面11aに成型体20を貼合し、積層体を得る。
【0110】
次いで、図5に示すように、得られた積層体をプレスしながら加熱する(熱プレス)。これにより、接着性樹脂層11は接着層101となる。熱プレス時の各種条件は、用いる熱重合開始剤の1分間半減期温度に応じて適宜設定することができる。用いる熱重合開始剤の1分間半減期温度が120℃の場合、熱板温度を100℃以上140℃以下、0.01MPa以上5MPa以下で加圧しながら、0.1分以上2時間以下保持することで熱プレスを行うことができる。半減期温度が異なる熱重合開始剤を用いる場合は、熱板温度を半減期温度の±20℃あたりに設定することが好ましい。
【0111】
接着性樹脂層11に含まれる(A)アクリル系ポリマーと(D)架橋剤(硬化剤)が反応した硬化済みポリマーは、加熱により軟化する。さらに、接着性樹脂層11に含まれる重合性の(B)成分が硬化前であるため、接着性樹脂層11は柔軟性に富み、成型体20の表面に付きまわることができる。特に、CFRPを形成材料とする成型体20は、CF(カーボンファイバー)に起因した微細な表面凹凸を有するところ、接着性樹脂層11は、プレスすることにより成型体20の表面の凹部に入り込みながら付きまわる。
【0112】
この状態で加熱することで、接着性樹脂層11中の(C)重合開始剤が反応し、(B)成分が重合する。これにより、接着性樹脂層11が硬化し、接着層101となる。
【0113】
接着層101は、成型体20の表面に強固に密着した状態で硬化するため、(B)成分のアンカー効果及び(B)成分の硬化によって変形しにくくなることの効果により、接着層101と成型体20との界面での剥離を抑制することができる。
【0114】
また、粘着性樹脂フィルム19についても同様に、一方のセパレーター12を剥離して粘着層18を露出させた後、露出した粘着層18に加飾フィルム30を貼合することで、積層体を得る。また、必要に応じ、粘着層18を硬化させる。加飾フィルム30は熱によって収縮し、反りが生じることがある。そのため、加飾フィルム30は、熱を極力かけずに貼合することが好ましい。さらに、加飾フィルム30は、加圧だけで貼合することがより好ましい。
得られる積層体に含まれる粘着層を、粘着層102とする。
【0115】
次いで、図6に示すように、成型体20を貼り合わせた積層体16からセパレーター13を剥離して接着層101を露出させ、加飾フィルム30を貼り合わせた積層体17からセパレーター13を剥離して粘着層102を露出させる。接着層101と粘着層102とを貼り合わせることで、樹脂層10が得られ、樹脂層10を介して成型体20と加飾フィルム30とが貼り合わされた複合成型体1が得られる。
【0116】
加飾フィルム30と貼り合わせた粘着層102は、接着層101よりも(B)成分が重合した重合体の含有率が小さい。そのため、粘着層102は接着層101よりも硬化が進んでおらず、相対的に接着層101の表面よりも高い粘着性を有する。これにより、ニップロール間に挿入するだけで、接着層101と粘着層102とを好適に貼合することができる。
【0117】
また、プレス時に加熱しないことにより、用いる加飾フィルム30の熱収縮を抑制することができる。そのため、得られる複合成型体1の反りを抑制することができる。
【0118】
接着層101と粘着層102を貼合する際に、接着層101と粘着層102とでは密着性が十分でないことがある。
【0119】
その場合、接着層101と粘着層102とに、それぞれ同様の架橋反応が進行する材料を用い、架橋反応が完了する前の接着性樹脂層11と、粘着層18とを貼り合わせた後に架橋反応を起こさせるとよい。これにより、接着層101と粘着層102との密着性が向上し、耐久性を上げることが出来ると考えられる。
【0120】
ここで「同様の架橋反応」とは、イソシアネート官能基と水酸基の組み合わせによる架橋反応、エポキシ官能基とカルボキシ基の組み合わせによる架橋反応のように、架橋反応に使用する官能基や、架橋に関与する反応が同じであることを示す。
【0121】
この手順で行うと、まず接着層101が成型体20の表面の凹凸構造を埋めて、成型体20の表面より凹凸が少ない表面を作ることが出来る。同様に加飾フィルム30の表面の凹凸構造を粘着層102が埋めた状態で、接着層101と粘着層102とを貼合するため、複合成型体1の加飾フィルム30の表面の平滑性が向上し、クリア塗装に近い外観が得られる。
【0122】
なお、本実施形態においては、接着層101と成型体20とが積層された積層体16と、粘着層102と加飾フィルム30とが積層された積層体17とをそれぞれ作製し、これらを貼り合わせることで複合成型体1を製造することとしたが、これに限らない。
【0123】
例えば、積層体16からセパレーター13を剥離した後に、露出した接着層101に粘着層102を貼合し、その後、粘着層102に加飾フィルム30を貼合することとして、複合成型体1を製造することとしてもよい。
【0124】
この場合、多品種小ロット生産を行いたいときには有利である。最後に加飾フィルムを貼合するだけにしておけば、加飾フィルムの図柄や色などの急な変更にも対応可能となる。
【0125】
また、成型体20に接着性樹脂層11を貼り合わせた後に、接着性樹脂層11に粘着層102を貼合し、得られた積層体を熱プレスすることで、成型体20と樹脂層10とを有する積層体を製造することとしてもよい。その後、樹脂層10の粘着層102に加飾フィルム30を貼合し、複合成型体1を製造することとしてもよい。
【0126】
この場合、成型体20の表面の凹凸が大きく、加飾フィルム30の表面凹凸が小さい場合に有利となる。凹凸が大きいとその凹凸に追従させるための粘着層の厚みは、より大きいほうが好ましい。しかし、粘着層102は室温ではそれほど柔らかくないため、接着層101と同時に加熱を行い、粘着層102の流動性を上げることで、より表面の凹凸に追従させやすくすることができると考えられる。
【0127】
さらに、セパレータ13を厚くしておくと、熱プレス時点での表面の凹凸を緩和することができ、好ましい。そのため、加飾フィルム30が平滑でなくても良好な外観となる貼合ができる。
【0128】
以上のような構成の複合成型体1によれば、反りと加飾フィルム30の剥離とが抑制された成型体となる。
【0129】
また、以上のような構成の複合成型体1の製造方法によれば、反りと加飾フィルム30の剥離とが抑制された複合成型体1を容易に製造可能とすることができる。
【0130】
なお、上述の各実施形態においては、(C)重合開始剤として熱重合開始剤を用いることとしたが、光重合開始剤を用いてもよい。光重合開始剤を用いる場合、接着性樹脂層を硬化させる際に熱を加える代わりに、光重合開始剤を分解する光エネルギーを供給する。
【0131】
光重合開始剤を用いた場合、接着性樹脂フィルムが有するセパレーターは、光透過性を有することが好ましい。接着性樹脂層に成型体20を貼合した後に、セパレーターを介して接着性樹脂層の光を照射し、接着層を製造することができる。
【0132】
(C)重合開始剤として光重合開始剤を用いると、得られる複合成型体の反りを抑制しやすく好ましい。
【0133】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例
【0134】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0135】
(実施例1-1)
(A)アクリル系ポリマー、(B)成分、(C)重合開始剤、(D)架橋剤を、表1に記載の配合割合で混合し、接着性樹脂組成物A、樹脂組成物Cを調整した。
【0136】
得られた接着性樹脂組成物Aを、セパレーターA(藤森工業株式会社製;製品名:125E-0010DG2.5AS、厚み125μm)の上面に、アプリケーターを用いて塗布した。その後、乾燥工程において90℃、2分間の条件で乾燥させて溶媒を除去し、接着性樹脂層が積層された積層体を作製した。アプリケーターによる塗布は、乾燥後における接着性樹脂層の厚みが50μmとなるように調節した。
【0137】
次いで、得られた接着性樹脂層の上面に、セパレーターB(藤森工業株式会社製;製品名;38E-0010BDAS、厚み38μm)を貼合した。
【0138】
その後、1週間のエージングを行うことで、(A)アクリル系ポリマーと架橋剤の反応を終了させて、架橋された(A)アクリル系ポリマーと、(B)成分と、(C)重合開始剤との3種類が存在する接着性樹脂層を有する接着性樹脂フィルムAを形成した。
【0139】
また、接着性樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物Cを用いること以外は、接着性樹脂フィルムAの製造時と同様にして、架橋された(A)アクリル系ポリマーが存在する粘着層を有する樹脂フィルムCを形成した。
【0140】
次いで、接着性樹脂フィルムAからセパレーターBを剥離し、露出した接着性樹脂層に厚み0.3mmの成型体(炭素繊維UD(T700-12000)+汎用エポキシ(125℃硬化タイプ))を貼合した。
【0141】
次いで、130℃、0.1MPa、2分間のプレス条件で熱プレスを行った。この熱プレスにより、接着性樹脂層には硬化反応が生じ、成型体に接着された接着層が得られた。
【0142】
次いで、樹脂フィルムCからセパレーターBを剥離し、露出した粘着層に加飾フィルム(型番SA-00。有限会社シーアールディー製。透明アクリルフィルム。板厚125mm)を貼合した。
【0143】
次いで、接着性樹脂フィルムAを貼合した積層体からセパレーターAを剥離し、接着層を露出させた。また、樹脂フィルムCを貼合した積層体からセパレーターAを剥離し、粘着層を露出させた。露出した接着層に露出した粘着層を貼合し、室温(23℃)、0.2MPa、2分間のプレス条件でプレスを行い、実施例1-1の複合成型体を得た。
【0144】
(実施例1-2)
実施例1-1と同様の接着性樹脂フィルムAからセパレーターBを剥離し、露出した接着性樹脂層に実施例1-1と同様の成型体を貼合した。次いで、セパレーターAを剥離し、接着性樹脂層を露出させた。
【0145】
また、実施例1-1と同様の樹脂フィルムCからセパレーターBを剥離し、粘着層と接着性樹脂層とを貼合した。
【0146】
次いで、実施例1-1と同様の条件で熱プレスを行った。この熱プレスにより、接着性樹脂層には硬化反応が生じ、成型体に接着された接着層が得られた。
【0147】
次いで、粘着層からセパレーターBを剥離し、露出した粘着層に実施例1-1と同様の加飾フィルム(透明アクリルフィルム)を貼合して、実施例1-1と同様の条件でプレスを行い、実施例1-2の複合成型体を得た。
【0148】
(実施例1-3)
実施例1-1と同様にして、成型体に接着された接着層を得た。次いで、接着層からセパレーターAを剥離し、接着層を露出させた。
【0149】
また、実施例1-1と同様の樹脂フィルムCからセパレーターBを剥離し、粘着層と接着層とを貼合した。
【0150】
次いで、粘着層からセパレーターBを剥離し、露出した粘着層に実施例1-1と同様の加飾フィルム(透明アクリルフィルム)を貼合して、実施例1-1と同様の条件でプレスを行い、実施例1-3の複合成型体を得た。
【0151】
(実施例2-1)
(A)アクリル系ポリマー、(B)成分、(C)重合開始剤、(D)架橋剤を、表1に記載の配合割合で混合し、接着性樹脂組成物Bを調整した。得られた接着性樹脂組成物Bを用い、実施例1-1と同様にして、接着性樹脂フィルムBを形成した。
【0152】
次いで、接着性樹脂フィルムBからセパレーターBを剥離し、露出した接着性樹脂層に実施例1-1と同様の成型体を貼合した。
【0153】
次いで、セパレーターAを介して紫外線(メタルハライドランプ3kW、照射強度2000mJ)を搬送速度0.2m/分で接着性樹脂層に照射した。紫外線照射により、接着性樹脂層には硬化反応が生じ、接着層が得られた。
【0154】
次いで、実施例1-1と同様に、樹脂フィルムCと加飾フィルム(透明アクリルフィルム)との貼合を行い、接着層と粘着層との貼合を行って、実施例2-1の複合成型体を得た。
【0155】
(実施例2-2)
接着性樹脂フィルムAの代わりに接着性樹脂フィルムBを用いること、接着性樹脂層の硬化に実施例2-1と同様の条件で紫外線照射を行うこと以外は、実施例1-2と同様にして、実施例2-2の複合成型体を得た。
【0156】
(実施例2-3)
接着性樹脂フィルムAの代わりに接着性樹脂フィルムBを用いること、接着性樹脂層の硬化に実施例2-1と同様の条件で紫外線照射を行うこと以外は、実施例1-3と同様にして、実施例2-3の複合成型体を得た。
【0157】
(比較例1)
(A)アクリル系ポリマー、(B)成分、(C)重合開始剤、(D)架橋剤を、表1に記載の配合割合で混合し、樹脂組成物Cを調整した。得られた樹脂組成物Cを用い、実施例1-1と同様にして、樹脂フィルムCを形成した。
【0158】
次いで、樹脂フィルムCからセパレーターBを剥離し、露出した粘着層に実施例1-1と同様の成型体を貼合した。
【0159】
次いで、セパレーターAを剥離し、露出した粘着層に実施例1-1と同様の加飾フィルム(透明アクリルフィルム)を貼合した。これにより、比較例1の複合成型体を得た。
【0160】
(実施例3-1)
成型体として、炭素繊維織物(型番CO6364、東レ株式会社製)に汎用エポキシ(125℃硬化タイプ)を含浸させた厚み0.3mmの成型体を用い、加飾フィルムとして、アクリルフィルム(型番SA-502。有限会社シーアールディー製。不透明タイプ(ピアノブラック)。板厚125mm)を用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして、実施例3-1の複合成型体を得た。
【0161】
(実施例3-2)
成型体として、実施例3-1と同様の成型体を用い、加飾フィルムとして実施例3-1と同様の不透明タイプのアクリルフィルムを用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして、実施例3-2の複合成型体を得た。
【0162】
(実施例3-3)
成型体として、実施例3-1と同様の成型体を用い、加飾フィルムとして実施例3-1と同様の不透明タイプのアクリルフィルムを用いたこと以外は、実施例1-3と同様にして、実施例3-3の複合成型体を得た。
【0163】
(比較例2)
成型体として、実施例3-1と同様の成型体を用い、加飾フィルムとして実施例3-1と同様の不透明タイプのアクリルフィルムを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、比較例2の複合成型体を得た。
【0164】
【表1】
【0165】
なお、表1に記載の各原料の詳細は、以下の通りである。また、表1において、商品が溶液として市販されている場合、質量部の数値は、各溶液の固形分の量を示す。
【0166】
SKダイン(登録商標)2094:アクリル系粘着剤(綜研化学株式会社製)。
E-AX:エポキシ系架橋剤(綜研化学株式会社製)。
UV-3310B:ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製)。
UV-1700:ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製)。
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレートの略称。
【0167】
パーオクタ(登録商標)O:1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートを有効成分とする熱重合開始剤(日本油脂株式会社製)。
Irgcure651:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンを有効成分とする光重合開始剤。
【0168】
(剥離評価)
(外観確認:初期)
得られた複合成型体の外観について、目視にて気泡発泡が見られるか確認した。目視にて気泡が見られない複合成型体を「〇」、気泡が見られる複合成型体を「×」とし、「〇」と評価された複合成型体を良品、「×」と評価された複合成型体を不良品と判断した。
【0169】
(外観確認:加熱環境保存後)
得られた複合成型体のうち、上記判断基準にて初期の外観が「〇」と判断されたものについて、85℃の乾燥した加熱環境で240時間保存した。保存後、気泡の発生が見られない複合成型体を「〇」、気泡が見られる複合成型体を「×」とし、「〇」と評価された複合成型体を良品、「×」と評価された複合成型体を不良品と判断した。
【0170】
上記基準にて確認した外観において、加熱環境保存後に外観が劣化している複合成型体は、加飾フィルムと成型体との界面に剥離が生じていることが分かる。
【0171】
(反りの評価)
複合成型体を平面視で10cm×10cmの正方形に加工し、試験片を得た。試験片を下に凸となるように試験台上に載置し、4つの角についてそれぞれ、試験台から角までの高さを測定した。高さの算術平均値を反りの値とした。
【0172】
求めた反りについて、10mm未満を「〇」、10mm以上~20mm未満を「△」、20mm以上を「×」と評価した。「〇」「△」と評価された試験片を良品、「×」と評価された試験片を不良品と判断した。
【0173】
評価結果を表2に示す。
【0174】
【表2】
【0175】
評価の結果、実施例の各複合成型体は、剥離が生じず、反りが抑制されることが確認できた。一方、比較例の複合成型体は、剥離、および反りが生じることが確認できた。
【符号の説明】
【0176】
1…複合成型体、10…樹脂層、11…接着性樹脂層、11a、12a…面、18,102…粘着層、20…成型体、30…加飾フィルム、101…接着層、102…粘着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6