(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】チャンバからSnO2膜を洗浄するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240313BHJP
C23G 5/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01L21/302 101H
H01L21/302 101B
C23G5/00
(21)【出願番号】P 2021506627
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 US2019045583
(87)【国際公開番号】W WO2020033602
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンガール・アキル
(72)【発明者】
【氏名】オースティン・ダスティン・ザカリー
(72)【発明者】
【氏名】ハ・ジェングセオク
(72)【発明者】
【氏名】リュー・ペイ-チ
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-157836(JP,A)
【文献】特開平03-077209(JP,A)
【文献】特開2007-059904(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0042755(US,A1)
【文献】国際公開第2014/010310(WO,A1)
【文献】特開2018-006742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
C23G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバからSnO
2残留物を洗浄するための方法であって、
炭化水素ガスおよび水素ガスをプラズマ処理システムに導入し、
前記プラズマ処理システムのプラズマ源によって生成されたプラズマを用いて、前記処理チャンバの表面から前記SnO
2残留物をエッチングし、前記水素ガスを用いる前記SnO
2残留物のエッチングはSnH
4ガスを生成し、前記SnH
4ガスは前記炭化水素ガスと反応して、揮発可能な有機スズ化合物を生成し、前記SnH
4ガスからの前記有機スズ化合物の前記生成は、Sn粉末に分解されるために利用可能なSnH
4の量を低減し、
前記有機スズ化合物を前記処理チャンバから排気すること、
を備え、
前記水素ガスに対する前記炭化水素ガスの
流量の比率は、水素ガスに対して炭化水素ガス1%以上、且つ、水素ガスに対して炭化水素ガス60%未満であ
り、
前記炭化水素ガスおよび前記水素ガスは、容量結合プラズマ(CCP)源によってプラズマを生成するために前記処理チャンバに導入されると共に、誘導結合プラズマ(ICP)源によってプラズマを生成するために前記ICP源に導入され、前記CCP源および前記ICP源によって生成されたラジカルが、前記エッチングに用いられる、方法。
【請求項2】
処理チャンバからSnO
2
残留物を洗浄するための方法であって、
炭化水素ガスおよび水素ガスをプラズマ処理システムに導入し、
前記プラズマ処理システムのプラズマ源によって生成されたプラズマを用いて、前記処理チャンバの表面から前記SnO
2
残留物をエッチングし、前記水素ガスを用いる前記SnO
2
残留物のエッチングはSnH
4
ガスを生成し、前記SnH
4
ガスは前記炭化水素ガスと反応して、揮発可能な有機スズ化合物を生成し、前記SnH
4
ガスからの前記有機スズ化合物の前記生成は、Sn粉末に分解されるために利用可能なSnH
4
の量を低減し、
前記有機スズ化合物を前記処理チャンバから排気すること、
を備え、
前記水素ガスに対する前記炭化水素ガスの流量の比率は、水素ガスに対して炭化水素ガス1%以上、且つ、水素ガスに対して炭化水素ガス60%未満であり、
前記炭化水素ガスは、容量結合プラズマ(CCP)源によってプラズマを生成するために前記処理チャンバに導入され、前記CCP源によって生成されたラジカルが、前記SnH
4
ガスと反応して前記有機スズ化合物を生成し、前記水素ガスは、プラズマを生成するために前記処理チャンバから遠隔にある誘導結合プラズマ(ICP)源に導入され、前記ICP源によって生成されたラジカルが、前記SnO
2
残留物をエッチングするのために前記処理チャンバに移送される、方法。
【請求項3】
処理チャンバからSnO
2
残留物を洗浄するための方法であって、
炭化水素ガスおよび水素ガスをプラズマ処理システムに導入し、
前記プラズマ処理システムのプラズマ源によって生成されたプラズマを用いて、前記処理チャンバの表面から前記SnO
2
残留物をエッチングし、前記水素ガスを用いる前記SnO
2
残留物のエッチングはSnH
4
ガスを生成し、前記SnH
4
ガスは前記炭化水素ガスと反応して、揮発可能な有機スズ化合物を生成し、前記SnH
4
ガスからの前記有機スズ化合物の前記生成は、Sn粉末に分解されるために利用可能なSnH
4
の量を低減し、
前記有機スズ化合物を前記処理チャンバから排気すること、
を備え、
前記水素ガスに対する前記炭化水素ガスの流量の比率は、水素ガスに対して炭化水素ガス1%以上、且つ、水素ガスに対して炭化水素ガス60%未満であり、
前記炭化水素ガスおよび前記水素ガスは、容量結合プラズマ(CCP)源によってプラスマを生成するために前記処理チャンバに導入され、前記方法は、さらに、
プラズマを生成するために誘導結合プラズマ(ICP)源にアルゴンガスまたはヘリウムガスを導入し、前記プラズマはラジカルを生成し、
前記SnO
2
残留物のエッチングのための前記炭化水素ガスおよび前記水素ガスの電離のために前記処理チャンバに前記ラジカルを移送すること、
を備える、方法。
【請求項4】
請求項1
から3のいずれか一項に記載の方法であって、前記炭化水素ガスは、前記SnH
4ガスのSn粉末への分解よりも動力学的に有利な、SnH
4ガスが前記有機スズ化合物を生成する反応経路を提供するよう構成されており、前記有機スズ化合物の生成は、前記SnO
2残留物をエッチングする間に前記処理チャンバの前記表面上にSn粉末が蒸着されるのを防ぐために前記処理チャンバから前記有機スズ化合物を吸引することを可能にする、方法。
【請求項5】
請求項1
から3のいずれか一項に記載の方法であって、前記有機スズ化合物を揮発させ、揮発した前記有機スズ化合物を前記処理チャンバから吸引することを可能にするために、前記処理チャンバの温度は65℃~300℃に維持される、方法。
【請求項6】
請求項1
から3のいずれか一項に記載の方法であって、前記炭化水素ガスとのSnH
4の反応により前記有機スズ化合物の生成を可能にするために、前記処理チャンバの圧力が、0.1Torr~10Torrに維持される、方法。
【請求項7】
請求項1
から3のいずれか一項に記載の方法であって、水素ガスに対して炭化水素ガス1%以上の前記比率は、前記炭化
水素ガスが前記SnH
4ガスと反応することを可能として、前記Sn粉末への分解に利用可能なSnH
4ガスを低減し、水素ガスに対して炭化水素ガス60%未満の前記比率は、炭素系ポリマの形成と、前記処理チャンバの前記表面上への前記炭素系ポリマの蒸着とを防止する、方法。
【請求項8】
プラズマ処理システムの処理チャンバの表面へのSn粉末の形成を低減させつつ、SnO
2層をパターニングするための方法であって、
SnO
2層を基板上に蒸着させ、エッチングマスクを前記SnO
2層に塗布し、
炭化水素ガスおよび水素ガスを前記プラズマ処理システムに導入し、
プラズマ源によって生成されたプラズマを用いて、前記エッチングマスクによって露出された部分の前記SnO
2層をエッチングし、前記SnO
2層のエッチングはSnH
4ガスを生成し、前記SnH
4ガスは前記炭化水素ガスと反応して、揮発可能な有機スズ化合物を生成し、前記SnH
4ガスからの前記有機スズ化合物の前記生成は、Sn粉末に分解されるために利用可能なSnH
4の量を低減し、
前記有機スズ化合物を前記処理チャンバから排気すること、
を備え、
前記水素ガスに対する前記炭化水素ガスの
流量の比率は、水素ガスに対して炭化水素ガス1%以上、且つ、水素ガスに対して炭化水素ガス60%未満であ
り、
前記炭化水素ガスおよび前記水素ガスは、容量結合プラズマ(CCP)源によってプラズマを生成するために前記処理チャンバに導入されると共に、誘導結合プラズマ(ICP)源によってプラズマを生成するために前記ICP源に導入され、前記CCP源および前記ICP源によって生成されたラジカルが、前記エッチングに用いられる、方法。
【請求項9】
プラズマ処理システムの処理チャンバの表面へのSn粉末の形成を低減させつつ、SnO
2
層をパターニングするための方法であって、
SnO
2
層を基板上に蒸着させ、エッチングマスクを前記SnO
2
層に塗布し、
炭化水素ガスおよび水素ガスを前記プラズマ処理システムに導入し、
プラズマ源によって生成されたプラズマを用いて、前記エッチングマスクによって露出された部分の前記SnO
2
層をエッチングし、前記SnO
2
層のエッチングはSnH
4
ガスを生成し、前記SnH
4
ガスは前記炭化水素ガスと反応して、揮発可能な有機スズ化合物を生成し、前記SnH
4
ガスからの前記有機スズ化合物の前記生成は、Sn粉末に分解されるために利用可能なSnH
4
の量を低減し、
前記有機スズ化合物を前記処理チャンバから排気すること、
を備え、
前記水素ガスに対する前記炭化水素ガスの流量の比率は、水素ガスに対して炭化水素ガス1%以上、且つ、水素ガスに対して炭化水素ガス60%未満であり、
前記炭化水素ガスは、容量結合プラズマ(CCP)源によってプラズマを生成するために前記処理チャンバに導入され、前記CCP源によって生成されたラジカルが、前記SnH
4
ガスと反応して前記有機スズ化合物を生成し、前記水素ガスは、プラズマを生成するために前記処理チャンバから遠隔にある誘導結合プラズマ(ICP)源に導入され、前記ICP源によって生成されたラジカルが、前記SnO
2
残留物をエッチングするのために前記処理チャンバに移送される、方法。
【請求項10】
プラズマ処理システムの処理チャンバの表面へのSn粉末の形成を低減させつつ、SnO
2
層をパターニングするための方法であって、
SnO
2
層を基板上に蒸着させ、エッチングマスクを前記SnO
2
層に塗布し、
炭化水素ガスおよび水素ガスを前記プラズマ処理システムに導入し、
プラズマ源によって生成されたプラズマを用いて、前記エッチングマスクによって露出された部分の前記SnO
2
層をエッチングし、前記SnO
2
層のエッチングはSnH
4
ガスを生成し、前記SnH
4
ガスは前記炭化水素ガスと反応して、揮発可能な有機スズ化合物を生成し、前記SnH
4
ガスからの前記有機スズ化合物の前記生成は、Sn粉末に分解されるために利用可能なSnH
4
の量を低減し、
前記有機スズ化合物を前記処理チャンバから排気すること、
を備え、
前記水素ガスに対する前記炭化水素ガスの流量の比率は、水素ガスに対して炭化水素ガス1%以上、且つ、水素ガスに対して炭化水素ガス60%未満であり、
前記炭化水素ガスおよび前記水素ガスは、容量結合プラズマ(CCP)源によってプラスマを生成するために前記処理チャンバに導入され、前記方法は、さらに、
プラズマを生成するために誘導結合プラズマ(ICP)源にアルゴンガスまたはヘリウムガスを導入し、前記プラズマはラジカルを生成し、
前記SnO
2
残留物のエッチングのための前記炭化水素ガスおよび前記水素ガスの電離のために前記処理チャンバに前記ラジカルを移送すること、
を備える、方法。
【請求項11】
請求項
8から10のいずれか一項に記載の方法であって、前記炭化水素ガスは、前記SnH
4ガスのSn粉末への分解よりも動力学的に有利な、SnH
4ガスが前記有機スズ化合物を生成する反応経路を提供するよう構成されており、前記有機スズ化合物の生成は、前記SnO
2層をエッチングする間に前記処理チャンバの前記表面上にスズ粉末が蒸着されるのを防ぐために前記処理チャンバから前記有機スズ化合物を吸引することを可能にする、方法。
【請求項12】
請求項
8から10のいずれか一項に記載の方法であって、水素ガスに対して炭化水素ガス1%以上の前記比率は、前記炭化
水素ガスが前記SnH
4ガスと反応することを可能として、前記Sn粉末への分解に利用可能なSnH
4ガスを低減し、水素ガスに対して炭化水素ガス60%未満の前記比率は、炭素系ポリマの形成と、前記処理チャンバの前記表面上への前記炭素系ポリマの蒸着とを防止する、方法。
【請求項13】
プラズマ処理システムであって、
水素ガス供給源および炭化水素ガス供給源と、
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内への水素ガス流量を制御するための第1マスフローコントローラ(MFC)、および、前記処理チャンバ内への炭化水素ガス流量を制御するための第2MFCと、
前記処理チャンバでプラズマを生成するための
容量結合プラズマ(CCP)源と、前記プラズマは、SnO
2をエッチングするためのものであり、
前記処理チャンバから遠隔にある誘導結合プラズマ(ICP)源と、
SnH
4が前記SnO
2のエッチング中に生成された時、前記SnH
4が炭化水素ガスと反応して、SnH
4のSn粉末への分解よりも動力学的に有利な反応で、揮発可能な有機スズ化合物を生成するように、前記処理チャンバ内への前記水素ガス流量に対する炭化水素ガス流量の比率が1%~60%になるよう、前記第1MFCおよび前記第2MFCを制御するためのコントローラと、を備え、前記有機スズ化合物の生成は、前記SnO
2のエッチングの間に前記処理チャンバの前記表面上にSn粉末が蒸着されるのを防ぐために前記処理チャンバからSnを吸引することが可能に
し、
前記炭化水素ガスおよび前記水素ガスは、前記CCP源によってプラズマを生成するために前記処理チャンバに導入されると共に、前記ICP源によってプラズマを生成するために前記ICP源に導入され、前記CCP源および前記ICP源によって生成されたラジカルが、前記エッチングに用いられる、プラズマ処理システム。
【請求項14】
プラズマ処理システムであって、
水素ガス供給源および炭化水素ガス供給源と、
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内への水素ガス流量を制御するための第1マスフローコントローラ(MFC)、および、前記処理チャンバ内への炭化水素ガス流量を制御するための第2MFCと、
前記処理チャンバでプラズマを生成するための容量結合プラズマ(CCP)源と、前記プラズマは、SnO
2
をエッチングするためのものであり、
前記処理チャンバから遠隔にある誘導結合プラズマ(ICP)源と、
SnH
4
が前記SnO
2
のエッチング中に生成された時、前記SnH
4
が炭化水素ガスと反応して、SnH
4
のSn粉末への分解よりも動力学的に有利な反応で、揮発可能な有機スズ化合物を生成するように、前記処理チャンバ内への前記水素ガス流量に対する炭化水素ガス流量の比率が1%~60%になるよう、前記第1MFCおよび前記第2MFCを制御するためのコントローラと、を備え、前記有機スズ化合物の生成は、前記SnO
2
のエッチングの間に前記処理チャンバの前記表面上にSn粉末が蒸着されるのを防ぐために前記処理チャンバからSnを吸引することが可能にし、
前記炭化水素ガスは、前記CCP源によってプラズマを生成するために前記処理チャンバに導入され、前記CCP源によって生成されたラジカルが、前記SnH
4
ガスと反応して前記有機スズ化合物を生成し、前記水素ガスは、プラズマを生成するために前記処理チャンバから遠隔にある前記ICP源に導入され、前記ICP源によって生成されたラジカルが、前記SnO
2
残留物をエッチングするのために前記処理チャンバに移送される、プラズマ処理システム。
【請求項15】
プラズマ処理システムであって、
水素ガス供給源および炭化水素ガス供給源と、
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内への水素ガス流量を制御するための第1マスフローコントローラ(MFC)、および、前記処理チャンバ内への炭化水素ガス流量を制御するための第2MFCと、
前記処理チャンバでプラズマを生成するための容量結合プラズマ(CCP)源と、前記プラズマは、SnO
2
をエッチングするためのものであり、
前記処理チャンバから遠隔にある誘導結合プラズマ(ICP)源と、
SnH
4
が前記SnO
2
のエッチング中に生成された時、前記SnH
4
が炭化水素ガスと反応して、SnH
4
のSn粉末への分解よりも動力学的に有利な反応で、揮発可能な有機スズ化合物を生成するように、前記処理チャンバ内への前記水素ガス流量に対する炭化水素ガス流量の比率が1%~60%になるよう、前記第1MFCおよび前記第2MFCを制御するためのコントローラと、を備え、前記有機スズ化合物の生成は、前記SnO
2
のエッチングの間に前記処理チャンバの前記表面上にSn粉末が蒸着されるのを防ぐために前記処理チャンバからSnを吸引することが可能にし、
前記炭化水素ガスおよび前記水素ガスは、前記処理チャンバに導入され、
プラズマを生成するために前記ICP源にアルゴンガスまたはヘリウムガスが導入され、前記プラズマはラジカルを生成し、
前記SnO
2
残留物のエッチングのための前記炭化水素ガスおよび前記水素ガスの電離のために前記処理チャンバに前記ラジカルが移送されること、
を備える、プラズマ処理システム。
【請求項16】
請求項
13から15のいずれか一項に記載のプラズマ処理システムであって、前記水素ガス流量に対する前記炭化水素ガスの流量の比率が1%以上であることは、SnH
4のスズ粉末への分解を低減しつつ、SnH
4と前記炭化水素ガスとの反応を可能にし、前記水素ガス流量に対する前記炭化水素ガスの流量の比率が60%以下であることは、炭素系ポリマの形成と、前記処理チャンバの表面上への前記炭素系ポリマの蒸着とを防止しつつ、SnH
4との前記反応に十分な炭化水素ガスを可能にする、プラズマ処理システム。
【請求項17】
請求項
13から15のいずれか一項に記載のプラズマ処理システムであって、さらに、
前記コントローラの制御により前記処理チャンバの温度を維持するための加熱素子と、
前記コントローラの制御により前記処理チャンバ内を低圧に維持するための真空ユニットと、
を備え、
前記コントローラは、前記有機スズ化合物を揮発させ、揮発した前記有機スズ化合物を前記処理チャンバから吸引することを可能にするために65℃~300℃の温度を維持するように、前記加熱素子を制御するよう構成され、前記コントローラは、前記炭化水素ガスとのSnH
4の反応を可能にして前記有機スズ化合物を生成するために前記処理チャンバの圧力を1Torr~10Torrに維持するように、前記真空ユニットを制御するよう構成されている、プラズマ処理システム。
【請求項18】
請求項
1から3のいずれか一項に記載の方法であって、前記炭化水素ガスは、CH
4
である、方法。
【請求項19】
請求項
8から10のいずれか一項に記載の方法であって、前記炭化水素ガスは、CH
4
である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体基板処理方法および装置ツールに関し、特に、プラズマ処理チャンバを洗浄するためなど、プラズマエッチング処理中に酸化スズ粉末形成を低減するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC)の製造は、しばしば、プラズマ処理工程を含む。プラズマ処理中に、基板(半導体、誘電体、または、金属基板など)が、真空処理チャンバ内でプラズマの存在下でエッチャントに曝される。結果として、基板は、プラズマによって材料をエッチングされるか、または、基板の露出面上に材料を蒸着される。プラズマ処理の反応物質および副生成物のほとんどは、真空ポンプによってチャンバから排出されるが、望ましくない粒子が、処理チャンバの壁および構成要素に付着することによってチャンバ内に残りうる。プラズマ処理工程の多数回の繰り返しを経て、プラズマ処理の1または複数の副生成物で構成された膜が成長しうる。膜の粒子が昇華して、処理化学物質に悪影響を及ぼしうるので、かかる膜の存在は、後続の処理工程を汚染しうる。さらに、膜の一部が、様々な表面から剥離して、ウエハ基板上の欠陥につながりうる。
【0003】
これに関連して、実施形態が生じる。
【発明の概要】
【0004】
本実施形態は、酸化スズ(IV)(SnO2、酸化第二スズとしても知られる)をプラズマ処理チャンバからエッチングおよび洗浄するための改良プラズマ化学に関する。本実施形態は、方法、装置、システム、デバイス、または、コンピュータ読み取り可能な媒体に記録されたコンピュータプログラムなど、種々の形態で実施できることを理解されたい。以下に、いくつかの実施形態を記載する。
【0005】
一実施形態において、処理チャンバからSnO2を洗浄するための方法が提供されている。方法は、炭化水素ガスおよび水素ガスをプラズマ処理システムに導入することを備えており、炭化水素ガスの流量および水素ガスの流量の比率は約1%~60%である。方法は、さらに、プラズマ処理システムのプラズマ源によって生成されたプラズマを用いて、処理チャンバの表面からSnO2残留物をエッチングすることを備えており、水素ガスを用いるSnO2残留物のエッチングは、スタンナン(SnH4)を生成し、SnH4ガスは、炭化水素ガスと反応して、揮発可能な有機スズ化合物を生成する。方法は、さらに、有機スズ化合物を処理チャンバから排気することを備えており、上記比率で炭化水素ガスを水素ガスと共に導入することは、SnH4ガスのSn粉末への分解の割合を低減させる。
【0006】
別の実施形態において、プラズマ処理システムの処理チャンバの表面へのスズ(Sn)粉末の形成を低減させつつ、SnO2層をパターニングするための方法が提供されている。方法は、SnO2層を基板上に蒸着させ、エッチングに耐えるためのエッチングマスクをSnO2層に塗布することを備える。方法は、さらに、炭化水素ガスおよび水素ガスをプラズマ処理システムに導入することを備えており、水素ガスに対する炭化水素ガスの流量の比率は約1%~60%である。方法は、さらに、プラズマ源によって生成されたプラズマを用いて、エッチングマスクによって露出された部分のSnO2層をエッチングすることを備えており、SnO2のエッチングはSnH4ガスを生成し、SnH4ガスは炭化水素ガスと反応して、揮発可能な有機スズ化合物を生成する。さらに、方法は、有機スズ化合物を処理チャンバから排気することを備えており、1%~60%の比率で炭化水素ガスを水素ガスと共に導入することは、SnH4のSn粉末への分解の割合を低減させる。
【0007】
別の実施形態において、プラズマ処理システムが提供されている。システムは、水素ガス供給源および炭化水素ガス供給源と、処理チャンバと、処理チャンバ内への水素ガス流量を制御するための第1マスフローコントローラ、および、処理チャンバ内への炭化水素ガス流量を制御するための第2MFCと、を備える。システムは、さらに、処理チャンバでプラズマを生成するためのプラズマ源を備えており、プラズマは、SnO2をエッチングするためのものである。さらに、プラズマ処理システムは、SnH4がSnO2のエッチング中に生成された時、SnH4が炭化水素ガスと反応して、SnH4のSn粉末への分解よりも動力学的に有利な反応で、揮発可能な有機スズ化合物を生成するように、処理チャンバ内への水素ガス流量に対する炭化水素ガス流量の比率が1%~60%になるよう、第1MFCおよび第2MFCを制御するためのコントローラを備えており、有機スズ化合物の生成は、SnO2のエッチングの間に処理チャンバの表面上にSn粉末が蒸着されるのを防ぐために、処理チャンバからSnを吸引することが可能にする。
【0008】
これらの利点およびその他の利点は、明細書全体および特許請求の範囲を読めば、当業者によって理解される。
【0009】
【図面の簡単な説明】
【0010】
実施形態は、添付の図面に関連して行う以下の説明を参照することによって最も良好に理解できる。
【0011】
【
図1A】一実施形態に従って、SnO
2の層が基板上に蒸着されている簡略化された処理チャンバを示す図。
【0012】
【
図1B】一実施形態に従って、処理チャンバの内面からSnO
2膜をプラズマエッチングすることを含む洗浄処理を示す図。
【0013】
【
図2A】処理チャンバからのSnO
2薄膜のエッチングおよび洗浄中にSn粉末の形成を低減する化学反応の実施形態を示す図。
【
図2B】処理チャンバからのSnO
2薄膜のエッチングおよび洗浄中にSn粉末の形成を低減する化学反応の実施形態を示す図。
【0014】
【
図3】一実施形態に従って、水素ガスおよび炭化水素ガスの混合物を用いて処理チャンバからSnO
2残留物の洗浄を実行するプラズマ処理システムを示す図。
【0015】
【
図4】一実施形態に従って、本明細書に記載のSnO
2残留物洗浄方法に基づいた誘導結合プラズマ(ICP)処理システムを示す概略図。
【0016】
【
図5】一実施形態に従って、処理チャンバの内壁からのSnO
2残留物の洗浄を受けているハイブリッドICP/CCPプラズマ処理システムを示す概略図。
【0017】
【
図6】一実施形態に従って、処理チャンバからのSnO
2残留物の洗浄のために、CCP構成を有すると共に遠隔ICP源に接続されているプラズマ処理システムを示す概略図。
【0018】
【
図7】一実施形態に従って、スタック内のSnO
2層のエッチングに用いられるプラズマ処理システムを示す概略図。
【0019】
【
図8A】様々な実施形態に従って、水素プラズマ化学物質を用いたSnO
2エッチングの結果とその結果として生じたSn粉末の形成とを示す図。
【
図8B】様々な実施形態に従って、水素プラズマ化学物質を用いたSnO
2エッチングの結果とその結果として生じたSn粉末の形成とを示す図。
【
図8C】様々な実施形態に従って、水素プラズマ化学物質を用いたSnO
2エッチングの結果とその結果として生じたSn粉末の形成とを示す図。
【
図8D】様々な実施形態に従って、水素プラズマ化学物質を用いたSnO
2エッチングの結果とその結果として生じたSn粉末の形成とを示す図。
【0020】
【
図9A】様々な実施形態に従って、水素および炭化水素プラズマ化学物質を用いたSnO
2エッチングおよびSn粉末形成の低減の実験結果を示す図。
【
図9B】様々な実施形態に従って、水素および炭化水素プラズマ化学物質を用いたSnO
2エッチングおよびSn粉末形成の低減の実験結果を示す図。
【
図9C】様々な実施形態に従って、水素および炭化水素プラズマ化学物質を用いたSnO
2エッチングおよびSn粉末形成の低減の実験結果を示す図。
【
図9D】様々な実施形態に従って、水素および炭化水素プラズマ化学物質を用いたSnO
2エッチングおよびSn粉末形成の低減の実験結果を示す図。
【0021】
【
図10】一実施形態に従って、基板上に膜(原子層蒸着(ALD)処理において形成される膜など)を蒸着するために用いられてよいリアクタシステムを示す図。
【0022】
【
図11】一実施形態に従って、4つの処理ステーションが提供されたマルチステーション処理ツールを示す上面図。
【0023】
【
図12】一実施形態に従って、入口ロードロックおよび出口ロードロックを備えたマルチステーション処理ツールの一実施形態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の詳細な説明は、例示の目的で多くの具体的な詳細事項を含むが、当業者であれば、以下の詳細事項への多くの変形および変更が本開示の範囲内にあることを理解する。したがって、以下に記載する本開示の態様は、この説明の後に続く特許請求の範囲の一般性を失うことなく、かつ、特許請求の範囲に限定を課すことなしに、説明されている。
【0025】
SnO2層(例えば、薄膜)は、様々な用途のために基板処理で用いられることが期待される。これらの一部は、極紫外線(EUV)ハードマスク(HM)として、パターニングのためのスペーサおよびマンドレルコアとして、ギャップ充填酸化物として、ハードマスクとして、ならびに、エッチング停止層として含まれる。SnO2膜は、多くの方法で基板上に蒸着されうる。ある化学蒸着(CVD)処理において、基板は、基板上にSnO2の層を形成するために、原子状酸素の存在下でスズを含む気相反応物質(例えば、Sn(CH3)4、SnCl4、Snなど)へ暴露される。
【0026】
SnO2の蒸着は、しばしば、チャンバの内壁、シャワーヘッド、電極、基板支持体、チャックなど、プラズマチャンバの内部表面上への残留膜の蓄積を引き起こす。SnO2膜は、プラズマチャンバの内面上で成長する時に、膜内の応力によって接着および堆積が不十分になることで、そこから剥離することによりウエハ基板を汚染する傾向がある。したがって、ウエハの汚染を防ぐために、処理チャンバの定期的な洗浄が必要になる。
【0027】
処理チャンバ内からSnO2膜を洗浄する一方法は、プラズマでSnO2膜をエッチングする方法であると考えられる。SnO2は、H2、Cl2、Br、HBr、BCl3、HI、および、I2など、様々な化学物質の中で容易にエッチングされる。しかしながら、利用されている多くの処理チャンバがアルミニウム構成要素で形成されているので、Cl2、Br、HBr、HI、および、I2などの化学物質は、アルミニウム構成要素の劣化を引き起こすことから避けられるべきである。したがって、H2プラズマ化学物質が、処理チャンバ(アルミニウム構成要素を備えたチャンバなど)の内壁および構成要素からSnO2膜をエッチングするために用いられることが考えられる。
【0028】
SnO2膜がH2化学物質でエッチングされると、揮発性のSnH4が生成され、リアクタから排出されうる。しかしながら、H2プラズマ化学物質を用いたSnO2膜のエッチングが粉末の形態のSn残留物を形成することも、本開示に関連してわかった。例えば、産業利用(例えば、カリフォルニア州フレモントのLam Research社によって製造されているStriker(登録商標)製品群)における典型的な圧力および温度範囲で、少なくない量のスズ粉末がSnH4の分解によって形成される。これは、リアクタが容量結合プラズマ(CCP)用に構成されているか、または、誘導結合プラズマ(ICP)源を備えるよう構成されているかに関わらず、当てはまる。形成されるスズ粉末は、後続の処理工程にとっての汚染源であり、処理動作の欠陥を引き起こしうる。
【0029】
本明細書に記載の実施形態は、スズ粉末の形成を低減またはほぼ排除しつつ、H2プラズマ化学物質でのSnO2のエッチングを可能にする。特に、SnH4のスズ粉末への分解よりも、SnH4から揮発性の有機スズ化合物を形成するために熱力学的および動力学的に有利な反応経路を提供する能力について、様々な炭化水素ガスをテストした。様々な炭化水素ガスが、この目的で提案されており、スズ粉末の形成を低減させるのに最適な効果を上げるH2に対する相対的比率も提案されている。
【0030】
様々な実施形態の上記の一般的な理解の下、様々な図面を参照しつつ、実施形態の詳細事項の例を記載する。1または複数の図において同様の符号を付した要素および/または構成要素は、一般に、同じ構成および/または機能を有することを意図されている。さらに、図は、縮尺通りに描かれていない場合があるが、新規の概念を図解および強調するよう意図されている。本実施形態は、これらの具体的な詳細事項の一部または全部がなくても実施可能であることが明らかである。また、本実施形態が不必要に不明瞭となることを避けるため、周知の処理動作の詳細な説明は省略した。
【0031】
本明細書で用いられているように、「有利な」反応は、反応が起こると考えられる条件(例えば、圧力、温度、反応物質の濃度、および、プラズマ処理チャンバのプラズマの存在)下で動力学的に有利な反応および/または熱力学的に有利な反応に言及するために用いられる。熱力学的に有利な反応は、反応の生成物が反応物質よりも低い自由エネルギを有する反応である。動力学的に有利な反応は、基板処理動作で典型的に用いられる時間枠内で反応速度が起こりうるほど反応の活性化エネルギが十分に低い反応である。本明細書で用いられているように、反応物質が第1または第2反応によって進行することが可能であり、第1反応が第2反応よりも有利であると述べた場合、これは、第1反応が、第2反応よりも、熱力学的に有利である(例えば、第2反応よりも負であるギブス自由エネルギを有する)可能性があり、および/または、動力学的に有利である(例えば、第1反応が、第2反応よりも大きい反応速度を有する)可能性があることを意味する。本明細書で用いられているように、より動力学的に有利な第1反応は、反応物質が、第2反応よりも第1反応によって進行する可能性が高いような第2反応よりも大きい速度で進行するようにプラズマ処理チャンバの条件によって誘起される反応である。
【0032】
図1Aは、一実施形態に従って、SnO
2層118が基板上に蒸着されている簡略化された処理チャンバ100を示している。処理チャンバ100は、壁102、チャック104、下側電極106、上側電極108、シャワーヘッド110、排気口112、ウエハ114、層116、および、蒸着処理によって形成されているSnO
2層118を備える。特定の実施形態において、SnO
2は、化学蒸着(CVD)、原子層蒸着(ALD)、などによって蒸着されてよい。CVD処理の一例において、スズ前駆体(例えば、SnCl
4)が、酸素の存在下でシャワーヘッド110を介して処理チャンバ100内に導入される。この例において、Snは、基板および酸素と反応して、SnO
2の層を形成する。副生成物(Cl
2など)および未反応のスズ前駆体が、排気口112を通してチャンバから排出されてよい。
【0033】
SnO2膜118が蒸着されている層116は、スピンオン炭素(SOC)、フォトレジスト(PR)、シリコン層、金属層、ガラスなどを含んでよい。SnO2の蒸着中、SnO2の膜が、壁102の内面、チャック104、下側電極106、上側電極108、および、シャワーヘッド110など、処理チャンバ100の内部表面上に形成される。SnO2蒸着処理の複数回の反復を通して、内部表面上に形成されるSnO2の膜は成長し、後続のプラズマ処理工程で汚染源になりうる。結果として、処理チャンバは、プラズマエッチングを用いた洗浄工程を定期的に受けることになる。
【0034】
図1Bは、一実施形態に従って、処理チャンバ100の内面からSnO
2膜120をプラズマエッチングすることを含む洗浄処理を示している。SnO
2膜120は、壁102の内面、下側電極106、上側電極108、および、シャワーヘッド110に付着している様子が図示されている。SnO
2膜120は、図示していない処理チャンバ内の構成要素上にも同様に形成されうる。
【0035】
プラズマ122が処理チャンバ100内で点火されると、プラズマ122は、SnO2膜120のエッチング124を開始する。H2プラズマ化学物質を用いる一実施形態では、以下の反応が、プラズマの存在下で起こる。
【0036】
SnO2+H2→SnH4 (1)
【0037】
SnH4は、プラズマ122を維持するために用いられる温度および圧力の範囲では揮発性化合物である。結果として、エッチング124処理の結果として生成されるSnH4の多くは、処理チャンバ100から排気される。しかしながら、SnH4ガスの一部は、以下の反応によって説明されるスズ粉末に分解する傾向がある。
【0038】
SnH4→Sn(粉末)+H2 (2)
【0039】
SnH4の分解は、形成されるプラズマ内により低い密度のラジカルおよびイオンを有するプラズマ処理レジームでは、より高い率で発生することが、本開示に関連して観察された。さらに、SnH4の分解は、より高い圧力を有する処理レジームでは、より高い率で発生することも観察された。洗浄処理によって形成されるSn粉末の量は、SnO2膜120の量または厚さと、プラズマ処理レジームに関連する様々なその他のパラメータ(温度、圧力、高周波(RF)電力の周波数、および、プラズマがCCPで生成されるかICPで生成されるか)と、に依存して変化する。したがって、洗浄処理によって形成されるSn粉末の量は、約0.001グラム以下から約10グラム以上までの間で変化しうる。Sn粉末が形成されると、チャンバから排気できないため、時間の掛かる洗浄処理を通して手作業で除去することになる。
【0040】
したがって、改良プラズマ化学物質が、処理チャンバの内面からのSnO
2膜のエッチングおよび洗浄を可能にしつつ、SnH
4のSn粉末への分解を低減すると期待される。
図2Aに示す一実施形態では、炭化水素ガスが、H
2と共に処理チャンバに導入される。炭化水素ガスは、SnH
4ガスが揮発性有機スズ化合物を形成するための動力学的に有利な反応経路を提供すると期待される。例えば、k
1の反応速度は、様々なパラメータおよび実施形態によって、約2から約10
12倍以上、または、約10
2から約10
9倍、または、約10
3から約10
6倍、k
2よりも高いと期待される。有機スズ化合物は揮発性であり、処理チャンバから排気される。SnH
4および炭化水素の反応の結果として、SnH
4は、Sn粉末への分解の程度が大幅に低減され、多くの状況下で検出不能になる。
【0041】
図2Aに関連する一実施形態において、H
2の流量に対する炭化水素の流量の比率は、約1%~約60%、または、約2%~10%、または、約5%~8%である。一実施形態において、処理チャンバの温度は、約65℃~約300℃に維持される。一実施形態において、供給されるRF電力は、約500W~約5000Wである。様々な実施形態において、RF電力の周波数は、約13.56MHzまたは約27MHzである。様々な実施形態で、27MHzが、水素ラジカルの濃度が高いためにエッチング速度が速い場合に用いられてよい。様々な実施形態において、チャンバの圧力は、約0.1Torr~約10Torrに設定されてよい。この範囲内の高い方の圧力は、比較的中央に配置されたエッチングチャンバ構成要素(電極など)でより高い効果を有すると期待され、一方、この範囲内の低い方の圧力は、チャンバの外方向に向かった位置のエッチング構成要素により良好に適していると期待される。さらに、H
2を伴った炭化水素のプラズマ化学物質は、ICP構成およびCCP構成においてスズ粉末形成を効果的に低減する。
【0042】
図2Bは、チャンバからのSnO
2薄膜のエッチングおよび洗浄処理中にスズ粉末の形成を低減する反応のさらなる実施形態を示している。
図2Bの実施形態では、CH
4が、プラズマの存在下でH
2と共にチャンバに導入される。ガス状の
SnH
4
が、チャンバの内面からのSnO
2膜のプラズマエッチングによって生成されると、CH
4が、SnH
4と反応して、Sn(CH
3)
4を生成する。Sn(CH
3)
4を形成するSnH
4およびCH
4の反応経路は、Sn粉末へのSnH
4の分解よりも動力学的に有利である。例えば、反応速度k
3は、様々なパラメータおよび実施形態によって、約2から約10
12倍以上、または、10
2から10
9倍、または、約10
3から10
6倍、反応速度k
2よりも高いと期待される。Sn(CH
3)
4は、チャンバ内で維持される温度および圧力で揮発性であり、チャンバから容易に排気される。結果として、CH
4およびH
2のプラズマ化学物質は、チャンバからのSnO
2膜のプラズマエッチングおよび洗浄処理中に形成されるスズ粉末の量を低減すると期待される。
【0043】
図2Bに関連する一実施形態において、H
2の流量に対するCH
4の流量の比率は、約1%~約60%、または、約2%~約10%、または、約5%~約8%である。一実施形態において、処理チャンバの温度は、約65℃~約300℃に維持される。一実施形態において、供給されるRF電力は、約500W~約5000Wである。様々な実施形態において、RF電力の周波数は、約13.56MHzまたは約27MHzである。様々な実施形態で、27MHzが、水素ラジカルの濃度が高いためにエッチング速度が速い場合に用いられてよい。様々な実施形態において、チャンバの圧力は、約0.1Torr~約10Torrに設定されてよい。この範囲内の高い方の圧力は、比較的中央に配置されたエッチングチャンバ構成要素(電極など)でより高い効果を有すると期待され、一方、この範囲内の低い方の圧力は、チャンバの外方向に向かった位置のエッチング構成要素により良好に適していると期待される。さらに、H
2を伴ったCH
4のプラズマ化学物質は、ICP構成およびCCP構成においてスズ粉末形成を効果的に低減する。
【0044】
図3は、一実施形態に従って、水素ガスおよび炭化水素ガスの混合物を用いて処理チャンバ100からSnO
2残留物120の洗浄を実行するプラズマ処理システム300を示す図である。H
2は、水素ガス供給源302によって供給され、一方、炭化水素ガスは、炭化水素ガス供給源304によって供給される。H
2および炭化水素ガスの流量は、それぞれ、MFC306および308によって制御され、両方のMFCが、コントローラ
311によって制御される。H
2ガスおよび炭化水素ガスの両方は、それぞれのラインを通ってガス供給マニホルド310へ流れ、ガス供給マニホルド310は、ガスを混合し、結果として得られたガス混合物をシャワーヘッド110へ供給する。シャワーヘッド110は、H
2および炭化水素ガスの混合物を複数の流入口を通して処理チャンバ100内へ分散させる。RF電源312および整合回路網314が、下側電極106へ電力を供給することが図示されている。上側電極108は、下側電極と平行に配置され、接地されている。プラズマ122が、上側電極108と下側電極106との間で点火され維持される。別の実施形態において、下側電極106が接地された状態で、RF電源312が、上側電極108に電力を供給してもよい。
【0045】
SnO2残留物120は、チャンバ100の表面に付着して被覆する様子が図示されている。前のSnO2蒸着処理中に、SnO2残留物120が、処理チャンバ100の表面上に、結晶層、マトリクス、管状結晶、または、非晶質などとして成長しうる。プラズマ122は、水素ガスを励起して、SnO2残留物120と反応させ、SnH4を生成する。また、プラズマ122は、炭化水素ガスがSnH4と反応して、揮発した有機スズ化合物を生成するように、炭化水素ガスを励起し、有機スズ化合物は、排気口112を通して処理チャンバ100から排気される。一実施形態では、CH4が、炭化水素ガスとして用いられる。CH4がプラズマ122に暴露されると、CH4
+、CH3、CH3
+、CH2
+、CH+、C+、CH5
+、など、反応性イオンおよびラジカルが生成される。これらのイオンおよびラジカルの種は、SnH4、CH4、および、互いに対して、反応性が高い。結果として生じる生成物の1つは、SnR4であり、ここで、Rは、CH3、C2H5、または、その他の炭素種である。さらに、CH4のラジカルおよびイオンの一部は、互いに反応して、処理チャンバ100に流れ込むCH4の濃度の関数である速度で、炭素系ポリマを形成する。これらの炭素系ポリマは、分子量が大きくなると、複数の動力学的要因および分子間相互作用の要因により、気化する傾向が減少する。
【0046】
したがって、水素ガス流量に対する炭化水素ガス流量の想定範囲は、十分な濃度のCH4ラジカルおよびイオンがSnH4と反応してSn粉末へのSnH4の分解を防ぐように想定される。一方、水素ガス流量に対する炭化水素ガス流量の比率は、SnO2残留物のエッチングに用いられる温度および圧力の範囲で炭素系ポリマがもはや気体状態にならない程度まで形成されないことを保証するのに十分低いことが想定される。経験的に決定されたように、この範囲は、水素流量に対する炭化水素流量の比率が、約1%~約60%、または、約2%~10%の間、または、約7%、であることがわかっている。
【0047】
特定の実施形態では、H2流量に対する炭化水素流量の比率が60%より高くてもよい(100%(例えば、炭化水素のみ)など)。しかしながら、炭化水素の比率が上がるにつれて、炭素系ポリマが形成された後に蒸着または凝結する可能性が増大する。一方、水素ガス流量に対する炭化水素ガス流量の比率が1%未満であるような、より小さい炭化水素ガス流量が用いられてもよい。しかしながら、水素ガス流量に対する炭化水素ガス流量の比率が約1%未満である場合には炭化水素反応物質が不十分であり、その結果、或る程度の量のSnH4がSn粉末へ分解することがわかっている。さらに、SnH4がSn粉末に分解すると、想定されたプラズマ条件で炭化水素ガスと反応することがもはやなくなる。したがって、Sn粉末は、処理チャンバから手作業で洗浄する必要があり、処理チャンバに用いられる典型的な温度および圧力の範囲では揮発させることができない。
【0048】
図4は、一実施形態に従って、本明細書に記載のSnO
2残留物洗浄方法に基づいた誘導結合プラズマ(ICP)処理システム400を示す概略図である。ICP処理システム400は、壁408によって隔てられたICP源401および処理チャンバ100を備えることが図示されている。ICP源401は、チャンバ壁406および誘電体窓404によって形成されている。ガス流入口(図示せず)が、ICP源401のチャンバ内に水素および炭化水素ガスの混合物を導入する。ICP源401は、さらに、誘導源402を備えており、誘導源402は、いくつかの実施形態において、誘電体窓404に配置されたコイルの形態を取る。誘導源402は、RF電源403によって給電され、ICP源401のチャンバ内に存在するガスをプラズマ122へ励起する時間変動磁場を生成する。ICP源401は、一般に、円筒形、ドーム形、円錐形、または、誘導源402がICP源401のチャンバにプラズマを誘導して維持することを可能にする何らかの他の形状であってよい。いくつかの実施形態において、チャンバ壁406は、図に示すように接地されているが、他の実施形態においては、誘導源402の一部が接地される。
【0049】
プラズマ122の結果として、水素および炭化水素のラジカルおよびイオンが生成される。いくつかの構成において、プラズマは、水素ガスからH、H+、および、H-を生成する。CH4が炭化水素ガスとして用いられる場合、プラズマは、CH4
+、CH3、CH3
+、CH2
+、CH+、C+、CH5
+、ならびに、その他のラジカルおよびイオンを生成する。これらのラジカルおよびイオンは、壁408の開口部410を通して処理チャンバ100に導入される。水素含有ラジカルおよびイオンは、処理チャンバ100中に拡散し、SnO2残留物120と反応してSnH4を形成し、SnH4の巨視的な効果は、SnO2残留物120のエッチング124である。SnH4がエッチング124中に生成されると、炭素含有ラジカルおよびイオンが処理チャンバ100内に存在して、SnH4と反応することで、Sn(CH3)4、または、Sn2(CH3)6、または、SnR4などの有機スズ化合物を形成し、ここで、Rは、水素またはアルキル基である。
【0050】
単純なアルキル基(メチル、エチルなど)を備えた有機スズは、揮発したままであり、エッチング124に用いられる処理チャンバ100の温度および圧力では蒸着しない。しかしながら、有機スズ化合物のアルキル基が、特定の長さ、分子量、および、分岐に到達すると、有機スズ化合物は、揮発性が低くなる。結果として、水素に対する炭化水素の流量は、SnH4との反応に十分な炭化水素を供給しつつ、有機スズ化合物の蒸着を低減するために、約1%~約60%の間で効果的であるとわかる。さらに、効果的なICP構成は、約40℃~約500℃または約100℃~約400℃の範囲または約150℃~約180℃または約160℃の温度範囲と、0.1Torr~約10Torrまたは約1Torr~約8Torrまたは約7Torrの圧力範囲と、約13.56、27、または、35MHzで約50W~約5000Wまたは約100W~約4000Wまたは約250W~約1000Wの電力と、を有することが、本実施形態に関連してわかった。
【0051】
図4に示す実施形態は、ICP源401が複数の開口部410を介して処理チャンバに接続されている実施形態であるが、ICP源401が1または複数の相互接続チャネルを介して処理チャンバ100内に水素および炭化水素のラジカルおよびイオンを供給できる別の実施形態も想定される。別の実施形態において、ICP源401は、遠隔プラズマ源であることが想定され、
図4の実施形態のように処理チャンバ100に隣接する必要はない。
【0052】
図5は、一実施形態に従って、処理チャンバ100の内壁102からのSnO
2残留物120の洗浄を受けているハイブリッドICP/CCPプラズマ処理システム500を示す概略図である。水素および炭化水素ガスが、MFC306および308とガス供給マニホルド310とを介して水素ガス供給源302および炭化水素ガス供給源304によって供給される。本実施形態において、プラズマ122は、CCP構成およびICP構成の両方を用いて生成される。RF電源
312が下側電極106に電力供給しており、一方、上側電極108は接地されている。それにより、電場が、下側電極106と上側電極108との間に生成され、炭化水素および水素ガスを励起して、プラズマ122を形成する。プラズマ122は、誘導源402によって供給される磁場によってさらに励起され、これは、プラズマ122の密度および位置を維持および制御するのに役立つ。図の構成において、誘導源402は、コイルの形状であり、コイルの一端または両端で接地されている。
【0053】
図6は、一実施形態に従って、処理チャンバ100からのSnO
2残留物120の洗浄のために、CCP構成を有すると共に遠隔ICP源601に接続されているプラズマ処理システム600を示す概略図である。水素ガスが遠隔ICP源601に供給され、そこで、磁場によって励起される。励起されると、フリーラジカルおよびイオンが、SnO
2残留物のエッチング124のために処理チャンバ100に流される。炭化水素ガスが、処理チャンバに供給され、プラズマ122になるよう励起され、SnO
2残留物120のエッチングの結果として生成されたSnH
4と反応する。結果として、SnO
2残留物120は、水素ガスを活性化させるための遠隔ICP源601と、炭化水素源を活性化させるためのCCPとを用いて、Sn粉末の形成することなしに(例えば、または、かかる形成を効果的に低減しつつ)、処理チャンバ100から洗浄されうる。特定の実施形態において、遠隔ICP源601は、炭化水素ガスを活性化(例えば、励起、電離、解離、フリーラジカル生成、など)するために用いられてもよく、一方、CCPは、水素ガスを活性化するために用いられてもよい。
【0054】
処理チャンバに接続されている遠隔ICP源を有する別の実施形態において、Arおよび/またはHeガスが、ICP源に導入されることが想定され、一方、炭化水素および水素ガスが、処理チャンバに導入される。プラズマが遠隔ICP源においてArおよび/またはHeガスから生成されると、ArおよびHeイオンは、炭化水素および水素ガスを励起するために処理チャンバへ供給される。ArおよびHeイオンは、反応性が高く、炭化水素および水素のイオンおよびラジカルを処理チャンバ内で一度に生成する。水素イオンおよびラジカルは、SnO2残留物と反応して、SnH4を形成し、炭化水素ラジカルおよびイオンは、SnH4と反応して、システムから排気される揮発性有機スズ化合物を形成する。結果として、水素および炭化水素ガスからプラズマを必ずしも形成することなしに、水素および炭化水素ガスを用いてSnO2残留物をシステムからエッチングおよび洗浄できる実施形態が想定される。
【0055】
図7は、スタック701内のSnO
2層のエッチング702に用いられるプラズマ処理システム700を示す概略図である。エッチング中のスタック701は、基板(ウエハなど)と、フォトレジスト、スピンオン炭素、二酸化シリコン、金属層、有機金属層、または、何らかの他の材料を含みうる1または複数の層と、を備えることが図示されている。スタック701は、エッチングされているSnO
2の層と、エッチング702に耐えるためのレジストと、を備えることも図示されている。SnO
2がプラズマ122によってエッチングされている時、SnH
4が形成され、Sn粉末に分解して、基板と、処理チャンバ100のその他の表面との上に蒸着されうる。Sn粉末が、SnH
4の分解によって形成されることを許容された場合、SnO
2層のパターニングにおける欠陥が起こりうる。しかしながら、炭化水素ガスも、処理チャンバ100に供給されているので、SnH
4は、炭化水素イオンおよびラジカルと反応して、処理チャンバから排気するための揮発有機スズ化合物を形成する。結果として、SnH
4のSn粉末への分解が低減される。したがって、スタック701のSnO
2層をエッチングする間に、Sn粉末の形成がその場で低減されうることも想定される。
【0056】
図8A~
図8Dは、様々な実施形態に従って、水素プラズマ化学物質を用いたSnO
2エッチングの結果とその結果として生じたSn粉末の形成とを示す。
図8Aは、例えば、CCPプラズマおよび水素化学物質を用いたSnO
2膜エッチング中に処理チャンバ内に配置されたウエハを示している。ウエハの右側は、蓄積したSn粉末を有することが示されているが、ウエハの左側は、ウエハのSn粉末が拭き取られていることを示している。
図8Bは、同様に、SnO
2薄膜が遠隔ICP源および水素化学物質を用いてエッチングされた時のSn粉末の形成を示しているが、
図8Cは、拭き取り後の同じウエハを示している。
図8Dは、
図8BのウエハのX線スキャンを図示しており、このプラズマ処理チャンバについて0.5Torr~6Torrの範囲でSn粉末が形成されることを示している。さらに、指定された200mTorr~10Torrの圧力範囲および40℃~400℃の温度範囲の全体で、このプラズマ処理チャンバでのSnO
2エッチングの結果として、Sn粉末が形成されることがわかった。
【0057】
図9A~
図9Dは、様々な実施形態に従って、水素および炭化水素プラズマ化学物質を用いたSnO
2エッチングおよびSn粉末形成の低減の実験結果を示す。
図9Aでは、400オングストロームの元々のSnO
2厚さを有するウエハが、CCPプラズマによって水素およびCH
4化学物質を用いて、約40オングストロームの厚さに達するまでエッチングされている。ウエハの右側は、エッチングされたままであり、一方、ウエハの左側は、拭き取り後であり、ウエハ上に形成された観察可能なSn粉末がないほどに、Sn粉末の形成が、水素およびCH
4化学物質を用いて低減されたことを示している。
図9Bは、水素およびCH
4化学物質でのエッチング前後のウエハのX線スキャンを示しており、均一なSnO
2厚さと、ウエハ上にSn粉末の形成がないことを裏づけている。
【0058】
図9Cは、360秒間にわたって水素およびCH
4化学物質と共に遠隔ICP源を用いてエッチングされたままのウエハを示す。
図9Aに示したエッチングされたままのウエハと同様に、水素およびCH
4化学物質でのICPモードエッチングでも、360秒間の処理後に観察可能なSn粉末の形成が起きていない。
図9Dは、0、5、60、180、および、360秒後のエッチングされたままのウエハの厚さのX線スキャンを示す。エッチングの前、ウエハは、約250オングストロームのSnO
2厚さを有する。360秒間の処理で、SnO
2は、観察可能なSn粉末を残さずにエッチングされることが示されている。いくつかの実施形態において、水素流量に対するCH
4流量の比を最適化することによって、かつ、遠隔ICP源から処理チャンバへのCH
4および水素のイオンおよびラジカルの流れと、処理チャンバの温度および圧力の範囲とを最適化することによって、遠隔ICP源からの高密度のプラズマで、360秒未満の処理時間を達成できる。
【0059】
図8A~
図8C、
図9A、および、
図9Bに示したウエハは、シーリングライトの反射による垂直方向の白飛びを有することに注意されたい。白飛びは、図に示したウエハの構造を示すものではない。
【0060】
図10は、基板上に膜(原子層蒸着(ALD)処理において形成される膜など)を蒸着するために用いられてよいリアクタシステム1000を示す。これらのリアクタは、2以上のヒータを利用してよく、一般的な端末構成が、均一性またはカスタム設定のために温度を制御するために、このリアクタ例で用いられてよい。より具体的には、
図10は、ウエハ1001を処理するために用いられる基板処理システム1000を示す。システムは、下側チャンバ部分1002bおよび上側チャンバ部分1002aを有するチャンバ1002を備える。中心柱が、ペデスタル1040を支持するよう構成されており、ペデスタル1040は、一実施形態において、給電される電極である。ペデスタル1040は、整合回路網1006を介して電源1004に電気接続される。電源は、制御モジュール1010(例えば、コントローラ
311)によって制御される。制御モジュール1010は、処理入力/制御1008を実行することによって、基板処理システム1000を動作させるよう構成されている。処理入力/制御1008は、ウエハ1001上に膜を蒸着または形成などするために、電力レベル、タイミングパラメータ、処理ガス、ウエハ1001の機械的移動などの処理レシピを備えてよい。
【0061】
中央柱は、リフトピン(図示せず)も備えており、各リフトピンは、リフトピン制御1022によって制御される通りに、対応するリフトピン作動リング1020によって作動される。リフトピンは、エンドエフェクタがウエハを持ち上げ、エンドエフェクタによって配置された後にウエハ1001を降ろすことを可能にするように、ペデスタル1040からウエハ1001を持ち上げるために用いられる。基板処理システム1000は、さらに、処理ガス1014(例えば、設備からのガス化学物質供給)に接続されたガス供給マニホルド1012を備える。実行される処理に応じて、制御モジュール1010は、ガス供給マニホルド1012を通る処理ガス1014の供給を制御する。次いで、選択されたガスは、シャワーヘッド1050に流され、ウエハ1001に対向するシャワーヘッド1050面とペデスタル1040上にあるウエハ1001との間に規定された空間に分散される。ALD処理において、ガスは、吸収のためまたは吸収した反応物質との反応のために選択された反応物質でありうる。
【0062】
さらに、処理ガスは、予混合されてもされなくてもよい。処理の蒸着およびプラズマ処理の段階中に、正確なガスが供給されることを保証するために、適切なバルブ操作およびマスフロー制御メカニズムが利用されてよい。処理ガスは、流出口を介してチャンバから出る。真空ポンプ(例えば、1または2段の機械的乾式ポンプおよび/またはターボ分子ポンプなど)が、処理ガスを引き出し、スロットルバルブまたは振り子バルブなどの閉ループ制御された流量制限装置によってリアクタ内の適切な低圧を維持する。
【0063】
ペデスタル1040の外側領域を取り囲むキャリアリング1200も図示されている。キャリアリング1200は、ペデスタル1040の中央のウエハ支持領域から一段下がったキャリアリング支持領域上に載るように構成されている。キャリアリングは、そのディスク構造の外縁側(例えば、外径)と、ウエハ1001の載置される場所に最も近いそのディスク構造のウエハエッジ側(例えば、内径)と、を備える。キャリアリングのウエハ縁部側は、キャリアリング1200がスパイダフォーク1080によって持ち上げられた時に、ウエハ1001を持ち上げるよう構成されている複数の接触支持構造を備える。したがって、キャリアリング1200は、ウエハ1001と共に持ち上げられ、例えば、マルチステーションシステムにおける別のステーションに向かって回転されうる。別の実施形態において、チャンバは、シングルステーションチャンバである。
【0064】
図11は、4つの処理ステーションが提供されたマルチステーション処理ツールの上面図を示す。この上面図は、(例えば、上側チャンバ部分1002aを図示のために取り除いた)下側チャンバ部分1002bの図であり、ここで、4つのステーションは、スパイダフォーク1226によってアクセスされる。各スパイダフォークすなわちフォークは、第1および第2アームを備えており、各アームは、ペデスタル1040の各側の一部の周りに配置されている。この図において、スパイダフォーク1226は、キャリアリング1200の下方にあることを示すために、点線で描かれている。スパイダフォーク1226は、係合/回転メカニズム1220を利用し、さらなるプラズマ処理、処置、および/または、膜蒸着をそれぞれのウエハ1001に行うことができるように、ステーションから(すなわち、キャリアリング1200の下面から)同時にキャリアリング1200を持ち上げ、次いで、次の位置に(キャリアリングの内の少なくとも1つがウエハ1001を支持する場所に)キャリアフォーカスリング1200を降ろす前に少なくとも1または複数のステーションを回転させるよう構成されている。
【0065】
図12は、入口ロードロック1302および出口ロードロック1304を備えたマルチステーション処理ツール1300の一実施形態を示す概略図である。大気圧下にあるロボット1306が、ポッド1308を通してロードされたカセットから大気ポート1310を介して入口ロードロック1302内に基板を移動させるよう構成されている。入口ロードロック1302は、大気ポート1310が閉じられた時に、入口ロードロック1302がポンプダウンされうるように、真空源(図示せず)に接続されている。入口ロードロック1302は、処理チャンバ1002bと結合されるチャンバ移動ポート1316も備える。したがって、チャンバ移動
ポート1316が開かれると、別のロボット(図示せず)が、処理に向けて、入口ロードロック1302から第1処理ステーションのペデスタル1040へ基板を移動させてよい。
【0066】
図の処理チャンバ1002bは、
図12に示した実施形態において、1から4までの番号を付した4つの処理ステーションを備える。いくつかの実施形態において、処理チャンバ1002bは、基板が、真空の中断および/または空気への暴露を経験することなしに、処理ステーション間でキャリアリング1200を用いて移動されうるように、低圧環境を維持するよう構成されてよい。
図12に示す各処理ステーションは、処理ステーション基板ホルダ(ステーション1用が1318と示されている)および処理ガス供給ライン流入口を備える。
【0067】
図12は、処理チャンバ1002b内で基板を移動させるためのスパイダフォーク1226も図示している。スパイダフォーク1226は、回転して、ステーション間のウエハの移動を可能にする。移動は、スパイダフォーク1226が、キャリアリング1200を外側底面から持ち上げることでウエハを持ち上げるのを可能にすることによって行われ、ウエハおよびキャリアを一緒に次のステーションまで回転させる。一構成において、スパイダフォーク1226は、処理中に高レベルの加熱に耐えるために、セラミック材料から製造される。
【0068】
処理ガスの供給を制御するためのコンピュータプログラムは、任意の従来のコンピュータ読み取り可能プログラミング言語、例えば、アセンブリ言語、C、C++、パスカル、フォートランなどで書くことができる。コンパイルされたオブジェクトコードまたはスクリプトが、プラグラム内に特定されたタスクを実行するために、プロセッサによって実行される。
【0069】
システムソフトウェアは、多くの異なる方法で設計または構成されうる。例えば、フロー制御処理を実行するのに必要な処理チャンバ構成要素の動作を制御するために、様々な処理チャンバサブルーチンまたは制御オブジェクトが書かれてよい。
【0070】
上述の実施形態を念頭に置いて、本実施形態は、コンピュータシステムに格納されたデータを含め、コンピュータに実装された様々な動作を利用できることを理解されたい。これらの動作は、物理量の物理操作を必要とするものである。本実施形態の一部を形成する本明細書で説明した動作はいずれも、有用な機械動作である。本実施形態は、さらに、これらの動作を実行するためのデバイスまたは装置に関する。装置は、専用コンピュータなど、必要とされる目的向けに特別に構築されてよい。専用コンピュータとして規定された場合、コンピュータは、特殊目的に含まれない他の処理、プログラム実行、または、ルーチンも実行しつつ、特殊目的のために動作することができる。あるいは、動作は、コンピュータメモリ、キャッシュに格納されたまたはネットワークを介して取得された1または複数のコンピュータプログラムによって選択的にアクティベートまたは構成された汎用コンピュータで処理されてもよい。データがネットワークを介して取得されると、そのデータは、ネットワーク(例えば、コンピューティングリソースのクラウド)上の他のコンピュータによって処理されてもよい。
【0071】
1または複数実施形態は、コンピュータ読み取り可能な媒体上にコンピュータ読み取り可能なコードとして製造されてもよい。コンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピュータシステムによって読み出し可能であるようにデータを格納できる任意のデータ記憶装置である。コンピュータ読み取り可能な媒体の例としては、ハードドライブ、ネットワーク接続ストレージ(NAS)、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、および、その他の光学および非光学式のデータ記憶装置が挙げられる。コンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピュータ読み取り可能なコードが分散的に格納および実行されるように、ネットワーク接続されたコンピュータシステム上に分散されたコンピュータ読み取り可能な有形の媒体を含みうる。
【0072】
方法の動作は特定の順番で記載されているが、オーバーレイ動作の処理が望ましく実行される限りは、他のハウスキーピング動作が動作の合間に実行されてもよいし、動作が若干異なる時間に実行されるように調整されてもよいし、処理に関連した様々な間隔で処理動作が起きることを許容するシステムに分散されてもよいことを理解されたい。
【0073】
理解を深めるために、本実施形態について、ある程度詳しく説明したが、開示した実施形態の範囲内でいくらかの変更および変形を行ってもよいことは明らかである。本発明の処理、システム、および、装置を実施する多くの他の方法が存在することに注意されたい。したがって、本実施形態は、例示的なものであって、限定的なものではないとみなされ、実施形態は、本明細書に示した詳細に限定されない。