IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社前川製作所の特許一覧

<>
  • 特許-エアシャッタ装置 図1
  • 特許-エアシャッタ装置 図2
  • 特許-エアシャッタ装置 図3
  • 特許-エアシャッタ装置 図4
  • 特許-エアシャッタ装置 図5
  • 特許-エアシャッタ装置 図6
  • 特許-エアシャッタ装置 図7
  • 特許-エアシャッタ装置 図8
  • 特許-エアシャッタ装置 図9
  • 特許-エアシャッタ装置 図10
  • 特許-エアシャッタ装置 図11
  • 特許-エアシャッタ装置 図12
  • 特許-エアシャッタ装置 図13
  • 特許-エアシャッタ装置 図14
  • 特許-エアシャッタ装置 図15
  • 特許-エアシャッタ装置 図16
  • 特許-エアシャッタ装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】エアシャッタ装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 9/00 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
F24F9/00 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019178822
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021055902
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渕上 英紀
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 延王
(72)【発明者】
【氏名】川津 洋一
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特許第3897732(JP,B2)
【文献】特開2013-145104(JP,A)
【文献】実開昭59-163845(JP,U)
【文献】特開2005-114322(JP,A)
【文献】特開2006-001401(JP,A)
【文献】特許第6240591(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第108759270(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアカーテンを形成するエアシャッタ装置であって、
第1循環流を形成する第1ユニットと、
前記第1ユニットの下方に設けられ、前記第1循環流の下方に第2循環流を形成する第2ユニットと、
を備え、
前記第1ユニットは、前記エアカーテンの形成空間を挟んで互いに対向する第1エア噴出口および第1エア吸引口を二組含み、一方の組の前記第1エア噴出口および前記第1エア吸引口に対して、他方の組の前記第1エア噴出口および前記第1エア吸引口が下方に設けられ、前記一方の組と前記他方の組とで前記第1エア噴出口および前記第1エア吸引口の配置が逆であり、
前記第1循環流は、前記一方の組の前記第1エア噴出口から前記第1エア吸引口に向かって流れた後、前記一方の組の下方に位置する前記他方の組の前記第1エア噴出口から前記第1エア吸引口に向かって流れることで、前記エアカーテンのうち第1領域を形成し、
前記第2ユニットは、前記エアカーテンの形成空間を挟んで互いに対向する第2エア噴出口および第2エア吸引口を二組含み、一方の組の前記第2エア噴出口および前記第2エア吸引口に対して、他方の組の前記第2エア噴出口および前記第2エア吸引口が下方に設けられ、前記一方の組と前記他方の組とで前記第2エア噴出口および前記第2エア吸引口の配置が逆であり、
前記第2循環流は、前記一方の組の前記第2エア噴出口から前記第2エア吸引口に向かって流れた後、前記一方の組の下方に位置する前記他方の組の前記第2エア噴出口から前記第2エア吸引口に向かって流れることで、前記エアカーテンのうち前記第1領域の下方の第2領域を形成し、
前記第1ユニットのうち前記他方の組に属する前記第1エア噴出口である第1中間エア噴出口、および、前記第2ユニットのうち前記一方の組に属する前記第2エア噴出口である第2中間エア噴出口が上下に並んで同一方向に向けて配置され、
前記第1中間エア噴出口の上側領域と前記第2中間エア噴出口の下側領域とが、前記二組の前記第1エア噴出口および前記第1エア吸引口を含む鉛直面を挟んで逆方向にエアを噴出するように構成され、
前記第1中間エア噴出口又は前記第2中間エア噴出口の少なくとも一方は、前記第1中間エア噴出口の前記上側領域と前記第2中間エア噴出口の前記下側領域との間に位置し、前記上側領域または前記下側領域の前記鉛直面に対するエア噴出角度よりも小さな角度でエアを噴出するように構成された中間エア噴出領域を含み、
前記中間エア噴出領域は、前記第1中間エア噴出口の下側領域または前記第2中間エア噴出口の上側領域の少なくとも一方である
エアシャッタ装置。
【請求項2】
前記第1中間エア噴出口及び前記第2中間エア噴出口の各々は、前記エア噴出角度を変更可能なルーバを備えている請求項1に記載のエアシャッタ装置。
【請求項3】
前記ルーバは、鉛直方向に沿って延在し、かつ、前記鉛直面に沿って前記エア噴出角度が変わるように捩り形状を有する請求項2に記載のエアシャッタ装置。
【請求項4】
前記ルーバは、前記鉛直面に沿って列状に配置され、該鉛直面に対して異なる前記エア噴出角度を形成可能な複数のルーバ構成体で構成され、
前記中間エア噴出領域に設けられた前記ルーバ構成体の前記エア噴出角度は、前記第1中間エア噴出口の前記上側領域および前記第2中間エア噴出口の前記下側領域に設けられた前記ルーバ構成体の前記エア噴出角度より小さい請求項2に記載のエアシャッタ装置。
【請求項5】
前記中間エア噴出領域は、水平方向に沿って延在するスリット状噴出口が形成されている請求項2に記載のエアシャッタ装置。
【請求項6】
前記中間エア噴出領域は、前記第1中間エア噴出口の前記上側領域または前記第2中間エア噴出口の前記下側領域の前記鉛直面に対する前記エア噴出角度よりも小さな角度でエアを噴出するように構成されたノズルを備える請求項2に記載のエアシャッタ装置。
【請求項7】
前記第1中間エア噴出口の前記上側領域、前記中間エア噴出領域および前記第2中間エア噴出口の前記下側領域から噴射されるエアによって切れ目の少ない空気膜が形成されるように構成されている請求項1乃至6の何れか一項に記載のエアシャッタ装置。
【請求項8】
前記第1エア噴出口からエアを噴出させるための第1ファンと、
前記第2エア噴出口からエアを噴出させるための第2ファンと、
を備える請求項1乃至7の何れか一項に記載のエアシャッタ装置。
【請求項9】
物品が第1空間から該第1空間とは温度が異なる第2空間に搬送されるように構成されると共に、前記エアカーテンは前記第2空間の入口に形成されている請求項1乃至8の何れか一項に記載のエアシャッタ装置。
【請求項10】
前記第1空間の温度より前記第2空間の温度が高いとき、前記第1中間エア噴出口の前記上側領域は、前記鉛直面に対して前記第2空間側へエアが噴射され、前記第2中間エア噴出口の前記下側領域は、前記鉛直面に対して前記第1空間側へエアが噴射されるように構成されている請求項9に記載のエアシャッタ装置。
【請求項11】
前記第1ユニットのうち前記一方の組に属する前記第1エア噴出口は、前記鉛直面に対して前記第2空間側へエアが噴射され、前記第2ユニットのうち前記他方の組に属する前記第2エア噴出口は、前記鉛直面に対して前記第1空間側へエアが噴射されるように構成されている請求項10に記載のエアシャッタ装置。
【請求項12】
前記第1空間の温度より前記第2空間の温度が低いとき、前記第1中間エア噴出口の前記上側領域は、前記鉛直面に対して前記第1空間側へエアが噴射され、前記第2中間エア噴出口の前記下側領域は、前記鉛直面に対して前記第2空間側へエアが噴射されるように構成されている請求項9に記載のエアシャッタ装置。
【請求項13】
前記第1ユニットのうち前記一方の組に属する前記第1エア噴出口は、前記鉛直面に対して前記第1空間側へエアが噴射され、前記第2ユニットのうち前記第2ユニットのうち前記他方の組に属する前記第2エア噴出口は、前記鉛直面に対して前記第2空間側へエアが噴射されるように構成されている請求項12に記載のエアシャッタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアシャッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍庫の出入口や冷凍トラックなど、熱の出入りを遮断する必要がある出入口にエアシャッタ装置が設けられている。冷凍庫へ被冷凍品を出し入れしたり、冷凍トラックの積荷を積み下ろしする際に、エアシャッタ装置によって出入口にエアカーテンを形成し、荷台や冷凍庫の内部へ暖気が流入するのを抑制している。別な例では、外気より高温に保持された塗装設備や乾燥設備の出入口で被塗装品や被乾燥品が出入りするとき、内部の熱が逃げないようにエアシャッタ装置が用いられる。特許文献1及び2にはこのような用途に用いられたエアシャッタ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3897732号公報
【文献】特許第6240591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアシャッタ装置は、物品がエアカーテンを通過する時に、空気流が物品に当たって大きな乱流が生じ、エアカーテンの熱遮断効果が低下する問題がある。特許文献1には、特に物品通過時におけるこのような問題を解決する手段は開示されていない。特許文献2には、物品の通過時に空気流が物品に当たる領域を部分的に消滅させることにより、乱流の発生を抑制し、熱遮断効果を保持する手段が開示されている。しかし、特許文献2に開示された手段では、たとえ部分的であってもエアカーテンの一部領域が消失するため、熱遮断効果が低下することは免れない。また、特許文献2では、上下に並べた複数の循環流でエアカーテンを形成する場合、複数の循環流の境界で逆方向に流れる空気流がぶつかり合って乱流が起り、エアカーテンの熱遮断効果を低下させるおそれがある。さらに、エアカーテンの入口側と出口側で温度差がある場合に、温度差によって空気密度に差が生じてエアカーテンを横切る空気流が生じ、エアカーテンの熱遮断効果を低下させるおそれがある。
【0005】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、エアカーテンを物品が通過する時や、エアカーテンの内外で温度差があるときに、エアカーテンの熱遮断効果の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るエアシャッタ装置は、前記エアカーテンの形成空間を挟んで互いに対向する第1エア噴出口および第1エア吸引口を二組含み、前記第1エア噴出口および前記第1エア吸引口を通る第1循環流を形成する第1ユニットと、前記第1ユニットの下方に設けられ、前記エアカーテンの形成空間を挟んで互いに対向する第2エア噴出口および第2エア吸引口を二組含み、前記第2エア噴出口および前記第2エア吸引口を通る第2循環流を形成する第2ユニットと、を備え、前記第1ユニットおよび前記第2ユニットの設置高さ範囲のうち中間範囲に含まれる第1中間エア噴出口および第2中間エア噴出口が上下に並んで同一方向に向けて配置され、前記第1中間エア噴出口の上側領域と前記第2中間エア噴出口の下側領域とが、互いに対向する前記第1エア噴出口および前記第1エア吸引口を含む鉛直面に対して逆方向にエアを噴出するように構成され、前記第1中間エア噴出口又は前記第2中間エア噴出口の少なくとも一方は、前記第1中間エア噴出口の前記上側領域と前記第2中間エア噴出口の前記下側領域との間に位置し、前記上側領域または前記下側領域の前記鉛直面に対するエア噴出角度よりも小さな角度でエアを噴出するように構成された中間エア噴出領域を含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るエアシャッタ装置によれば、エアカーテンを物品が通過する時、エアカーテンの一部を消失させずに大きな乱流の発生を抑制できるため、エアカーテンの熱遮断効果を高く維持できる。また、温度が異なる空間の境界にエアシャッタ装置が設けられた場合でも、エアカーテンの熱遮断効果を高く保持できる。また、塵埃等の侵入を防ぐ役割もある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るエアシャッタ装置の模式的正面図である。
図2】一実施形態に係るエアシャッタ装置の模式的平面図である。
図3】一実施形態に係るエアシャッタ装置の模式的平面図である。
図4】一実施形態に係るエアシャッタ装置の模式的斜視図である。
図5】一実施形態に係る中間範囲に設けられたエア噴出口の正面図である。
図6】一実施形態に係る中間範囲に設けられたエア噴出口の正面図である。
図7図6中のルーバ構成体の拡大図である。
図8図7中のX―X線に沿う矢視図である。
図9】一実施形態に係る中間範囲に設けられたエア噴出口の正面図である。
図10図9に示すエア噴出口の平面図である。
図11】一実施形態に係る中間範囲に設けられたエア噴出口の正面図である。
図12図11に示すエア噴出口の平面図である。
図13】一実施形態に係るエアシャッタ装置の模式的平面図である。
図14】一実施形態に係るエアシャッタ装置の模式的平面図である。
図15図1に示すエアシャッタ装置の物品通過時の模式的正面図である。
図16】比較例としてのエアシャッタ装置の模式的正面図である。
図17図16に示すエアシャッタ装置の物品通過時の模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0010】
図1は、一実施形態に係るエアシャッタ装置を示す模式的正面図である。エアシャッタ装置10は、エアカーテン形成空間の一部領域に空気の循環流fc1(第1循環流)を形成するユニット12(第1ユニット)と、ユニット12の下方に形成され、エアカーテン形成空間の他の領域に空気の循環流fc2(第2循環流)を形成するユニット14(第2ユニット)と、を備えている。ユニット12はエアカーテンの形成空間を挟んで互いに対向するエア噴出口16(第1エア噴出口)及びエア吸引口18(第1エア吸引口)を二組備えている。即ち、一組はエア噴出口16(16a)及びエア吸引口18(18a)であり、もう一組はエア噴出口16(16b)及びエア吸引口18(18b)である。エア噴出口16(16a、16b)から噴出し、エア吸引口18(18a、18b)に吸引される空気流によって循環流fc1が形成される。
【0011】
ユニット14も、同様にエアカーテンの形成空間を挟んで互いに対向するエア噴出口20(第2エア噴出口)及びエア吸引口22(第2エア吸引口)を二組備えている。即ち、一組はエア噴出口20(20a)及びエア吸引口22(22a)であり、もう一組はエア噴出口20(20b)及びエア吸引口22(22b)である。エア噴出口20(20a、20b)から噴出し、エア吸引口22(22a、22b)に吸引される空気流によって循環流fc2が形成される。循環流fc1及びfc2が上下に並んで形成され、循環流fc1及びfc2でエアカーテンを形成する。ユニット12及び14の設置高さ範囲のうち中間範囲に含まれる中間エア噴出口16(16b)(第1中間エア噴出口)及び中間エア噴出口20(20a)(第2中間エア噴出口)が上下に並んで配置されている。なお、図1において、空気流の流れ方向を矢印で示し、特に、中間エア噴出口16(16b)から噴出する空気流を符号Aで示し、中間エア噴出口20(20a)から噴出する空気流を符号Aで示している。
【0012】
図2はユニット12の模式的平面図であり、図3はユニット14の模式的平面図であり、図4はユニット12及び14を含むエアシャッタ装置10の模式的斜視図である。図5図12は、中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)の幾つかの実施形態を示している。図5図12に示すように、中間エア噴出口16(16b)の上側領域r1と中間エア噴出口20(20a)の下側領域r4とが、互いに対向するエア噴出口16(16a)及びエア吸引口18(18a)を含む鉛直面Pvに対して逆方向にエアを噴出するように構成されている。上側領域r1から噴出するエアで形成する空気流は符号a1で示され、下側領域r4から噴出するエアで形成する空気流は符号a2で示されている。
【0013】
中間エア噴出口16(16b)又は中間エア噴出口20(20a)の少なくとも一方は、上側領域r1と下側領域r4との間に中間エア噴出領域r2又はr3を有している。中間エア噴出領域r2又はr3から噴出するエアの鉛直面Pvに対するエア噴出角度(例えば図8に示すθ、θ)は、上側領域r1又は下側領域r4から噴出するエアの鉛直面Pvに対するエア噴出角度(例えば図8に示すθ、θ)よりも小さい。中間エア噴出領域r2から噴出する空気流は符号a3で示され、中間エア噴出領域r3から噴出する空気流は符号a4で示されている。
【0014】
このような構成によれば、エアカーテンの形成領域を少なくとも2つの循環流fc1及びfc2で分割して形成しているので、個々の循環流の風量(風速)を抑えることができ、これによって、各循環流がダクト内を流れるときの圧損や騒音の増加を抑制できる。また、図1に示すように、2つの循環流fc1及びfc2の境界領域Rで隣り合う空気流A及びAが同一方向に流れるので、境界領域Rで乱流の発生を抑制できる。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0015】
さらに、図2図4に示すように、エアカーテンの入口側と出口側で温度差がある空間S(第1空間)及びS(第2空間)が形成されている場合、温度差によって生じる空気の密度差によって、エアカーテンの形成領域では、エアカーテンによって遮断されないとき、上部領域と下部領域とで互いに逆方向の空気流aw及びacが発生する。これに対し、上記実施形態では、空気流a1と空気流a2とは鉛直面Pvに対して互いに逆方向へ噴出するので、空気流awを空間S側へ押し戻す方向へ噴出させ、かつ空気流acを空間S側へ押し戻す方向へ噴出させることで、エアカーテンの熱遮断効果を保持できる。また、中間エア噴出領域r2又はr3から噴き出す空気流a3又はa4が空気流a1及び空気流a2の間の隙間を埋めるため、隙間の少ない空気膜を形成できる。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0016】
なお、図1図3において、中間範囲に設けられ中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)から噴出する空気流a1~a4を実線で示し、中間範囲以外のエア噴出口16(16a)及び20(20b)から噴出する空気流a5及びa6を破線で示している。
【0017】
一実施形態では、図1に示すように、エア噴出口16(16a)及び中間エア噴出口16(16b)からエアを噴出させる手段として、ファン24(24a、24b)(第1ファン)を備えている。また、中間エア噴出口20(20a)及びエア噴出口20(20b)からエアを噴出させる手段として、ファン26(26a、26b)(第2ファン)を備えている。ファン24及び26によって空気流を形成するため、これらファンの回転数を調節することで、エアカーテンを形成する空気流の風量を容易に調節できる。
【0018】
一実施形態では、ユニット12及び14はエアカーテンの形成領域を挟んで立設されたダクト28及び30に構成される。ファン24及び26は夫々ダクト28及び30内に設けられる。ユニット12において、ファン24(24a)によってエア噴出口16から噴出した空気流a5はエア吸引口18(18a)からダクト30内に吸引され、ダクト30内に吸引された空気流は、ファン24(24b)によってエア噴出口16(16b)から噴出して空気流Aを形成し、エア吸引口18(18b)からダクト28内に吸引され、再びファン24(24a)によってエア噴出口16(16a)から噴出し、循環流fc1を形成する。ユニット14においても、同様にファン26(26a)によってエア噴出口20(20a)から噴出して空気流Aを形成し、エア吸引口22(22a)からダクト28内に吸引され、再びファン26(26b)によってエア噴出口20(20b)から噴出し、ダクト28及び30を通る循環流fc2が形成される。
【0019】
なお、上記実施形態では、上下方向に配置された2つの循環流fc1及びfc2でエアカーテンを形成しているが、上下方向に3つ以上の循環流を並べて配置してエアカーテンを形成してもよい。
【0020】
図15は、上記実施形態において、エアカーテンを物品Gが通る時のエアカーテンを形成する空気流の挙動を示す。本実施形態では、中間範囲において、一方のダクト30に中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)が同じ上下に並んで配置されているので、各エア噴出口16(16b)及び20(20a)から同一方向に噴き出したエアによって形成された空気流A及びAは、物品Gにぶつかった後、物品Gの周囲に滞留せずにこれらのエア噴出口に隣接したエア吸引口18(18a)及び22(22b)に夫々吸い込まれる。従って、物品Gの周囲で乱流の発生が抑制され、空気膜が維持されるため、エアカーテンの熱遮断効果は低下しない。他方のダクト28に形成されたエア噴出口16(16a)及び20(20b)から同一方向に噴き出したエアによって形成された空気流a5及びa6も同様の挙動となる。
【0021】
図16は、比較例としてのエアシャッタ装置100を示す。エアシャッタ装置100は、循環流fc1と循環流fc2とは境界領域Rで逆方向の空気流B及びBが形成される。空気流B及びBは、互いにぶつかり合うので乱流が発生し、空気膜がうまく形成されず空気膜に隙間が生じる。
【0022】
図17は、エアシャッタ装置100において、エアカーテンを物品Gが通る時のエアカーテンを形成する空気流の挙動を示す。ダクト30で、ユニット14のエア噴出口20(20b)から噴き出すエアによって形成される空気流は、物品Gに当たってユニット14のエア吸引口22(22a)に戻る。この時、エア噴出口16(16b)から噴き出すエアによって形成された空気流Bと逆方向の流れとなりぶつかり合う(図中×印)。従って、ここで空気流が乱れ空気膜に隙間が生じ、熱遮断効果が低下する。また、ダクト28では、最下部からエア吸引口22(22b)に吸引されたエアは、ダクト28内でユニット14に設けられたファン26(26a)により上部方向に誘導され、ファン26(26a)によってエア噴出口20(20a)から噴き出す。エア噴出口20(20a)から噴き出した空気流Bは若干上向きのベクトルをもつため、物品Gに当たると衝突後の戻り空気流も若干上向きのベクトルをもつ。衝突によってユニット14に跳ね返された空気流Bは、エア吸引口18(18b)へと吸引される。空気流Bは、下部の空気を上部へとポンプアップさせ、エア噴出口16(16a)から噴出された下部空気が上部空気と混ざり合うため、エアカーテンの熱遮断効果が低下する。さらに、ファン26(26a)のエア噴出口20(20a)からエア吸引口22(22b)に向かう風量が不足するようになるため、この部分はエアカーテンの空気膜が形成されず、外部より空気を吸引するようになり、熱遮断効率が低下する。
【0023】
一実施形態では、図5図12に示すように、中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)はエア噴出角度を変更可能なルーバ32(32a、32b、32c)を備えている。そして、ルーバ32によって鉛直面Pvに対するエア噴出角度が決められる。ルーバ32を用いることで、中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)のエア噴出角度を簡単な構成で所望の角度に変更できる。
一実施形態では、中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)はケーシング38によって画定される。
【0024】
図5は、一実施形態に係るルーバ32(32a)を備えた中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)の正面図である。ルーバ32(32a)は、鉛直方向に沿って延在し、かつ鉛直面Pvに沿って鉛直面Pvに対するエア噴出角度が変わるように長手方向に沿って捩られた形状を有する。このように、1本のルーバ32(32a)に捩り形状を形成することで、1本のルーバを用いて中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)の鉛直面Pvに対するエア噴出角度を長手方向に沿って連続的に所望の角度に変えることができるため、ルーバ32(32a)の構成を簡素化できる。
【0025】
図6は、一実施形態に係るルーバ32(32b)を備えた中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)の正面図であり、図7はルーバ32(32b)の拡大図であり、図8図7中のX―X線に沿う矢視図である。ルーバ32(32b)は、中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)に、夫々鉛直面Pvに沿って列状に配置され、かつ鉛直面Pvに対するエア噴出角度を独立して異なる角度となるように配置可能な複数のルーバ構成体34a、34b、34c及び34dで構成されている。そして、中間エア噴出領域r2及びr3に設けられたルーバ構成体34b及び34cの鉛直面Pvに対するエア噴出角度(θ、θ)は、上側領域r1及び下側領域r4に設けられたルーバ構成体34a及び34dの鉛直面Pvに対するエア噴出角度(θ、θ)より小さい。このように、各ルーバ構成体34a~34dのエア噴出角度を独立して変えることができるので、中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)から噴き出すエアの噴出し方向を所望の方向へ容易に変えることができると共に、隙間の少ない空気膜を成形できる。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0026】
一実施形態では、図8に示すように、ルーバ32(32c)は、鉛方向に沿って配置された軸36にルーバ構成体34a~34dが固定され、これらルーバ構成体の鉛直面Pvに対する角度は、ルーバ構成体34a~34dの順にθ、θ、θ、θとなるように設定する(θ<θ、θ<θ)。
【0027】
図9は、一実施形態に係るルーバ32(32c)を備えた中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)の正面図であり、図10は同じく平面図である。この実施形態では、中間エア噴出領域r2及びr3は、水平方向に沿って延在するスリット状噴出口40(40a、40b)を有する。この実施形態によれば、スリット状噴出口40(40a、40b)から噴き出るエアが上側領域r1から噴き出すエアと下側領域r4から噴き出すエアとの間の隙間を埋めるため、隙間の少ない空気膜を形成できる。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0028】
なお、この実施形態では、図9に示すように、スリット状噴出口40(40a)は、上側領域r1のエア噴出方向と反対方向に延在し、スリット状噴出口40(40b)は、下側領域r4のエア噴出方向と反対方向に延在する。これによって、中間エア噴出領域r2及びr3は、上側領域r1と下側領域r4との境界の隙間を塞ぐ横方向に幅をもった水平流を形成できるため、隙間のない空気膜を形成できる。
また、この実施形態では、図10に示すように、上側領域r1の空気流a1のエア噴出角度は鉛直面Pvに対してθであり、下側領域r4の空気流a2のエア噴出角度は鉛直面Pvに対してθであり、スリット状噴出口40(40a、40b)から噴出するエアによって夫々形成される空気流a3及びa4のエア噴出角度は鉛直面Pvに対して0°付近に設定される。別な実施形態では、各領域r1~r4のエア噴出角度を順に図8と同様のθ、θ、θ及びθとなるように設定する。これらの実施形態により隙間のない空気膜を形成できる。
【0029】
図11及び図12は、さらに別な実施形態に係る中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)の正面図及び平面図である。この実施形態では、図9及び図10に示す実施形態において、中間エア噴出領域r2及びr3に形成されたスリット状噴出口40(40a、40b)をなくし、代わりに、中間エア噴出領域r2及びr3のエア噴出口にノズル42を設けている。ノズル42は、中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)から噴出するエアを、上側領域r1又は下側領域r4の鉛直面Pvに対するエア噴出角度θ又はθよりも小さな角度で噴出するように構成されている。また、ノズル42は、空気流の流路が先端開口に向かうに従って漸減するように構成されている。これによって、先端開口から噴出する空気流の流速を増加し、その到達距離を延ばすことができる。従って、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0030】
一実施形態では、ノズル42から噴出する空気流a3は、スリット状噴出口40(40a、40b)と同様に、鉛直面Pvに対するエア噴出角度を0°又は0°付近とする。
【0031】
図5図12に示すように、幾つかの実施形態において、中間エア噴出口16(16b)及び20(20a)から噴射されるエアによって切れ目の少ない空気膜が形成されるように構成されている。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0032】
次に、図2図4に示すように、物品Gが一つの空間S(第1空間)から空間Sとは温度が異なる別な空間S(第2空間)に搬送されるように構成され、エアシャッタ装置10により形成されるエアカーテンが空間Sの入口に形成されている実施形態について説明する。例えば、空間Sは、冷蔵(冷凍)トラックや建物の冷蔵(冷凍)庫であり、空間Sは外気である。他の例では、空間Sは塗装設備、乾燥設備等であり、空間Sは外気である。同図中、符号wは物品Gの搬送方向を示す。
【0033】
前述のように、エアカーテンの入口側と出口側で温度差がある空間が形成されている場合、温度差による空気の密度の違いによって、エアカーテンの形成領域では、エアカーテンによって遮断されないとき、上部領域と下部領域とで逆方向の空気流が発生する。このような状況下に上述の幾つかの実施形態に係るエアシャッタ装置10を適用した場合、上側領域r1から噴き出すエアによって形成された空気流a1によって上部領域に発生した空気流を押し戻し、下側領域r4から噴き出すエアによって形成された空気流a2によって下部領域に発生した空気流を押し戻すことができる。さらに、中間エア噴出領域r2及びr3から噴き出すエアによって形成される空気流a3及びa4が上側領域r1から噴き出す空気流a1と下側領域r4から噴き出す空気流a2との間の隙間を埋めるため、隙間の少ない空気膜を形成できる。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0034】
例えば、図2図4に示すように、空間Sの温度が空間Sの温度より高い場合(例えば、空間Sが塗装設備、乾燥設備等の加温ゾーンであり、空間Sが外気である場合)において、エアカーテンの形成領域では、エアカーテンによって遮断されないとき、空間Sで膨張して低密度となった暖気が上部領域から空間Sへ向かう暖気流awが発生する。これによって、空間Sの圧力が下がるため、空間Sの下部領域から空間Sへ向かう低温の冷気流acが発生する。この状況下で、本実施形態では、エアシャッタ装置10は、上側領域r1から空間S側へエアが噴射され、下側領域r4から空間S側へエアが噴射されるように構成される。上側領域r1から空間S側へ噴射されるエアによって形成される空気流a1によって、暖気流awは空間S側へ押し戻されると共に、下側領域r4から空間S側へ噴射されるエアによって形成される空気流a2によって、冷気流acは空間Sへ押し戻される。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を向上できる。
【0035】
一実施形態では、上記の状況下において、図2図4に示すように、ユニット12のうち中間範囲に含まれないエア噴出口16(16a)から鉛直面Pvに対して空間S側へエアが噴射され、ユニット14のうち中間範囲に含まれないエア噴出口20(20b)から鉛直面Pvに対して空間S側へエアが噴射される。エア噴出口16(16a)から噴射されたエアによって空気流a5が形成され、空気流a5によって空間Sの上部領域で発生した暖気流awは空間S側へ押し戻される。また、エア噴出口20(20b)から噴射されたエアによって空気流a6が形成され、空気流a6によって空間Sの下部領域で発生した冷気流acは空間S側へ押し戻される。これによって、エアカーテンの熱遮断効果をさらに向上できる。
【0036】
図13及び図14は、空間Sの温度が空間Sの温度より低い場合(例えば、空間Sは塗装設備の加温ゾーンであり、空間Sは加温ゾーンに隣接した冷却ゾーンである。)の実施形態を示す。図13はユニット12の模式的平面図であり、図14はユニット14の模式的平面図である。エアカーテンの形成領域では、エアカーテンによって遮断されないとき、空間Sの下部領域で、図14に示すように、空間Sへ向かう高密度の冷気流ac(図3に示す冷気流acとは逆方向の冷気流)が発生する。これによって、空間Sの圧力が低下するため、図13に示すように、空間Sの上部領域から空間Sへ向かう空気流aw(図2に示す暖気流awとは逆方向の空気流)が発生する。
【0037】
この状況下で、本実施形態では、エアシャッタ装置10は、上側領域r1から空間S側へエアが噴射され、下側領域r4から空間S側へエアが噴射されるように構成される。上側領域r1から空間S側へ噴射されるエアによって形成される空気流a1によって、上部領域で空間Sへ向かう空気流awは空間S側へ押し戻される。また、下側領域r4から空間S側へ噴射されるエアによって形成される空気流a2によって、下部領域で空間Sへ向かう高密度の冷気流acは空間S側へ押し戻される。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を向上できる。
【0038】
一実施形態では、上記温度条件の元で、ユニット12のうち中間範囲に含まれないエア噴出口16(16a)から鉛直面Pvに対して空間S側へエアが噴射される。また、ユニット14のうち中間範囲に含まれないエア噴出口20(20b)から鉛直面Pvに対して空間S側へエアが噴射されるように構成されている。
【0039】
このような構成によれば、エア噴出口16(16a)から噴射されたエアによって空気流a5が形成され、空気流a5によって空間Sの上部領域で発生し空間Sへ向かう空気流awは空間S側へ押し戻される。また、エア噴出口20(20b)から噴射されたエアによって空気流a6が形成され、空気流a6によって空間Sの下部領域で発生し空間Sへ向かう冷気流acは空間S側へ押し戻される。これによって、エアカーテンの熱遮断効果をさらに向上できる。
【0040】
さらに別な実施形態では、隣接する空間の温度が異なる3つ以上の連続した作業空間が形成され、各作業空間の出入口に上記構成のエアシャッタ装置を設ける。これら作業空間を物品が連続的に搬送され、各作業空間で夫々の作業が施される。各作業空間の出入口に設けられたエアシャッタ装置により、各作業空間の出入口における熱の移動を抑制することで、熱ロスを低減できる。
【0041】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0042】
(1)一つの態様に係るエアシャッタ装置は、前記エアカーテンの形成空間を挟んで互いに対向する第1エア噴出口および第1エア吸引口を二組含み、前記第1エア噴出口および前記第1エア吸引口を通る第1循環流(例えば、図1に示す循環流fc1)を形成する第1ユニットと、前記第1ユニットの下方に設けられ、前記エアカーテンの形成空間を挟んで互いに対向する第2エア噴出口および第2エア吸引口を二組含み、前記第2エア噴出口および前記第2エア吸引口を通る第2循環流(例えば、図1に示す循環流fc2)を形成する第2ユニットと、を備え、前記第1ユニットおよび前記第2ユニットの設置高さ範囲のうち中間範囲に含まれる第1中間エア噴出口(例えば、図1に示す中間エア噴出口16(16b))および第2中間エア噴出口(例えば、図1に示す中間エア噴出口20(20a))が上下に並んで同一方向に配置され、前記第1中間エア噴出口の上側領域(例えば、図6に示す上側領域r1)と前記第2中間エア噴出口の下側領域(例えば、図6に示す下側領域r4)とが、互いに対向する前記第1エア噴出口および前記第1エア吸引口を含む鉛直面に対して逆方向にエアを噴出するように構成され、前記第1中間エア噴出口又は前記第2中間エア噴出口の少なくとも一方は、前記第1中間エア噴出口の前記上側領域と前記第2中間エア噴出口の前記下側領域との間に位置し、前記上側領域または前記下側領域の前記鉛直面に対するエア噴出角度よりも小さな角度でエアを噴出するように構成された中間エア噴出領域(例えば、図6に示す中間エア噴出領域r2又はr3)を含んでいる。
【0043】
このような構成によれば、エアカーテンの形成領域を少なくとも2つの循環流で分割して形成しているので、個々の循環流の風量(風速)を抑えることができ、これによって、各循環流がダクト内を流れるときの圧損や騒音の増加を抑制できる。また、第1ユニット及び第2ユニットの中間範囲に含まれる第1中間エア噴出口及び第2中間エア噴出口が上下に並んで配置されるため、2つの循環流の境界で隣り合う空気流(第1中間エア噴出口から噴出する空気流(例えば、図1に示す空気流A)及び第2中間エア噴出口から噴出する空気流(例えば、図1に示す空気流A)が同一方向に流れる。これによって、乱流の発生を抑制できるため、エアカーテンの熱遮断効果を高く維持できる。また、第1中間エア噴出口及び第2中間エア噴出口が上下に並んで配置されるため、物品の通過時においても、後述するように、エアカーテンの一部を消失させずに物品の周囲で乱流の発生を抑制でき、熱遮断効果を高く維持できる。
【0044】
さらに、エアカーテンの入口側と出口側で温度差がある空間(例えば、図2及び図3に示す空間S及びS)が形成されている場合、エアカーテンの形成領域では、エアカーテンによって遮断されないとき、温度差によって生じる空気の密度差によって、上部領域と下部領域とで互いに逆方向の空気流(例えば、図2に示す暖気流aw及び図3に示す冷気流ac)が発生する。これに対し、上記構成によれば、第1中間エア噴出口の上側領域から噴出する空気流(例えば、図2及び図4に示す空気流a1)及び第2中間エア噴出口の下側領域から噴出する空気流(例えば、図3及び図4に示す空気流a2)が、夫々上部領域及び下部領域で発生する空気流を押し戻す方向へ作用する。さらに、第1中間エア噴出口と第2中間エア噴出口との間の中間エア噴出領域から噴き出すエアによって形成される空気流(例えば、図5図12に示す空気流a3及びa4)が該上側領域から噴き出すエアと該下側領域から噴き出すエアとの間の隙間を埋めるため、隙間の少ない空気膜を形成できる。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0045】
(2)別な態様に係るエアシャッタ装置は、(1)に記載のエアシャッタ装置であって、前記第1中間エア噴出口及び前記第2中間エア噴出口の各々は、前記エア噴出角度を変更可能なルーバ(例えば、図5図12に示すルーバ32(32a、32b、32c))を備えている。
【0046】
このような構成によれば、上記ルーバによって第1中間エア噴出口及び第2中間エア噴出口のエア噴出角度を容易かつ簡易に変更できる。
【0047】
(3)さらに別な態様に係るエアシャッタ装置は、(2)に記載のエアシャッタ装置であって、前記ルーバ(例えば、図5に示すルーバ32(32a))は、鉛直方向に沿って延在し、かつ、前記鉛直面に沿って前記エア噴出角度が変わるように捩り形状を有する。
【0048】
このような構成によれば、捩り形状を有する1本のルーバによって、第1エア噴出口及び第2エア吸引口のエア噴出角度を容易に変えることができる。
【0049】
(4)さらに別な態様に係るエアシャッタ装置は、(2)に記載のエアシャッタ装置出あって、前記ルーバ(例えば、図6に示すルーバ32(32b))は、前記鉛直面に沿って列状に配置され、該鉛直面に対して異なる前記エア噴出角度を形成可能な複数のルーバ構成体(例えば、図7に示すルーバ構成体34a~34d)で構成され、前記中間エア噴出領域に設けられた前記ルーバ構成体の前記エア噴出角度(例えば、図8に示すθ2、θ)は、前記第1中間エア噴出口の前記上側領域および前記第2中間エア噴出口の前記下側領域に設けられた前記ルーバ構成体の前記エア噴出角度(例えば、図8に示すθ1、θ)より小さい。
【0050】
このような構成によれば、複数のルーバ構成体の鉛直面に対するエア噴出角度を独立して調整することで、第1中間エア噴出口及び第2中間エア噴出口から噴き出すエアの噴出し方向をルーバ構成体毎に鉛直面に対して長手方向に沿って所望の方向へ変えることができると共に、隙間の少ない空気膜を形成できる。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0051】
(5)さらに別な態様に係るエアシャッタ装置は、(2)に記載のエアシャッタ装置であって、前記中間エア噴出領域は、水平方向に沿って延在するスリット状噴出口(例えば、図9に示すスリット状噴出口40(40a、40b))が形成されている。
【0052】
このような構成によれば、中間エア噴出領域に形成された上記スリット状噴出口から噴き出るエアが第1エア噴出口から噴き出すエアと第2エア噴出口から噴き出すエアとの間の隙間を埋めるため、隙間の少ない空気膜を形成できる。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0053】
(6)さらに別な態様に係るエアシャッタ装置は、(2)に記載のエアシャッタ装置であって、前記中間エア噴出領域は、前記第1中間エア噴出口の前記上側領域または前記第2中間エア噴出口の前記下側領域の前記鉛直面に対するエア噴出角度よりも小さな角度でエアを噴出するように構成されたノズル(例えば、図11及び図12に示すノズル42)を備える。
【0054】
このような構成によれば、中間エア噴出領域が上記構成のノズルを備えることで、第1中間エア噴出口の上側領域から噴き出す空気流と第2中間エア噴出口の下側領域から噴き出す空気流との間を埋める空気流の流速を増加し到達距離を大きくできる。従って、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0055】
(7)さらに別な態様に係るエアシャッタ装置は、(1)乃至(6)の何れかに記載のエアシャッタ装置であって、前記第1中間エア噴出口の前記上側領域、前記中間エア噴出領域および前記第2中間エア噴出口の前記下側領域から噴射されるエアによって切れ目の少ない空気膜が形成されるように構成されている。
【0056】
このような構成によれば、中間範囲に含まれる第1中間エア噴出口及び第2中間エア噴出口から噴射されるエアによって切れ目のない空気膜が形成されるため、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0057】
(8)さらに別な態様に係るエアシャッタ装置は、(1)乃至(7)の何れかに記載のエアシャッタ装置であって、前記第1エア噴出口からエアを噴出させるための第1ファン(例えば、図1に示すファン24(24a、24b))と、前記第2エア噴出口からエアを噴出させるための第2ファン(例えば、図1に示すファン26(26a、26b))と、を備える。
【0058】
このような構成によれば、第1ファン及び第2ファンの回転数を調節することで、これらファンによって形成される空気流の流量を調節でき、これによって、エアカーテンの風量を調節できる。
【0059】
(9)さらに別な態様に係るエアシャッタ装置は、(1)乃至(8)の何れかに記載のエアシャッタ装置であって、物品が第1空間(例えば、図2及び図3に示す空間S)から該第1空間とは温度が異なる第2空間(例えば、図2及び図3に示す空間S)に搬送されるように構成されると共に、前記エアカーテンは前記第2空間の入口に形成されている。
【0060】
前述のように、エアカーテンの入口側と出口側で温度差がある空間が形成されている場合、温度差による空気の密度の違いによって、エアカーテンの形成領域では、エアカーテンによって遮断されないとき、上部領域と下部領域とで逆方向の空気流が発生する。これに対し、(1)に記載のエアシャッタ装置によれば、第1中間エア噴出口の上側領域及び第2中間エア噴出口の下側領域から夫々噴出される空気流によって、上部領域及び下部領域で発生する空気流が押し戻される。さらに、該上側領域と該下側領域との間の中間エア噴出領域から噴き出すエアが該上側領域から噴き出すエアと該下側領域から噴き出すエアとの間の隙間を埋めるため、隙間の少ない空気膜を形成できる。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を高めることができる。
【0061】
(10)さらに別な態様に係るエアシャッタ装置は、(9)に記載のエアシャッタ装置であって、前記第1空間の温度より前記第2空間の温度が高いとき、前記第1中間エア噴出口の前記上側領域は、前記鉛直面に対して前記第2空間側へエアが噴射され、前記第2中間エア噴出口の前記下側領域は、前記鉛直面に対して前記第1空間側へエアが噴射されるように構成されている。
【0062】
第2空間の温度が第1空間の温度より高いとき、エアカーテンの形成領域では、エアカーテンによって遮断されないとき、第2空間の上部領域で膨張した高温空気が第1空間へ向かう空気流(例えば、図2に示す暖気流aw)が発生する。これによって、第2空間の圧力が下がるため、第1空間の下部領域から第2空間へ向かう空気流(例えば、図3に示す冷気流ac)が発生する。これに対し、上記構成によれば、第1中間エア噴出口の上側領域から第2空間側へ向けて噴射されるエアによって、上部領域で発生した高温空気流は第2空間側へ押し戻される。また、第2中間エア噴出口の下側領域から第1空間側へ向けて噴射されるエアによって、下部領域で発生した空気流は第1空間側へ押し戻される。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を向上できる。
【0063】
(11)さらに別な態様に係るエアシャッタ装置は、(10)に記載のエアシャッタ装置であって、前記第1ユニットのうち前記中間範囲に含まれない前記第1エア噴出口は、前記鉛直面に対して前記第2空間側へエア(図2及び図4に示す空気流a5)が噴射され、前記第2ユニットのうち前記中間範囲に含まれない前記第2エア噴出口は、前記鉛直面に対して前記第1空間側へエア(図3及び図4に示す空気流a6)が噴射されるように構成されている。
【0064】
このような構成によれば、中間範囲に含まれない第1エア噴出口から噴射されたエアによって、第2空間の上部領域で発生した高温空気流は第2空間側へ押し戻されると共に、中間範囲に含まれない第2エア噴出口から噴射されたエアによって第1空間の下部領域で発生した低温空気流は第1空間側へ押し戻される。これによって、エアカーテンの熱遮断効果をさらに向上できる。
【0065】
(12)さらに別な態様に係るエアシャッタ装置は、(9)に記載のエアシャッタ装置であって、前記第1空間の温度より前記第2空間の温度が低いとき、前記第1中間エア噴出口の前記上側領域は、前記鉛直面に対して前記第1空間側へエアが噴射され、前記第2中間エア噴出口の前記下側領域は、前記鉛直面に対して前記第2空間側へエアが噴射されるように構成されている。
【0066】
第2空間の温度が第1空間の温度より低いとき、エアカーテンの形成領域では、エアカーテンによって遮断されないとき、第2空間の下部領域で高密度の低温空気が第1空間へ向かう空気流が発生する。これによって、第2空間の圧力が下がるため、第1空間の上部領域から第2空間へ向かう空気流が発生する。これに対し、上記構成によれば、下部領域で第2中間エア噴出口の下側領域から第2空間側へ噴射されるエアによって、低温空気流は第2空間側へ押し戻されると共に、上部領域で第1中間エア噴出口から第1空間側へ噴射されるエアによって、第2空間へ向かう空気流は第1空間側へ押し戻される。これによって、エアカーテンの熱遮断効果を向上できる。
【0067】
(13)さらに別な態様に係るエアシャッタ装置は、(12)に記載のエアシャッタ装置であって、前記第1ユニットのうち前記中間範囲に含まれない前記第1エア噴出口は、前記鉛直面に対して前記第1空間側へエアが噴射され、前記第2ユニットのうち前記中間範囲に含まれない前記第2エア噴出口は、前記鉛直面に対して前記第2空間側へエアが噴射されるように構成されている。
【0068】
このような構成によれば、中間範囲に含まれない第1エア噴出口から噴射されたエアによって、第1空間の上部領域で発生した空気流は第1空間側へ押し戻されると共に、中間範囲に含まれない第2エア噴出口から噴射されたエアによって、第2空間の下部領域で発生した低温空気流は第2空間側へ押し戻される。これによって、エアカーテンの熱遮断効果をさらに向上できる。
【符号の説明】
【0069】
10 エアシャッタ装置
12 ユニット(第1ユニット)
14 ユニット(第2ユニット)
16(16a、16b) エア噴出口(第1エア噴出口)
16(16b) 中間エア噴出口(第1中間エア噴出口)
18(18a、18b) エア吸引口(第1エア吸引口)
20(20a、20b) エア噴出口(第2エア噴出口)
20(20a) 中間エア噴出口(第2中間エア噴出口)
22(22a、22b) エア吸引口(第2エア吸引口)
24(24a、24b) ファン(第1ファン)
26(26a、26b) ファン(第2ファン)
28、30 ダクト
32(32a、32b、32c) ルーバ
34a、34b、34c、34d ルーバ構成体
36 軸
38 ケーシング
40(40a、40b) スリット状噴出口
42 ノズル
、A、B、B、a1、a2、a3、a4、a5、a6 空気流
Pv 鉛直面
空間(第1空間)
空間(第2空間)
ac 冷気流
aw 暖気流
fc1 循環流(第1循環流)
fc2 循環流(第2循環流)
上側領域
、r 中間エア噴出領域
下側領域
w 搬送方向
θ、θ、θ、θ、θ、θ エア噴出角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17