(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ナフトール樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 61/02 20060101AFI20240314BHJP
C08G 59/62 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
C08G61/02
C08G59/62
(21)【出願番号】P 2021509492
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013274
(87)【国際公開番号】W WO2020196604
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019060659
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】和佐野 次俊
(72)【発明者】
【氏名】石原 一男
(72)【発明者】
【氏名】中原 和彦
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-178419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/06,59/32
C08G61/02
C08L65/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(但し、R
1は水素または炭素数1~6のアルキル基を示し、nは0~20の繰返し数を表し平均値で2.0~10.0である。)で表され、GPC測定における面積比率でn=6以上の成分が15%以上、n=1成分が30%以下であり、且つ水酸基当量が260~400g/eqであることを特徴とするナフトール樹脂。
【請求項2】
軟化点が100~150℃、ICI粘度計で測定した150℃での溶融粘度が1.0~20.0Pa・sである請求項1に記載のナフトール樹脂。
【請求項3】
ナフトール類と下記一般式(3)で表される縮合剤を反応させて請求項1または2のナフトール樹脂を得る製造方法であって、反応系内の還流するアルコール量を原料のナフトール類の量1モルを基準として、0.01~0.4モル量の範囲に調整して行うことを特徴とするナフトール樹脂の製造方法。
【化2】
(R
3は炭素数1~6のアルキル基である。)
【請求項4】
請求項1に記載のナフトール樹脂とエピクロルヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂であって、下記一般式(2)
【化3】
(但し、R
2はグリシジル基または炭素数1~6のアルキル基を示し、nは0~20の繰返し数を表し平均値で2.0~10.0である。)で表されGPC測定における面積比率でn=6以上の成分が15%以上、n=1成分が30%以下であり、且つエポキシ当量が330~450g/eqであることを特徴とするエポキシ樹脂。
【請求項5】
軟化点が90~140℃、ICI粘度計で測定した150℃での溶融粘度が1.0~20.0Pa・sである請求項4に記載のエポキシ樹脂。
【請求項6】
請求項1に記載の
硬化剤としてのナフトール樹脂と、硬化性樹脂とを必須成分とする硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4に記載のエポキシ樹脂と、硬化剤とを必須成分とする硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6または7に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱、低誘電正接、低線膨張係数(CTE)等の特徴を与えるナフトール樹脂、エポキシ樹脂およびこれらナフトール樹脂またはエポキシ樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、高耐熱性、高靱性、コスト等のバランスに優れる点から半導体封止材やプリント回路基板等の電子部品で広く用いられている。
近年、先端材料分野の進歩にともない、より高性能なエポキシ樹脂及び硬化剤の開発が求められている。例えば、電子部品分野では、高周波化が進んでおり、伝送損失を低減する為、回路基板等の電子部品関連材料には誘電正接がこれまでになく低い材料が求められている。また、モバイル機器に代表される様に、通信機器の小型・軽薄化が急激に進み、これら機器に使用される回路基板等絶縁材料の薄化が進んでいる。そのため、熱による反りが発生し易く、高耐熱化や低CTE化の対策が取られている。このような背景から回路基板材料に使用されるエポキシ樹脂および硬化剤には、低誘電正接、高耐熱、低CTE等の多岐にわたる特性を同時に満たす必要がある。
【0003】
一般に、エポキシ樹脂硬化物において誘電正接が高くなる要因は、硬化反応時に出現する極性基にあり、そのため官能基濃度が低い方が有利になる。この点に関しては、特許文献1に、スチレンを付加させることで水酸基当量を任意に調整した多価ヒドロキシ樹脂を配合することで低誘電化した樹脂組成物が記載されている。また、特許文献2には、アルコキシ基含有芳香族化合物を縮合した樹脂を用いることで官能基濃度を低減した樹脂組成物、特許文献3にはナフトール樹脂の水酸基をアルコキシル化することで官能基濃度を低減する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、官能基濃度の低減は、架橋密度の低下を引き起こすため、耐熱性が極端に落ちてしまう。一般的に、硬化剤、エポキシ樹脂の耐熱性を上昇させるために、分子量分布を調整し高分子量化する手法が知られている。また、低CTE化に対しては、樹脂硬化物の自由体積を小さくする事が有効であり、例えばナフタレン構造を導入すると、ナフタレン環のスタッキングにより自由体積が減少し、低CTE化する事が知られている。しかしながら、特許文献1の手法では付加したスチレンが反応を阻害するため、分子量に関わらず耐熱性の向上は難しく、更に付加したスチレンが自由体積を大きくするため、低CTE化には効果が見られない。特許文献2には低誘電化、反応性の記載はあるが、耐熱性、低CTE化に対しては何ら検討がなされていない。また、特許文献3の方法では、低CTE化に効果のあるナフタレン骨格を含むナフトール樹脂であるため低CTE化は可能なものの、アルコキシ化が低分子量の樹脂に限られるため、耐熱性が高い高分子量の樹脂には適用できない方法であり、この方法で得られた樹脂を用いても低誘電正接化、低CTE化、及び高耐熱化を達成することはできなかった。
【0005】
また、特許文献4には、ナフトール樹脂をp-キシレングリコールジメチルエーテルを縮合剤として合成する際、常圧では生成するメタノールの留出が遅れるので、メタノールがナフトールアラルキル樹脂、又はナフトールと反応し、メトキシ化物を生成するため、ナフトールアラルキル樹脂の水酸基当量が増加するとの記載がある。しかしながら、特許文献4に記載の常圧での条件では、本発明の範囲を満たす分子量分布と水酸基当量を同時に満足する樹脂は得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2013/157061A1
【文献】特開2006-97004号公報
【文献】特開2006-160868号公報
【文献】特開1993-155985号公報
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化後の耐熱性を低下させることなく、近年の高周波タイプの電子部品関連材料に適する低誘電正接、低CTEを実現可能な高分子量でありながら官能基濃度の低いナフトール樹脂、エポキシ樹脂、それらの樹脂組成物およびその硬化物を提供することにある。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【化1】
(但し、R
1は水素または炭素数1~6のアルコキシ基を示し、nは0~20の繰返し数を表し平均値で2.0~10.0である。)で表され、GPC測定における面積比率でn=6以上の成分が15%以上、n=1成分が30%以下であり、且つ水酸基当量が260~400g/eqであることを特徴とするナフトール樹脂である。上記ナフトール樹脂は、軟化点が100~150℃、ICI粘度計で測定した150℃での溶融粘度が1.0~20.0Pa・sであるとよい。
【0009】
本発明は、ナフトール類と下記一般式(3)で表される縮合剤を反応させて請求項1または2のナフトール樹脂を得る製造方法であって、反応系内の還流するアルコール量を原料のナフトール類の量を基準として、0.01~0.4モル量の範囲に調整して行うことを特徴とするナフトール樹脂の製造方法である。
【化2】
(R
3は炭素数1~6のアルキル基である。)
【0010】
本発明は、上記ナフトール樹脂とエピクロルヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂であって、下記一般式(2)
【化3】
(但し、R
2はグリシジル基または炭素数1~6のアルキル基を示し、nは0~20の繰返し数を表し平均値で2.0~10.0である。)で表され、GPC測定における面積比率でn=6以上の成分が15%以上、n=1成分が30%以下であり、且つエポキシ当量が330~450g/eqであることを特徴とするエポキシ樹脂である。上記エポキシ樹脂は、軟化点が90~140℃、ICI粘度計で測定した150℃での溶融粘度が1.0~20.0Pa・sであるとよい。
【0011】
更に、本発明は、上記ナフトール樹脂と、エポキシ樹脂または/およびエポキシ樹脂以外の硬化性樹脂とを必須成分とする硬化性樹脂組成物である。上記エポキシ樹脂と、硬化剤とを必須成分とする硬化性樹脂組成物である。上記硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物である。
本発明のナフトール樹脂又はエポキシ樹脂を用いて得られた硬化物は、高耐熱、低誘電正接、低CTEに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のナフトール樹脂は、下記一般式(1)で表され、GPC測定における面積比率でn=6以上の成分が15%以上、n=1成分が30%以下であり、且つ水酸基1mol当りの分子量で表される水酸基当量が260~400g/eqであることを特徴とするナフトール樹脂である。
すなわち、通常のナフトール樹脂とは異なり、高分子量でありながら、水酸基当量が高く、官能基濃度が低い特徴を有する。
【0013】
一般式(1)において、R
1は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を例示できる。R
1における水素原子(H)とアルキル基(Ar)の比Ar/(Ar+H)は、10~30モル%が好ましく、12~25モル%が更に好ましい。10%未満では耐熱性は向上するものの低誘電正接化が難しく、30%超では低誘電正接化は可能なものの耐熱性が低下し、分子量分布を調整しても特性のバランスを維持することが困難となる。
nは、繰返し数を表し、平均値で2~10、好ましくは2.5~6である。平均値は、各n成分のGPCによる面積比率から算出することができる。一般式(1)で表されるナフトール樹脂の基本構造は、OR
1の少なくとも一部がOR
2にグリシジル化することを除き、後述する一般式(2)のエポキシ樹脂においても維持されることから、一般式(2)のnも、ほぼ同様である。
【化4】
【0014】
上記一般式(1)で表されるナフトール樹脂は、ナフトール類と下記一般式(3)で表される縮合剤を反応させることで得ることができる。
【化5】
(R
3は炭素数1~6のアルキル基である。)
【0015】
ここでナフトール類としては、1-ナフトール、2-ナフトールを挙げることができる。ナフトール類の使用に際しては、1-ナフトールと2-ナフトールの混合物であっても良い。ナフトール類を架橋剤で縮合することで、樹脂中にナフトール骨格を導入することができ、低CTE化が可能となる。
【0016】
また、架橋剤を表す上記一般式(3)において、R3は炭素数1~6のアルキル基である。アルコキシ基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を例示できる。特に好ましい架橋剤の具体例としては1,4-ジメトキシメチルベンゼン、1,4-ジエトキシメチルベンゼンを挙げることができる。
【0017】
本発明のナフトール樹脂は、GPC測定における面積比率で、n=6以上の成分が15%以上であり、好ましくは20%以上である。更にn=1成分が30%以下であり、好ましくは25%以下である。多官能体であるn=6以上の成分が15%以上存在することで、架橋密度が高まり耐熱性を向上することができる。一方、硬化時に3次元構造を形成できないn=1の成分が増えると耐熱性が低下してしまうため、30%以下に抑えることが必要である。
【0018】
本発明のナフトール樹脂は、水酸基当量が260~400g/eqであり、好ましくは280~350g/eqである。260g/eqより小さいと、誘電正接が高くなり、400g/eqより大きいと架橋密度が低くなり、耐熱性が落ちてしまう。水酸基当量とは、1当量(1mol)の水酸基を含む樹脂の質量をいう。すなわち、R1が水素、アルキル基のいずれの場合も、水酸基を含む樹脂である限り、対象とする。
【0019】
また本発明のナフトール樹脂は、軟化点が100~150℃であり、好ましくは102~130℃であり、更に好ましくは102~120℃であるとよい。軟化点が100℃未満では、上記水酸基当量範囲において、耐熱性が不足し、150℃超では溶剤溶解性に劣る樹脂となるので好ましくない。
【0020】
また本発明のナフトール樹脂は、ICI粘度計で測定した150℃での溶融粘度が1.0~20.0Pa・sであり、好ましくは1.5~10.0Pa・sであるとよい。1.0Pa・s未満では硬化物を得た際に耐熱性が劣り、20.0Pa・s超では、ワニスにした際の粘度が高くハンドリング性に劣る樹脂となるので好ましくない。
【0021】
本発明のナフトール樹脂は、上記の条件を同時に満足することが好ましい。本発明のナフトール樹脂は下記方法により得ることができる。
【0022】
本発明のナフトール樹脂は、ナフトール類1モルに対して、一般式(3)で表される縮合剤を0.4~0.7モルを反応させることで得ることができ、0.45~0.6モル反応させることが好ましい。0.4モル未満では、n=6以上の成分が15%以上とならず、むしろn=1成分が30%超過となるため耐熱性に劣る樹脂となる。0.7モル超では、粘度が高く、ハンドリングが不可能な樹脂となる。
【0023】
上記縮合反応は、酸性触媒存在下で行うことが望ましい。酸性触媒としては、周知の無機酸、有機酸より適宜選択することができる。このような酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸や、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸あるいは、活性白土、シリカ-アルミナ、ゼオライト等の固体酸等が挙げられるが、反応性、コスト、取り扱いの良さからp-トルエンスルホン酸が好ましい。
【0024】
加える酸性触媒の量は、反応に使用するナフトール類、および上記一般式(3)で表される縮合剤の合計量に対して、500~50000ppm加えることが好ましく、1500~10000ppm加えることが更に好ましい。500ppm未満では得られるナフトール樹脂の当量が小さくなり水酸基当量250g/eq以上となるナフトール樹脂が得られず、50000ppm超では、触媒が樹脂中に残存し悪影響を与える。触媒は、溶媒に溶かして滴下することもできる。触媒を溶解する溶媒としてはメタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等の極性溶媒が好ましい。触媒の添加方法としては、一括で全量加えても良いし、分割して加えても良い。また、溶液にして時間をかけて滴下することもできるが、反応させる縮合剤全量のうち6割を加えた時に、触媒が全量添加されている必要がある。
【0025】
この反応は、上記一般式(3)で表される縮合剤をナフトール類に添加することで行うが、縮合剤は反応熱の制御から時間をかけて滴下することが好ましい。具体的には、100~150℃で3~20時間、好ましくは5~15時間かけて滴下することが好ましいが、縮合剤は分割して加えることもできる。例えば縮合剤量の半分を数時間かけて滴下し、発熱が収まってから更に残りの半分を数時間かけて滴下することもできる。また、滴下速度は、反応の途中で変更することもでき、初期は速度を落とし、時間とともに速度を上げることもできる。反応が進むに従って、アルコール類が副生し、温度が低下するためアルコール類は一部抜き出しながら反応を行うのが好ましい。全量抜き出すと反応温度制御の観点から好ましくなく、また水酸基当量の小さいナフトール樹脂となってしまうため好ましくない。反応系内の還流するアルコール量としては、原料のナフトール類の量1モルを基準として、0.01~0.4モル量の範囲であり、0.05~0.3モルの範囲が好ましい。上記範囲のアルコール類の還流を起こしながら反応させることで、本発明の水酸基当量範囲と分子量分布を両立するナフトール樹脂を得ることができる。
【0026】
更に、上記反応は反応溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール類や、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等を使用することができる。また、反応終了後、110~200℃で、熟成反応を行うこともできる。
【0027】
反応終了後、場合により、中和、水洗等の方法で触媒を除去し、必要に応じて残存する溶媒及び未反応のナフトール類由来のモノマー成分を除いてナフトール樹脂とする。未反応のナフトール類由来のモノマー成分は、通常、3重量%以下、好ましくは1重量%以下とする。これより多いと硬化物とした場合の耐熱性が低下する。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂は、下記一般式(2)で表され、上記一般式(1)のナフトール樹脂とエピクロルヒドリンを反応させることで製造することができる。
【化6】
一般式(2)のR
2は、グリシジル基又は炭素数1~6のアルキル基である。一般式(1)中の水酸基がエピクロルヒドリンと反応することでグリシジル基となるが、一般式(1)中のアルキル基はエピクロルヒドリンによって変質されず、一般式(2)で表される樹脂中にそのまま残存することになる。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂は、GPC測定における面積比率で、n=6以上の成分が15%以上、好ましくは20%以上であり、n=1成分が30%以下、好ましくは25%以下である。n=6以上の成分が15%未満、またはn=1成分が30%より多いと、架橋密度が下がり、耐熱性が不足する。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂は、エポキシ当量が330~450g/eqであり、340~400g/eqが好ましい。エポキシ当量が330g/eqより小さいと誘電正接が上昇し、450eq/gより大きいと耐熱性が低下する。
【0031】
また本発明のエポキシ樹脂は、軟化点が90~140℃であり、更に好ましくは92~110℃であるとよい。軟化点が90℃未満では、上記エポキシ当量範囲において、耐熱性が不足し、140℃超では溶剤溶解性に劣る樹脂となるので好ましくない。
【0032】
また本発明のエポキシ樹脂は、ICI粘度計で測定した150℃での溶融粘度が1.0~20.0Pa・s、好ましくは1.5~10.0Pa・sである。1.0Pa・s未満では硬化物を得た際に耐熱性が劣り、20.0Pa・s超では、ワニスにした際の粘度が高くハンドリング性に劣る樹脂となるので好ましくない。
【0033】
本発明のナフトール樹脂をエピクロルヒドリンと反応させる反応は、通常のエポキシ化反応と同様に行うことができる。例えば、上記ナフトール樹脂を過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に、20~150℃、好ましくは、30~80℃の範囲で1~10時間反応させる方法が挙げられる。この際のアルカリ金属水酸化物の使用量は、ナフトール樹脂の水酸基1モルに対して、0.8~1.2モル、好ましくは0.9~1.0モルの範囲である。また、エピクロルヒドリンはナフトール樹脂中の水酸基に対して過剰に用いられるが、通常、ナフトール樹脂中の水酸基1モルに対して、1.5~30モル、好ましくは2~15モルの範囲である。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより目的のエポキシ樹脂を得ることができる。
【0034】
次に本発明の硬化性樹脂組成物について説明する。本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明のナフトール樹脂(NAR)または/および本発明のエポキシ樹脂(NAER)を含むが次の3種類がある。
組成物1)NARを硬化剤の一部又は全部として配合した組成物(NAERは含まない場合)。
組成物2)NAERを、エポキシ樹脂の一部又は全部として配合した組成物(NARは含まない場合)。
組成物3)NARを硬化剤の一部又は全部として、及びNAERをエポキシ樹脂の一部又は全部として使用した組成物(NARとNAERの両者を同時に含む場合)。
【0035】
組成物1)、3)では硬化剤としてNARを、組成物2)、3)ではエポキシ樹脂としてNAERを必須成分とするが、これらを含んでいれば他の硬化剤や他のエポキシ樹脂を併用しても良い。また、組成物1)においては、NARを硬化剤として含むが、主剤として用いる樹脂は、NARの水酸基と反応するものであれば制限は無い。例えば、エポキシ樹脂やマレイミド樹脂などがあげられる。
硬化剤としてのNARの配合量は、通常、主剤(エポキシ樹脂等)100重量部に対して10~200重量部、好ましくは50~150重量部の範囲である。これより少ないと誘電特性及びCTEの改善効果が小さく、これより多いと成形性及び硬化物の耐熱性が低下する。硬化剤の全量としてナフトール樹脂(NAR)を用いる場合、通常、NARの配合量は、NARのOH基と主剤中の官能基(エポキシ基など)の当量バランスを考慮して配合する。主剤及び硬化剤の当量比は、通常、0.2~5.0の範囲であり、好ましくは0.5~2.0の範囲である。これより大きくても小さくても、樹脂組成物の硬化性が低下するとともに、硬化物の耐熱性、力学強度等が低下する。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物において、併用できる他のエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0037】
本発明の樹脂組成物には、エポキシ樹脂以外の硬化性樹脂を含むこともできる。エポキシ樹脂以外の硬化性樹脂としては、例えば、ビニルエステル樹脂、ポリビニルベンジル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、硬化型ビニル樹脂、マレイミド樹脂等のラジカル重合性樹脂、シアネート樹脂を挙げることができる。
【0038】
これらの場合、本発明のエポキシ樹脂(NAER)の配合量は、エポキシ樹脂全体又は硬化性樹脂全体中、50~100重量%、好ましくは60~100重量%の範囲であることがよい。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物において、併用できる硬化剤としては、特に制限されるものではなく、例えばフェノール系硬化剤、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
この場合、ナフトール樹脂(NAR)の配合量は、硬化剤全体中、50~100重量%、好ましくは60~100重量%の範囲であることがよい。
【0040】
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて硬化促進剤を用いることができる。例えば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等である。添加量は、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.2~5重量部の範囲である。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物には、充填剤を配合することができる。充填剤としては、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性、寸法安定性又は難燃性を高めるために添加するもの等が挙げられ、公知の充填剤を使用することができるが、特に限定されない。具体的には、球状シリカ等のシリカ、アルミナ、酸化チタン、及びマイカ等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、タルク、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等が挙げられる。水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を用いた場合、難燃助剤として作用し、リン含有率が少なくても難燃性を確保することが出来る。この中でも、シリカ、マイカ、及びタルクが好ましく、球状シリカがより好ましい。また、これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
充填剤は、そのまま用いてもよいが、エポキシシランタイプ、又はアミノシランタイプ等のシランカップリング剤で表面処理したものを用いてもよい。このシランカップリング剤としては、ラジカル重合開始剤との反応性との観点から、ビニルシランタイプ、メタクリロキシシランタイプ、アクリロキシシランタイプ、及びスチリルシランタイプのシランカップリング剤が好ましい。これにより、金属箔との接着強度や樹脂同士の層間接着強度が高まる。また、充填剤に予め表面処理する方法でなく、上記シランカップリング剤をインテグラルブレンド法で添加して用いてもよい。
【0043】
充填剤の含有量は、充填剤を除く固形分(樹脂等の有機成分を含み、溶剤を除く。)の合計100重量に対して、10~200重量部であることが好ましく、30~150重量部であることが好ましい。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記以外の添加剤をさらに含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤及びアクリル酸エステル系消泡剤等の消泡剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料や顔料、滑剤、湿潤分散剤等の分散剤等が挙げられる。
【0045】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、成型物、積層物、注型物、接着剤、塗膜、フィルムとして使用できる。例えば、半導体封止材料の硬化物は注型物又は成型物であり、かかる用途の硬化物を得る方法としては、硬化性樹脂組成物を注型、或いはトランスファ-成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに80~230℃で0.5~10時間に加熱することにより硬化物を得ることができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、プリプレグとして使用することもできる。プリプレグを製造する際には、プリプレグを形成するための基材(繊維質基材)に含浸する目的、あるいは回路基板を形成する回路基板材料とする目的でワニス状に調製して、樹脂ワニスとすることができる。
この樹脂ワニスは、回路基板用に適し、回路基板材料用ワニスとして使用できる。なお、ここでいう回路基板材料の用途は、具体的には、プリント配線基板、プリント回路板、フレキシブルプリント配線板、ビルドアップ配線板等が挙げられる。
【0047】
上記の樹脂ワニスは、例えば、以下のようにして調製される。
まず、本発明のナフトール樹脂やエポキシ樹脂等の各成分を、有機溶媒に投入して溶解させる。この際、必要に応じて、加熱してもよい。その後、必要に応じて、無機充填材等の有機溶媒に溶解しない成分を添加して、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、分散させることにより、ワニス状の硬化性樹脂組成物が調製される。ここで用いられる有機溶媒としては、各樹脂成分等を溶解させ、硬化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の極性溶剤類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤類等が挙げられ、これらを1種または2種以上を混合して使用することも可能である。誘電特性の観点から、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が好ましい。
【0048】
樹脂ワニスを作成する際に、使用する有機溶剤の量は、本発明の硬化性樹脂組成物100重量部%に対して、好ましくは5~900重量部、より好ましくは10~700重量部、特に好ましくは20~500重量部である。なお、本発明の硬化性樹脂組成物が樹脂ワニス等の溶液である場合、その有機溶剤の量は組成物の計算には含めない。
【0049】
プリプレグを作成するのに用いられる基材としては、公知の材料が用いられるが、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材がそれぞれ単独で、あるいは2種以上併せて用いられる。これら基材には、必要に応じて樹脂と基材の界面における接着性を改善する目的でカップリング剤を用いることができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤など一般のものが使用できる。
【0050】
本発明のプリプレグを得る方法としては、上記樹脂ワニスを基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。含浸は浸漬(ディッピング)、塗布等によって行われる。含浸は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。含浸後に、100~180℃で1~30分加熱乾燥することでプリプレグを得ることができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30~80重量%とすることが好ましい
【0051】
本発明の樹脂組成物は、積層板としても使用することもできる。プリプレグを用いて積層板を形成する場合は、プリプレグを一又は複数枚積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。積層物を加熱加圧する条件としては、硬化性樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧の圧力があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成形性を満足する条件で加圧することが好ましい。例えば温度を180~230℃、圧力を49.0~490.3N/cm2(5~50kgf/cm2)、加熱加圧時間を40~240分間にそれぞれ設定することができる。更にこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作製することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の片側又は両側の回路形成面に、樹脂シート、樹脂付き金属箔、又はプリプレグにて絶縁層を形成すると共に、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板を形成するものである。
【0052】
本発明の樹脂組成物からビルドアップフィルムを製造する方法は、例えば、上記樹脂ワニスを、支持フィルム上に塗布、乾燥させてフィルム状の絶縁層を形成する方法が挙げられる。このようにして形成させたフィルム状の絶縁層は、多層プリント配線板用のビルドアップフィルムとして使用できる。
【0053】
前記乾燥工程は、ビルドアップフィルム樹脂組成物の層中の有機溶剤の含有率が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させることが好ましい。乾燥条件はワニス中の有機溶剤種、有機溶媒量によっても異なるが、50~160℃で3~20分程度乾燥させることができる。
【0054】
支持体上に形成されるビルドアップフィルムの厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0055】
なお、本発明の樹脂組成物からなるビルドアップフィルムは、保護フィルムで保護されることが、表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる点から好ましい。
【0056】
支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0057】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
【0058】
本発明の樹脂組成物(樹脂ワニス)は、支持フィルムにラミネートした後に、或いは加熱硬化することによりフィルム状絶縁層を形成した後に、剥離される。加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程での酸素による硬化阻害を防ぐことができ、さらにゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。各例中の部はいずれも重量部である。
尚、各物性は、下記の条件で測定した。
【0060】
1)GPC測定における面積比率
<GPC測定条件>
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8320GPC」、
カラム:東ソー株式会社製TSKgelG4000H、G3000H、G2000
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーションEcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/分
試料調整:試料の約1.0%テトラヒドロフラン溶液
2)軟化点の測定
JISK-6911に従い環球法で測定した。
3)150℃における溶融粘度の測定
ICIコーンプレート型粘度計にて測定した。
4)水酸基当量の測定
100mLの共栓付フラスコに約6mg/eqの試料を精秤し、無水酢酸/ピリジン=3/1(容量比)で混合した試薬を3mL加え、冷却管を付け、ホットプレートで5分間加熱還流させ、5分間の放冷の後、1mLの水を加える。その液を、0.5mol/LのKOH/MeOH溶液で電位差滴定する事で算出した。
5)エポキシ当量の測定
電位差滴定装置を用い、溶媒としてクロロホルムを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢溶液を加え電位差滴定装置にて0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を用いて測定した。
【0061】
実施例1
撹拌機、冷却管、窒素導入管、滴下ロートのついた1.0L、4口セパラブルフラスコに、1-ナフトール200gを仕込み、窒素を導入しながら110℃に加熱し溶解させた。その後、p-トルエンスルホン酸0.16gを添加し、撹拌しながら130℃に昇温し、p-キシリレングリコールジメチルエーテル44gを滴下ロートから3時間かけて滴下、さらに、2.02gのp-トルエンスルホン酸を加え、発熱が無いことを確認し、p-キシリレングリコールジメチルエーテル67gを滴下し5時間反応させた。この間、反応により生成するメタノールは反応温度が120℃以下にならない速度で系外に除きながら反応させた。その後、水洗により触媒を除去し、減圧下、230℃に昇温し、未反応のモノマー成分を除去、ナフトール樹脂218gを得た(ナフトール樹脂A)。得られたナフトール樹脂AのGPC測定結果から、n=6以上の成分は18.3%、n=1成分は27.5%であった。軟化点は101℃、150℃における溶融粘度は1.2Pa・sであり、水酸基当量は320g/eqであった。
【0062】
実施例2
撹拌機、冷却管、窒素導入管、滴下ロートのついた1.0L、4口セパラブルフラスコに、1-ナフトール200gを仕込み、窒素を導入しながら110℃に加熱し溶解させた。その後、p-トルエンスルホン酸0.67gを添加し、撹拌しながら130℃に昇温し、p-キシリレングリコールジメチルエーテル134gを滴下ロートから10時間かけて滴下した。この間、反応により生成するメタノールは反応温度が120℃以下にならない速度で系外に除きながら反応させた。その後、水洗により触媒を除去し、減圧下、230℃に昇温し、未反応のモノマー成分を除去、ナフトール樹脂230gを得た(ナフトール樹脂B)。得られたナフトール樹脂BのGPC測定結果から、n=6以上の成分は29.9%、n=1成分は18.5%であった。軟化点は114℃、150℃における溶融粘度は6.9Pa・sであり、水酸基当量は274g/eqであった。
【0063】
実施例3
p-トルエンスルホン酸0.56g、p-キシリレングリコールジメチルエーテル111gに変更した以外は実施例2と同様に製造し、ナフトール樹脂Cを212g得た。得られたナフトール樹脂CのGPC測定結果から、n=6以上の成分は18.3%、n=1成分は25.4%であった。軟化点は100℃、150℃における溶融粘度は1.1Pa・sであり、水酸基当量は270g/eqであった。
【0064】
実施例4
撹拌機、冷却管、窒素導入管、滴下ロートのついた1.0L、4口セパラブルフラスコに、1-ナフトール200gを仕込み、窒素を導入しながら110℃に加熱し溶解させた。その後、p-トルエンスルホン酸0.16gを添加し、撹拌しながら130℃に昇温し、p-キシリレングリコールジメチルエーテル42gを滴下ロートから3時間かけて滴下した。その後、発熱が無いことを確認し、1.47gのp-トルエンスルホン酸を加え、42gのパラキシリレングリコールジメチルエーテルを3時間かけて滴下した。この間、反応により生成するメタノールは反応温度が120℃以下にならない速度で系外に除いた。その後、反応温度が安定していることを確認して、更にパラキシリレングリコールジメチルエーテ42gを3時間で滴下した。水洗により触媒を除去し、減圧下、230℃に昇温し、未反応のモノマー成分を除去、ナフトール樹脂D230gを得た。得られたナフトール樹脂DのGPC測定結果から、n=6以上の成分は25.0%、n=1成分は22.0%であった。軟化点は108℃、150℃における溶融粘度は2.3Pa・sであり、水酸基当量は320g/eqであった。
【0065】
実施例5
p-トルエンスルホン酸0.68g、p-キシリレングリコールジメチルエーテル125gに変更した以外は実施例2と同様に製造し、ナフトール樹脂Eを222g得た。得られたナフトール樹脂EのGPC測定結果から、n=6以上の成分は22.0%、n=1成分は24.2%であった。軟化点は105℃、150℃における溶融粘度は1.6Pa・sであり、水酸基当量は290g/eqであった。
【0066】
実施例6
p-トルエンスルホン酸2.80g、p-キシリレングリコールジメチルエーテル150gに変更した以外は実施例2と同様に製造し、ナフトール樹脂Fを222g得た。得られたナフトール樹脂FのGPC測定結果から、n=6以上の成分は31.2%、n=1成分は16.5%であった。軟化点は122℃、150℃における溶融粘度は10.9Pa・sであり、水酸基当量は348g/eqであった。
【0067】
比較例1
p-トルエンスルホン酸0.07g、p-キシレングリコールジメチルエーテル129gを3時間で滴下、反応で生成するメタノールは全量流出させたこと以外、実施例2と同様に実施し、ナフトール樹脂Gを得た。得られたナフトール樹脂GのGPC測定の結果n=6以上の成分が25.0%、n=1成分が21.8%、水酸基当量が223g/eq、軟化点が109℃、150℃での溶融粘度が2.4Pa・sであった。
【0068】
比較例2
p-トルエンスルホン酸1.35g、p-キシレングリコールジメチルエーテル69gに変更したこと以外、実施例2と同様に実施し、ナフトール樹脂Hを得た。得られたナフトール樹脂HのGPC測定の結果n=6以上の成分が2.4%、n=1成分が49.9%、水酸基当量が265g/eq、軟化点が85℃、150℃での溶融粘度が0.2Pa・sであった。
【0069】
比較例3
p-トルエンスルホン酸0.10g、p-キシレングリコールジメチルエーテル125gに変更したこと以外、実施例2と同様に実施し、ナフトール樹脂前駆体を220g得た。得られたナフトール樹脂前駆体のGPC測定の結果n=6以上の成分が24.8%、n=1成分が19.9%、水酸基当量が223g/eq、軟化点が106℃、150℃での溶融粘度が1.9Pa・sであった。得られたナフトール樹脂前駆体220gを、撹拌機、冷却管、窒素導入管、滴下ロートのついた1.0L、4口セパラブルフラスコに仕込み、トルエン24.4gを加えて、窒素を導入しながら130℃に加熱し溶解させた。その後、p-トルエンスルホン酸1.53gを添加し、メタノール20gを10時間かけて滴下し、更に5時間反応させた。その後、水洗により触媒を除去し、ナフトール樹脂I200gを得た。得られたナフトール樹脂IのGPC測定の結果n=6以上の成分が25.2%、n=1成分が19.3%、水酸基当量が250g/eq、軟化点が106℃、150℃での溶融粘度が2.0Pa・sであった。
【0070】
次に、ナフトール樹脂を使用したエポキシ樹脂の実施例、比較例を示す。
実施例7
実施例1で得たナフトール樹脂A100gをエピクロルヒドリン181g及びジグライム27gに溶解し、減圧下、60℃にて48%水酸化ナトリウム水溶液29gを4時間かけて滴下した。この間、生成する水はエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、更に1時間反応を継続した。その後、エピクロルヒドリン及びジグライムを減圧留去し、メチルイソブチルケトン220gに溶解した後、水68gを加え、分液することで生成した塩を除去した。その後、48%水酸化カリウム水溶液4.8gを加えて、85℃で2時間反応させた。反応後、水洗を行った後、溶媒であるメチルイソブチルケトンを減圧留去し、褐色のエポキシ樹脂103gを得た(エポキシ樹脂A)。得られたエポキシ樹脂AのGPC測定におけるn=6以上の成分は、19.1%、n=1以下の成分は26.4%、エポキシ当量は380g/eq.であり、軟化点は91℃、150℃での溶融粘度は1.1Pa・s、であった。
【0071】
実施例8
ナフトール樹脂Bを使用し、エピクロルヒドリンを167g、ジグライムを25g、48%水酸化ナトリウム25gを使用した以外は、実施例7と同様に実施し、エポキシ樹脂Bを97g得た。エポキシ樹脂BのGPC測定の結果、n=6以上の成分は32.6%、n=1成分は18.3%であり、エポキシ当量は334g/eq、軟化点は103℃、150℃での溶融粘度は4.7Pa・s、であった。
【0072】
実施例9
ナフトール樹脂Cを使用し、エピクロルヒドリンを206g、ジグライムを31g、48%水酸化ナトリウム34gを使用した以外は、実施例7と同様に実施し、エポキシ樹脂Cを95g得た。エポキシ樹脂CのGPC測定の結果、n=6以上の成分は19.2%、n=1成分は24.4%であり、エポキシ当量は332g/eq.であり、軟化点は91℃、150℃での溶融粘度は1.6Pa・s、であった。
【0073】
実施例10
ナフトール樹脂Dを使用した以外は、実施例7と同様に実施し、エポキシ樹脂Dを90g得た。エポキシ樹脂DのGPC測定の結果、n=6以上の成分は24.9%、n=1成分は20.8%であり、エポキシ当量は378g/eq.であり、軟化点は101℃、150℃での溶融粘度は2.2Pa・sであった。
【0074】
実施例11
ナフトール樹脂Eを使用し、エピクロルヒドリンを191g、ジグライムを29g、48%水酸化ナトリウム32gを使用した以外は、実施例7と同様に実施し、エポキシ樹脂Eを85g得た。エポキシ樹脂EのGPC測定の結果、n=6以上の成分は23.2%、n=1成分は23.1%であり、エポキシ当量は348g/eq.であり、軟化点は96℃、150℃での溶融粘度は1.5Pa・sであった。
【0075】
実施例12
ナフトール樹脂Fを使用し、エピクロルヒドリンを160g、ジグライムを24g、48%水酸化ナトリウム26gを使用した以外は、実施例7と同様に実施し、エポキシ樹脂Fを90g得た。エポキシ樹脂FのGPC測定の結果、n=6以上の成分は31.5%、n=1成分は15.0%であり、エポキシ当量は405g/eq.であり、軟化点は114℃、150℃での溶融粘度は9.2Pa・sであった。
【0076】
比較例4
ナフトール樹脂Gを使用し、エピクロルヒドリンを249g、ジグライムを38g、48%水酸化ナトリウム41gを使用した以外は、実施例7と同様に実施し、エポキシ樹脂Gを101g得た。エポキシ樹脂GのGPC測定の結果、n=6以上の成分は24.9%、n=1成分は13.0%であり、エポキシ当量は283g/eq.であり、軟化点は99℃、150℃での溶融粘度は2.2Pa・sであった。
【0077】
比較例5
ナフトール樹脂Hを使用し、エピクロルヒドリンを210g、ジグライムを32g、48%水酸化ナトリウム34gを使用した以外は、実施例7と同様に実施し、エポキシ樹脂Hを103g得た。エポキシ樹脂HのGPC測定の結果、n=6以上の成分は4.9%、n=1成分は46.0%であり、エポキシ当量は327g/eq.であり、軟化点は75℃、150℃での溶融粘度は0.35Pa・sであった。
【0078】
比較例6
ナフトール樹脂Iを使用し、エピクロルヒドリンを222g、ジグライムを33g、48%水酸化ナトリウム37gを使用した以外は、実施例7と同様に実施し、エポキシ樹脂Iを103g得た。エポキシ樹脂IのGPC測定の結果、n=6以上の成分は32.6%、n=1成分は18.0%であり、エポキシ当量は315g/eq.であり、軟化点は103℃、150℃での溶融粘度は2.1Pa・sであった。
【0079】
実施例13~18、比較例7~9
エポキシ樹脂成分として、ESN-475V(新日鉄住金化学製ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、エポキシ当量:325g/eq)を使用し、実施例1~6で得たナフトール樹脂A~F、比較例1~3で得たナフトール樹脂G~Iを硬化剤成分として用い、硬化促進剤として2E4MZ(四国化成株式会社製)を用い、表1に示す配合でエポキシ樹脂組成物を得た。更に、190℃で成形し、200℃で5時間加熱することで硬化物を得た。
【0080】
【0081】
実施例19~24、比較例10~12
エポキシ樹脂として、実施例7~12で得たナフトール系エポキシ樹脂A~F、比較例4~6で得たナフトール系エポキシ樹脂G~Iを用い、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(PN:BRG-557:昭和電工株式会社製)、硬化促進剤として2E4MZ(四国化成株式会社製)を用い、表2に示す配合でエポキシ樹脂組成物を得た。更に、190℃で成形し、200℃で5時間加熱することで硬化物を得た。
【0082】
【0083】
得られた組成物の硬化物について、各物性を以下の方法で測定した。
1)ガラス転移温度(Tg)及び低線膨張係数(CTE)の測定
ガラス転移温度(Tg)及びCTEの測定は、熱機械測定装置を用いて10℃/分の昇温速度で求めた。ガラス転移温度(Tg)はCTE曲線の変曲点から求め、CTEは70℃から100℃(CTE:70-100℃)と、Tg以上の200℃から230℃(CTE:200-230℃)の2点において評価した。
2)比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定
誘電正接の評価は、Agilent製のインピーダンスマテリアルアナライザー(E4991A)を用い、25℃、湿度60%環境下で容量法により、1GHzでの比誘電率(Dk)、誘電正接(Df)を測定した。
【0084】
評価の結果(表3、4)、本発明のナフトール樹脂又はエポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物は、低誘電正接、耐熱性および低CTEに優れることを確認できた。
【0085】
【0086】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のナフトール樹脂又はエポキシ樹脂は、高周波対応の回路基板材料や低反りが求められるパッケージ基板材料の用途に好適に使用することができる。