(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
G01N35/10 F
(21)【出願番号】P 2021562683
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2020044840
(87)【国際公開番号】W WO2021112120
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2019220166
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020073408
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀江 陽介
(72)【発明者】
【氏名】越智 学
(72)【発明者】
【氏名】村松 由規
(72)【発明者】
【氏名】川原 鉄士
(72)【発明者】
【氏名】南 礼孝
(72)【発明者】
【氏名】浜田 大輝
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194301(JP,A)
【文献】特開2017-009299(JP,A)
【文献】特開2008-111767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料又は試薬を反応容器に分注する分注プローブを含む分注機構と、
前記分注プローブの外面へ洗浄液を吐出する吐出口と、
前記吐出口へ供給する洗浄液量を変更する液量変更手段と、
前記分注機構に設けられた洗浄液検知手段と、
前記分注プローブ、前記液量変更手段及び前記洗浄液検知手段を制御する制御部と、
を備え、
前記分注プローブの洗浄時に、前記制御部は、
前記分注プローブの先端の高さを第1位置とした状態で、基準液量の洗浄液を前記吐出口から吐出することにより、前記第1位置からその上方の第2位置までにある前記分注プローブの外面を目標に前記洗浄液を接触させる自動分析装置であって、
洗浄液量の調整時に、前記制御部は、
前記分注プローブの先端の高さを前記第2位置以上とした状態で、前記液量変更手段により洗浄液量を変更し、
前記洗浄液検知手段が前記洗浄液を検知したときの洗浄液量を調整後液量として、
前記基準液量を更新することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記液量変更手段は、ポンプから前記吐出口までの流路の途中に設けられた電磁弁であり、
前記分注プローブの洗浄時に、前記制御部は、
前記電磁弁を基準開度に制御して洗浄液を前記吐出口から吐出するものであって、
洗浄液量の調整時に、前記制御部は、
前記電磁弁の開度を大きくして行き、
前記洗浄液検知手段が前記洗浄液を検知し始めたときの前記電磁弁の開度を調整後開度として、
前記基準開度を更新することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動分析装置において、
前記洗浄液検知手段は、前記分注プローブの静電容量を検出して液面を検知する液面検知器であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の自動分析装置において、
前記試料又は試薬の吸引及び吐出を行うシリンジと、
前記シリンジと前記分注プローブを接続する流路に設けられ、前記流路内の圧力を検出する圧力センサと、を有し、
前記洗浄液検知手段は、前記圧力センサであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の自動分析装置において、
洗浄液量の調整時に、前記制御部は、
洗浄液量が所定の上限値に達しても、前記洗浄液検知手段が前記洗浄液を検知しない場合、又は、洗浄液量が所定の下限値に達する前に、前記洗浄液検知手段が前記洗浄液を検知した場合、警報を発することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
試料又は試薬を反応容器に分注する分注プローブを含む分注機構と、
前記分注プローブへ洗浄液を吐出する洗浄ノズルと、
前記分注機構を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記洗浄液の液量確認時に、前記分注プローブの洗浄時と比べ、前記分注プローブの水平位置を、前記洗浄ノズルに対して下流側に位置させる自動分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の自動分析装置において、
前記分注機構は、洗浄液検知手段を備え、
前記制御部は、前記洗浄液の液量確認時に、前記分注プローブを下降させていき、前記洗浄液検知手段が前記洗浄液を検知したときの高さに基づいて、前記洗浄液の液量を確認することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記洗浄液の液量確認時に、前記分注プローブを下降させる速度を、前記分注プローブの洗浄時に、前記分注プローブを下降させる速度よりも遅くすることを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項7に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記洗浄液の液量確認時に、前記洗浄ノズルから前記洗浄液の吐出を開始した後に、前記分注プローブの下降を開始させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項7に記載の自動分析装置において、
前記洗浄液の液量を調整可能な比例弁を備え、
前記制御部は、前記洗浄液検知手段が前記洗浄液を検知したときの高さに基づいて、前記比例弁の開閉状態を変更することを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項7に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記洗浄液の液量確認時に、前記洗浄ノズルから吐出する前記洗浄液の流速を、前記分注プローブの洗浄時に、前記洗浄ノズルから吐出する前記洗浄液の流速よりも遅くすることを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置、例えば生化学自動分析装置では、血清や尿などの生体試料(以下試料と称する)の成分分析を行う。こうした生化学自動分析装置では、一般に、分注プローブを用いて試料と試薬とをそれぞれ反応容器に分注して反応させ、反応液に生じる色調や濁りの変化を、分光光度計等の測光ユニットにより光学的に測定する。そのため、プローブの汚れ等は、分注の精度に影響し、結果として自動分析装置の信頼性にも影響を与える。したがって、試料等を分注した後は、プローブの外面や内面に付着した試料等を洗浄槽にて洗浄液により洗浄を行っている。
【0003】
しかし、プローブの外面を洗浄するための洗浄液を供給するポンプの性能が経年劣化により低下したり、ポンプから洗浄液の吐出口までの流路が詰まっていたりすると、洗浄液の液量が変化してくる。洗浄液量が少ない場合、例えば、プローブを十分洗浄できず、キャリーオーバー等が発生する可能性がある。一方、洗浄液量が多い場合、例えば、プローブの先端に水滴が残留してしまう可能性がある。このような洗浄液量の変化に対応するため、一般的には、定期的に作業者が洗浄液量を調整するメンテナンスを行っているが、手動での調整となるため時間がかかったり、バラツキが生じたりしていた。
【0004】
ここで、洗浄液量を自動で調整する技術として、例えば、特許文献1が知られている。この特許文献1には、「プローブの洗浄に用いられる洗浄液を供給する洗浄液供給部と、
前記供給された洗浄液を貯留する洗浄プールと、前記洗浄プールに貯留された洗浄液の液面を検知する液面検知部と、前記液面検知部により前記洗浄液の液面が検知された結果に基づいて当該洗浄液の洗浄液量を算出する洗浄液量算出部と、前記算出された洗浄液量が、所定の範囲に収まるか否かを判定する洗浄液量判定部と、前記算出された洗浄液量が、前記洗浄液量判定部により所定の範囲に収まらないと判定された場合に、前記洗浄液供給部から供給される洗浄液の洗浄液量を前記所定の範囲に収まるように調整する洗浄液量調整部とを具備する自動分析装置」(請求項1)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、洗浄液を貯留するためのプールや、プールに貯留された洗浄液を排出するための弁を設ける必要があり、装置の大型化や高コスト化を招く可能性がある。
【0007】
また、特許文献1に記載の方法では、洗浄液が想定通りの軌跡にてプローブに接触しているかは担保できていない。また、洗浄液の供給前にプールに残水があったり、弁の故障でプールに残水できなかったりすると、洗浄液量を読み違える可能性がある。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、大型化や高コスト化を抑制しつつ、分注プローブに対して適量の洗浄液を確実に接触させることで信頼性の高い自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、試料又は試薬を反応容器に分注する分注プローブを含む分注機構と、前記分注プローブの外面へ洗浄液を吐出する吐出口と、前記吐出口へ供給する洗浄液量を変更する液量変更手段と、前記分注機構に設けられた洗浄液検知手段と、前記分注プローブ、前記液量変更手段及び前記洗浄液検知手段を制御する制御部と、を備え、前記分注プローブの洗浄時に、前記制御部は、前記分注プローブの先端の高さを第1位置とした状態で、基準液量の洗浄液を前記吐出口から吐出することにより、前記第1位置からその上方の第2位置までにある前記分注プローブの外面を目標に前記洗浄液を接触させる自動分析装置であって、洗浄液量の調整時に、前記制御部は、前記分注プローブの先端の高さを前記第2位置以上とした状態で、前記液量変更手段により洗浄液量を変更し、前記洗浄液検知手段が前記洗浄液を検知したときの洗浄液量を調整後液量として、前記基準液量を更新する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大型化や高コスト化を抑制しつつ、分注プローブに対して適量の洗浄液を確実に接触させることで信頼性の高い自動分析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施例1に係る自動分析装置における洗浄液の供給経路の構成を示す図である。
【
図3】実施例1における液量の調整方法を示すフローチャートである。
【
図4】基準洗浄位置(第1位置)と洗浄液量確認位置(第2位置)を示す図である。
【
図5】液量調整時における洗浄液の軌跡の変化を示す図である(下方への吐出時)。
【
図6】液量調整時における洗浄液の軌跡の変化を示す図である(上方への吐出時)。
【
図7】実施例2における液量の調整方法を示すフローチャートである。
【
図8】実施例3に係る試料分注機構の構成を示す図である。
【
図9】実施例3に係る試料分注プローブの洗浄液量調整手段の構成例を示す図である。
【
図10】実施例3における、試料分注プローブの下降位置の例を示す図であり、(a)は、基準液量で吐出した場合の液流状態、(b)は、基準液量よりも液量が低下した場合の液流状態、もそれぞれ示す図である。
【
図11】洗浄ノズルから一定時間内に吐出される洗浄液量と、基準位置から洗浄液上端検出までのプローブ下降距離と、の関係を示すグラフである。
【
図12】プローブ洗浄およびプローブ洗浄液量調整のための制御ブロックの構成例を示す図である。
【
図13】洗浄液量を確認する際の洗浄液量調整手段の動作を示すフローチャートである。
【
図14】比例弁215による液量調整動作を示すフローチャートである。
【
図15】洗浄液の液量検出の動作を示すフローチャートである。
【
図16】比例弁制御テーブルの一例を示す図である。
【
図17】液流検出の動作フローにおける液面検知信号の一例を示す図である。
【
図18】洗浄液流の流速が速いときの液流状態と、試料分注プローブの下降位置の例を示す図である。
【
図19】比例弁の操作量と流量変化との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の自動分析装置の概略構成図である。自動分析装置100は、反応容器102内で化学反応させた反応液を測定して成分分析を行うための装置である。この自動分析装置100は、主要な構成として、反応ディスク101、洗浄機構103、分光光度計104、撹拌機構105、洗浄槽106、第1試薬分注機構107、第2試薬分注機構107a、洗浄槽108、試薬ディスク109、第1試料分注機構111、第2試料分注機構111a、洗浄槽113、試料搬送機構117、コントローラ118、を有している。また、第1試薬分注機構107、第2試薬分注機構107a、第1試料分注機構111、第2試料分注機構111aは、液面検知機能を有している。
【0013】
反応ディスク101には、反応容器102が円周状に配置されている。反応容器102は試料と試薬とを混合させた混合液を収容するための容器であり、反応ディスク101上に複数並べられている。反応ディスク101の近くには、試料容器115を搭載した試料ラック116を搬送する試料搬送機構117が配置されている。
【0014】
反応ディスク101と試料搬送機構117との間には、回転及び上下動可能な第1試料分注機構111及び第2試料分注機構111aが配置されており、各々試料分注プローブ111bを備えている。試料分注プローブ111bには各々試料用シリンジ122が接続されている。試料分注プローブ111bは回転軸を中心に円弧を描きながら水平移動し、上下移動して試料容器115から反応容器102への試料分注を行う。
【0015】
試薬ディスク109は、その中に試薬を収容した試薬ボトル110や洗剤ボトル112等が複数個円周上に載置可能となっている保管庫である。試薬ディスク109は保冷されている。
【0016】
反応ディスク101と試薬ディスク109の間には、回転及び上下動が可能な第1試薬分注機構107、第2試薬分注機構107aが設置されており、それぞれ試薬分注プローブ120を備えている。試薬分注プローブ120は、第1試薬分注機構107又は第2試薬分注機構107aにより、上下および水平移動が行われる。試薬分注プローブ120には各々試薬用シリンジ121が接続されている。この試薬用シリンジ121により、試薬分注プローブ120を介して試薬ボトル110、洗剤ボトル112、希釈液ボトル、前処理用試薬ボトル等から吸引した試薬、洗剤、希釈液、前処理用試薬等を反応容器102に分注する。
【0017】
反応ディスク101の周囲には、反応容器102内部を洗浄する洗浄機構103、反応容器102内の混合液を通過した光の吸光度を測定するための分光光度計104、反応容器102へ分注した試料と試薬とを混合する撹拌機構105等が配置されている。
【0018】
また、第1試薬分注機構107や第2試薬分注機構107aの動作範囲上に、試薬分注プローブ120用の洗浄槽108が、第1試料分注機構111や第2試料分注機構111aの動作範囲上に、試料分注プローブ111b用の洗浄槽113が、撹拌機構105の動作範囲上に、撹拌機構105用の洗浄槽106が、それぞれ配置されている。
【0019】
各機構はコントローラ118に接続され、コントローラ118によりその動作が制御されている。制御部であるコントローラ118は、コンピュータ等から構成され、自動分析装置内の上述した各機構の動作を制御するとともに、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度を求める演算処理を行う。
【0020】
上述のような自動分析装置100による検査試料の分析処理は、以下の順に従い実行される。まず、試料搬送機構117によって反応ディスク101近くに搬送された試料ラック116の上に載置された試料容器115内の試料を、第1試料分注機構111,第2試料分注機構111aの試料分注プローブ111bにより反応ディスク101上の反応容器102へと分注する。次に、分析に使用する試薬を、試薬ディスク109上の試薬ボトル110から第1試薬分注機構107又は第2試薬分注機構107aにより、先に試料を分注した反応容器102に対して分注する。続いて、撹拌機構105で反応容器102内の試料と試薬との混合液の撹拌を行う。
【0021】
その後、光源から発生させた光を混合液の入った反応容器102を透過させ、透過光の光度を分光光度計104により測定する。分光光度計104により測定された光度を、A/Dコンバータ及びインターフェイスを介してコントローラ118に送信する。そしてコントローラ118によって演算を行い、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度を求め、結果を表示部(不図示)等に表示させる。なお、分光光度計104を用いて所定の成分の濃度を求める自動分析装置を例として説明するが、後述の実施例にて開示される技術は他の光度計を用いて試料を測定する免疫自動分析装置や凝固自動分析装置に用いても良い。
【実施例1】
【0022】
次に、実施例1に係る自動分析装置100における洗浄液の供給経路の概略構成について、
図2を参照して説明する。
図2に示すように、試料分注機構を構成する試料分注プローブ111bは、分注流路を形成するチューブ201と、ニップル203を介して接続される。また、分注流路の上流は、試料の吸引及び吐出を行う試料用シリンジ122が接続されており、この試料用シリンジ122から試料分注プローブ111bまでの分注流路の途中には、流路内の圧力を検出する圧力センサ204が設けられている。そして、試料分注機構には、試料分注プローブ111bの静電容量を検出する液面検知器210が接続されており、試料分注プローブ111bの先端に試料や洗浄液が接触した場合には、静電容量の変化によってこれを検知する。
【0023】
さらに、本実施例の自動分析装置は、試料分注プローブ111bの洗浄を行う洗浄槽113と、タンク(図示せず)から洗浄液を供給する洗浄液供給ポンプ208と、を備えている。ここで、洗浄槽113は、試料分注プローブ111bが洗浄のためにアクセスしてきたときに通過する上部開口部205と、アクセスしてきた試料分注プローブ111bの外面に向けて洗浄液を吐出する洗浄液吐出口207と、吐出された洗浄液をドレインする下部開口部206と、を備えている。また、洗浄液供給ポンプ208の下流側は2つの経路に分岐し、一方は試料分注プローブ111bの内面を洗浄する内洗経路となり、他方は試料分注プローブ111bの外面を洗浄する外洗経路となる。
【0024】
内洗経路は、洗浄液供給ポンプ208より高圧なポンプである送液ポンプ211を、更に備えている。この送液ポンプ211の下流側には、送液ポンプ211と試料用シリンジ122とを連通する流路を開閉する、内洗用電磁弁212が設けられている。
【0025】
一方、外洗経路には、洗浄液供給ポンプ208から洗浄液吐出口207へと連通する流路を開閉する、外洗用電磁弁209が設けられている。内洗用電磁弁212及び外洗用電磁弁209は、コントローラ118から入力される電気信号に応じて、開閉及び開度変更が可能となっている。例えば、この外洗用電磁弁209に所定の電流が印加されると、外洗用電磁弁209が所定の開度になり、所定の液量の洗浄液が下流側へ供給される。
【0026】
試料を分注する場合、分注流路内がシステム水(純水)で満たされており、試料用シリンジ122を動作して分注流路内のシステム水を吐出又は吸引することで、試料の吸引又は吐出を行う。このときの分注の成否については、圧力センサ204で検出した圧力データを用いて判定される。なお、試料を分注する場合には、内洗用電磁弁212は閉弁されている。
【0027】
次に、試料分注プローブ111bの内面を洗浄する場合、洗浄液供給ポンプ208を動作させることで、洗浄液を送液ポンプ211へ供給する。送液ポンプ211は、洗浄液を高圧にして下流側へ送液し、システム水として分注流路を通って試料分注プローブ111bの内面を洗浄し、試料分注プローブ111bの先端から洗浄槽113内へ吐出する。
【0028】
一方、試料分注プローブ111bの外面を洗浄する場合、洗浄液供給ポンプ208を動作させるとともに、外洗用電磁弁209を開弁して、洗浄液吐出口207から試料分注プローブ111bの外面に向けて洗浄液を吐出させる。
【0029】
ここで、洗浄液吐出口207から吐出される洗浄液の液量は、外洗用電磁弁209の開度が一定であっても、洗浄液供給ポンプ208の経年劣化や、外洗経路の流路詰まり等により、目標とする液量が得られなくなっている可能性がある。このため、洗浄液吐出口207へ供給される洗浄液の液量を定期的に調整することが重要である。以下では、メンテナンスモードを実行した場合に実行される、液量の調整方法に関して説明する。ここで、洗浄液の液量の調整とは、試料分注プローブ111bの先端から吐出される単位時間当たりの液量を調整することを意味する。
【0030】
図3は、実施例1における液量の調整方法を示すフローチャートである。まず、コントローラ118の操作部より、試料分注プローブ111bの洗浄液量を調整するメンテナンスを実行するボタンが押下されると、メンテナンスモードに遷移する(ステップS301)。
【0031】
すると、コントローラ118は、第1試料分注機構111を動作させ、試料分注プローブ111bを洗浄槽113内に移動させる。さらに、コントローラ118は、
図4(a)に示すように、試料分注プローブ111bの先端の高さが基準洗浄位置(第1位置)401となる状態に保持して、試料分注プローブ111bの外面及び内面の洗浄を行う(ステップS302)。この基準洗浄位置とは、試料分注プローブ111bを洗浄するときの基準となる高さであり、通常の洗浄動作はこの位置で行われる。なお、ステップS302は、試料分注プローブ111bの位置をリセットさせるためのステップなので、試料分注プローブ111bの外面及び内面の洗浄は必須でない。また、試料分注プローブ111bの外面を洗浄した洗浄液と、試料分注プローブ111bの内面を洗浄したシステム水と、は真空吸引されて除去される。
【0032】
次に、コントローラ118は、洗浄液量を調整する準備のため、外洗用電磁弁209を全閉にする(ステップS303)。これにより、試料分注プローブ111bの外面の洗浄が終了する。このタイミングで内面の洗浄も終了する。なお、外洗用電磁弁209とは別に図示しない直列に接続された電磁弁を設けて当該電磁弁で外面の洗浄を終了させても良い。この場合には後述のステップS304の後にステップS303を設けても良い。いずれにせよ後述のステップS305の前までに外洗用電磁弁を全閉に出来れば良い。
【0033】
その後、コントローラ118は、
図4(b)に示すように、試料分注プローブ111bの先端を洗浄液量確認位置403まで上昇させる(ステップS304)。本実施例における洗浄液量確認位置403は、試料分注プローブ111bの先端が基準洗浄位置にあるときに、基準液量の洗浄液を洗浄液吐出口207から吐出した場合の目標とされる洗浄範囲402の中で最も高い位置(第2位置)と同じにしている。
【0034】
そして、コントローラ118は、洗浄液供給ポンプ208からの洗浄液の供給を開始する(ステップS305)。さらに、コントローラ118は、外洗用電磁弁209の開度を徐々に大きくして行く(ステップS306)。外洗用電磁弁209の開度を拡大させる方法としては、連続的に大きくしても、段階的に大きくしても良い。この外洗用電磁弁209の開度の拡大は、洗浄液検知手段としての液面検知器210がONとなるまで行われる(ステップS307)。
【0035】
そして、試料分注プローブ111bの先端に洗浄液が存在することを検知し、液面検知器210がONになると、コントローラ118は、外洗用電磁弁209を全閉にし、液量の調整を完了する(ステップS308)。コントローラ118は、液面検知器210がONとなったときの外洗用電磁弁209の開度、具体的には、このとき外洗用電磁弁209に印加していた電流値をメモリに記憶しておく。その後、コントローラ118は、試料分注プローブ111bの先端の高さを基準洗浄位置401に戻し(ステップS309)、試料分注機構をスタンバイ状態に遷移させる(ステップS310)。
【0036】
図5は、コントローラ118が試料分注プローブ111bの先端を洗浄液量確認位置403に保持し、洗浄液の液量を調整する際の洗浄液の軌跡の変化を示す図である。上述のステップS306で、コントローラ118が、外洗用電磁弁209を全閉の状態から少しだけ開いた状態が
図5(a)であり、更に開度を大きくして試料分注プローブ111bの先端に洗浄液が接触するようになった状態が
図5(b)である。開度を大きくすることで試料分注プローブ111bの先端から吐出される洗浄液の単位時間当たりの液量が増加し、洗浄液吐出口207から吐出される洗浄液の吐出向きが
図5(b)に示すように変化する。このように、試料分注プローブ111bの先端が洗浄液量確認位置403に位置した状態で、洗浄液を検知できれば、試料分注プローブ111bの先端を基準洗浄位置401に位置させた場合でも、目標とする洗浄範囲402の中で最も高い場所まで洗浄水が接触することを担保できる。また、外洗用電磁弁209が全閉の状態から開度を徐々に大きくして行き、液面検知器210が洗浄液を検知し始めた時点での開度を記憶し、次回以降の洗浄動作をこの開度で行えば、必要最小限の液量で洗浄できる。すなわち、外洗用電磁弁209の開度が必要最小限となるよう調整し、調整後の開度による洗浄液量を調整後液量として、基準液量を更新することで、試料分注プローブ111bの先端に水滴が残留するのを抑制する効果がある。
【0037】
また、洗浄液量を調整する外洗用電磁弁209と洗浄を終了させるオンオフ用の電磁弁を直列に設けることで、調整後の開度にした状態でオンオフ用の電磁弁をオンにして洗浄液を供給することができる。これにより、外洗用電磁弁209を全閉から調整後の開度にするまでに流れる洗浄液の無駄を抑制することができる。
【0038】
なお、本実施例では、洗浄液吐出口207を洗浄槽113の上部に設け、上方から斜め下方に向けて洗浄液を吐出する構成を例に挙げて説明した。しかし、
図6に示すように、洗浄液吐出口213を洗浄槽214の下部に設け、下方から斜め上方に向けて洗浄液を吐出する構成であっても、同様の方法により、洗浄液の液量を調整できる。
【実施例2】
【0039】
図7は、実施例2における液量の調整方法を示すフローチャートである。上述の実施例1では、洗浄液検知手段として液面検知器210を用いたが、本実施例では、圧力センサ204を用いる点で、異なっている。
【0040】
まず、洗浄液量を調整するメンテナンスを実行するボタンが押下されると、メンテナンスモードに遷移する(ステップS701)。
【0041】
すると、コントローラ118は、試料分注プローブ111bの先端の高さが基準洗浄位置(第1位置)401となる状態に保持して、試料分注プローブ111bの洗浄を行う(ステップS702)。
【0042】
次に、コントローラ118は、外洗用電磁弁209を全閉にする(ステップS703)。なお、ステップS703は後述のS704の後に設けても良い。実施例1の説明と同様なので詳細な説明は省略する。
【0043】
コントローラ118は、試料分注プローブ111bの先端を洗浄液量確認位置(第2位置)403まで上昇させる(ステップS704)。
【0044】
その後、洗浄液供給ポンプ208からの洗浄液の供給を開始する(ステップS705)。さらに、コントローラ118は、外洗用電磁弁209の開度を徐々に大きくして行く(ステップS706)とともに、シリンジによる吸引を行い(ステップS707)、圧力データを取得する。シリンジによる吸引は、間欠的であっても良いが、連続的の方が調整時間を短縮できるため望ましい。外洗用電磁弁209の開度の拡大は、洗浄液検知手段としての圧力センサ204が圧力データの変動(増加)を確認するまで行われる(ステップS708)。
【0045】
そして、試料分注プローブ111bの先端に洗浄液が存在することを検知し、圧力センサ204がONになると、コントローラ118は、外洗用電磁弁209を全閉にするとともにシリンジによる吸引を停止し、液量の調整を完了する(ステップS709)。その後、コントローラ118は、試料分注プローブ111bの先端の高さを基準洗浄位置401に戻し(ステップS710)、試料分注機構をスタンバイ状態に遷移させる(ステップS711)。
【0046】
実施例1及び実施例2によれば、分注機構に既に備わっている液面検知器210や圧力センサ204を用いることで、特別な装置を用いなくても液量の調整が可能となる。また、洗浄液量確認位置を第2位置以上の高さに設定することで、試料分注プローブ111bの先端から所望の高さまでの外面に洗浄液が確実に接触するような液量に調整でき、洗浄不足による分注精度の低下が抑制できる。さらに、外洗用電磁弁209の開度を徐々に大きくして行き、洗浄液を検知し始めた時点での開度を調整後開度として基準開度を更新し、次回以降の洗浄動作をこの基準開度で行えば、必要最小限の液量で洗浄できる。
【0047】
また、洗浄液量が所定の上限値に達しても、洗浄液検知手段が洗浄液を検知しない場合や、洗浄液量が所定の下限値に達する前に、洗浄液検知手段が洗浄液を検知した場合は、洗浄液供給ポンプ208の運転状況や試料分注プローブ111bの高さ等に問題があると考えられる。このため、外洗用電磁弁209の開度が所定の上限値に達しても洗浄液を検知しない場合や、外洗用電磁弁209の開度が所定の下限値に達する前に洗浄液を検知した場合には、液量調整メンテナンスモードをリトライさせても良い。また、こうした場合には、コントローラ118が警報を発し、洗浄液供給ポンプ208や試料分注プローブ111bを確認するよう作業者に対して促しても良い。
【0048】
なお、上述の実施例1,2では、試料分注プローブ111bに対する洗浄液量を調整する場合について説明したが、試薬分注プローブ120に対する洗浄液量を調整する場合にも適用できる。また、上述の実施例1,2では、洗浄液量の調整を、自動分析装置100のメンテナンスモードとして実行する場合について説明したが、分析実施前や装置起動時などのイニシャライズとして実行する場合であっても良い。さらに、上述の実施例1,2では、洗浄液量を外洗用電磁弁209の開度により調整したが、洗浄液供給ポンプ208の回転数により調整しても良い。回転数を増加させることで単位時間当たりの洗浄液の吐出量を増加させたり、回転数を減少させることで吐出量を減少させたりすることができる。この場合回転数が低い状態から高い状態に徐々に変化させることで同様のことが実現できる。このように洗浄液量の調整には洗浄液供給ポンプ208の回転数変化による水圧調整も含まれる。その他、試料分注プローブ111bの先端から吐出される単位時間当たりの液量を調整できれば他の手段であっても良い。
【0049】
また、洗浄液量確認位置403は、第2位置と完全に同じである必要はなく、例えば、洗浄液量確認位置403を第2位置よりも僅かに高くしても良い。第2位置よりも高い位置としても、洗浄液が届くことを確認できれば、洗浄液の液量として十分であることが担保されるためである。但し、洗浄液の液量が多すぎると、分注プローブ先端に洗浄液が残留する可能性があるので、洗浄液量確認位置403は第2位置に対してあまり高くし過ぎない方が良い。
【実施例3】
【0050】
次に、実施例3に係る試料分注機構の構成について、
図8を用いて説明する。なお、
図8は第1試料分注機構111の構成について示しているが、第2試料分注機構111aも同様の構成となる。
図8に示すように、試料分注機構は、試料分注プローブ111bを先端に備える試料分注アーム111cと、試料分注アーム111cを水平方向に移動する水平移動機構111dと、試料分注アーム111cを鉛直方向(Z方向)に移動する鉛直移動機構111eと、試料分注アーム111cを回転する回転移動機構(図示せず)と、で構成される。試料分注機構は、これらの移動機構によって、試料分注プローブ111bを、試料容器115から試料を吸引する吸引位置、吸引した試料を反応容器102へ吐出する吐出位置、洗浄槽113で試料分注プローブ111bの先端を洗浄する洗浄位置、へそれぞれ移動させる。さらに、試料分注機構は、吸引位置、吐出位置および洗浄位置では、試料容器115、反応容器102および洗浄槽113の高さに合わせて、試料分注プローブ111bを下降(Z方向)させる。
【0051】
なお、本実施例では、試料分注プローブ111bの洗浄を例として説明するが、試薬分注プローブの場合も同様に適用可能である。また、試料と試薬を1本のプローブで分注する装置へも同じく適用可能である。
【0052】
図9は、試料分注プローブ111bの洗浄液量調整手段の構成例を示す図である。
図9に示すように、洗浄液量調整手段は、純水設備(図示せず)から洗浄液を供給する洗浄液供給ポンプ208と、制御電流によって開閉状態を変更可能な比例弁215と、分岐管216と、開閉制御により送液をON/OFFする電磁弁217a,217bと、開閉操作(弁のネジを手作業で回す)で流量を調整可能な調整弁218a,218bと、洗浄液を吐出する洗浄ノズル202a,202bと、洗浄槽113の廃液を貯める廃液タンク220と、各部品間を接続する流路219と、で構成される。また、試料分注機構の試料分注アーム111c内には液面検知器210(例えば静電容量センサ)が搭載される。
【0053】
試料分注プローブ111bの洗浄では、電磁弁217a,217bを開けることで洗浄液供給ポンプ208から送液される洗浄液が、洗浄ノズル202a,202bより吐出され、洗浄ノズル202a,202bからの液流が試料分注プローブ111bの外面と接触することで、試料分注プローブ111bの外面に付着していた汚れが除去される。
【0054】
本実施例では、1つの比例弁215で2つの洗浄ノズル202a,202bからの洗浄液量を調整する例を示すが、1つの比例弁215で3つ以上の洗浄ノズルの液量調整も可能である。また、各洗浄ノズルにそれぞれ1つの比例弁を接続して制御しても良い。1つの比例弁215で複数の洗浄ノズル202a,202bの液量調整を行う場合は、調整弁218a,218bで各洗浄ノズル202a,202bからの液量が同程度となるように事前に調整しておくことが望ましい。
【0055】
洗浄ノズル202a,202bの先端の吐出口は開放されているため、洗浄液の吐出開始直後は、流路219の洗浄ノズル202a,202b側に空気が入ることがあり、水が跳ねる場合がある。そのため、液面検知器210の誤検知を回避するには、洗浄ノズル202a,202bから洗浄液の吐出を開始した後に、試料分注プローブ111bの下降を開始する順とすることが望ましい。
【0056】
図10は、実施例3における、試料分注プローブ111bの下降位置の例を示す図である。また、
図10(a)は、試料分注プローブ111bを洗浄するときの基準液量で吐出した場合の液流状態、
図10(b)は、基準液量よりも液量が低下した場合の液流状態、もそれぞれ示している。さらに、
図10において、試料分注プローブ111bの洗浄時における水平位置を洗浄位置301で示し、洗浄液の液量確認時における試料分注プローブ111bの水平位置を液量確認位置302で示す。
【0057】
図10に示すように、制御部は、洗浄液の液量確認時に、試料分注プローブ111bの洗浄時と比べ、試料分注プローブ111bの水平位置を、洗浄ノズル202に対して下流側に位置させる。すなわち、制御部は、液量確認時、洗浄時(分析時)と比べて、洗浄ノズル202の吐出口から遠い場所で、試料分注プローブ111bを下降させる。なお、以降の説明では、液量確認位置302を1つ設けた例で説明するが、液量確認位置302を2カ所以上設けることも可能である。なお、液量確認位置302と洗浄位置301との水平距離は、洗浄ノズル202の直径に対して5倍以上離すことが望ましい。
【0058】
洗浄ノズル202から斜めに吐出される液流は、洗浄ノズル202に近い側では洗浄液流300の上端位置の変化が小さく、洗浄位置301における洗浄液流の上端位置の検出高さは、基準液量のとき(303a)と液量低下時(303b)の差は小さい。しかし、洗浄ノズル202から離れた場所では洗浄液流300の上端位置の変化が大きく、液量確認位置302における洗浄液流の上端位置の検出高さは、基準液量のとき(304a)と液量低下時(304b)の差は大きい。このため、洗浄ノズル202から遠い液量確認位置302で、洗浄液流の上端位置を検出した方が、洗浄水量の変化を容易に検出でき、検出感度が高くなる。なお、洗浄ノズル202から吐出する洗浄液の向きは、下から上へ斜めに吐出する場合でも、重力で液流は放物線を描くため、
図10と同じ向きでなくても良い。
【0059】
図11は、洗浄ノズルから一定時間内に吐出される洗浄液量と、基準位置から洗浄液上端検出までのプローブ下降距離と、の関係を示すグラフである。
図11に示すように、基準液量のときのプローブ下降距離と液量低下時のプローブ下降距離との差は、洗浄位置301での値に比べ、液量確認位置302での値の方が、変化が大きい。
【0060】
ここで、洗浄液流の下流側ほど液流の形状が不安定になりやすく、洗浄液のしぶき(飛散)も発生しやすくなる。そのため、試料分注プローブ111bの下降距離(検出位置)のばらつきが大きくなることがある。そこで、本実施例における制御部は、洗浄液の液量確認時に、試料分注プローブ111bを下降させる速度を、洗浄時に、試料分注プローブ111bを下降させる速度よりも遅くする。このように、試料分注プローブ111bの下降速度を洗浄時より遅くすることで、洗浄液との接触検知信号を液面検知器210が誤検知してしまうのが低減され、検出位置のばらつきが抑制される。
【0061】
一般の自動分析装置には、成分分析を行う分析動作と分析動作の前に装置を初期化するリセット動作(あるいはメンテナンス動作)がある。本実施例では、分析動作とリセット動作で洗浄位置301を使い、リセット動作でのみ液量確認位置302を使う。分析動作は、多数の試料を短時間で処理することが求められるため、試料分注プローブ111bの洗浄も短時間であり、洗浄液流の上端位置は、ばらつかないことが望ましい。そのため、分析動作時には、洗浄液流の上端位置の変化が少ない洗浄位置301で洗浄を行い、洗浄液量の測定を行うリセット動作の洗浄液量調整時には洗浄液流の上端位置の変化が大きい液量確認位置302で洗浄液流の上端位置の測定を行う。これにより、洗浄時は洗浄範囲のばらつきを抑え、液量確認時は洗浄液量の変化を容易に検出できる。
【0062】
図12は、プローブ洗浄およびプローブ洗浄液量調整のための制御ブロックの構成例を示す図である。自動分析装置制御部501は、装置全体を制御するための中央処理部であり、GUI502を介してユーザからの検査指示などの指令を受け取る。分注機構は、分注アーム制御手段503から分注アーム水平移動手段504や分注アーム上下移動手段505への指示で、分注プローブの位置決めを行う。
【0063】
分析時の動作では、プローブ洗浄制御手段506からの指示で分注プローブを洗浄位置301に移動することで洗浄処理を行い、洗浄液量調整時の動作では、液量検出・調整制御手段507からの指示で分注プローブを液量確認位置302に移動することで液量の検出処理を行う。なお、分析時は高速で処理する必要があるため、分注アーム上下移動手段505は、分析時には高速移動を行い、洗浄液量調整(液面検知器による洗浄液流の上端位置の検出)時には低速移動を行うよう、速度を切り替えられる。分析時と液量調整時の切り替えは、通常洗浄モード/液量検出・調整モード切替手段508で行われる。
【0064】
洗浄液を吐出するための電磁弁217の開閉は、電磁弁制御手段509で行われ、プローブ洗浄時や液量検出・調整時の任意の時間に、洗浄水が吐出される。前述の通り、液量検出時には、分注プローブが上方より低速で下降し、洗浄液との接触が液面検知器210で検知される。検知信号は、洗浄液接触判定手段510(処理内容は後述する)と液量検出・調整制御手段507を介して、液流検出高さテーブル511に格納される。液量検出・調整制御手段507は、液流検出高さテーブル511に格納された情報を基に、比例弁215の制御要否や制御量を判断する。比例弁215は、比例弁制御手段512からの制御電流が変化することによって、開閉状態が制御される。比例弁215を制御した時の制御電流と、その時に測定された液流検出高さの情報は、比例弁制御テーブル513で管理され、次回以降の比例弁215の制御の際に参照することで、より少ない回数の操作で洗浄液量を目標の状態にできる。
【0065】
図13は、洗浄液量を確認する際の洗浄液量調整手段の動作を示すフローチャートである。なお、
図13では省略しているが、分注プローブの下降動作終了後に上昇して元の位置に戻る動作が入る。
図7に示すように、洗浄液量の確認動作には、洗浄状態の確認処理601と、液量調整有無の確認処理602と、の2つがある。
【0066】
ここで、洗浄状態の確認処理601について、説明する。洗浄状態の確認処理601は、分析動作時に使う洗浄位置301で行う。洗浄位置301は、前述の通り液流変化による洗浄液流の上端位置の変化が少ないため、液流を調整するためではなく、分注プローブの下降制御の確認に用いる。
【0067】
図13では、分注プローブが洗浄位置301の上方まで移動した後の処理を示している。まず、電磁弁217の開動作により、洗浄液の吐出が開始される(S603)。その後、分注プローブが下降を開始する(S604)。この分注プローブの下降動作は、液面検知信号が検出されるまで行われる(S605)。液面検知信号が検出された後は、洗浄液流の液流検出高さ(高さA)が液流検出高さテーブル511に記録される(S606)。そして、電磁弁217が閉じる(S607)。
【0068】
以上の動作によって、分析動作時に分注プローブを洗浄するために必要な下降量を確認できる。分注プローブは、定期的に交換される部品であるため、交換後の分注プローブと洗浄液流との位置関係がずれる可能性がある。そのため、洗浄状態の確認処理601によって洗浄範囲を確認することが望ましい。
【0069】
分注プローブの交換後に、ばらつきの少ない洗浄位置301で分注プローブの下降量を確認することで、分注プローブの個体差による下降量の変化を確認できる。確認した分注プローブの個体差による下降量の差を用い、液流検出高さテーブル511や比例弁制御テーブル513にある下降量の値を補正することで、分注プローブ交換前後に発生し得る測定ずれが低減できる。
【0070】
次に、液量調整有無の確認処理602について、説明する。この液量調整有無の確認処理602では、まず、洗浄位置301から液量確認位置302に移動する(S608)。その後、電磁弁217の開動作により、洗浄液の吐出が開始される(S609)。その後、分注プローブが下降する(S610)。このときの分注プローブの下降速度は、分析時の洗浄動作における分注プローブの下降速度よりも遅くなっている。低速で下降することで、洗浄液との接触検知信号を液面検知器210が誤検知してしまうのが抑制され、洗浄液の上端位置の検出ばらつきを低減できる。分注プローブの下降動作は、液面検知信号が検出されるまで行われる(S611)。液面検知信号が検出された後は、洗浄液流の液流検出高さ(高さB)が液流検出高さテーブル511に記録される(S612)。そして、電磁弁217が閉じる(S613)。
【0071】
記録された高さAの値と設計値との差が大きい場合は、分注プローブの位置調整や下降距離の修正が必要となる。記録された高さBの値と設計値との差が大きい場合は、液量調整が必要と判断される。なお、洗浄状態の確認処理601は省略し、液量調整有無の確認処理602のみを実施するようなフローも採用可能である。
【0072】
次に、
図14は、比例弁215による液量調整動作を示すフローチャートである。なお、
図14においても、分注プローブの下降動作終了後に上昇して元の位置に戻る動作が省略されている。
【0073】
液量調整有無の確認処理602で確認が必要となった場合、比例弁215が操作される。比例弁215の操作は、液量調整有無の確認処理602の後であるため、分注プローブは液量確認位置302にある。まず、電磁弁217の開動作により、洗浄液の吐出が開始される(S621)。その後、比例弁215制御テーブル513から電流操作量が抽出される(S622)。この電流操作量に基づいて、比例弁215の制御電流が変更される(S623)。比例弁215の制御電流が変更されると、洗浄液の液量が変化する。そこで、洗浄液の液量変化を確認するため、まず、分注プローブが下降する(S624)。次に、液面検知信号が検出されると(S625)、分注プローブの下降高さが記録される(S626)。比例弁215の操作後は、操作回数(カウントアップ処理含む)と操作量(電流値)が記録される(S627)。その後、記録された高さBと設計値との差が算出され(S628)、その差が一定値以下かどうか判断される(S629)。差が一定値より大きい場合は、S622からS628を繰り返し行うことで、洗浄液流の液位が設計値の一定値以内に入るように調整できる。調整後は、電磁弁217が閉じる(S630)。併せて、操作回数のカウンタ値のクリア、分注プローブの初期位置への移動が行われる。
【0074】
操作回数のカウンタは、一定回数以上の操作でも洗浄液流が設計値内に調整できない異常状態に備え、操作不能を回避するための処理として設けられる。実際の処理では、操作回数のカウンタの値を確認して、一定値以上のときに、繰り返しループから抜ける処理も設けられる。また、比例弁215の操作量は、毎回の操作によってどの程度、洗浄液流の上端位置が変化するかを記録して、次回以降の比例弁215の操作で参照することにより、少ない回数で目標液量に調整できる。また、記録された比例弁215の電流値と洗浄液流の上端位置の変化量を、PID制御器に入力し、このPID制御器によって比例弁215の操作量を制御しても良い。
【0075】
図15は、洗浄液の液量検出の動作を示すフローチャートである。洗浄液量の確認および比例弁215の操作における液量検出は、次のようにして行われる。
【0076】
まず、液面検知器210からの信号が取り込まれ(S641)、取り込んだ信号の大きさが閾値(液面との接触を判断できるレベル)以上かが判断される(S642)。取り込んだ信号の大きさが閾値未満の場合は、カウンタクリアがされる(S643)。取り込んだ信号の大きさが閾値以上の場合は、カウントアップがされる(S644)。このカウンタは、閾値を超える信号が連続して得られたかを判断するために用いられ、カウントの回数か継続して検出できた時間が記録される。そして、カウンタ値が閾値を超えたかどうかの判断(S645)によって、カウンタ値が閾値を超えるまで、信号の取り込みが繰り返される。
【0077】
図16は、比例弁制御テーブル513に記録された、比例弁215の操作量(電流値)と、洗浄液の液量変化(洗浄液流の上端位置)と、の関係の一例を示す図である。前述の洗浄液量の確認動作や、比例弁215による液量調整動作の際に得られた情報から、比例弁215の操作量と液面位置との関係が分かる。この関係を基に比例弁215の操作を行うことで、操作前の状態701から目標状態702まで短時間で調整が可能となる。比例弁制御テーブル513を液量確認のたびに更新することで、流路の状態による特性(操作量と流量の関係)の変化も更新される。
【0078】
図17は、液流検出の動作フローにおける液面検知信号の一例を示す図である。横軸は時間、縦軸は液面検知器210から得られるセンサ信号(電圧値)である。液流付近に分注プローブが接近すると、信号ノイズなどで信号レベルの閾値を超える信号が入ることがある。信号ノイズによる誤検知を防ぐため、本実施例の液流検出の動作フローでは、信号レベルの閾値を超えた回数(あるいは時間)のカウンタが設けられている。複数回連続してカウントすることで、洗浄液との接触を検知したと判定する。例えば、カウンタの閾値を3とした場合は、
図17に示す通り3回連続して閾値を超える値801が検出された点で、液面検知を判断することで、信号ノイズによる誤検出を防ぐことができる。
【0079】
以上述べたように、本実施例によれば、洗浄時は、洗浄範囲のばらつきを抑えつつ、液量確認時は、洗浄液量の変化を高感度に検出することで、洗浄液量の調整精度を高めた自動分析装置が実現できる。
【実施例4】
【0080】
洗浄液の上端位置を検出する際のばらつきを低減するため、実施例4では、比例弁215の制御により、洗浄液流の形状を安定化させてから、洗浄液流の上端位置を検出するものである。
【0081】
図18は、洗浄液流の流速が速いときの液流状態と、試料分注プローブ111bの下降位置の例を示す図である。
図19は、比例弁215の操作量(電流)と流量変化(洗浄液流の上端位置)との関係を示す図である。実施例4は、装置構成は実施例3と同じであるが、洗浄液量の確認動作が異なる。
【0082】
洗浄ノズル202の形状や流路の設計によっては、洗浄液流の流速が速いため、
図18のように、液流形状が不安定になる場合がある。液流形状が不安定の状態では、分注プローブの下降タイミングによっては、液面高さの平均位置よりも低く検出してしまうことがある。洗浄ノズル202の設置角度に傾きがある場合や、洗浄位置301が洗浄ノズル202から遠い場合は、液流の形状は放物線を描き、液流の凹凸の傾向は基準(安定した洗浄液の上端)よりも凹む(低くなる)傾向が強い。
【0083】
本実施例では、洗浄液の流速を洗浄時の流速よりも遅くすることで、液量確認時の液流形状を安定化させる。流速を遅くするには、比例弁215の制御電流を下げれば良く、現在設定されている洗浄時の操作量(電流値)から一定量電流値を下げる操作を行う。洗浄液流の流速を遅くして液流形状を安定させた状態で、液量確認位置302で洗浄液流の上端位置の検出を行うことで、液流形状が不安定となることによる誤検出を抑制できる。
【0084】
洗浄時の液流の液面高さは、電流の変更量901(洗浄時の設定902から液量確認時の設定903の差)から推定できる。液面高さの推定では、比例弁215の操作量に対する液面高さの変化量が分かるテーブルを事前に用意することが望ましいが、複数の電流状態における洗浄液流の上端位置を測定することで、同テーブルは装置出荷後も作成可能である。
【0085】
本実施例によれば、流速の速い洗浄液流においても、液流形状の影響を受けずに洗浄時の液流状態を一定に保つことが可能である。なお、本実施例を実施例3と組わせて使っても良い。例えば、実施例3の流量調整が終わった後で、調整後の液流状態を確認するために、液量調整後の比例弁215の制御電流から電流を一定値下げて、液量を確認することが可能である。
【0086】
なお、実施例3,4では、洗浄液量を検出する際に液面検知器210が用いられたが、洗浄液を検知できるものであれば、これに限られない。例えば、分注プローブの流路に接続された圧力センサを用いて洗浄液を検知することも可能である。
【0087】
また、実施例3,4において、液面高さの検出を複数回行い、検出結果(液位)の平均化や異常値(前後の電流状態で測定した値との差が大きい場合)の除去など、一般的な信号処理を併せることで、検出精度の向上が可能である。また、実施例3,4は、分注アームの可動軸数や方向と関係なく、洗浄液流の軸方向において、上流側に洗浄位置、下流側に液量確認位置を設け、各位置に分注プローブを移動できれば実施可能である。
【0088】
上述の実施例1~4は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0089】
100…自動分析装置
101…反応ディスク
102…反応容器
103…洗浄機構
104…分光光度計
105…撹拌機構
106…洗浄槽(撹拌機構用)
107…第1試薬分注機構
107a…第2試薬分注機構
108…洗浄槽(試薬分注機構用)
109…試薬ディスク
110…試薬ボトル
111…第1試料分注機構
111a…第2試料分注機構
111b…試料分注プローブ
111c…試料分注アーム
111d…水平移動機構
111e…鉛直移動機構
112…洗剤ボトル
113…洗浄槽(試料分注機構用)
115…試料容器
116…試料ラック
117…試料搬送機構
118…コントローラ
120…試薬分注プローブ
121…試薬用シリンジ
122…試料用シリンジ
201…チューブ
202a,202b…洗浄ノズル
203…ニップル
204…圧力センサ
205…上部開口部
206…下部開口部
207…洗浄液吐出口
208…洗浄液供給ポンプ
209…外洗用電磁弁
210…液面検知器
211…送液ポンプ
212…内洗用電磁弁
213…洗浄液吐出口
214…洗浄槽(試料分注機構用)
215…比例弁
216…分岐管
217a,217b…電磁弁
218a,218b…調整弁
219…流路
220…廃液タンク
300a,300b…洗浄液流
301…洗浄位置
302…液量確認位置
401…基準洗浄位置
402…洗浄範囲
403…洗浄液量確認位置
501…自動分析装置制御部
502…GUI
503…分注アーム制御手段
504…分注アーム水平移動手段
505…分注アーム上下移動手段
506…プローブ洗浄制御手段
507…液量検出・調整制御手段
508…通常洗浄モード/液量検出・調整モード切替手段
509…電磁弁制御手段
510…洗浄液接触判定手段
511…液流検出高さテーブル
512…比例弁制御手段
513…比例弁制御テーブル
601…洗浄状態の確認処理
602…液量調整有無の確認処理