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特許7455159有機発光素子封止用組成物、およびこれから製造される有機層を含む有機発光表示装置
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  • 特許-有機発光素子封止用組成物、およびこれから製造される有機層を含む有機発光表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】有機発光素子封止用組成物、およびこれから製造される有機層を含む有機発光表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/844 20230101AFI20240315BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20240315BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240315BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240315BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240315BHJP
【FI】
H10K50/844
C08F2/46
C08F290/06
H10K50/10
H10K59/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022094961
(22)【出願日】2022-06-13
(65)【公開番号】P2023001066
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0078432
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】南 成 龍
(72)【発明者】
【氏名】韓 明 淑
(72)【発明者】
【氏名】李 知 娟
(72)【発明者】
【氏名】朴 昶 遠
(72)【発明者】
【氏名】柳 智 鉉
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-523549(JP,A)
【文献】特開2019-140003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0372704(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0150258(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第103309162(CN,A)
【文献】特表2017-504174(JP,A)
【文献】特開2015-189977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0342674(US,A1)
【文献】特開2016-037599(JP,A)
【文献】特開2019-104892(JP,A)
【文献】特開2013-202972(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0329524(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/844
C08F 2/46
C08F 290/06
H10K 50/10
H10K 59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記数式1で表されるCLD値が59.41~69.89である、有機発光素子封止用組成物であって、
【数1】

前記数式1中、
totalは、前記有機発光素子封止用組成物に含まれる光硬化性モノマーのモル数の合計モル数であり、
Mxは、前記有機発光素子封止用組成物に含まれるx番目の光硬化性モノマーのモル数であり、
Nxは、前記組成物に含まれるx番目の光硬化性モノマーの光硬化性反応基の個数で、
xは、1以上の整数である:
前記有機発光素子封止用組成物は、第1光硬化性モノマー、第2光硬化性モノマー、および開始剤を含み、
前記第1光硬化性モノマーは、光硬化性反応基を2個以上有するモノマーであって、下記化学式1で表される2官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および下記化学式3で表されるシリコン系光硬化性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記第2光硬化性モノマーは、光硬化性反応基を1個有するモノマーであって、下記化学式5で表される化合物、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、およびイソステアリル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種である、有機発光素子封止用組成物:
【化1】

前記化学式1中、
Aは、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基であり、
およびAは、それぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
およびZは、それぞれ独立して、下記化学式2で表される基である:
【化2】

前記化学式2中、*は連結部位であり、Rは、水素原子またはメチル基である:
【化3】

前記化学式3中、
15およびR16は、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキレンエーテル基、*-N(R')-R”-*(この際、*は連結部位であり、R'は置換または非置換の炭素数1~30のアルキル基であり、R”は置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基である)、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基、置換もしくは非置換の炭素数7~30のアリールアルキレン基、または*-O-R”-*(この際、*は連結部位であり、R”は置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基である)であり、
、X、X、X、X、およびXは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルエーテル基、*-N(R')(R")(この際、*は連結部位であり、R'およびR"は、同一または異なり、水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基である)、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数7~30のアリールアルキル基であり、
およびYは、それぞれ独立して、下記化学式4で表される基であり、
【化4】

前記化学式4中、*は連結部位であり、R17は、水素原子またはメチル基であり、
nは、0~30の数である:
【化5】

前記化学式5中、
13は、水素原子またはメチル基であり、sは0~10の整数であり、
14は、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリールオキシ基である。
【請求項2】
前記第1光硬化性モノマー、前記第2光硬化性モノマー、および前記開始剤の合計質量を100質量部としたとき、前記第1光硬化性モノマーの含有量は35質量部~90質量部であり、前記第2光硬化性モノマーの含有量は5質量部~60質量部であり、前記開始剤の含有量は1質量部~10質量部である、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項3】
前記有機発光素子封止用組成物は、25±2℃の温度条件下で、粘度が7mPa・s~100mPa・sである、請求項1または2に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の有機発光素子封止用組成物の硬化物を含有する有機層を含む、有機発光表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子封止用組成物、およびこれから製造される有機層を含む有機発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、外部の水分、酸素などが浸透すると、損傷しやすく、機能の喪失によって信頼性が低下し得る。よって、有機発光素子は、有機発光素子封止用組成物で形成される有機層および無機層を含む封止層によって封止されなければならない。
【0003】
封止層は、有機層と無機層とが繰り返し形成される構造を含んでもよい。例えば、有機発光素子に有機層-無機層-有機層-無機層などのように、有機層と無機層が交互に繰り返し形成されることによって封止層を形成する。無機層は、有機層とは異なり、無機物で形成され得る。一般に、無機層は、プラズマ工程、真空工程、例えば、スパッタリング、化学気相蒸着、プラズマ化学気相蒸着、蒸発、昇華、電子サイクロトロン共鳴-プラズマ蒸気蒸着、およびこれらの組み合わせにより形成され得る。
【0004】
しかしながら、本発明者らは、有機層に対して無機層を交互に形成する場合、有機層の膜強度が高くないと、有機層にしわが発生することによって有機発光素子の信頼性が低下することを確認した。有機層の膜強度を高めるためには、有機発光素子封止用組成物の光硬化率を高める方法が考慮され得る。しかし、光硬化率を高めたとしても、膜強度を高めるのには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0150255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、膜強度に優れた有機層を形成することができる有機発光素子封止用組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、無機層を繰り返し形成したとき、しわの発生を最小化することによって、信頼性に優れた有機層を形成することができる有機発光素子封止用組成物を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、適正な粘度を有しながら表面が均一な有機層を形成することができ、硬化率およびインクジェットのジェッティング性(吐出性)に優れた有機発光素子封止用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、下記数式1で表されるCLD(Cross Linking Density)値が50以上である、有機発光素子封止用組成物を提供する:
【0010】
【数1】
【0011】
前記数式1中、
totalは、前記有機発光素子封止用組成物に含まれる光硬化性モノマーのモル数の合計であり、
は、前記有機発光素子封止用組成物に含まれるx番目の光硬化性モノマーのモル数であり、
は、前記有機発光素子用組成物に含まれるx番目の光硬化性モノマーの光硬化性反応基の個数であり、
xは、1以上の整数である。
【0012】
本発明の有機発光素子表示装置は、本発明の有機発光素子封止用組成物から形成される有機層を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、膜強度に優れた有機層を形成することができる有機発光素子封止用組成物が提供されうる。
【0014】
また、本発明によれば、無機層を繰り返し形成したとき、しわの発生を最小化することによって、信頼性に優れた有機層を形成することができる有機発光素子封止用組成物が提供されうる。
【0015】
さらに、本発明によれば、適正な粘度を有しながら表面が均一な有機層を形成することができ、硬化率およびインクジェットのジェッティング性に優れた有機発光素子封止用組成物が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置の断面概略図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る有機発光表示装置の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面を参考にして、以下の実施形態によって、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明を詳細に説明する。本発明は、様々な相違する形態で具現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。図面において、本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似する構成要素に対しては、同一の図面符号を付した。図面において、各構成要素の長さおよび大きさは、本発明を説明するためのものであって、本発明が図面に記載した各構成要素の長さおよび大きさに制限されるものではない。
【0018】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0019】
本明細書において、「置換」は、別途の定義がない限り、本発明の官能基のうち少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子(F、Cl、BrまたはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、イミノ基(=NH、=NR、Rは、炭素数1~10のアルキル基である)、アミノ基(-NH、-NH(R')、-N(R”)(R’’')、R'、R”、およびR’’’は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である)、アミジノ基、ヒドラジンもしくはヒドラゾン基、カルボキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~30のヘテロアリール基、または炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基で置換されることを意味する。
【0020】
本明細書中の数値範囲の記載において、「X~Y」は、X以上Y以下(X≦、そして、≦Y)を意味する。
【0021】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物(以下、単に「本発明に係る組成物」とも称する)は、膜強度が高い有機層を形成することができる。下記で説明するが、有機層上に無機層が蒸着されることによって、有機発光素子の封止の役割をすることができる。ところが、一般に、有機発光素子封止層は、有機層と無機層とが繰り返し形成されることによって、有機発光素子の封止の役割をすることができる。無機層は、特に制限されないが、化学気相蒸着(CVD)によって形成され得る。本発明は、膜強度が高い有機層を形成することによって、CVDによる繰り返しの無機層の形成にもかかわらず、有機層のしわ発生を最小化し、信頼性に優れた有機層を形成することができる有機発光素子封止用組成物を提供する。また、本発明に係る組成物は、インクジェット工程に適した粘度を有することによって、インクジェットのジェッティング性(吐出性)に優れ、表面が均一な有機層を形成することができる。
【0022】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物は、下記数式1で表されるCLD(Cross Linking Density)値が50以上である:
【0023】
【数2】
【0024】
上記数式1中、
totalは、上記有機発光素子封止用組成物に含まれる光硬化性モノマーのモル数の合計であり、
は、上記有機発光素子封止用組成物に含まれるx番目の光硬化性モノマーのモル数であり、
は、上記有機発光素子封止用組成物に含まれるx番目の光硬化性モノマーの光硬化性反応基の個数であり、
xは、1以上の整数である。
【0025】
一具体例において、xは、2以上の整数であってもよく、好ましくは2~5の整数、例えば2、3、4、または5であってもよい。該光硬化性反応基は、アクリレート基(アクリロイル基)またはメタクリレート基(メタクリロイル基)であってもよい。Nは、1以上の整数であってもよく、好ましくは1~6の整数、例えば1、2、3、4、5、または6であってもよい。
【0026】
上記のCLD値は、組成物に含まれる光硬化性モノマーが光の照射により硬化したとき、高い架橋密度で硬化することによって膜の硬度が高くなり、本発明の効果を具現できるどうかを判断する基準になる。すなわち、CLD値は、光硬化性モノマーのうち、光硬化性反応基を2個以上有する各光硬化性モノマーが光の照射により硬化したとき、2箇所以上で架橋することによって、架橋密度を高めることができるかどうかを判断する基準になる。CLD値は、組成物の光硬化率とは異なる。光硬化率は、組成物に含まれる光硬化性モノマーのうち硬化したモノマーの比率を示すものである一方、CLD値は、光硬化性モノマーのうち2個以上の光硬化性反応基を有する各光硬化性モノマーが高い架橋密度で硬化することによって、膜強度を高めることができるかどうかを判断するものである。
【0027】
上記Nは、上記有機発光素子封止用組成物に含まれるx番目の光硬化性モノマーのモルごとの光硬化性反応基の個数であってもよい。
【0028】
例えば、上記CLD値は、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、または90であってもよい。CLD値は、好ましくは50~90、より好ましくは50~80、さらに好ましくは50~70であってもよい。
【0029】
一具体例において、本発明に係る有機発光素子封止用組成物から形成される有機層は、膜強度(hardness)が200kPa以上であることが好ましく、例えば、200kPa、205kPa、210kPa、215kPa、220kPa、225kPa、230kPa、235kPa、240kPa、245kPa、250kPa、255kPa、260kPa、265kPa、270kPa、275kPa、280kPa、285kPa、290kPa、295kPa、または300kPaであってもよく、より好ましくは200kPa~300kPaであってもよい。上記範囲内であれば、本発明の効果を容易に具現することができる。なお、膜強度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0030】
本発明に係る組成物は、上記数式1で表されるCLD値が50以上になり得るなら、その組成に特別な制限はない。一具体例において、本発明に係る組成物は、第1光硬化性モノマー、第2光硬化性モノマー、および開始剤を含む。
【0031】
第2光硬化性モノマーの含有量に対する第1光硬化性モノマーの含有量の比(質量比)は、好ましくは0.5~6であってもよく、例えば、0.5、0.7、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、または6であってもよく、より好ましくは0.7~5.5であってもよい。上記範囲内であれば、本発明の効果を容易に具現することができる。
【0032】
以下では、本発明の一実施形態に係る組成物の各成分について、詳細に説明する。
【0033】
(第1光硬化性モノマー)
第1光硬化性モノマーは、光硬化性反応基を2個以上有するモノマーを含んでもよい。好ましくは、第1光硬化性モノマーは、光硬化性反応基を2個~6個有してもよい。
【0034】
一具体例において、第1光硬化性モノマーは、シリコンを有しない非シリコン系モノマー、およびシリコンを有するシリコン系光硬化性モノマーの少なくとも一方を含んでもよい。
【0035】
(非シリコン系光硬化性モノマー)
非シリコン系光硬化性モノマーは、下記化学式1で表される2官能(メタ)アクリレートを含んでもよいが、これに制限されない。
【0036】
【化1】
【0037】
上記化学式1中、
Aは、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基であり、
およびAは、それぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
およびZは、それぞれ独立して、下記化学式2で表される基である。
【0038】
【化2】
【0039】
上記化学式2中、*は連結部位であり、Rは水素原子またはメチル基である。
【0040】
好ましくは、Aは、置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基である。この場合、本発明の効果を容易に具現することができる。例えば、上記化学式1で表される化合物は、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、およびシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0041】
非シリコン系光硬化性モノマーは、上記化学式1で表される2官能(メタ)アクリレート以外に、3官能以上の(メタ)アクリレートとして、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、およびヘキサ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。トリ(メタ)アクリレートは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどの炭素数3~20のトリオール、テトラオール、ペンタオールまたはヘキサオールのトリ(メタ)アクリレートを含んでもよい。テトラ(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの炭素数4~20のテトラオール、ペンタオールまたはヘキサオールのテトラ(メタ)アクリレートを含んでもよい。ペンタ(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの炭素数4~20の、ペンタオールまたはヘキサオールのペンタ(メタ)アクリレートをさらに含んでもよい。ヘキサ(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの炭素数4~20のヘキサノールのヘキサ(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0042】
すなわち、上記第1光硬化性モノマーは、上記化学式1で表される2官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0043】
(シリコン系光硬化性モノマー)
シリコン系光硬化性モノマーは、下記化学式3で表され得る。
【0044】
【化3】
【0045】
上記化学式3中、
15およびR16は、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキレンエーテル基、*-N(R')-R”-*(この際、*は連結部位であり、R'は置換または非置換の炭素数1~30のアルキル基であり、R”は置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基である)、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基、置換もしくは非置換の炭素数7~30のアリールアルキレン基、または*-O-R”-*(この際、*は連結部位であり、R”は置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基である)であり、
、X、X、X、X、およびXは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキルエーテル基、*-N(R')(R”)(この際、*は連結部位であり、R'およびR”は、同一または異なり、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基である)、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数7~30のアリールアルキル基であり、
およびYは、それぞれ独立して、下記化学式4で表される基であり、
【0046】
【化4】
【0047】
上記化学式4中、*は連結部位であり、R17は水素原子またはメチル基である、
nは、0~30の数である。
【0048】
上記「単結合」とは、SiとYとが何ら原子を介在せずに直接連結(Y-Si)するか、またはSiとYとが何ら原子を介在せずに直接連結(Si-Y)することを意味する。
【0049】
一具体例において、R15およびR16は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキレン基または単結合であってもよい。
【0050】
一具体例において、X、X、X、X、X、およびXのうち少なくとも1つは、置換または非置換の炭素数6~30のアリール基であってもよい。具体的には、X、X、X、X、X、およびXは、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基であり、この際、X、X、X、X、X、およびXのうち少なくとも1つは、炭素数6~10のアリール基であってもよい。さらに具体的には、X、X、X、X、X、およびXは、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基であり、この際、X、X、X、X、X、およびXのうち1つ、2つ、3つまたは6つは、炭素数6~10のアリール基であってもよい。より具体的には、X、X、X、X、X、およびXは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、フェニル基、またはナフチル基であり、この際、X、X、X、X、X、およびXのうち1つ、2つ、3つまたは6つは、フェニル基またはナフチル基であってもよい。nは、1~5の整数であってもよい。
【0051】
他の具体例において、X、X、X、X、X、およびXは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~30のアルキル基であり、好ましくは置換または非置換の炭素数1~5のアルキル基、より好ましくはメチル基であってもよい。
【0052】
具体的には、シリコン系光硬化性モノマーは、下記化学式3-1~3-7で表されるモノマーの少なくとも1種でありうる。
【0053】
【化5-1】
【0054】
【化5-2】
【0055】
上記化学式3-7中、nは、1~31の数である。
【0056】
上記化学式3で表されるモノマーとしては、通常の方法で製造してもよいし、商業的に市販されている製品を使用してもよい。例えば、上記化学式3で表されるモノマーは、1つ以上のシリコンが連結されたアリール基を有するシロキサン化合物と、炭素数を延長させる化合物(例:アリールアルコール)とを反応させた後、これと(メタ)アクリロイルクロリドとを反応させることによって製造できるが、これに制限されない。または、上記化学式3で表されるモノマーは、1つ以上のシリコンが連結されたアリール基を有するシロキサン化合物と(メタ)アクリロイルクロリドとを反応させることによって製造できるが、これに制限されない。
【0057】
第1光硬化性モノマーは、第1光硬化性モノマー、第2光硬化性モノマー、および開始剤の合計質量を100質量部としたとき、好ましくは35質量部~90質量部、例えば、35質量部、36質量部、37質量部、38質量部、39質量部、40質量部、41質量部、42質量部、43質量部、44質量部、45質量部、46質量部、47質量部、48質量部、49質量部、50質量部、51質量部、52質量部、53質量部、54質量部、55質量部、56質量部、57質量部、58質量部、59質量部、60質量部、61質量部、62質量部、63質量部、64質量部、65質量部、66質量部、67質量部、68質量部、69質量部、70質量部、71質量部、72質量部、73質量部、74質量部、75質量部、76質量部、77質量部、78質量部、79質量部、80質量部、81質量部、82質量部、83質量部、84質量部、85質量部、86質量部、87質量部、88質量部、89質量部、または90質量部の含有量で含まれてもよく、好ましくは40質量部~85質量部の含有量で含まれてもよい。上記範囲内では、本発明の数式1のCLD値が50以上に容易に到達し得る。
【0058】
(第2光硬化性モノマー)
第2光硬化性モノマーは、光硬化性反応基を1個有するモノマーを含んでもよい。第2光硬化性モノマーは、光硬化性反応基を1個有するので、本発明の数式1のCLD値が50以上に到達することに貢献できないが、本発明に係る組成物が適正な粘度を有することによって、インクジェットのジェッティング性(吐出性)を良好にし、均一な表面を有する有機層を形成することができる。
【0059】
第2光硬化性モノマーは、芳香族を有する芳香族系光硬化性モノマー、及び芳香族基を有しない非芳香族系光硬化性モノマーのうち1種以上を含んでもよい。
【0060】
(芳香族系光硬化性モノマー)
芳香族系光硬化性モノマーは、下記化学式5で表される化合物を含んでもよいが、これに制限されない:
【0061】
【化6】
【0062】
上記化学式5中において、
13は水素原子またはメチル基であり、sは0~10の整数であり、
14は置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリールオキシ基である。)
例えば、上記化学式5中のR14は、フェニルフェノキシエチル基、フェノキシエチル基、ベンジル基、フェニル基、フェニルフェノキシ基、フェノキシ基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、メチルフェニルエチル基、プロピルフェニルエチル基、メトキシフェニルエチル基、シクロヘキシルフェニルエチル基、クロロフェニルエチル基、ブロモフェニルエチル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メトキシフェニル基、プロピルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル(terphenyl)基、クアテルフェニル(quaterphenyl)基、アントラセニル(anthracenyl)基、ナフタレニル基、トリフェニレニル基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、メトキシフェニルオキシ基、プロピルフェノキシ基、シクロヘキシルフェノキシ基、クロロフェノキシ基、ブロモフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、テルフェニルオキシ(terphenyloxy)基、クアテルフェニルオキシ(quaterphenyloxy)基、アントラセニルオキシ(anthracenyloxy)基、ナフタレニルオキシ(naphthalenyloxy)基、またはトリフェニレニルオキシ(triphenylenyloxy)基であってもよい。
【0063】
具体的には、上記化学式5で表される化合物は、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、2-エチルフェノキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、3-フェニルプロピル(メタ)アクリレート、4-フェニルブチル(メタ)アクリレート、2-(2-メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-プロピルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-(1-メチルエチル)フェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-メトキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-シクロヘキシルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-ブロモフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-フェニルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、4-(ビフェニル-2-イルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート、3-(ビフェニル-2-イルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート、2-(ビフェニル-2-イルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート、1-(ビフェニル-2-イルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート、4-(ビフェニル-2-イルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、3-(ビフェニル-2-イルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-(ビフェニル-2-イルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、1-(ビフェニル-2-イルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、4-(ビフェニル-2-イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3-(ビフェニル-2-イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ビフェニル-2-イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1-(ビフェニル-2-イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-ベンジルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、1-(4-ベンジルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、およびこれらの構造異性体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよいが、これらに制限されない。すなわち、本発明で言及した(メタ)アクリレートは、一例に過ぎず、これに限定されるものではない。さらに、本発明は、構造異性体の関係にあるアクリレートを全て含む。例えば、本発明の一例として、2-フェニルエチル(メタ)アクリレートのみが言及されている場合にも、本発明は、3-フェニルエチル(メタ)アクリレート、および4-フェニル(メタ)アクリレートを含む異性体を全て含む。
【0064】
(非芳香族系光硬化性モノマー)
非芳香族系光硬化性モノマーは、炭素数1~20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートを含んでもよい。例えば、非芳香族系光硬化性モノマーは、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレートなどを含むテトラデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、およびイソステアリル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0065】
第2光硬化性モノマーは、第1光硬化性モノマー、第2光硬化性モノマーおよび開始剤の合計質量を100質量部としたとき、好ましくは5質量部~60質量部、例えば、5質量部、6質量部、7質量部、8質量部、9質量部、10質量部、11質量部、12質量部、13質量部、14質量部、15質量部、16質量部、17質量部、18質量部、19質量部、20質量部、21質量部、22質量部、23質量部、24質量部、25質量部、26質量部、27質量部、28質量部、29質量部、30質量部、31質量部、32質量部、33質量部、34質量部、35質量部、36質量部、37質量部、38質量部、39質量部、40質量部、41質量部、42質量部、43質量部、44質量部、45質量部、46質量部、47質量部、48質量部、49質量部、50質量部、51質量部、52質量部、53質量部、54質量部、55質量部、56質量部、57質量部、58質量部、59質量部、または60質量部の含有量で含まれてもよく、より好ましくは10質量部~60質量部の含有量で含まれてもよい。上記範囲内であれば、本発明の数式1のCLD値が50以上に容易に到達することができ、本発明に係る組成物のインクジェットのジェッティング性(吐出性)を良好にし、均一な表面を有する有機層を形成することができる。
【0066】
(開始剤)
開始剤は、光硬化性反応を行うことができる通常の光重合開始剤を制限なく含むことができる。例えば、光重合開始剤は、トリアジン系、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、リン系、オキシム系、またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0067】
好ましくは、開始剤は、最大吸収波長が360nm~400nmであるリン系開始剤を含んでもよい。リン系開始剤を使用する場合、本発明に係る組成物において、長波長の紫外線(UV)(例:波長300nm~400nmの紫外線)でより良い開始性能を示すことができる。リン系開始剤は、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネート、またはこれらの混合物であってもよい。開始剤は、1種単独でもまたは2種以上を混合して含まれてもよい。なお、上記「最大吸収波長」は、当業者に知られている通常の方法で測定することができ、また製品カタログを参考にして得た値になり得る。
【0068】
開始剤は、第1光硬化性モノマー、第2光硬化性モノマー、および開始剤の合計質量を100質量部としたとき、好ましくは1質量部~10質量部、より好ましくは1質量部~5質量部の含有量で含まれてもよい。上記範囲内であれば、本発明に係る組成物の光硬化率が高くなり、残量(未反応)の開始剤が残ることによって光透過率が低下することを防止することができる。
【0069】
本発明に係る組成物は、第1光硬化性モノマー、第2光硬化性モノマー、および開始剤を混合することによって製造され得る。例えば、本発明に係る組成物は、溶剤を含まない無溶剤タイプで製造することができる。
【0070】
本発明に係る組成物は、光硬化型組成物であって、紫外線波長において10mW/cm~500mW/cmの照射強度で、1秒~50秒間の照射によって光硬化されて、封止層を形成することができる。
【0071】
本発明に係る組成物は、当業者に知られている通常の添加剤をさらに含んでもよい。このような添加剤の例には、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤などが含まれるが、これらに制限されない。
【0072】
本発明に係る組成物は、25±2℃(23℃~27℃)の温度条件下で、粘度が好ましくは7mPa・s~100mPa・s、より好ましくは7mPa・s~60mPa・s、さらに好ましくは7mPa・s~50mPa・sであってもよい。上記範囲であれば、本発明に係る組成物のインクジェットのジェッティング性(吐出性)が優秀になり得る。
【0073】
本発明の組成物は、光硬化率が好ましくは89%~100%、より好ましくは91%~99%、さらに好ましくは91%~93%であってもよい。上記範囲であれば、本発明に係る組成物が有機層として機能することができる。光硬化率は、下記数式2により算出され得る。
【0074】
本発明に係る組成物は、有機発光素子を封止するのに使用され得る。具体的には、本発明に係る組成物は、無機層と有機層とが順次形成される封止構造で有機層を形成することができる。
【0075】
本発明に係る組成物は、装置用部材、特に、ディスプレイ装置用部材であって、周辺環境の気体または液体、例えば、大気中の酸素、水分、および/または水蒸気の透過と、電子製品への加工時に使用された化学物質の透過によって分解されたり不良になったりする装置用部材の封止用途にも使用され得る。例えば、装置用部材は、照明装置、金属センサーパッド、マイクロディスクレーザー、電気変色装置、光変色装置、マイクロ電子機械システム、太陽電池、集積回路、電荷結合装置、発光重合体などであってもよいが、これらに制限されない。
【0076】
本発明に係る有機発光表示装置は、本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物で形成された有機層を含んでもよい。具体的には、有機発光表示装置は、有機発光素子と、有機発光素子上に形成され、無機層および有機層を含む障壁スタックと、を含み、有機層は、本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物で形成されてもよい。その結果、有機発光表示装置の信頼性が良好になり得る。
【0077】
以下、図1を参考にして本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置の断面概略図である。
【0078】
図1を参照すると、有機発光素子表示装置100は、基板10と、基板10上に形成された有機発光素子20と、有機発光素子20上に形成され、無機層31および有機層32を含む障壁スタック30と、を含み、無機層31は、有機発光素子20と接触する状態となっており、有機層32は、本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物で形成され得る。
【0079】
基板10は、有機発光素子が形成され得る基板であれば特に制限されず、例えば、透明ガラス、プラスチックシート、シリコン、または金属基板などの材料から形成されてもよい。
【0080】
有機発光素子20は、通常、有機発光表示装置で使用されるものであって、図1に示していないが、第1電極、第2電極、および第1電極と第2電極との間に形成される有機発光膜を含み、有機発光膜は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層が順次積層されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0081】
障壁スタック30は、有機層および無機層を含み、有機層と無機層とは、それぞれ層を構成する成分が互いに異なり、それぞれ有機発光素子の封止機能を具現することができる。
【0082】
無機層は、有機層と異なる成分を有することにより、有機層の効果を補完することができる。例えば、無機層は、金属、非金属、金属間化合物もしくは合金、非金属間化合物もしくは合金、金属もしくは非金属の酸化物、金属もしくは非金属のフッ化物、金属もしくは非金属の窒化物、金属もしくは非金属の炭化物、金属もしくは非金属の酸素窒化物、金属もしくは非金属のホウ化物、金属もしくは非金属の酸ホウ化物、金属もしくは非金属のシリサイド、またはこれらの混合物等の材料から形成されもよい。金属または非金属は、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、セレニウム(Se)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、遷移金属、ランタン族金属などであってもよいが、これらに制限されない。具体的には、無機層は、シリコン酸化物(SiO)、シリコン窒化物(SiN)、シリコン酸窒化物(SiO)、ZnSe、ZnO、Sb、Alなどを含むAlO、In、SnO等であってもよい。
【0083】
無機層は、プラズマ工程、真空工程、例えば、スパッタリング、化学気相蒸着、プラズマ化学気相蒸着、蒸発、昇華、電子サイクロトロン共鳴-プラズマ蒸気蒸着、およびそれらの組み合わせにより蒸着され得る。
【0084】
有機層は、無機層と交互に蒸着するとき、無機層の平滑化特性を確保し、無機層の欠陥が他の無機層に伝播されることを防止することができる。
【0085】
有機層は、本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物のコーティング、蒸着、硬化などの組み合わせによって形成され得る。例えば、有機発光素子封止用組成物を1μm~50μmの厚さでコーティングし、10mW/cm~500mW/cmの照射強度で、1秒~50秒間照射することによって硬化させることができる。
【0086】
障壁スタックは、有機層および無機層を含み、有機層と無機層の総層数は制限されない。有機層と無機層との総層数は、酸素、水分、水蒸気、化学物質等に対する透過抵抗性の水準によって変更することができる。例えば、有機層と無機層との総層数は、10層以下、例えば、2層~7層であってもよく、具体的には、無機層/有機層/無機層/有機層/無機層/有機層/無機層の順に7層で形成されてもよい。
【0087】
障壁スタックにおいて、有機層と無機層とは交互に蒸着されてもよい。これは、上述した組成物が有する物性によって生成された有機層に対する効果のためである。これにより、有機層と無機層とは、装置に対する封止効果を補完または強化することができる。
【0088】
以下では、図2を参考にして本発明の他の実施形態に係る有機発光表示装置を説明する。図2は、本発明の他の実施形態に係る有機発光表示装置の断面概略図である。
【0089】
図2を参照すると、有機発光表示装置200は、基板10と、基板10上に形成された有機発光素子20と、有機発光素子20上に形成され、無機層31および有機層32を含む障壁スタック30と、を含み、無機層31は、有機発光素子20が収容された内部空間40を封止し、有機層32は、本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物で形成され得る。本発明の他の実施形態に係る有機発光表示装置は、無機層が有機発光素子と接触しない点を除いては、本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置と実質的に同一である。
【実施例
【0090】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて、本発明の構成および作用をさらに詳細に説明する。ただし、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであって、如何なる意味でも、これによって本発明が制限されると解釈することはできない。
【0091】
(製造例1:化学式3-2で表される化合物の製造)
冷却管および攪拌機を備えた1000mlのフラスコに、酢酸エチル 300mlを入れ、3,3-ジフェニル-1,1,5,5-テトラメチルトリシロキサン21g、およびアリルアルコール43g(大井化金株式会社製)を入れ、30分間窒素パージした後、Pt on carbon black powder(アルドリッチ社製)72ppmを追加し、フラスコ内の温度を80℃に上げた後、4時間にわたって攪拌した。残留溶媒を蒸留で除去した。得られた化合物 71.5gをジクロロメタン 300mlに入れ、トリエチルアミン 39gを追加した後、0℃で攪拌しながらメタクリロイルクロリド 30.2gをゆっくり添加した。残留溶媒を蒸留で除去し、96%のHPLC純度を有する下記化学式3-2で表される化合物を得た:
H NMR:δ7.52、m、6H;δ7.42、m、4H;δ6.25、d、2H;δ6.02、dd、2H;δ5.82、t、1H;δ5.59、d、2H;δ3.86、m、4H;δ1.52、m、4H;δ0.58、m、4H;δ0.04、m、12H。
【0092】
【化7】
【0093】
実施例および比較例で使用した成分の具体的な仕様は、次の通りである。
【0094】
(A)第1光硬化性モノマー
(A1)DMS-R05(メタクリロキシプロピルターミネイティドポリジメチルシロキサン、Gelest社製、ジメタクリレート、Mw:420)
(A2)DMS-R11(メタクリロキシプロピルターミネイティドポリジメチルシロキサン、Gelest社製、ジメタクリレート、Mw:1200)
(A3)M-262(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、美源スペシャリティ社製、Mw:304.38)
(A5)M-370(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、美源スペシャリティ社製、Mw:261.23)
(A6)M-410(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、美源スペシャリティ社製、Mw:466)
(A7)M-300(トリメチロールプロパントリアクリレート、美源スペシャリティ社製、Mw:296.32)
(A8)製造例1の化合物(Mw:584.92)。
【0095】
(B)第2光硬化性モノマー
(B1)2-フェニルフェノキシエチルアクリレート(M1142、美源スペシャリティ社製、Mw:268.31)
(B2)ラウリルアクリレート(Mw:240.38)
(B3)イソステアリルアクリレート(Mw:324.5)。
【0096】
(C)リン系開始剤(Omnirad(登録商標) TPO H、IGM Resins B.V.社製)。
【0097】
(実施例1)
(A2)成分 64質量部、(B1)成分 33質量部、および(C)成分 3質量部を125mlの褐色ポリプロピレン瓶に入れ、シェーカーを用いて3時間にわたって室温で混合することによって有機発光素子封止用組成物を製造した。
【0098】
(実施例2~実施例6および比較例1~比較例3)
各成分の含有量を下記表1(単位:質量部)のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子封止用組成物を製造した。なお、下記表1において、「-」は、該当の成分が含有されていないことを意味する。
【0099】
実施例および比較例で製造した組成物に対して下記の物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0100】
(1)CLD値:実施例および比較例の組成物に対して、上記数式1によってCLD値を計算した。
【0101】
(2)粘度(単位:mPa・s):実施例および比較例の組成物に対して、24.8℃の温度条件で、粘度測定機 LV DV-II Pro(Brookfield社製)のスピンドル番号(No.spindle)40を用いて測定した。
【0102】
(3)光硬化率(単位:%):実施例および比較例の組成物に対して、FT-IR(NICOLET 4700、Thermo社製)を用いて1635cm-1付近(C=C)および1720cm-1付近(C=O)での吸収ピークの強度を測定した。ガラス基板上に組成物をスプレーで塗布し、100mW/cmの照射強度で、20秒間照射することによってUV硬化させ、20cm×20cm×3μm(横×縦×厚さ)の試験片を得た。硬化したフィルムを分取し、FT-IR(NICOLET 4700、Thermo社製)を用いて1635cm-1付近(C=C)および1720cm-1付近(C=O)での吸収ピークの強度を測定した。光硬化率は、下記数式2によって算出した。
【0103】
【数3】
【0104】
上記数式2中、Aは、硬化したフィルムにおける、1720cm-1付近での吸収ピークの強度に対する1635cm-1付近での吸収ピークの強度の比であり、
Bは、有機発光素子封止用組成物における、1720cm-1付近での吸収ピークの強度に対する1635cm-1付近での吸収ピークの強度の比である。
【0105】
(4)インクジェットのジェッティング性(吐出性):実施例および比較例の組成物の滴下速度 2.5μm/sec、インクジェットのヘッド温度 25℃~35℃の条件で、インクジェットのジェッティングを行った。インクジェットのジェッティングを行ったとき、ドロップの形態が正確な球形である場合は○、球形からやや逸脱するが、使用可能な球形である場合は△、完全に球形でない場合は×と評価した。
【0106】
(5)組成物から形成された有機層の膜強度(Hardness、単位:kPa):ガラス基板上に組成物を8μmの厚さでコーティングした後、100mW/cmの照射強度で、20秒間照射することによってUV硬化させ、20cm×20cm×3μm(横×縦×厚さ)の試験片を得た。硬化した基板を分取し、ナノインデンター(Nano Indenter(G200、Keysight Technoligies社製)を用いて、有機層の膜強度を測定した。
【0107】
(6)組成物で形成された有機層に無機層を蒸着するとき、有機層にしわが発生し始める蒸着回数(しわ発生回数):ガラス基板上に組成物を8μmの厚さでコーティングした後、100mW/cmの照射強度で、20秒間照射することによってUV硬化させ、試験片を得た。プラズマCVD装置(PECVD、PLUS200-SP、QUROS社製)を用いてSiNの蒸着を行った。各回数を行った後、光学顕微鏡により、しわの発生が確認された最初の回数を記載した。
【0108】
【表1】
【0109】
上記表1から明らかなように、本発明の有機発光素子封止用組成物は、膜強度に優れ、無機層を繰り返し形成したとき、しわの発生を最小化することによって信頼性に優れており、適正な粘度を有することから表面が均一な有機層を形成することができ、光硬化率およびインクジェットのジェッティング性(吐出性)に優れていることがわかった。
【0110】
したがって、本発明は、膜強度に優れた有機層を形成することができる有機発光素子封止用組成物を提供するものである。本発明は、無機層を繰り返し形成したとき、しわの発生を最小化することによって信頼性に優れた有機層を形成することができる有機発光素子封止用組成物を提供するものである。本発明は、適正な粘度を有することから表面が均一な有機層を形成することができ、光硬化率およびインクジェットのジェッティング性(吐出性)に優れた有機発光素子封止用組成物を提供するものである。
【0111】
その一方で、本発明の数式1の値が50未満である比較例1~比較例3は、本発明の効果を得ることができなかった。
【0112】
本発明の単純な変形および変更は、本分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。
【符号の説明】
【0113】
10 基板、
20 有機発光素子、
30 障壁スタック、
31 無機層、
32 有機層、
100 有機発光素子表示装置。
図1
図2