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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20240315BHJP
   B24B 45/00 20060101ALI20240315BHJP
   B24B 55/04 20060101ALI20240315BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20240315BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240315BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B24B27/06 M
B24B45/00 Z
B24B55/04 Z
B23Q11/08 E
B23Q11/00 D
H01L21/78 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019128684
(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公開番号】P2021013965
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大前 巻子
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05447086(US,A)
【文献】特開2015-160273(JP,A)
【文献】特開2013-086189(JP,A)
【文献】特開2013-146797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B24B 55/04
B24B 45/00
B23Q 11/08
B23Q 11/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルを回転可能に保持するスピンドルハウジングと、該スピンドルの先端に固定されるマウントと、該マウントに固定される切削ブレードと、該スピンドルハウジングに取り付けられ該切削ブレードを覆うブレードカバーとを備える加工装置であって、
該マウントは、
前後方向に伸長する円柱状のボス部と、
該ボス部の該スピンドルハウジング側から径方向外向きに突出し、該切削ブレードを支持する支持面と、を含み、
該切削ブレードは、
該ボス部に挿入される挿入穴を中央に有し、
該切削ブレードの表面に磁石が設けられており、
該ブレードカバーは、
該切削ブレードの裏面側を該マウントに装着した状態で該切削ブレードの表面側に対向する対向部を備え、
該対向部において、該切削ブレードの表面に設けられた磁石に対向する位置に、該切削ブレードの表面に設けられた磁石と同極が該スピンドルハウジング側に向けられた磁石が設けられており、
該対向部と、切削ブレードの表面と、は、該対向部に設けられた磁石と該切削ブレードの表面に設けられた磁石とにより、同極の磁場が付与され反発する力で該マウントに切削ブレードが押しつけられ保持されることを特徴とする、加工装置。
【請求項2】
加工装置であって、
回転軸となるスピンドルと、該スピンドルに固定される固定フランジと、切削ブレードと、該切削ブレードを該固定フランジとの間に挟持する押さえフランジと、少なくとも該切削ブレードの一部を覆うブレードカバーと、を備え、
該固定フランジは、
前後方向に伸長する円柱状のボス部と、
該ボス部の該スピンドルハウジング側から径方向外向きに突出し、該切削ブレードを支持する支持面と、を含み、
該押さえフランジは、
該ボス部に装着され該支持面との間に切削ブレードを挟持し、
該押さえフランジの表面に磁石が設けられており、
該ブレードカバーは、
該押さえフランジと対向する対向部とを含み、
該対向部において、該押さえフランジの表面に設けられた磁石に対向する位置に、該押さえフランジの表面に設けられた磁石と同極が該スピンドルハウジング側に向けられた磁石が設けられており、
該対向部と、該押さえフランジと、は、該対向部に設けられた磁石と該押さえフランジの表面に設けられた磁石とにより、同極の磁場が付与され反発する力で切削ブレードを該固定フランジに押しつけることを特徴とする、加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削ブレードが装着される加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スピンドルに装着したマウントにナットを用いて切削ブレードを装着し固定する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-035388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献において切削ブレードを装着し固定するナットがあるので、対向して二つのスピンドルがある場合、スピンドル間の距離を接近できず、加工効率が悪いという問題があった。またナットを所定のトルクで締めつけるという作業が面倒であるという問題があった。ナットを使用せずバキュームによりブレードを固定する技術も開発されているが、バキュームラインを形成するなど構造が複雑であるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削ブレードが装着される加工装置であって、面倒な作業を要することなく、なおかつ、スピンドル間の距離を接近可能にする加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、スピンドルを回転可能に保持するスピンドルハウジングと、該スピンドルの先端に固定されるマウントと、該マウントに固定される切削ブレードと、該スピンドルハウジングに取り付けられ該切削ブレードを覆うブレードカバーとを備える加工装置であって、該マウントは、前後方向に伸長する円柱状のボス部と、該ボス部の該スピンドルハウジング側から径方向外向きに突出し、該切削ブレードを支持する支持面と、を含み、該切削ブレードは、該ボス部に挿入される挿入穴を中央に有し、該切削ブレードの表面に磁石が設けられており、該ブレードカバーは、該切削ブレードの裏面側を該マウントに装着した状態で該切削ブレードの表面側に対向する対向部を備え、該対向部において、該切削ブレードの表面に設けられた磁石に対向する位置に、該切削ブレードの表面に設けられた磁石と同極が該スピンドルハウジング側に向けられた磁石が設けられており、該対向部と、切削ブレードの表面と、は、該対向部に設けられた磁石と該切削ブレードの表面に設けられた磁石とにより、同極の磁場が付与され反発する力で該マウントに切削ブレードが押しつけられ保持されることを特徴とする。
【0007】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、加工装置であって、回転軸となるスピンドルと、該スピンドルに固定される固定フランジと、切削ブレードと、該切削ブレードを該固定フランジとの間に挟持する押さえフランジと、少なくとも該切削ブレードの一部を覆うブレードカバーと、を備え、該固定フランジは、前後方向に伸長する円柱状のボス部と、該ボス部の該スピンドルハウジング側から径方向外向きに突出し、該切削ブレードを支持する支持面と、を含み、該押さえフランジは、該ボス部に装着され該支持面との間に切削ブレードを挟持し、該押さえフランジの表面に磁石が設けられており、該ブレードカバーは、該押さえフランジと対向する対向部とを含み、該対向部において、該押さえフランジの表面に設けられた磁石に対向する位置に、該押さえフランジの表面に設けられた磁石と同極が該スピンドルハウジング側に向けられた磁石が設けられており、該対向部と、該押さえフランジと、は、該対向部に設けられた磁石と該押さえフランジの表面に設けられた磁石とにより、同極の磁場が付与され反発する力で切削ブレードを該固定フランジに押しつけることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、切削ブレードが装着される加工装置であって、面倒な作業を要することなく、なおかつ、スピンドル間の距離を接近可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る加工装置における切削ユニットの一部の構成例を示す分解斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係る加工装置における切削ユニットの要部を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態1に係る加工装置における切削ユニットの要部を示す正面図である。
図5図5は、実施形態2に係る加工装置における切削ユニットの一部の構成例を示す分解斜視図である。
図6図6は、実施形態3に係る加工装置における切削ユニットの一部の構成例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工装置100を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る加工装置100の構成例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る加工装置100における切削ユニット10の一部の構成例を示す分解斜視図である。図3は、実施形態1に係る加工装置100における切削ユニット10の要部を示す斜視図である。図4は、実施形態1に係る加工装置100における切削ユニット10の要部を示す正面図である。
【0012】
加工装置100は、被加工物200を切削する装置である。実施形態1において、加工装置100が切削する被加工物200は、例えば、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハなどのウェーハである。被加工物200は、平坦な表面201の格子状に形成される複数の分割予定ライン202によって区画された領域にデバイス203が形成されている。被加工物200は、表面201の裏側の裏面204に粘着テープ210が貼着され、粘着テープ210の外縁部に環状フレーム211が装着されている。また、本発明では、被加工物200は、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0013】
加工装置100は、図1に示すように、被加工物200を保持面111で吸引保持するとともに回転駆動源により軸心回りに回転可能なチャックテーブル110と、チャックテーブル110に保持された被加工物200を切削加工する切削ユニット10と、チャックテーブル110をX軸方向に移動させるX軸移動ユニット120と、切削ユニット10をY軸方向に移動させるY軸移動ユニット130と、切削ユニット10をZ軸方向に移動させるZ軸移動ユニット140とを備える。また、加工装置100は、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット150と、切削前後の被加工物200を収容するカセット160と、被加工物200をカセット160とチャックテーブル110と洗浄ユニット150との間で搬送する図示しない搬送ユニットと、各構成要素を制御するコンピュータである制御ユニット170とを備える。
【0014】
加工装置100は、搬送ユニットがカセット160内から被加工物200を1枚取り出してチャックテーブル110の保持面111に載置する。加工装置100は、チャックテーブル110の保持面111に被加工物200を吸引保持して、切削ユニット10から被加工物200に切削水を供給しながら、X軸移動ユニット120、回転駆動源、Y軸移動ユニット130及びZ軸移動ユニット140によりチャックテーブル110と切削ユニット10とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させて、切削ユニット10で被加工物200の分割予定ライン202を切削する。加工装置100は、被加工物200の全ての分割予定ライン202を切削すると、被加工物200を洗浄ユニット150で洗浄した後にカセット160内に収容する。
【0015】
加工装置100の切削ユニット10は、実施形態1では、図1に示すように、チャックテーブル110及びX軸移動ユニット120を挟んでY軸方向に対向して設けられた切削ユニット10-1と、切削ユニット10-2と、を備える。加工装置100は、図1に示すように、切削ユニット10-1,10-2を2つ備えた、すなわち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。切削ユニット10-1と切削ユニット10-2とは、共に同様の構造を備えており、以下において、双方に共通の各部に共通の符号を付して記す。
【0016】
加工装置100の切削ユニット10は、図2に示すように、筒状に形成されかつY軸移動ユニット130及びZ軸移動ユニット140によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング11と、スピンドルハウジング11内にY軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられたスピンドル12とを備える。また、切削ユニット10は、図1に示すように、スピンドル12の先端に固定されるマウント13と、マウント13に装着されて固定される切削ブレード14と、ブレードカバー15と、を備える。
【0017】
スピンドル12は、スピンドルハウジング11に回転可能に支持されている。スピンドル12の先端は、スピンドルハウジング11の一端部から外部に突出している。スピンドル12の基端部には、スピンドル12を回転させるための不図示のモータが連結されている。スピンドル12の先端は、図2に示すように、先端に向かうにしたがって徐々に外径が縮小するようにテーパ状に形成されている。スピンドル12は、先端を露出させた状態でスピンドルハウジング11内にY軸方向に沿った軸心回りに回転自在に収容されている。スピンドル12は、マウント13及び切削ブレード14の回転軸となる。
【0018】
マウント13は、図2に示すように、前後方向に伸長する円柱状のボス部13-1と、ボス部13-1の後方側である+Y方向側からボス部13-1の径方向外向きに突出して一体的に形成された円板状のフランジ部13-2と、フランジ部13-2の後方側に突出して一体的に形成された円筒部13-3と、を備える。マウント13は、ボス部13-1と、フランジ部13-2と、円筒部13-3とが、それぞれの中心軸が互いに重なり、Y軸方向を向いて配されている。
【0019】
マウント13は、ボス部13-1、フランジ部13-2及び円筒部13-3に渡って、内側に装着穴13-4が形成されている。装着穴13-4は、基端側が、先端に向かうにしたがって徐々に内径が縮小するようにテーパ状に形成されており、スピンドル12の先端の外周に隙間なく嵌め合わせされる。マウント13は、不図示のワッシャーを介して不図示のねじを装着穴13-4に挿入して、スピンドル12の先端に形成されたねじ穴12-1に螺合して締め付けることにより、スピンドル12の先端に固定される。
【0020】
装着穴13-4の軸方向の長さは、ボス部13-1、フランジ部13-2及び円筒部13-3の各部分の軸方向の長さと等しく、スピンドル12のスピンドルハウジング11の一端部から外部に突出している突出部の軸方向の長さより、不図示のワッシャー及び不図示のねじで固定するために必要な所定の長さ分だけ長い。このため、円筒部13-3の軸方向の長さは、ボス部13-1、フランジ部13-2及びスピンドル12の突出部の各部分の軸方向の長さに応じて形成される。マウント13は、実施形態1では、円筒部13-3を有する形態であるが、本発明ではこれに限定されず、例えば円筒部13-3の軸方向の長さが0であることが好ましい場合等には、省略された形態であってもよい。
【0021】
ボス部13-1は、切削ブレード14の基台14-1の裏面24-1側が装着される。ボス部13-1は、具体的には、図2に示すように、切削ブレード14の基台14-1の挿入穴14-3に裏面24-1側から挿入されて、外周側で、切削ブレード14の基台14-1を挿入穴14-3の内周側から支持する。
【0022】
ボス部13-1の軸方向の長さは、挿入穴14-3に挿入されて装着された切削ブレード14の基台14-1の先端側に突出してブレードカバー15の後方側の面である対向部15-2に接触しない長さであることが好ましく、この場合、対向して設けられた切削ユニット10-1及び切削ユニット10-2の各ブレードカバー15の対向部15-2の反対側の面である外側の面が互いに接触するまで、互いのスピンドル12間の距離を接近可能にする。
【0023】
フランジ部13-2は、前方側に向いた面の径方向外側に形成された環状の支持面23-1と、前方側に向いた面の径方向内側に、ボス部13-1の外周を囲繞して形成された環状凹部23-2と、を有する。環状の支持面23-1は、環状凹部23-2の外周を囲繞して形成されている。環状凹部23-2は、環状の支持面23-1よりも+Y方向に凹んで形成されている。なお、フランジ部13-2は、実施形態1では環状の支持面23-1と環状凹部23-2とを有する形態であるが、本発明はこれに限定されず、支持面23-1を有していればどのような形状であってもよく、例えば、前方側に向いた面の全面が支持面23-1を形成していてもよい。
【0024】
フランジ部13-2の前方側に向いた面、すなわち環状の支持面23-1及び環状凹部23-2は、切削ブレード14がボス部13-1に装着された際の装着された切削ブレード14の基台14-1の後方側に向いた面である裏面24-1と対向する。
【0025】
切削ブレード14は、マウント13を介してスピンドル12の先端に固定されて、回転軸となるスピンドル12により回転されることで被加工物200を切削する。切削ブレード14は、実施形態1では所謂ハブブレードであり、図2に示すように、アルミニウム合金などの金属から構成され、かつ、中央に挿入穴14-3を有し環状に形成された円盤状の基台14-1と、基台14-1の外周縁に設けられ、基台14-1の外周から突出する環状の切り刃14-2とを有している。
【0026】
挿入穴14-3は、切削ブレード14をマウント13に固定するための穴であり、マウント13のボス部13-1に挿入される穴である。切り刃14-2は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。切り刃14-2は、図2に示すように、基台14-1の平坦な一方の側面の外周縁に固定されて、基台14-1の外縁より外周方向に突出している。
【0027】
切削ブレード14は、基台14-1の後方側に向いた面であり、マウント13のフランジ部13-2の前方側の面に対向する裏面24-1と、基台14-1の前方側に向いた面であり、ブレードカバー15で覆われた際にブレードカバー15の対向部15-2に対向する表面24-2と、を有する。
【0028】
切削ブレード14は、表面24-2において、所定の磁極が前方側に向けられた磁石21-1が設けられている。磁石21-1は、実施形態1では、切削ブレード14の表面24-2において周方向に等間隔に4箇所に配列されているが、本発明はこれに限定されず、切削ブレード14から前方側に向けて所定の磁極の磁力をもたらす形態であればどのような形態でもよく、例えば、全周にわたって1箇所に配されても良いし、2箇所、3箇所、または5箇所以上に配列して設けられていても良い。
【0029】
ブレードカバー15は、図3及び図4に示すように、ちょうつがい15-1を介して、切削ブレード14の上方及びX軸方向の少なくとも一方側を覆うカバー位置と、カバー位置から上方に退避した退避位置との間で移動可能に、スピンドルハウジング11の前方側の端部に取り付けられて固定されている。なお、ブレードカバー15は、この形態に限定されず、カバー位置と、カバー位置から上下左右いずれかの方向に退避した退避位置との間で移動可能に取り付けられて固定されていれば、どのような形で取り付けられて固定されていても良い。ブレードカバー15は、カバー位置に位置している際に、切削ブレード14の上方及びX軸方向の少なくとも一方側を覆って、下端に装着された切削水ノズルにより、切削加工中に加工液である切削水を切削ブレード14及び被加工物200に供給するものである。
【0030】
ブレードカバー15は、図3及び図4に示すように、カバー位置に位置している際に、切削ブレード14の裏面24-1側をマウント13に装着した状態で切削ブレード14の表面24-2側に対向する対向部15-2を備える。ブレードカバー15は、対向部15-2において、切削ブレード14の表面24-2に設けられた磁石21-1に対向する位置に、磁石21-1と同じ磁極(同極)の所定の磁極が後方側に向けられた磁石25-1が設けられている。磁石25-1は、実施形態1では、磁石21-1に合わせて、ブレードカバー15の対向部15-2において周方向に等間隔に4箇所に配列されているが、本発明はこれに限定されず、ブレードカバー15の対向部15-2から後方側に向けて所定の磁極の磁力をもたらす形態であればどのような形態でもよい。
【0031】
スピンドルハウジング11は、図3及び図4に示すように、ブレードカバー15が取り付けられている前方側の端部において、ブレードカバー15がカバー位置に位置している際にブレードカバー15と対向する位置に、磁石21-2が設けられている。また、ブレードカバー15は、図3及び図4に示すように、ブレードカバー15が取り付けられている前方側の端部において、ブレードカバー15がカバー位置に位置している際にスピンドルハウジング11の前方側の端部に設けられた磁石21-2に対向する位置に、磁石21-2と異なる磁極が磁石21-2に向けられた磁石25-2が設けられている。磁石21-2及び磁石25-2は、実施形態1では、互いに対向して2箇所に配列されているが、本発明はこれに限定されず、互いに向けて異なる磁極の磁力をもたらす形態であれば、そのような形態でも良い。
【0032】
磁石21-1及び磁石25-1によって互いに向けてもたらされる同じ磁極の磁力の大きさは、磁石21-2及び磁石25-2によって互いに向けてもたらされる異なる磁極の磁力の大きさよりも小さい。このため、切削ブレード14の裏面24-1側をマウント13に装着し、ブレードカバー15がカバー位置に位置している状態において、磁石21-1及び磁石25-1によってもたらされる切削ブレード14の表面24-2とブレードカバー15の対向部15-2との間の斥力(反発する力)は、磁石21-2及び磁石25-2によってもたらされるスピンドルハウジング11の前方側の端部とブレードカバー15との間の引力よりも小さい。これにより、切削ブレード14の裏面24-1側をマウント13に装着し、ブレードカバー15がカバー位置に位置している状態において、ブレードカバー15は、磁石21-1及び磁石25-1による斥力よりも強い磁石21-2及び磁石25-2による引力によってスピンドルハウジング11の前方側の端部にしっかりと固定され、なおかつ、切削ブレード14は、磁石21-1及び磁石25-1による斥力によってブレードカバー15の対向部15-2から後方側のマウント13に押し付けられて保持される。
【0033】
実施形態1に係る加工装置100は、以上のような構成を有するので、ブレードカバー15の対向部15-2と切削ブレード14の表面24-2とが同極の磁場が付与され反発する力で、マウント13に切削ブレード14が押し付けられ保持されるため、切削ブレード14をマウント13に固定する際にナットを必要としない。このため、実施形態1に係る加工装置100は、ナットを所定のトルクで締めつけるという面倒な作業を要することない。また、実施形態1に係る加工装置100は、切削ブレード14の先端側にナットが突出することがないので、互いに対向して設けられたスピンドル12間の距離を接近可能にすることができる。
【0034】
仮に、マウントと切削ブレードとを異極の磁場が付与され吸引する力でマウントに切削ブレードが押し付けられ保持される構造の場合、切削ブレードが勢いよくマウントと衝突して切削ブレードが破損してしまう可能性があった。しかしながら、実施形態1に係る加工装置100は、前述のように反発する力を利用してマウント13に切削ブレード14が押し付けられ保持されるため、切削ブレード14が勢いよくマウント13に衝突する可能性は抑制されるので、これにより切削ブレード14が破損してしまう可能性を抑制することができる。
【0035】
また、仮に、マウントと切削ブレードとを異極の磁場が付与され吸引する力でマウントに切削ブレードが押し付けられ保持される構造の場合、切削ブレードがマウントに強固に吸引されて、マウントから切削ブレードを取り外すことが困難となる可能性があった。しかしながら、実施形態1に係る加工装置100は、前述のように反発する力を利用してマウント13に切削ブレード14が押し付けられ保持されるため、切削ブレード14がマウント13に強固に吸引されることはないので、容易にマウント13から切削ブレード14を取り外すことを可能にする。
【0036】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る加工装置100を図面に基づいて説明する。図5は、実施形態2に係る加工装置100における切削ユニット30の一部の構成例を示す分解斜視図である。図5は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
実施形態2に係る加工装置100は、実施形態1において、切削ユニット10を切削ユニット30に変更したものである。切削ユニット30は、切削ユニット10において、マウント13及び切削ブレード14をマウント33及び切削ブレード34に変更したものである。
【0038】
マウント33は、図5に示すように、ボス部33-1と、フランジ部33-2と、円筒部33-3と、を備え、内側に装着穴33-4が形成されている。ボス部33-1、フランジ部33-2、円筒部33-3及び装着穴33-4の各形状は、実施形態1に係るマウント13のボス部13-1、フランジ部13-2、円筒部13-3及び装着穴13-4に対して、装着される切削ブレード34の形状に合わせて変更されているが、その機能面では同様である。
【0039】
フランジ部33-2は、前方側に向いた面の全面に環状の支持面43を有する。フランジ部33-2の前方側に向いた面、すなわち環状の支持面43は、切削ブレード34がボス部33-1に装着された際の装着された切削ブレード34の後方側に向いた面である裏面44-1と対向する。
【0040】
切削ブレード34は、マウント33を介してスピンドル12の先端に固定されて、回転軸となるスピンドル12により回転されることで被加工物200を切削する。切削ブレード34は、実施形態2では所謂ハブレスブレードであり、図5に示すように、円盤状(円環状)であり、中央に切削ブレード34をマウント33に固定するための孔である挿入穴34-3を有している。切削ブレード34は、実施形態1に係る切削ブレード14の切り刃14-2と同様の材料で同様の所定厚みに形成されている。
【0041】
切削ブレード34は、後方側に向いた面であり、マウント33のフランジ部33-2の前方側の面に対向する裏面44-1と、前方側に向いた面であり、ブレードカバー15で覆われた際にブレードカバー15の対向部15-2に対向する表面44-2と、を有する。
【0042】
切削ブレード34は、表面44-2において、実施形態1に係る切削ブレード14の表面24-2においてと同様に、磁石21-1が設けられている。これにより、切削ブレード34の裏面44-1側をマウント33に装着し、ブレードカバー15がカバー位置に位置している状態において、ブレードカバー15は、磁石21-1及び磁石25-1による斥力よりも強い磁石21-2及び磁石25-2による引力によってスピンドルハウジング11の前方側の端部にしっかりと固定され、なおかつ、切削ブレード34は、磁石21-1及び磁石25-1による斥力によってブレードカバー15の対向部15-2から後方側のマウント33に押し付けられて保持される。
【0043】
実施形態1に係る加工装置100は、以上のような構成を有するので、実施形態1に係る加工装置100と同様に、ブレードカバー15の対向部15-2と切削ブレード34の表面44-2とが同極の磁場が付与され反発する力で、マウント33に切削ブレード34が押し付けられ保持されるため、実施形態1に係る加工装置100と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0044】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る加工装置100を図面に基づいて説明する。図6は、実施形態2に係る加工装置100における切削ユニット50の一部の構成例を示す分解斜視図である。図6は、実施形態1及び実施形態2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
実施形態3に係る加工装置100は、実施形態2において、切削ユニット30を切削ユニット50に変更したものである。切削ユニット50は、切削ユニット30において、マウント33及び切削ブレード34を固定フランジ53、切削ブレード54及び押さえフランジ55に変更したものである。
【0046】
固定フランジ53は、図6に示すように、ボス部53-1と、フランジ部53-2と、円筒部53-3と、を備え、内側に装着穴53-4が形成されている。ボス部53-1、フランジ部53-2、円筒部53-3及び装着穴53-4の各形状は、実施形態2に係るマウント33のボス部33-1、フランジ部33-2、円筒部33-3及び装着穴33-4に対して、装着される切削ブレード54及び押さえフランジ55の形状等に合わせて変更されているが、その機能面では概ね同様である。
【0047】
フランジ部53-2は、図6に示すように、前方側に向いた面の径方向外側に形成された環状の支持面63-1と、前方側に向いた面の径方向内側に、ボス部53-1の外周を囲繞して形成された環状凹部63-3と、を有する。環状の支持面63-1は、環状凹部63-3の外周を囲繞して形成されている。環状凹部63-3は、環状の支持面63-1よりも+Y方向に凹んで形成されている。
【0048】
切削ブレード54は、固定フランジ53と押さえフランジ55との間で挟持され、固定フランジ53を介してスピンドル12の先端に固定されて、回転軸となるスピンドル12により回転されることで被加工物200を切削する。切削ブレード54は、実施形態3では、実施形態2と同様のハブレスブレードであり、図6に示すように、円盤状(円環状)であり、中央に切削ブレード54を固定フランジ53のボス部53-1に装着するための孔である挿入穴54-3を有している。
【0049】
切削ブレード54は、後方側に向いた面であり、固定フランジ53のフランジ部53-2の前方側の面のうちの環状の支持面63-1に対向する裏面64-1と、前方側に向いた面であり、押さえフランジ55の後方側の面のうちの環状の支持面65-1に対向する表面64-2と、を有する。
【0050】
押さえフランジ55は、固定フランジ53とともに切削ブレード54を挟持して固定する。押さえフランジ55は、図6に示すように、円盤状(円環状)であり、中央に押さえフランジ55を固定フランジ53のボス部53-1に装着するための孔である挿入穴55-1を有している。
【0051】
押さえフランジ55は、後方側に向いた面の径方向外側に形成された環状の支持面65-1と、後方側に向いた面の径方向内側に、挿入穴55-1の外周を囲繞して形成された環状凸部65-3と、を有する。環状の支持面65-1は、環状凸部65-3の外周を囲繞して形成されている。環状凸部65-3は、環状の支持面65-1よりも+Y方向に突出して形成されている。
【0052】
ボス部53-1は、図6に示すように、切削ブレード54の裏面64-1側が装着され、さらに、押さえフランジ55が装着される。ボス部53-1は、外周側で、押さえフランジ55を挿入穴55-1の内周側から支持する。
【0053】
フランジ部53-2の前方側に向いた面のうち、環状の支持面63-1は、切削ブレード54がボス部53-1に装着された際の装着された切削ブレード54の後方側に向いた面である裏面64-1と対向する。フランジ部53-2における環状の支持面63-1は、切削ブレード54がボス部53-1に装着された際の装着された切削ブレード54を、押さえフランジ55の後方側に向いた面のうちの環状の支持面65-1とともに挟持する。
【0054】
フランジ部53-2の前方側に向いた面のうち、環状凹部63-3は、押さえフランジ55がボス部53-1に装着された際の装着された押さえフランジ55の後方側に向いた面のうちの環状凸部65-3と対向し、支持面63-1と環状凹部63-3との間の段差と、支持面65-1と環状凸部65-3との間の段差とが互いに嵌め合わせられる。
【0055】
押さえフランジ55は、前方側に向いた面であり、ブレードカバー15で覆われた際にブレードカバー15の対向部15-2に対向する表面65-2をさらに有する。押さえフランジ55は、表面65-2において、実施形態2に係る切削ブレード34の表面44-2においてと同様に、磁石21-1が設けられている。これにより、切削ブレード54の裏面64-1側を固定フランジ53に装着して、さらに押さえフランジ55を固定フランジ53に装着して、ブレードカバー15がカバー位置に位置している状態において、ブレードカバー15は、磁石21-1及び磁石25-1による斥力よりも強い磁石21-2及び磁石25-2による引力によってスピンドルハウジング11の前方側の端部にしっかりと固定され、なおかつ、切削ブレード54は、磁石21-1及び磁石25-1による斥力によって押さえフランジ55を介してブレードカバー15の対向部15-2から後方側の固定フランジ53に押し付けられて保持される。
【0056】
実施形態3に係る加工装置100は、以上のような構成を有するので、実施形態2に係る加工装置100と同様に、ブレードカバー15の対向部15-2と押さえフランジ55の表面65-2とが同極の磁場が付与され反発する力で、押さえフランジ55を介して固定フランジ53に切削ブレード54が押し付けられ保持されるため、実施形態2に係る加工装置100と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
10,10-1,10-2,30,50 切削ユニット
11 スピンドルハウジング
12 スピンドル
13,33 マウント
13-1,33-1,53-1 ボス部
13-2,33-2,53-2 フランジ部
13-3,33-3,53-3 円筒部
13-4,33-4,53-4 装着穴
14,34,54 切削ブレード
14-1 基台
14-2 切り刃
14-3,34-3,54-3,55-1 挿入穴
15 ブレードカバー
15-1 ちょうつがい
15-2 対向部
21-1,21-2,25-1,25-2 磁石
23-1,43,63-1,65-1 支持面
23-2 環状凹部
24-1,44-1,64-1 裏面
24-2,44-2,64-2,65-2 表面
53 固定フランジ
55 押さえフランジ
63-3 環状凹部
65-3 環状凸部
100 加工装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6