(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】基板処理装置、プラズマ発光装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240314BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240314BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20240314BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
C23C16/44 B
(21)【出願番号】P 2022550306
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035535
(87)【国際公開番号】W WO2022059188
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 剛
(72)【発明者】
【氏名】原 大介
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-140392(JP,A)
【文献】特開昭62-206823(JP,A)
【文献】特開2005-123434(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016131(WO,A1)
【文献】特開平06-342786(JP,A)
【文献】特開2009-194018(JP,A)
【文献】特開2000-124199(JP,A)
【文献】特開2017-054654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
H01L 21/318
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
第1ガスを供給する第1ガス供給管
と、高周波電力が印加される印加電極
と、接地により基準電位が与えられる基準電極
と、前記
印加電極と前記基準電極との間に設けられ、第
2ガスを
プラズマ化する発光管
と、を備えるプラズマ生成部と、
を有し、
前記印加電極に高周波電力を印加し、前記発光管内に閉じ込められた前記第2ガスをプラズマ化することにより発光させ、前記第1ガスが、前記発光により前記処理室内で光励起され、活性種として前記基板に対して供給される基板処理装置。
【請求項2】
複数の前記基板を垂直方向に多段に保持する基板保持部を備え、
前記印加電極と前記基準電極と前記発光管とは、それぞれ前記垂直方向に保持される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記発光管は、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムのうち少なくとも1つの材料を含む請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1ガスは、前記発光管により光励起され活性種となるガスである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1ガスは、酸素、窒素、炭素、水素及び希ガスのうち少なくとも1つの元素を有するガスを含む請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記発光管には、
前記第2ガスを供給する第2ガス供給管が接続されている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記発光管には、前記第2ガスを前記発光管内に閉じ込める開閉バルブが接続されている請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記発光管には、前記第2ガスを排気する排気管が接続されている請求項6又は請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記発光管は、前記印加電極と前記基準電極との電気的作用により、前記発光管の内部に閉じ込められた前記第2ガスのプラズマ化により発光する請求項7又は請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第2ガスは、前記発光管の内部に閉じ込められた状態で、前記印加電極と前記基準電極との電気的作用によりプラズマ化される、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第2ガスは、窒素ガス、軽水素ガス、重水素ガス及び希ガスのうち少なくとも1つのガスを含む請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記発光管の発光により、前記処理室内のガスを光励起により活性化し、前記基板を処理する請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記発光管の発光は、110nm~5μmの波長を含む請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記高周波電力は、高周波又はパルス波である請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
第1ガスを供給する第1ガス供給管と、高周波電力が印加される印加電極と、接地により基準電位が与えられる基準電極と、前記印加電極と前記基準電極との間に設けられ、第2ガスをプラズマ化する発光管と、を備え、
前記印加電極に高周波電力を印加し、前記発光管内に閉じ込められた前記第2ガスをプラズマ化することにより発光させ、前記第1ガスが、前記発光により処理室内で光励起され、活性種とし
て基板に対して供給されるプラズマ発光装置。
【請求項16】
基板を処理する処理室と、第1ガスを供給する第1ガス供給管
と、高周波電力が印加される印加電極
と、接地により基準電位が与えられる基準電極
と、前記
印加電極と前記基準電極との間に設けられ、第
2ガスを
プラズマ化する発光管
と、を備えるプラズマ生成部
と、を有
し、前記印加電極に高周波電力を印加し、前記発光管内に閉じ込められた前記第2ガスをプラズマ化することにより発光させ、前記第1ガスが、前記発光により前記処理室内で光励起され、活性種として前記基板に対して供給される基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する工程と、
前記第1ガスを光励起させ
、活性
種として前記基板に対して供給する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項17】
基板を処理する処理室と、第1ガスを供給する第1ガス供給管と、高周波電力が印加される印加電極
と、接地により基準電位が与えられる基準電極
と、
前記
印加電極と前記基準電極との間に設けられ、第
2ガスを
プラズマ化する発光管
と、を備えるプラズマ生成部と、を有
し、前記印加電極に高周波電力を印加し、前記発光管内に閉じ込められた前記第2ガスをプラズマ化することにより発光させ、前記第1ガスが、前記発光により前記処理室内で光励起され、活性種として前記基板に対して供給される基板処理装置の前記処理室に前記基板を搬入する手順と、
前記第1ガスを光励起させ
、活性
種として前記基板に対して供給する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、プラズマ発光装置、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、特開2017-34067号公報に開示されているように、基板処理装置の処理室内に基板を搬入し、処理室内に原料ガスと反応ガスとを供給して基板上に絶縁膜や半導体膜、導体膜等の各種膜を形成したり、各種膜を除去したりする基板処理が行われることがある。
【0003】
微細パターンが形成される量産デバイスにおいては、不純物の拡散を抑制したり、有機材料など耐熱性の低い材料を使用できるようにしたりするために、処理温度の低温化が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような問題を解決するため、プラズマを用いて基板処理を行うことが一般的だが、プラズマやそれを介して生成される活性種が、基板の中央部に対してその供給量が十分である必要がある。バッファ室と呼ばれる空間にプラズマを閉じ込めて、孔を通して活性種を基板へ供給する場合、特に表面積の大きい低温の基板に対しては活性種の消費の多さから、活性種の供給不足が生じやすく、基板の中央部での処理性能が低くなることがある。
【0005】
本開示の目的は、表面積の大きい低温の基板に対しても高い基板処理性能を発揮することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板を処理する処理室と、第1ガスを供給する第1ガス供給管、高周波電力が印加される印加電極、接地により基準電位が与えられる基準電極、及び前記第1ガスを光励起させる発光管を備えるプラズマ生成部と、を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、表面積の大きい低温の基板に対しても高い基板処理性能を発揮する技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面で示す図である。
【
図2】
図1に示す基板処理装置におけるA-A断面図である。
【
図3】
図1に示す基板処理装置におけるコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示す基板処理装置を用いた基板処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
(加熱装置)
図1に示すように、処理炉202は加熱装置(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0011】
(処理室)
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属により構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられた状態となる。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。なお、処理容器は上記の構成に限らず、反応管203のみを処理容器と称する場合もある。
【0012】
(ガス供給部)
処理室201内には、ノズル249a及びノズル249bが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられ、発光管249eが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249aにはガス供給管232aが、ノズル249bにはガス供給管232bが、発光管249eにはガス供給管232eが、それぞれ接続されている。このように、処理容器には2本のノズル(すなわち、ノズル249a及びノズル249b)と、1本の発光管249eと、3本のガス供給管(すなわち、ガス供給管232a、ガス供給管232b及びガス供給管232e)とが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することが可能となっている。なお、反応管203のみを処理容器とした場合、ノズル249a、ノズル249b及び発光管249eは反応管203の側壁を貫通するように設けられていてもよい。
【0013】
ガス供給管232a、ガス供給管232b及びガス供給管232eには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、MFC241b及びMFC241e並びに開閉弁であるバルブ243aバルブ243b及びバルブ243eがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,ガス供給管232b及びガス供給管232eのバルブ243aバルブ243b及びバルブ243eよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232c,232d,232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232d,232fには、上流方向から順に、MFC241c,241d,241f及びバルブ243c,243d,243fがそれぞれ設けられている。さらに、ガス供給管232eのバルブ243eよりも下流側には、発光管249e内のガスを排気するガス排気管232gが、排気バルブ243gを介して接続されている。
【0014】
図2に示すように、ノズル249aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、ノズル249aは、ウエハ200が配列(載置)されるウエハ配列領域(載置領域)の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。すなわち、ノズル249aは、処理室201内へ搬入された各ウエハ200の端部(周縁部)の側方にウエハ200の表面(平坦面)と垂直となる方向に設けられている。ノズル249aの側面には、原料ガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは、反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0015】
バッファ室としてのプラズマ生成部237は、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、また、反応管203の内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。すなわち、プラズマ生成部237は、ウエハ配列領域の側方のウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにバッファ構造300によって形成された、バッファ室としての構造を有している。バッファ構造300は、石英などの絶縁物によって構成されており、バッファ構造300の円弧状に形成された壁面には、ガスを供給するガス供給口302が形成されている。ガス供給口302は、
図2に示すように、後述する基準電極270と印加電極271との間に配置された発光管249eに対向する位置に反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給口302は、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0016】
ノズル249b及び発光管249eは、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、ノズル249b及び発光管249eは、バッファ構造300の内側であって、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。すなわち、ノズル249b及び発光管249eは、処理室201内へ搬入されたウエハ200の端部の側方にウエハ200の表面と垂直となる方向に設けられている。ノズル249bの側面には、第1ガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bは、バッファ構造300の円弧状に形成された壁面に対して径方向に形成された壁面に向くように開口しており、壁面に向けてガスを供給することが可能となっている。これにより、第1ガスがプラズマ生成部237内で分散され、基準電極270及び印加電極271に直接吹き付けることがなくなり、パーティクルの発生が抑制される。ガス供給孔250bは、ガス供給孔250aと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。発光管249eは、閉じ込められたガスをプラズマ化し後述する発光源として、ガス供給口302を介して処理室201の中心を光照射するように配置されている。
【0017】
このように、本実施形態では、反応管203の側壁の内壁と、反応管203内に配列された複数枚のウエハ200の端部で定義される平面視において円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内に配置したノズル249a、ノズル249b及びプラズマ生成部237を経由してガスを搬送している。そして、ノズル249a、ノズル249b及びプラズマ生成部237にそれぞれ開口されたガス供給孔250a、ガス供給孔250b,ガス供給口302から、ウエハ200の近傍で反応管203内にガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される膜の膜厚の均一性を向上させることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れる。但し、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0018】
ガス供給管232aからは、原料ガスが、MFC241a、バルブ243a及びノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0019】
ガス供給管232bからは、第1ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介してバッファ構造300内へ供給される。
【0020】
ガス供給管232cからは、不活性ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0021】
ガス供給管232dからは、不活性ガスが、MFC241d、バルブ243d、ノズル249bを介してバッファ構造300内へ供給される。
【0022】
ガス供給管232eからは、第2ガスが、MFC241e、バルブ243eを介して、発光管249e内へ供給される。また、ガス供給管232fからは、不活性ガスが、MFC241f及びバルブ243fを介して発光管249e内へ供給される。
【0023】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243a及びノズル249aにより、原料ガスを供給する原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243b及びノズル249bにより、第1ガスを供給する第1ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、第2ガスを供給する第2ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c,232d,232f、MFC241c,241d,241f、及びバルブ243c,243d,243fにより、不活性ガス供給系が構成される。原料供給ガス供給系、第1ガス供給系、第2ガス供給系及び不活性ガス供給系を単にガス供給系(ガス供給部)とも称する。
【0024】
(基板保持部)
図1に示すように基板保持部としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持(支持)するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。但し、本実施形態はこのような形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料により構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0025】
(プラズマ発光部)
次にプラズマ発光部について、
図1と
図2を用いて説明する。
【0026】
図2に示すように、プラズマには容量結合プラズマ(Capacitively Coupled Plasma、略称:CCP)もしくはコロナ放電を用い、石英などの酸化シリコン(SiO
2)系材料で作製された真空容器である発光管249e内に第2ガスが閉じ込められた時に、後述する基準電極270と印加電極271に高周波電力が供給されることでプラズマが生成される。
【0027】
本実施形態の一例においては、バッファ室としてのプラズマ生成部237内には、導電体からなり、細長い構造を有する2本の棒状電極である基準電極270及び印加電極271が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。基準電極270及び印加電極271のそれぞれは、発光管249eと平行に設けられている。基準電極270及び印加電極271のそれぞれは、上部より下部にわたって電極保護管275により覆われることで保護されている。電極保護管275は、基準電極270及び印加電極271を保護し、かつ、プラズマ生成部237内の上部で両者が繋がったU字、H字、Π字などの形状を有する石英管から成っている。
【0028】
上記の実施形態において
図2に示すように、印加電極271は、整合器272を介して高周波電源273に接続されて高周波電力が印加される。また、基準電極270は、基準電位であるアースに接続され、接地されて基準電位が与えられる。高周波電源273から印加電極271に高周波(RF)又はパルス波(一例としてはナノパルス)の電力を印加することで、基準電極270と印加電極271との電気的作用によりこれらの間に配置された発光管249e内のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。なお、発光管249eのプラズマ生成領域224の外側にも、高周波電源273から印加電極271にRF又はパルス波の電極が印加されると、基準電極270と印加電極間の領域にプラズマが生成される。主に、基準電極270、印加電極271及び発光管249eにより発光源としてのプラズマ発光部(プラズマ発光装置)が構成される。整合器272、高周波電源273を発光源に含めて考えてもよい。発光源は、後述するように、ガスに対する光励起作用すなわち光活性化機構として機能する。
【0029】
電極保護管275は、基準電極270及び印加電極271のそれぞれをプラズマ生成部237内の雰囲気と隔離した状態でプラズマ生成部237内へ挿入できる構造となっている。電極保護管275の内部のO2濃度が外気(大気)のO2濃度と同程度であると、電極保護管275内へそれぞれ挿入された基準電極270及び印加電極271は、ヒータ207による熱で酸化されてしまう。このため、電極保護管275の内部にN2ガス等の不活性ガスを充填しておくか、不活性ガスパージ機構を用いて電極保護管275の内部をN2ガス等の不活性ガスでパージすることで、電極保護管275の内部のO2濃度を低減させ、基準電極270及び印加電極271の酸化を防止することができる。
【0030】
(排気部)
反応管203には、
図1に示すように処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245及び排気用のバルブ(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気及び真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気管231は、反応管203に設ける場合に限らず、ノズル249a及びノズル249bと同様にマニホールド209に設けてもよい。
【0031】
(周辺装置)
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。
【0032】
シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入及び搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0033】
マニホールド209の下方には、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を降下させている間、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0034】
反応管203の内部には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、ノズル249a及びノズル249bと同様に、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0035】
(制御装置)
図3に示すように、制御部(制御装置)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0036】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する各種処理(成膜処理)における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、又は、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0037】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a、MFC241b、MFC241e、MFC241c,241d,241f、バルブ243a、バルブ243bバルブ243e、バルブ243c,243d,243f、排気バルブ243g、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s、及び高周波電源273等に接続されている。
【0038】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、回転機構267の制御、MFC241a、MFC241b、MFC241e及びMFC241c,241d,241fによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a、バルブ243b、バルブ243e、バルブ243c,243d,243f及び排気バルブ243gの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作及び圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の正逆回転、回転角度及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作、高周波電源273の電力供給等を制御することが可能なように構成されている。
【0039】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ、SSD等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、又は、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0040】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置(デバイス)の製造方法の工程の一つとして、基板上に膜を形成するプロセス例について、
図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0041】
本明細書では、
図4に示す成膜処理のシーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の実施形態の説明においても、同様の表記を用いることとする。
【0042】
(原料ガス→第1ガス)×n
【0043】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層等の表面」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成する」ことを意味する場合がある。
【0044】
また、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0045】
(搬入ステップ:S1)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0046】
(圧力・温度調整ステップ:S2)
処理室201の内部、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。真空ポンプ246は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
【0047】
また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は継続して行われる。但し、成膜ステップを室温以下の温度条件下で行う場合は、ヒータ207による処理室201内の加熱は行わなくてもよい。なお、このような温度下での処理だけを行う場合には、ヒータ207は不要となり、ヒータ207を基板処理装置に設置しなくてもよい。この場合、基板処理装置の構成を簡素化することができる。
【0048】
続いて、回転機構267によるボート217及びウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217及びウエハ200の回転は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は継続して行われる。
【0049】
(成膜ステップ:S3,S4,S5,S6)
その後、ステップS3,S4,S5,S6を順次実行することで成膜ステップを行う。
【0050】
(原料ガス供給ステップ:S3,S4)
ステップS3では、処理室201内のウエハ200に対して原料ガスを供給する。
【0051】
バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介してガス供給孔250aから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対して原料ガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ不活性ガスを流す。不活性ガスは、MFC241cにより流量調整され、原料ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0052】
また、ノズル249b内への原料ガスの侵入を防止するため、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管232d、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0053】
MFC241aで制御する原料ガスの供給流量は、例えば1sccm以上、2000sccm以下、好ましくは10sccm以上、1000sccm以下の範囲内の流量とする。MFC241c,241dで制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば100sccm以上、10000sccm以下の範囲内の流量とする。処理室201内の圧力は、上述した通り、例えば1Pa以上、2666Pa以下、好ましくは67Pa以上、1333Pa以下の範囲内の圧力とする。原料ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば1秒以上、100秒以下、好ましくは1秒以上、50秒以下の範囲内の時間とする。
【0054】
ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば0℃以上150℃以下、好ましくは室温(25℃)以上100℃以下、より好ましくは40℃以上90℃以下の範囲内の温度となるような温度に設定する。原料ガスは、ウエハ200等へ吸着し易く反応性の高いガスである。このため、例えば室温程度の低温下であっても、ウエハ200上に原料ガスを化学吸着させることができ、実用的な成膜レートを得ることができる。本実施形態のように、ウエハ200の温度を150℃以下、さらには100℃以下、さらには90℃以下とすることで、ウエハ200に加わる熱量を低減させることができ、ウエハ200が受ける熱履歴の制御を良好に行うことができる。また、0℃以上の温度であれば、ウエハ200上に原料ガスを十分に吸着させることができ、十分な成膜レートが得られることとなる。よって、ウエハ200の温度は0℃以上150℃以下、好ましくは室温以上100℃以下、より好ましくは40℃以上90℃以下の範囲内の温度とするのがよい。
【0055】
上述の条件下でウエハ200に対して原料ガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、例えば1原子層(1分子層)未満から数原子層(数分子層)程度の厚さのSi含有層が形成される。Si含有層はSi層であってもよいし、原料の吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。
【0056】
ここで、1原子層(1分子層)未満の厚さの層とは不連続に形成される原子層(分子層)のことを意味しており、1原子層(1分子層)の厚さの層とは連続的に形成される原子層(分子層)のことを意味している。Si含有層は、Si層と原料ガスの吸着層との両方を含み得る。但し、上述の通り、Si含有層については「1原子層」、「数原子層」等の表現を用いることとし、「原子層」を「分子層」と同義で用いる。
【0057】
Si含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244を開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応又はSi含有層の形成に寄与した後の原料ガスや反応副生成物等を処理室201内から排除する(S4)。また、バルブ243c,243dは開いたままとして、処理室201内への不活性ガスの供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用する。なお、このステップS4を省略し、原料ガス供給ステップとしてもよい。
【0058】
原料ガスとしては、例えば、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH2[NH(C4H9)]2、略称:BTBAS)ガス、テトラキスジメチルアミノシラン(Si[N(CH3)2]4、略称:4DMAS)ガス、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CH3)2]3H、略称:3DMAS)ガス、ビスジメチルアミノシラン(Si[N(CH3)2]2H2、略称:BDMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(Si[N(C2H5)2]2H2、略称:BDEAS)ガス、ジメチルアミノシラン(DMAS)ガス、ジエチルアミノシラン(DEAS)ガス、ジプロピルアミノシラン(DPAS)ガス、ジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)ガス、ブチルアミノシラン(BAS)ガス、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)ガス等の各種アミノシラン原料ガスや、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等の無機系ハロシラン原料ガス(クロロシラン原料ガス)や、モノシラン(SiH4、略称:MS)ガス、ジシラン(Si2H6、略称:DS)ガス、トリシラン(Si3H8、略称:TS)ガス等のハロゲン基非含有の無機系シラン原料ガス、すなわち、水素化ケイ素ガスを用いることができる。
【0059】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスを用いることができ、この他、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0060】
(第1ガス供給ステップ:S5,S6)
原料ガス供給ステップが終了した後、処理室201内のウエハ200に対して第1ガスとしての光励起させた第1ガスを供給する(S5)。
【0061】
このステップでは、バルブ243b及びバルブ243c,243dの開閉制御を、ステップS3におけるバルブ243a及びバルブ243c,243dの開閉制御と同様の手順で行う。第1ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介してプラズマ生成部237内へ供給される。このとき、第2ガスは、MFC241eにより流量調整され、バルブ243eを介して発光管249e内に供給される。発光管249e内が所望の圧力になったところで第2ガスの供給を停止し、バルブ243eを閉じる。このようにすることで、第2ガスが所望の圧力に維持された発光管249e内に閉じ込められる。この状態で、高周波電源273から基準電極270及び印加電極271へ高周波電力(本実施の形態では周波数13.56MHz)を供給(印加)すると、発光管249e内にプラズマが生成し、第2ガスを発光させる。プラズマ生成部237とガス供給口302を介して処理室201へ供給された第1ガスは、この発光によりプラズマ生成部237と処理室201の内部で光励起され、活性種としてウエハ200に対して供給され、排気管231から排気される。なお、このときのプラズマ生成部237における活性種には、光励起を介さずに高周波電力が供給された印加電極271および基準電極270にて直接生成された活性種も含まれる。
【0062】
MFC241bで制御する第1ガスの供給流量は、例えば10sccm以上、10000sccm以下の範囲内の流量とし、MFC241eで制御する第2ガスの供給流量は、例えば10sccm以上、1000sccm以下の範囲内の流量とする。高周波電源273から基準電極270及び印加電極271へ印加する高周波電力は、例えば50W以上、1000W以下の範囲内の電力とする。発光管249e内の圧力は、例えば10kPa以上、100kPa以下の範囲内の圧力とし、処理室201内の圧力は、例えば1Pa以上、100Pa以下の範囲内の圧力とする。発光管249eを発光源として用いることで、処理室201内の圧力をこのような比較的低い圧力帯としても、第1ガスを活性化させることが可能となる。第1ガスを光励起することにより得られた活性種をウエハ200に対して供給する時間は、例えば1秒以上、100秒以下、好ましくは1秒以上、50秒以下の範囲内の時間とする。その他の処理条件は、上述のステップS3と同様な処理条件とする。
【0063】
電気的に中性なこれらの活性種はウエハ200の表面に形成されたSi含有層に対して後述する酸化処理を行う。
【0064】
上述の条件下でウエハ200に対して第1ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成されたSi含有層が酸化される。この際、光励起された第1ガスの内部エネルギーにより、Si含有層が有するSi-N結合、Si-H結合が切断される。Siとの結合を切り離されたN、H、及び、Nに結合するCは、Si含有層から脱離することとなる。そして、N等が脱離することで未結合手(ダングリングボンド)を有することとなったSi含有層中のSiが、第1ガスに含まれるOと結合し、Si-O結合が形成されることとなる。この反応が進行することにより、Si含有層は、Si及びOを含む層、すなわち、シリコン酸化層(SiO層)へと変化させられる(改質される)。
【0065】
なお、Si含有層をSiO層へと改質させるには、第1ガスを光励起させて供給する必要がある。第1ガスを励起されていな状態で供給しても、上述の温度帯では、Si含有層を酸化させるのに必要な内部エネルギーが不足しており、Si含有層からNやCを充分に脱離させたり、Si含有層を充分に酸化させてSi-O結合を増加させたりすることは、困難なためである。
【0066】
Si含有層をSiO層へ変化させた後、バルブ243bを閉じ、第1ガスの供給を停止する。また、基準電極270及び印加電極271への高周波電力の供給を停止する。そして、ステップS4と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留する第1ガスや反応副生成物を処理室201内から排除し、また、発光管249e内に閉じ込められた第2ガスは、排気バルブ243gを介してガス排気管232gから排気される(S6)。なお、このステップS6の一部を省略して次のステップへ移行してもよい。
【0067】
光励起させる第1ガスとしては、酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、オゾン(O3)ガス、過酸化水素(H2O2)ガス、水蒸気(H2O)、水酸化アンモニウム(NH4(OH))ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いてもよい。
【0068】
プラズマ発光させる第2ガスとしては、キセノン(Xe)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス等の希ガス、窒素(N2)ガス、軽水素(H2)ガス、重水素(D2)ガス等を用いてもよい。また、これらガスを2種類以上で混合して利用してもよい。
【0069】
不活性ガスとしては、例えば、ステップS4で例示した各種希ガスを用いることができる。
【0070】
(所定回数実施:S7)
上述したステップS3,S4,S5,S6をこの順番に沿って非同時に、すなわち、同期させることなく行うことを1サイクルとし、このサイクルを所定回数(n回)、すなわち、1回以上行うことにより、ウエハ200上に、所定組成及び所定膜厚のSiO膜を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiO層の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、SiO層を積層することで形成されるSiO膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0071】
(大気圧復帰ステップ:S8)
上述の成膜処理が完了したら、ガス供給管232c,232dのそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留する第1ガス等が処理室201内から除去される(不活性ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰:S8)。
【0072】
(搬出ステップ:S9)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出されることとなる(ウエハディスチャージ)。なお、ウエハディスチャージの後は、処理室201内へ空のボート217を搬入するようにしてもよい。
【0073】
ここで、第1ガスによる基板処理時の炉内圧力は、1Pa以上、100Pa以下の範囲で制御されることが好ましい。これは、炉内の圧力が1Paより低い場合、光励起で生成される活性種の供給量が低く、酸化処理に時間を要してしまうためである。また、炉内の圧力が100Paより高い場合、活性種の生成量が飽和してしまうため、第1ガスを無駄に消費することとなってしまうと同時に、ガス分子の平均自由行程が短くなることで、ウエハまでの活性種の輸送効率が悪くなってしまうためである。
【0074】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
(a)発光管249e内のプラズマ生成条件(ガス種、ガス圧力、高周波電力、周波数など)を変えることで、プラズマ発光の光量や波長を制御することができ、光照射されるガスの光励起状態や光励起される活性種の生成量を制御することが可能となる。
(b)発光源による処理室201の中心への光照射により、光励起される活性種をウエハ中央部で直接生成することができ、ウエハへの活性種の供給効率を高めることが可能となる。
(c)プラズマ発光の光量や波長を制御することで、光励起される活性種の生成分布をウエハ上部で調整することができ、ウエハ処理の面内均一性を図ることが可能となる。
【0075】
以上、本開示の実施形態について具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0076】
また、例えば、上述の実施形態では、発光源を構成する発光管249eについて、石英などのSiO2系の材料から成る例について説明した。本開示ではこのような態様に限定されず、第1ガスの光励起に必要な波長が紫外光領域の短波長側である場合は、その光が発光管249eを透過できるようフッ化マグネシウム(MgF2)やフッ化カルシウム(CaF2)を一部材料とした発光管249eで発光源を構成する形態を有してもよい。また、第1ガスの光励起に必要な光の波長の帯域としては、例えば、110nm~5μmであり、この光の波長の帯域に応じて材質の異なる発光管249eへの交換が行える形態を有してもよい。すなわち、例えば真空紫外光が処理室201の中心を照射できることによって、内部エネルギーのより高い活性種をウエハに供給でき、成膜速度を高めることが可能となる。光の波長が110nm未満又は5μmを超えると、発光させたとしても光が発光管を透過させることができないので発光源として利用することができない。すなわち、光の波長の帯域を110nm~5μmとすることで発光管を発光減として利用することが可能となる。なお、本明細書における「110nm~5μm」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「110nm~5μm」とは「110nm以上5μm以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0077】
また、例えば、上述の実施形態では、一組のバッファ構造300と発光源の構成によって第1ガスを光励起させて、その活性種をウエハに供給する例について説明した。本開示ではこのような態様に限定されず、複数組の構成によって第1ガスを光励起させて、活性種をウエハに供給する形態を有してもよい。すなわち、光励起により生成される活性種の供給量を増大させて、成膜速度を高めることが可能となる。
【0078】
また、例えば、上述の実施形態では、原料ガスを供給した後に第1ガスを供給する例について説明した。本開示はこのような態様に限定されず、原料ガス、第1ガスの供給順序は逆でもよい。すなわち、第1ガスを供給した後に原料ガスを供給するようにしてもよい。供給順序を変えることにより、形成される膜の膜質や組成比を変化させることが可能となる。
【0079】
また、例えば、上述の実施形態では、ステップS4で用いられるパージガスは、不活性の状態で供給する例について説明した。本開示はこのような態様に限定されず、ステップS5のように発光源による光励起にて、パージガスを活性化させてもよい。すなわち、光励起により活性化された第1ガスとしてのN2ガスや希ガスをパージに用いることで、未反応の原料ガスや反応副生成物質の除去効率を改善させて膜質向上を図ることが可能となる。
【0080】
上述の実施形態等では、ウエハ200上にSiO膜を形成する例について説明した。本開示はこのような態様に限定されず、ウエハ200上に、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等のSi系酸化膜を形成する場合にも、好適に適用可能である。
【0081】
例えば、上述したガスの他、又は、これらのガスに加え、アンモニア(NH3)ガス等の窒素(N)含有ガス、プロピレン(C3H6)ガス等の炭素(C)含有ガス、三塩化硼素(BCl3)ガス等の硼素(B)含有ガス等を用い、例えば、SiN膜、SiON膜、SiOCN膜、SiOC膜、SiCN膜、SiBN膜、SiBCN膜、BCN膜等を形成することができる。なお、各ガスを流す順番は適宜変更することができる。これらの成膜を行う場合においても、上述の実施形態と同様な処理条件にて成膜を行うことができ、上述の実施形態と同様の効果が得られる。これらの場合、第1ガスとしての酸化剤には、上述した第1ガスを用いることができる。
【0082】
また、本開示は、ウエハ200上に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属元素を含む金属系酸化膜や金属系窒化膜を形成する場合においても、好適に適用可能である。すなわち、本開示は、ウエハ200上に、TiO膜、TiOC膜、TiOCN膜、TiON膜、TiN膜、TiSiN膜、TiBN膜、TiBCN膜、ZrO膜、ZrOC膜、ZrOCN膜、ZrON膜、ZrN膜、ZrSiN膜、ZrBN膜、ZrBCN膜、HfO膜、HfOC膜、HfOCN膜、HfON膜、HfN膜、HfSiN膜、HfBN膜、HfBCN膜、TaO膜、TaOC膜、TaOCN膜、TaON膜、TaN膜、TaSiN膜、TaBN膜、TaBCN膜、NbO膜、NbOC膜、NbOCN膜、NbON膜、NbN膜、NbSiN膜、NbBN膜、NbBCN膜、AlO膜、AlOC膜、AlOCN膜、AlON膜、AlN膜、AlSiN膜、AlBN膜、AlBCN膜、MoO膜、MoOC膜、MoOCN膜、MoON膜、MoN膜、MoSiN膜、MoBN膜、MoBCN膜、WO膜、WOC膜、WOCN膜、WON膜、WN膜、WSiN膜、WBN膜、WBCN膜等を形成する場合にも、好適に適用することが可能となる。
【0083】
これらの場合、例えば、原料ガスとして、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(Ti[N(CH3)2]4、略称:TDMAT)ガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(Hf[N(C2H5)(CH3)]4、略称:TEMAH)ガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(Zr[N(C2H5)(CH3)]4、略称:TEMAZ)ガス、トリメチルアルミニウム(Al(CH3)3、略称:TMA)ガス、チタニウムテトラクロライド(TiCl4)ガス、ハフニウムテトラクロライド(HfCl4)ガス等を用いることができる。
【0084】
すなわち、本開示は、半金属元素を含む半金属系膜や金属元素を含む金属系膜を形成する場合に、好適に適用することができる。これらの成膜処理の処理手順、処理条件は、上述の実施形態や変形例に示す成膜処理と同様な処理手順、処理条件とすることができる。これらの場合においても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
成膜処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各種処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各種処理を迅速に開始できるようになる。
【0086】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【産業上の利用分野】
【0087】
本開示は、基板処理装置、プラズマ発光装置、半導体装置の製造方法及びプログラムに利用可能である。