(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】モノマーイソシアネートの放出量が少ないホットメルト接着剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20240315BHJP
C08G 18/72 20060101ALI20240315BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240315BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240315BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240315BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C09J175/04
C08G18/72 010
C08G18/76 014
C08G18/76 057
C08G18/10
C08G18/42
C08G18/48
(21)【出願番号】P 2021541432
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2020050863
(87)【国際公開番号】W WO2020148311
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2023-01-13
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】フランケン,ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】キンツェルマン,ハンス-ゲオルク
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151497(JP,A)
【文献】特表2017-519052(JP,A)
【文献】特開2012-062340(JP,A)
【文献】特表2001-522908(JP,A)
【文献】特表2018-514600(JP,A)
【文献】特開2008-285616(JP,A)
【文献】特開平06-271830(JP,A)
【文献】特表2003-504435(JP,A)
【文献】特開昭60-161416(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00019120(EP,A1)
【文献】米国特許第06903167(US,B2)
【文献】欧州特許出願公開第02706074(EP,A1)
【文献】米国特許第04544763(US,A)
【文献】特開昭59-164319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/04
C08G 18/72
C08G 18/76
C08G 18/10
C08G 18/42
C08G 18/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンプレポリマーを含むホットメルト接着剤の製造方法であって、ここで、ポリウレタンプレポリマーは鎖延長剤と反応しており、ポリウレタンプレポリマーは以下の反応によって得られ、第1ステップにおいて
(i)2,4'-トルエンジイソシアネート(2,4'-TDI)をポリオールと反応させ、その後のステップにおいて
(ii)ステップ(i)の反応混合物にメチレンジフェニルジソシアネート(MDI)を添加する;
ここで、ホットメルト接着剤は、80~160
℃の塗布温度を有し、鎖延長剤は、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2-エチル-1-ヘキサノール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、イソソルビド、レゾルシノール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記方法のステップ(i)および(ii)は、触
媒の存在下で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(i)で使用されるポリオールは、GPCにより測定される数平均分子量Mnが100~10000g/
molであることを特徴とする、
請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
ポリオールとして、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールを使用することを特徴とする、
請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ポリオールは、50~1500mgKOH/
gのヒドロキシル価(OH価)を有することを特徴とする、
請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ステップ(i)および/またはステップ(ii)におけるイソシアネート基とヒドロキシル基の比率(NCO:OH)は1.1:1~4:
1であることを特徴とする、
請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ホットメルト接着剤中のモノマートルエンジイソシアネートの含有量は、ホットメルト接着剤の総重量を基準にして0.02重量%未満であることを特徴とする、
請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ホットメルト接着剤中のモノマーメチレンジフェニルジイソシアネートの含有量は、ホットメルト接着剤の総重量を基準にして0.1重量%未満であることを特徴とする、
請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
環球法により測定されるホットメルト接着剤の軟化点は40℃超であることを特徴とする、
請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1段階でポリウレタンプレポリマーを生成し、続いて鎖延長剤と反応させる、加熱時にモノマーイソシアネートの放出量が少ないホットメルト接着剤の製造方法に関する。さらに、本発明は、本発明の方法によって得られるホットメルト接着剤にも関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、一般的に、熱可塑性ポリマーの固形分が100%である、無溶剤の調製物である。これらは室温では固体であり、軟化点以上に加熱することで活性化し、その段階では液体となるため、加工が可能となる。塗布後は、固まるまで基材を濡らす能力を保持する。固化すると、構造的な整合性のある物理的な状態に戻り、接着剤としての機能を果たす。接着剤は、押し出し、巻き取り、吹き付けなどの方法で塗布され、塗布直後または固化した層を再加熱した後に接合される。溶融物の粘度が高いため、溶剤系での接着が困難な多孔質や透過性の基材に特に適している。ホットメルトの特徴は、冷却すると内部の強度が急速に高まることで、迅速な組み立てや更なる加工が可能になる。
【0003】
ホットメルトは、産業界で幅広い用途に使用されている。パッケージング業界(紙、ダンボール、段ボールを使ったパッケージの製造)は主要なユーザーの一つである。ホットメルトは、印刷業界では書籍の背表紙の接着に、繊維業界ではアップリケの接着に、製靴業界では靴底の接着などにも使用されている。木材加工業界では、ベニヤの周りや縁取りにホットメルトが使われている。自動車業界では、絶縁材や緩衝材の接着、ヘッドライトカバーの金属フレームへの接着、ホイールカバーの接着など、様々な用途でホットメルトが使用されている。また、電子業界では、コイルの巻線やコイルエンドの接着などにもホットメルトが使用されている。
【0004】
ポリウレタンをベースにしたホットメルトはよく知られており、様々な用途で確立されている。これらはイソシアネート(通常はジイソシアネート)とポリオールを反応させて固体ポリウレタンを得て、これを塗布前に溶かすことで得られる。ポリウレタンをベースにしたホットメルト接着剤は、産業界では非常に広く確立され受け入れられているが、ホットメルト接着剤に含まれる揮発性有機化合物が高い塗布温度のために加工中に放出され、特に大規模な産業用途や溶融した接着剤をスプレーで塗布する工程では、ユーザーに健康上のリスクをもたらす可能性があるという欠点がある。接着剤の溶融時に放出され得る最も重要な化合物は、接着剤に含まれる残留イソシアネートモノマーである。トルエンジイソシアネートなど一般的に使用されているイソシアネートの蒸気は、目や呼吸器をひどく刺激することが知られており、蒸気を吸い続けると肺水腫を引き起こす可能性がある。高レベルの暴露は反応性気道機能障害症候群を引き起こす可能性があるため、許容暴露限度は極めて低い。この化学物質は、とりわけ中国天津の化学物質倉庫で2回の大規模な爆発を引き起こした責任なども指摘されている。
【0005】
そのため、モノマーイソシアネートの放出量が少ないポリウレタン系ホットメルト接着剤が求められている。
【0006】
EP 3 067 377は、遊離のイソシアネート基を含む少なくとも1つのポリウレタンプレポリマーを含むプレポリマー組成物を開示しており、このポリウレタンプレポリマーは、(a)少なくとも1つのポリオールを少なくとも1つのポリイソシアネートと反応させることによって得られ、ここで、前記少なくとも1つのポリイソシアネートは、NCO基が少なくとも1つのポリオールのヒドロキシル基に対してモル過剰に存在するような量で使用されて、遊離のイソシアネート基を含むポリウレタンプレポリマーを得て、(b)少なくとも1つのH-酸性官能基を有する少なくとも1つの化合物を、遊離のイソシアネート基とH-酸性官能基とのモル比(NCO:XH比)が2~15であるような量で、ステップ(a)のポリウレタンプレポリマーに添加することによって得られる。このようにして、0.05重量%未満のイソシアネートモノマー濃度が得られた。
【0007】
WO 03/051951は、ポリイソシアネートをポリオールと反応させて、末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを製造する方法に関するものであって、第1の合成ステップ(I)において以下のことが行われる:a)ポリイソシアネートとして少なくとも1つの非対称性ジイソシアネートが使用される;b)ポリオールとして60~3000g/molの範囲の平均分子量(Mn)を有する少なくとも1つのポリオールが使用される;c)イソシアネート基とヒドロキシル基の比率を1.2:1から4:1の範囲とする;d)触媒を添加する、反応が成功した後に第2の合成ステップ(II)で以下を行う:e)イソシアネート基とヒドロキシル基の合計比率が1.1:1から2:1の範囲になるように、少なくとも1つの追加のポリオールを添加する。記載された方法に従って製造されたポリウレタンプレポリマーは、低粘度で、モノマーの含有量が少ない。
【0008】
US 2004/0084138には、モノマーの含有量が少なく、多段階で硬化する反応性接着剤が開示されている。この接着剤は、無溶媒または溶媒を含むことができ、モノマーイソシアネートの含有量が少なく、少なくとも1つの酸性水素原子を含む組成物と反応する少なくとも1つの官能基を有するポリウレタンプレポリマー(A)と、照射により重合可能な官能基を含む少なくとも1つの化合物(B)との混合物である。接着剤組成物は、光重合開始剤、硬化剤および添加剤を含むことができる。この反応性接着剤は、紫外線照射や電子線照射、および遊離のイソシアネート基と少なくとも1つの酸性水素原子を含む組成物との反応によって硬化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第3067377号明細書
【文献】国際公開第03/051951号
【文献】米国特許出願公開第2004/0084138号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
モノマーイソシアネートの含有量が少ないポリウレタンホットメルト接着剤を提供するためにいくつかの試みがなされてきたが、加熱時の揮発性化合物の放出の問題は解決されていない。特に、塗布温度の高いホットメルト接着剤では、加熱時に臨界量のモノマーイソシアネートが依然として放出されることがわかった。さらに、得られた接着剤は通常、特に70℃を超える温度での溶融安定性が低下してしまう。ある調製物の溶融安定性とは、特定の温度とせん断速度における材料の熱的安定性を意味し、高温の装置内に長時間放置した場合に材料の安定性がどうなるかを示す指標となり得る。
【0011】
したがって、本発明の目的は、モノマーイソシアネート、特にトルエンジイソシアネートの溶融時の放出量が少なく、また、良好な溶融安定性を示すことにより、先行技術の欠点を克服したポリウレタンホットメルト接着剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、トルエンジイソシアネートとメチレンジフェニルジイソシアネートの混合物をポリオールに添加した後、鎖延長反応を行うことを含む方法によって解決される。
【0013】
したがって、本発明の第1の目的は、ポリウレタンプレポリマーを含むホットメルト接着剤の製造方法であって、ここで、ポリウレタンプレポリマーが鎖延長剤と反応して得られ、ポリウレタンプレポリマーは以下の反応によって得られることを特徴とし、ここで、第1のステップでは、
(i)2,4'-トルエンジイソシアネート(2,4'-TDI)をポリオールと反応させ、その後のステップにおいて、
(ii)ステップ(i)の反応混合物にメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を加え、
ここで、ホットメルト接着剤の塗布温度は、80~160℃、好ましくは90~140℃である。
【0014】
驚くべきことに、使用したイソシアネート化合物を後から添加すると、モノマーイソシアネートの含有量が少なく、また溶融時にいずれかのジイソシアネートの放出が非常に少ないか、または測定不能でもあり、同時に良好な溶融安定性を示す、ホットメルト接着剤が得られることがわかった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施形態では、プレポリマーとさらに反応させた鎖延長剤は、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2-エチル-1-ヘキサノール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、イソソルビド、レゾルシノール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。驚くべきことに、低分子量のジオールとモノオール(monols)を使用することで、ホットメルト接着剤中のモノマーイソシアネートの含有量を減らすことができ、同時に接着剤の溶融安定性、特に70℃超の温度での溶融安定性を維持できることがわかった。
【0016】
本発明方法のステップ(i)および(ii)の反応は、反応のターンオーバー率(turn-over rate)を向上させるとともに、反応時間および温度を低減するために、触媒の存在下で行ってもよい。好ましい実施形態では、本発明方法のステップ(i)および/またはステップ(ii)は、したがって、触媒の存在下で行われる。触媒は、金属有機化合物およびアミン含有有機化合物からなる群から選ばれることが好ましい。特に好ましい実施形態では、触媒は、スズ、鉄、チタン、ビスマスおよびジルコニウムに由来する有機金属化合物からなる群から選択される。代替的に好ましい実施形態では、触媒はε-カプロラクタムである。
【0017】
本発明方法のステップ(i)で用いられるポリオールは、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~10000g/mol、好ましくは500~5000g/molのポリオールであることが好ましい。鎖延長剤は、特にポリウレタンプレポリマーの粘度特性を制御するために選択できる。特に好ましい実施形態では、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールが鎖延長剤として用いられる。
【0018】
さらに好ましい実施形態では、ポリオールは、50~1500mgKOH/g、好ましくは250~1500mgKOH/g、最も好ましくは500~1500mgKOH/gのヒドロキシル価(OH価)を有する。ヒドロキシル価とは、化学物質に含まれる遊離の水酸基の含有量を示す指標であり、通常、化学物質1gの水酸基含有量に相当する水酸化カリウム(KOH)の質量のミリグラム単位で表わされる。ヒドロキシル価を測定するための分析方法は、伝統的にピリジン溶媒中で無水酢酸を用いて物質の遊離水酸基をアセチル化するものである。ヒドロキシル価は、ASTM E222-10に基づいて測定できる。
【0019】
ホットメルト接着剤中のモノマーイソシアネートの含有量を減らすためには、最初から少ない量を使用することが1つの明白なアプローチであるが、ステップ(ii)において、ヒドロキシル成分に対してイソシアネート成分をモル過剰に使用することは、大規模生産に関して有利であることがわかった。ステップ(i)では、ヒドロキシル成分はイソシアネート成分に対してモル過剰である。好ましい実施形態では、本発明方法のステップ(i)および/またはステップ(ii)におけるイソシアネート基とヒドロキシル基のモル比(NCO:OH)は、したがって、1.1:1~4:1、好ましくは1.5:1~3:1である。ステップ(ii)では、イソシアネート基がモル過剰で存在するが、それにもかかわらず、モノマーであるトルエンジイソシアネートおよびメチレンジイソシアネートの含有量が非常に少なく、加熱時にいずれかの化合物の放出が非常に少ないか、測定できないホットメルト接着剤を得ることができた。
【0020】
驚くべきことに、本発明の方法によりホットメルト接着剤を製造すると、ホットメルト接着剤中のモノマートルエンジイソシアネートの含有量が0.02重量%未満に低減できることがわかった。したがって、好ましい実施形態では、ホットメルト接着剤は、ホットメルト接着剤の総重量に基づいて、0.02重量%未満、好ましくは0.01重量%未満のモノマートルエンジイソシアネートの含有量を有している。
【0021】
ホットメルト接着剤に含まれる重要なイソシアネートはトルエンジイソシアネートだけではないので、ホットメルト接着剤に含まれるすべてのモノマーイソシアネートの含有量を減らすことが望ましい。なぜなら、これらのモノマーイソシアネートは潜在的な健康上のリスクであり、このような接着剤の用途、特に食品包装の製造における使用には制限があることがわかったからである。したがって、本発明の実施形態は、ホットメルト接着剤中のメチレンジイソシアネートのモノマー含有量が、ホットメルト接着剤の総重量を基準にして、0.1重量%未満、好ましくは0.05%未満であることが好ましい。
【0022】
驚くべきことに、本発明の方法は、広範囲の軟化点を有するホットメルトの製造に特に適していることがわかった。本発明の方法の好ましい実施形態では、ホットメルト接着剤は、したがって、環球法の方法に従って決定される40℃超、好ましくは50℃超の軟化点を有する。
【0023】
本発明の方法は、モノマーイソシアネートの含有量が少ないホットメルト接着剤の製造に特に適している。本発明のさらなる目的は、したがって、本発明の方法によって得られるホットメルト接着剤であって、得られたホットメルト接着剤は、ホットメルト接着剤の総重量に基づいて、モノマートルエンジイソシアネートの含有量が0.02重量%未満、好ましくは0.01重量%未満である。
【0024】
好ましい実施形態では、本発明のホットメルト接着剤中のメチレンジイソシアネートのモノマー含有量は、ホットメルト接着剤の総重量を基準にして、0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満である。
【0025】
驚くべきことに、本発明のホットメルト接着剤は、低量のモノマーイソシアネートとの組み合わせで、良好な溶融安定性を示すことがわかった。溶融安定性が低いと、ホットメルトを塗布時に長時間保持されると、通常、粘度が上昇する。そのため、本発明のホットメルト接着剤は、ASTM D3835に基づいて、塗布温度で2時間保持したときの粘度上昇が20%以下である。
【0026】
一般的なポリウレタン系ホットメルト接着剤は、モノマーイソシアネートの含有量が少ない場合があるが、ホットメルト接着剤の塗布温度が高いため、トルエンジイソシアネートなどの揮発性成分が放出される危険性が常にある。驚くべきことに、ほとんどの場合、本発明のホットメルト接着剤の溶融時のトルエンジイソシアネートの放出は、検出レベル以下であることがわかった。そのため、好ましい実施形態では、本発明のホットメルト接着剤は、トルエンジイソシアネートの放出率が2ppb未満、好ましくは1ppb未満、特に0.5ppb未満であり、ppbはホットメルト接着剤の重量部を意味している。放出率は、130℃で30分間にわたり測定した。
【0027】
本発明は、決して本発明の範囲または精神を限定するものとして理解されるべきではない以下の実施例によって、より詳細に説明される。
【実施例】
【0028】
実施例:
プレポリマー:
ポリプロピレングリコール(487.5g、ヒドロキシル価237mgKOH/g)とアジピン酸、イソフタル酸/PPG/ジエチレングリコールのポリエステル(56.2g、ヒドロキシル価137mgKOH/g)を2,4'-TDI(269gと混合して、プレポリマーを得た。約80℃に加熱すると、NCO値は6.8%となった。続いて、4,4'-MDI(57.5g)を加え、80℃で撹拌を続けた。NCO終了値は約6.41%であった。
【0029】
以下の状態が観察された:
NCO:OH (ステップ(i)) = 1.38:1
NCO:OH (ステップ(ii)) = 2.2:1
【0030】
モノマーであるTDIの含有量は0.04重量%と決定され、MDIのモノマー含有量は0.8重量%であることがわかった。プレポリマーの全NCO含有量は6.41%であった。このプレポリマーの粘度は、50℃で77 500mPa*sを示した。
【0031】
実施例1:
450gのプレポリマーを80℃に加熱し、7.12gの1,3-ブタンジオールを添加した。
【0032】
1,3-ブタンジオールの量は、プレポリマーの全NCO基の20%が変換されるように計算した。
【0033】
最終生成物におけるモノマーTDIの含有量は、0.01重量%未満であることがわかった。最終生成物におけるモノマーMDIの含有量は0.09重量%とした。全NCO含有量は4.47%となった。
【0034】
得られた生成物は、100℃での粘度が33000mPa*sとなった。100℃で2時間後の粘度は38 500mPa*sに達し、16.6%の粘度上昇が見られた。
【0035】
実施例2:
450gのプレポリマーを80℃に加熱し、8.67gの1,2-プロパンジオールを添加した。
【0036】
1,2-プロパンジオールの量は、プレポリマー中の全NCO基の20%が変換されるように計算した。
【0037】
最終生成物におけるモノマーTDIの含有量は、0.01重量%未満であることがわかった。最終生成物におけるモノマーMDIの含有量は0.08重量%とした。全NCO含有量は4.03%となった。
【0038】
得られた生成物は、100℃での粘度が50 500mPa*sであった。100℃で2時間後の粘度は58 100mPa*sに達し、これは15.1%の粘度上昇に相当する。
【0039】
実施例3(ワンポット方式):
TDIおよびMDIの必要量の計算は、上記のプレポリマーの調製と同様に行った。
【0040】
ポリプロピレングリコール(487.5g、ヒドロキシル価237mgKOH/g)と、アジピン酸、イソフタル酸/PPG/ジエチレングリコールのポリエステル(56.2g、ヒドロキシル価137mgKOH/g)を混合し、約80℃まで加熱した。計算された量の2,4'-TDI(269g)と4,4'-MDI(57.5g)を80℃で加え、80℃で10分間ホモジネートした。
【0041】
1,3-ブタンジオール13.77gを加え、混合物を80℃で120分間反応させた。
【0042】
最終生成物におけるモノマーTDIの含有量は、0.02重量%未満であることがわかった。最終生成物におけるモノマーMDIの含有量は0.08重量%とした。全NCO含有量は4.39%と決定された。
【0043】
得られた生成物は、100℃での粘度が41000mPa*sとなった。100℃で2時間後の粘度は48 350mPa*sに達し、これは18%の粘度上昇に相当する。
【0044】
本発明の方法に従って製造された実施例1から3のホットメルト接着剤を用いて、100μmの厚さを有するフィルムを調製した。フィルムをホットプレートに載せて130℃で2時間アウトガスし、ホットプレート上のヘッド高さ(30cm)でトルエンジイソシアネート(TDI)、ホットプレート上の15cmでメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)の放出濃度をそれぞれ測定した。その結果を表1にまとめた。
【0045】
【0046】
いずれの場合も、TDIでは0.035mg/m3、MDIでは0.05mg/m3のそれぞれの公式閾値には達しなかった。本発明のホットメルト接着剤は、TDIおよびMDIの閾値以下の低い放出率を示すと同時に、それぞれのモノマーイソシアネートの含有量が少なく、良好な溶融安定性を維持していた。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕ポリウレタンプレポリマーを含むホットメルト接着剤の製造方法であって、ここで、ポリウレタンプレポリマーは鎖延長剤と反応しており、ポリウレタンプレポリマーは以下の反応によって得られ、第1ステップにおいて
(i)2,4'-トルエンジイソシアネート(2,4'-TDI)をポリオールと反応させ、その後のステップにおいて
(ii)ステップ(i)の反応混合物にメチレンジフェニルジソシアネート(MDI)を添加する;
ここで、ホットメルト接着剤は、80~160℃、好ましくは90~140℃の塗布温度を有し、鎖延長剤は、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2-エチル-1-ヘキサノール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、イソソルビド、レゾルシノール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、方法。
〔2〕前記方法のステップ(i)および(ii)は、触媒、好ましくは金属有機化合物およびアミン含有有機化合物からなる群から選択される触媒の存在下で実施されることを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
〔3〕ステップ(i)で使用されるポリオールは、GPCにより測定される数平均分子量Mnが100~10000g/mol、好ましくは500~5000g/molであることを特徴とする、前記項のいずれかに記載の方法。
〔4〕ポリオールとして、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールを使用することを特徴とする、前記項のいずれかに記載の方法。
〔5〕ポリオールは、50~1500mgKOH/g、好ましくは250~1500mgKOH/g、最も好ましくは500~1500mgKOH/gのヒドロキシル価(OH価)を有することを特徴とする、前記項のいずれかに記載の方法。
〔6〕ステップ(i)および/またはステップ(ii)におけるイソシアネート基とヒドロキシル基の比率(NCO:OH)は1.1:1~4:1、好ましくは1.5:1~3:1であることを特徴とする、前記項のいずれかに記載の方法。
〔7〕ホットメルト接着剤中のモノマートルエンジイソシアネートの含有量は、ホットメルト接着剤の総重量を基準にして0.02重量%未満であることを特徴とする、前記項のいずれかに記載の方法。
〔8〕ホットメルト接着剤中のモノマーメチレンジフェニルジイソシアネートの含有量は、ホットメルト接着剤の総重量を基準にして0.1重量%未満であることを特徴とする、前記項のいずれかに記載の方法。
〔9〕環球法により測定されるホットメルト接着剤の軟化点は40℃超であることを特徴とする、前記項のいずれかに記載の方法。
〔10〕ホットメルト接着剤中のモノマートルエンジイソシアネートの含有量は、ホットメルト接着剤の総重量を基準にして0.02重量%未満であることを特徴とする、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の方法で得られるホットメルト接着剤。
〔11〕ホットメルト接着剤中のモノマーメチレンジフェニルジイソシアネートの含有量は、ホットメルト接着剤の総重量を基準にして0.1重量%未満であることを特徴とする、〔10〕に記載のホットメルト接着剤。
〔12〕ホットメルト接着剤は、塗布温度で2時間保持する間に20%以下の粘度増加を示すことを特徴とする、〔10〕または〔11〕のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
〔13〕トルエンジイソシアネートの放出率は2ppb未満、好ましくは1ppb未満、特に0.5ppb未満であることを特徴とする、〔10〕~〔12〕のいずれかに記載のホットメルト接着剤。