IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アプライド マテリアルズ インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-マルチカソード堆積システム及び方法 図1
  • 特許-マルチカソード堆積システム及び方法 図2
  • 特許-マルチカソード堆積システム及び方法 図3
  • 特許-マルチカソード堆積システム及び方法 図4
  • 特許-マルチカソード堆積システム及び方法 図5
  • 特許-マルチカソード堆積システム及び方法 図6A
  • 特許-マルチカソード堆積システム及び方法 図6B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】マルチカソード堆積システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
C23C14/34 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022534138
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 US2020063235
(87)【国際公開番号】W WO2021113590
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】62/944,103
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/110,518
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バート, サンジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジンダル, ビブー
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/226683(WO,A1)
【文献】特表2019-519910(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103168(WO,A1)
【文献】特開2005-026396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理気相堆積(PVD)チャンバであって、
複数のカソードアセンブリ;
基板を支持するように構成された回転可能なペデスタルであって、セラミック、及び先細りになっていない平坦な非凹状のエッジを備えている、ペデスタル;
前記ペデスタルの前記エッジに隣接した内側堆積リング
前記内側堆積リングに隣接した外側堆積リング;及び
シャフトに結合されたモータであって、前記回転可能なペデスタルを、毎分10~20の範囲の回転数(RPM)、0.10~15RPM/秒の範囲の回転加速度、及び0.10~0.15RPM/秒の範囲の減速度で回転させるように構成されたモータ
を含み、
前記内側堆積リング及び前記外側堆積リングの一部が重なり合い、前記内側堆積リングが、前記回転可能なペデスタルとともに回転するように構成され、前記外側堆積リングが、静止状態であり回転しないように構成される、物理気相堆積(PVD)チャンバ。
【請求項2】
前記外側堆積リングの一部と重なり合うカバーリングをさらに含む、請求項に記載のPVDチャンバ。
【請求項3】
前記内側堆積リングが、該内側堆積リングから下方に延びる突出リムを含む、請求項に記載のPVDチャンバ。
【請求項4】
前記外側堆積リングが、該外側堆積リングから上方に延びる突出リムを含む、請求項に記載のPVDチャンバ。
【請求項5】
前記外側堆積リングから上方に延びる前記突出リムと前記内側堆積リングから下方に延びる前記突出リムとが重なり合う、請求項に記載のPVDチャンバ。
【請求項6】
材料層を堆積させる方法であって、
請求項1に記載のPVDチャンバ内に、基板を配置すること
前記基板上に材料層を堆積させること;及び
前記回転可能なペデスタルを、毎分10~20の範囲の回転数(RPM)、0.10~15RPM/秒の範囲の回転加速度、及び0.10~0.15RPM/秒の範囲の減速度で回転させること
を含む、方法。
【請求項7】
前記基板がEUVマスクブランクレチクルを含み、前記方法が、キャリアベース上にEUVマスクブランクレチクルを配置し、かつ前記回転可能なペデスタル上に前記キャリアベースを配置することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記内側堆積リングを前記回転可能なペデスタルとともに回転させ、かつ外側堆積リングを静止状態に維持することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、基板処理システムに関し、より詳細には、処理中の粒子を低減し、温度を制御するための1つ以上の特徴部を有するマルチカソードアセンブリ(マルチカソード)を備えた堆積システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物理気相堆積(PVD)は、半導体集積回路の製造における金属及び関連材料の堆積に用いられる。PVDの使用は、ビア又は他の垂直相互接続構造などの高アスペクト比の孔の側壁上に金属層を堆積させるだけでなく、極端紫外線(EUV)マスクブランクの製造にまで拡大している。EUVマスクブランクの製造では、粒子が最終製品の特性に悪影響を与えることから、粒子の生成を最小限に抑えることが望ましい。
【0003】
EUVマスクブランクの製造中、EUVマスクブランクレチクルは、PVD処理チャンバなどの処理チャンバ内に輸送される。EUVマスクブランクレチクルは、PVD処理チャンバの回転可能なペデスタル上に配置されたキャリアベースの上に配置される。キャリアベースの製造及び洗浄中にキャリアベースには応力がかかるため、キャリアベースの底面全体にわたり0.01インチ未満の平坦度を得ることは困難である。以下にさらに説明するように、PVD処理チャンバは、カバーリングと回転可能なペデスタルとの間の間隙を橋渡しして、堆積材料がそれらの間に入って粒子を生成させることを防ぐ、堆積リングを含む。キャリアベースが回転可能なペデスタル上に配置されると、キャリアベースの外側のエッジは堆積リングと重なり合う。キャリアベースの底面と堆積リングの上面との間には、0.01インチ未満の間隙が存在する。キャリアベースの平坦度に偏差があると、隣接する部品間に摩擦が生じる。摩擦は粒子の生成を発生させるだけでなく、振動も発生させる。振動は、キャリア上のその適所からレチクルをずらす可能性がある。
【0004】
PVDチャンバの設計は進歩しているが、PVD処理チャンバ内の粒子などの欠陥源を低減することが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
第1の実施形態は、複数のカソードアセンブリ;基板を支持するように構成された回転可能なペデスタルであって、エッジを備えている、ペデスタル;ペデスタルのエッジの該エッジに隣接した内側堆積リング;及び、内側堆積リングに隣接した外側堆積リングを含む、物理気相堆積(PVD)チャンバに関する。
【0006】
第2の実施形態によれば、物理気相堆積(PVD)チャンバは、複数のカソードアセンブリ;基板を支持するように構成された回転可能なペデスタルであって、エッジを備えている、ペデスタル;ペデスタルのエッジの該エッジに隣接した内側堆積リング;該内側堆積リングに隣接した外側堆積リング;及び、回転可能なペデスタルを、毎分10~20の範囲の回転数(RPM)、0.10~15RPM/秒の範囲の回転加速度、及び0.10~0.15RPM/秒の範囲の減速で回転させるためにシャフトに結合されたモータを含む。
【0007】
第3の実施形態によれば、材料を堆積させる方法は、複数のカソードアセンブリ;基板を支持するように構成された回転可能なペデスタルであって、エッジを備えている、ペデスタル;ペデスタルのエッジの該エッジに隣接した内側堆積リング;該内側堆積リングに隣接した外側堆積リングを含む、PVDチャンバ内に基板を配置すること、及び基板上に材料層を堆積させることを含む。
【0008】
本開示の上記の特徴を詳細に理解できるように、その一部が添付の図面に示されている実施形態を参照することにより、上に簡単に要約されている本開示のより詳細な説明を得ることができる。しかしながら、本開示は、他の同等に有効な実施形態も許容しうることから、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】PVD堆積チャンバの側面図
図2】1つ以上の実施形態によるPVD堆積チャンバの側面図
図3】従来技術の堆積リングを示す、図2に示されるPVDチャンバの一部の拡大側面図
図4】本開示の一実施形態による堆積リングアセンブリを示す、図2に示されるPVDチャンバの一部の拡大等角図
図5】本開示の1つ以上の実施形態による堆積リングアセンブリを示す拡大側面図
図6A】本開示の一実施形態による、堆積リングアセンブリ及び回転可能なペデスタルの側面図
図6B】従来技術の堆積リング及び回転可能なペデスタルの側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本開示が、以下の説明に記載される構成又はプロセスステップの詳細に限定されないことが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態も可能であり、さまざまな方法で実施又は実行することができる。
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「基板」という用語は、処理が行われる表面又は表面の一部を指すために用いられる。基板に対しての言及は、文脈上他のことが明示されない限り、基板の一部分のみを指すこともありうることもまた、当業者に理解されよう。さらには、基板上への堆積についての言及は、むき出しの基板と、1つ以上の膜又は特徴部がその上に堆積又は形成されている基板の両方を意味しうる。
【0012】
本明細書で用いられる「基板」とは、その上で製造処理中に膜処理が行われる、任意の基板表面又は基板上に形成された材料表面を指す。例えば、処理が実施されうる基板表面は、用途に応じて、ケイ素、酸化ケイ素、ストレインドシリコン、シリコンオンインシュレータ(SOI)、炭素をドープした酸化ケイ素、アモルファスシリコン、ドープしたケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイアなどの材料、並びに、金属、金属窒化物、金属合金、及び他の導電材料など、他の任意の材料を含む。基板には半導体ウエハが含まれるが、これに限定されない。基板は、基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化、アニール、UV硬化、電子ビーム硬化、及び/又はベークするための前処理プロセスに曝されてもよい。基板自体の表面に直接膜処理することに加えて、本開示では、開示される任意の膜処理工程は、以下により詳細に開示されるように、基板上に形成された下地層にも行うことができ、「基板表面」という用語は、文脈が示すように、こうした下地層を含むことが意図されている。したがって、例えば、膜/層又は部分的な膜/層が基板表面上に堆積されている場合には、新たに堆積された膜/層の露出面が基板表面となる。
【0013】
本明細書で用いられる「水平」という用語は、その配向性とは無関係に、マスクブランクの平面又は表面に平行な平面として定義される。「垂直」という用語は、先に定義された水平に対して垂直な方向を指す。「上」、「下」、「底部」、「上部」、「側面」(「側壁」など)、「より高い」、「より低い」、「上部」、「上方」、「下方」などの用語は、図に示すように、水平面に対して定義される。
【0014】
「~上(on)」という用語は、要素間に直接的な接触が存在することを示す。「~のすぐ上(directly on)」という用語は、介在する要素なしで、要素間に直接的な接触が存在することを示す。
【0015】
当業者は、処理領域を説明するための「第1」及び「第2」などの序数の使用は、処理チャンバ内の特定の位置、又は処理チャンバ内での露出の順序を意味しないことを理解するであろう。
【0016】
本開示の実施形態は、堆積システム、例えば、少なくとも1つのカソードアセンブリを含む物理気相堆積(「PVD」)チャンバ、特定の実施形態では、複数のカソードアセンブリを含むPVDチャンバ(本明細書では「マルチカソードチャンバ」と呼ばれる)のための磁石設計に関する。
【0017】
図1は、PVDチャンバ100の形態をした堆積システムの側面図を示している。PVDチャンバの形態の堆積システムが、複数のカソードアセンブリ102を含むマルチカソードPVDチャンバ100として示されている。マルチカソードPVDチャンバ100は、MRAM(磁気抵抗ランダムアクセスメモリ)を製造するように構成されたマルチターゲットPVD源、又は極端紫外線(EUV)マスクブランクを製造するように構成されたマルチターゲットPVD源を含むものとして示されている。
【0018】
マルチカソードPVDチャンバは、複数のカソードアセンブリ102を、間隔を空けた関係で適所に保持するように構成されたアダプタ(図示せず)を含む、チャンバ本体101を含む。マルチカソードPVDチャンバ100は、幾つかの実施形態では、PVD及びスパッタリングのための複数のカソードアセンブリ102を含む。カソードアセンブリ102の各々は直流(DC)又は高周波(RF)を含む電源112に接続される。
【0019】
断面図は、基板又はキャリアが処理される内部容積121を画成するチャンバ本体101を含む、PVDチャンバ100の例を示している。
【0020】
図1に示される実施形態におけるカソードアセンブリ102は、異なる材料を材料層103としてスパッタリングするために用いられる。カソードアセンブリ102は、回転可能なペデスタル110上の基板又はキャリア108の上に配置される、上部シールド106のシールド孔104を通して露出される。概して、回転可能なペデスタル110の上方又は上には、1つのキャリア108のみが存在しうる。
【0021】
基板又はキャリア108は、集積回路の製造に用いられる半導体材料を有する構造として示されている。例えば、基板又はキャリア108は、ウエハを含む半導体構造を含む。あるいは、基板又はキャリア108は、幾つかの実施形態では、EUVマスクブランクを形成するために用いられる超低膨張ガラス基板などの別の材料である。基板又はキャリア108は、円形、正方形、長方形、又は他の任意の多角形などの任意の適切な形状でありうる。
【0022】
上部シールド106は、カソードアセンブリ102が、幾つかの実施形態では、シールド孔104を通じて材料層103を堆積するために用いられるように、シールド孔104を伴って形成される。電源112がカソードアセンブリ102に適用される。電源112は、幾つかの実施形態では、直流(DC)又は高周波(RF)電源を含む。
【0023】
上部シールド106は、一度にカソードアセンブリ102の1つを露出し、他のカソードアセンブリ102を相互汚染から保護するように構成される。相互汚染は、あるカソードアセンブリ102から別のカソードアセンブリ102への堆積材料の物理的な移動又は転移である。カソードアセンブリ102はターゲット114の上に位置決めされる。チャンバの設計は、幾つかの実施形態では、コンパクトである。ターゲット114は、幾つかの実施形態では、任意の適切なサイズである。例えば、ターゲット114の各々は、幾つかの実施形態では、約4インチから約20インチ、又は約4インチから約15インチ、又は約4インチから約10インチ、又は約4インチから約8インチ、又は約4インチから約6インチの範囲の直径を有する。
【0024】
図1では、基板又はキャリア108は、幾つかの実施形態では垂直方向に上下に移動する、回転可能なペデスタル110上にあるものとして示されている。基板又はキャリア108がチャンバの外に移動する前に、基板又はキャリア108は、幾つかの実施形態では、下部シールド118の下に移動する。テレスコピックなカバーリング120が下部シールド118に当接する。次に、回転可能なペデスタル110は、幾つかの実施形態では下方に移動し、次に、キャリア108がロボットアームで持ち上げられた後、キャリア108がチャンバの外へと移動する。
【0025】
材料層103がスパッタされるときに、ターゲット114からスパッタされた材料は、幾つかの実施形態では、下部シールド118の外側ではなく内側に保持される。この従来技術の実施形態では、テレスコピックなカバーリング120は、湾曲し、かつ事前定義された厚さを有する、隆起したリング部分122を含む。テレスコピックなカバーリング120は、幾つかの実施形態では、下部シールド118に関する、事前定義された間隙124及び事前定義された長さを含む。したがって、材料層103を形成する材料は、回転可能なペデスタル110の下には存在せず、それによって、汚染物質が基板又はキャリア108に広がることを排除する。
【0026】
図1は、個々のシュラウド126を示している。シュラウド126は、幾つかの実施形態では、キャリア108上に堆積されないターゲット114からの材料の大部分がシュラウド126に含まれるように設計され、したがって、材料の再生及び保存が容易となる。これはまた、各ターゲット114について、シュラウド126の1つをそのターゲットに対して最適化できるようにし、より良好な接着と欠陥の低減を可能にする。
【0027】
シュラウド126は、幾つかの実施形態では、カソードアセンブリ102間のクロストーク又はクロスターゲット汚染を最小化し、カソードアセンブリ102の各々について捕捉される材料を最大化するように設計することができる。したがって、カソードアセンブリ102の各々からの材料は、その上にカソードアセンブリ102が位置決めされているシュラウド126の1つによって個々に捕捉されるだけである。捕捉された材料は、基板又はキャリア108上には堆積されないであろう。例えば、第1のカソードアセンブリ及び第2のカソードアセンブリは、幾つかの実施形態では、極端紫外線マスクブランクの形成において異なる材料の交互の層、例えば、第1のターゲット及びカソードアセンブリ102から堆積されたケイ素と、第2のターゲット及びカソードアセンブリ102から堆積されたモリブデンとの交互の層を施すことができる。
【0028】
基板又はキャリア108は、幾つかの実施形態では、シュラウド126の上のターゲット114からの金属を含む堆積材料を使用して、基板又はキャリア108の表面に堆積された均一な材料層103でコーティングされる。次に、シュラウド126に回復プロセスが施される。回復プロセスは、シュラウド126を洗浄するだけでなく、シュラウド126上又はシュラウド126内に残っている堆積材料の残留量も回収する。例えば、1つのシュラウド126上にはモリブデンが存在していてよく、次に別のシュラウド126上にはケイ素が存在していてもよい。モリブデンはケイ素よりも高価であることから、モリブデンを含むシュラウド126は回収プロセス用に送られる。
【0029】
図1に示されるように、下部シールド118には、小角度130による第1の屈曲と、大角度132による第2の屈曲とが設けられており、これにより、下部シールド118に屈曲部119がもたらされる。この屈曲部119は、堆積中に粒子が蓄積することができる領域を提供し、したがって、有力な欠陥処理源である。
【0030】
図2は、本開示の第1の実施形態によるPVDチャンバ200を示している。PVDチャンバ200は複数のカソードアセンブリ202を含む。複数のカソードアセンブリ202の下に上部シールド206が設けられ、該上部シールド206は、カソードアセンブリをチャンバの内部空間221に露出させるための1つ以上のシールド孔204を有する(明確にするために図2には単一のシールド孔204のみが示されている)。上部シールド206の下に、隣接して、下部シールド218が設けられている。
【0031】
モジュラチャンバ本体が図2に開示されており、中間チャンバ本体225が下部チャンバ本体227の上に隣接して配置されている。中間チャンバ本体225は、下部チャンバ本体227に固定されて、下部シールド218を取り囲むモジュラチャンバ本体を形成する。下部シールドライナ223は、下部シールド218と同じ一般的な輪郭を維持し、下部シールドライナ223は、下部シールド218も取り囲むように、中間チャンバ本体225及び下部チャンバ本体227(すなわち、モジュラチャンバ本体)と下部シールド218との間に配置される。上部シールド206を取り囲むように、中間チャンバ本体225の上に上部アダプタ273が配置される。
【0032】
PVDチャンバ200には、図1の回転可能なペデスタル110と同様の回転可能なペデスタル210も設けられている。当業者は、上記図1では参照されているが図2では明確さの目的で省略されているものなど、PVDチャンバの他の構成要素が、1つ以上の実施形態によるPVDチャンバ200に提供されることを容易に認識するであろう
【0033】
図1のカバーリング120には隆起したリング部分122が設けられており、したがって上向きの側壁(すなわち、上部シールド106に面する側壁)を有するのに対し、PVDチャンバ200では、カバーリング220には、上部シールド206とは反対側を向く側壁247を画成する周辺リップを備えている。さらには、PVDチャンバ200には、図2に示されるように、底部ライナ231及び堆積リング229が設けられている。堆積リング229は、カバーリング220と回転可能なペデスタル210との間の間隙を橋渡しして、堆積材料がそれらの間に入るのを防ぐ。
【0034】
下部シールド218には、上部シールド206と接触する上端239と、該上端239とは反対側の下端241とが備わっている。下部シールド218の下部シールド壁243は、図2に示されるように、上端239から下端241まで延び、高さHを有している。下部シールド壁243は、粒子の収集を最小限にする、曲がり又は湾曲を有しない直線領域244を有している下部シールド壁内面245を含む。したがって、下部シールド壁内面245は、シールド上の粒子の蓄積を最小限にするために、実質的に直線の輪郭を有する。この直線領域244は、図2に示されるように、示される実施形態では、上端239から延びる。下部シールド壁内面245のこの直線領域244は、ある特定の実施形態では、約0.1度から約120度までの範囲及び約210度から約360度までの範囲の角度を有する曲がりを有しない。例えば、幾つかの実施形態では、角度233は、約150度から約175度までの範囲、例えば約160度から約170度の間の範囲にある。
【0035】
例示の目的であって限定はしないが、1つ以上の実施形態による下部シールド壁内面245は、約91度から約120度までの範囲、例えば約100度から約110度までの範囲の角度235を提供する移行部を有している。マスクブランクの平面又は表面に平行な基準線と下部シールドライナ223の外面とによって形成される角度237は、約89度から約65度までの範囲、例えば約85度から約73度までの範囲にある。これらの例示的な範囲外の角度233、235、及び237を生成するために他の寸法を提供することができるが、下部シールド壁内面245の直線領域244には、例えば図1の屈曲部119などの屈曲部を形成するための曲がり又は鋭い曲線は存在しない。直線領域に曲がり又は鋭い曲線がない1つ以上の実施形態による設計は、粒子の収集を回避し、それによってチャンバ内での物品の製造における欠陥源を最小限に抑える。
【0036】
次に図3を参照すると、図2の破線のボックスで示される領域290の拡大図が示されている。図3に示されるように、回転可能なペデスタル210上にキャリアベース294が配置される(図2には示されていない)。回転可能なペデスタル210は、該回転可能なペデスタル210の中央領域よりも薄い厚さを有するテーパエッジ領域210eを含む。回転可能なペデスタルの厚さは、テーパエッジ領域210eで先細りになっており、これは、凹状のテーパセクション210rに沿って回転可能なペデスタル210のより厚い部分からテーパエッジ領域210eまで先細りになっている。堆積リング229は、回転可能なペデスタル210のエッジ領域210eと実質的に重なり合うエッジ部分229eを含み、カバーリングのエッジ領域220eは堆積リングのエッジ部分229eと重なり合う。上記のように、カバーリングの底面220bと堆積リング229の上面229tとの間には、わずか0.01インチ(0.254mm)の間隙G1が存在しうる。同様に、堆積リング229の底面229bと回転可能なペデスタル210の上面210tとの間には、わずか0.01インチ(0.254mm)の間隙G2が存在しうる。堆積リングの回転と組み合わされた回転可能なペデスタル210は、2つの回転部分の間に摩擦を引き起こす可能性があり、これにより、堆積チャンバ内に粒子が生成する傾向にある。
【0037】
図4は、本開示の1つ以上の実施形態による、変更された堆積リング及びペデスタルを備えた、図2に示されるタイプの堆積チャンバ200のエリア300の拡大した断面部分を示している。図5は、図4に示される堆積リングアセンブリの拡大図を示している。図4及び5では、キャリアベース294が、回転可能なペデスタル210上に支持されるように示されている。図4には、極端紫外線マスクブランクレチクル298がキャリアベース294上に支持されて示されており、上部シールド296がキャリアベース294上に支持され、かつ極端紫外線マスクブランクレチクル298を取り囲んでいる。
【0038】
本開示の1つ以上の実施形態によれば、堆積チャンバの構成要素は、図4及び図5に関して説明された違いを除き、図2の説明に対応する。図3に示される堆積リング229は、回転して、回転可能なペデスタル210との摩擦を作り出す単一のリングを含む。本明細書に記載され、図4及び図5に示される実施形態では、図3に示される堆積リング229が堆積リングアセンブリ329に置き換えられている。堆積リングアセンブリ329は、外側堆積リング350と内側堆積リング352とを含んでいる。したがって、堆積リングアセンブリ329は、図3に示される回転可能なペデスタル210と回転する堆積リング229との間の摩擦を排除する、2つの別個のセグメントを含んでいる。
【0039】
1つ以上の実施形態によれば、物理気相堆積プロセス中などのPVDチャンバ200の動作中、内側堆積リング352と外側堆積リング350との間には、相対的な回転運動が存在する。しかしながら、内側堆積リング352と隣接する回転可能なペデスタル210との間には、相対的な回転運動はない。代わりに、回転可能なペデスタル210と隣接する内側堆積リング352の両方が回転し、外側堆積リング350は、物理気相堆積プロセス中は静止したままであるか、又は適所に固定されたままである。図3に示される従来技術の設計では、固定又は静止した堆積リング229と、物理気相堆積プロセス中などのPVDチャンバの動作中の回転可能なペデスタル210との間には、相対的な回転運動が存在する。
【0040】
再び図4を参照すると、極端紫外線マスクブランクレチクル298を支持するように構成されたキャリアベース294が、回転可能なペデスタル210の上部に配置されている。示される実施形態では、上部シールドカバー296がキャリアベース294の上に配置され、極端紫外線マスクブランクレチクル298を取り囲んでいる。図4はまた、底部ライナ231と重なり合っている、図2に示される下部シールド壁243を示している。上部カバー220は、底部ライナ231と重なり合い、外側堆積リング350と係合しているものとして示されている。
【0041】
図5は、分割又は二分された堆積リングアセンブリ329の追加の詳細を示している。内側堆積リングは、回転可能なペデスタル210の上面211と係合し、接触する底面352bを有している。内側堆積リング352は、該内側堆積リング352から下方に延びる突出リム352rを含む。外側堆積リング350は、該外側堆積リング350から上方に延びる突出リム350rを含む。図5に示されるように、外側堆積リングの突出リム350rと内側堆積リングの突出リム352rとは、距離355で重なり合う。
【0042】
図5に示されるように、キャリアベース294は、回転可能なペデスタル210の上に載っており、キャリアベース294の底面294bと内側堆積リング352の上面352tとの間に距離Aを画成する間隙が存在する。1つ以上の実施形態では、キャリアベース294の底面294bと内側堆積リング352の上面352tとの間の間隙を画成する距離「A」は、0.010インチ(0.254mm)以上、例えば0.012インチ(0.305mm)である。キャリアベースが正確な平坦性で製造されていない場合でも、PVD堆積プロセス中に回転可能なペデスタル210と内部堆積リング352とが回転しているときに、間隙がキャリアベース294と内部堆積リング352との間の摩擦の可能性を低減又は排除する。幾つかの実施形態では、内側堆積リング底面352bと外側堆積リング350の上面351との間には、距離「B」を画成する間隙が存在する。1つ以上の実施形態では、内側堆積リングの底面352bと外側堆積リング350の上面351との間の間隙を画成する距離「B」は、0.020インチ(0.508mm)である。
【0043】
図3に示すタイプの固定堆積リングに取り囲まれ、セラミック材料で作られた、回転するアルミニウムの回転可能なペデスタルを使用して、実験を行った。PVDチャンバ内でのキャリアベースとレチクルの通常の回転でさえ、ペデスタル上に配置されたウエハの裏側に多数の引っかき傷を生じさせ、ウエハの表側に欠陥を生じさせた。ウエハ上に見られる多数の欠陥は、主にアルミニウムの回転可能なペデスタルの湾曲に起因するものであった。図6Bに示されるように、回転可能なペデスタル201のエッジ210eは、堆積リング229の厚さよりも薄い厚さを有する。この設計は、回転可能なペデスタル210がPVDチャンバの動作中に回転している間に、ウエハを堆積リング229と接触させ、それによって、回転中にウエハが回転可能なペデスタル210上を滑り、ウエハの裏側に同心円状の引っかき傷を生じさせる。
【0044】
本開示の実施形態によれば、可鍛性金属の回転可能ペデスタル210及び堆積リング229を、図5に示される平坦な非凹状のセラミックの回転可能なペデスタル210及び堆積リングアセンブリ329に置き換えることは、図6Bに示される回転可能なペデスタルに関する問題を軽減するのに役立った。回転可能なペデスタル210のエッジにおける堆積リングアセンブリの厚さは、回転可能なペデスタル210のエッジよりも小さかった。
【0045】
回転可能なペデスタルの回転加速度を低減すると、PVDチャンバ内で処理されたEUVマスクブランクの粒子欠陥が低減されることが確認された。したがって、回転可能なペデスタルの回転加速/減速を単に減少させることによって、粒子欠陥が低減した。1つ以上の実施形態では、回転可能なペデスタルを、毎分10~20の範囲の回転数(RPM)、0.10~15RPM/秒の範囲の回転加速度及び0.10~0.15RPM/秒の範囲の減速で回転させることにより、粒子欠陥が低減した。1つ以上の実施形態は、図2、4、及び5に関して示されるように、回転可能なペデスタル249を、毎分10~20の範囲の回転数(RPM)、0.10~15RPM/秒の範囲の回転加速度及び0.10~0.15RPM/秒の範囲の減速で回転させるためにシャフトに結合されたモータ250を含む、PVDチャンバを含む。
【0046】
本明細書に記載されるPVDチャンバ200は、極端紫外線(EUV)マスクブランクの製造に特に有用でありうる。EUVマスクブランクは、マスクパターンを有する反射マスクを形成するために用いられる光学的に平坦な構造である。1つ以上の実施形態では、EUVマスクブランクの反射面は、極端紫外線光などの入射光を反射するための平坦な焦点面を形成する。EUVマスクブランクは、EUVレチクルなどの極端紫外線反射要素に構造的支持を提供する基板を含む。1つ以上の実施形態では、基板は、温度変化中に安定性を提供するために、低熱膨張係数(CTE)の材料で作られる。1つ以上の実施形態による基板は、ケイ素、ガラス、酸化物、セラミック、ガラスセラミック、又はそれらの組合せなどの材料から形成される。
【0047】
EUVマスクブランクは、極端紫外線光を反射する構造である多層スタックを備えている。多層スタックは、第1の反射層と第2の反射層の交互の反射層を含む。第1の反射層及び第2の反射層は、反射対を形成する。非限定的な実施形態では、多層スタックは、20~60の範囲の反射対を含み、合計で最大120の反射層を含む。
【0048】
第1の反射層及び第2の反射層は、幾つかの実施形態では、さまざまな材料から形成される。一実施形態では、第1の反射層及び第2の反射層は、それぞれ、ケイ素及びモリブデンから形成される。多層スタックは、ブラッグリフレクタ又はミラーを生成するために異なる光学特性を有する材料の交互の薄い層を有することにより、反射構造を形成する。例えばモリブデンとケイ素の交互層は、例えばマルチカソードソースチャンバ内で物理的気相堆積によって形成される。
【0049】
本明細書に記載されるPVDチャンバ200は、多層スタック、並びにキャップ層及び吸収層を形成するために利用される。例えば、幾つかの実施形態では、物理気相堆積システムは、ケイ素、モリブデン、酸化チタン、二酸化チタン、酸化ルテニウム、酸化ニオブ、タングステンルテニウム、モリブデンルテニウム、ニオブルテニウム、クロム、タンタル、窒化物、化合物の層、又はこれらの組合せの層を形成する。幾つかの化合物が酸化物として記載されているが、幾つかの実施形態では、該化合物は、酸化物、二酸化物、酸素原子を有する原子混合物、又はそれらの組合せを含むものと理解されたい。
【0050】
したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載されるチャンバ200のいずれかを利用して、複数のカソードアセンブリ、並びに外側堆積リングと内側堆積リングとを含む堆積リングアセンブリを含むPVDチャンバ内に基板を配置することを含む方法を実施する、方法が提供される。
【0051】
この明細書全体を通じての、「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は、「実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して説明されている特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。ゆえに、この明細書全体のさまざまな箇所での「1つ以上の実施形態で」、「ある実施形態で」、「一実施形態で」、又は「実施形態において」などの表現の表出は、必ずしも、本開示の同一の実施形態に言及するものではない。さらには、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な態様で組み合わせることができる。
【0052】
本明細書の開示は具体的な実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態は、本開示の原理及び用途の単なる例示であるものと理解されたい。本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく、本開示の方法及び装置に対してさまざまな修正及び変形を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内である修正及び変形を含むことが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B