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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】Endo180産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240318BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20240318BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20240318BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240318BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240318BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240318BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20240318BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20240318BHJP
   A61K 36/9062 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240318BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240318BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240318BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240318BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240318BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240318BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20240318BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/9794
A61K8/99
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K35/747
A61K36/185
A61K36/9062
A61P17/16
A61P19/02
A61P43/00 107
A61Q1/00
A61Q5/00
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q19/10
A61K127:00
A61K131:00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018071341
(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公開番号】P2019182753
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】中村 冬馬
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 弘恭
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】関 美祝
【審判官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-29980(JP,A)
【文献】特開2011-20965(JP,A)
【文献】特開2017-48244(JP,A)
【文献】国際公開第2013/189703(WO,A2)
【文献】国際公開第2013/189694(WO,A2)
【文献】特開2017-128538(JP,A)
【文献】特開2019-55924(JP,A)
【文献】特開2019-109398(JP,A)
【文献】Journal of Dermatological Science,2013年,Vol.70,p.42-48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハス胚芽抽出物、月桃葉抽出物およびラクトバシルス・プランタラムからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とするEndo180産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物由来成分を有効成分とするEndo180産生促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線の長期曝露によって引き起こされる光老化では、真皮コラーゲン線維構造の量的、質的変化が確認されており、シワの形成に関与していると考えられている。コラーゲン線維構造は、コラーゲン線維の合成および分解の繰り返しによる代謝バランスによって恒常性が維持されている。このうち分解過程においては、マトリックスメタロプロテアーゼによるコラーゲンの断片化と、断片化されたコラーゲンの線維芽細胞への取り込みおよび分解とが起こっており、断片化コラーゲンの細胞内への取り込みには、膜タンパク質であるコラーゲンレセプター「Endo180」の関与が知られている(非特許文献1)。
【0003】
Endo180は、マンノース受容体C2(MRC2)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体関連タンパク質(uPARAP)およびCD280としても知られ、再利用されるエンドサイトーシス受容体であり、コラーゲンなどのリガンドと結合してこれを細胞内に取り込み、エンドソームにおける分解へと誘導する。
【0004】
Endo180は、マクロファージマンノース受容体ファミリーであるマンノース受容体、ホスホリパーゼA2、DEC-205/MR6などと相同性を有する。Endo180は、細胞膜から、後期エンドソーム/リソソーム区画までではなく、リサイクリングエンドソームまでが標的とされるという点で、マンノース受容体のファミリーの中でも特殊であり、細胞遊走、および細胞内分解のためのコラーゲンの取り込みを促進することによって、細胞運動性や細胞外マトリックスの再構築において機能を果たす。また、uPARAPとして、ウロキナーゼ型プラスミン活性化因子(uPA)およびウロキナーゼ型プラスミン活性化因子受容体(uPAR)と三重複合体を形成し、プラスミノーゲンからのプラスミンの生成に関与する。Endo180は、細胞表面上のクラスリンで覆われたピットや、エンドソーム等に局在しており、線維芽細胞、内皮細胞、およびマクロファージにおいて主に発現する。組織としては、肺、血管、骨および皮膚において主に発現している(特許文献1参照)。
【0005】
一方、皮膚の真皮もコラーゲンに富む組織であるが、真皮中のコラーゲン線維のリモデリングにおけるEndo180の関与に関する報告は少ない。これまでに、光老化皮膚では線維芽細胞においてEndo180発現が低下し、それに伴い真皮マトリックスにおいて断片化コラーゲンが蓄積されることが知られている(非特許文献2)。また、断片化コラーゲンによって線維芽細胞に酸化ストレスが誘導されることが知られている(非特許文献3)。さらに、紫外線によるEndo180発現低下メカニズムにケラチノサイトが産生するIL-1αが関与していることも知られている(非特許文献4)。これらのことから、Endo180は、紫外線の長期曝露によって引き起こされる光老化皮膚の形成(例えば、シワの形成)に関与しているものと考えられている。そのメカニズムとしては、線維芽細胞においてEndo180の発現が低下すると、断片化コラーゲンの取り込みが抑えられることで正常なコラーゲン線維構造の再生が阻害され、また細胞の周辺に断片化コラーゲンが蓄積することにより線維芽細胞の機能障害を誘導するものと考えられる。
【0006】
そのため、例えば、線維芽細胞においてEndo180発現を促進することができれば、断片化したコラーゲンの代謝による再利用や正常なコラーゲン線維構造の再生を促し、光老化皮膚やこれによるシワ等の形成を抑えることができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2012-521217号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】J. Cell Sci.,2009年,vol.122,pp.4042-4048
【文献】J. Dermatol. Sci.,2013年,vol.70,pp.42-48
【文献】Am. J. Pathol.,2009年,vo.174,pp.101-114
【文献】第40回日本香粧品学会発表要旨,2015年,p.16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、安全性の高い天然物由来成分の中から、優れたEndo180産生促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とするEndo180産生促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のEndo180産生促進剤は、ハス胚芽抽出物、月桃葉抽出物およびラクトバシルス・プランタラムからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、天然物に由来するハス胚芽抽出物、月桃葉抽出物およびラクトバシルス・プランタラムからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分として用いることにより、作用効果に優れ、かつ安全性の高いEndo180産生促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態のEndo180産生促進剤は、ハス胚芽抽出物、月桃葉抽出物およびラクトバシルス・プランタラムからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とするものである。
【0013】
〔ハス胚芽抽出物,月桃葉抽出物〕
本実施形態で用いるハス胚芽抽出物および月桃葉抽出物は、ハス(学名:Nelumbo nucifera Gaertn.)および月桃(学名:Alpinia zerumbetまたはAlpinia speciosa (Wendl.) K. Schum.)から得られる抽出物である。
【0014】
ここで、本実施形態における「抽出物」には、上記天然物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0015】
ハス(Nelumbo nucifera Gaertn.)は、熱帯アジア原産のスイレン科ハス属に属する多年性水生植物である。ハスはわが国では地下茎の部分が蓮根として食されており、安全性の高い植物である。ハスは、ヨーロッパ東南部、オーストラリア北部、アジア東部などに分布しており、また池や水田、堀等に栽培され、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用するハスの構成部位は、胚芽である。ハス胚芽とは、ハスの種子の中にある緑色で棒状の胚芽のことである。
【0016】
月桃(Alpinia zerumbetまたはAlpinia speciosa (Wendl.) K. Schum.)は、ショウガ科ハナミョウガ属に属する多年生常緑草本であり、九州南部からインドにまで分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。月桃は、沖縄ではサンニンと呼ばれ、琉球王朝以来の伝統菓子であるムーチーに利用されるほか、ハーブとしても利用されている。抽出原料として使用する部位は、葉部である。
【0017】
上記天然物からの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、上記抽出原料の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0018】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0019】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0020】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0021】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を抽出溶媒として使用する場合には、水と低級脂肪族アルコールとの混合比が9:1~1:9(容量比)であることが好ましく、7:3~2:8(容量比)であることがさらに好ましい。また、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水と低級脂肪族ケトンとの混合比が9:1~2:8(容量比)であることが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水と多価アルコールとの混合比が8:2~1:9(容量比)であることが好ましい。
【0022】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5~15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0023】
以上のようにして得られるハス胚芽抽出物および月桃葉抽出物は、優れたEndo180産生促進作用を有しているため、Endo180産生促進剤の有効成分として用いることができる。
【0024】
〔ラクトバシルス・プランタラム〕
本実施形態においては、ラクトバシルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)も用いることができる。ラクトバシルス・プランタラムは、乳酸菌の一種であるが、主として野菜漬物、キムチ、味噌などの植物性の発酵食品から分離されることから植物性乳酸菌に包含され、ヨーグルト等の発酵乳や乳酸菌飲料の製造に用いられる動物性乳酸菌とは異なるものである。
【0025】
本実施形態においては、ラクトバシルス・プランタラムに分類される乳酸菌であれば何れを用いてもよいが、後述する作用効果が好ましく発揮されることから、ラクトバシルス・プランタラム 22A-1(FERM P-21409)、ラクトバシルス・プランタラム 22A-3(FERM P-21411)、およびラクトバシルス・プランタラム 22B-2(FERM P-21410)からなる群より選択される1または2以上であることが好ましく、ラクトバシルス・プランタラム 22A-3(FERM P-21411)であることが特に好ましい。
【0026】
なお、上記ラクトバシルス・プランタラム 22A-1(FERM P-21409)、ラクトバシルス・プランタラム 22A-3(FERM P-21411)、およびラクトバシルス・プランタラム 22B-2(FERM P-21410)の3株は、本発明者らにより漬物から単離・同定された株であり、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている。
【0027】
本実施形態においては、上記ラクトバシルス・プランタラムを培養により増殖させることで、大量に取得することができる。上記ラクトバシルス・プランタラムを培養する培地としては特に制限はされず、乳酸菌の培養に通常使用される培地やその改変培地を使用することができる。このような培地に配合される培地成分としては、例えば、グルコース等の炭素源;酵母エキス、肉エキス、カゼイン等およびこれらのタンパク加水分解物等の窒素源;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム等の無機塩類;チアミン、イノシトール等のビタミン類などの、乳酸菌の生育に好適な成分などが挙げられる。また、食品素材として利用可能な植物材料等を含む培地を用いてもよい。
なお、本実施形態においては、培地成分として動物の乳由来の成分を用いなくてもよい。培地成分に動物の乳由来の成分を用いた場合、乳アレルギーを惹起する可能性があることからアレルギー患者による使用が制限されることがあり、また、乳酸菌を培養することで好ましくない香気を生じさせることがあることから化粧料の配合成分として適当でない場合がある。
【0028】
上記ラクトバシルス・プランタラムの培養において、培地の形態、pH、培養温度、培養時間、培養方法等の培養条件は、特に限定されるものではなく、従来公知の条件を採用することができる。例えば、培地は液体培地でも固体培地でもよく、培養温度は、好ましくは25~45℃、より好ましくは30~37℃とすることができ、培養時間は、好ましくは4~74時間、より好ましくは18~48時間とすることができる。また、液体培地である場合、培養方法としては、静置、攪拌、振盪、通気等が挙げられるが、いずれを採用してもよい。
【0029】
得られた培養物は、培地と菌体とを分離せずそのまま用いてもよく、培地と菌体とを分離して菌体を回収してもよい。菌体を回収する場合の方法も特に制限されず、例えば、液体培地であれば、遠心分離、濾過等によることができ、また固体培地であればセルスクレーパー等を用いて菌体を回収することができる。
【0030】
得られたラクトバチルス・プランタラムの菌体は、生菌体をそのまま用いてもよいが、安全性の観点から死菌体を用いることが好ましい。死菌体とする方法は特に限定されず、菌体を含む培養物または回収した菌体に対し、加熱処理、加熱加圧処理、紫外線処理などの公知の方法にて行えばよい。また、得られた菌体は、さらに破砕等を行ってもよく、破砕物をさらに分画してもよい。
【0031】
以上のようにして得られるラクトバシルス・プランタラムは、優れたEndo180産生促進作用を有しているため、Endo180産生促進剤の有効成分として用いることができる。
【0032】
〔Endo180産生促進剤〕
本実施形態のEndo180産生促進剤は、前述のようにして得られたハス胚芽抽出物、月桃葉抽出物およびラクトバシルス・プランタラムからなる群より選択される1種または2種以上を有効成分とするものである。本実施形態のEndo180産生促進剤は、医薬品、医薬部外品、飲食品、化粧品等の幅広い用途に使用することができる。
【0033】
本実施形態のEndo180産生促進剤は、ハス胚芽抽出物、月桃葉抽出物もしくはラクトバシルス・プランタラムまたはこれらの混合物のみからなるものでもよいし、ハス胚芽抽出物、月桃葉抽出物もしくはラクトバシルス・プランタラムまたはこれらの混合物を製剤化したものでもよい。
【0034】
本実施形態のEndo180産生促進剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。Endo180産生促進剤は、他の組成物(例えば、飲食品、皮膚化粧料等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
【0035】
本実施形態のEndo180産生促進剤を製剤化した場合、ハス胚芽抽出物、月桃葉抽出物もしくはラクトバシルス・プランタラムまたはこれらの混合物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0036】
なお、本実施形態のEndo180産生促進剤は、必要に応じて、Endo180産生促進作用を有する他の天然抽出物等を、ハス胚芽抽出物、月桃葉抽出物もしくはラクトバシルス・プランタラムまたはこれらの混合物とともに配合して有効成分として用いることができる。
【0037】
本実施形態のEndo180産生促進剤の患者に対する投与方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態のEndo180産生促進剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0038】
本実施形態のEndo180産生促進剤は、有効成分であるハス胚芽抽出物、月桃葉抽出物およびラクトバシルス・プランタラムが有するEndo180産生促進作用を通じて、線維芽細胞においてEndo180の産生を促進し、これにより、エンドサイトーシスによる断片化コラーゲンの取り込みを促進して正常なコラーゲン線維構造の再生を促し、シワの形成等といった皮膚の光老化症状を予防、治療または改善することができる。また、本実施形態のEndo180産生促進剤は、正常なコラーゲン線維構造の再生を促すことにより、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、化膿性関節炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎、骨関節炎等の関節炎の予防、治療または改善などの用途に用いることができる。ただし、本実施形態のEndo180産生促進剤は、これらの用途以外にも上記作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0039】
また、本実施形態のEndo180産生促進剤は、優れたEndo180産生促進作用を有するため、例えば、飲食品や皮膚外用剤に配合するのに好適である。この場合に、ハス胚芽抽出物、月桃葉抽出物もしくはラクトバシルス・プランタラムまたはこれらの混合物をそのまま配合してもよいし、ハス胚芽抽出物、月桃葉抽出物もしくはラクトバシルス・プランタラムまたはこれらの混合物から製剤化したEndo180産生促進剤を配合してもよい。
【0040】
ここで、飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「飲食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品、機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
【0041】
皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、経皮的に使用される皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、化粧水、美容液、ローション、ジェル、美容オイル、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、シャンプー、リンス、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
【0042】
また、本実施形態のEndo180産生促進剤は、優れたEndo180産生促進作用を有するので、これらの作用機構に関する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
【0043】
なお、本実施形態のEndo180産生促進剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
【実施例
【0044】
以下、試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。なお、下記試験例においては、被験試料として、ハス胚芽抽出物(丸善製薬社製,試料1)、月桃葉抽出物(丸善製薬社製,試料2)、およびラクトバシルス・プランタラム死菌体(丸善製薬社製,試料3)を使用した(いずれも凍結乾燥品)。
【0045】
〔試験例1〕Endo180産生促進作用試験
上記天然物由来成分(試料1~3)について、以下のようにしてEndo180産生促進作用を試験した。
【0046】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有ダルベッコMEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×105 cells/mLの細胞密度になるよう0.25%FBS含有ダルベッコMEMで希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、二晩培養した。
【0047】
培養終了後、培地を除去し、0.25%FBS含有ダルベッコMEMに溶解した被験試料(試料1~3,試料濃度は下記表1を参照)を各ウェルに100μLずつ添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の0.25%FBS含有ダルベッコMEMを用いて同様に培養した。培養終了後、各ウェルの細胞表面に存在するEndo180量をELISA法により測定した。測定結果から、下記式によりEndo180産生促進率(%)を算出した。
【0048】
Endo180産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのEndo180産生量
B:試料無添加でのEndo180産生量
結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、ハス胚芽抽出物(試料1)、月桃葉抽出物(試料2)、およびラクトバシルス・プランタラム死菌体(試料3)は、いずれも優れたEndo180産生促進作用を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のEndo180産生促進剤は、シワの形成等といった皮膚の光老化症状の予防、治療または改善;各種関節炎の予防、治療または改善;などに大きく貢献できる。