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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】表示装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/08 20100101AFI20240315BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20240315BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20240315BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/32
H01L33/48
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020559950
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047334
(87)【国際公開番号】W WO2020121904
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2018234965
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019145022
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康文
(72)【発明者】
【氏名】上野山 雄
(72)【発明者】
【氏名】舘林 潤
(72)【発明者】
【氏名】市川 修平
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】波多江 進
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/128643(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/127801(WO,A1)
【文献】特表2011-501408(JP,A)
【文献】特開2005-72323(JP,A)
【文献】特開2009-152297(JP,A)
【文献】特開平7-183576(JP,A)
【文献】特開2003-332619(JP,A)
【文献】特開2011-134854(JP,A)
【文献】特開2011-159671(JP,A)
【文献】特開2015-126209(JP,A)
【文献】特開2017-208568(JP,A)
【文献】特開平11-74566(JP,A)
【文献】特開2004-55742(JP,A)
【文献】特開2013-120848(JP,A)
【文献】特開2008-263127(JP,A)
【文献】MITCHELL, Brandon et al.,Perspective: Toward efficient GaN-based red light emitting diodes using europium doping, JOURNAL OF APPLIED PHYSICS, 2018.03.29, Vol. 123, 160901-1 - 160901-12
【文献】Hussein S. EI-Ghoroury et al., Growth of monolithic full-color GaN-based LED with intermediate carrier blocking layers, AIP ADVANCES, 2016.07.22, Vol.6, 075316-1 - 075316-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色、緑色、および青色の互いに異なる波長の光を発光する3種類のPiN接合型の発光ダイオードが、同一基板上に積層された表示装置であって、
前記積層は、エピタキシャル結晶成長による積層であり、
赤色ダイオードが、ユーロピウム(Eu)を含んだ窒化ガリウム系(GaN系)の活性層を有し、
緑色ダイオードおよび青色ダイオードが、赤色ダイオードと異なる元素で構成されたバンドギャップ間の遷移に基づく発光部を備えており、
赤色ダイオードと、緑色ダイオードと、青色ダイオードの積順が、基板側より、赤色ダイオード、青色ダイオード、緑色ダイオードの順、または、赤色ダイオード、緑色ダイオード、青色ダイオードの順である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
光を基板側から取り出すことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記基板が窒化ガリウム基板であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記3種類の発光ダイオードが、前記基板の表面に順次積層されており、
一の色にかかる発光層の少なくとも一部に重畳して他の色にかかる発光層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記発光部は、表面側に前記緑色ダイオード、青色ダイオードそれぞれの発光ダイオードに通電する電極を形成するための段差が形成された段差構造を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記段差によって形成された凹部が絶縁体で埋められ、前記発光部の表面が平坦化されていることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記絶縁体が、可視光透過性樹脂材料、可視光不透過性樹脂材料、可視光を反射する樹脂材料のいずれかで形成されていることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記発光部が、前記基板側から赤色ダイオード、緑色ダイオード、青色ダイオードの順に積層されている場合には、前記赤色ダイオードと前記緑色ダイオードとの界面、および、前記緑色ダイオードと前記青色ダイオードとの界面に、
前記発光部が、前記基板側から赤色ダイオード、青色ダイオード、緑色ダイオードの順に積層されている場合には、前記赤色ダイオードと前記青色ダイオードとの界面、および、前記青色ダイオードと前記緑色ダイオードとの界面に、
AlN、AlGaN、AlInN、AlGaInNのいずれかによって形成されたバリア層が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記発光部が、前記基板側から赤色ダイオード、緑色ダイオード、青色ダイオードの順に積層されている場合には、前記赤色ダイオードと前記緑色ダイオードとの界面、および、前記緑色ダイオードと前記青色ダイオードとの界面に、
前記発光部が、前記基板側から赤色ダイオード、青色ダイオード、緑色ダイオードの順に積層されている場合には、前記赤色ダイオードと前記青色ダイオードとの界面、および、前記青色ダイオードと前記緑色ダイオードとの界面に、
AlInNおよびGaNが積層、AlGaNおよびGaNが積層、あるいはAlGaInNおよびGaNが積層されたDBR構造が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記発光部の表面上に電気回路を形成するための多層配線構造が形成され、前記多層配線構造に少なくとも1つの能動素子が含まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記発光部の表面上に電気回路を形成するための多層配線構造が形成され、前記多層配線構造が、能動素子を含まないパッシブマトリクス型構造であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項12】
前記青色ダイオード、緑色ダイオード、赤色ダイオードが、ペンタイル状に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項または請求項10に記載の表示装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法であって、
前記複数種類の発光ダイオードの発光部を有機金属気相成長法を用いて形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびその製造方法に関し、より詳しくは、発光ダイオードを用いたカラーディスプレイ等の表示装置および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置に発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いて構成された発光デバイスが広く用いられるようになっている。特に、LEDは、各種表示装置、携帯電話をはじめ、液晶ディスプレイのバックライト、白色照明等に広く用いられており、特にプロジェクタ等に使用されるマイクロディスプレイへの応用が注目されている。
【0003】
LEDを構成する半導体素子は、主に窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)等の窒化物半導体薄膜が形成された窒化物半導体基板を用いて作製されている。また、発光効率を高めるため、発光部分の形成には、通常、多重量子井戸構造(MQW又はMQWs)が用いられており、多重量子井戸構造を用いてp型半導体とn型半導体の間に活性層となる真性半導体層を形成したPiN接合が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
従来、上記窒化物半導体膜で構成された無機LEDからなる表示装置では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)と波長が異なるそれぞれ単体のLEDを、一つの基板に平面状に並べて配置された複数のLEDと、表示装置としての各画素の色・輝度を制御するドライバICとを配線で接続し構成されていた(例えば、特許文献2)。このため、高コストの表示装置になり、高精細化も十分ではなかった。
【0005】
特に、ディスプレイのような高精細な表示画面が求められる場合には、画素数を多くしなければならず、画素数を多くしようとすると、画素数に比例してLEDのコストが増大し、同時にLEDを配置する作業のコストも増加し、飛躍的に高コストの表示装置とならざるを得なかった。
【0006】
そこで、R、G、B3色のLEDを同一半導体基板上に配置した構造にし、例えば、集積回路(LSI)のように一つのプロセスで多数の画素を形成することにより、上記の問題を解決することが可能となると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-277865号公報
【文献】特開2013-122472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の赤色LED、緑色LED、青色LEDの3種類のLEDを用いて表示装置を構成した場合、以下の問題があることが分かった。
【0009】
即ち、従来のR、G、Bの3色のLEDは、活性層が何れもインジウム(In)を含む型のGaN(以下、「InGaN」とも記載する。)で形成されており、Inの含有量を変えることでバンドギャップの大きさを調整してR、G、Bの発光を実現している。このような3色のLEDを積層して画素を形成する場合、短波長の緑色および青色LEDを、発光方向に対して赤色LEDより下側に配置すると、緑色および青色LEDで発光された光が赤色LEDの活性層に照射されたときに、赤色LEDの活性層に吸収され、励起に使われる。このため、赤色LEDの活性層を適切に透過することができないことが分かった。
【0010】
そこで、赤色LEDを最下層に配置することが考えられるが、この場合には、InGa1-xNで示される赤色LEDにおけるxの値を0.35程度と、緑色LED、青色LEDよりInの比率を大幅に高くしなければならない。このため、添加元素の量が多くなり過ぎ、活性層の結晶に大きな歪が生じ、表面が荒れることが避けられない。このような赤色LED上に、緑色LEDおよび青色LEDを積層させた場合、緑色LEDおよび青色LEDの結晶は、赤色LEDの荒れた表面を受け継いで成長するため、結晶に大きな乱れが生じ、結晶性が悪化することにより発光効率が低下することが分かった。
【0011】
そこで、本発明は、画素数が増加した場合でも、画素数に比例して製造コストが上昇するということがなく、且つ外部に対して波長が異なる複数種類の光を、所望の比率で高い強度で発光することができる発光部を備えた表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような状況下、本発明者は、GaNにユーロピウム(Eu)を添加した窒化物半導体を活性層とする窒化物半導体発光素子を世界に先がけて開発し、世界の技術者から大きな注目が寄せられている(例えば、特開2013-120847号公報)。
【0013】
GaN:Euは、赤色LED用材料として発光機能に飛躍的に優れていると共に、結晶性にも極めて優れている。このため、GaN:Euを赤色LEDとして使用し、一つの反応装置内で青色LED、緑色LEDと同一基板上に一つのプロセスで作製することにより、性能上も、コスト上も極めて優れた表示装置ができることが期待される。
【0014】
しかし、前記した通り、In含有型の緑色GaN、青色GaNについては、種々の問題があり、実用性に欠ける製品化が困難な材料として位置付けられていた。
【0015】
このため、In含有型のような欠点のない緑色LEDおよび青色LEDの開発が必要と考えられていた。
【0016】
このような状況下、本発明者は、GaN:Euは、In含有型のGaNとは基本的に異なる構造や性質を有するため、逆に、このことがIn含有型の欠点を補う可能性が少ないながらあると考え、種々の実験を行った。
【0017】
即ち、赤色GaN:Euに、In含有型の緑色GaNおよび青色GaNを種々の組合せで積層した。
【0018】
その結果、驚くべきことに極めて優れた発光機能を有する表示装置を得ることができた。
【0019】
具体的には、In含有型の緑色および青色のGaNを、発光方向に対して赤色のGaN:Euの下側に配置した場合でも、In含有型の赤色GaNのように緑色光や青色光が赤色のGaN:Euに吸収されることなく、赤色LEDを問題なく透過することが確認できた。
【0020】
このように、多くの技術者の予想に反して波長の短いGおよびBの光が、バンドギャップの小さい赤色LEDの活性層で吸収されることなく取り出すことができたのは、活性層をGaN:Euで形成した場合、発光のメカニズムがバンド間遷移に基づくものではなく、Euイオン内の電子の4f殻内での電子遷移、即ちf-f遷移によるものと考えられる。
【0021】
また、赤色GaN:Euを下側にして、その上に緑色GaNおよび青色GaNを積層させた場合でも、GaN:Euは、In比率の高い赤色のIn含有GaNのような表面の荒れがなく、極めて平坦な表面を有しているため、上側に積層したIn含有型の緑色GaNおよび青色GaNの結晶性を悪化させることがなく、緑色GaN、青色GaN共に、それぞれ単体のときと同程度の発光機能が発揮されることが確認できた。
【0022】
そして、上記の通りGaN:Euを活性層にした赤色LEDを下側にして、その上に緑色LEDおよび青色LEDを積層させた場合でも、GaN:EuはIn含有型LEDと異なり、表面が平坦であり、積層した緑色LEDおよび青色LEDの発光機能が低下せず、一方、緑色LED、青色LEDを下側にして、その上にGaN:Euを活性層に用いた赤色LEDを積層させた場合でも、赤色LEDのGaN:Eu活性層に吸収されることがなく、緑色LED、青色LEDの発光効率が低下しないため、R、G、B3色のLEDを積層させる際に、それぞれのLEDの積層順を自由に設定できることが分った。
【0023】
以上のようにGaN:Euによる赤色LEDの開発により、優れた表示装置が実現できることが分ったが、上記のことはGaN:Euに限られないと考えられる。
【0024】
希土類元素は、一般的にスピン-軌道相互作用や結晶場の効果により、4f電子準位に分裂が生じるという共通の性質を有しており、上記のようなf-f遷移による発光のメカニズムは、Euに限定されず他の希土類元素でも起きることが理論的に言える。
【0025】
また、希土類元素は、互いに良く似た性質を持つランタノイドであるため、Euに限らず他の希土類元素についても、GaNに添加したときに結晶が荒れることがなく、Euの場合と同様、LEDの積層順を自由に選べることが期待できる。
【0026】
また、上記においては、窒化物としてGaNについて説明したが、窒化物としては、GaN以外のAlN、InN等のいわゆるGaN系の窒化物(InGaNやAlGaNの混晶を含む)であっても基本的には同様の現象が生じると言うことができる。
【0027】
なお、上記では、GaN:Euを赤色LEDとして、青色LED、緑色LEDを同一基板上に縦方向に積層して作製するとして説明したが、GaN:Euを赤色LEDとして、青色LED、緑色LEDを同一基板上に横並びに配置して作製した場合でも、縦方向に積層した場合と同様に、優れた表示装置とできることが分かった。そして、縦方向に積層する場合には、積層されるLEDが下層のLEDの表面状態を引き継いで成長するため、成膜に際して厳しい条件管理が必要だが、横並びに配置する場合には、成膜条件の管理を若干緩やかにしても影響が少ないため、製造の歩留まりを向上させることができる。
【0028】
本発明の各態様は、上記の記載、並びに、後述する実施の形態の記載に基づくものであり、第1の態様は
互いに異なる波長の光を発光する複数種類のPiN接合型の発光ダイオードが、同一基板上に配置され、
前記複数種類の発光ダイオードの少なくとも1種類が、希土類元素を含んだ活性層を有する発光部を備えていることを特徴とする表示装置である。
【0029】
そして、第2の態様は
前記複数種類の発光ダイオードのうち、少なくとも最も波長が長い発光ダイオードに、前記希土類元素を含む活性層を有する発光ダイオードが用いられていることを特徴とする第1の態様に記載の表示装置である。
【0030】
そして、第3の態様は
前記複数種類の発光ダイオードが、赤色ダイオード、緑色ダイオードおよび青色ダイオードの3種類の発光ダイオードから構成され、
前記基板が窒化ガリウム基板であり、
前記赤色ダイオードが、前記希土類元素としてユーロピウム(Eu)を含んだ窒化ガリウム系(GaN系)の活性層を備えていることを特徴とする第1の態様または第2の態様に記載の表示装置である。
【0031】
そして、第4の態様は
前記複数種類の発光ダイオードが、前記基板の表面に順次積層されており、
一の色にかかる発光層の少なくとも一部に重畳して他の色にかかる発光層が形成されていることを特徴とする第1の態様ないし第3の態様のいずれかに記載の表示装置である。
【0032】
そして、第5の態様は
前記発光部は、前記基板側から赤色ダイオード、緑色ダイオード、青色ダイオードの順に、または、赤色ダイオード、青色ダイオード、緑色ダイオードの順に積層されていることを特徴とする第4の態様に記載の表示装置である。
【0033】
そして、第6の態様は
前記発光部は、表面側に前記緑色ダイオード、青色ダイオードそれぞれの発光ダイオードに通電する電極を形成するための段差が形成された段差構造を有していることを特徴とする第5の態様に記載の表示装置である。
【0034】
そして、第7の態様は
前記段差によって形成された凹部が絶縁体で埋められ、前記発光部の表面が平坦化されていることを特徴とする第6の態様に記載の表示装置である。
【0035】
そして、第8の態様は
前記発光部が、前記基板側から赤色ダイオード、緑色ダイオード、青色ダイオードの順に積層されている場合には、前記赤色ダイオードと前記緑色ダイオードとの界面、および、前記緑色ダイオードと前記青色ダイオードとの界面に、
前記発光部が、前記基板側から赤色ダイオード、青色ダイオード、緑色ダイオードの順に積層されている場合には、前記赤色ダイオードと前記青色ダイオードとの界面、および、前記青色ダイオードと前記緑色ダイオードとの界面に、
AlN、AlGaN、AlInN、AlGaInNのいずれかによって形成されたバリア層が設けられていることを特徴とする第4の態様ないし第7の態様のいずれかに記載の表示装置である。
【0036】
そして、第9の態様は
前記発光部が、前記基板側から赤色ダイオード、緑色ダイオード、青色ダイオードの順に積層されている場合には、前記赤色ダイオードと前記緑色ダイオードとの界面、および、前記緑色ダイオードと前記青色ダイオードとの界面に、
前記発光部が、前記基板側から赤色ダイオード、青色ダイオード、緑色ダイオードの順に積層されている場合には、前記赤色ダイオードと前記青色ダイオードとの界面、および、前記青色ダイオードと前記緑色ダイオードとの界面に、
AlInNおよびGaNが積層、AlGaNおよびGaNが積層、あるいはAlGaInNおよびGaNが積層されたDBR構造が形成されていることを特徴とする第4の態様ないし第8の態様のいずれかに記載の表示装置である。
【0037】
そして、第10の態様は
前記複数種類の発光ダイオードは、前記基板の表面に横並びで配置されていることを特徴とする第1の態様ないし第3の態様のいずれかに記載の表示装置である。
【0038】
そして、第11の態様は
前記複数種類の発光ダイオードが、赤色ダイオード、緑色ダイオードおよび青色ダイオードの3種類の発光ダイオードから構成されていることを特徴とする第10の態様に記載の表示装置である。
【0039】
そして、第12の態様は
前記複数種類の発光ダイオードの間の隙間が絶縁体で埋められ、前記発光部の表面が平坦化されていることを特徴とする第10の態様または第11の態様に記載の表示装置である。
【0040】
そして、第13の態様は
前記絶縁体が、可視光透過性樹脂材料、可視光不透過性樹脂材料、可視光を反射する樹脂材料のいずれかで形成されていることを特徴とする第7の態様または第12の態様に記載の表示装置である。
【0041】
そして、第14の態様は
前記発光部の表面上に電気回路を形成するための多層配線構造が形成され、前記多層配線構造に少なくとも1つの能動素子が含まれていることを特徴とする第1の態様ないし第13の態様のいずれかに記載の表示装置である。
【0042】
そして、第15の態様は
前記発光部の表面上に電気回路を形成するための多層配線構造が形成され、前記多層配線構造が、能動素子を含まないパッシブマトリクス型構造であることを特徴とする第1の態様ないし第13の態様のいずれかに記載の表示装置である。
【0043】
そして、第16の態様は
前記青色ダイオード、緑色ダイオード、赤色ダイオードが、ペンタイル状に配置されていることを特徴とする第5の態様ないし第9の態様のいずれかまたは第11の態様に記載の表示装置である。
【0044】
そして、第17の態様は
第1の態様ないし第16の態様のいずれかに記載の表示装置の製造方法であって、
前記複数種類の発光ダイオードの発光部を有機金属気相成長法を用いて形成することを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0045】
本発明は、上記各態様に基づいてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
赤色、緑色、および青色の互いに異なる波長の光を発光する3種類のPiN接合型の発光ダイオードが、同一基板上に積層された表示装置であって、
前記積層は、エピタキシャル結晶成長による積層であり、
赤色ダイオードが、ユーロピウム(Eu)を含んだ窒化ガリウム系(GaN系)の活性層を有し、
緑色ダイオードおよび青色ダイオードが、赤色ダイオードと異なる元素で構成されたバンドギャップ間の遷移に基づく発光部を備えており、
赤色ダイオードと、緑色ダイオードと、青色ダイオードの積順が、基板側より、赤色ダイオード、青色ダイオード、緑色ダイオードの順、または、赤色ダイオード、緑色ダイオード、青色ダイオードの順である
ことを特徴とする表示装置である。
【0047】
そして、請求項に記載の発明は、
光を基板側から取り出すことを特徴とする請求項に記載の表示装置である。
【0048】
そして、請求項に記載の発明は、
前記基板が窒化ガリウム基板であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置である。
【0049】
そして、請求項に記載の発明は、
前記3種類の発光ダイオードが、前記基板の表面に順次積層されており、
一の色にかかる発光層の少なくとも一部に重畳して他の色にかかる発光層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置である。
【0050】
そして、請求項に記載の発明は、
前記発光部は、表面側に前記緑色ダイオード、青色ダイオードそれぞれの発光ダイオードに通電する電極を形成するための段差が形成された段差構造を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の表示装置である。
【0051】
そして、請求項に記載の発明は、
前記段差によって形成された凹部が絶縁体で埋められ、前記発光部の表面が平坦化されていることを特徴とする請求項に記載の表示装置である。
【0052】
そして、請求項に記載の発明は、
前記絶縁体が、可視光透過性樹脂材料、可視光不透過性樹脂材料、可視光を反射する樹脂材料のいずれかで形成されていることを特徴とする請求項に記載の表示装置である。
【0053】
そして、請求項に記載の発明は、
前記発光部が、前記基板側から赤色ダイオード、緑色ダイオード、青色ダイオードの順に積層されている場合には、前記赤色ダイオードと前記緑色ダイオードとの界面、および、前記緑色ダイオードと前記青色ダイオードとの界面に、
前記発光部が、前記基板側から赤色ダイオード、青色ダイオード、緑色ダイオードの順に積層されている場合には、前記赤色ダイオードと前記青色ダイオードとの界面、および、前記青色ダイオードと前記緑色ダイオードとの界面に、
AlN、AlGaN、AlInN、AlGaInNのいずれかによって形成されたバリア層が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の表示装置である。
【0054】
そして、請求項に記載の発明は、
前記発光部が、前記基板側から赤色ダイオード、緑色ダイオード、青色ダイオードの順に積層されている場合には、前記赤色ダイオードと前記緑色ダイオードとの界面、および、前記緑色ダイオードと前記青色ダイオードとの界面に、
前記発光部が、前記基板側から赤色ダイオード、青色ダイオード、緑色ダイオードの順に積層されている場合には、前記赤色ダイオードと前記青色ダイオードとの界面、および、前記青色ダイオードと前記緑色ダイオードとの界面に、
AlInNおよびGaNが積層、AlGaNおよびGaNが積層、あるいはAlGaInNおよびGaNが積層されたDBR構造が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の表示装置である。
【0055】
そして、請求項10に記載の発明は、
前記発光部の表面上に電気回路を形成するための多層配線構造が形成され、前記多層配線構造に少なくとも1つの能動素子が含まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の表示装置である。
【0056】
そして、請求項11に記載の発明は、
前記発光部の表面上に電気回路を形成するための多層配線構造が形成され、前記多層配線構造が、能動素子を含まないパッシブマトリクス型構造であることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の表示装置である。
【0057】
そして、請求項12に記載の発明は、
前記青色ダイオード、緑色ダイオード、赤色ダイオードが、ペンタイル状に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項または請求項10に記載の表示装置である。
【0058】
そして、請求項13に記載の発明は、
請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法であって、
前記複数種類の発光ダイオードの発光部を有機金属気相成長法を用いて形成することを特徴とする表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、画素数を増加した場合でも、画素数に比例して製造コストが上昇するということがなく、且つ外部に対して波長が異なる複数種類の光を、所望の比率で高い強度で発光することができる発光部を備えた表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の発光部の成膜プロセスを示す模式図である。
図2】3色LED縦集積型の発光部の段差構造にした後の断面構造を示す模式図である。
図3】本発明に係る表示装置におけるバリア層を説明する図である。
図4】3色LED縦集積型の発光部の電極を形成した後の形態を示す図であり、(a)は上側から見た模式図であり、(b)は断面の模式図である。
図5】3色LED縦集積型の上側取り出しタイプの電極の形成電極の形成プロセスを説明する図である。
図6】3色LED縦集積型の下側取り出しタイプの電極の形成電極の形成プロセスを説明する図である。
図7】本発明に係る表示装置におけるDBR構造を説明する図である。
図8】本発明に係る表示装置における発光部の配置例を示す図である。
図9】本発明の他の一実施の形態に係る表示装置の発光部の構成および発光部と電気回路基板との接続方法の一例を示す模式図である。
図10】本発明の他の一実施の形態に係る表示装置の発光部の構成および発光部と電気回路基板との接続方法の他の一例を示す模式図である。
図11】本発明の他の一実施の形態に係る表示装置の発光部の成膜プロセスの一例を示す模式図である。
図12】本発明の他の一実施の形態に係る表示装置の発光部の電極の形成プロセスを示す模式図である。
図13】本発明の他の一実施の形態に係る表示装置の電極の形成プロセスを示す模式図である。
図14】本発明のさらに他の一実施の形態に係る表示装置の発光部の成膜プロセスの一例を示す模式図である。
図15】本発明のさらに他の一実施の形態に係る表示装置の電極の形成プロセスを示す模式図である。
図16】本発明のさらに他の一実施の形態に係る表示装置の電極の形成プロセスを示す模式図である。発光部の成膜プロセスの一例を示す模式図である。
図17】多層配線構造を備える表示装置の模式図である。
図18】多層配線構造の回路の一例を示す図である。
図19】多層配線構造の回路の一例を示す図である。
図20】本発明に係る表示装置のHMDへの適用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を用いて説明する。
【0062】
本発明の表示装置は、波長が異なる複数種類の光を発光するLEDを同一半導体基板上に複数個配置した構造を有し、且つ複数種類の発光ダイオードの少なくとも1種類に、希土類元素を含む活性層を有するLEDを用いた発光部を備えている点で従来のLEDを用いた表示装置と相違する。
【0063】
発光部の構造としては、同一半導体基板上に複数種類のLEDを種類ごとに、それぞれ1個ずつを積層させて画素を形成した縦集積型と、横並びで平面状に配置して画素を形成した横集積型の2種類がある。以下、R、G、B3色のLEDを用いて画素を形成する発光部の形成プロセスを縦集積型、横集積型の順に説明する。なお、以下においては、基材としてサファイア、半導体基板、およびLEDの窒化物半導体を、構成する窒化物として、GaNを例に挙げて説明するが、前記したように、これらに限定されるものではない。例として、GaN系以外のAlN、InN等のいわゆるGaN系以外の窒化物(InGaNやAlGaNの混晶を含む)も含まれる。
【0064】
[1]縦集積型
A.発光部の構成
図1は、縦集積型の発光部の形成プロセスを示す模式図である。図1において(12)は、3色のLEDを積層させた後の状態を示す図であって、サファイア基材上に、低温GaN(LT-GaN)から成るバッファー層と、バッファー層の上に積層され、n-GaNの結晶性を高めるために設けられた無添加GaN(u-GaN)層からなる半導体基板が設けられている。その上に、基板側から赤色LED、青色LED、緑色LEDの順で積層されている。
【0065】
なお、ここでは、基板側から赤色LED、青色LED、緑色LEDの順で積層する例を示している。このような並び方にするのは、結晶性及び表面の平坦性の点を鑑みて積層の容易さから望ましいからである。
【0066】
一方で、青色LED、緑色LEDの積層順はこれに限られず、赤色LED、緑色LED、青色LEDの順で並べるようにしても良い。このような並べ方にすると、青色LEDに対して効率の低い緑色LEDの発光面積を大きくすることが容易になり、緑色発光強度を得やすくなる。したがって、結晶性及び表面の平坦性の観点を重視する場合は、赤色LED、青色LED、緑色LEDの順とし、より強い緑色発光を得る場合には、赤色LED、緑色LED、青色LEDとすればよい。赤色LED、緑色LED、青色LEDの順とする場合の製造プロセスは、以下に示す段差構造形成における緑色LEDの工程と青色LEDの工程を入れ替えれば足りる。
【0067】
各LEDは、それぞれ基板側からn-GaN、活性層、p-GaNが積層されたPiN接合で構成されており、各活性層(i層)は、GaN・Eu、InGaN/GaNで形成されている。
【0068】
B.発光部の形成
1.基板の形成
まず、サファイア基材上に低温GaN層をバッファー層として成長(例えば475℃)させた後、無添加GaN層(例えば1180℃)を0.5~5.0μm程度成長させる。
【0069】
2.赤色LED形成
GaN:Eu層を発光層とする赤色LED構造を、有機金属気相エピタキシー(OMVPE)法により作製する。具体的には、無添加GaN層上に、Siを添加したn型GaN層を、0.1~5.0μm程度成長させる(例えば1180℃)。このとき、Si濃度を1017~1022cm-3程度に制御する。Si源としては、モノメチルシラン(CHSiH)やトリメチルシラン((CHSiH)などのSiを含む原料を、試料表面にガス状に供給する。
【0070】
上記の層上に、Euを添加したGaN:Eu層を、0.1~5.0μm程度成長させる(例えば960℃)。この際、Eu濃度を1017~1022cm-3程度となるように制御する。Eu原料としてはEuCppm2やEu(DPM)等を用いる。
【0071】
上記の層上に、Mgを添加したp型GaN層(あるいはp型AlGaN層)を0.1~5000nm程度成長させる(例えば1050℃)。このとき、Mg濃度を1017~1022cm-3程度となるように制御する。Mg源として、例えば、MgCp等のMgを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0072】
3.青色LED形成
上記で作製した試料表面上に、InGaN層を発光層とする青色LED構造を有機金属気相エピタキシー法により作製する。
【0073】
具体的には、上記の層上に、Siを添加したn型GaN層を0.1~5.0μm程度成長させる(例えば1180℃)。このとき、Si濃度を1017~1022cm-3程度に制御する。Si源としては、モノメチルシラン(CHSiH)や、トリメチルシラン((CHSiH)などのSiを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0074】
上記の層上に、InGaN量子井戸構造を1~1000nm程度成長させる(例えば715℃)。この際、InNモル分率は0.1~15%程度となるように制御する。In原料としては、トリメチルインジウム(TMIn)等を用いる。
【0075】
上記の層上に、Mgを添加したp型GaN層(あるいはp型AlGaN層)を0.1~5000nm程度成長させる(例えば1050℃)。このとき、Mg濃度を1017~1022cm-3程度となるように制御する。Mg源として、例えば、MgCp等のMgを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0076】
4.緑色LED形成
上記で作製した試料表面上に、InGaN層を発光層とする緑色LED構造を、有機金属気相エピタキシー法により作製する。
【0077】
技術的には、上記の層上に、Siを添加したn型GaN層を0.1~5.0μm程度成長させる(例えば1180℃)。このとき、Si濃度を1017~1022cm-3程度に制御する。Si源としては、モノメチルシラン(CHSiH)、トリメチルシラン((CHSiH)などのSiを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0078】
上記の層上に、InGaN量子井戸構造を1~1000nm程度成長させる(例えば675℃)。この際、InNモル分率は15~40%程度となるように制御する。In原料としてはトリメチルインジウム(TMIn)等を用いる。
【0079】
上記の層上に、Mgを添加したp型GaN層(あるいはp型AlGaN層)を0.1~5000nm程度成長させる(例えば1050℃)。このとき、Mg濃度を1017~1022cm-3程度となるように調整する。Mg源としてMgCp等のMgを含む原料を試料表面にガス状に供給する。以上により(1)に示す積層体を形成する。
【0080】
5.段差構造形成
上記により、図1の(1)で示す積層体が形成される。次に、赤色LEDにn電極を、青色LEDおよび緑色LEDにn電極とp電極を形成するため、赤色LEDの面積>青色LEDの面積>緑色LEDの面積となるように積層体を段差構造とする。この際、R、G、Bの3色全てを発光させたときに質の高い白色が形成されるように、緑色LED、青色LED、赤色LEDの発光面積の比を調整する。面積比は各LEDの外部量子効率と、人の明視標準比視感度とに基づいて決定する。
【0081】
ただし、ここでの調整方法は、面積比のみで調整する場合に限らない。LEDの発光量は、発光面積のみならず、発光素子に加える電圧(高電圧を印加すればそれだけ強く発光する)や電流(大電流を印加すればそれだけ強く発光する)によっても変化させることができるから、仮に、面積比から見て狙いの発光量に至らなかった場合であっても、その色のLEDに、他の色のLEDよりも高電圧及び/又は高電流を印加することで、強く発光させ、その結果として狙いの発光量に調整するようにしても良い。
【0082】
段差構造の形成にはエッチングが用いられ、以下のプロセスで行われる。なお、下記の番号は、図1の番号と対応している。以下の工程は、下から順に赤色LED、青色LED、緑色LEDの順である。
(1)緑色LED下部領域用レジストのパターニング
(2)緑色LEDのn層までドライエッチング
(3)レジスト剥離
(4)青色LED上部電極領域用レジストのパターニング
(5)青色LEDのp層までドライエッチング
(6)レジスト剥離
(7)青色LED下部電極領域用レジストのパターニング
(8)青色LEDのn層までドライエッチング
(9)レジスト剥離
(10)赤色LED上部電極領域用レジストのパターニング
(11)赤色LEDのp層までドライエッチング
(12)レジスト剥離
(13)赤色LED下部電極領域用レジストのパターニング
(14)赤色LEDのn層までドライエッチング
(15)レジスト剥離
【0083】
なお、以上の段差構造を作製するプロセスフローは、あくまで一例であり、再成長・選択成長・基板貼り合わせ技術など、他にアプローチがあればこの限りではない。
【0084】
図2に縦集積型の発光部の段差構造にした後の断面構造を示す。なお、図2に記載の各層の厚みは一例であって、限定されるものではない。そして、図2では、図1と異なり、緑色、青色、赤色LEDの各々の間にAlGaNのバリア層が形成されているが、これは、実際に電極が取付けられた際、p-GaNと上部のn-GaNとの端子間が電気的に絶縁されていることが好ましいことを考慮したものである。なお、バリア層としては、AlGaN層に限定されず、AlN、AlInN、AlGaInN、いずれかのバリア層であってもよい。
【0085】
即ち、図3に示すように、各LEDのn-GaNとP+-GaNとを接続すると、隣接するLEDの電極(下部のP+-GaN/上部のn-GaN)間のA、Bに、寄生pn接合が形成されてリーク電流が発生する場合がある。このようなリーク電流の発生を抑制するために、下部のP+-GaNと上部のn-GaNとの間、C、Dに、AlGaNなどのバリア層を設けて、端子間を電気的に絶縁させることが好ましい。なお、具体的なバリア層の厚みとしては、1nm~1μm程度(例えば50nm)が好ましい。
【0086】
また、図4に縦集積型の発光部の電極を形成した後の形態の一例を示す。なお、(a)は上側から見た模式図であり、(b)は断面の模式図である。青色LED、緑色LED、赤色LEDの電極形成部分を除く面積比は、例えば1:1:6に設定される。また、チップ1個の厚みは10μm以下である。
【0087】
なお、図4では、電極取り出しのための段差を上側から(平面的に)見て、正方形の部材のうちの2辺を切り出すような形で「L字状」に形成したが、これに限られないことは言うまでもない。たとえば、正方形の部材のうちの1辺のみを切り出すような形で「短冊状」に切り出しても良いし、正方形の部材のうちの3辺を切り出すような形で「門構え状」に切り出しても良いし、これら1辺、2辺、3辺の切り出しを混在させて段差を形成しても良い。
【0088】
C.電極の形成
1.上側取り出しタイプ
上側取り出しタイプ、即ち、光を緑色LED側から取り出す場合、以下のプロセスで電極を形成する。下記の番号は、図5の番号と対応している。
(16)スピンオングラスやビスベンゾシクロブテン、あるいはポリジメチルシロキサンなど、最初は液体だが熱や露光による化学反応で固化するような樹脂を用いて図1の(15)の構造を埋め込み・平坦化する。樹脂の条件としては、可視光(RGB)に対して透過性があるもの(可視光領域での吸収が無いもの、あるいは少ないもの)を用いる。上記材料は可視光に対して吸収が無いもの、あるいは少ないものであるが、上記条件を満たす樹脂であればそれらも含まれる。なお、画素側壁から隣接画素へ光が拡散して漏れると、隣り合った画素間で干渉が起こって、画像のぼけが発生するおそれがあるため、このような場合には、上記樹脂として、可視光不透過性の樹脂材料を用いて、可視光を吸収することが好ましい。
(17)樹脂のドライエッチングにより赤色LEDのp-GaN上部が露出するまでエッチング(エッチバックと呼ぶ)
(18)緑色・青色・赤色LEDのn層への電極形成のためのパターニング
(19)樹脂のエッチング(ドライエッチングまたはウェットエッチング)→n型電極形成(通常のn-GaNにオーミックコンタクトが取れる材料。例としてTiAu:チタン・金)→レジスト剥離による電極のリフトオフプロセス
(20)緑色・青色・赤色LEDのp層への透明電極形成のためのパターニング
(21)樹脂のエッチング(ドライエッチングまたはウェットエッチング)→p型電極形成(ITO:インジウム・スズ・鉛)→レジスト剥離による透明電極のリフトオフプロセス
【0089】
2.下側取り出しタイプ
下側取り出しタイプ、即ち、光を基板側から取り出す場合、以下のプロセスで電極を形成する。なお、下記の番号は、図6の番号と対応している。基本的には、上側取り出しタイプと同じプロセスを用いるが、光を上側へ取り出す必要がないため、p側コンタクト電極として透明電極の代わりに金属電極を用いている点が異なる。
(16)スピンオングラスやビスベンゾシクロブテン、あるいはポリジメチルシロキサンなど、最初は液体だが熱や露光などによる化学反応で固化するような絶縁性の樹脂を用いて図1の(15)の構造を埋め込み・平坦化する。樹脂の条件としては、可視光(RGB)に対して透過性があるもの(可視光領域での吸収が無い、あるいは少ないもの)または可視光を反射するものでもよい。なお、画素側壁から隣接画素へ光が拡散して漏れると、上側取り出しタイプの場合と同様に、隣り合った画素間で干渉が起こって、画像のぼけが発生するおそれがあるため、上記樹脂として、可視光不透過性の樹脂材料を用いて、可視光を吸収することが好ましい。
(17)樹脂のドライエッチングにより、赤色LEDのp-GaN上部が、露出するまでエッチバック
(18)緑色・青色・赤色LEDのn層への電極形成のためのパターニング
(19)樹脂のエッチング(ドライエッチングまたはウェットエッチング)→n型電極形成(通常のn-GaNにオーミックコンタクトが取れる材料、例としてTiAu:チタン・金)→レジスト剥離による電極のリフトオフプロセス
(20)緑色・青色・赤色LEDのp層への電極形成のためのパターニング
(21)樹脂のエッチング(ドライエッチングまたはウェットエッチング)→p型電極形成(通常のp-GaNにオーミックコンタクトが取れる材料。例としてCrAu:クロム・金)→レジスト剥離による金属電極のリフトオフプロセス
【0090】
なお、縦集積型で下側取り出しタイプの場合、図7(a)に示すように、上記したバリア層に追加、またはバリア層と交換する形で、特定の波長のみを反射するようなDBR構造(回折格子)を設けて、裏面側へ向けて発せられた光を反射させて表面側に向けて送り出すことによっても、外部への光取り出し効率をより向上させることができる。
【0091】
具体的な一例として、下方向(サファイア基材方向)に光を取り出すために、サファイア基材の主面側から順に、赤色LED、青色LED、緑色LEDが形成されている場合、赤色LEDを構成する最上層のp-GaN層と青色LEDを構成する最下層のn-GaNとの間(D)、および、青色LEDを構成する最上層のp-GaN層と緑色LEDを構成する最下層のn-GaNとの間(C)に、バリア層に追加あるいはバリア層と交換する形で、赤色や青色を反射するDBR構造を設ける。
【0092】
これにより、赤色光や青色光のそれぞれが、バリア層やDBR構造において反射され下方向(サファイア基材方向)に向けて送り出されるため、送り出される光量が増加し、外部への光取り出し効率を向上させることができる。
【0093】
即ち、DBR構造は、屈折率が異なる媒質を交互に成長させて積層することにより、光を干渉させて反射させることができ、光の出射方向を容易に制御することができる。そして、このように、DBR構造が回折格子として働くことにより、特定の波長の光だけを活性層に戻る方向に反射させ、その他の光は透過させることができるため、送り出される光量を増加させて、光取り出し効率を向上させることができる。
【0094】
なお、具体的なDBR構造としては、例えば、図7(b)に示すように、AllnN(高屈折率)/GaN(低屈折率)の多層積層膜が好ましく、このとき、AllnNとGaNとが十分に格子整合して、面内歪みの発生が制御されるように、各層を成長させる。各層の厚みおよび積層数は、対象となる光の波長に対応して適宜決定されるが、通常は、10~30ペア積層することが好ましいが、100ペアを超える積層であってもよい。そして、このようなDBR構造は、AlInN/GaNの積層に限定されず、AlGaN/GaNやAlGaInN/GaNの多層積層膜であってもよい。なお、本発明者は、図7(c)に示すように、赤色(波長626nm)を反射させるDBR構造として、AllnN(52nm)/GaN(85nm)を1ペアとして、42ペア積層することにより、99.1%の反射率が得られることを確認している。なお、このような積層構造は、例えば、820℃でのAllnN、1030℃でのGaNの成長を繰り返すことにより得ることができる。
【0095】
また、サファイア基材面方向へ光を取り出す場合において、サファイア基材の主面上に凹凸加工を施して、最表面上に微細な凹凸を形成した場合にも、その凹凸により、サファイア基材主面から送り出される光量が増加するため、外部への光取り出し効率を向上させることができる。なお、この凹凸加工は、前記したバリア層やDBR構造と併用してもよい。
【0096】
図8に縦集積型の発光部の電極を形成した後の形態の別の例を示す。サブ画素の構成としては、図8(a)に示すように、RGBストライプ方式を用いることもできるが、図8(b)に示すように、緑色だけが毎画素に存在し、青色と赤色とが空間的に交互に配置されたペンタイル方式を採用してもよい。そして、このようなペンタイル方式を採用することにより、同じ画素数であっても、見かけの解像度を上げることができる。
【0097】
また、サブ画素の形状についても、図8(a)や図8(b)のような長方形に限られるものではなく、例えば、六角形を基本とするハニカム状に配置されていてもよく、上記したペンタイル方式の場合と同様に、同じ画素数であっても、見かけの解像度を上げることができる。このようなハニカム状配置の例として、図8(c)に、RGBの3つのサブ画素から1つの画素を構成した例を、図8(d)に、ペンタイル方式で構成した例を示す。なお、この六角形の画素の配置は、後述する横集積型の構造に対しても適用することができる。
【0098】
また、複数の発光部をレイアウトする場合、上下左右にそのままの配置でレイアウトする場合の他、上下左右に線対称にしながらに配置するようにしても良い。後述するとおり、各発光部は駆動素子であるトランジスタと電気的に接続されることになるため、トランジスタのレイアウト配置に合わせた配置になっていることが望ましい。このため、複数のトランジスタのレイアウト配置が、上下左右に線対称にしながらに配置している場合には、発光部も上下左右に線対称にしながらに配置すると良い。また、複数のトランジスタのレイアウト配置が、上下の関係のみ線対称としたり、左右の関係のみ線対称にしながら配置している場合には、それにあわせて、発光部も上下の関係のみ線対称としたり、左右の関係のみ線対称として配置すればよい。
【0099】
[2]横集積型
A.発光部の構成
図9は本発明の他の一実施の形態に係る表示装置の発光部の構成および発光部と電気回路基板との接続を示す模式図であり、3色LEDの横集積型の構成の一例を示している。図9(a)に示すように、R、G、B3色のLEDが、同一のGaN基板上に、横並びに集積され、LED間の隙間には樹脂等の絶縁体が埋め込まれている。また、R、G、B3色のLEDは、n電極を共通にしてp電極同士、n電極同士が同じ方向に向くように配置されている。また、p電極の高さが揃えられており、図9(b)に示すように発光部を上下逆さにしてフェースダウンすることで各LEDのp電極を1プロセスで3色のLEDの発光を制御する電気回路基板に接続することができる。
【0100】
また、発光部を図10(a)のように構成することもできる。即ち、n電極をp電極と同一面上に配置し、n電極とn型GaNと導通させる。一方、回路基板上にn電極、p電極のそれぞれに対応する電極をn電極、p電極のピッチと同じピッチで配置する。これにより、図10(b)に示すように発光部を上下逆さにしてフェースダウンすることで各LEDのn電極、p電極を1プロセスで3色のLEDの発光を制御する電気回路基板に接続することができる。
【0101】
また、緑色LED、青色LED 、赤色LEDの発光面積の比は、縦集積型の場合と同じ方法で設定される。
【0102】
B.発光部の形成
1.製法1
製法1における横集積型の発光部は、以下のプロセスで形成する。なお、下記の番号は、図11の番号と対応している。ただし、Inを含む青色LEDおよび緑色LEDでは、継続的な高温プロセスによって発光層が劣化することが知られており、とくに高In濃度を要する緑色LEDでは、劣化現象が顕著であるため、In濃度の低い順に、赤色LED、青色LED、緑色LEDの順に発光部を形成する。
【0103】
(a)基板の形成
(1)サファイア基材の表面の一部に蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法などを用いて、GaN系半導体の結晶成長を阻害するマスク材料を形成する(例えばSiOやTiNなど)。
【0104】
(b)赤色LEDの形成
(2)上記で作製したマスク材料が存在しない表面上に、GaN:Eu層を発光層とする赤色LED構造を有機金属気相エピタキシー法により作製する。
まず、低温GaN層をバッファー層として成長(例えば475℃)させた後、無添加GaN層(例えば1180℃)を0.5~5.0μm程度成長させる。
【0105】
上記の層上に、Siを添加したn型GaN層を0.1~5.0μm程度成長させる(例えば1180℃)。このとき、Si濃度を1017~1022cm-3程度に制御する。Si源としてはモノメチルシラン(CHSiH)や、トリメチルシラン((CHSiH)などのSiを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0106】
上記の層上に、Euを添加したGaN:Eu層を0.1~5.0μm程度成長させる(例えば960℃)。この際、Eu濃度を1017~1022cm-3程度となるように制御する。Eu原料としては、EuCppm やEu(DPM)等を用いる。
【0107】
上記の層上に、Mgを添加したp型GaN層(あるいはp型AlGaN層)を0.1~5000nm程度成長させる(例えば1050℃)。このとき、Mg濃度を1017~1022cm-3程度となるように制御する。Mg源として、例えばMgCp等のMgを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0108】
(c)青色LED形成
(3)上記の(1)で作製したマスク材料を化学的エッチングによって除去した後、試料表面の一部に蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法などを用いて、GaN系半導体の結晶成長を阻害するマスク材料を形成する。(例えばSiOやTiNなど)
【0109】
(4)上記で作製したマスク材料が存在しない表面上に、InGaN層を発光層とする青色LED構造を有機金属気相エピタキシー法により作製する。
まず、低温GaN層をバッファー層として成長(例えば475℃)後、無添加GaN層(例えば1180℃)を0.5~5.0μm程度成長させる。
【0110】
上記の層上に、Siを添加したn型GaN層を0.1~5.0μm程度成長させる(例えば1180℃)。このとき、Si濃度を1017~1022cm-3程度に制御する。Si源としてはモノメチルシラン(CHSiH)や、トリメチルシラン((CHSiH)などのSiを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0111】
上記の層上に、InGaN量子井戸構造を1~1000nm程度成長させる(例えば715℃)。この際、InNモル分率は0.1~15%程度となるように制御する。In原料としてはトリメチルインジウム(TMIn)等を用いる。
【0112】
上記の層上に、Mgを添加したp型GaN層(あるいはp型AlGaN層)を0.1~5000nm程度成長させる(例えば1050℃)。このとき、Mg濃度を1017~1022cm-3程度となるように制御する。Mg源として、例えばMgCp等のMgを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0113】
(d)緑色LED形成
(5)上記の(3)で作製したマスク材料を化学的エッチングによって除去した後、試料表面の一部に蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法などを用いて、GaN系半導体の結晶成長を阻害するマスク材料を形成する(例えばSiOやTiNなど)。
【0114】
(6)上記で作製したマスク材料が存在しない表面上に、InGaN層を発光層とする緑色LED構造を有機金属気相エピタキシー法により作製する。
まず、低温GaN層をバッファー層として成長(例えば475℃)後、無添加GaN層(例えば1180℃)を0.5~5.0μm程度成長させる。
【0115】
上記の層上に、Siを添加したn型GaN層を0.1~5.0μm程度成長させる(例えば1180℃)。このとき、Si濃度を1017~1022cm-3程度に制御する。Si源としてはモノメチルシラン(CHSiH)やトリメチルシラン((CHSiH)などのSiを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0116】
上記の層上に、InGaN量子井戸構造を1~1000nm程度成長させる(例えば675℃)。この際InNモル分率は15~40%程度となるように制御する。In原料としてはトリメチルインジウム(TMIn)等を用いる。
【0117】
上記の層上に、Mgを添加したp型GaN層(あるいはp型AlGaN層)を0.1~5000nm程度成長させる(例えば1050℃)。このとき、Mg濃度を1017~1022cm-3程度となるように制御する。Mg源として、例えばMgCp等のMgを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0118】
(7)上記の(5)で作製したマスク材料を化学的エッチングによって除去する。なお、(2)(4)(6)順序は入れ替わっても構わない。
【0119】
C.電極の形成
次に、電極を形成する。先ず図12に示すプロセスでn電極を形成した後、図13に示すプロセスでp電極を形成する。なお、n電極プロセスの番号、p電極形成プロセスの番号は、それぞれ図12図13の番号と符号している。
【0120】
(a)n電極の形成
(8)3色LEDそれぞれのn層領域用のレジストのパターニング
(9)3色LEDそれぞれのn層までドライエッチング
(10)レジスト剥離
(11)樹脂埋め込み。スピンオングラスやビスベンゾシクロブテン、あるいはポリジメチルシロキサンなど、最初は液体だが熱や露光などの化学反応で固化するような樹脂を用いて図12の(11)の構造を埋め込み・平坦化する。樹脂の条件としては、可視光(RGB)に対して透過性があるもの(可視光領域での吸収が無いもの、あるいは少ないもの)を用いる。
(12)樹脂のドライエッチングにより3色EDそれぞれのp-GaN上部が露出するまでエッチバック
(13)3色LEDのそれぞれのn電極形成のためのパターニング
(14)樹脂のエッチング(ドライエッチングまたはウェットエッチング)
(15)n電極形成(通常のn-GaNにオーミックコンタクトが取れる材料。例としてTiAu:チタン・金)
(16)レジスト剥離による電極のリフトオフプロセス
【0121】
(b)p電極の形成
(17)3色LEDそれぞれのp電極形成用のマスク形成
(18)p電極形成(通常のp-GaNにオーミックコンタクトが取れる材料。例としてCrAu:クロム・金)
(19)レジスト剥離による電極のリフトオフプロセス(完成)
【0122】
2.製法2
A.発光部の形成
製法2における横集積型の発光部は、以下のプロセスで形成する。なお、下記の番号は、図14の番号と対応している。
(a)基板の形成
(1)まず、サファイア基材上に低温GaN層をバッファー層として成長(例えば475℃)後、無添加GaN層(例えば1180℃)を0.5~5.0μm程度成長させる。
【0123】
(b)n型GaN層形成
上記の層上に、Siを添加したn型GaN層を0.1~5.0μm程度成長させる(例えば1180℃)。このとき、Si濃度を1017~1022cm-3程度に制御する。Si源としてはモノメチルシラン(CHSiH)やトリメチルシラン((CHSiH)などのSiを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0124】
(c)赤色LED形成
試料の表面の一部に蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法などを用いて、GaN系半導体の結晶成長を阻害するマスク材料を形成する(例えばSiOやTiNなど)。
(2)上記で作製したマスク材料が存在しない表面上に、GaN:Eu層を発光層とする赤色LED構造を有機金属気相エピタキシー法により作製する。(1)で作製したn型GaN層上に、Euを添加したGaN:Eu層を0.1~5.0μm程度成長させる(例えば960℃)。この際、Eu濃度を1017~1022cm-3程度となるように制御する。Eu原料としてはEuCppm2やEu(DPM)等を用いる。
【0125】
上記の層上に、Mgを添加したp型GaN層(あるいはp型AlGaN層)を0.1~5000nm程度成長させる(例えば1050℃)。このとき、Mg濃度を1017~1022cm-3程度となるように制御する。Mg源として、例えばMgCp等のMgを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0126】
(d)青色LED形成
(3)上記の(1)で作製したマスク材料を化学的エッチングによって除去する。
(4)試料表面の一部に蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法などを用いて、GaN系半導体の結晶成長を阻害するマスク材料を形成する(例えばSiOやTiNなど)。
【0127】
(5)上記で作製したマスク材料が存在しない表面上に、InGaN層を発光層とする青色LED構造を有機金属気相エピタキシー法により作製する。(1)で作製したn型GaN層上に、InGaN量子井戸構造を1~1000nm程度成長させる(例えば715℃)。この際、InNモル分率は0.1~15%程度となるように制御する。In原料としてはトリメチルインジウム(TMIn)等を用いる。
【0128】
上記の層上に、Mgを添加したp型GaN層(あるいはp型AlGaN層)を0.1~5000nm程度成長させる(例えば1050℃)。このとき、Mg濃度を1017~1022cm-3程度となるように制御する。Mg源として、例えばMgCp等のMgを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0129】
(e)緑色LED形成
(6)上記の(4)で作製したマスク材料を化学的エッチングによって除去する。
(7)試料表面の一部に蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法などを用いて、GaN系半導体の結晶成長を阻害するマスク材料を形成する(例えばSiOやTiNなど)。
【0130】
(8)上記で作製したマスク材料が存在しない表面上に、InGaN層を発光層とする緑色LED構造を有機金属気相エピタキシー法により作製する。(1)で作製したn型GaN層上に、InGaN量子井戸構造を1~1000nm程度成長させる(例えば675℃)。この際、InNモル分率は15~40%程度となるように制御する。In原料としてはトリメチルインジウム(TMIn)等を用いる。
【0131】
上記の層上に、Mgを添加したp型GaN層(あるいはp型AlGaN層)を0.1~5000nm程度成長させる(例えば1050℃)。このとき、Mg濃度を1017~1022cm-3程度となるように制御する。Mg源として、例えばMgCp等のMgを含む原料を試料表面にガス状に供給する。
【0132】
(9)上記の(7)で作製したマスク材料を化学的エッチングによって除去する。なお、(2)(5)(8)の順序は入れ替わっても構わない。
【0133】
B.電極の形成
次に、電極を形成する。先ず図15に示すプロセスでn電極を形成した後、図16に示すプロセスでp電極を形成する。なお、n電極プロセスの番号、p電極形成プロセスの番号は、それぞれ図15図16の番号と符号している。
【0134】
(a)n電極の形成
(10)3色LEDに共通のn層領域用のレジストのパターニング
(11)n層までドライエッチング
(12)レジスト剥離
(13)樹脂埋め込み。スピンオングラスやビスベンゾシクロブテン、あるいはポリジメチルシロキサンなど、最初は液体だが熱や露光などの化学反応で固化するような樹脂を用いて図12の(11)の構造を埋め込み・平坦化する。樹脂の条件としては、可視光(RGB)に対して透過性があるもの(可視光領域での吸収が無いもの、あるいは少ないもの)を用いる。
(14)樹脂のドライエッチングにより3色EDそれぞれのp-GaN上部が露出するまでエッチバック
(15)n電極形成用のマスク形成
(16)樹脂のエッチング(ドライエッチングまたはウェットエッチング)
(17)n電極形成(通常のn-GaNにオーミックコンタクトが取れる材料。例としてTiAu:チタン・金)
(18)レジスト剥離による電極のリフトオフプロセス
【0135】
(b)p電極の形成
(19)3色LEDそれぞれのp電極形成用のマスク形成
(20)p電極形成(通常のp-GaNにオーミックコンタクトが取れる材料。例としてCrAu:クロム・金)
(21)レジスト剥離による電極のリフトオフプロセス(完成)
【0136】
上記の方法では、緑色LEDおよび青色LED双方の活性層の形成にInGaNを用いたが、緑色LEDの活性層にTb添加GaN(GaN:Tb)を用いることもできる。GaN:Tbは、添加量によらずTbイオンの発光が常に緑色を示すため、温度変化や電流注入量によらず発光波長が常に安定し、かつ狭帯域の発光が得られることから素子特性として好ましい。また、GaN:TbのTb添加量を1022cm-3以上にした場合、GaN母材の結晶性が著しく劣化するため、Tb添加量を1022cm-3未満に制御することが好ましい。
【0137】
また、青色LEDの活性層にTm添加GaN(GaN:Tm)を用いることもできる。TmGaNは、添加量によらずTmイオンの発光が常に青色を示すため、温度変化や電流注入量によらず発光波長が常に安定し、かつ狭帯域の発光が得られることから素子特性として好ましい。また、GaN:TmのTm添加量を1022cm-3以上にした場合、GaN母材の結晶性が著しく劣化するため、Tm添加量を1022cm-3未満に制御することが好ましい。
【0138】
[4]多層配線構造の形成
本実施の形態の表示装置は、前記のように発光部の表面が平坦化されているため、発光部を駆動させる駆動用ドライバを表示部に一体に組込むことが可能である。駆動用ドライバを組み込んだ多層配線構造を形成することにより、ドライバの実装工程を簡略化することができ、低コスト化を図ることができる。また、実装エリアを縮小することができ、さらに表示の高精細化が可能となる。
【0139】
図17は多層配線構造を備える表示装置の模式図であり、(a)上面図、(b)断面図である。また図18は多層配線構造の回路の一例を示す図であり、破線で囲った部分は、図17の多層配線構造の形成に用いられた部分を示している。多層配線構造を形成する回路には能動素子としてトランジスタが組み込まれている。トランジスタには、薄膜トランジスタ液晶ディスプレイに用いられている低温ポリSi TFTが用いられ、赤色ダイオード、青色ダイオード、緑色ダイオードのそれぞれとのサブ画素に1つ設置され、前記トランジスタのソース電極と3色のLEDそれぞれのp電極(透明電極)に配線で接続される。
【0140】
また、各画素の赤色ダイオード、青色ダイオード、緑色ダイオードのn型電極は、配線で共通の電位になるように接続されている。上から光を取り出す場合は、前記共通電位の配線は格子構造に形成するが、光を下から取り出す場合は、光の反射率を向上させるために画素前面を覆っても良い。
【0141】
なお、低温ポリSi TFTは一般的に以下の方法で製造される。まず、(1)前記共通電位の配線の上に絶縁体のSiO膜を形成する。(1)前記SiO膜上(ガラス基板上)にアモルファスSi膜を成膜する。そしてP-CVD法によりアモルファスSi膜を成膜した場合には、Si膜中の水素を除去する脱水素アニール処理を行い、その後エキシマレーザアニールにより多結晶化する。(2)次にチャネル部、ソース・ドレイン部となる多結晶Si膜をエッチング加工し、ゲート絶縁膜を形成する。この後ゲートメタル膜であるAl系メタルを成膜する。そしてゲートメタル膜を加工する。(3)この後,ゲートメタル膜側面を陽極酸化し、オフセット部を形成し、この後ソース・ドレイン部にリンやボロンの不純物を高濃度ドーピングする。(4)この後、層間絶縁膜を形成し、コンタクトホールを開口し、更にソース・ドレインメタル形成を行い、ポリSi TFTを形成する。各サブ画素においてTFTのソース電極とLEDのp電極が配線で接続され、ドレイン電極は、電源ラインに接続される。
【0142】
本実施の形態では、発光部を駆動させる駆動用ドライバを表示部に連続的に形成する工程を示したが、それに限るものでなく、駆動用のTFT基板を形成した後、発光部と接続することでも実現できる。また、各サブ画素の駆動が1つのTFTで形成されていたが、それに限ったものでなく、2つ以上のTFTと1つのコンデンサなどより安定駆動のためのTFT基板でも実現できる。
【0143】
なお、さらに簡単な構成にすることを目的として、タイリング形式で1つのパネルの走査線数が少ない場合には、トランジスタ(TFT)を設けずに、緑色、青色、赤色、各LEDのいずれか一つと、安定化用のキャパシタ一つとでサブ画素を構成してもよい。その一例を図19に示す。また、LED素子構造自体が十分な容量成分を有している場合には、別途容量を形成する必要はない。
【0144】
そして、本実施の形態に基づいてヘッドマウントディスプレイ(HMD)などを構成させる場合、一般的には、複数のパネルを敷き詰めて構成することが必要となるが、この場合、パネル間にはどうしても周辺回路の部分や、パネル間の空隙が存在するため、その部分は映像を表示することができず枠として目立ってしまい、十分な没入感が得られない。
【0145】
そこで、大型のタイリングディスプレイでは、レンズと画像補正により目立たなくする方法が考案されているが、正面からディスプレイを見た場合には枠が目立たないものの、斜め方向からではどうしても枠部分が見えてしまうという問題がある。
【0146】
これに対して、本実施の形態においては、HMDに適用したとき、映像の視聴がディスプレイ画面に対して正対した位置でしか視聴できないようにして、この問題を解決している。図20に、本実施の形態の一例を示し、具体的に説明する。図20に示すように、本実施の形態においては、投影面とパネルとの間にレンズを配置し、パネル映像を拡大して投影面に表示しているが、この時、パネル間の映像に隙間ができないように、パネル位置とレンズの拡大倍率を設定すると共に、画面端部など必要領域の映像に縮小や輝度補正などの処理を行う。これにより、映像がレンズで拡大され、タイリングした状態での映像をシームレスに見ることができるため、十分な没入感を得ることができる。
【0147】
(付記)
以上の発明は一般化することができるため、本発明には、以下の発明も含まれる。
【0148】
付記1の発明は、
同一基板に複数の異なる波長を発光する発光部が形成され、少なくとも一つの前記発光部の活性層に希土類元素が含まれている構造を有することを特徴とする表示装置である。
【0149】
付記2の発明は、
前記複数の異なる波長を発光する発光部が、波長の長い順番に前記基板に近接して積層された構造を有すること特徴とする付記1に記載の表示装置である。
【0150】
付記3の発明は、
前記複数の異なる波長を発光する発光部の少なくとも波長の最も長い発光部の活性層に希土類元素が含まれていることを特徴とする付記1または付記2に記載の表示装置である。
【0151】
付記4の発明は、
前記複数の異なる波長を発光する発光部の波長の長い発光部の発光面積が、最も大きいことを特徴とする付記1ないし付記3のいずれか1つに記載の表示装置である。
【0152】
付記5の発明は、
前記複数の異なる波長を発光する発光部が、電流を流す電極を形成するために段差構造を有することを特徴とする付記1ないし付記4のいずれか1つに記載の表示装置である。
【0153】
付記6の発明は、
前記複数の異なる波長を発光する発光部が、段差構造の表面を平坦化するための絶縁体を有することを特徴とする付記1ないし付記5のいずれか1つに記載の表示装置である。
【0154】
付記7の発明は、
前記複数の異なる波長を発光する発光部の平坦化された表面上に、電気回路を形成するための多層配線構造を形成し、前記多層配線構造に少なくとも1つの能動素子が含まれていることを特徴とする付記1ないし付記6のいずれか1つに記載の表示装置である。
【0155】
付記8の発明は、
前記複数の異なる波長を発光する発光部が、赤色ダイオード、緑色ダイオードおよび青色ダイオードの3種類の発光ダイオードから構成され、
前記赤色ダイオード、緑色ダイオード、および青色ダイオードのそれぞれが、前記基板の表面に横並びで配置されていることを特徴とする付記1に記載の表示装置である。
【0156】
付記9の発明は、
横並びに配置された前記赤色ダイオード、緑色ダイオード、および青色ダイオードの間の隙間が絶縁体で埋められ、前記発光部の表面が平坦化されていることを特徴とする付記8に記載の表示装置である。
【0157】
付記10の発明は、
前記活性層が、ユーロピウム(Eu)を含んだ窒化ガリウム(GaN)の活性層であることを特徴とする付記1ないし付記9のいずれか1つに記載の表示装置である。
【0158】
付記11の発明は、
前記複数種類の発光ダイオードが、赤色ダイオード、緑色ダイオードおよび青色ダイオードの3種類の発光ダイオードから構成され、
前記緑色ダイオードが、インジウム(In)を含んだ窒化ガリウム(GaN)活性層を備えていることを特徴とする付記1ないし付記10のいずれか1つに記載の表示装置である。
【0159】
付記12の発明は、
前記複数種類の発光ダイオードが、赤色ダイオード、緑色ダイオードおよび青色ダイオードの3種類の発光ダイオードから構成され、
前記緑色ダイオードが、前記希土類元素としてテルビウム(Tb)、あるいはエルビウム(Er)を含んだ窒化ガリウム(GaN)活性層を備えていることを特徴とする付記1ないし付記10のいずれか1つに記載の表示装置である。
【0160】
付記13の発明は、
前記複数種類の発光ダイオードが、赤色ダイオード、緑色ダイオードおよび青色ダイオードの3種類の発光ダイオードから構成され、
前記青色ダイオードが、インジウム(In)を含んだ窒化ガリウム(GaN)活性層を備えていることを特徴とする付記1ないし付記12のいずれか1つに記載の表示装置である。
【0161】
付記14の発明は、
前記複数種類の発光ダイオードが、赤色ダイオード、緑色ダイオードおよび青色ダイオードの3種類の発光ダイオードから構成され、
前記青色ダイオードは、ツリウム(Tm)を含む窒化ガリウム(GaN)活性層を備えていることを特徴とする付記1ないし付記12のいずれか1つに記載の表示装置である。
【0162】
付記15の発明は、
前記複数種類の発光ダイオードが、赤色ダイオード、緑色ダイオードおよび青色ダイオードの3種類の発光ダイオードから構成され、
前記基板上に、前記赤色ダイオード、緑色ダイオード、および青色ダイオードが、ハニカム状に配置されていることを特徴とする付記1ないし付記14のいずれか1つに記載の表示装置である。
【0163】
付記16の発明は、
前記基板側に光を取り出すように構成されており、前記基板の主面上に微細な凹凸加工が施されていることを特徴とする付記1ないし付記15のいずれか1つに記載の表示装置である。
【0164】
付記17の発明は、
付記1ないし付記16のいずれか1つに記載の表示装置の製造方法であって、
前記複数種類の発光ダイオードを、前記基板上に並列に配置して製造することを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0165】
付記18の発明は、
付記1ないし付記16のいずれか1つに記載の表示装置の製造方法であって、
前記複数種類の発光ダイオードを、前記基板上に積層して製造することを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0166】
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20