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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/409 20060101AFI20240318BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G05B19/409 C
G05B19/418 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020021384
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021128410
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】平野 大輔
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-019829(JP,A)
【文献】特開2016-118832(JP,A)
【文献】特開2017-068630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B19/18-19/416
G05B19/42-19/46
B23Q15/00-15/28
B23Q17/00-23/00
B23Q 1/00- 1/76
B23Q 9/00- 9/02
G06Q10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する加工ユニットを有する加工装置であって、
複数の検査項目の名称を表示可能な表示部と、
該加工ユニット及び該表示部を制御する制御部と、
検査項目に関する情報を該制御部に入力するための入力部と、
を備え、
該制御部は、基準となる所定の点数と、検査項目に対応する検査を行う予定日を経過しても行われていない各検査項目に対応する点数とに基づいて、第1の演算方式に従い演算を行い、検査の進捗状況を表す演算後の点数を該表示部に表示させ
該予定日を経過しても行われていない検査項目のうち1以上の検査項目に対応する検査が行われた旨が該入力部を介して該制御部に入力された場合に、該制御部は、検査が行われた該1以上の検査項目に対応する点数と、該第1の演算方式に従って行われた演算後の点数とに基づいて、第2の演算方式に従い演算を行い、該第2の演算方式での演算後の点数を該表示部に表示させることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該制御部は、該予定日を経過しても行われていない各検査項目の名称を、演算後の点数と共に該表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該制御部は、演算後の点数に対応する所定のイラストレーションを該表示部に表示させることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される半導体デバイスチップは、例えば、複数のデバイスが表面側に形成されている半導体ウェーハの裏面側を研削することにより所定の厚さに薄化した後、半導体ウェーハをデバイス単位に分割して製造される。
【0003】
半導体ウェーハを所定の厚さに薄化するためには、代表的には、研削装置が用いられる(例えば、特許文献1参照)。また、半導体ウェーハを分割するためには、切削装置、レーザー加工装置等が用いられる。
【0004】
研削装置、切削装置、レーザー加工装置等の各種加工装置が正常に動作する様に、通常、作業者は、チェックシートに記載された点検項目(即ち、複数の検査項目)に従って、加工装置を構成する構成要素を定期的に検査することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-288881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、作業者が定期的な検査を行わない場合には、加工装置の適切なメンテナンスが行われず、加工装置の故障、加工精度の低下等が生じ得る。加工装置の故障、加工精度の低下等が生じると、被加工物の加工中に被加工物の破損等が生じ、多大な損失が発生する恐れがある。
【0007】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、加工装置の構成要素の定期的な検査を作業者に促すことができる加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、被加工物を加工する加工ユニットを有する加工装置であって、複数の検査項目の名称を表示可能な表示部と、該加工ユニット及び該表示部を制御する制御部と、検査項目に関する情報を該制御部に入力するための入力部と、を備え、該制御部は、基準となる所定の点数と、検査項目に対応する検査を行う予定日を経過しても行われていない各検査項目に対応する点数とに基づいて、第1の演算方式に従い演算を行い、検査の進捗状況を表す演算後の点数を該表示部に表示させ、該予定日を経過しても行われていない検査項目のうち1以上の検査項目に対応する検査が行われた旨が該入力部を介して該制御部に入力された場合に、該制御部は、検査が行われた該1以上の検査項目に対応する点数と、該第1の演算方式に従って行われた演算後の点数とに基づいて、第2の演算方式に従い演算を行い、該第2の演算方式での演算後の点数を該表示部に表示させる加工装置が提供される。
【0009】
好ましくは、該制御部は、該予定日を経過しても行われていない各検査項目の名称を、演算後の点数と共に該表示部に表示させる。
【0011】
また、好ましくは、該制御部は、演算後の点数に対応する所定のイラストレーションを該表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る加工装置の制御部は、所定の点数と、検査項目に対応する検査を行う予定日を経過しても行われていない各検査項目に対応する点数とに基づいて、第1の演算方式に従い演算を行い、演算後の点数を表示部に表示させる。
【0013】
例えば、第1の演算方式が減算である場合に、予定日を経過しても行われていない検査項目があると、行われていない検査項目に対応する点数が所定の点数から減算された点数が表示部に表示される。これにより、加工装置の点検の必要性の程度を作業者に対して定量的且つ視覚的に知らせることができ、作業者に対して加工装置の点検を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】研削装置の斜視図である。
図2】モニターに表示されるチェックシートの一例を示す図である。
図3】イラストレーション付き画像の一例を示す図である。
図4図4(A)は第1のイラストレーションを示す図であり、図4(B)は第2のイラストレーションを示す図であり、図4(C)は第3のイラストレーションを示す図であり、図4(D)は第4のイラストレーションを示す図であり、図4(E)は第5のイラストレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、研削装置2の斜視図である。研削装置(加工装置)2は、略直方体形状の基台4を備える。図1では、基台4の左右方向をX軸方向とし、基台4の前後方向をY軸方向とし、基台4の上下方向をZ軸方向とする。
【0016】
基台4の前方(Y軸方向の一方)には、凹部4aが形成されている。凹部4aに対して右方(X軸方向の一方)にはカセット載置領域6aがあり、凹部4aに対して左方(X軸方向の他方)にはカセット載置領域6bがある。
【0017】
カセット載置領域6a上には、研削装置2で加工前の1以上の被加工物11が収容されているカセット8aが載置される。また、カセット載置領域6b上には、研削装置2で加工後の1以上の被加工物11が収容されるカセット8bが載置される。
【0018】
凹部4aには、搬送ロボット10が設けられている。搬送ロボット10は、複数のリンクが回動可能に連結された屈曲リンク機構と、最も上部に位置するリンクの端部に連結されたエンドエフェクタとしてのハンド部とを含む。
【0019】
搬送ロボット6は、カセット8aに収容されている被加工物11を、カセット載置領域6aの後方(Y軸方向の他方)に設けられている位置決めテーブル12へ搬送する。位置決めテーブル12の中央部には、円盤状の吸引台12aが設けられている。
【0020】
吸引台12aの上面には、1又は複数の吸引口(不図示)が形成されている。各吸引口には、流路の一端が接続されており、流路の他端には、エジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。
【0021】
吸引台12aの周囲には複数のピン12bが環状に配置されている。各ピン12bは、吸引台12aに近づく方向、又は、吸引台12aから遠ざかる方向に移動可能であり、吸引台12a上に配置された被加工物11の外周部に接触することで、基台4に対する被加工物11の位置を所定の位置に調整する。
【0022】
位置決めテーブル12の左方には、ローディングアーム部14が設けられている。ローディングアーム部14は、所定の長さのアームを有している。アームの一端部は、Z軸方向に平行な直線を回転軸として回転可能且つZ軸方向に移動可能である。
【0023】
アームの他端部には、被加工物11を吸引可能なパッドが設けられている。ローディングアーム部14のパッドの下面側には開口が形成されており、この開口には流路(不図示)の一端が接続され、流路の他端にはエジェクタ等の吸引源が接続されている。
【0024】
ローディングアーム部14の一端部の後方には円盤状のターンテーブル16が設けられている。ターンテーブル16は、基台4上で回転可能であり、ターンテーブル16の上面には、円周方向に略120度離れる態様で3個のチャックテーブル18が設けられている。
【0025】
ローディングアーム部14に最も近い領域(搬入搬出領域A)と、搬入搬出領域Aから上面視で反時計回りに略120度進んだ領域(粗研削領域B)との各々には、1つのチャックテーブル18が配置されている。また、搬入搬出領域Aから上面視で時計回りに略120度進んだ領域(仕上げ研削領域C)にも、1つのチャックテーブル18が配置されている。
【0026】
各チャックテーブル18は、セラミックス等で形成された円盤状の枠体を有する。枠体の上面側には、円盤状の凹部(不図示)が形成されている。この凹部には、多孔質材料で形成された円盤状のポーラス板が固定されている。
【0027】
ポーラス板の上面は、上方に露出しており、ポーラス板の下面は、チャックテーブル18内に形成されている流路(不図示)の一端に接続されている。この流路の他端には、エジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。
【0028】
吸引源を動作させるとポーラス板の上面には負圧が生じ、ポーラス板の上面は被加工物11等を吸引して保持する保持面18aとして機能する。ターンテーブル16よりも後方には、四角柱状の支持構造20a,20bが設けられている。
【0029】
支持構造20aの前方に位置する前面にはZ軸移動機構22が設けられている。Z軸移動機構22は、支持構造20aの前面に配置されZ軸方向に概ね平行な一対のZ軸ガイドレール24を備える。
【0030】
一対のZ軸ガイドレール24には、Z軸移動プレート26がスライド可能に取り付けられている。Z軸移動プレート26の裏面側(後方側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、一対のZ軸ガイドレール24の間でZ軸ガイドレール24に沿って設けられたZ軸ボールネジ28が回転可能な態様で連結している。
【0031】
Z軸ボールネジ28の上方の端部には、Z軸パルスモーター30が連結されている。Z軸パルスモーター30でZ軸ボールネジ28を回転させれば、Z軸移動プレート26は、Z軸ガイドレール24に沿ってZ軸方向に移動する。Z軸移動プレート26の前面側には、粗研削ユニット(加工ユニット)32aが固定されている。
【0032】
粗研削ユニット32aは、Z軸移動プレート26の前面側に固定されている筒状のスピンドルハウジング34を有する。スピンドルハウジング34内には、Z軸方向に平行に配置されたスピンドル(不図示)の一部が回転可能な状態で収容されている。
【0033】
スピンドルの上端部には、スピンドルモーター36が連結されている。スピンドルの下端部は、スピンドルハウジング34から突出している。スピンドルの下端部には、円盤状のホイールマウントの上面側が連結されており、ホイールマウントの下面側には粗研削ホイール38aが装着されている。
【0034】
粗研削ホイール38aは、アルミニウム合金等の金属材料で形成された略円盤状のホイール基台40aと、ホイール基台40aの下面側に装着された複数の粗研削砥石42aとを有する。
【0035】
複数の粗研削砥石42aの各々は、略直方体形状を有している。複数の粗研削砥石42aは、ホイール基台40aの下面の円周に沿って、隣り合う研削砥石同士の間に間隙が設けられる態様で環状に配列されている。
【0036】
粗研削砥石42aは、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、cBN(cubic boron nitride)等の砥粒を混合して形成される。なお、結合材や砥粒の材料に特段の制限はなく、粗研削砥石42aの仕様に応じて適宜選択できる。粗研削ホイール38aの直下は、上述の粗研削領域Bに対応する。
【0037】
粗研削ユニット32aが設けられる支持構造20aの左方に隣接して、四角柱状の支持構造20bが設けられている。支持構造20bの前方に位置する前面には、支持構造20aと同様に、Z軸移動機構22が設けられている。
【0038】
また、支持構造20bのZ軸移動機構22には、Z軸移動プレート26を介して、仕上げ研削ユニット(加工ユニット)32bが連結されている。仕上げ研削ユニット32bも、粗研削ユニット32aと同様に、スピンドルハウジング34、スピンドル(不図示)、及び、スピンドルモーター36を有する。
【0039】
仕上げ研削ユニット32bのスピンドルの下端部には、円盤状のホイールマウントの上面側が連結されており、ホイールマウントの下面側には、円盤状の仕上げ研削ホイール38bが装着されている。
【0040】
仕上げ研削ホイール38bは、略円盤状のホイール基台40bと、ホイール基台40bの下面側に装着された複数の仕上げ研削砥石42bとを有する。複数の仕上げ研削砥石42bの各々は、略直方体形状を有している。複数の仕上げ研削砥石42bは、ホイール基台40bの下面の円周に沿って、隣り合う研削砥石同士の間に間隙が設けられる態様で環状に配列されている。
【0041】
仕上げ研削砥石42bも、結合材に砥粒を混合して形成されている。仕上げ研削砥石42bでは、粗研削砥石42aの砥粒よりも平均粒径が小さい。但し、仕上げ研削砥石42bの結合材や砥粒の材料に特段の制限はなく、仕上げ研削砥石42bの仕様に応じて適宜選択できる。仕上げ研削ホイール38bの直下は、上述の仕上げ研削領域Cに対応する。
【0042】
ローディングアーム部14の一端部の左方には、アンローディングアーム部44が設けられている。アンローディングアーム部44は、所定の長さのアームを有している。アームの一端部は、Z軸方向に平行な直線を回転軸として回転可能且つZ軸方向に移動可能である。
【0043】
アームの他端部には、被加工物11を吸引可能なパッドが設けられている。アンローディングアーム部44のパッドの下面側には開口が形成されており、この開口には流路(不図示)の一端が接続され、流路の他端にはエジェクタ等の吸引源が接続されている。
【0044】
アンローディングアーム部44の左方には、研削後の被加工物11を洗浄するためのスピンナ洗浄ユニット46が設けられている。スピンナ洗浄ユニット46の前方には、上述のカセット載置領域6bが設けられている。
【0045】
カセット載置領域6bの前方には、モニター(表示部)48が設けられている。モニター48は、液晶ディスプレイ、液晶ビデオモニター等であり、モニター48には、被加工物11の加工条件や、図2に示す様に、研削装置2に関する複数の検査項目が記載されたチェックシート56が表示される。
【0046】
研削装置2は、制御部50を有する。制御部50は、位置決めテーブル12、ローディングアーム部14、ターンテーブル16、チャックテーブル18、粗研削ユニット32a、仕上げ研削ユニット32b、アンローディングアーム部44、スピンナ洗浄ユニット46、モニター48等を制御する。
【0047】
制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置(ハードウェア資源)等を動作させることによって、制御部50の機能が実現される。
【0048】
制御部50には、キーボード等の入力装置(入力部)52が接続されている。作業者は、入力装置52を使用して、制御部50へ所定の指令を与えることができ、また、数値、日付等を入力できる。なお、モニター48がタッチパネル式のモニターである場合には、モニター48は表示部と入力部とを兼ねる。
【0049】
入力装置52等を介して制御部50に入力された情報は、記憶部54に記憶される。本実施形態の記憶部54は、補助記憶装置の一部である。記憶部54に記憶された情報のうち検査項目に関する情報は、モニター48に表示されるチェックシート56に反映される。
【0050】
次に、研削装置2で被加工物11を加工する方法について簡単に説明する。まず、被加工物11は、搬送ロボット10によりカセット8aから位置決めテーブル12へ搬送される。位置決めテーブル12で位置が調整された後、被加工物11はローディングアーム部14により搬入搬出領域Aに位置するチャックテーブル18へ搬入される。
【0051】
その後、ターンテーブル16が上面視で反時計回りに回転することで、被加工物11の一面側が吸引保持されたチャックテーブル18が粗研削領域Bに位置付けられ、粗研削ユニット32aで被加工物11の他面側が粗研削される。
【0052】
更にその後、ターンテーブル16を上面視で反時計回りに更に回転させることで、チャックテーブル18が仕上げ研削領域Cに位置付けられた後、仕上げ研削ユニット32bで被加工物11の他面側が仕上げ研削される。
【0053】
次いで、ターンテーブル16を上面視で時計回りに回転させることで、チャックテーブル18は搬入搬出領域Aに戻される。その後、アンローディングアーム部44で、被加工物11はチャックテーブル18からスピンナ洗浄ユニット46へ搬送される。スピンナ洗浄ユニット46で洗浄された被加工物11は、搬送ロボット10によりカセット8bへ搬送される。
【0054】
次に、モニター48に表示されるチェックシート56(図2参照)等を用いて行われる、研削装置2の検査について説明する。図2は、モニター48に表示されるチェックシート56の一例を示す図である。
【0055】
モニター48には、研削装置2の点検項目(複数の検査項目)として予め用意された項目の名称等が、チェックシート56として表示される。検査項目のNo.1は、緊急遮断(EMO)スイッチの動作の検査である。
【0056】
緊急遮断スイッチ(不図示)は、例えば、研削装置2の基台4を覆う筐体(不図示)の側面に設けられている。緊急遮断スイッチの動作の検査では、例えば、研削装置2の電源が入った状態で作業者が緊急遮断スイッチを押下することで、安全に研削装置2がシャットダウン状態に移行するか否かを検査する。
【0057】
検査項目のNo.2は、エアー(バキューム)圧力の検査である。吸引台12a、ローディングアーム部14、チャックテーブル18、アンローディングアーム部44等の各流路には、圧力センサ(不図示)が接続されている。
【0058】
エアー圧力の確認では、各圧力センサを利用して、例えば、吸引口及び開口を被加工物11で塞いだ場合や、ポーラス板を被加工物11で覆った場合に、流路が所定の圧力以下に低下するかどうかを測定する。
【0059】
検査項目のNo.3は、搬送ロボット6のハンド部の清掃の検査である。搬送ロボット6のハンド部にゴミ等の異物があると、カセット8aから位置決めテーブル12へ被加工物11を搬送する際に、被加工物11に異物が付着する恐れがある。それゆえ、ハンド部の清掃の有無が検査される。
【0060】
検査項目のNo.4は、搬送ロボット6のセンサの動作の検査である。通常、搬送ロボット6のハンド部の先端部には、カセット8a内において被加工物11の有無を検出するための光学式センサ(いわゆるマッピングセンサ)が設けられている。例えば、ハンド部をカセット8a内に進入させて、この光学式センサが正常に動作するか否かを検査する。
【0061】
検査項目のNo.5は、ローディングアーム部14及びアンローディングアーム部44のパッドの清掃の検査である。パッドにゴミ等の異物があると、被加工物11をチャックテーブル18へ搬入する際や、チャックテーブル18から被加工物11を搬出する際に、被加工物11に異物が付着する恐れがある。それゆえ、パッドの清掃の有無が検査される。
【0062】
検査項目のNo.6は、チャックテーブル18の検査である。研削装置2に使用されるチャックテーブル18の下方には、チャックテーブル18の回転の中心軸を鉛直方向から所定角度傾けるための角度調整機構(不図示)が設けられている。チャックテーブル18の検査では、例えば、角度調整機構が正常に動作するか否かを検査する。
【0063】
検査項目のNo.7は、ホイール(粗研削ホイール38a,仕上げ研削ホイール38b)の検査である。例えば、ホイールに破損がないか、ホイールとホイールマウントとの間にゴミ等の異物がないか、ホイールは規定のトルク値でホイールマウントに取り付けられているか等を検査する。
【0064】
検査項目のNo.8は、スピンドルモーター36の電流値の検査である。例えば、各スピンドルモーター36を駆動させて、粗研削ホイール38a及び仕上げ研削ホイール38bをそれぞれ無負荷状態で回転させる。このとき、各スピンドルモーター36の電流値を監視し、異常が生じていないかを検査する。
【0065】
検査項目のNo.9は、漏水の検査である。粗研削砥石42aや仕上げ研削砥石42bで被加工物11を研削する場合には、研削砥石と被加工物11との接触領域に純水等の研削水が供給される。使用後の研削水は、廃液となり、例えば、チャックテーブル18の下方の所定領域へ流れる。
【0066】
チャックテーブル18の下方の所定領域には、使用後の研削水が一時的に貯留される廃液受け部(不図示)が設けられており、廃液受け部は、ホース等の連結部材(不図示)で廃液回収機構(不図示)に接続されている。漏水の検査では、廃液受け部、連結部材、廃液回収機構等において、廃液が漏れていないかを、漏水センサ、目視等で検査する。
【0067】
検査項目のNo.10は、ミスト漏れの検査である。研削ホイール(粗研削ホイール38a、仕上げ研削ホイール38b)と、チャックテーブル18とは、金属製のカバー(不図示)により側方及び上方が覆われており、当該カバーにはミスト等を排気するための排気装置(不図示)が設けられている。ミスト漏れの検査では、ミストがカバーから漏れていないかを、漏水センサ、目視等で検査する。
【0068】
検査項目のNo.11は、フルオート運転終了後の清掃の検査である。例えば、所定枚数の被加工物11について、フルオート運転により、搬出、粗研削、仕上げ研削、洗浄、及び、搬入が完了した後に、ターンテーブル16、廃液受け部等を清掃したかが検査される。
【0069】
各検査項目には、検査を行う予定日が記入される検査年月日の欄が設けられている。なお、図2では、便宜上、全ての予定日がドット及びスラッシュで示されているが、予定日はそれぞれ異なっていてもよいし、2以上が同じであってもよいし、全てが同じであってもよい。
【0070】
各検査項目には、予め点数が割り振られている。本実施形態では、No.1からNo.9には、それぞれ10点が割り振られ、NO.10及びNo.11には、それぞれ5点が割り振られている。なお、点数の大小は、検査項目の重要性に応じて作業者が適宜定めてもよい。
【0071】
また、検査項目の数は、11個に限定されず、11個よりも多くても少なくてもよい。チェックシート56には予備的な空欄が設けられてもよい。この場合、作業者は、空欄に任意の検査項目を記載できる。作業者は、この任意の検査項目に対しても適宜点数を割り振ってよい。
【0072】
制御部50は、検査年月日に示されている検査を行う予定日を経過しても行われていない各検査項目に対応する点数と、基準となる所定の点数とに基づいて、第1の演算方式に従う演算を行う。本実施形態において、第1の演算方式は減算であり、制御部50は、所定の点数(例えば、100点)から、予定日経過後も行われていない各検査項目に対応する点数を減算する。
【0073】
演算後の点数は、検査の進捗状況を表す。演算後の点数は、例えば、記憶部54に記憶される。制御部50は、演算後の点数と、予定日を経過しても行われていない各検査項目の名称とに加えて、演算後の点数に対応する所定のイラストレーションを含むイラストレーション付き画像58を、モニター48に表示させる。
【0074】
図3は、イラストレーション付き画像58の一例を示す図である。図3では、演算後の点数が、「装置の健康状態」と記載した文字列の隣に示されている。また、この文字列の下に、演算後の点数に対応するイラストレーションが示されている。
【0075】
なお、図3に示すイラストレーション付き画像58を示す画像領域と、図2に示すチェックシート56を示す画像領域とは、例えば、作業者が、モニター48の枠部分に常時表示されるGUI(Graphical User Interface)のボタンDを押下することにより切り替えられる。
【0076】
例えば、モニター48にチェックシート56が表示されている状態で、ボタンDを1回押すと、チェックシート56が表示されている画像領域は、イラストレーション付き画像58を示す画像領域に切り替わる。また、更に、ボタンDをもう1回押すと、イラストレーション付き画像58を示す画像領域は、チェックシート56を示す画像領域に切り替わる。
【0077】
図3に示す例では、No.2及びNo.10の検査が行われていないことを理由に15点が減算されている。また、所定の検査項目で検査の対象となる構成要素(例えば、検査項目No.2での圧力センサ等)で生じたエラーのログは制御部50に保存されており、一定期間に所定回数のエラーが発生したことを理由に5点が減算されている。
【0078】
100点から20点が減算された80点は、この点数に対応するイラストレーションと共に表示されている。イラストレーションは、図4(A)、図4(B)、図4(C)、図4(D)及び図4(E)に示す様に演算後の点数に応じて予め定められている。各イラストレーションと、イラストレーションと演算後の点数との関係とは、予め記憶部54に記憶されている。
【0079】
図4(A)は、第1のイラストレーションを示す図であり、例えば、演算後の点数が81点以上100点以下の場合に表示される。図4(B)は、第2のイラストレーションを示す図であり、例えば、演算後の点数が61点以上80点以下の場合に表示される。
【0080】
図4(C)は、第3のイラストレーションを示す図であり、例えば、演算後の点数が41点以上60点以下の場合に表示される。図4(D)は、第4のイラストレーションを示す図であり、例えば、演算後の点数が21点以上40点以下の場合に表示される。
【0081】
図4(E)は、第5のイラストレーションを示す図であり、例えば、演算後の点数が0点以上20点以下の場合に表示される。本実施形態では、予定日を経過しても行われていない検査項目がある場合には、検査項目に対応する点数が減算された点数がモニター48に表示される。
【0082】
この様に、検査の進捗状況がモニター48に表示されるので、研削装置2の点検の必要性の程度を作業者に対して定量的且つ視覚的に作業者に知らせることができる。これにより、作業者に対して研削装置2の点検を促すことができる。
【0083】
次に、チェックシート56等を用いた研削装置2の点検方法について説明する。研削装置2の電源を入れると、例えば、モニター48には、図3に示すイラストレーション付き画像58が表示される。
【0084】
作業者は、減点の対象となっている(即ち、予定日を経過しても行われていない)検査項目(以下、非検査項目)の名称を確認し、この非検査項目について検査を適宜行う。1以上の非検査項目について検査を行った後、作業者は、ボタンDを押してチェックシート56を表示させる。
【0085】
そして、検査を行った年月日(検査項目に関する情報)を、入力装置52を介して制御部50に入力する。これにより、非検査項目に対応する検査が行われた旨が制御部50により把握され、チェックシート56には、制御部50を介して検査を行った年月日が反映(入力)される。
【0086】
なお、年月日を入力することに代えて、チェックシート56にチェックボックス(不図示)を設け、作業者が入力装置52を介してこのチェックボックスにチェックを入れてもよい。これにより、検査を行った旨が制御部50により把握される。この場合、制御部50が有している年月日の情報が自動的に検査年月日の欄に反映される。
【0087】
制御部50は、非検査項目のうち検査が行われた検査項目に対応する点数と、第1の演算方式に従って行われた演算後の点数とに基づいて、第2の演算方式に従い演算を行う。第2の演算方式は、例えば、第1の演算方式とは異なる。
【0088】
本実施形態において第2の演算方式は、加算である。制御部50は、第1の演算方式での演算後の点数(図3の例では、80点)に対して、非検査項目のうち検査が行われた各検査項目に対応する点数を加算する。例えば、非検査項目のNo.1及びNo.10の検査が行われた場合、演算後の点数は95点(=80点+15点)となる。
【0089】
制御部50は、イラストレーション付き画像58の表示が選択された場合に、第2の演算方式での演算後の点数と、演算後の点数に対応する所定のイラストレーションとを含むイラストレーション付き画像58を、モニター48に表示させる。演算後の点数が95点である場合、この95点と、図4(A)のイラストレーションとが表示される。
【0090】
この様に、研削装置2の点検を促して、作業者に点検を実行させることにより、研削装置2の故障、研削精度の低下等に起因して、研削中に被加工物11が破損してしまう事態等を防止できる。
【0091】
(第1の変形例)第1及び第2の演算方式は、上述の例に限定されない。例えば、第1の演算方式を加算とし、第2の演算方式を減算にしてもよい。この場合、例えば、各検査項目に対応してマイナスの点数(-10点、-5点等)が割り当てられる。
【0092】
そして、基準となる所定の点数(100点)に、非検査項目に対応するマイナスの点数を加算した点数Xが算出され、イラストレーション付き画像58では、検査の進捗状況を表す点数Xが表示される。また、非検査項目の名称も表示される。
【0093】
作業者は、1以上の非検査項目について検査を行った場合、チェックシート56が表示されている状態で、その検査を行った年月日を、入力装置52を介して制御部50に入力する。
【0094】
制御部50は、点数Xから、非検査項目のうち検査が行われた検査項目に対応するマイナスの点数(-Y)を減算することにより、第2の演算方式での演算後の点数Z(Z=X-(-Y))を算出する。
【0095】
更に、制御部50は、イラストレーション付き画像58においては、検査の進捗状況を表す点数Zと、点数Zに対応する所定のイラストレーションとを、モニター48に表示させる。なお、非検査項目が未だ存在する場合には、非検査項目の名称も表示される。
【0096】
(第2の変形例)第1及び第2の演算方式は、上述の様に互いに異なってもよく、共に同じであってもよい。例えば、第1及び第2の演算方式が共に加算の場合、基準となる所定の点数は0点で、検査済の項目の点数が順次加算される。
【0097】
この場合、例えば、各検査項目に対応してプラスの点数(10点、5点等)が割り当てられる。そして、イラストレーション付き画像58では、基準となる所定の点数(0点)に、予定日までに検査が完了した検査項目(即ち、非検査項目以外の検査項目)に対応するプラスの点数が加算された点数X(検査の進捗状況を表す点数)が、モニター48に表示される。また、非検査項目の名称も表示される。
【0098】
作業者は、1以上の非検査項目について検査を行った後、チェックシート56が表示されている状態で、その検査を行った年月日(検査項目に関する情報)を、入力装置52を介して制御部50に入力する。
【0099】
制御部50は、点数Xから、非検査項目のうち検査が行われた検査項目に対応するプラスの点数Yを更に加算することにより、第2の演算方式での演算後の点数Z(Z=X+Y)を算出する。
【0100】
更に、制御部50は、イラストレーション付き画像58においては、検査の進捗状況を表す点数Zと、点数Zに対応する所定のイラストレーションとを、モニター48に表示させる。なお、非検査項目が未だ存在する場合には、非検査項目の名称も表示される。
【0101】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。上述のモニター48、制御部50、入力装置52等は、研削装置2に限定されず、研磨装置、切削装置等の他の加工装置に適用されてもよい。また、第1及び第2の演算方式の各々は、上述の実施形態、第1及び第2の変形例に限定されず、加算、減算、乗算及び除算の中から適宜選択されてもよい。
【符号の説明】
【0102】
2 研削装置(加工装置)
4 基台
4a 凹部
6a,6b カセット載置領域
8a,8b カセット
10 搬送ロボット
11 被加工物
12 位置決めテーブル
12a 吸引台
12b ピン
14 ローディングアーム部
16 ターンテーブル
18 チャックテーブル
18a 保持面
20a,20b 支持構造
22 Z軸移動機構
24 Z軸ガイドレール
26 Z軸移動プレート
28 Z軸ボールネジ
30 Z軸パルスモーター
32a 粗研削ユニット
32b 仕上げ研削ユニット
34 スピンドルハウジング
36 スピンドルモーター
38a 粗研削ホイール
38b 仕上げ研削ホイール
40a,40b ホイール基台
42a 粗研削砥石
42b 仕上げ研削砥石
44 アンローディングアーム部
46 スピンナ洗浄ユニット
48 モニター(表示装置)
50 制御部
52 入力装置(入力部)
54 記憶部
56 チェックシート
58 イラストレーション付き画像
A 搬入搬出領域
B 粗研削領域
C 仕上げ研削領域
D ボタン
図1
図2
図3
図4