(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】傾斜した格子を製造する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
G02B5/18
(21)【出願番号】P 2021532889
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 US2019059059
(87)【国際公開番号】W WO2020123054
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-05
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ, モーガン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー ティマーマン タイセン, ラトガー
(72)【発明者】
【氏名】クラーク, メーガン
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-069605(JP,A)
【文献】特開平05-299761(JP,A)
【文献】特開2005-004068(JP,A)
【文献】特開平06-053600(JP,A)
【文献】特開2000-193813(JP,A)
【文献】特開2000-303193(JP,A)
【文献】米国特許第05116461(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折光学素子を形成する方法であって、
基板上に
光学格子が未形成の光学格子層を設けることと、
前記光学格子層の上にパターニングされたハードマスクを設けることと、
前記光学格子層の一部分及び前記パターニングされたハードマスクの上だけに
傾斜表面プロファイルを有するマスクを形成することと、
前記光学格子層に複数のトレンチをエッチングして、光学格子を形成することであって、前記複数のトレンチの第1のトレンチの第1の深さは、前記複数のトレンチの第2のトレンチの第2の深さとは異なっている、光学格子を形成することと、
前記パターニングされたハードマスクを、間隙によってそれぞれが互いに分離された複数のハードマスク要素として形成することとを含み、
前記複数のハードマスク要素のうち第1の部分集合が、前記複数のハードマスク要素のうち第2の部分集合の隣に存在し、前記複数のハードマスク要素の前記第1の部分集合のそれぞれが第1の幅を有し、前記複数のハードマスク要素の前記第2の部分集合のそれぞれが第2の幅を有し、前記第1の幅が前記第2の幅よりも大きい、方法。
【請求項2】
前記複数のトレンチの前記第1のトレンチの第1の幅は、前記複数のトレンチの前記第2のトレンチの第2の幅とは異なっている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学格子層に前記複数のトレンチをエッチングする前に、前記
傾斜表面プロファイルを有するマスクをパターニングすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エッチングすることが、角度を付けたイオンエッチングを行うことを含み、前記角度を付けたイオンエッチングが、反応性イオンビームによって行われ、前記基板が、前記反応性イオンビームに対して走査方向に沿って走査される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マスクを、前記光学格子層の上面に対して2つ以上の高さを含むよう形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のハードマスク要素の前記第2の部分集合の上だけに前記マスクを形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
光学格子部品を形成する方法であって、
基板上に
光学格子が未形成の光学格子層を設けることと、
前記光学格子層の上にパターニングされたハードマスクを設けることと、
前記光学格子層の一部分及び前記パターニングされたハードマスクの上だけに
傾斜表面プロファイルを有するマスクを形成することであって、前記
傾斜表面プロファイルを有するマスクは、前記パターニングされたハードマスクよりもエッチング抵抗が低い、
傾斜表面プロファイルを有するマスクを形成することと、
前記光学格子層に複数のトレンチをエッチングして、光学格子を形成することであって、トレンチの深さが、前記複数のトレンチのうちの1つ以上のトレンチの間で変わる、光学格子を形成することと、
前記パターニングされたハードマスクを、間隙によってそれぞれが互いに分離された複数のハードマスク要素として形成することを含み、
前記複数のハードマスク要素の第1のハードマスク要素の幅が、前記複数のハードマスク要素の第2のハードマスク要素の幅とは異なっている、方法。
【請求項8】
前記エッチングすることが、角度を付けたイオンエッチングを行うことを含み、前記角度を付けたイオンエッチングが、前記光学格子層、前記パターニングされたハードマスク、及び前記マスクのそれぞれに適用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光学格子層の前記一部分に形成された前記複数のトレンチの第1のトレンチが、第1の深さを有し、前記光学格子層の第2の部分に形成された前記複数のトレンチの第2のトレンチが、第2の深さを有し、前記第2の深さが、前記第1の深さより大きい、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記光学格子層に前記複数のトレンチをエッチングする前に、前記マスクをパターニングすることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のハードマスク要素のうち第1の部分集合を、前記複数のハードマスク要素のうち第2の部分集合の隣に形成することをさらに含み、前記複数のハードマスク要素の前記第1の部分集合のそれぞれが、第1の幅を有し、前記複数のハードマスク要素の前記第2の部分集合のそれぞれが、第2の幅を有し、前記第1の幅が前記第2の幅よりも大きい、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
光学格子部品を形成する方法であって、
基板上に
トレンチが未形成の光学格子層を設けることと、
前記光学格子層の上にパターニングされたハードマスクを設けることと、
前記光学格子層の一部分及び前記パターニングされたハードマスクの上だけに
傾斜表面プロファイルを有するマスクを形成することと、
前記光学格子層、前記パターニングされたハードマスク、及び前記
傾斜表面プロファイルを有するマスクをエッチングすることによって、前記光学格子層に複数のトレンチを形成することであって、以下の格子特徴、即ち、トレンチの深さ及びトレンチの幅の少なくとも1つが、前記複数のトレンチのうちの1つ以上のトレンチの間で変わる、複数のトレンチを形成すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/780,138号の優先権を主張し、その全内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施形態は、概して、格子を製造する方法に関する。より具体的には、本開示は、トレンチの高さ及び幅が可変的な格子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
光学レンズといった光学素子は、様々な利点のために光を操作するために長い間利用されてきた。近年では、ホログラフィックデバイス、及び拡張現実/仮想現実(AR(augmented reality)及びVR(virtual reality))デバイスにおいて、マイクロ回折格子が利用されている。1つの特定のAR及びVRデバイスが、ヘッドセットといった装着可能な表示システムであり、人間の目から短距離内に画像を表示するよう構成されている。このような装着可能なヘッドセットは、ヘッドマウントディスプレイと呼ばれることもあり、ユーザの目から数センチメートル以内に画像を表示するフレームが具備されている。画像は、マイクロディスプレイといったディスプレイ上の、コンピュータにより生成された画像でありうる。光学部品が、所望の画像の光を伝えるよう構成されており、ここでは、上記画像がユーザに見えるようにするために、ユーザの目に対するディスプレイ上で光が生成される。画像が生成されるディスプレイは、ライトエンジンの一部を形成することができ、従って、画像が、光学部品によって案内される平行光ビームを生成して、ユーザに見える画像を提供する。
【0004】
ディスプレイから人間の目に画像を伝達するために、様々な種類の光学部品が使用されてきた。拡張現実レンズ又はコンバイナ(結合器)において適切に機能するために、光学格子の幾何学的形状は、様々な効果を実現するよう設計されうる。ある素子では、複数の異なる領域、例えば2つ以上の異なる領域が、レンズの表面上に形成され、ここで、1の領域内の格子の幾何学的形状は、他の領域内の格子の幾何学的形状とは異なっている。
【0005】
角度を付けた表面レリーフ光学格子は、角度を付けたトレンチを、基板又は基板上の膜積層体に直接的にエッチングすることにより作製することが可能である。光学格子の効率を制御するパラメータの一つが、トレンチの深さである。残念ながら、回折界及び視野にわたって高さ、幅、及び/又は形状が変えられる光学格子を形成する現在のアプローチには、非常に困難が伴うことが立証されている。
【0006】
従って、トレンチの高さ及び幅が可変的な格子を製造する改良された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本概要は、以下の「発明を実施するための形態」で詳述する構想から選んだものを、簡略化した形で紹介するために設けられている。本概要は、特許請求される発明の主題の重要な特徴又は本質的な特徴を確認することを意図しておらず、また、特許請求される発明の主題の範囲を決定する際の助けとしても意図されていない。
【0008】
本開示の実施形態は、回折光学素子を形成する方法を提供し、本方法は、基板上に光学格子層を設けることと、光学格子層の上にパターニングされたハードマスクを設けることと、光学格子層の一部分及びパターニングされたハードマスク上だけマスクを形成することを含む。本方法は、光学格子層に複数のトレンチをエッチングして、光学格子を形成することであって、複数のトレンチの第1のトレンチの第1の深さは、複数のトレンチの第2のトレンチの第2の深さとは異なっている、光学格子を形成することをさらに含みうる。
【0009】
本開示の実施形態は、光学格子部品を形成する方法をさらに提供し、本方法は、基板上に光学格子層を設けることと、光学格子層の上にパターニングされたハードマスクを設けることを含む。本方法は、光学格子層の一部分及びパターニングされたハードマスクの上だけにマスクを形成することをさらに含みうる。本方法は、光学格子層に複数のトレンチをエッチングして、光学格子を形成することであって、以下の格子特徴、即ち、トレンチの深さ、及びトレンチの幅のうちの少なくとも1つが、複数のトレンチのうちの1つ以上のトレンチの間で変わる、光学格子を形成することをさらに含みうる。
【0010】
本開示の実施形態は、光学格子部品を形成する方法をさらに提供し、本方法は、
基板上に光学格子層を設けることと、
光学格子層の上にパターニングされたハードマスクを設けることを含む。
本方法は、光学格子層の一部分及びパターニングされたハードマスクの上だけにマスクを形成することをさらに含みうる。本方法は、光学格子層、パターニングされたハードマスク、及びマスクをエッチングすることによって、光学格子層に複数のトレンチを形成することであって、以下の格子特徴、即ち、トレンチの深さ及びトレンチの幅の少なくとも1つが、複数のトレンチのうちの1つ以上のトレンチの間で変わる、複数のトレンチを形成することをさらに含みうる。
【0011】
添付の図面は、以下のように、本開示の原則の実際的な適用を含む、本開示の例示的なアプローチを示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係るディスプレイ装置の概略的な断面図である。
【
図2A】本開示の実施形態に係る光学格子部品の側方断面図を示す。
【
図2B】本開示の実施形態に係る
図1Aの光学格子部品の上面図を示す。
【
図3A】本開示の実施形態に係る、概略的な形態で描かれた処理装置を示す。
【
図3B】本開示の実施形態に係る抽出プレート部品及び基板を上面図で示す。
【
図4A-D】本開示の実施形態に係る、光学格子層に形成された、角度を付けた構造の側方断面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る、光学格子を形成するためのエッチングプロセスを示す。
【
図6】本開示の実施形態に係る、光学格子を形成するためのエッチングプロセスを示す。
【
図8】本開示の実施形態に係る、一連のエッチングサイクルにわたる回折光学素子を示す。
【
図9】本開示の実施形態に係る、一連のエッチングサイクルにわたる回折光学素子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面は、必ずしも縮尺どおりではない。図面は、単なる表現であり、本開示の特定のパラメータを表すことを意図しない。図面は、本開示の例示的な実施形態を示すことを意図しており、したがって、範囲を限定するものと見なされるべきではない。図面では、同様の番号が同様の要素を表す。
【0014】
さらに、図面の幾つかにおける特定の要素は、説明を明確にするために、省略されるか、又は縮尺通りには図示されていないことがある。断面図は、「スライス(slice)」、又は「近視的な(near-sighted)」断面図の形をとっていることがあり、説明を明確にするために、そうでなければ「本当の(true)」断面図では見える特定の背景線が省略される。さらに、明確にするために、幾つかの参照番号は、或る特定の図面で省略されていることがある。
【0015】
ここで、本開示に係る方法を、方法の実施形態が示された添付の図面を参照しながら、以下により完全に説明する。方法は、多くの様々な形態により具現化されてよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと見做されない。その代わりに、上記実施形態は、本開示が一貫しておりかつ完全となるように提供され、当業者に方法の範囲を完全に伝える。
【0016】
図1は、表示装置100に実装された導波路104の概略的な断面図である。表示装置100は、拡張現実、仮想現実、混合若しくは融合された現実の用途、及び、例えばハンドヘルドの表示デバイスといった他の表示用途のために構成されうる。
【0017】
表示装置100は、例えばユーザの視点101から周囲環境130を見ているユーザについて、導波路104介した周囲環境130の透明な観視のために、導波路104を利用する。表示装置100に実装されたときに、導波路104の第1の表面122が、ユーザの眼111の近傍に配置され、当該目111に対向している。導波路104の第2の表面124が、第1の表面122の反対側に配置されており、周囲環境130の近傍にあって当該周囲環境130に対向している。平面的なものとして図示されているが、導波路104は、望まれる用途に従って、湾曲してよい。
【0018】
表示装置100は、生成された仮想画像の光120を導波路104内へと方向付けるための画像マイクロディスプレイ128をさらに備える。仮想画像の光120が、導波路104内を伝播する。一般に、導波路104は、入力カップリング領域106と、導波路領域108と、出力カップリング領域110とを含む。入力カップリング領域106は、画像マイクロディスプレイ128から光120(仮想画像)を受信し、光120は、導波路領域108を介して出力カップリング領域110へと進み、そこで、ユーザの視点101及び視野によって、周囲環境130に重なった仮想画像の可視化が可能となる。画像マイクロディスプレイ128は、仮想画像の光を導波路104内へと投影するよう動作可能な、液晶オンシリコンマイクロディスプレイといった高解像度表示発生器である。
【0019】
導波路104は、入力格子構造112、及び出力格子構造114を含む。入力格子構造112は、導波路104上の、入力カップリング領域106に対応する領域内に形成されている。出力格子構造114は、導波路104上の、出力カップリング領域110に対応する領域に形成されている。入力格子構造112及び出力格子構造114は、導波路104内での光の伝播に影響を与える。例えば、入力格子構造112は、画像マイクロディスプレイ128からの光を入射(couple:結合)し、出力格子構造は、その光をユーザの眼111へと出射(couple out)する。
【0020】
例えば、入力格子構造112は、ユーザの眼111で表示される仮想画像の視野に影響を与える。出力格子構造114は、収束されて導波路104から出射される光120の量に影響を与える。加えて、出力格子構造114は、ユーザの視点101から仮想画像の視野を変えて、ユーザが画像マイクロディスプレイ128からの仮想画像を見ることが可能な視野角を広げる。他の例において、格子構造(図示せず)はまた、入力カップリング領域106と出力カップリング領域110との間の導波路領域108に形成される。追加的に、所望の格子構造がそれぞれに形成された複数の導波路104が、表示装置100を形成するために利用可能である。
【0021】
図2Aは、本開示の実施形態に係る、光学格子部品200の側方断面図を示す。
図2Bは、光学格子部品200の上面図を示す。光学格子部品200は、本開示の様々な実施形態によれば、眼鏡上に配置される光学格子として使用されよく、又は、眼鏡と一体に形成されてよい。光学格子部品200は、基板202と、基板202上に配置された光学格子206と、を含む。光学格子206は、
図1の入力格子構造112及び/又は出力格子構造114と同じであってよく、又は、入力格子構造112及び/又は出力格子構造114と同様であってよい。幾つかの実施形態において、基板202は、公知のガラスといった光学的に透明な材料である。幾つかの実施形態において、基板202はケイ素である。後者の場合に、基板202はケイ素であり、ガラス又は石英といった他の光学基板の表面上の膜に格子パターンを転写するためには、他のプロセスが利用される。上記実施形態は、本文脈には限定されない。光学格子206は、以下でさらに説明するように、光学格子層207内に配置することができる。
図2A及び
図2Bの非限定的な実施形態において、光学格子部品200は、基板202と光学格子層207との間に配置されたエッチング停止層204を更に含む。本開示の幾つかの実施形態によれば、光学格子層207は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ガラス、TiO
2、又は他の材料といった、光学的に透明な材料でありうる。
【0022】
本開示の幾つかの実施形態によれば、光学格子206は、100nm~1000nmの範囲の格子高さHを含みうる。このようなものとして、光学格子206は、AR&VR装置の接眼レンズで使用するために適しうる。同実施形態は、本文脈には限定されない。幾つかの実施形態によれば、エッチング停止層204は、光学的に透明な材料であってよく、10nm~100nmの厚さを有しうる。同実施形態は、本文脈には限定されない。エッチング停止層204の適切な材料の例として、SiN、SiO2、TiN、SiC、及び他の材料が挙げられる。光学格子206が、眼鏡の接眼レンズに利用され又は組み込まれる実施形態において、特に適切な材料は、光学的に透明な材料である。光学格子部品200が、接眼レンズの光学格子を作製するためのマスタを形成する実施形態において、エッチング停止層204は、光学的に透明である必要はない。さらに、幾つかの実施形態において、エッチング停止層204を省略することができる。
【0023】
図2Aにさらに示されるように、光学格子206は、複数の角度を付けた構造を含みことができ、当該構造は、角度を付けた構成要素又は構造212として示され、基板202の平面(例えば、x-y平面)に対する垂線に対して非ゼロの傾斜角で配置されている。角度を付けた構造212は、傾斜した格子の1つ以上のフィールド内に含まれ得、傾斜した格子が一緒に「マイクロレンズ」を形成する。
図2Aの例では、示されるデカルト座標系のY軸に対して平行な方向に沿って、均一な高さが規定され、ここで、第1の方向(y軸)が、基板202の平面、この場合x-y平面に対して平行である。他の実施形態では、角度を付けた構造212が、y軸に対して平行な方向に沿った可変的な高さを規定しうる。複数のトレンチ214が、基板202の上面又は光学格子層207の上面といった平面に対する垂線に対して、非ゼロの傾斜角で配置されうる。以下でより詳細に説明するように、複数のトレンチ214のうちの1つ以上のトレンチの深さ「d」及び/又は幅「w」が、エッチング前に光学格子206の上に設けられるマスク層の存在によって変わりうる。
【0024】
幾つかの実施形態において、Y方向に沿った光学格子206の幅が、数ミリメートルから数センチメートルのオーダーであってよく、格子高さHが、1マイクロメートル以下のオーダーであってよい。これに対応して、格子高さHの変動は、数百ナノメートル以下のオーダーの範囲でありうる。格子の高さH又は深さdの滑らかな変動の例は、格子の隣り合うラインの間での格子の高さH又は深さdの変化が、10%未満、5%未満、又は1%未満である場合である。同実施形態は、本文脈には限定されない。したがって、接眼レンズにおいて、格子高さHが、例えばミリメートルからセンチメートルの距離にわたって、接眼レンズの表面に沿って所与の方向に、連続的にかつ急激ではない形で変わりうる。より具体的には、5mmの距離にわたる格子高さHの変化が50%とすると、格子高さHが、1マイクロメートルのピッチ有する約5×103のラインにわたって連続的に変わりうる。この変化には、0.5/5×104又は約0.01%の隣り合うラインの相対的高さの平均的変化が伴う。
【0025】
ここで
図3Aを参照すると、概略的な形態で描かれた処理装置300が示されている。処理装置300は、例えば本実施形態の光学格子を生成するために、基板の部分をエッチングし又は基板上に堆積するための処理装置である。処理装置300は、プラズマベースの処理システムとすることができ、当該技術分野で知られた任意の好都合な方法によりプラズマ304をその中で生成させるためのプラズマチャンバ302を有する。図示のように、抽出開孔308を有する抽出プレート306を設けることができ、ここで、光学格子層207(
図2A~
図2B)を反応的にエッチングし又は堆積させるために、不均一的エッチング又は不均一的な堆積が行われうる。例えば、前述の光学格子構造を含む基板202が、処理チャンバ324内に配置される。基板202の基板平面が、示されるデカルト座標系のX-Y平面によって表されており、基板202の平面に対する垂線が、Z軸(Z方向)に延びている。
【0026】
図3Aにさらに示されるように、既知のシステムにおけるように、プラズマチャンバ302と、基板202又は基板プラテン314と、の間のバイアス供給部320を用いて電圧差が印加されたときに、イオンビーム310が抽出されうる。バイアス供給部320は、例えば、処理チャンバ324に接続され得、処理チャンバ324及び基板202が同じ電位に維持される。
【0027】
様々な実施形態によれば、イオンビーム310が、垂線326に沿って抽出され、又は、垂線326に対して、φで示される非ゼロの入射角で抽出されうる。
【0028】
イオンビーム310中のイオンの軌道は、互いに対して相互に平行であることができ、又は、互いに10度以内といった、狭い角度の広がり範囲内にありうる。他の実施形態において、以下に説明するように、イオンビーム310内のイオンの軌道が、例えば扇形状に、互いに収束又は発散しうる。よって、φの値は、入射角の平均値を表すことができ、ここで、個々の軌道は、平均値から数度まで変化する。様々な実施形態において、イオンビーム310は、公知のシステムにおけるように、連続ビームとして、又はパルスイオンビームとして抽出されうる。例えば、バイアス供給部320は、プラズマチャンバ302と処理チャンバ324との間の電圧差を、パルス化されたDC電圧として供給するよう構成することができ、電圧、パルス周波数、及び、パルス化された電圧のデューティサイクルが互いに別々に調整されうる。
【0029】
様々な実施形態において、反応性ガスといったガスが、供給源322によってプラズマチャンバ302に供給されうる。プラズマ304は、プラズマチャンバ302に供給される化学種の厳密な組成に従って、様々なエッチング種又は堆積種を生成することができる。
【0030】
様々な実施形態において、イオンビーム310が、
図3Bに示されるデカルト座標系のX方向に沿って延びる長軸を有するリボン反応性イオンビームとして提供されうる。基板202を含む基板プラテン314を、抽出開孔308に対して、及び従ってイオンビーム310に対して、走査方向330に沿って走査することによって、イオンビーム310は、基板202をエッチングし又は基板202上に堆積することができる。イオンビーム310は、不活性ガス、反応性ガスを含む任意の好都合なガス混合物で構成することができ、幾つかの実施形態では、他のガス種と共に提供されうる。特定の実施形態において、イオンビーム210及び他の反応種が、基板202へのエッチングレシピとして提供され、光学格子層307といった層の指向性反応性イオンエッチングが実行されうる。そのようなエッチングレシピは、当該技術分野で知られた、酸化物又は他の材料といった材料をエッチングするための知られた反応性イオンエッチング化学物質を使用しうる。他の実施形態において、イオンビーム310が不活性種から形成されてよく、ここでは、イオンビーム310が、基板202が当該イオンビーム310に対して走査される間、物理的スパッタリングによって基板202又はより詳細には光学格子層207をエッチングするために提供される。
【0031】
図3Bの例では、イオンビーム310が、X方向に沿ってビーム幅まで延びたリボン反応性イオンビームとして提供され、ここで、ビーム幅は、X方向に沿った最も広い部分でも、基板202の全幅を曝露させるのに十分である。例示的なビーム幅は、10cm、20cm、30cm、又はそれ以上の範囲にあり、Y方向に沿った例示的なビーム長は、2mm、3mm、5mm、10mm、又は20mmの範囲にありうる。本実施形態は、この文脈に限定されない。
【0032】
特に、走査方向330は、Y方向に沿った2つの対向する方向(180度)における基板202の走査を表すことができ、又は、左に向かう走査又は右に向かう走査を単に表すことができる。
図3Bに示すように、イオンビーム310の長軸が、走査方向330に対して垂直に、X方向に沿って延びている。したがって、基板202の走査が、走査方向330に沿って基板202の左側から右側への適切な長さで行われるときに、基板202の全体がイオンビーム310に曝露されうる。
【0033】
図2A~
図2Bの角度を付けた構造212といった格子の特徴は、処理レシピを用いて、イオンビーム310に対して基板202を走査することによって実現されうる。つまり、処理レシピによって、プロセスパラメータの集合のうちの少なくとも1つのプロセスパラメータが変更され、例えば、基板202の走査中にイオンビーム310によって生ぜしめられるエッチング速度又は堆積速度等の変更という効果が与えられうる。このようなプロセスパラメータは、基板202の走査速度、イオンビーム310のイオンエネルギー、パルスイオンビームとして供給されるときのイオンビーム310のデューティサイクル、イオンビーム310の広がり角、及び、基板202の回転位置を含みうる。本明細書の少なくとも幾つかの実施形態において、処理レシピは、光学格子層207の材料(複数可)と、イオンビーム310のエッチングイオンの化学物質と、をさらに含みうる。さらに別の実施形態において、処理レシピは、寸法及びアスペクト比を含む光学格子層207の開始ジオメトリを含みうる。同実施形態は、本文脈には限定されない。
【0034】
図4A~
図4Dは、本開示の実施形態に係る回折光学素子400を形成する方法を示している。
図4Aに示されるように、光学格子層407が、基板402の上に形成されうる。図示されていないが、幾つかの実施形態において、基板402と光学格子層407との間に、エッチング停止層が設けられうる。基板402は、ケイ素といった光透過性材料で作製されうる。存在する場合に、エッチング停止層は、例えば、化学気相堆積(CVD:chemical vapor deposition)プロセス、物理的気相堆積(PVD:physical vapor depositio)プロセス、又はスピンオン(spin-on)プロセスによって形成されうる。エッチング停止層は、とりわけ、窒化チタン、窒化タンタルといった、エッチングプロセスに対して耐性がある材料で形成される。
【0035】
格子層407は、光透過性材料で形成されうる。一例において、格子層407は、窒化ケイ素又は酸化ケイ素といったケイ素ベースの材料、又は、酸化チタンといったチタンベースの材料で形成される。格子層407の材料は、約1.3以上といった、例えば1.5さえ上回る高い屈折率を有する。一般に、格子層407は、厚さが約1マイクロメートル未満、例えば、おおよそ150nmと700nmとの間でありうる。
【0036】
図4Bに示すように、パターニングされたハードマスク410が、光学格子層407の上に形成されうる。幾つかの実施形態において、パターニングされたハードマスク(以下、「ハードマスク」という)410は、フォトレジスト積層体(図示せず)から形成され、ここで、ハードマスク層は、格子層407の上にコンフォーマルに(conformally)形成されている。ハードマスク層は、例えば、化学気相堆積プロセスを用いて窒化チタンから形成される。図示されるように、ハードマスク410が、間隙411によって互いに分離された複数のハードマスク要素410A~410Fとして形成される。間隙411のそれぞれは、光学格子層407の上面413に対する選択的なエッチングプロセスを利用して形成されうる。幾つかの実施形態において、複数のハードマスク要素410A~410Fは、フォトレジスト積層体をエッチングすることにより形成される。幾つかの実施形態において、複数のハードマスク要素410A~410Fのそれぞれは、同じ高さ「hmh」及び/又は幅「hmw」を有する。他の実施形態において、複数のハードマスク要素410A~410Fのうちの1つ以上が、異なる又は不均一な高さ及び/又は厚さを有する。
【0037】
次いで、
図4Cに示すように、マスク420が、光学格子層407及びハードマスク410の上に形成されうる。幾つかの実施形態において、マスク420は、光学格子層407の一部分及びハードマスク410の上だけに形成された「ソフト(soft)」マスクである。例えば、マスク420は、ハードマスク要素410A~410Cの上に形成することができ、その一方で、ハードマスク要素410D~410Fは、覆われずに露出したままである。非限定的な実施形態において、マスク420は、3D印刷を利用して回折光学素子400の上に形成されるフォトレジストタイプの材料でありうる。マスク420に感光性材料を使用する例示的な実施形態が、
図11で示される。他の実施形態において、マスク420が、フォトリソグラフィ中に「描画(imaged)」されてよく、又は、反応性イオンエッチング若しくはスパッタイオンエッチング、及び、レーザーアブレーションといったサブトラクティブ法によって形成されうる。例えば、エッチング深さプロファイリングの全て又はその一部が、マスクのパターニングプロセスを介して実現されうる。この場合、角度を付けたエッチングは均一なプロセスでありうる。マスク420は、均一な高さ「h1」又は可変的な高さを有しうる。例えば、マスク420は、1つ以上の傾斜区分422を含みうる。マスク420における傾斜区分422の形状が、以下でより詳細に説明するように、トレンチの底部の形状に転写されうる。
【0038】
幾つかの実施形態において、最初にマスク420を整形し、次いでその形状を回折光学素子400に転写することによって、マスク420が、光学格子層407及びハードマスク410の上に形成されうる。マスク420を整形することによって、精度が改善されうる。さらに、幾つかの実施形態において、次にマスク420に、例えば、エッチングといったサブトラクティブ技術を使用してパターニングが施される。
【0039】
次いで、回折光学素子400は、
図4Dに示されるように、エッチングされる(425)。幾つかの実施形態において、エッチング(425)は、角度を付けたイオンエッチングであり、この角度を付けたイオンエッチングは、反応性イオンビームによって行われる。基板は、反応性イオンビームに対して、走査方向に沿って走査されうる。エッチングプロセスの間、ハードマスク410は、傾斜した格子構造を形成するためのパターンガイドとして機能する。マスク420もパターニングされている実施例において、マスク420も、傾斜した格子構造を形成するためのパターンガイドとして機能する。
【0040】
ここで
図5を参照しながら、本開示の実施形態に係る、一連のエッチングサイクルにわたる回折光学素子500について記載する。プロセス点(PP)1では、マスク520が、第1の部分505の光学格子層507、及びハードマスク510の上だけに形成される。示されるように、第2の部分506の光学格子層507の上方のハードマスク要素510E~510Gは、露出したままである。さらに、間隙511A及び511Bが、マスク520によって覆われずに残されている。PP2では、エッチングプロセスが開始され、第1の集合のトレンチ514Aが、第2の部分506の光学格子層507に形成される。間隙511A及び511Bは、マスク520によって覆われずに残されているため、エッチングが、これらの領域内の光学格子層507に、より迅速に衝撃を与えることが可能となる。しかしながら、マスク520によって覆われた光学格子層507の上記領域において、PP2では、トレンチの形成が始まっていない。非限定的ではあるが、基板502と、ハードマスク510と、マスク520との間のエッチング選択比は、おおよそ1:20:2である。
【0041】
PP3に示されるように、エッチングプロセスが続くにつれて、第1の集合のトレンチ514Aが、第2の部分506の光学格子層507において深くなり、その一方で、第1の部分505の光学格子層507より上方の領域において、マスク520に凹部が設けられる。PP4では、第2の集合のトレンチ514Bが、第1の部分505の光学格子層507の、複数のハードマスク要素510A~510Dのそれぞれの間に形成される。PP5において、エッチングが、第1の集合のトレンチ514Aが基板502に到達するまで続けられ、したがって、光学格子層507から、角度を付けた複数の構造512のそれぞれが形成される。図示のように、第2の集合のトレンチ514Bは、基板502まで延在していない。言い換えると、第1の集合のトレンチ514Aの1つ以上のトレンチの第1の深さ「d1」は、第2の集合のトレンチ514Bの1つ以上のトレンチの第2の深さ「d2」よりも大きくなりうる。さらに、第1の集合のトレンチ514Aの1つ以上のトレンチの第1の幅「w1」は、第2の集合のトレンチ514Bの1つ以上のトレンチの第2の幅「w2」よりも大きくなりうる。PP1~PP3においてマスク520が存在することで、エッチングプロセスは、第1の部分の505光学格子層に衝撃を与える前に、第2の部分506の光学格子層507に衝撃を与え、結果的に、より浅く及び/又は狭いトレンチが第1の部分505において生じる。
【0042】
角度を付けた格子構造512のそれぞれの形状を制御することで、様々な波長(即ち、様々な色彩)の回折の変化が制御され、画質が改善されうる。角度を付けた格子構造512によりもたらされる制御の向上に因り、光学効率(即ち、ユーザの視点への所望の波長の投影)が大幅に改善される。さらに、望まれない波長の投影が低減され、従って、投影される画像の鮮明度及び画質が上がる。
【0043】
ここで
図6を参照しながら、本開示の実施形態に係る、一連のエッチングサイクルにわたる回折光学素子600について説明する。回折光学素子600は、
図5の回折光学素子500と類似している。したがって、簡潔さのために、回折光学素子600の全ての詳細は記載されない。PP1において、ハードマスク610は、第1の部分集合610Aのハードマスク要素と、その隣に形成された第2の部分集合610Bのハードマスク要素と、を含む。マスク620が、第1の部分605の光学格子層607の上だけ、及び、第2の部分集合のハードマスク要素610Bの上だけに形成される。図示のように、第1の部分集合610Aのハードマスク要素のそれぞれは、第1のハードマスク幅「hmw1」を有し、第2の部分集合610Bのハードマスク要素のそれぞれは、第2のハードマスク幅「hmw2」を有する。本実施形態では、hmw1は、hmw2より大きい。他の実施形態において、2つより多い異なるハードマスク幅が存在しうる。hmw1>hmw2とすることによって、PP6の回折光学素子600によって示されるように、第1の集合のトレンチ614Aの1つ以上のトレンチの第1の幅「w1」が、第2の集合のトレンチ614Bの1つ以上のトレンチの第2の幅「w2」とほぼ等しくなりうる。言い換えると、角度を付けた複数の構造612の幅及び形状が、より均一でありうる。可変的なハードマスク610の幅によって、格子幅のロスが補償される。
【0044】
ここで
図7を参照しながら、本開示の実施形態に係る光学格子部品を形成する方法700をより詳細に記載する。示されるように、ブロック701において、方法700は、基板上に光学格子層を設けることを含みうる。ブロック703において、方法700は、パターニングされたハードマスクを光学格子層の上に設けることを含みうる。幾つかの実施形態において、パターニングされたハードマスクは、間隙によってそれぞれが互いに分離された複数のハードマスク要素であり、複数のハードマスク要素のうちの第1のハードマスク要素の幅は、複数のハードマスク要素のうちの第2のハードマスク要素の幅とは異なっている。幾つかの実施形態において、本方法は、複数のハードマスク要素のうち第1の部分集合を、複数のハードマスク要素のうち第2の部分集合の隣に形成することを含み、複数のハードマスク要素の第1の部分集合のそれぞれは、第1の幅を有する。さらに、複数のハードマスク要素の第2の部分集合のそれぞれは、第2の幅を有することができ、第1の幅は第2の幅よりも大きい。
【0045】
ブロック707において、方法700は、光学格子層の一部分及びパターニングされたハードマスクの上だけにマスクを形成することを含みうる。幾つかの実施形態において、マスクは、ハードマスクよりも容易にエッチングされるソフトマスクである。幾つかの実施形態において、マスクは、1の部分集合のハードマスク要素の上だけに形成することができ、他の部分集合のハードマスク要素は、覆われず露出したままである。非限定的な実施形態において、マスクが、3D印刷を使用して回折光学素子上に形成されるフォトレジストタイプの材料でありうる。幾つかの実施形態において、ハードマスクが次いでパターニングされ、間隙によってそれぞれが互いに分離された複数のハードマスク要素を形成しうる。
【0046】
ブロック705において、方法700は、光学格子層に複数のトレンチをエッチングして、光学格子を形成することであって、以下の格子特徴、即ち、トレンチの深さ及びトレンチの幅の少なくとも1つが、複数のトレンチのうちの1つ以上のトレンチの間で変わりうる、光学格子を形成することを含みうる。幾つかの実施形態において、複数のトレンチのうちの第1のトレンチの第1の幅が、複数のトレンチのうちの第2のトレンチの第2の幅とは異なっている。幾つかの実施形態において、複数のトレンチをエッチングして、第1のトレンチ又は第2のトレンチの幅とは異なる幅を有する第3のトレンチを形成することができる。幾つかの実施形態において、マスク層が、エッチングプロセスの前に、パターニングされてよく、又は部分的にパターニングされてよい。他の実施形態において、マスクと、露出したハードマスク要素のそれぞれの間の光学格子層とに同時に凹部を設けることが開始されうる。
【0047】
ここで
図8を参照しながら、本開示の実施形態に係る、一連のエッチングサイクルにわたる回折光学素子800について記載する。回折光学素子800は、
図5の回折光学素子500及び
図6の回折光学素子600に類似している。したがって、回折光学素子800の全ての詳細は、簡潔さのために記載されない。図示の実施形態では、PP1において、ハードマスク810が、第1の部分集合810Aのハードマスク要素と、その隣に形成された第2の部分集合810Bのハードマスク要素と、を含む。マスク820が、第1の部分805の光学格子層807の上だけ、及び、第2の部分集合810Bのハードマスク要素の上だけに形成される。図示のように、マスク820は、傾斜表面プロファイル822を有することができ、この傾斜表面プロファイル822は、後に、例えばPP2で示すように、トレンチ814の底部の形状に転写される(822’として示す)。
【0048】
次に
図9を参照しながら、本開示の実施形態に係る、一連のエッチングサイクルにわたる回折光学素子900について記載する。回折光学素子900は、上述の回折光学素子500、600、及び800に類似している。したがって、回折光学素子900の全ての詳細は、簡潔さのために記載されない。図示の実施形態では、PP1において、マスク920が、光学格子層907の第1の部分905の上だけ、並びに、ハードマスク要素910のうち第1の部分集合910A及び第2の部分集合910Bの上だけに設けられる。マスク920は、ハードマスク要素910のうち第3の部分集合910Cの上には形成されなくてよい。しかしながら、他の実施形態では、マスク920が、光学格子層907の第1の部分905と第2の部分906との両方の上に延在しうる。
【0049】
示されるように、マスク920は、光学格子層907の上面から測定される1つ以上のレベル又は高さH1及びH2を有しうる。さらに、第1の部分集合910Aのハードマスク要素910はそれぞれ第1の幅w1を有し、第2の部分集合910Bのハードマスク要素910はそれぞれ第2の幅w2を有し、第3の部分集合910Cのハードマスク要素910はそれぞれ第3の幅w3を有しうる。図示のように、w3>w2>w1であり、ハードマスク要素910の幅は、一般にマスク920の高さに比例する。処理の開始時(例えば、PP1)にハードマスク要素910の幅を変えると、処理の終了時、例えばPP4には、より均一な幅の角度を付けた構造912が得られる。
【0050】
本実施形態では、マスク920はまた、光学格子層907よりも柔らかくてよい。光学格子層907及びハードマスク要素910よりもマスク920を柔らかくことで、マスク920をより高い層とすることが可能となり、さらには、3D印刷といったより多くの方法によってマスク920を整形することが可能となる。他の実施形態において、光学格子層907が、マスク920より柔らかくてよい。
【0051】
PP2において、エッチングプロセスが開始され、1つ以上の第1の集合のトレンチ914Aが、第2の部分集合910Bのハードマスク要素910の間の、光学格子層907の第2の部分906に形成される。光学格子層907の第2の部分906は、マスク520によって覆われずに残されているため、エッチングが、第2の部分906内の光学格子層907に、より迅速に衝撃を与えることができる。しかしながら、マスク920によって覆われた光学格子層907の領域では、PP2では、トレンチの形成が始まっていない。
【0052】
PP3に示すように、エッチングプロセスが続くにつれて、第1の集合のトレンチ914Aが、光学格子層907の第2の部分906において深くなる一方、光学格子層907の第1の部分905より上方の領域において、マスク920に凹部が設けられる。PP4では、第2の集合のトレンチ914Bが、部分集合910Aのハードマスク要素910のそれぞれの間の、光学格子層907の第1の部分905に形成される。第1の集合のトレンチ914Aが基板902に到達するまで、エッチングが続けられ、したがって、光学格子層907から複数の角度を付けた構造912のそれぞれが形成される。図示されるように、第2の集合のトレンチ914Bは、基板902まで延在しなくてよい。角度を付けた格子構造912のそれぞれの形状を制御することで、様々な波長(即ち、様々な色彩)の回折の変化が制御され、画質が改善されうる。角度を付けた格子構造912によりもたらされる制御の向上に因り、光学効率(即ち、ユーザの視点への所望の波長の投影)が大幅に改善される。さらに、望まれない波長の投影が低減され、従って、投影される画像の鮮明度及び画質が上がる。
【0053】
便宜上及び明確性のために、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「上方(upper)」、「下方(lower)」、「垂直方向(vertical)」、「水平方向(horizontal)」、「横方向(lateral)」、及び「縦方向(longitudinal)」といった用語は、本明細書では、図に見られるように、様々な構成要素及びそれらを構成する部分の相対的な配置及び配向を説明するために使用される。専門用語には、具体的に言及される文言、その派生語、及び、同様の重要度の文言が含まれる。
【0054】
本明細書では、単数形で列挙され、「a」又は「an」という単語が付く要素又は動作は、複数の要素又は動作を除外しないものとして、そのような除外が明示的に記載されないうちは理解される。さらに、本開示の「一実施形態(one embodiment)」への言及は、限定を意図するものではない。追加の実施形態は、記載された特徴を組み込むこともできる。
【0055】
さらに、「実質的な(substantial)」又は「実質的に(substantially)」という用語、及び「近似の(approximate)」又は「近似的に(approximately)」という用語は、幾つかの実施形態において互換的に使用することができ、当業者によって許容されうる任意の相対的尺度を用いて説明することができる。例えば、これらの用語は、基準パラメータとの比較として役立ち、意図された機能を提供しうる許容差を示す。非限定的ではあるが、基準パラメータからの許容差は、例えば、1%未満、3%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満等でありうる。
【0056】
さらに、層、領域、又は基板といった1の要素が、他の要素上の「上に(on、over、又はatop)」形成され、堆積され、又は配置されると言及された場合に、当業者は、1の要素が他の要素の上に直接的に存在することができ、又は介在要素も存在しうることが分かるであろう。対照的に、1の要素が他の要素の「直上(directly on、directly over、又はdirectly atop)」にあると言及される場合には、介在要素は存在しない。
【0057】
本明細書では、「堆積する(depositing)」及び/又は「堆積された(deposited)」は、例えば、化学気相堆積(CVD:chemical vapor deposition)、減圧CVD(LPCVD:low-pressure CVD)、及びプラズマCVD(PECVD:plasma-enhanced CVD)を含むがこれらには限定されない、堆積される材料に適した現在知られた又は今後開発される任意の技術を含みうる。「堆積する」及び/又は「堆積された」はまた、SACVD(semi-atmosphere CVD)及び高密度プラズマCVD(HDPCVD:high-density plasma CVD)、急速熱CVD(RTCVD:rapid thermal CVD)、超高真空CVD(UHVCVD:Ultra-high vacuum CVD)、限定反応処理CVD(LRPCVD:limited reaction processing CVD)、及び有機金属CVD(MOCVD:metal-organic CVD)を含みうる。「堆積する」及び/又は「堆積された」はまた、スパッタリング堆積、イオンビーム堆積、電子ビーム堆積、レーザ支援堆積、熱酸化、熱窒化、スピンオン法、及び物理的気相堆積(PVD:physical vapor deposition)を含みうる。「堆積する」及び/又は「堆積された」はまた、原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)、化学酸化、分子線エピタキシー(MBE:molecular beam epitaxy)、めっき、蒸着を含みうる。
【0058】
様々な実施形態において、設計ツールを設けることが可能であり、設計ツールは、例えば本明細書に記載の回折光学素子400、500、600、800、及び900の層をパターニングするために使用されるデータセットを作成するよう構成可能である。例えば、データセットが、リソグラフィ工程中に使用するフォトマスクを生成して、本明細書に記載された構造のための層をパターニングするために生成されうる。そのような設計ツールは、1つ以上のモジュールの集合を含むことができ、ハードウェア、ソフトウェア、又これらの組合せで構成することも可能である。したがって、例えば、ツールは、1つ以上のソフトウェアモジュール、ハードウェアモジュール、ソフトウェア/ハードウェアモジュール、又は、これらの任意の組み合わせ若しくは置換の集合でありうる。他の例として、ツールは、ソフトウェアを実行する計算装置若しくは他の機器であってよく、又は、ハードウェアで実装されていてよい。
【0059】
本明細書では、モジュールは、任意の形態のハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組合せを利用して実装されうる。例えば、モジュールを構成するために、1つ以上のプロセッサ、コントローラ、ASIC、PLA、論理部品、ソフトウェアルーチン、又は他の仕組みが実装されることもある。実装において、本明細書に記載の様々なモジュールが、個別のモジュールとして実装されてよく、又は、記載される機能及び特徴が、1つ以上のモジュールの間で部分的に又は全体的に共有されうる。言い換えれば、本明細書の記載を読んだ後に当業者には明らかであるように、本明細書に記載の様々な特徴及び機能は、任意の所与のアプリケーションで実装されうる。さらに、様々な特徴及び機能が、様々な組み合わせ及び配列において、1つ以上の別々の又は共用のモジュールに実装されうる。機能の様々な特徴又は要素が、別々のモジュールとして個別に記載され又は特許請求されうるが、当業者は、これらの特徴及び機能が、1つ以上の共有のソフトウェア及びハードウェア要素の間で共用されうることが分かるであろう。
【0060】
本明細書に記載の実施形態を利用することで、傾斜した格子構造を有する導波路が形成される。本実施形態の傾斜した格子構造の第1の技術的な利点は、導波路を透過する光をより良好に収束させて方向付けることで、導波路の機能を改善し、これにより、投影される画像の鮮明度を改善することを含む。本実施形態の傾斜した格子構造の第2の技術的利点は、所望の像平面に投影される光の波長に対する制御を向上させることを含む。導波路によって出射される光の出力が、大幅により均一になる。本実施形態の傾斜した格子構造の第3の技術的利点は、機械的研磨といった製造プロセスを無くすことで導波路の製造を改善し、これにより、導波路を形成するために使用される層へのダメージを低減することを含む。更に、本実施形態の傾斜した格子構造の第4の技術的利点は、二次元又は三次元の形状を提供して、さらに広い用途範囲において導波路を利用することを可能とすることを含む。
【0061】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態による範囲には限定されない。実際に、本明細書に記載の実施形態に加えて、本開示の他の様々な実施形態及び本開示への変更が、先の明細書の記載及び添付の図面から当業者には明らかであろう。従って、このような他の実施形態及び変更が本開示の範囲内に入ることが意図されている。さらに、本開示は、本明細書において、特定の目的のための特定の環境における特定の実装の文脈で説明されてきた。当業者は、有用性がこれに限定されず、本開示が、任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実現されうることを認識するであろう。従って、以下に記載される特許請求項の範囲は、本明細書に記載した本開示の完全な範囲及び思想の観点から、解釈されるべきである。