(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
F04D15/00 L
F04D15/00 B
(21)【出願番号】P 2021543051
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032649
(87)【国際公開番号】W WO2021039976
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2019156400
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】平本 和也
(72)【発明者】
【氏名】磯野 美帆
(72)【発明者】
【氏名】小川 孝彦
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-047660(JP,A)
【文献】特開2004-308555(JP,A)
【文献】特開2017-227131(JP,A)
【文献】特開2008-202553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車と、
前記羽根車を回転させる電動機と、
前記電動機を駆動するインバータと、
前記電動機に供給される電流を測定する電流測定器と、
前記インバータに指令を与えて前記羽根車に異物除去動作を実行させる動作制御部を備え、
前記異物除去動作は、
前記羽根車を正方向に間欠的に回転させる間欠運転、
前記羽根車を逆方向に回転させる逆転運転、および
前記羽根車を逆方向および正方向に交互に繰り返し回転させる正逆寸動運転、
のうちの少なくとも2つを
含み、
前記異物除去動作は、前記逆転運転を含み、
前記逆転運転は、前記羽根車を第1の加速度パターンで逆方向に回転させる第1逆転運転と、前記羽根車を第2の加速度パターンで逆方向に回転させる第2逆転運転を含み、
前記第1の加速度パターンは、前記羽根車を一定の加速度で増速させる加速度パターンであり、
前記第2の加速度パターンは、前記羽根車の加速度を変化させながら前記羽根車を増速させる加速度パターンである、ポンプ装置。
【請求項2】
前記異物除去動作は、前記間欠運転および前記逆転運転を含み、前記動作制御部は、前記間欠運転、前記逆転運転の順で前記羽根車に前記間欠運転および前記逆転運転を実行させるように構成されている、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記動作制御部は、前記第1逆転運転中に前記電流の測定値がしきい値を超えた場合に、前記羽根車に前記第2逆転運転を実行させる、請求項
1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
羽根車と、
前記羽根車を回転させる電動機と、
前記電動機を駆動するインバータと、
前記電動機に供給される電流を測定する電流測定器と、
前記インバータに指令を与えて前記羽根車に異物除去動作を実行させる動作制御部を備え、
前記異物除去動作は、前記羽根車を第1の加速度パターンで逆方向に回転させる第1逆転運転と、前記羽根車を第2の加速度パターンで逆方向に回転させる第2逆転運転を含
み、
前記第1の加速度パターンは、前記羽根車を一定の加速度で増速させる加速度パターンであり、
前記第2の加速度パターンは、前記羽根車の加速度を変化させながら前記羽根車を増速させる加速度パターンである、ポンプ装置。
【請求項5】
前記動作制御部は、前記第1逆転運転中に前記電流の測定値がしきい値を超えた場合に、前記羽根車に前記第2逆転運転を実行させる、請求項
4に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を汲み上げるポンプ装置に関し、特に液体に含まれる異物を羽根車が噛み込んだときに該異物を除去するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水中ポンプなどの排水ポンプは、河川の水や、商業ビルなどの建物から排出された廃水を汲み上げる用途に使用されることがある。水は、固形物や繊維物などの異物を含んでいることが多い。このような水を汲み上げているとき、排水ポンプの羽根車が異物を噛み込み、揚水運転が阻害されることがある。そこで、このような異物を除去するために、羽根車を駆動する電動機への電流に基づいて異物の噛み込みを検出し、羽根車を逆回転させることで異物を除去することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-308555号公報
【文献】特開平11-107975号公報
【文献】特開2018-119310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の逆回転動作では、異物が除去できないことがあり、ポンプの運転を停止させ、作業員が手作業で異物を取り除くことが必要であった。このような作業は労力を要するのみならず、ポンプの運転停止時間が長くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、羽根車が噛み込んだ異物を確実に除去することができるポンプ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、羽根車と、前記羽根車を回転させる電動機と、前記電動機を駆動するインバータと、前記電動機に供給される電流を測定する電流測定器と、前記インバータに指令を与えて前記羽根車に異物除去動作を実行させる動作制御部を備え、前記異物除去動作は、前記羽根車を正方向に間欠的に回転させる間欠運転、前記羽根車を逆方向に回転させる逆転運転、および前記羽根車を逆方向および正方向に交互に繰り返し回転させる正逆寸動運転のうちの少なくとも2つを含む、ポンプ装置が提供される。
【0007】
一態様では、前記異物除去動作は、前記間欠運転および前記逆転運転を含み、前記動作制御部は、前記間欠運転、前記逆転運転の順で前記羽根車に前記間欠運転および前記逆転運転を実行させるように構成されている。
一態様では、前記異物除去動作は、前記逆転運転を含み、前記逆転運転は、前記羽根車を第1の加速度パターンで逆方向に回転させる第1逆転運転と、前記羽根車を第2の加速度パターンで逆方向に回転させる第2逆転運転を含む。
一態様では、前記動作制御部は、前記第1逆転運転中に前記電流の測定値がしきい値を超えた場合に、前記羽根車に前記第2逆転運転を実行させる。
一態様では、前記第1の加速度パターンは、前記羽根車を一定の加速度で増速させる加速度パターンであり、前記第2の加速度パターンは、前記羽根車の加速度を変化させながら前記羽根車を増速させる加速度パターンである。
【0008】
一態様では、羽根車と、前記羽根車を回転させる電動機と、前記電動機を駆動するインバータと、前記電動機に供給される電流を測定する電流測定器と、前記インバータに指令を与えて前記羽根車に異物除去動作を実行させる動作制御部を備え、前記異物除去動作は、前記羽根車を第1の加速度パターンで逆方向に回転させる第1逆転運転と、前記羽根車を第2の加速度パターンで逆方向に回転させる第2逆転運転を含む、ポンプ装置が提供される。
【0009】
一態様では、前記動作制御部は、前記第1逆転運転中に前記電流の測定値がしきい値を超えた場合に、前記羽根車に前記第2逆転運転を実行させる。
一態様では、前記第1の加速度パターンは、前記羽根車を一定の加速度で増速させる加速度パターンであり、前記第2の加速度パターンは、前記羽根車の加速度を変化させながら前記羽根車を増速させる加速度パターンである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、羽根車の異なる複数の動作の組み合わせ(例えば、間欠運転と逆転運転との組み合わせ、または第1逆転運転と第2逆転運転との組み合わせ)により、羽根車が噛み込んだ異物を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ポンプ装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】異物除去動作の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図3】異物除去動作の他の実施形態を示すフローチャートである。
【
図4】異物除去動作のさらに他の実施形態を示すフローチャートである。
【
図5】異物除去動作のさらに他の実施形態を示すフローチャートである。
【
図6】異物除去動作のさらに他の実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ポンプ装置の一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、ポンプ装置は、羽根車1と、羽根車1が収容されるポンプケーシング2と、羽根車1が固定された回転軸5と、羽根車1を回転させる電動機7を備えている。電動機7は、回転軸5に固定されたモータロータ7Aと、モータロータ7Aを囲むモータステータ7Bを有している。回転軸5は、軸受6により回転可能に支持されている。本実施形態では、回転軸5は、電動機7から羽根車1まで延びる単一の軸である。一実施形態では、回転軸5は、電動機7のモータロータ7Aが固定された駆動軸と、羽根車1が固定されたポンプ軸とに分割されてもよい。この場合は、駆動軸とポンプ軸はカップリングで連結される。
【0013】
ポンプケーシング2は、液体の吸込み口2aと、液体の吐出し口2bと、ボリュート室2cを有している。羽根車1は、ボリュート室2c内に配置されている。ポンプケーシング2と回転軸5との間の隙間は、軸封装置11(例えば、メカニカルシールまたはグランドパッキン)によって封止されている。
【0014】
ポンプ装置は、電動機7を駆動するインバータ14と、電動機7に供給される電流を測定する電流測定器15と、インバータ14の動作を制御する動作制御部17をさらに備えている。
図1において、インバータ14および電流測定器15は模式的に描かれている。
図1に示す実施形態では、インバータ14および電流測定器15は、電動機7とは別に配置されているが、インバータ14および電流測定器15は、電動機7に一体に組み込まれてもよい。また、インバータ14と動作制御部17は一体に構成されてもよい。電流測定器15は、インバータ14から電動機7に供給される電流を測定するように配置されている。電流測定器15は、インバータ14内に組み込まれてもよい。電流測定器15は、動作制御部17に接続されており、電流の測定値を動作制御部17に送信するようになっている。
【0015】
動作制御部17は、後述する異物除去動作を羽根車1に実行させるためのプログラムが格納された記憶装置17aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する処理装置17bを備えている。記憶装置17aは、RAMなどの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。処理装置17bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。
【0016】
ポンプ装置の動作は、次の通りである。動作制御部17は、インバータ14に速度指令を与え、インバータ14は与えられた速度指令に対応する周波数の電流を生成する。生成された電流は電動機7に供給され、電動機7は羽根車1を回転させる。電流測定器15は、電動機7に供給される電流を測定する。羽根車1の回転に伴い、液体は吸込み口2aを通ってボリュート室2c内に流入し、ボリュート室2c内で加圧され、そして吐出し口2bを通って排出される。
【0017】
電動機7には、液密構造を有する水中モータが採用されている。したがって、本実施形態のポンプ装置は、液体中に浸漬された状態で運転可能な水中モータポンプ装置である。水中モータポンプ装置は、一般に、固形物や繊維物などの異物を含む液体を汲み上げる用途に使用されることが多い。ポンプ装置の運転中に、羽根車1が異物を噛み込むと、羽根車1の回転が阻害されてしまう。そこで、動作制御部17は、インバータ14に指令を与えて羽根車1に異物除去動作を実行させるように構成されている。
【0018】
図2は、異物除去動作の一実施形態を示すフローチャートである。この実施形態では、異物除去動作は、羽根車1を正方向に間欠的に回転させる間欠運転と、羽根車1を逆方向に回転させる逆転運転を含んでいる。
ステップ1では、動作制御部17は、インバータ14に指令を与えて羽根車1を正方向に回転させる。羽根車1の正方向への回転は、ポンプ装置の通常運転であり、液体を汲み上げることができる。
ステップ2では、インバータ14から電動機7に供給される電流を電流測定器15が測定し、動作制御部17は電流の測定値を電流測定器15から取得する。インバータ14は、動作制御部17から与えられた速度指令に対応する周波数の電流を電動機7に供給するように構成されている。もし、液体中の異物を羽根車1が噛み込むと、電動機7に掛かる負荷が上昇し、結果として電動機7に供給される電流(すなわち、アンペアで表される電流の大きさ)が増大する。
【0019】
そこで、ステップ3では、動作制御部17は、電流の測定値を設定値と比較する。電流の測定値が設定値よりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
電流の測定値が設定値よりも大きければ、ステップ4において、動作制御部17は、電流の測定値が設定値を超えた回数に1を加える。
ステップ5では、動作制御部17は、電流の測定値が設定値を超えた回数を、予め設定された回数N1と比較する。このステップ5の目的は、異物の噛み込みに起因する電流上昇を、誤動作および電流ノイズなどから区別するためである。電流の測定値が設定値を超えた回数が、予め設定された回数N1よりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
【0020】
電流の測定値が設定値を超えた回数が、予め設定された回数N1よりも大きければ、ステップ6において、動作制御部17は、インバータ14に指令を発して羽根車1に間欠運転をさせる。羽根車1の間欠運転は、羽根車1の正方向への回転と、回転の停止とを繰り返す運転である。間欠運転は、予め設定された時間の間実行される。羽根車1の間欠運転は、異物の除去を目的として行われる。すなわち、羽根車1の正方向への回転が停止されると、一旦汲み上げられた液体の一部が逆流してポンプケーシング2内に流入する。間欠運転の間、このような液体の汲み上げと、液体の逆流が繰り返し行われるので、液体の流れが脈動し、異物を除去することができる。
【0021】
ステップ7では、動作制御部17は、電流の測定値が設定値を超えた回数を、予め設定された回数N2と比較する。予め設定された回数N2は、ステップ5の予め設定された回数N1よりも大きい数値である。電流の測定値が設定値を超えた回数が、予め設定された回数N2よりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
電流の測定値が設定値を超えた回数が、予め設定された回数N2よりも大きければ、ステップ8において、動作制御部17は、インバータ14に指令を発して羽根車1に逆転運転をさせる。この逆転運転は、羽根車1を逆方向に回転させる運転である。羽根車1の逆転運転は、異物の除去を目的として行われる。すなわち、羽根車1を逆方向に回転させることで、羽根車1が噛み込んだ異物を除去することができる。
【0022】
逆転運転の始動時の加速度パターンの例として、羽根車1を一定の加速度で増速させるパターン、羽根車1の加速度を変化させながら羽根車1を設定速度まで増速させるパターンが挙げられる。特に、羽根車1の加速度を変化させながら羽根車1を増速させる加速度パターンは、液体の不規則な流れをボリュート室2c内に形成することができ、異物を除去しやすくなる。羽根車1の加速度を変化させる加速度パターンは、羽根車1の速度を一時的に0にする期間を含んでもよい。例えば、S字カーブを描く加速度で羽根車1を回転させる間、羽根車1の回転を瞬間的に停止させてもよい。
【0023】
ステップ9では、羽根車1が逆転運転しているときに電動機7に供給される電流を電流測定器15が測定し、動作制御部17は電流の測定値を電流測定器15から取得する。
ステップ10では、動作制御部17は、逆転運転時の電流の測定値をしきい値と比較する。電流の測定値がしきい値よりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
【0024】
電流の測定値がしきい値よりも大きければ、ステップ11において、動作制御部17は、逆転運転時の電流の測定値がしきい値を超えた回数に1を加える。
ステップ12では、動作制御部17は、逆転運転時の電流の測定値がしきい値を超えた回数を、予め設定された許容回数Lと比較する。逆転運転時の電流の測定値がしきい値を超えた回数が、予め設定された許容回数Lよりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
【0025】
逆転運転時の電流の測定値がしきい値を超えた回数が、予め設定された許容回数Lよりも大きければ、ステップ13において、動作制御部17は、警報信号を生成し、パテライト、ブザー、ディスプレイ装置などの警報装置に警報信号を送信する。動作制御部17は、警報信号を、予め定められた連絡先(例えば管理者)などに送信してもよい。
ステップ14では、動作制御部17は、インバータ14に指令を発して電動機7を停止させる。これにより、ポンプ装置の運転は、緊急停止される。
【0026】
本実施形態によれば、間欠運転と逆転運転との組み合わせにより、羽根車1が噛み込んだ異物を除去することができる。したがって、ポンプ装置の緊急停止が回避され、ポンプ装置は揚液運転を継続することができる。
【0027】
図3は、異物除去動作の他の実施形態を示すフローチャートである。この実施形態では、異物除去動作は、羽根車1を正方向に間欠的に回転させる間欠運転と、羽根車1を逆方向に回転させる第1逆転運転および第2逆転運転を含んでいる。
図3に示すフローチャートにおいて、ステップ1からステップ7は、
図2に示すフローチャートにおけるステップ1からステップ7と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0028】
ステップ8では、動作制御部17は、インバータ14に指令を発して羽根車1に第1逆転運転をさせる。この第1逆転運転は、羽根車1を第1の加速度パターンで逆方向に回転させる運転である。第1の加速度パターンは、羽根車1を一定の加速度で第1設定速度まで増速させるパターンである。
【0029】
ステップ9では、羽根車1が第1逆転運転しているときに電動機7に供給される電流を電流測定器15が測定し、動作制御部17は電流の測定値を電流測定器15から取得する。
ステップ10では、動作制御部17は、第1逆転運転時の電流の測定値を第1しきい値と比較する。電流の測定値が第1しきい値よりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
電流の測定値が第1しきい値よりも大きければ、ステップ11において、動作制御部17は、第1逆転運転時の電流の測定値が第1しきい値を超えた回数に1を加える。
ステップ12では、動作制御部17は、第1逆転運転時の電流の測定値が第1しきい値を超えた回数を、予め設定された回数N3と比較する。第1逆転運転時の電流の測定値が第1しきい値を超えた回数が、予め設定された回数N3よりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
【0030】
第1逆転運転時の電流の測定値が第1しきい値を超えた回数が、予め設定された回数N3よりも大きければ、ステップ13において、動作制御部17は、インバータ14に指令を発して羽根車1に第2逆転運転をさせる。この第2逆転運転は、羽根車1を第2の加速度パターンで逆方向に回転させる運転である。第2逆転運転は、羽根車1の逆回転を減速または停止させた後に実行される。
【0031】
第2の加速度パターンは、第1逆転運転における第1の加速度パターンとは異なる加速度パターンである。より具体的には、第2の加速度パターンは、羽根車1の加速度を変化させながら、羽根車1を第2設定速度まで増速させるパターンである。第2の加速度パターンは、例えば、S字カーブを描く加速度のパターンである。第2の加速度パターンは、羽根車1の速度を一時的に0にする期間を含んでもよい。例えば、S字カーブを描く加速度で羽根車1を回転させる間、羽根車1の回転を瞬間的に停止させてもよい。第2設定速度は、第1逆転運転における第1設定速度と同じであってもよいし、または異なってもよい。
【0032】
羽根車1の加速度を変化させながら羽根車1を回転させると、液体の流れが不均一となり、異物が除去されやすい。本実施形態によれば、間欠運転、第1逆転運転、および第2逆転運転の組み合わせにより、羽根車1が噛み込んだ異物を除去することができる。したがって、ポンプ装置の緊急停止が回避され、ポンプ装置は揚液運転を継続することができる。
【0033】
ステップ14では、羽根車1が第2逆転運転しているときに電動機7に供給される電流を電流測定器15が測定し、動作制御部17は電流の測定値を電流測定器15から取得する。
ステップ15では、動作制御部17は、第2逆転運転時の電流の測定値を第2しきい値と比較する。電流の測定値が第2しきい値よりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
【0034】
電流の測定値が第2しきい値よりも大きければ、ステップ16において、動作制御部17は、第2逆転運転時の電流の測定値が第2しきい値を超えた回数を、予め設定された許容回数Lと比較する。第2逆転運転時の電流の測定値が第2しきい値を超えた回数が、予め設定された許容回数Lよりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
【0035】
第2逆転運転時の電流の測定値が第2しきい値を超えた回数が、予め設定された許容回数Lよりも大きければ、ステップ17において、動作制御部17は、警報信号を生成し、パテライト、ブザー、ディスプレイ装置などの警報装置に警報信号を送信する。動作制御部17は、警報信号を、予め定められた連絡先(例えば管理者)などに送信してもよい。
ステップ18では、動作制御部17は、インバータ14に指令を発して電動機7を停止させる。これにより、ポンプ装置の運転は、緊急停止される。
【0036】
図4は、異物除去動作のさらに他の実施形態を示すフローチャートである。この実施形態では、異物除去動作は、正逆寸動運転と逆転運転を含んでいる。間欠運転は、本実施形態の異物除去動作には含まれない。
図4に示すフローチャートは、ステップ6における正逆寸動運転以外は、
図2に示すフローチャートと同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0037】
正逆寸動運転は、羽根車1を逆方向および正方向に交互に繰り返し回転させる運転である。具体的には、動作制御部17は、インバータ14に指令を与えて電動機7に供給される電流の極性を短い周期で切り替えることで、電動機7は羽根車1を逆方向および正方向に交互に繰り返し回転させる。羽根車1は、小刻みに動き、噛み込んだ異物を除去することができる。一実施形態では、異物除去動作は、間欠運転をさらに含んでもよい。例えば、動作制御部17は、インバータ14に指令を発して、羽根車1を間欠運転、正逆寸動運転、逆転運転の順に実行させてもよい。さらに、一実施形態では、異物除去動作は、間欠運転と正逆寸動運転を含み、逆転運転は含まなくてもよい。
【0038】
図5は、異物除去動作のさらに他の実施形態を示すフローチャートである。この実施形態では、異物除去動作は、正逆寸動運転と、第1逆転運転と、第2逆転運転を含んでいる。間欠運転は、本実施形態の異物除去動作には含まれない。
図5に示すフローチャートは、ステップ6における正逆寸動運転以外は、
図3に示すフローチャートと同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0039】
一実施形態では、異物除去動作は、間欠運転をさらに含んでもよい。例えば、動作制御部17は、インバータ14に指令を発して、羽根車1を間欠運転、正逆寸動運転、第1逆転運転、第2逆転運転の順に実行させてもよい。
【0040】
図6は、異物除去動作のさらに他の実施形態を示すフローチャートである。この実施形態では、異物除去動作は、第1逆転運転と第2逆転運転を含んでいる。間欠運転および正逆寸動運転は、本実施形態の異物除去動作には含まれない。
図6に示すフローチャートのステップ1からステップ5は、
図2に示すフローチャートのステップ1からステップ5と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0041】
ステップ6では、電流の測定値が設定値を超えた回数が、予め設定された回数N1よりも大きければ、動作制御部17は、インバータ14に指令を発して羽根車1に第1逆転運転をさせる。この第1逆転運転は、羽根車1を第1の加速度パターンで逆方向に回転させる運転である。第1の加速度パターンは、羽根車1を一定の加速度で第1設定速度まで増速させるパターンである。
【0042】
ステップ7では、羽根車1が第1逆転運転しているときに電動機7に供給される電流を電流測定器15が測定し、動作制御部17は電流の測定値を電流測定器15から取得する。
ステップ8では、動作制御部17は、第1逆転運転時の電流の測定値を第1しきい値と比較する。電流の測定値が第1しきい値よりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
電流の測定値が第1しきい値よりも大きければ、ステップ9において、動作制御部17は、第1逆転運転時の電流の測定値が第1しきい値を超えた回数に1を加える。
ステップ10では、動作制御部17は、第1逆転運転時の電流の測定値が第1しきい値を超えた回数を、予め設定された回数N2と比較する。第1逆転運転時の電流の測定値が第1しきい値を超えた回数が、予め設定された回数N2よりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
【0043】
第1逆転運転時の電流の測定値が第1しきい値を超えた回数が、予め設定された回数N2よりも大きければ、ステップ11において、動作制御部17は、インバータ14に指令を発して羽根車1に第2逆転運転をさせる。この第2逆転運転は、羽根車1を第2の加速度パターンで逆方向に回転させる運転である。第2逆転運転は、羽根車1の逆回転を減速または停止させた後に実行される。
【0044】
第2の加速度パターンは、第1逆転運転における第1の加速度パターンとは異なる加速度パターンである。より具体的には、第2の加速度パターンは、羽根車1の加速度を変化させながら、羽根車1を第2設定速度まで増速させるパターンである。第2の加速度パターンは、例えば、S字カーブを描く加速度のパターンである。第2の加速度パターンは、羽根車1の速度を一時的に0にする期間を含んでもよい。例えば、S字カーブを描く加速度で羽根車1を回転させる間、羽根車1の回転を瞬間的に停止させてもよい。第2設定速度は、第1逆転運転における第1設定速度と同じであってもよいし、または異なってもよい。
【0045】
羽根車1の加速度を変化させながら、羽根車1を回転させると、液体の流れが不均一となり、異物が除去されやすい。本実施形態によれば、第1逆転運転および第2逆転運転の組み合わせにより、羽根車1が噛み込んだ異物を除去することができる。したがって、ポンプ装置の緊急停止が回避され、ポンプ装置は揚液運転を継続することができる。
【0046】
ステップ12では、羽根車1が第2逆転運転しているときに電動機7に供給される電流を電流測定器15が測定し、動作制御部17は電流の測定値を電流測定器15から取得する。
ステップ13では、動作制御部17は、第2逆転運転時の電流の測定値を第2しきい値と比較する。電流の測定値が第2しきい値よりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
【0047】
電流の測定値が第2しきい値よりも大きければ、ステップ14において、動作制御部17は、第2逆転運転時の電流の測定値が第2しきい値を超えた回数を、予め設定された許容回数Lと比較する。第2逆転運転時の電流の測定値が第2しきい値を超えた回数が、予め設定された許容回数Lよりも小さければ、動作フローはステップ1に戻る。
【0048】
第2逆転運転時の電流の測定値が第2しきい値を超えた回数が、予め設定された許容回数Lよりも大きければ、ステップ15において、動作制御部17は、警報信号を生成し、パテライト、ブザー、ディスプレイ装置などの警報装置に警報信号を送信する。動作制御部17は、警報信号を、予め定められた連絡先(例えば管理者)などに送信してもよい。
ステップ16では、動作制御部17は、インバータ14に指令を発して電動機7を停止させる。これにより、ポンプ装置の運転は、緊急停止される。
【0049】
図2乃至
図6に示す上記実施形態において、上記設定回数N1,N2,N3および上記許容回数Lの比較対象とされる回数は、所定の条件下で0にリセットされる。具体的には、予め設定された時間(運転停止時間を含む)が経過したとき、あるいはステップ1の運転時間の合計が予め設定された時間を超えたとき、あるいはステップ1の運転回数が予め設定された値を超えたときは、上記設定回数N1,N2,N3および上記許容回数Lの比較対象とされる回数は0にリセットされる。
【0050】
上述した各実施形態に係るポンプ装置は、液体中に浸漬された状態で運転可能な水中モータポンプ装置であるが、異物の噛み込みは、水中モータポンプ装置以外にも起こりうる。よって、本発明は本実施形態に限定されず、ポンプ装置は、陸上で使用される陸上ポンプ装置などの他のポンプ装置にも適用することができる。
【0051】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は液体を汲み上げるポンプ装置に利用可能であり、特に液体に含まれる異物を羽根車が噛み込んだときに該異物を除去するための技術に利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 羽根車
2 ポンプケーシング
2a 吸込み口
2b 吐出し口
2c ボリュート室
5 回転軸
6 軸受
7 電動機
11 軸封装置
14 インバータ
15 電流測定器
17 動作制御部