(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240315BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20240315BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240315BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240315BHJP
B23K 26/02 20140101ALI20240315BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240315BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20240315BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20240315BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H01L21/78 C
H01L21/68 F
B24B27/06 M
B24B49/12
B23K26/02 A
B23K26/00 Q
B23K26/364
G05B19/18 W
G05B19/4155 V
(21)【出願番号】P 2020119467
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻脇 優一
(72)【発明者】
【氏名】根岸 克治
(72)【発明者】
【氏名】梅本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】藤村 忠義
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-166991(JP,A)
【文献】特開2018-005773(JP,A)
【文献】特開2017-152538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0213774(US,A1)
【文献】特開2020-030565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/68
B24B 27/06
B24B 49/12
B23K 26/02
B23K 26/00
B23K 26/364
G05B 19/18
G05B 19/4155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス領域が複数の分割予定ラインによって区画された表面に形成された被加工物を加工する加工装置であって、
該加工装置は、
被加工物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルをX方向に加工送りする加工送りユニットと、
該保持テーブルに保持された被加工物に加工溝を形成する加工ユニットと、
該加工ユニットをX方向と交差するY方向に割り出し送りする割り出し送りユニットと、
該保持テーブルに保持された被加工物を撮像する撮像ユニットと、
制御ユニットと、
を備え、
該制御ユニットは、
被加工物の表面を撮像した画像の中心に該分割予定ラインが位置するOK画像と、該画像の中心に該分割予定ラインが位置しないNG画像とを有する教師データを学習した学習済みプログラムで、入力された画像を処理し、入力された画像がOK画像であるかNG画像であるかを判定する機械学習部と、
該分割予定ラインと想定された前記被加工物の箇所を、該撮像ユニットの中心に位置付けて撮像された画像を該機械学習部に入力する入力部と、
被加工物の表面に形成されたキーパターンを登録するティーチ部と、
を備え、
該ティーチ部は、
該入力部によって該機械学習部に入力された画像を該機械学習部がOK画像と判定した場合、該キーパターン及び該キーパターンから該分割予定ラインの距離を登録し、
該機械学習部がNG画像と判定した場合、警告を行うことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該制御ユニットは、
該分割予定ラインを該撮像ユニットの中心に位置付けた画像をOK画像と、該分割予定ラインが該撮像ユニットの中心から外れて位置づけられたNG画像とにラベリングし画像データとして画像記録部に記憶するラベリング部をさらに備え、
該機械学習部は、該画像記録部の該ラベリング部でラベリングされた該画像データを教師データの一部として学習した学習済みプログラムを用いて、入力された画像がOK画像であるかNG画像であるかを判定する
請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該加工ユニットは、
回転可能なスピンドルの先端に保持された切削ブレードを有することを特徴とする
請求項1または2に記載の加工装置。
【請求項4】
該加工ユニットは、
レーザー光線を発振する発振器と、
該発振器が発振したレーザー光線を集光し該保持テーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、
該発振器と該集光器との間に配設されレーザー光線を該発振器まで導く光学系と、
を備えることを特徴とする
請求項1または2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハ等の被加工物をチップサイズに分割するために、被加工物の分割予定ラインに沿って加工を行う加工装置がある。例えば、特許文献1には、被加工物を撮像して加工すべき領域を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分割予定ラインに沿って加工を行う場合、加工に先立ち、事前に分割予定ラインの位置を検出するアライメントと呼ばれる作業が行われる。このアライメントを加工装置が自動で行うために、オペレータは、まず被加工物の表面を撮像し、分割予定ラインを検出するキーとなるキーパターンを設定し、キーパターンから分割予定ラインまでの距離を加工装置に登録するティーチという作業を行う。しかし、オペレータが分割予定ラインと似ているデバイスのパターンを分割予定ラインとして認識してティーチ作業を行った場合や、誤操作により分割予定ラインでない箇所を分割予定ラインとしてティーチ作業を行った場合、加工装置は、被加工物の間違った位置を加工し続ける可能性があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、分割予定ラインを登録する精度を向上させ、間違った位置を加工することを防止できる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、デバイス領域が複数の分割予定ラインによって区画された表面に形成された被加工物を加工する加工装置であって、該加工装置は、被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルをX方向に加工送りする加工送りユニットと、該保持テーブルに保持された被加工物に加工溝を形成する加工ユニットと、該加工ユニットをX方向と交差するY方向に割り出し送りする割り出し送りユニットと、該保持テーブルに保持された被加工物を撮像する撮像ユニットと、制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、被加工物の表面を撮像した画像の中心に該分割予定ラインが位置するOK画像と、該画像の中心に該分割予定ラインが位置しないNG画像とを有する教師データを学習した学習済みプログラムで、入力された画像を処理し、入力された画像がOK画像であるかNG画像であるかを判定する機械学習部と、該分割予定ラインに該当すると認識された前記被加工物の箇所を、該撮像ユニットの中心に位置付けて撮像された画像を該機械学習部に入力する入力部と、被加工物の表面に形成されたキーパターンを登録するティーチ部と、を備え、該ティーチ部は、該入力部によって該機械学習部に入力された画像を該機械学習部がOK画像と判定した場合、該キーパターン及び該キーパターンから該分割予定ラインの距離を登録し、該機械学習部がNG画像と判定した場合、警告を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明の加工装置は、分割予定ラインを登録する精度を向上させ、間違った位置を加工することを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る加工装置で加工されるウエーハの構成例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る加工装置の機能構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る加工装置が用いる学習済みプログラムの一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る画像データの登録に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る機械学習部の判定に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係るティーチ部に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係るキーパターンとストリートとの登録例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る加工装置のオートアライメント時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態の変形例に係る加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0010】
以下に説明する実施形態において、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。X軸及びY軸を含むXY平面は、水平面と平行である。XY平面と直交するZ軸方向は、鉛直方向である。
【0011】
[実施形態]
図面を参照しつつ、実施形態に係る加工装置について説明する。
図1は、実施形態に係る加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2は、実施形態に係る加工装置で加工されるウエーハの構成例を示す平面図である。
図3は、実施形態に係る加工装置の機能構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、実施形態に係る加工装置10(加工装置の一例)は、ウエーハ100をストリート(分割予定ライン)103に沿って切削する切削装置である。加工装置10は、基本的な構成として、ウエーハ100を保持するチャックテーブル11、撮像ユニット12、加工ユニット13、駆動手段14、Z軸移動手段15、タッチパネル17、LEDライト18、及び制御ユニット40を備える。
【0013】
ウエーハ(被加工物の一例)100は、
図2に示すように、環状のフレーム108に装着された粘着テープ107の表面に貼着されている。また、ウエーハ100は、表面101に格子状に形成された複数のストリート103によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC,LSI等の半導体チップ構成のデバイス104が形成されている。このように構成されたウエーハ100は、環状のフレーム108に装着された粘着テープ107に表面101を上側にして裏面102が貼着される。
【0014】
図1に戻り、チャックテーブル11(保持テーブルの一例)は、ウエーハ100を吸着保持する保持面11aを有し、モータ19に連結されて回転可能に設けられている。また、チャックテーブル11は、ボールねじ20、ナット、パルスモータ21等による周知構成のX軸移動手段22によって保持面11aに対して水平方向となるX軸方向に移動可能に設けられる。これにより、加工装置10は、チャックテーブル11に保持されたウエーハ100を、撮像ユニット12や加工ユニット13に対して相対的にX軸方向に移動させることができる。
【0015】
撮像ユニット12は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサを搭載した電子顕微鏡である。撮像ユニット12は、チャックテーブル11の保持面11a上に保持されたウエーハ100の表面101を撮像する。撮像ユニット12は、低倍率(Lo)のマクロ撮像または高倍率(Hi)のミクロ撮像に切り替え、ウエーハ100の表面101を撮像可能となっている。撮像ユニット12によって取得した画像情報(キーパターン)を基に切削すべき領域部分(ストリート)が検出され、加工ユニット13による加工動作の位置付けに用いられる。撮像ユニット12は、例えば、チャックテーブル11の保持面11aに保持されたウエーハ100の表面に照明光を照射する光源を備えてもよい。この光源は、ウエーハ100を真上から照明する落射光源と、斜め方向から照明する斜光光源とで構成することができる。
【0016】
加工ユニット13は、チャックテーブル11の保持面11aに保持されたウエーハ100を回転するリング形状の極薄の切削ブレード24によってストリート103に沿って切削して切削溝(カーフ)を形成するものである。撮像ユニット12は、加工ユニット13用のハウジング25の一部に取り付け支持されることで一体化されており、ボールねじ、ナット、パルスモータ26等によるZ軸移動手段15によってZ軸方向に移動可能に設けられている。また、チャックテーブル11の保持面11aに対して撮像ユニット12や加工ユニット13を相対的にY軸方向に移動させるY軸移動手段27は、ボールねじ28、ナット、パルスモータ29等からなり、X軸移動手段22とともに駆動手段14を構成する。
【0017】
加工ユニット13は、ハウジング25の中に、図示しないスピンドルが収容されて、エアベアリングにより回転可能に支持されている。スピンドルは、ハウジング25に収容された図示しないモータにより回転駆動される。切削ブレード24は、スピンドルの先端部に着脱可能に装着され、スピンドルの回転駆動により回転する。
【0018】
タッチパネル17は、制御ユニット40による制御の下、撮像ユニット12が撮像したウエーハ100の表面101の画像や加工処理に必要な各種情報を表示するとともに、加工処理に必要な入力操作等をオペレータから受け付ける。タッチパネル17は、加工装置10の筐体において見やすくて操作しやすい箇所に配設される。タッチパネル17は、表示装置及び入力装置を備えて構成される。タッチパネル17は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示デバイスと、表示デバイスの表示面における入力位置や座標を指定するタッチスクリーンとを備えたタッチスクリーンディスプレイにより構成されてもよい。
【0019】
LEDライト18は、加工装置10の稼働状況を複数の表示色で通知する。LEDライト18は、制御ユニット40による制御の下、点灯したり、点滅したりすることが可能な構成となっている。
【0020】
上記した構成の加工装置10は、高速回転させた切削ブレード24をウエーハ100に所定の切り込み深さで切り込ませながら、加工ユニット13に対してチャックテーブル11をX軸移動手段22でX軸方向に相対的に加工送りさせる。これにより、ウエーハ100上のストリート103を切削加工して切削溝(カーフ)を形成することができる。続いて、加工装置10は、チャックテーブル11の回転によりウエーハ100を90°回転させた後、新たにX軸方向に配されたすべてのストリート103について加工ユニット13で同様の切削加工を繰り返す。これにより、ウエーハ100を個々のデバイス104に分割できる。
【0021】
図3に示すストレージ30は、制御ユニット40により実行される各種処理等の機能を実現する制御プログラム201や、かかる制御プログラムによる処理に用いられるデータなどを記憶する。本実施形態では、ストレージ30は、機械学習を実行した学習済みプログラム202をさらに記憶する。ストレージ30は、HDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリ等により実装できる。ストレージ30は、制御ユニット40が備えるプロセッサが制御プログラム201に記述された命令を実行する際の一時的な作業領域としても利用されてもよい。
【0022】
ストレージ30は、画像記憶部31を備える。画像記憶部31は、ウエーハ100の表面101を撮像した画像をOK画像とNG画像とにラベリングされた画像データ300を記憶する。画像データ300は、学習済みプログラム202の教師データとして用いられる。学習済みプログラム202は、ウエーハ100の表面101を撮像した画像の中心にストリート103が位置するOK画像と、該画像の中心にストリート103が位置しないNG画像との複数の画像データ300を教師データとして学習したプログラムである。学習済みプログラム202は、ウエーハ100の種類ごと、および、デバイス104の種類ごとの少なくとも一方で機械学習したプログラムを含む。画像データ300は、ウエーハ100の表面101を撮像した画像と、該画像をOK画像とNG画像とにラベリングした情報と有するデータである。画像データ300は、例えば、画像とラベルとを示す情報を有する。画像データ300は、例えば、加工装置10で撮像した画像と、加工装置10の外部から取得した画像と、を有する。
【0023】
本実施形態では、加工装置10は、学習済みプログラム202をストレージ30に記憶する場合について説明するが、これに限定されない。加工装置10は、例えば、加工装置10のアクセス可能な外部のサーバ、記憶装置、他の加工装置10等に記憶された学習済みプログラム202を用いるように構成されてもよい。加工装置10は、例えば、学習済みプログラム202をサーバ等で実行させてもよい。
【0024】
図4は、実施形態に係る加工装置10が用いる学習済みプログラム202の一例を説明するための図である。
図4に示す一例では、画像データ300において、ウエーハ100のデバイス104の詳細な記載を省略している。
【0025】
図4に示すように、学習済みプログラム202は、複数のウエーハ100の種類ごとに、OK画像を有する画像データ300とNG画像を有する画像データ300を教師データとして学習したプログラム(機械学習データ)となっている。学習済みプログラム202は、ウエーハ100の種類を識別可能な識別データと、該識別データに対応して学習したプログラムと、を有する。すなわち、学習済みプログラム202は、識別データに紐付けられたOK画像およびNG画像の画像データ300が機械学習を行った教師データとなっている。加工するウエーハ100と同じ種類のウエーハ100の教師データのみを利用して機械学習を行い、作成された学習済みプログラム202を加工時に利用しても良い。加工装置10は、同一のウエーハ100による学習済みプログラム202で判定することで、精度高く判別することができる。
【0026】
また、加工装置10は、デバイス104の種類にかかわらず、複数種類のウエーハ100の教師データを利用して機械学習を行い、作成された学習済みプログラム202を加工時に利用してもよい。後者の場合は識別データとの紐付けは必須ではない。この場合、加工装置10は、一つの学習済みプログラム202を作成すれば様々な種類のウエーハ100において使用できるので、汎用性が高くウエーハ100の種類毎に学習済みプログラム202を作成する必要がないので効率的である。
【0027】
図4に示す一例では、識別データが「0001」~「0004」において、学習済みプログラム202は、ウエーハ100の表面101を撮像した複数の画像データ300を機械学習している。詳細には、学習済みプログラム202は、OK画像の特徴を示す複数の画像データ300と、NG画像の特徴を示す複数の画像データ300とをデータセットとして用いたモデルを機械学習することで、入力された画像がOK画像であるかNG画像であるかを判定することを実現している。
【0028】
本実施形態では、学習済みプログラム202は、データセットとしての複数の画像データ300を用いたモデルを機械学習することで、機械学習したモデルに基づいて、入力された判定対象の画像がOK画像であるかNG画像であるかを判定することが可能なプログラムとなっている。
【0029】
図3に戻り、制御ユニット40は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、入出力インタフェース装置とを備える。制御ユニット40は、かかる装置を用いて、加工装置10が実施する一連の加工工程に従い、上述した各構成要素を制御するための制御プログラムなどを実行可能なコンピュータである。
【0030】
制御ユニット40は、タッチパネル17を介してオペレータにより設定された加工条件に従って、加工装置10の動作全般を制御する。制御ユニット40は、
図3に示すように、機械学習部41と、入力部42と、制御部43と、ラベリング部44と、ティーチ部45と、アライメント部46と、を備える。制御ユニット40は、制御プログラム201を実行することにより、各部の機能、作用等を実現する。
【0031】
機械学習部41は、学習済みプログラム202で、入力された画像を処理し、入力された画像がOK画像であるかNG画像であるかを判定する機能を提供する。機械学習部41は、OK画像とNG画像とを有する教師データを学習した学習済みプログラム202を実行することで、入力された画像を学習済みプログラム202で判定し、該判定した結果を示す情報を制御部43に提供する。本実施形態では、機械学習部41は、例えば、ティーチ作業時等の画像のOK画像とNG画像とを有する教師データを学習した学習済みプログラム202を実行する。
【0032】
機械学習部41は、画像記憶部31の画像データ300を用いて、機械学習を実行した学習済みプログラム202を生成、更新する機能を提供する。
【0033】
入力部42は、チャックテーブル11に載置された加工すべきウエーハ100の分割予定ラインと想定された箇所を撮像ユニット12の中心に位置付けて撮像された画像を機械学習部41に入力する。分割予定ラインと想定された箇所は、例えば、オペレータによって分割予定ラインと想定(認識)されたウエーハ100の箇所、画像認識等によって分割予定ラインと想定されたウエーハ100の箇所等を含む。
【0034】
制御部43は、機械学習部41がOK画像と判定した場合に、加工すべきウエーハ100の分割予定ラインを検出するオートアライメント時に使用する、キーパターンから分割予定ラインの距離として、キーパターンからストリート103の距離を登録する。また、制御部43は、機械学習部41がNG画像と判定した場合に、警告処理を実行する機能を提供する。警告処理は、例えば、ストリート103の位置が分割予定ラインとして正しくないことをタッチパネルに表示する、音声やエラー音で通知する、装置の上部に設置されたLEDライトをエラーに該当する色に点灯させるまたは点滅させうるなどの手段を通して行う通知処理と、ティーチ作業を停止する処理とを含む。警告処理が発生した場合、オペレータは、再度ティーチ作業を行う。
【0035】
ラベリング部44は、ウエーハ100の表面101を撮像した画像をOK画像とNG画像とにラベリングし、画像データ300として画像記憶部31に記憶する。ラベリング部44は、分割予定ラインを該撮像ユニット12の中心に位置付けたOK画像と分割予定ラインを該撮像ユニット12の中心に位置づけられていないNG画像とにラベリングし画像データ300として画像記憶部31に記憶する。ラベリング部44は、例えば、加工装置10で撮像した画像、他の加工装置10で撮像した画像等を取得し、該画像にOK画像またはNG画像を示すラベルを紐づける。ラベリング部44は、例えば、画像とOK画像であるかNG画像であるかを選択させることが可能な画面をタッチパネル17に表示させ、画面に対する操作結果に基づいて、画像をラベリングする構成としてもよい。ラベリング部44は、例えば、画面を3分割した内の中心の領域に直線状のラインがある場合、分割予定ラインが中心に位置づけられているとしOK画像とするなど、画像における分割予定ラインの判定条件等に基づいてラベルを自動で紐付ける構成としてもよい。
【0036】
ティーチ部45は、ウエーハ100の表面101に形成されたキーパターンと、該キーパターンからストリート103の距離をキーパターンと分割予定ラインとの距離として登録する機能を提供する。ティーチ部45は、ウエーハ100の表面101に形成されるデバイス104の一部であるキーパターンからストリート103までの距離を登録させる画面をタッチパネル17に表示させ、タッチパネル17を介して登録されたキーパターンとストリート103までの距離とを、ウエーハ100の種類等に対応させる。
【0037】
本実施形態では、ティーチ部45は、機械学習部41がOK画像と判定した場合、該キーパターン及び該キーパターンからストリート103の距離を登録し、機械学習部41がNG画像と判定した場合、警告を行う機能を提供する。すなわち、ティーチ部45は、ティーチ作業でオペレータが登録したときの画像に対する機械学習部41の判定結果に応じた処理を実行する。ティーチ部45は、該キーパターン及び該キーパターンからストリート103の距離に加え、ストリート103に関する情報を登録するように構成されてもよい。ティーチ部45は、例えば、ストリート103の位置に関する情報を登録してもよい。ストリート103の位置に関する情報は、例えば、ストリート103の座標位置、幅等の画像におけるストリート103を特定可能な情報を含む。
【0038】
アライメント部46は、チャックテーブル11に載置された加工すべきウエーハ100を撮像し、パターンマッチングにより該キーパターンを検出することで、ウエーハ100のストリート103を検出する。
【0039】
以上、本実施形態に係る加工装置10の構成例について説明した。なお、
図1乃至
図4を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る加工装置10の構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る加工装置10の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0040】
(画像データの登録例)
次に、実施形態に係る加工装置10が実行する画像データ300の登録の一例を説明する。
図5は、実施形態に係る画像データ300の登録に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5に示す処理手順は、制御ユニット40が制御プログラム201を実行することで実現される。
図5に示す処理手順は、例えば、画像を教師データとして登録するタイミング、学習済みプログラム202に登録する画像が発生したタイミング等に実行される。
【0041】
図5に示すように、制御ユニット40は、ウエーハ100の表面101を撮像した画像を取得する(ステップ1001)。制御ユニット40は、例えば、ウエーハ100の表面101のデバイス104を撮像した画像の情報を取得する。例えば、精度を求める場合、制御ユニット40は、デバイス104の種類ごとの画像を取得する。例えば、汎用性を求める場合、制御ユニット40は、1つのデバイス104の種類だけではなく、不特定多数のデバイス104の画像を取得する。例えば、制御ユニット40は、撮像ユニット12だけではなく、加工装置10の外部のサーバ、記憶装置等から画像を取得する構成としてもよい。制御ユニット40は、ステップ1001の処理が終了すると、処理をステップ1002に進める。
【0042】
制御ユニット40は、取得した画像をOK画像とNG画像にラベリングした画像データ300を画像記憶部31に記憶する(ステップ1002)。制御ユニット40は、例えば、画像のストリート103の配置と配置条件に基づいて、OK画像とNG画像にラベリングするように構成できる。制御ユニット40は、例えば、OK画像とNG画像とをユーザに判定させる画面をタッチパネル17に表示させ、判定結果に基づいてラベリングするように構成できる。制御ユニット40は、ステップ1002の処理が終了すると、処理をステップ1003に進める。
【0043】
制御ユニット40は、ラベリングされた画像データ300を用いて機械学習を実施し、OK画像とNG画像とを判別可能な学習済みプログラム202を生成する(ステップ1003)。制御ユニット40は、例えば、ウエーハ100やデバイス104ごとに、教師データである画像データ300のOK画像とNG画像の特徴、パターン等に基づいて、未知の画像を判定するルール(モデル)を学習した学習済みプログラム202を生成する。すなわち、学習済みプログラム202を生成するとは、例えば、未知の画像を判定するルールを学習したことを意味する。制御ユニット40は、ステップ1003の処理が終了すると、処理をステップ1004に進める。
【0044】
制御ユニット40は、生成した学習済みプログラム202をストレージ30に記憶する(ステップ1004)。制御ユニット40は、例えば、ストレージ30に学習済みプログラム202が既に記憶されている場合、生成した学習済みプログラム202を上書きする、あるいは、新規に追加するように記憶する。制御ユニット40は、ステップ1004の処理を終了すると、
図5に示す処理手順を終了させる。
【0045】
図5に示す処理手順を実行することで、制御ユニット40は、機械学習部41及びラベリング部44として機能する。
【0046】
(機械学習部の判定)
次に、実施形態に係る加工装置10が実行する機械学習部41の判定の一例を説明する。
図6は、実施形態に係る機械学習部41の判定に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6に示す処理手順は、制御ユニット40が制御プログラム201を実行することで実現される。
図6に示す処理手順は、例えば、入力部42から画像が入力された場合等に実行される。
【0047】
図6に示すように、制御ユニット40は、学習済みプログラム202で入力された画像を処理し、入力された画像がOK画像であるかNG画像であるかを判定する(ステップ1101)。制御ユニット40は、例えば、学習済みプログラム202を実行することで、入力された画像がOK画像であるかNG画像であるかの判定を学習済みプログラム202に実行させる。制御ユニット40は、学習済みプログラム202から判定結果を取得すると、処理をステップ1102に進める。
【0048】
制御ユニット40は、入力された画像の判定結果を制御部43に出力する(ステップ1102)。制御ユニット40は、学習済みプログラム202を実行することで得られた入力画像の判定結果を制御部43に出力すると、
図6に示す処理手順を終了させる。
【0049】
本実施形態では、制御ユニット40は、
図6に示す処理手順を実行することで、機械学習部41として機能する。
【0050】
(ティーチ部の処理)
次に、実施形態に係る加工装置10が実行するティーチ部45の処理の一例を説明する。
図7は、実施形態に係るティーチ部45に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7に示す処理手順は、制御ユニット40が制御プログラム201を実行することで実現される。
図7に示す処理手順は、例えば、加工装置10でティーチ作業を行う場合等に実行される。
【0051】
図7に示すように、制御ユニット40は、ウエーハ100の表面101を撮像した画像を取得する(ステップ2001)。制御ユニット40は、ウエーハ100の表面101に形成されたデバイス領域において、特徴的なパターンをキーパターンとして選択する(ステップ2002)。加工前にウエーハ100を撮像して分割予定ラインの位置を検出するオートアライメントでは、ティーチ部45で登録されたキーパターンを手掛かりにストリート103の位置の割り出しを自動的に実施する。
【0052】
図8は、実施形態に係るキーパターンとストリートとの登録例を説明するための図である。
図8に示すように、制御ユニット40は、画像からターゲットとなるキーパターン120をオペレータに選択させる。次に、制御ユニット40は、ストリート103を撮像ユニットのY方向の中心に位置するように駆動手段を制御する。その後、ストリート103を分割予定ラインの位置として登録する登録ボタンが操作されると、制御ユニット40は、選択されたキーパターン120からストリート103までの距離130を認識し、キーパターン120と距離130とを紐づけて登録する。例えば、制御ユニット40は、キーパターン120を撮像ユニット12の画像のY軸方向の中央に合わせた後、ストリート103を画像のY軸方向の中央に移動させることで、距離を検出する。
【0053】
図8に示す一例では、画像301及び画像302は、ウエーハ100の表面101の一部を高倍率で拡大して撮像した画像であり、ストリート103の近くに、十字のキーパターン120と、キーパターン120に沿って並ぶ複数のパターン121とが位置している。オペレータは、画像301において、特徴的なキーパターン120をターゲットとして選択し、ストリート103を選択して登録するティーチ作業を行う。この場合、制御ユニット40は、選択されたキーパターン120からストリート103までの距離130を検出し、キーパターン120と距離130とを紐づけて登録する。
【0054】
しかし、画像302に示すように、ストリート103とデバイスのパターン121が類似している場合、オペレータは、ティーチ作業において、ストリート103に類似したパターン121を分割予定ラインとして誤って認識し、分割予定ラインとして設定する場合がある。また、操作のミスにより同じくストリート103ではないデバイス領域を撮像ユニットの中心に位置づけ登録ボタンを教えてしまう恐れもある。例えば、オペレータは、画像302において、特徴的なキーパターン120をターゲットとして選択し、パターン121をストリート103と誤って選択して登録する。この場合、制御ユニット40は、選択されたキーパターン120からパターン121までの距離131を検出し、キーパターン120と誤った距離131とを紐づけて登録する。その結果、従来の加工装置は、オペレータが誤って登録したウエーハ100の位置を加工し続ける可能性があった。
【0055】
本発明は、加工対象となるウエーハ100の種類の画像を元に形成された学習済みプログラム202、または様々な種類のウエーハ100の画像を元に作成された学習済みプログラム202が記憶されている。そのため、ストリート103と類似したデバイス領域をオペレータが分割予定ラインとして認識し中心に位置づけて撮像した画像を機械学習部に入力した場合、パターンの色味や模様が通常の分割予定ラインとは異なり、学習済みプログラム202に蓄積された分割予定ラインが中心にあるOK画像と類似しないため、NG画像と判定される可能性が高い。よって、加工装置10は、ティーチ作業において、オペレータがウエーハ100の誤った位置をストリート103として登録することを防止する。
【0056】
図7に戻り、制御ユニット40は、分割予定ラインが撮像ユニット12の中心に位置するように駆動手段14を制御する(ステップ2003)。制御ユニット40は、ウエーハ100の分割予定ラインが撮像ユニット12の中心に位置すると、処理をステップ2004に進める。なお、分割予定ラインと想定される箇所を撮像ユニット12の中心に位置づける際の中心とは、分割予定ラインが伸長する加工送り方向であるX方向と交差する割り出し送り方向であるY方向の中心である。
【0057】
制御ユニット40は、登録操作を検出したか否かを判定する(ステップ2004)。制御ユニット40は、例えば、ストリート103を登録する画面をタッチパネル17に表示させ、タッチパネル17を介して該画面に対する登録操作を検出した場合に、登録操作を検出したと判定する。制御ユニット40は、登録操作を検出していないと判定した場合(ステップ2004でNo)、登録しないと判定し、
図7に示す処理手順を終了させる。また、制御ユニット40は、登録操作を検出したと判定した場合(ステップ2004でYes)、処理をステップ2005に進める。
【0058】
制御ユニット40は、撮像ユニット12によって撮像されている画像を機械学習部41に入力する(ステップ2005)。制御ユニット40は、例えば、撮像されている画像を機械学習部41に入力することで、機械学習部41で学習済みプログラム202が実行され、画像がOK画像であるかNG画像であるかが判定される。制御ユニット40は、機械学習部41が出力した判定結果を取得すると、処理をステップ2006に進める。
【0059】
制御ユニット40は、判定結果がOK画像であるか否かを判定する(ステップ2006)。制御ユニット40は、例えば、機械学習部41が出力した判定結果がOK画像を示している場合に、判定結果がOKであると判定する。制御ユニット40は、判定結果がOK画像であると判定した場合(ステップ2006でYes)、処理をステップ2007に進める。
【0060】
制御ユニット40は、ウエーハ100のキーパターン120と、キーパターン120からストリート103までの距離130を登録する(ステップ2007)。制御ユニット40は、例えば、撮像ユニット412の中心に位置付けた位置をストリート103として登録し、該ストリート103と距離130とを紐付けて登録する。すなわち、制御ユニット40は、ストリート103でない箇所をストリート103して登録しようとした場合、学習済みプログラム202によってNG画像と判定されるため、上記の誤った距離131を登録することなく、ストリート103と距離130とを紐付けて登録することができる。制御ユニット40は、ステップ2007が終了すると、
図7に示す処理手順を終了させる。
【0061】
また、制御ユニット40は、判定結果がOK画像ではないと判定した場合(ステップ2006でNo)、処理をステップ2008に進める。制御ユニット40は、上記の警告処理を実行する(ステップ2008)。制御ユニット40は、例えば、警告処理を実行することで、ストリート103の位置が正しくないことを警告し、ティーチ作業における登録を停止させたり、ストリート103を再登録させたりする。警告する手段は、例えばタッチパネル17に警告を示すメッセージを表示する、装置の上部に設置されたLEDライト18をエラーに該当する色に点灯または点滅させる、警告を示す音声またはエラー音を発するなどがあげられる。制御ユニット40は、ステップ2008に処理が終了すると、
図7に示す処理手順を終了させる。
【0062】
本実施形態では、制御ユニット40は、
図7に示す処理手順を実行することで、ティーチ部45として機能する。
【0063】
以上説明したように、加工装置10は、ティーチ作業において、学習済みプログラム202を用いて、ウエーハ100のストリート103を撮像した画像がOK画像であるかNG画像であるかを判定し、NG画像であると判定された場合、警告処理を実行する。加工装置10は、学習済みプログラム202によってOK画像であると判定された場合に、オペレータが登録したウエーハ100のストリート103等の登録内容を受け付ける。これにより、加工装置10は、実際に撮像したOK画像とNG画像とを有する教師データを学習した学習済みプログラム202を用いることで、オペレータが登録したストリート103、距離130等の正当性を、撮像された画像に基づいて確認することができる。その結果、加工装置10は、分割予定ラインを登録する精度を向上させ、ウエーハ100における間違った位置を加工し続けることを防止できる。
【0064】
また、加工装置10は、ウエーハ100の表面101を撮像したティーチ作業時の画像をOK画像とNG画像とにラベリングした画像データ300を新たに教師データとして学習済みプログラム202に学習させることができる。これにより、加工装置10は、学習済みプログラム202を使用するほど学習済みプログラム202の判定精度を向上させることができる。その結果、加工装置10は、分割予定ラインでないウエーハ100の誤った位置を加工することをより一層精度高く防止できる。
【0065】
(オートアライメント時の処理概要)
次に、実施形態に係る加工装置10が実行するオートアライメント時の誤加工を防止する処理の一例を説明する。
図9は、実施形態に係る加工装置10のオートアライメント時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9に示す処理手順は、制御ユニット40が制御プログラム201を実行することで実現される。
図9に示す処理手順は、ウエーハ100を載置したチャックテーブル11が撮像ユニット12の撮像位置に配置された状態等で実行される。
【0066】
図9に示すように、制御ユニット40は、加工すべきウエーハ100を撮像ユニット12で撮像する(ステップ3001)。制御ユニット40は、例えば、撮像ユニット12にウエーハ100の表面101を撮像させ、撮像された画像を取得する。制御ユニット40は、ステップ3001の処理が終了すると、処理をステップ3002に進める。
【0067】
制御ユニット40は、パターンマッチングにより、画像からキーパターン120を検出する(ステップ3002)。制御ユニット40は、例えば、取得した画像を解析することで、事前に登録されたキーパターンと一致または類似するキーパターン120を検出する。制御ユニット40は、ステップ3002の処理が終了すると、処理をステップ3003に進める。
【0068】
制御ユニット40は、キーパターン120に基づいてウエーハ100のストリート103を検出する(ステップ3003)。制御ユニット40は、例えば、キーパターン120と該キーパターン120に紐付けられた距離130とに基づいて、キーパターン120から距離130だけ離れた位置をストリート103として検出する。制御ユニット40は、ステップ3003の処理が終了すると、処理をステップ3004に進める。
【0069】
制御ユニット40は、検出したストリート103を撮像ユニット12の中心に位置づけて撮像する(ステップ3004)。制御ユニット40は、例えば、検出したストリート103が撮像ユニット12の中心に位置するように駆動手段14を駆動させ、ウエーハ100のストリート103の部分を撮像ユニット12に撮像させる制御を行う。制御ユニット40は、ステップ3004の処理が終了すると、処理をステップ3005に進める。
【0070】
制御ユニット40は、撮像された画像を機械学習部41に入力する(ステップ3005)。制御ユニット40は、例えば、撮像された画像を機械学習部41に入力することで、機械学習部41で学習済みプログラム202が実行され、画像がOK画像であるかNG画像であるかが判定される。制御ユニット40は、機械学習部41が出力した判定結果を取得すると、処理をステップ3006に進める。
【0071】
制御ユニット40は、判定結果がOK画像であるか否かを判定する(ステップ3006)。制御ユニット40は、例えば、機械学習部41が出力した判定結果がOK画像を示している場合に、判定結果がOKであると判定する。制御ユニット40は、判定結果がOK画像であると判定した場合(ステップ3006でYes)、処理をステップ3007に進める。
【0072】
制御ユニット40は、ウエーハ100の加工を制御する(ステップ3007)。制御ユニット40は、例えば、ストリート103の上面高さに応じて切削ブレード24を上下させるように制御することで、切り込み深さを制御しながら切削溝をウエーハ100に形成する。より詳細には、制御ユニット40は、駆動手段14によってY軸方向に沿って切削ブレード24を移動させ、Z軸移動手段15によってZ軸方向に沿って上面高さに応じた位置に切削ブレード24を位置付けることで、ストリート103に切削溝を形成する。制御ユニット40は、ステップ3007の処理が終了すると、
図9に示す処理手順を終了させる。
【0073】
また、制御ユニット40は、判定結果がOK画像ではないと判定した場合(ステップ3006でNo)、処理をステップ3008に進める。制御ユニット40は、上記の警告処理を実行する(ステップ3008)。制御ユニット40は、例えば、警告処理を実行することで、ストリート103の位置が正しくないことを警告し、加工ユニット13の加工を停止または保留させる。制御ユニット40は、ステップ3008の処理が終了すると、
図9に示す処理手順を終了させる。
【0074】
図9に示す処理手順では、制御ユニット40は、ステップ3001からステップ3004の一連の処理を実行することで、アライメント部46として機能する。制御ユニット40は、ステップ3005の処理を実行することで、入力部42として機能する。制御ユニット40は、ステップ3006からステップ3008の処理を実行することで、制御部43として機能する。
【0075】
なお、ティーチ作業においてストリートを検出する際に学習済みプログラムを用いて判定しているため、オートアライメント時は、
図9におけるステップ3004から3008までの学習済みプログラムを用いた処理は実施しなくても良い。
【0076】
以上説明したように、加工装置10は、加工時に学習済みプログラム202を用いて、ウエーハ100のストリート103を撮像した画像がOK画像であるかNG画像であるかを判定し、NG画像であると判定された場合、警告処理を実行する。加工装置10は、学習済みプログラム202によってOK画像であると判定された場合、ウエーハ100の加工を行う。これにより、加工装置10は、実施に撮像したOK画像とNG画像とを有する教師データを学習した学習済みプログラム202の判定結果を用いることで、画像の判定精度を向上させることができる。その結果、加工装置10は、画像の中心に分割予定ラインが撮像されていない場合に、ストリート(分割予定ライン)103でないウエーハ100の誤った位置を加工することを防止できる。さらに、加工装置10は、実際の画像を学習した学習済みプログラム202を用いることで、ウエーハ100やデバイス104ごとに適した判定を行うことができるため、利便性を向上させることができる。
【0077】
また、加工装置10は、ウエーハ100の表面101を撮像した画像をOK画像とNG画像とにラベリングした画像データ300を教師データとして学習済みプログラム202に学習させることができる。これにより、加工装置10は、学習済みプログラム202に入力した画像に対する学習済みプログラム202の判定精度を向上させることができる。その結果、加工装置10は、分割予定ラインでないウエーハ100の誤った位置を加工することをより一層確実に防止できる。
【0078】
また、加工装置10は、チャックテーブル11に載置された加工すべきウエーハ100を撮像し、パターンマッチングにより該キーパターン120を検出することでウエーハ100のストリート103を検出し、検出されたストリート103を撮像ユニット12の中心に位置づけて撮像することができる。これにより、加工装置10は、学習済みプログラム202に入力した画像自体の精度を向上させることができる。その結果、加工装置10は、分割予定ラインでないウエーハ100の誤った位置を加工することをより一層確実に防止できる。加工装置10は、例えば、オートアライメントに適用することで、キーパターンを手掛かりにストリート103の位置の自動で割り出しても、ウエーハ100の誤った位置を加工することを防止できる。
【0079】
上記の実施形態に係る加工装置10は、ティーチ作業時及び加工時に、学習済みプログラム202を実行して画像がOK画像であるかNG画像であるかを判定する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、加工装置10は、ティーチ作業時のみに学習済みプログラム202を実行するように構成してもよい。これにより、加工装置10は、ティーチ作業における分割予定ラインを登録する精度を向上させることで、加工時に誤った位置を加工することを防止できる可能性を向上させてもよい。
【0080】
[変形例]
上記実施形態の変形例に係る加工装置10を以下に説明する。
図10は、実施形態の変形例に係る加工装置10の構成例を模式的に示す斜視図である。
図11は、
図10に示すレーザー照射ユニットの構成例を示すブロック図である。なお、以下の各実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0081】
図10に示す加工装置10は、ウエーハ100にレーザー光線を照射するレーザー加工装置である。加工装置10は、基本的な構成として、ウエーハ100を保持するチャックテーブル11、撮像ユニット12、加工ユニット13、駆動手段14、Z軸移動手段15、タッチパネル17及び制御ユニット40を備える。加工ユニット13は、上記の切削ブレード24に代わり、レーザー照射ユニット5を有する。
【0082】
図11に示すように、レーザー照射ユニット5は、発振器51と、強度調整部(アッテネータ)52と、偏光方向設定部53と、ミラー素子54と、集光レンズ55と、を備える。レーザー照射ユニット5は、制御ユニット40によって制御される。
【0083】
発振器51は、所定波長のレーザー光線を発振するためのものであり、例えばYAGレーザー発振器やYVO4レーザー発振器等からなるレーザー光線発振器、1064nm等の赤外線波長域のレーザー光線を発振する発振器等によって構成される。強度調整部52は、1/2波長板521と、モータ522と、偏光ビームスプリッタ523と、アブソーバ524とを備える。
【0084】
1/2波長板521は、モータ522によって回動可能な状態で発振器51の後段に配設されている。1/2波長板521は、その回動角度に応じて発振器51が発振したレーザー光線LBの直線偏光方向を変化させる。偏光ビームスプリッタ523は、1/2波長板521を通過したレーザー光線のうち、所定の直線偏光方向を有するレーザー光線を偏光方向設定部53に向けて透過すると共に、所定の直線偏光方向以外の直線偏光方向を有するレーザー光線をアブソーバ524側に分岐する。アブソーバ524は、偏光ビームスプリッタ523によって分岐されたレーザー光線を吸収するためのものであり、レーザー光線を良好に吸収すべく例えばつや消し黒色系金属によって構成するとよい。
【0085】
偏光方向設定部53は、1/2波長板531と、モータ532とを備える。1/2波長板531は、モータ532によって回動可能な状態で偏光ビームスプリッタ523の後段に配設されている。1/2波長板531は、その回動角度に応じて偏光ビームスプリッタ523を透過したレーザー光線の直線偏光方向を変化させる。偏光方向設定部53は、本発明に係る偏光方向設定手段として機能する。ミラー素子54は、1/2波長板531を通過したレーザー光線を集光レンズ55側に向けて反射させるためのものである。集光レンズ55は、ウエーハ100と対向するように配設され、ウエーハ100の内部に集光点を位置付けてミラー素子54によって反射されたレーザー光線を集光するものである。
【0086】
図11に示す一例では、集光レンズ55は、例えば、集光器として機能する。そして、発振器51と集光レンズ55との間に配設された強度調整部52及び偏光方向設定部53は、例えば、光学系として機能する。
【0087】
以上、本実施形態の変形例に係る加工装置10の構成例について説明した。なお、
図8を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る加工装置10の構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る加工装置10の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0088】
実施形態の変形例に係る加工装置10は、分割予定ラインであるストリート103で区画されたウエーハ100を、ストリート103に沿って加工する。加工装置10は、例えば、ウエーハ100に対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射し、ウエーハ100の内部にストリート103に沿って改質層(変質領域)を連続的に形成する。さらに、加工装置10は、この改質層が形成されることによって強度が低下したストリート103に沿って外力を加えることにより、ウエーハ100を分割する機能を有しても良い。また、加工装置10は、例えば、ウエーハ100に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射し、ウエーハ100の表面にストリート103に沿って切削溝を形成する。切削溝はウエーハ100をハーフカットする深さでもよいし、フルカットする深さがあってもよい。
【0089】
加工装置10は、上述した
図7及び
図9に示す処理手順を用いることができる。例えば、加工装置10は、
図9に示すステップ3007の処理を、レーザー照射ユニット5で加工する処理に置き換えればよい。
【0090】
例えば、加工装置10の制御ユニット40は、ステップ3005で判定結果がOK画像であると判定した場合(ステップ3005でYes)、ウエーハ100の加工を制御する(ステップ3007)。制御ユニット40は、例えば、ストリート103の一端部を集光レンズ55の鉛直下方に位置付け、レーザー光線LBを発振器51から出射させた状態で、加工ユニット13に対してチャックテーブル11をX軸移動手段22でX軸方向に相対的に加工送りさせる。制御ユニット40は、ステップ3007の処理が終了すると、
図9に示す処理手順を終了させる。
【0091】
また、制御ユニット40は、判定結果がOK画像ではないと判定した場合(ステップ3006でNo)、処理をステップ3008に進める。制御ユニット40は、上記の警告処理を実行する(ステップ3008)。制御ユニット40は、例えば、警告処理を実行することで、ストリート103の位置が正しくないことを警告し、加工ユニット13の加工を停止または保留させる。制御ユニット40は、ステップ3008の処理が終了すると、
図9に示す処理手順を終了させる。
【0092】
実施形態の変形例に係る加工装置10は、ティーチ作業において、学習済みプログラム202を用いて、ウエーハ100のストリート103を撮像した画像がOK画像であるかNG画像であるかを判定し、NG画像であると判定された場合、警告処理を実行する。加工装置10は、学習済みプログラム202によってOK画像であると判定された場合に、オペレータが登録したウエーハ100のストリート103等の登録内容を受け付ける。これにより、加工装置10は、実際に撮像したOK画像とNG画像とを有する教師データを学習した学習済みプログラム202を用いることで、オペレータが登録したストリート103、距離130等の正当性を、撮像された画像に基づいて確認することができる。その結果、加工装置10は、分割予定ラインを登録する精度を向上させ、ウエーハ100における間違った位置を加工し続けることを防止できる。
【0093】
また、加工装置10は、ウエーハ100の表面101を撮像したティーチ作業時の画像をOK画像とNG画像とにラベリングした画像データ300を教師データとして学習済みプログラム202に学習させることができる。これにより、加工装置10は、学習済みプログラム202に入力した画像に対する学習済みプログラム202の判定精度を向上させることができる。その結果、加工装置10は、分割予定ラインでないウエーハ100の誤った位置を加工することをより一層確実に防止できる。
【0094】
また、実施形態の変形例に係る加工装置10は、実施形態と同様に、学習済みプログラム202を用いて、ウエーハ100のストリート103を撮像した画像がOK画像であるかNG画像であるかを判定し、NG画像であると判定された場合、警告処理を実行する。加工装置10は、学習済みプログラム202によってOK画像であると判定された場合、ウエーハ100の加工を行う。これにより、加工装置10は、実施に撮像したOK画像とNG画像とを有する教師データを学習した学習済みプログラム202の判定結果を用いることで、画像の判定精度を向上させることができる。その結果、加工装置10は、画像の中心に分割予定ラインが撮像されていない場合に、分割予定ラインでないウエーハ100の誤った位置を加工することを防止できる。さらに、加工装置10は、実際の画像を学習した学習済みプログラム202を用いることで、ウエーハ100やデバイス104ごとに適した判定を行うことができるため、利便性を向上させることができる。
【0095】
なお、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0096】
例えば、上記実施形態及び変形例では、加工装置10は、制御ユニット40が機械学習部41、入力部42、制御部43、ラベリング部44、ティーチ部45及ぶアライメント部46を備える場合について説明したが、これに限定されない。例えば、加工装置10は、ラベリング部44及ぶアライメント部46を備えない、あるいは、ラベリング部44及ぶアライメント部46のいずれかを備える構成としてもよい。
【0097】
上記実施形態及び変形例では、学習済みプログラム202は、ウエーハ100の種類ごとに機械学習を行って作成される場合について説明したが、これに限定されない。学習済みプログラム202は、複数種類のウエーハ100で機械学習を行って作成されてもよい。これにより、学習済みプログラム202は、様々な種類のウエーハ100を機械学習した汎用的なプログラムとすることで、ウエーハ100の種類ごとに作成する必要がなくなり、汎用性を高くすることができる。
【符号の説明】
【0098】
10 加工装置
11 チャックテーブル
12 撮像ユニット
13 加工ユニット
17 タッチパネル
18 LEDライト
30 ストレージ
31 画像記憶部
40 制御ユニット
41 機械学習部
42 入力部
43 制御部
44 ラベリング部
45 ティーチ部
46 アライメント部
100 ウエーハ(被加工物)
103 ストリート(分割予定ライン)
104 デバイス
201 制御プログラム
202 学習済みプログラム
300 画像データ(教師データ)
301、302 画像