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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20240314BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240314BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20240314BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20240314BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
G03G21/16 104
G03G21/00 538
G03G15/20 510
B41J29/00 H
B41J2/01 125
B41J2/01 305
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020040888
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021144081
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】平井 真彦
(72)【発明者】
【氏名】松江 淳
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 洋
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】長谷 岳誠
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 英樹
(72)【発明者】
【氏名】小枝 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】石川 正彦
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-231696(JP,A)
【文献】特開2010-134133(JP,A)
【文献】特開2010-096888(JP,A)
【文献】特開2017-109376(JP,A)
【文献】特開2018-045117(JP,A)
【文献】特開2014-142606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 21/00
G03G 15/20
B41J 29/00-29/70
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成部と、
離型剤を含むトナーが付着した前記シートを加熱する加熱装置と、
を備える画像形成装置であって、
前記加熱装置は、
互いに接触してニップ部を形成する一対の回転部材と、
前記一対の回転部材の少なくとも一方を加熱する加熱部材と、
前記加熱部材に導通可能に接続される接続部材と、
を備え、
前記加熱部材は、
基材と、
前記基材に設けられた発熱体と、
前記基材に設けられると共に前記発熱体に電気的に接続された電極部と、
を有し、
前記接続部材は、前記電極部に対して弾性的に接触して導通する接触部を有し、
前記画像形成装置はさらに、送風手段を有し、
前記加熱装置は、前記送風手段の送風口が設けられた面に垂直な方向に設けられ、
前記送風口の全体は、前記接続部材を通り前記一対の回転部材のいずれか一方の回転軸方向に直交する直交線よりも前記回転軸方向における前記加熱部材の中間側とは反対側に配置され
前記送風手段は、前記接続部材から前記加熱部材への気流を発生させる画像形成装置。
【請求項2】
シートに画像を形成する画像形成部と、
離型剤を含むトナーが付着した前記シートを加熱する加熱装置と、
を備える画像形成装置であって、
前記加熱装置は、
互いに接触してニップ部を形成する一対の回転部材と、
前記一対の回転部材の少なくとも一方を加熱する加熱部材と、
前記加熱部材に導通可能に接続される接続部材と、
を備え、
前記加熱部材は、
基材と、
前記基材に設けられた発熱体と、
前記基材に設けられると共に前記発熱体に電気的に接続された電極部と、
を有し、
前記接続部材は、前記電極部に対して弾性的に接触して導通する接触部を有し、
前記画像形成装置はさらに、吸気手段を有し、
前記加熱装置は、前記吸気手段の吸気口が設けられた面に垂直な方向に設けられ、
前記吸気口の全体は、前記接続部材を通り前記一対の回転部材のいずれか一方の回転軸方向に直交する直交線よりも前記回転軸方向における前記加熱部材の中間側に配置され
前記吸気手段は、前記接続部材から前記加熱部材への気流を発生させる画像形成装置。
【請求項3】
前記送風口が、前記接続部材を通り前記回転軸方向に平行な軸方向線上に配置される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記吸気口が、前記接続部材を通り前記回転軸方向に平行な軸方向線上に配置される請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記一対の回転部材の少なくとも一方は、筒状の回転部材であって、
前記加熱部材は、前記筒状の回転部材の内側に配置され、
前記接続部材の少なくとも一部は、前記筒状の回転部材から外側へ露出する請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置には、用紙上のトナーを定着させたり、用紙上のインクを乾燥させたりするために、用紙を加熱する加熱装置が搭載されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2016-75781号公報)には、用紙上のトナーを定着させる定着装置として、板状のヒータを備えるものが開示されている。一般的に、この種のヒータには、通電により発熱する発熱部と、発熱部に電気的に接続された電極部が設けられている。一方、ヒータに給電するための電源部には、接続部材としてのコネクタが設けられている。このコネクタがヒータの電極部に接続されることにより、コネクタと電極部とが導通し、電源部から発熱部へ給電可能な状態となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像を形成するために用いられる現像剤やインク(以下、現像剤等)には、離型剤(ワックス)、溶剤、界面活性剤等の気化物質を含むものが知られている。このような気化物質を含む現像剤等が用紙と一緒に加熱されると、気化物質の少なくとも一部が熱によって気化する。また、定着装置が備える定着ローラなどに離型剤が塗布される場合もあり、そのような場合も同様に、熱により離型剤が気化することがある。
【0005】
このように、熱によって気化物質が気化すると、気化した気化物質が周囲に飛散するため、定着装置などの加熱装置やその周辺の部材に気化物質が付着する虞がある。特に、上記のようなコネクタが取り付けられるヒータを用いた加熱装置においては、気化した気化物質がコネクタに付着すると、コネクタとヒータの電極部との間での導通性が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、シートに画像を形成する画像形成部と、離型剤を含むトナーが付着した前記シートを加熱する加熱装置と、を備える画像形成装置であって、前記加熱装置は、互いに接触してニップ部を形成する一対の回転部材と、前記一対の回転部材の少なくとも一方を加熱する加熱部材と、前記加熱部材に導通可能に接続される接続部材と、
を備え、前記加熱部材は、基材と、前記基材に設けられた発熱体と、前記基材に設けられると共に前記発熱体に電気的に接続された電極部と、を有し、前記接続部材は、前記電極部に対して弾性的に接触して導通する接触部を有し、前記画像形成装置はさらに、送風手段を有し、前記加熱装置は、前記送風手段の送風口が設けられた面に垂直な方向に設けられ、前記送風口の全体は、前記接続部材を通り前記一対の回転部材のいずれか一方の回転軸方向に直交する直交線よりも前記回転軸方向における前記加熱部材の中間側とは反対側に配置され、前記送風手段は、前記接続部材から前記加熱部材への気流を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接続部材と電極部の導通性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】前記定着装置の斜視図である。
図4】前記定着装置の分解斜視図である。
図5】前記定着装置が備える加熱ユニットの斜視図である。
図6】前記加熱ユニットの分解斜視図である。
図7】本実施形態に係るヒータの平面図である。
図8】前記ヒータの分解斜視図である。
図9】前記ヒータにコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
図11図10に示す画像形成装置の一部を示す拡大図である。
図12】前記第1実施形態の変形例を示す図である。
図13図12に示す画像形成装置の一部を示す拡大図である。
図14】前記第1実施形態の他の変形例を示す図である。
図15図14に示す画像形成装置の一部を示す拡大図である。
図16】前記第1実施形態の構成をまとめて示す図である。
図17】ヒータの両端側にそれぞれコネクタが取り付けられた場合の構成を示す図である。
図18】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
図19図18に示す画像形成装置の一部を示す拡大図である。
図20】前記第2実施形態の変形例を示す図である。
図21図20に示す画像形成装置の一部を示す拡大図である。
図22】前記第2実施形態の他の変形例を示す図である。
図23図22に示す画像形成装置の一部を示す拡大図である。
図24】前記第2実施形態の構成をまとめて示す図である。
図25】ヒータの両端側にそれぞれコネクタが取り付けられた場合の構成を示す図である。
図26】湾曲したヒータを備える定着装置の概略構成図である。
図27】インクジェット式の画像形成装置の構成の一例を示す図である。
図28】後処理装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0011】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部200と、転写部300と、定着部400と、シート供給部500と、シート排出部600と、を備えている。
【0012】
画像形成部200には、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkと、露光装置6と、が設けられている。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されている。また、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外、基本的に同様の構成である。具体的に、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体である感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段である帯電ローラ3と、感光体2上にトナー画像を形成する現像手段である現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段であるクリーニングブレード5と、を備えている。また、露光装置6は、画像情報に基づいて感光体2の帯電面を露光して静電潜像を形成する手段(書き込み手段)である。
【0013】
転写部300には、シートである用紙に画像を転写する転写装置8が設けられている。なお、画像が形成(転写)されるシートは、紙(普通紙、厚紙、薄紙、コート紙、ラベル紙、封筒などを含む)のほか、OHPシートなどの樹脂製のシートであってもよい。転写装置8は、中間転写ベルト11と、4つの一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13と、を有している。各一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11を介してそれぞれ別の感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に、中間転写ベルト11と各感光体2とが接触する一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架する複数のローラの1つに接触し、中間転写ベルト11との間に二次転写ニップを形成している。
【0014】
定着部400には、用紙に画像を定着させる定着装置9が設けられている。定着装置9は、用紙上の画像を定着させるために用紙を加熱する加熱装置でもある。定着装置9の構成については後で詳しく説明する。
【0015】
シート供給部500には、用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15と、が設けられている。
【0016】
シート排出部600には、用紙を画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙を載置する排紙トレイ18と、が設けられている。
【0017】
次に、図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0018】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2、及び中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が回転することにより、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触して一旦停止される。
【0019】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkでは、まず、帯電ローラ3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーはクリーニングブレード5によって除去される。
【0020】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出され、一連の印刷動作が完了する。
【0021】
以上の印刷動作の説明は、フルカラー画像を形成するときの動作についてであるが、4つの作像ユニットのうち、いずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像ユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0022】
続いて、本実施形態に係る定着装置9の構成について説明する。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、温度センサ19と、を備えている。
【0024】
定着ベルト20は、第2回転部材としての加圧ローラ21と協働してニップ部Nを形成する第1回転部材(定着部材)である。具体的に、定着ベルト20は、ポリイミドなどで形成された筒状の基材と、その基材の表面(外周面)に形成されたフッ素樹脂などから成る離型層とを有する無端状のベルト部材で構成される。
【0025】
第2回転部材としての加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に対向するように配置されている。また、加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に圧接されることにより、定着ベルト20との間にニップ部Nを形成する。加圧ローラ21は、例えば、アルミニウムやステンレスなどの金属で形成された円筒状の芯材と、この芯材の外周面に設けられたシリコーンゴム製の弾性層と、弾性層の外周面に設けられたフッ素樹脂製の離型層などで構成される。
【0026】
ヒータ22は、定着ベルト20の内側に配置され、定着ベルト20や、定着ベルト20を介して用紙を加熱する加熱部材である。本実施形態では、ヒータ22が、板状の基材50と、基材50上に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51上に設けられた導体層52と、導体層52を被覆する第2絶縁層53と、により構成されている。導体層52は、発熱部60を有している。
【0027】
基材50は、例えば、ステンレス(SUS)や鉄、アルミニウム等の金属材料で構成される。また、基材50の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。基材50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウムや銅は熱伝導性が高く、温度ムラが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
【0028】
各絶縁層51,53は、例えば、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料で構成される。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミドなどを用いてもよい。また、基材50の第1絶縁層51や第2絶縁層53が設けられる面とは反対側の面に、別途絶縁層が設けられてもよい。
【0029】
本実施形態では、発熱部60が基材50よりもニップ部N側に配置されているが、これとは反対に、基材50が発熱部60よりもニップ部N側に配置されてもよい。ただしその場合は、発熱部60の熱が基材50を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。
【0030】
また、本実施形態では、ヒータ22から定着ベルト20への熱伝達効率を高めるため、ヒータ22が定着ベルト20の内周面に対して直接接触するように配置されている。また、これに限らず、ヒータ22は、定着ベルト20に対して、非接触、あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触するように配置されてもよい。また、定着ベルト20に対するヒータ22の接触箇所は、定着ベルト20の外周面であってもよい。ただし、定着ベルト20の外周面の傷付きによる定着品質の低下を回避するため、ヒータ22が接触する面は、定着ベルト20の内周面であることが望ましい。
【0031】
また、ヒータ22は、図2に示すような平面状(平板状)に形成されたものに限らず、例えば、図26に示すような湾曲した形状のものであってもよい。図26に示すヒータ22は、ニップ部Nに対応する箇所で加圧ローラ21の外周面の曲率に倣って湾曲する湾曲部22aを有している。ヒータ22をこのような湾曲部22aを有することにより、ニップ部Nの用紙搬送方向の幅を大きく確保することができ、定着性が向上する。また、湾曲部22aの曲率は、0.02~0.05の範囲内であることが好ましい。湾曲部22aの曲率が0.02未満であると、ニップ部Nの用紙搬送方向の幅を大きく確保しにくくなり、湾曲部22aの曲率が0.05より大きいと、用紙の搬送性や分離性に悪影響が出る虞があるからである。さらに好ましくは、湾曲部22aの曲率が、0.03~0.04の範囲内であるのがよい。
【0032】
ヒータホルダ23は、定着ベルト20の内側でヒータ22を保持する保持部材である。ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で構成されることが望ましい。特に、ヒータホルダ23が、LCPやPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で構成される場合は、ヒータホルダ23の耐熱性を確保しつつ、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制されるので、効率的に定着ベルト20を加熱することが可能である。
【0033】
ステー24は、定着ベルト20の内側に配置される補強部材である。ステー24によってヒータホルダ23のニップ部N側の面とは反対の面が支持されることにより、ヒータホルダ23が加圧ローラ21の加圧力によって撓むのが抑制される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に均一な幅のニップ部Nが形成される。ステー24は、その剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0034】
温度センサ19は、ヒータ22の温度を検知する温度検知手段である。温度センサ19の検知結果に基づいてヒータ22の出力が制御されることにより、定着ベルト20の温度が所望の温度(定着温度)となるように維持される。温度センサ19は、接触型、非接触型のいずれでもよい。例えば、温度センサ19として、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサなどの公知の温度センサを適用可能である。
【0035】
本実施形態に係る定着装置9においては、印刷動作が開始されると、ヒータ22に電力が供給されることにより、発熱部60が発熱し、定着ベルト20が加熱される。また、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、図2に示すように、トナー画像Tが担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送されることにより、未定着トナーが加熱及び加圧されてトナー画像Tが用紙Pに定着される。
【0036】
図3は、本実施形態に係る定着装置9の斜視図、図4は、その分解斜視図である。
【0037】
図3及び図4に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、矩形の枠状に形成された装置フレーム40を備えている。装置フレーム40は、一対の側壁部28及び前壁部27を一体に有する第1装置フレーム25と、後壁部29を有する第2装置フレーム26と、によって構成されている。第1装置フレーム25と第2装置フレーム26は、一対の側壁部28に設けられた複数の係合突起28aが後壁部29に設けられた複数の係合孔29aに係合することにより組み付けられる。
【0038】
定着ベルト20や加圧ローラ21は、一対の側壁部28によって支持される。このため、各側壁部28には、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、その一端側(後壁部29側)で開口し、これとは反対側の端では開口しない突き当て部が形成されている。この突き当て部には、加圧ローラ21の回転軸を回転可能に支持する軸受30が設けられている。加圧ローラ21が各側壁部28によって支持された状態では、加圧ローラ21の軸方向の一端に設けられた駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31が、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載されると、駆動伝達ギヤ31が画像形成装置本体に設けられているギヤに連結され、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。また、駆動伝達ギヤ31に代えて、駆動伝達ベルトを張架するプーリやカップリング機構などの駆動伝達部材を用いてもよい。
【0039】
定着ベルト20の長手方向の両端には、定着ベルト20やステー24などを支持する一対の支持部材32が設けられている。各支持部材32には、ガイド溝32aが形成されている。図4に示すように、一対の支持部材32と、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23、及びヒータ22を組み付けた状態で、各支持部材32のガイド溝32aを各側壁部28の挿通溝28bの縁に沿わせながら各支持部材32を各側壁部28に組み付けることにより、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23及びヒータ22が、各側壁部28に支持される。また、各支持部材32が、後壁部29との間に設けられた付勢部材としての一対のバネ33によって付勢されることにより、定着ベルト20が加圧ローラ21へ加圧され、ニップ部が形成される。
【0040】
また、後壁部29には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起101(図4参照)が設けられている。この突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めがなされる。なお、孔部29bが設けられる位置は、後壁部29の長手方向の中間よりもいずれか一方の端寄りの位置であることが好ましい。このような位置に孔部29bが設けられることにより、孔部29bが設けられない端側では、温度変化に伴う長手方向の伸縮が許容され、装置フレーム40の歪を抑制することが可能である。
【0041】
図5は、ヒータ22などを一対の支持部材32によって支持した加熱ユニットの斜視図、図6は、その加熱ユニットの分解斜視図である。
【0042】
図5に示すように、ヒータ22及びヒータホルダ23は、図5の左右方向へ長く伸びる長手状の部材である。ヒータ22及びヒータホルダ23は、定着装置に組み込まれ、定着装置が画像形成装置に搭載された状態で、ヒータ22及びヒータホルダ23の長手方向が定着装置を通過する用紙Pの幅方向U(以下、「シート幅方向」という。)となるように配置される。また、図6に示すように、ヒータ22及びヒータホルダ23と同様にステー24も、シート幅方向Uへ長手状に配置される。なお、本明細書中でいう「シート幅方向」、「ヒータの長手方向」、「定着ベルトの長手方向」、及び「加圧ローラの回転軸方向」は、いずれも同じ方向を意味する。
【0043】
図5及び図6に示すように、ヒータホルダ23には、ヒータ22を収容するための矩形の収容凹部23aが設けられている。収容凹部23aは、ヒータ22とほぼ同等の形状及びサイズに形成されている。ただし、収容凹部23aの長手方向寸法L2はヒータ22の長手方向寸法L1よりも若干長く設定されている。このため、熱膨張によってヒータ22がその長手方向に伸びても、ヒータ22と収容凹部23aとの干渉を回避できる。
【0044】
一対の支持部材32は、定着ベルト20の内側に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触して定着ベルト20の長手方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23及びステー24の長手方向の両端近傍部分が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。定着ベルト20は、その長手方向の両端にベルト支持部32bが挿入されることで、ベルト非回転時において基本的に周方向(ベルト回転方向)の張力が作用しない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
【0045】
また、図5及び図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向の中間よりも一端側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、図5及び図6における左側の支持部材32の嵌合部32eが嵌合することにより、ヒータホルダ23と支持部材32との位置決めがなされる。一方、図5及び図6における右側の支持部材32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23との長手方向の位置決めはされない。このように、支持部材32に対するヒータホルダ23の位置決めをヒータホルダ23の長手方向の片側のみとすることで、温度変化に伴うヒータホルダ23の長手方向の伸縮が許容される。
【0046】
また、図6に示すように、ステー24の長手方向の両端近傍部分には、各支持部材32に対するステー24の移動を規制する段差部24aが設けられている。各段差部24aは支持部材32に突き当たることで支持部材32に対するステー24の長手方向の移動を規制する。ただし、これら段差部24aのうち少なくとも一方は、支持部材32に対して隙間(ガタ)を介して配置される。このように、少なくとも一方の段差部24aが支持部材32に対して隙間を介して配置されることにより、温度変化に伴うステー24の伸縮が許容される。
【0047】
図7は、本実施形態に係るヒータ22の平面図、図8は、その分解斜視図である。
【0048】
図8に示すように、ヒータ22の基材50上には、第1絶縁層51を介して発熱部60を構成する2つの抵抗発熱体59が配置されている。各抵抗発熱体59は、上記シート幅方向Uでもあるヒータ22(基材50)の長手方向Zに渡って互いに平行に並んで配置されている。導体層52は、各抵抗発熱体59のほか、2つの電極部61と、複数の給電線(導電部)62と、を有している。各抵抗発熱体59は、複数の給電線62を介して各電極部61に電気的に接続されている。具体的に、本実施形態では、図7に示すように、2つの電極部61が、ヒータ22(基材50)の長手方向の中間mよりも一端側に配置され、各電極部61に対して各抵抗発熱体59が給電線62を介して電気的に直列に接続されている。また、各抵抗発熱体59の全体及び各給電線62の少なくとも一部は、第2絶縁層53によって覆われ、絶縁性が確保されている。一方、各電極部61は、後述のコネクタが接続できるように、第2絶縁層53によって覆われておらず露出した状態となっている。
【0049】
抵抗発熱体59は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷などにより基材50に塗工し、その後、当該基材50を焼成することによって形成することができる。また、抵抗発熱体59の材料として、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO)などの抵抗材料を用いてもよい。
【0050】
電極部61及び給電線62は、抵抗発熱体59よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。例えば、電極部61及び給電線62は、銀(Ag)あるいは銀パラジウム(AgPd)などの材料を基材50上にスクリーン印刷することによって形成される。
【0051】
図9は、ヒータ22に接続部材としてのコネクタ70が接続された状態を示す斜視図である。
【0052】
図9に示すように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に設けられた複数のコンタクト端子72と、を有している。各コンタクト端子72は、板バネで構成されている。また、各コンタクト端子72には、給電用のハーネス73が接続されている。
【0053】
図9に示すように、コネクタ70は、ヒータ22及びヒータホルダ23を一緒に挟むようにしてヒータ22の(長手方向中間mよりも)長手方向一端側に取り付けられる。これにより、ヒータ22及びヒータホルダ23は、コネクタ70によって一緒に保持される。また、この状態で、コネクタ70の各コンタクト端子72の先端(接触部72a)が、それぞれ対応する電極部61に弾性的に接触(圧接)することにより、各コンタクト端子72と各電極部61とが導通する。これにより、コネクタ70を介して画像形成装置に設けられた電源から発熱部60へ電力を供給可能となる。
【0054】
ところで、画像を形成する現像剤としてのトナーには、ポリエステルやポリスチレンなどのバインダ樹脂、着色剤のほか、トナーが用紙から剥がれて定着ベルトに付着しないようにするための離型剤が含まれているものがある。離型剤としては、例えば、パラフィンワックス、エステルワックス、マイクロクリスタリンワックス、あるいはこれらを混合したものが挙げられる。
【0055】
このような離型剤を含むトナー画像が定着装置によって加熱されると、熱により離型剤が気化することがある。また、このような現象は、トナーに離型剤が含まれる場合に限らず、定着ベルトに離型剤が塗布される場合も同様に生じ得る。また、離型剤の気化は、粉砕法や重合法などのトナーの製法にかかわらず生じ得る。また、融点が60℃以上75℃以下のトナーであっても同様である。近年では、省エネの要求から比較的低い温度でも定着可能なトナーが用いられるようになってきており、このようなトナーからも離型剤が気化する場合がある。
【0056】
そして、離型剤が気化した離型剤ガスが、ヒータに取り付けられたコネクタ(特にコンタクト端子)に付着すると、コネクタとヒータの電極部との間で導通性が低下し、ヒータへの給電不良が発生する虞がある。特に、図10に示すような、コネクタ70が、定着ベルト20や、定着ベルト20を支持する支持部材32から外側へ露出している場合は、コネクタに離型剤ガスが付着する虞がより一層高まる。
【0057】
そこで、本実施形態に係る画像形成装置においては、気化物質である離型剤がコネクタに付着するのを抑制するため、以下のような対策を講じている。
【0058】
図10は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【0059】
図10に示すように、実施形態1に係る画像形成装置100内には、定着装置9に向かって送風する送風手段としての送風ファン34が設けられている。すなわち、定着装置9は、送風ファン34の送風口35が設けられた面に垂直な方向に設けられている。なお、ここでいう「送風口35が設けられた面」とは、送風口35が設けられた部分のみを意味し、送風口35の開口面を指す。また、送風口35が設けられた面(開口面)は、平面に構成されている。また、送風ファン34は、ヒータ22におけるコネクタ70が取り付けられた端側に配置されている。ここで、図10において、コネクタ70を通り加圧ローラ21の回転軸方向Xに直交する線を、直交線αとすると、図10に示す例では、この直交線α上に送風口35の中央35aが位置するように、送風ファン34が配置されている。
【0060】
上記送風口35の中央35aとは、例えば、送風口35が正方形、長方形、菱形又は平行四辺形の場合は、2つの対角線の交点を意味し、送風口35が円の場合は、円の中心を意味し、送風口35が楕円の場合は、楕円の長軸と短軸の交点を意味する。また、送風口35がこれら以外の形状である場合、送風口35の中央35aは、加圧ローラ21の回転軸方向Xと同方向である送風口35の縦方向と、これに直交する送風口35の横方向における、それぞれの中間位置の交点とする。
【0061】
また、上記コネクタ70を通る線(直交線α)とは、コネクタ70の任意のいずれか1点を通る直線でればよい。また、直交線αは、コネクタ70の任意の点を通る直線であれば、加圧ローラ21の回転軸方向Xと直交する面上で360°のどの方向を向く直線であってもよい。従って、送風口35の中央35aは、コネクタ70のいずれかの部分を通り、加圧ローラ21の回転軸方向Xと直交する線上であれば、コネクタ70の周り360°のどの位置であってもよい。
【0062】
本実施形態では、このような位置に送風ファン34の送風口35が配置されているため、送風口35から空気が吹き出されると、図11に示すように、吹き出された空気がコネクタ70や定着ベルト20などに吹き付けられる。このとき、例えば、図11に示すニップ部Nにおいて熱により離型剤ガスGが発生したとしても、送風口35から送られる空気によって、離型剤ガスGは図の右下方向へ移動させられる。このため、離型剤ガスGをコネクタ70から遠ざけることができる。これにより、コネクタ70に対する離型剤ガスGの付着を抑制できるようになり、ひいては、コネクタ70(コンタクト端子72)とヒータ22の電極部61との導通性を良好に維持できるようになる。
【0063】
また、送風口35は、図12に示されるような位置に配置されてもよい。
【0064】
図12に示す例では、送風口35の全体が、直交線αよりも図の左側、すなわち、直交線αよりも加圧ローラ21の回転軸方向Xにおけるヒータ22の中間m側とは反対側に配置されている。ここでいう直交線αとは、上記の通り定義された直交線と同様の直線を意味する。また、以下で述べる直交線αついても同様である。
【0065】
図12に示す例の場合、送風口35から空気が吹き出されると、図13に示すように、吹き出された空気によって、離型剤ガスGが図の右下方向へ移動させられるため、離型剤ガスGをコネクタ70から遠ざけることができる。これにより、上記と同様に、コネクタ70に対して離型剤ガスGが付着しにくくなり、コネクタ70とヒータ22の電極部61との導通性を良好に維持できるようになる。
【0066】
また、送風口35は、図14に示されるような位置に配置されてもよい。
【0067】
図14に示す例では、送風口35が、直交線αよりも図の左側であって、さらにコネクタ70を通り加圧ローラ21の回転軸方向Xに平行な軸方向線β上に配置されている。この軸方向線βは、コネクタ70の任意のいずれか1点を通る直線であればよい。また、図14に示す例では、送風口35の中央35aが軸方向線β上に配置されているが、これに限らず、送風口35のいずれかの部分が軸方向線β上にあればよい。
【0068】
この場合、送風口35から空気が吹き出されると、図15に示すように、吹き出された空気によって、離型剤ガスGが図の右方向へ移動させられるため、離型剤ガスGをコネクタ70から遠ざけることができる。特に、この例では、離型剤ガスGが、コネクタ70に対して付着しやすくなる左方向とは正反対の右方向に移動させられるため、より効果的に離型剤ガスGをコネクタ70から遠ざけることができる。これにより、コネクタ70に対して離型剤ガスGが付着しにくくなるため、コネクタ70とヒータ22の電極部61との導通性を良好に維持できるようになる。
【0069】
以上のように、本発明の第1実施形態では、送風口35の中央35aの位置を、直交線α上の位置{例えば、図16中の(a)の位置}、又は、直交線αよりもヒータ22の中間m側とは反対側の位置{例えば、図16中の(b)又は(c)の位置}のいずれかの位置にすることにより、送風口35から吹き出される空気によって離型剤ガスG(気化物質)をコネクタ70から遠ざけることができる。すなわち、コネクタ70からヒータ22へ気流を発生させることにより、コネクタ70に対する離型剤ガスG(気化物質)の付着を抑制することが可能である。また、送風口35をいずれの位置に配置するかについては、定着装置の周辺部品のレイアウトや送風ファン34の性能、離型剤ガスの発生箇所などに応じて決定すればよい。すなわち、図16に示す角度θ1(コネクタ70の任意の一点hから送風口35の中央35aを通るように伸びる線分γ1と、その任意の一点hからヒータ22の中間m側に向かって加圧ローラ21の回転軸方向Xに伸びる線分γ2とによって形成される角度)が、90°以上で180°以下の範囲内(90°≦θ1≦180°)であれば、送風口35の位置を適宜変更可能である。
【0070】
また、図17に示すように、ヒータ22の中間mを挟んで両端側にそれぞれコネクタ70が取り付けられる構成の場合は、各コネクタ70に対応して送風ファン34も2つ設けることが好ましい。その場合、各送風ファン34は、送風口35の中央35aが各コネクタ70を通る直交線α上{例えば、図17中の(a)の位置}、又は、直交線αよりもヒータ22の中間m側とは反対側{例えば、図17中の(b)又は(c)の位置}となるように配置されればよい。また、上記と同様に設定される角度θ1は、90°以上で180°以下の範囲内であれば自由に変更可能である。なお、2つの送風ファン34におけるそれぞれの角度θ1が180°{図17中の(c)の位置}に近づくと、各送風ファン34から吹き出される空気が互いにぶつかりやすくなるが、各コネクタ70周辺の離型剤ガスは主に近い方の送風ファン34の送風の影響を受けて移動させられるため、各送風口35から吹き出される空気によって離型剤ガスを両方のコネクタ70から遠ざけることが可能である。
【0071】
次に、本発明の第2実施形態に係る構成について説明する。
【0072】
図18に示すように、第2実施形態では、画像形成装置100内に、定着装置9から空気を吸引する吸気手段としての吸気ファン36が設けられている。すなわち、定着装置9は、吸気ファン36の吸気口37が設けられた面に垂直な方向に設けられている。なお、ここでいう「吸気口37が設けられた面」とは、吸気口37が設けられた部分のみを意味し、吸気口37の開口面を指す。また、吸気口37が設けられた面(開口面)は、平面に構成されている。この場合、吸気ファン36は、その吸気口37の中央37aがコネクタ70を通る直交線α上に位置するように配置されている。従って、吸気ファン36は、吸気口37の中央37aが直交線α上であれば、上述の図10に示す送風ファン34と同様、コネクタ70の周り360°のどの位置に配置されてもよい。また、吸気口37の中央37aは、上述の送風口35の中央35aと同様に定義される部分とする。
【0073】
このように、第2実施形態では、送風ファン34に代えて吸気ファン36が設けられているため、吸気ファン36によって空気が吸引されると、図19に示すように、コネクタ70や定着ベルト20などの周囲の空気が吸気口37へ吸い寄せられる。このとき、例えば、図19に示すニップ部Nにおいて離型剤ガスGが発生したとしても、吸気口37へ吸引される空気によって、離型剤ガスGは図の左上方向へ移動させられる。このため、コネクタ70へ離型剤ガスGが付着するのを抑制することができる。すなわち、離型剤ガスGは、コネクタ70に付着しやすい左方向への移動(加圧ローラ21の回転軸方向Xと平行な左方向への移動)を行わないので、離型剤ガスGがコネクタ70に付着する前に、離型剤ガスGを吸気ファン36側へ吸い寄せることができる。これにより、コネクタ70に対する離型剤ガスGの付着を抑制でき、コネクタ70(コンタクト端子72)とヒータ22の電極部61との導通性を良好に維持できるようになる。
【0074】
また、吸気口37は、図20に示されるような位置に配置されてもよい。
【0075】
図20に示す例では、吸気口37の全体が、直交線αよりも図の右側、すなわち、直交線αよりもヒータ22の中間m側に配置されている。
【0076】
図20に示す例の場合、吸気ファン36によって空気が吸引されると、図21に示すように、吸気口37へ吸い寄せられる空気によって、離型剤ガスGが図の右上方向へ移動させられるため、離型剤ガスGをコネクタ70から遠ざけることができる。これにより、上記と同様に、コネクタ70に対して離型剤ガスGが付着しにくくなり、コネクタ70とヒータ22の電極部61との導通性を良好に維持できるようになる。
【0077】
また、吸気口37は、図22に示されるような位置に配置されてもよい。
【0078】
図22に示す例では、吸気口37が、直交線αよりも図の右側であって、さらにコネクタ70を通り加圧ローラ21の回転軸方向Xに平行な軸方向線β上に配置されている。この軸方向線βは、上記軸方向線と同様に、コネクタ70の任意のいずれか1点を通る直線であればよい。また、図22に示す例では、吸気口37の中央37aが軸方向線β上に配置されているが、これに限らず、吸気口37のいずれかの部分が軸方向線β上にあればよい。
【0079】
この場合、吸気ファン36によって空気が吸引されると、図23に示すように、吸気口37へ吸い寄せられる空気によって、離型剤ガスGが図の右方向へ移動させられるため、離型剤ガスGをコネクタ70から遠ざけることができる。特に、この例では、離型剤ガスGが、コネクタ70に対して付着しやすくなる左方向とは正反対の右方向に移動させられるため、より効果的に離型剤ガスGをコネクタ70から遠ざけることができる。これにより、コネクタ70に対して離型剤ガスGが付着しにくくなるため、コネクタ70とヒータ22の電極部61との導通性を良好に維持できるようになる。
【0080】
以上のように、本発明の第2実施形態では、吸気口37の中央37aの位置を、直交線α上の位置{例えば、図24中の(a)の位置}、又は、直交線αよりもヒータ22の中間m側の位置{例えば、図24中の(b)の位置}のいずれかの位置にすることにより、吸気口37へ吸い寄せられる空気によって離型剤ガスG(気化物質)をコネクタ70から遠ざけることができる。すなわち、この場合も、コネクタ70からヒータ22へ気流を発生させることにより、コネクタ70に対する離型剤ガスG(気化物質)の付着を抑制することが可能である。また、吸気口37をいずれの位置に配置するかについては、定着装置の周辺部品のレイアウトや吸気ファン36の性能、離型剤ガスの発生箇所などに応じて決定すればよい。すなわち、図24に示す角度θ2(コネクタ70の任意の一点hから吸気口37の中央37aを通るように伸びる線分γ3と、その任意の一点hからヒータ22の中間m側に向かって加圧ローラ21の回転軸方向Xに伸びる線分γ4とによって形成される角度)が、0°以上で90°以下の範囲内(0°≦θ2≦90°)であれば、吸気口37の位置を適宜変更可能である。
【0081】
また、図25に示すように、ヒータ22の中間mを挟んで両端側にそれぞれコネクタ70が取り付けられる構成の場合も、吸気ファン36は、吸気口37の中央37aが各コネクタ70を通る直交線α上{例えば、図25中の(a)の位置}、又は、直交線αよりもヒータ22の中間m側{例えば、図25中の(b)の位置}となるように配置されればよい。吸気口37の数は、コネクタ70の数に対応して2つ設けてもよいし、1つとしてもよい。また、上記と同様に設定される角度θ2は、0°以上で90°以下の範囲内であれば自由に変更可能である。
【0082】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではない。例えば、上記のように配置される送風ファン34及び吸気ファン36を併用してもよい。その場合、より確実に気流を制御できるようになり、コネクタ70に対する離型剤ガスの付着をより効果的に抑制できるようになる。また、上述の実施形態において、定着装置9の周囲に送風ファン34や吸気ファン36を設置しにくい事情などがある場合は、これらのファンにダクト(気流誘導路)を設けてもよい。従って、上記送風口35や吸気口37は、ファンと一体に設けられた開口部に限らず、ダクトの開口部であってもよい。また、本発明で用いられる送風手段や吸気手段は、ファン以外にブロワなどであってもよい。
【0083】
また、上述の実施形態では、コネクタ70全体が定着ベルト20の外側に露出しているが、コネクタ70の一部のみが定着ベルト20の外側に露出している構成であってもよい。また、コネクタ70全体が定着ベルト20の内側に収容されている場合であっても、コネクタ70が定着ベルト20の長手方向端寄りに配置されていて、コネクタ70に離型剤ガスが付着する虞がある場合は、本発明を適用することが望ましい。
【0084】
また、上述の実施形態では、本発明についてトナーを用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置を例に説明したが、本発明は、電子写真方式の画像形成装置に限らず、用紙にインクを塗布して画像を形成するインクジェット式の画像形成装置にも適用可能である。すなわち、用紙上のインクを乾燥させるために用紙を加熱した際に、インクから溶剤、界面活性剤及び消泡剤などの気化物質が気化してコネクタの導通性に影響を与える虞がある場合は、インクジェット式の画像形成装置にも本発明を適用することが望ましい。なお、溶剤は顔料の分散媒としての役割、界面活性剤は顔料の安定した分散を助ける目的、消泡剤はインクの泡立ちを抑制する目的でそれぞれ用いられるものである。
【0085】
図27に、インクジェット式の画像形成装置の構成の一例を示す。
【0086】
図27に示すインクジェット式の画像形成装置700は、用紙にインクを吐出して画像を形成する画像形成部41と、画像が形成された用紙を加熱して用紙上のインクを乾燥させる乾燥装置(加熱装置)42と、用紙Pを供給する給紙部43などを備えている。また、乾燥装置42には、用紙をニップ部で挟んで搬送する一対の回転部材55,56のほか、これらの一方を少なくとも加熱する加熱部材としてのヒータ57を有している。ヒータ57は、例えば上述の図7図9に示すヒータ22と同様のコネクタ70を介して通電する板状のヒータである。
【0087】
斯かる構成のインクジェット式の画像形成装置700において、給紙部43から用紙Pが供給され、画像形成部41において用紙に画像が形成されると、用紙Pが乾燥装置42に搬送されて用紙P上のインクが乾燥される。このとき、インクから気化した溶剤、界面活性剤及び消泡剤のような気化物質がコネクタの導通性に影響を与える虞がある場合は、上述の実施形態と同様に、乾燥装置42の周囲に送風ファン又は吸気ファンを設けることが望ましい。すなわち、送風ファンの送風口、又は吸気ファンの吸気口を、上述の実施形態と同様の位置に配置することにより、気流によって気化物質をコネクタから遠ざけ、コネクタに気化物質が付着するのを抑制できるようになる。
【0088】
また、本発明は、画像形成装置に限らず、画像が形成された用紙に対してパンチ処理やステープル処理などの後処理を施す後処理装置にも適用可能出ある。例えば、図28に示すように、後処理装置800が、画像が形成された用紙に後処理を施す後処理部44のほか、上記のような定着装置や乾燥装置などの加熱装置45を備えている場合は、用紙加熱時に現像剤やインク等から気化した気化物質がコネクタに付着するのを抑制するため、上述の実施形態と同様に、加熱装置の45周囲に送風ファン又は吸気ファンを設けてもよい。また、インクジェット式画像形成装置や後処理装置に搭載される乾燥装置は、インクを乾燥させるものに限らず、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に塗布される処理液を乾燥させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
9 定着装置(加熱装置)
20 定着ベルト(第1回転部材)
21 加圧ローラ(第2回転部材)
22 ヒータ(加熱部材)
34 送風ファン(送風手段)
35 送風口
35a 中央
36 吸気ファン(吸気手段)
37 吸気口
37a 中央
70 コネクタ(接続部材)
100 画像形成装置
200 画像形成部
m ヒータの中間
N ニップ部
P 用紙(シート)
X 回転軸方向
α 直交線
β 軸方向線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【文献】特開2016-75781号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28