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特許7454501パーム系油脂の酸化処理物、酸化処理物の製造方法、食品の甘味増強方法、及び食品の甘味増強用組成物
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  • 特許-パーム系油脂の酸化処理物、酸化処理物の製造方法、食品の甘味増強方法、及び食品の甘味増強用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】パーム系油脂の酸化処理物、酸化処理物の製造方法、食品の甘味増強方法、及び食品の甘味増強用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20240314BHJP
   A23D 9/007 20060101ALI20240314BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240314BHJP
【FI】
A23D9/00 504
A23D9/007
A23L27/00 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020553830
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2019041660
(87)【国際公開番号】W WO2020090609
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2018206140
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松澤 俊
(72)【発明者】
【氏名】境野 眞善
(72)【発明者】
【氏名】辻 美咲
(72)【発明者】
【氏名】徳地 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴士
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/077019(WO,A1)
【文献】特表2012-514470(JP,A)
【文献】特表2002-511108(JP,A)
【文献】特開昭52-071509(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037926(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーム系油脂の酸化処理物であって、
前記パーム系油脂は、α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下であり、
前記酸化処理物の過酸化物価が3以上250以下である、該酸化処理物。
【請求項2】
請求項1に記載の酸化処理物を含む、油脂組成物。
【請求項3】
加熱調理用である、請求項2に記載の油脂組成物。
【請求項4】
α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下であるパーム系油脂を過酸化物価が3以上250以下となるように酸化処理する工程を含む、酸化処理物の製造方法。
【請求項5】
前記酸化処理する工程は、加熱温度が50℃以上220℃以下、加熱時間が0.1時間以上240時間以下で行う、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記酸化処理する工程は、前記パーム系油脂に酸素を供給して行う、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の酸化処理物又は請求項2に記載の油脂組成物を食品に含有せしめる、食品の甘味増強方法。
【請求項8】
前記食品に対し前記酸化処理物を1×10-8質量%以上10質量%以下含有せしめる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
パーム系油脂の酸化処理物であって、
前記パーム系油脂は、α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下であり、
前記酸化処理物の過酸化物価が3以上250以下である、該酸化処理物を含む、食品の甘味増強用組成物。
【請求項10】
前記酸化処理物を1×10-8質量%以上100質量%以下含有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の酸化処理物を含む、食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘味を増強する効果に優れたパーム系油脂の酸化処理物及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、甘味を増強する効果に優れた食用素材については、種々のものが知られている。例えば特許文献1には、長鎖高度不飽和脂肪酸及び/又はそのエステル体を用いて食品の甘味を増強させる方法が開示されている。また、例えば特許文献2には、過酸化物価が25~300の酸化部分水素添加油脂を有効成分として含む甘味増強剤が開示されている。また、例えば特許文献3には、過酸化物価が15~180であり、10質量%以上100質量%以下の乳脂を含む酸化油脂を有効成分とする、甘味の増強剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-284859号公報
【文献】国際公開第2014/077019号
【文献】国際公開第2018/037926号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、消費者の嗜好や食品等事業者からのニーズの多様化に鑑みれば、従来とは由来の異なる新たな素材の提供が望まれていた。
【0005】
よって、本発明の目的は、甘味を増強する効果に優れた食用素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、その第1の観点においては、
パーム系油脂の酸化処理物であって、
前記パーム系油脂は、α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下であり、
前記酸化処理物の過酸化物価が3以上250以下である、該酸化処理物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、その第2の観点においては、上記の酸化処理物を含む、油脂組成物を提供するものである。
【0008】
上記油脂組成物は加熱調理用であることが好ましい。
【0009】
更に、本発明は、その第3の観点においては、α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下であるパーム系油脂を過酸化物価が3以上250以下となるように酸化処理する工程を含む、酸化処理物の製造方法を提供するものである。
【0010】
上記の酸化処理物の製造方法においては、前記酸化処理する工程は、加熱温度が50℃以上220℃以下、加熱時間が0.1時間以上240時間以下で行うことが好ましい。
【0011】
また、上記の製造方法においては、前記酸化処理する工程は、前記パーム系油脂に酸素を供給して行うことが好ましい。
【0012】
一方、本発明は、その第4の観点においては、上記の酸化処理物又は上記の油脂組成物を食品に含有せしめる、食品の甘味増強方法を提供するものである。
【0013】
上記の食品の甘味増強方法においては、前記食品に対し前記酸化処理物を1×10-8質量%以上10質量%以下含有せしめることが好ましい。
【0014】
他方、本発明は、その第5の観点においては、パーム系油脂の酸化処理物を含む、食品の甘味増強用組成物を提供するものである。
【0015】
上記の食品の甘味増強用組成物においては、前記酸化処理物を1×10-8質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。
【0016】
更に、本発明は、その第6の観点においては、上記の酸化処理物を含む、食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パーム系油脂を由来にして、甘味を増強する効果に優れた食用素材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】試験例7においてTime Intensity法によりヨーグルトの甘味の官能評価を行った結果を示す図表である。
図2】試験例8においてTime Intensity法によりチョコレートの甘味の官能評価を行った結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、甘味を増強する効果に優れた食用素材として、パーム系油脂の酸化処理物を提供するものである。
【0020】
本発明に用いるパーム系油脂としては、アブラヤシの果実から得られるパーム系油脂であればよく、分子蒸留、分別、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭等の処理を施してなるものであってもよい。各処理の方法は、特に限定するものではなく、通常、油脂の加工・精製処理に用いられる方法を採用することができる。例えば、分別は、溶剤分別、低温濾過により行なうことができる。ただし、α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量が50質量ppm以上2000質量ppm以下であり、50質量ppm以上1500質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以上1000質量ppm以下であることがより好ましく、50質量ppm以上800質量ppm以下であることが更に好ましい。パーム系油脂は、α-カロテン及びβ-カロテンの合計含量が上記範囲内となる、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用して上記範囲内になるように混合してもよい。
【0021】
本発明においては、上記のパーム系油脂を酸化処理し、その酸化処理物を得る。酸化処理物の過酸化物価(以下、「POV」ともいう)としては、3以上250以下であり、3以上220以下であることが好ましく、3以上180以下であることがより好ましく、3以上150以下であることが更に好ましい。POVは、「基準油脂分析試験法 2.5.2 過酸化物価」(日本油化学会)に則って、測定することができる。上記所定範囲のPOVとなるように酸化処理することで、甘味を増強する効果に優れた食用素材となすことができる。
【0022】
パーム系油脂を酸化処理する方法は、上記所定範囲のPOVとすることができることができればよく、特に制限はないが、好ましくは加熱処理であり、工業的スケールで生産する観点からは、タンク等の適当な容器に収容したうえ、容器に備わる電熱式、直火バーナー式、マイクロ波式、蒸気式、熱風式などの加熱手段で行うことが好ましい。加熱処理の条件は、一概ではないが、典型的に、例えば加熱温度50℃以上220℃以下で、加熱時間が0.1時間以上240時間以下で行うなどであり、より典型的には、例えば加熱温度60℃以上160℃以下で、加熱時間が1時間以上100時間以下で行うなどである。加熱温度(℃)×加熱時間(時間)の積算量の条件としては、典型的に、例えば200以上20000以下の積算量で加熱処理を行うなどであり、より典型的には、例えば220以上18000以下の積算量で加熱処理を行うなどであり、更により典型的には、例えば240以上15000以下の積算量で加熱処理を行うなどである。なお、加熱温度を変化させた場合、加熱温度(℃)×加熱時間(時間)の積算量は、温度を変化させる前の加熱温度(℃)×温度を変化させる前の加熱時間(時間)+温度を変化させた後の加熱温度(℃)×温度を変化させた後の加熱時間(時間)、又は加熱時間(時間)にわたる加熱温度(℃)の積分値として算出することができる。
【0023】
また、加熱処理に際しては、撹拌により容器の開放スペースから酸素を取り入れたり、酸素を吹き込んだりして、酸素(空気)を供給してもよい。なお、酸素源は空気などを用いてもよい。これにより、上記のパーム系油脂の酸化が促進される。その場合、酸素の供給量としては、原料油脂1kgあたり0.001~2L/分となるようにすることが好ましい。例えば、空気の場合は、原料油脂1kgあたり0.005~10L/分であることが好ましく、0.01~5L/分であることがよりに好ましい。
【0024】
上記のようにして得られたパーム系油脂の酸化処理物には、所望する甘味増強の機能性を損なわない範囲で、適宜適当な他の食用油脂に添加して、その酸化処理物を含有してなる油脂組成物となしてもよい。他の食用油脂としては、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、牛脂、豚脂、鶏脂、魚油、乳脂等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂などが挙げられる。これらの食用油脂は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上が混合されたものを用いてもよい。配合比に特に制限はないが、所望する甘味増強の機能性を損なわない観点からは、パーム系油脂の酸化処理物と他の食用油脂との合計質量に対するパーム系油脂の酸化処理物の含有量が、1×10-8質量%以上100質量%未満であることが好ましく、1×10-7質量%以上100質量%未満であることがより好ましく、1×10-6質量%以上100質量%未満であることが更に好ましく、1×10-5質量%以上100質量%未満であることが更により好ましい。なお、上記油脂組成物は、1種類の酸化処理物を単品で他の食用油脂に含有せしめてもよく、あるいは2種類以上の酸化処理物を併用してもよい。2種類以上の酸化処理物を併用した場合、上記含有量は、その2種以上のものの合計含有量である。
【0025】
上記のようにして得られたパーム系油脂の酸化処理物を含有してなる油脂組成物には、所望する甘味増強の機能性を損なわない範囲で、更に、適宜適当な添加素材を配合していてもよい。具体的には、例えば、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、γ-オリザノール、トコフェロール等の酸化防止剤、香料、香辛料抽出物、動物エキス、脂肪酸等の風味付与材、乳化剤、シリコーン、色素などが挙げられる。
【0026】
上記のようにして得られたパーム系油脂の酸化処理物や、それを含有してなる油脂組成物は、特にその形態を限定するものではなく、例えば、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、粉末油脂等としてもよい。また、前記酸化処理物及び前記油脂組成物は、各種食品に使用でき、特に甘味増強の目的で使用することが可能である。すなわち、各種食品の調理、加工、あるいは製造等におけるほぐし油、炊飯油等の調理用油、フライ油、炒め油等の加熱調理用油脂、練りこみ油、インジェクション用油及び仕上げ油等の調味用油等として用いることによって、あるいは各種食品の調理、加工、あるいは製造等の後に、添加、混合、塗布、溶解、分散、乳化等して当該食品に組み込ませることで、上記酸化処理物に由来する成分をその食品に付与して、その食品の甘味を増強することができる。本発明を適用し得る食品としては、特に限定するものではないが、例えば、ケーキ、パン等のベイカリー食品;ホイップクリーム、ホットケーキ、マドレーヌ、チョコレート、クッキー等の洋菓子類;ヨーグルト、杏仁豆腐、プリン、ゼリー等の冷菓類;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス等の氷菓類;コーンスープ、コンソメスープ等のスープ類;ビーフシチュー、クリームシチュー等のシチュー類;コーヒー飲料、乳飲料等の飲料;焼き豚、チャーシュー等の畜肉加工食品;牛カツ、トンカツ、チキンカツ、唐揚げ、竜田揚げ、ドーナッツ等の揚げ物;スクランブルエッグ、卵焼き等の炒め物;かまぼこ、魚肉ソーセージ等の水産加工食品などが挙げられ、特にそのうち、洋菓子類、冷菓類、氷菓類、スープ類、飲料、揚げ物等に適用することが好ましい。
【0027】
食品への配合量に特に制限はないが、上記のパーム系油脂の酸化処理物と、それが添加される食品との合計質量に対し、上記のパーム系油脂の酸化処理物の含有量が、1×10-8質量%以上10質量%以下となるように、上記のパーム系油脂の酸化処理物を食品中に含有せしめることが好ましく、1×10-7質量%以上10質量%以下となるように含有せしめることがより好ましく、1×10-6質量%以上10質量%以下となるように含有せしめることが更に好ましく、1×10-5質量%以上10質量%以下となるように含有せしめることが更により好ましい。
【0028】
一方、上記のようにして得られたパーム系油脂の酸化処理物は、それを含む食品の甘味増強用組成物の形態で用いてもよい。この場合、上記酸化処理物を含有し、それを良好な分散状態に、あるいは安定に保つことができる形態であって、且つ、食品に添加して利用することができる形態であればよく、その製剤的形態に特に制限はない。通常当業者に周知の製剤的技術により、例えば、油脂成分を主体とした液体油脂、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、粉末油脂等に調製されてもよく、あるいは、油脂成分の配合量が少ない溶液状、粉末状、ゲル状、顆粒状等に調製されてもよく、それら形態は任意に採用し得る。なお、上記したパーム系油脂の酸化処理物やそれを含有してなる油脂組成物は、それをそのまま、食品の甘味増強用組成物の一形態となしてもよい。
【0029】
上記食品の甘味増強用組成物中での上記酸化処理物の含有量としては、食品に適用する際に所望する好適な量となるような観点から決定されてよく、あるいは、取り扱い易さの観点から決定されてよく、特に制限はない。例えば典型的には1×10-8質量%以上100質量%以下であることが好ましく、1×10-7質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、1×10-6質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、1×10-5質量%以上100質量%以下であることが更により好ましい。特にその用途を限定するものではないが、例えば、上記食品の甘味増強用組成物がチョコレート用油脂、粉末油脂、マーガリン又は加熱調理用油脂の形態とされた場合、上記の酸化処理物の含有量はそれぞれ以下の範囲で調製されることが好ましい。
チョコレート用油脂:1×10-6質量%以上70質量%以下
粉末油脂:3×10-6質量%以上100質量%以下
マーガリン:2×10-6質量%以上95%質量%以下
加熱調理用油脂:1×10-6質量%以上10質量%以下
【0030】
なお、上記食品の甘味増強用組成物は、1種類の酸化処理物を単品で含有せしめてもよく、あるいは2種類以上の酸化処理物を併用してもよい。2種類以上の酸化処理物を併用した場合、上記含有量は、その2種以上のものの合計含有量である。
【0031】
上記食品の甘味増強用組成物の使用の態様は、上記したパーム系油脂の酸化処理物やそれを含有する油脂組成物と同様であり、適宜、所望量を食品に含有せしめるようにして用いればよい。その場合、甘味増強の効果の観点から、上記食品の甘味増強用組成物と、それが添加される食品との合計質量に対し、上記酸化処理物の含有量が1×10-8質量%以上10質量%以下となるように、上記食品の甘味増強用組成物を食品中に含有せしめることが好ましく、1×10-7質量%以上10質量%以下となるように含有せしめることがより好ましく、1×10-6質量%以上10質量%以下となるように含有せしめることが更に好ましく、1×10-5質量%以上10質量%以下となるように含有せしめることが更により好ましい。
【実施例
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0033】
まず、以下に、本実施例において用いたパーム系油脂を挙げるとともに、α-カロテン及びβ-カロテンの定量方法を説明する。
〔パーム系油脂〕
・レッドパーム油(精製無し、低温濾過):α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量341質量ppm、EV REDPALM OIL、レインフォレストハーブ社製
・レッドパーム油(分子蒸留、2回分別):α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量411質量ppm、カロチーノ プレミアム、カロチーノ社製
・レッドパーム油(分子蒸留、1回分別):α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量373、470、444、457質量ppm、カロチーノ ピュアオレイン、カロチーノ社製
・調合レッドパーム油(分子蒸留、1回分別):上記レッドパーム油(分子蒸留、1回分別)とパームオレイン(株式会社J-オイルミルズ製、社内調製品)を1:2の割合で調合したもの。α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量114質量ppm
【0034】
〔α-カロテン及びβ-カロテンの定量〕
α-カロテン及びβ-カロテンの定量は、高速液体クロマトグラフィーによる分析(HPLC分析)にて行った。具体的には、パーム系油脂、又は酸化処理物を0.5g秤量し、アセトン:テトラヒドロフラン=1:1で10mLにそれぞれメスアップし、HPLC分析に供し、検量線からα-カロテン及びβ-カロテンの含有量を定量した。なお、検量線は定量標品としてα-カロテン(型番035-17981)及びβ-カロテン(型番035-05531)の試薬(和光純薬工業株式会社製)を使用して、所定濃度ごとにHPLC分析に供したときのピーク面積から作成した。以下にはおもな分析条件を示す。
【0035】
(HPLC条件)
・検出器:フォトダイオドアレイ検出器「2996 PHOTODIODE ARRAY DETECTOR」(Waters社)、300~600nmで検出
・カラム:Shim-pack VP-ODS, 4.6mmID×250mm, 4.6μm(株式会社島津製作所)
・カラム温度:50℃
・注入量:5uL
・流速:1.2mL/min
・移動相A:アセトニトリル
・移動相B:エタノール
・移動相C:アセトン
・グラジエント条件:表1に示す
【0036】
【表1】

【0037】
〔過酸化物価(POV)の測定〕
「基準油脂分析試験法 2.5.2 過酸化物価」(日本油化学会)に則って測定した。
【0038】
[試験例1]
表2に示す各種のパーム系油脂を使用し、その酸化処理物を調製した。具体的には、α-カロテン及びβ-カロテンを所定含有量(質量ppm)で含有するレッドパーム油を準備し、これを撹拌しながら表2に示される各加熱処理条件で加熱処理して、実施例1~25の酸化処理物を得た。なお、実施例18以外は空気を所定量(0.01L/分、0.1L/分、又は0.2L/分)で吹き込みながら加熱処理した。また、加熱処理を行わない原料レッドパーム油の1つを、対照として比較例1とした。
【0039】
表2には、使用したレッドパーム油、そのレッドパーム油中のα-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量、加熱処理条件、加熱処理後のα-カロテン及びβ-カロテンの合計残存量、加熱処理前後に測定した過酸化物価(POV)の値、をそれぞれ示す。
【0040】
【表2】
【0041】
表2に示すように、加熱処理によりパーム系油脂中に含まれるα-カロテン及びβ-カロテンの含有量が減少し、より長時間加熱したり温度を高くしたりすることにより、パーム系油脂中のα-カロテン及びβ-カロテンのすべてを分解することができた。一方、加熱処理により過酸化物価(POV)の値は上昇した。また、実施例19(加熱温度:103℃、加熱時間:35hr、空気吹き込み量:0.01L/min)でのα-カロテン及びβ-カロテンの合計残存量は128質量ppmであったのに対して、実施例21(加熱温度:103℃、加熱時間:32hr、空気吹き込み量:0.1L/min)でのα-カロテン及びβ-カロテンの合計残存量は103質量ppmであり、空気の吹き込みによりα-カロテン及びβ-カロテンの分解が促進された。ただし、実施例18にみられるように、空気の吹き込みなしでも加熱処理によりレッドパーム油中のα-カロテン及びβ-カロテンのすべてを分解することができた。
【0042】
(官能評価)
比較例1、実施例1~25の酸化処理物について、官能評価を行った。具体的には、酸化処理物をコーンスープ(クノール カップスープ コーンクリーム、味の素株式会社製、粉末コーンスープ17.6gに対して、お湯150mLを加えてコーンスープを得た)に添加し、食したときの先味、中味、及び後味のそれぞれにおける甘味の強さを、酸化処理物を添加しない場合との相対比較で評価した。官能評価は4名もしくは5名の専門パネルで行い、以下の基準で点数付けをして中央値を求めた。また、得られた中央値の結果について、以下の5段階評価でランク付けした。
【0043】
(基準)
3 かなり強い
2 強い
1 やや強い
0 同等
-1 やや弱い
-2 弱い
-3 かなり弱い
【0044】
(5段階評価)
A 2≦中央値
B 1<中央値<2
C 0.75≦中央値≦1
D 0<中央値<0.75
E -3≦中央値≦0
【0045】
結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
その結果、比較例1の結果にみられるとおり、加熱処理を行わない原料レッドパーム油では、コーンスープに添加し、これを食したときの先味については甘味の5段階評価ランクはE判定であり、また、中味及び後味についてはD判定であり、コーンスープの甘味を増強する効果に乏しい結果となった。これに対して、実施例1~25の結果にみられるとおり、一定程度の加熱処理を施してなる酸化処理物では、コーンスープを食したときの先味、中味、及び後味のいずれについても甘味の5段階評価ランクは、A判定、B判定、C判定のいずれかとなり、また、使用したパーム系油脂の種類、加熱処理程度によっては、より良好なB判定、更により良好なA判定の結果も得られ、優れた甘味の増強効果が認められた。
【0048】
また、加熱処理後の過酸化物価(POV)としては8以上216以下の範囲において、コーンスープの甘味を増強する効果がみられた。
【0049】
[試験例2]
(ヨーグルトでの評価)
<実施例26の酸化処理物の調製>
本試験例にて用いた酸化処理物(実施例26)の調製方法を説明する。α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量が300質量ppmのレッドパーム油を撹拌しながら、空気吹き込み無し、140℃にて11時間加熱処理して酸化処理物を得た。このとき酸化処理物のカロテン残存量は0質量ppm、過酸化物価(POV)41.9であった。
【0050】
<油脂組成物の調製>
菜種油に上記で調製した酸化処理物を1質量%含有させて、α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量が加熱処理前の該α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量に換算した量として3質量ppmの含有量で含有する油脂組成物を調製した。
【0051】
<ヨーグルトの調製と評価>
表4に示す配合で、上記で調製した油脂組成物(表4中、「菜種油(「実施例26の酸化処理物」を1質量%含有)」と表記した。)をヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルトLB81低糖、株式会社明治社製)に含有せしめてヨーグルトを調製し、得られたヨーグルトについて官能評価を行った。具体的にはヨーグルトを食したときの甘味の強さを、上記で調製した油脂組成物(表4中、「菜種油(「実施例26の酸化処理物」を1質量%含有)」と表記した。)を添加しない場合との相対比較で評価した。官能評価は、以下の基準で示す-3、-2、-1、0、1、2、3の評点が1cm間隔で6cmの線分上に描かれた評価用紙を使用して、3名の専門パネルで行なった。具体的には、専門パネルの評価を任意にその線分上にプロットしてもらい、評点0からの長さを0.1cm単位で計測して、その長さを、各専門パネルの評価値とした。
【0052】
(基準)
3 かなり強い
2 強い
1 やや強い
0 同等
-1 やや弱い
-2 弱い
-3 かなり弱い
【0053】
【表4】

【0054】
その結果、上記の酸化処理物を1質量%含有する、菜種油ベースの油脂組成物により、用量依存的にヨーグルトの甘味を増強できることが明らかとなった。
【0055】
[試験例3]
(ラクトアイスでの評価)
<ラクトアイスの調製と評価>
表5に示す配合で、試験例2で調製した油脂組成物(表5中、「菜種油(「実施例26の酸化処理物」を1質量%含有)」と表記した。)をラクトアイス(明治エッセルスーパーカップ、株式会社明治社製)に含有せしめてラクトアイスを調製し、得られたラクトアイスについて官能評価を行った。具体的にはラクトアイスを食したときの甘味の強さを、試験例2で調製した油脂組成物(表5中、「菜種油(「実施例26の酸化処理物」を1質量%含有)」と表記した。)を添加しない場合との相対比較で評価した。官能評価は、以下の基準で示す-3、-2、-1、0、1、2、3の評点が1cm間隔で6cmの線分上に描かれた評価用紙を使用して、3名の専門パネルで行なった。具体的には、専門パネルの評価を任意にその線分上にプロットしてもらい、評点0からの長さを0.1cm単位で計測して、その長さを、各専門パネルの評価値とした。
【0056】
(基準)
3 かなり強い
2 強い
1 やや強い
0 同等
-1 やや弱い
-2 弱い
-3 かなり弱い
【0057】
【表5】

【0058】
その結果、試験例2で調製した酸化処理物を1質量%含有する、菜種油ベースの油脂組成物により、用量依存的にラクトアイスの甘味を増強できることが明らかとなった。
【0059】
[試験例4]
(ホイップクリームでの評価)
<ホイップクリームの調製と評価>
表6に示す配合で、試験例2で調製した油脂組成物(表6中、「菜種油(「実施例26の酸化処理物」を1質量%含有)」と表記した。)を植物性クリーム(ホイップ植物性脂肪、雪印メグミルク株式会社製)に含有せしめて泡立てて、ホイップクリームを調製し、得られたホイップクリームについて、官能評価を行った。具体的にはホイップクリームを食したときの甘味の強さを、試験例2で調製した油脂組成物(表6中、「菜種油(「実施例26の酸化処理物」を1質量%含有)」と表記した。)を添加しない場合との相対比較で評価した。官能評価は、以下の基準で示す-3、-2、-1、0、1、2、3の評点が1cm間隔で6cmの線分上に描かれた評価用紙を使用して、3名の専門パネルで行なった。具体的には、専門パネルの評価を任意にその線分上にプロットしてもらい、評点0からの長さを0.1cm単位で計測して、その長さを、各専門パネルの評価値とした。
【0060】
(基準)
3 かなり強い
2 強い
1 やや強い
0 同等
-1 やや弱い
-2 弱い
-3 かなり弱い
【0061】
【表6】

【0062】
その結果、試験例2で調製した酸化処理物を1質量%含有する、菜種油ベースの油脂組成物により、用量依存的にホイップクリームの甘味を増強できることが明らかとなった。
【0063】
[試験例5]
(コーヒー飲料での評価)
<粉末油脂の調製>
粉末油脂に実施例26の酸化処理物を1質量%含有させて、α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量が加熱処理前の該α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量に換算した量として3質量ppmの含有量で含有する粉末油脂を調製した。前記粉末油脂は、特開2017-63784の段落0046の方法により、前記酸化処理物を1質量%含有させて調製した。また、同じ方法にて油脂組成物を含有しない粉末油脂(プレーン)を調製した。
【0064】
<コーヒー飲料の調製と評価>
粉末コーヒー(ブレンディ、味の素AGF株式会社製)0.6質量%、グラニュー糖2.6質量%、粉末油脂(プレーン)2.9質量%、お湯93.9質量%の配合比としたコーヒー飲料を調製した。さらに表7に示す配合で、上記で調製した粉末油脂(表7中、「粉末油脂(「実施例26の酸化処理物」を1質量%含有)」と表記した。)および粉末油脂(プレーン)を前記コーヒー飲料にさらに含有せしめてコーヒー飲料を調製し、得られたコーヒー飲料について官能評価を行った。具体的にはコーヒー飲料を食したときの甘味の強さを、上記で調製した粉末油脂(表7中、「粉末油脂(「実施例26の酸化処理物」を1質量%含有)」と表記した。)を添加しない場合との相対比較で評価した。官能評価は、以下の基準で示す-3、-2、-1、0、1、2、3の評点が1cm間隔で6cmの線分上に描かれた評価用紙を使用して、3名の専門パネルで行なった。具体的には、専門パネルの評価を任意にその線分上にプロットしてもらい、評点0からの長さを0.1cm単位で計測して、その長さを、各専門パネルの評価値とした。
【0065】
(基準)
3 かなり強い
2 強い
1 やや強い
0 同等
-1 やや弱い
-2 弱い
-3 かなり弱い
【0066】
【表7】

【0067】
その結果、実施例26の酸化処理物を1質量%含有する粉末油脂により、用量依存的にコーヒー飲料の甘味を増強できることが明らかとなった。
【0068】
[試験例6]
(マドレーヌでの評価)
<マドレーヌ生地の調製>
表8に示す配合で、マドレーヌ生地を調製した。
【0069】
【表8】

【0070】
具体的には、ボウルに卵を溶きほぐし、砂糖を加え、湯煎にかけて砂糖を溶かして、湯煎からはずし、薄力粉とベーキングパウダーを加えた。滑らかな状態になるまで混ぜ、溶かしバターを少量ずつ(3~4回に分けて)加え、混ぜて生地となした。生地は30分~1時間休ませた。
【0071】
<マドレーヌの調製と評価>
表9に示す配合で、試験例5で調製した粉末油脂(表9中、「粉末油脂(「実施例26の酸化処理物」を1質量%含有)」と表記した。)および粉末油脂(プレーン)を使用してマドレーヌを調製した。具体的には、上記で調製した生地を45gずつに分け、粉末油脂および粉末油脂(プレーン)と混ぜ合わせて、型に6~7分目の量になるように生地を入れ、生地が平らになるように型を軽くたたいてならし、温めておいたオーブンに入れて170℃で15分間焼成してマドレーヌを得た。
【0072】
得られたマドレーヌについて官能評価を行った。具体的にはマドレーヌを食したときの甘味の強さを、試験例5で調製した粉末油脂(表9中、「粉末油脂(「実施例26の酸化処理物」を1質量%含有)」と表記した。)を添加しない場合との相対比較で評価した。官能評価は、以下の基準で示す-3、-2、-1、0、1、2、3の評点が1cm間隔で6cmの線分上に描かれた評価用紙を使用して、3名の専門パネルで行なった。具体的には、専門パネルの評価を任意にその線分上にプロットしてもらい、評点0からの長さを0.1cm単位で計測して、その長さを、各専門パネルの評価値とした。
【0073】
(基準)
3 かなり強い
2 強い
1 やや強い
0 同等
-1 やや弱い
-2 弱い
-3 かなり弱い
【0074】
【表9】

【0075】
その結果、実施例26の酸化処理物を1質量%含有する粉末油脂により、用量依存的にマドレーヌの甘味を増強できることが明らかとなった。
【0076】
[試験例7]
(Time Intensity法によるヨーグルトの甘味の官能評価)
<実施例27の酸化処理物の調製>
α-カロテン及びβ-カロテンの合計含有量が373質量ppmのレッドパーム油(分子蒸留、1回分別)を撹拌しながら、空気吹込み量0.2L/min、103℃にて40時間加熱処理して酸化処理物を得た。このとき酸化処理物のカロテン残存量は2質量ppm、過酸化物価(POV)56であった。
【0077】
<ヨーグルトの調製と評価>
表10に示す配合で、上記で調製した酸化処理物(実施例27)又は比較として菜種油をヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルトLB81低糖、株式会社明治社製)に含有せしめてヨーグルトを調製し、得られたヨーグルトについて、Time Intensity法によるヨーグルトの甘味の官能評価を行った。
【0078】
Time Intensity法では、評価者がパソコンに連結した評価スケールバーを操作することにより、その測定中に感じた甘味を連続的に評価して、経時的な甘味の強度の変化を測定するようにしている。本試験例では、測定開始から5秒後にヨーグルトを口の中へ入れ、測定開始から15秒まで1秒当たり2回のペースで咀嚼し、その後嚥下して、測定開始25秒まで更に測定を続けて、終了した。
【0079】
図1には、Time Intensity法による官能評価の結果を示す。
【0080】
【表10】

【0081】
その結果、ヨーグルトに菜種油を配合した調製例7-1では、最大甘味強度が0.51であり、その持続時間は3.1秒であったのに対して、実施例27の酸化処理物を配合した調製例7-2では、最大甘味強度が0.64であり、その持続時間も4.8秒であった。よって、ヨーグルトにカロテンを含有するパーム系油脂の酸化処理物を含有せしめることにより、ヨーグルトの甘味を増強し、その最大甘味強度の持続時間を増加させることができることが明らかとなった。
【0082】
[試験例8]
(Time Intensity法によるチョコレートの甘味の官能評価)
<チョコレートの調製と評価>
表11に示す配合でチョコレートを調製し、官能評価を行った。具体的には、市販のチョコレート(明治ブラックチョコレート、株式会社明治社製)を湯煎で溶かし、試験例7で調製した酸化処理物(実施例27)又は比較として菜種油を0.2質量%の含有量となるよう添加して、型に入れ、冷蔵庫で固めてチョコレートを調製した。得られたチョコレートについて、試験例7と同様にして、Time Intensity法によるチョコレートの甘味の官能評価を行った。なお、本試験例では、測定開始から5秒後にチョコレートを口の中へ入れ、測定開始から15秒まで1秒当たり2回のペースで咀嚼し、その後嚥下して、測定開始60秒まで更に測定を続けて、終了した。
【0083】
図2には、Time Intensity法による官能評価の結果を示す。
【0084】
【表11】

【0085】
その結果、チョコレートに菜種油を配合した調製例8-1では、最大甘味強度が0.57であり、その持続時間は6.1秒であったのに対して、実施例27の酸化処理物を配合した調製例8-2では、最大甘味強度が0.75であり、その持続時間も8.1秒であった。よって、チョコレートにカロテンを含有するパーム系油脂の酸化処理物を含有せしめることにより、チョコレートの甘味を増強し、その最大甘味強度の持続時間を増加させることができることが明らかとなった。
【0086】
[試験例9]
(甘味料としてステビアを配合したヨーグルトでの評価)
<ヨーグルトの調製と評価>
表12に示す配合で、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルトLB81低糖、株式会社明治社製)に甘味料としてステビア(ステビアRA7J、池田糖化工業株式会社製)を配合したうえ、試験例7で調製した酸化処理物(実施例27)を0.001質量%又は0.01質量%の含有量となるよう添加して、ヨーグルトを調製し、得られたヨーグルトについて官能評価を行った。具体的にはヨーグルトを食したときの甘味の強さを(先味、中味、後味として)、試験例1において比較のため使用した比較例1のレッドパーム油(非加熱処理)を添加した場合との相対比較で評価した。官能評価は、以下の基準で示す-3、-2、-1、0、1、2、3の評点が1cm間隔で6cmの線分上に描かれた評価用紙を使用して、3名の専門パネルで行なった。具体的には、専門パネルの評価を任意にその線分上にプロットしてもらい、評点0からの長さを0.1cm単位で計測して、その長さを、各専門パネルの評価値とした。
【0087】
(基準)
3 かなり強い
2 強い
1 やや強い
0 同等
-1 やや弱い
-2 弱い
-3 かなり弱い
【0088】
【表12】

【0089】
その結果、ヨーグルトに高甘味度甘味料であるステビアを使用した場合も、カロテンを含有するパーム系油脂の酸化処理物を含有せしめることにより、その甘味を増強できることが明らかとなった。
【0090】
[試験例10]
(ドーナッツでの評価)
<加熱調理用油脂の調製>
フライ油(J フライアップ500、株式会社J-オイルミルズ製)に実施例27の酸化処理物を10000質量ppmとなるように添加し、加熱調理用油脂を得た。
【0091】
<ドーナッツの調製と評価>
上記で調製した加熱料理用油脂を180℃に加熱し、ドーナツ生地(ドーナツミックス、株式会社プティパ社製)を50秒揚げ、ひっくり返して、更に80秒揚げ、ドーナッツ1を得た。比較対照として、実施例27の酸化処理物を添加しないフライ油を用いたこと以外は同じ方法で、ドーナッツ2を作製した。ドーナッツを食して比較したところ、ドーナッツ1はドーナッツ2よりも甘味が強かった。
【0092】
以上から、カロテンを含有するパーム系油脂の酸化処理物を含有せしめた加熱調理用油脂でドーナッツを揚げることにより、その甘味を増強できることが明らかとなった。
図1
図2