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特許7455476ウエーハ検査装置、及びウエーハ検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ウエーハ検査装置、及びウエーハ検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240318BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240318BHJP
   G01N 21/95 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/66 J
G01N21/95 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020093565
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021190532
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】木村 展之
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220480(JP,A)
【文献】特開2015-005542(JP,A)
【文献】特開2018-140469(JP,A)
【文献】特開2012-013614(JP,A)
【文献】特開2020-057743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/66
G01N 21/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に改質層が形成されたウエーハを検査するウエーハ検査装置であって、
裏面側を上方に露出した状態で該ウエーハを保持できる保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された該ウエーハの該裏面側に照射される光を発する点光源と、
該点光源から発せられ該ウエーハの該裏面に照射された該光の反射光を撮像する撮像ユニットと、を備え、
該撮像ユニットは、該保持テーブルに保持されたウエーハに対面する結像レンズと、該結像レンズの結像点に位置づけられたスプリッターと、該スプリッターによって分岐された第一の光路上に配設されたカメラと、を含み、
該点光源は、該スプリッターによって分岐された第二の光路上に配設され、
該点光源が発する該光は、レーザビームであり、
該第二の光路には、該点光源から発せられた光を平行光に生成するコリメートレンズと、該コリメートレンズによって生成された該平行光を該スプリッターに集光する集光レンズと、が配設されていることを特徴とするウエーハ検査装置。
【請求項2】
該保持テーブルと、該撮像ユニットと、を相対的に移動させる移動ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1記載のウエーハ検査装置。
【請求項3】
互いに交差する複数の分割予定ラインが表面に設定され、該表面の該分割予定ラインによって区画された各領域にデバイスが形成されたウエーハに、集光点を該ウエーハの内部に位置づけて該ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射することで複数の該分割予定ラインに沿って改質層が形成された該ウエーハを請求項1乃至請求項のいずれかに記載のウエーハ検査装置で検査するウエーハ検査方法であって、
該ウエーハの該表面を該保持テーブルに向け、該裏面側を上方に露出させた状態で該ウエーハを該保持テーブルで保持する保持ステップと、
該点光源から発せられた該光を該コリメートレンズと、該集光レンズと、該スプリッターと、該結像レンズと、を経て該ウエーハの該裏面に照射する照射ステップと、
該照射ステップで該ウエーハの該裏面に照射されて該裏面で反射され、該結像レンズと、該スプリッターと、を経て該カメラに到達した該光の該反射光を撮像して撮像画像を形成する撮像ステップと、
該撮像ステップで得られた該撮像画像から該ウエーハの内部に形成された該改質層の形成状態を判定する判定ステップと、を備え、
該点光源が発する該光は、レーザビームであることを特徴とするウエーハ検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に改質層が形成されたウエーハの該改質層の形状状況を検査するウエーハ検査装置、及びウエーハ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やパソコン等の電子機器に使用されるデバイスチップの製造プロセスでは、まず、半導体等の材料からなるウエーハの表面に互いに交差する複数の分割予定ラインを設定する。そして、該分割予定ラインで区画される各領域にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスを形成する。さらに、該ウエーハを所定の厚みに薄化し、その後、該ウエーハを該分割予定ラインに沿って分割するとデバイスチップを形成できる。
【0003】
ウエーハを分割する際には、該ウエーハに対して透過性を有する波長(ウエーハが透過できる波長)のレーザビームを分割予定ラインに沿ってウエーハの内部に集光して分割の起点となる改質層を形成する。その後、ウエーハに外力を付与すると、改質層からウエーハの表裏面にクラックが伸長し、ウエーハが分割予定ラインに沿って分割される(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
ここで、改質層がウエーハの内部に適切に形成されていないと、ウエーハを適切に分割できずウエーハに損傷が生じる場合がある。そこで、改質層が形成されたときにウエーハの裏面側に微小な凹凸形状が現れることを利用し、ウエーハの裏面に光をあてて反射光を撮像して凹凸形状の有無を検出する。該反射光が写る画像には、凹凸形状が強調されて写る。この現象は魔鏡と呼ばれており、この魔鏡を利用して改質層の有無を検出する技術が開発されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3408805号公報
【文献】特許第4358762号公報
【文献】特開2017-220480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、改質層の形成状態を高精度に検出するためには、鮮明な撮像画像が得られる必要がある。しかしながら、反射光の画像のコントラストは低くなりやすい傾向にあるため、改質層の有無の判定を精密に実施するのは容易ではない。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コントラストが良好で鮮明な反射光の画像を取得し、ウエーハの内部の改質層の形成状態を精密に判定できるウエーハ検査装置、及びウエーハの検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、内部に改質層が形成されたウエーハを検査するウエーハ検査装置であって、裏面側を上方に露出した状態で該ウエーハを保持できる保持テーブルと、該保持テーブルに保持された該ウエーハの該裏面側に照射される光を発する点光源と、該点光源から発せられ該ウエーハの該裏面に照射された該光の反射光を撮像する撮像ユニットと、を備え、該撮像ユニットは、該保持テーブルに保持されたウエーハに対面する結像レンズと、該結像レンズの結像点に位置づけられたスプリッターと、該スプリッターによって分岐された第一の光路上に配設されたカメラと、を含み、該点光源は、該スプリッターによって分岐された第二の光路上に配設され、該点光源が発する該光は、レーザビームであり、該第二の光路には、該点光源から発せられた光を平行光に生成するコリメートレンズと、該コリメートレンズによって生成された該平行光を該スプリッターに集光する集光レンズと、が配設されていることを特徴とするウエーハ検査装置が提供される。
【0009】
好ましくは、該保持テーブルと、該撮像ユニットと、を相対的に移動させる移動ユニットをさらに備える。
【0011】
また、本発明の他の一態様によると、互いに交差する複数の分割予定ラインが表面に設定され、該表面の該分割予定ラインによって区画された各領域にデバイスが形成されたウエーハに、集光点を該ウエーハの内部に位置づけて該ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射することで複数の該分割予定ラインに沿って改質層が形成された該ウエーハを請求項1乃至請求項のいずれかに記載のウエーハ検査装置で検査するウエーハ検査方法であって、該ウエーハの該表面を該保持テーブルに向け、該裏面側を上方に露出させた状態で該ウエーハを該保持テーブルで保持する保持ステップと、該点光源から発せられた該光を該コリメートレンズと、該集光レンズと、該スプリッターと、該結像レンズと、を経て該ウエーハの該裏面に照射する照射ステップと、該照射ステップで該ウエーハの該裏面に照射されて該裏面で反射され、該結像レンズと、該スプリッターと、を経て該カメラに到達した該光の該反射光を撮像して撮像画像を形成する撮像ステップと、該撮像ステップで得られた該撮像画像から該ウエーハの内部に形成された該改質層の形成状態を判定する判定ステップと、を備え、該点光源が発する該光は、レーザビームであることを特徴とするウエーハ検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係るウエーハ検査装置及びウエーハ検査方法では、点光源が発する光を集光レンズでスプリッターに集光させて該光をウエーハの裏面に照射させ、反射光を該スプリッターに集光させてカメラで該反射光を撮像する。この場合、点光源を出発してからウエーハで反射され該カメラに到達するまでの間において、光の散乱が抑制される。そのため、カメラが形成する撮像画像が鮮明となり、ウエーハの内部の改質層の形成状態をより精密に判定できるようになる。
【0013】
したがって、本発明により、コントラストが良好で鮮明な反射光の画像を取得し、ウエーハの内部の改質層の形成状態を精密に判定できるウエーハ検査装置、及びウエーハの検出方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(A)は、ウエーハの表面側を模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、ウエーハの裏面側を模式的に示す斜視図である。
図2図2(A)は、ウエーハの内部に改質層を形成する様子を模式的に示す斜視図であり、図2(B)は、ウエーハの内部に改質層を形成する様子を模式的に示す断面図である。
図3】ウエーハ検査装置を模式的に示す斜視図である。
図4】ウエーハ検査装置の光学系を模式的に示す側面図である。
図5】照射ステップ及び撮像ステップを模式的に示す斜視図である。
図6】撮像画像の一例を模式的に示す平面図である。
図7】ウエーハ検査方法の各ステップの流れを説明するフローチャートである。
図8】スプリッターに集光される光の進路を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態に係るウエーハ検査装置及びウエーハ検査方法で検査の対象となるウエーハについて説明する。図1(A)は、表面1aに互いに交差する複数の分割予定ライン3が設定され、該分割予定ライン3で区画された表面1aの各領域にデバイス5が形成されたウエーハ1の該表面1a側を模式的に示す斜視図である。図1(B)は、ウエーハ1の裏面1b側を模式的に示す斜視図である。
【0016】
ウエーハ1は、例えば、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムナイトライド(GaN)、または、その他の半導体材料で形成される。または、ウエーハ1は、タンタル酸リチウム(LT)及びニオブ酸リチウム(LN)等の複酸化物等の材料で形成される。
【0017】
ウエーハ1の表面1aには、互いに交差する複数の分割予定ライン3が設定され、分割予定ライン3によって区画された各領域にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス5が形成される。そして、ウエーハ1を分割予定ライン3に沿って分割すると、個々のデバイスチップを形成できる。
【0018】
ウエーハ1を分断する際には、ウエーハ1に対して透過性を有する波長(ウエーハ1を透過する波長)のレーザビームをウエーハ1の内部に集光できるレーザ加工装置にウエーハ1を搬入する。図2(A)は、レーザ加工装置2でレーザ加工されているウエーハ1を模式的に示す斜視図である。
【0019】
図2(A)に示す通り、ウエーハ1は、レーザ加工される前にシート9及びフレーム7と一体化される。そして、ウエーハ1と、シート9と、フレーム7と、を含むフレームユニット11が形成される。このとき、ウエーハ1の表面1a側にシート9が配設され、裏面1b側が外部に露出する。ウエーハ1が分割されて形成された個々のデバイスチップは、シート9に支持される。その後、シート9を拡張することでデバイスチップ間の間隔を広げると、デバイスチップのピックアップが容易となる。
【0020】
環状のフレーム7は、例えば、金属等の材料で形成され、ウエーハ1の径よりも大きい径の開口を備える。フレームユニット11を形成する際は、ウエーハ1は、フレーム7の該開口内に位置付けられ、該開口に収容される。
【0021】
シート9は、フレーム7の開口よりも大きい径を有する。シート9は、例えば、基材層と、該基材層の上に形成された粘着層と、を備えるダイシングテープと呼ばれるテープである。シート9がダイシングテープである場合、シート9は、粘着層で発現する粘着力によりフレーム7及びウエーハ1の表面1aに貼着される。または、シート9は、例えば、ポリオレフィン系シートやポリエステル系シート等の粘着層を備えない樹脂系シートでもよく、この場合に、シート9はウエーハ1に熱圧着される。
【0022】
レーザ加工装置2は、シート9を介してウエーハ1を保持する保持テーブル(不図示)と、該保持テーブルに保持されたウエーハ1にレーザビームを照射するレーザ加工ユニット4と、を備える。レーザ加工ユニット4は、ウエーハ1に対して透過性を有する波長のレーザビーム6をウエーハ1の内部に集光させる加工ヘッド4aを備える。レーザ加工ユニット4は、例えば、波長が1064nmのレーザビームをパルス発振するNd:YAG等の媒質を備えたレーザ発振器を含む。
【0023】
図2(B)は、レーザ加工されるウエーハ1を模式的に示す断面図である。ウエーハ1の内部の所定の深さ位置に集光点4bを位置づけて、レーザビーム6を集光点4bに集光させつつウエーハ1とレーザビーム6を相対的に移動させる。すると、レーザビーム6が分割予定ライン3に沿ってウエーハ1に照射され、分割予定ライン3に沿った改質層3aがウエーハ1の内部に形成される。
【0024】
さらに、改質層3aが形成される際に、該改質層3aからウエーハ1の表面1a及び裏面1bに向かって伸張するクラックが形成されてもよい。また、改質層3aが内部に形成されたウエーハ1に外力を付与することでクラックを改質層3aから伸張させてもよい。ウエーハ1に改質層3aと、該改質層3aから伸張したクラックと、が形成されると、ウエーハ1が分割予定ライン3に沿って分割される。すなわち、改質層3aは、ウエーハ1を分割する際の分割起点として機能する。
【0025】
ただし、ウエーハ1が適切にレーザ加工されず、改質層3aが分割予定ライン3に沿ってウエーハ1の内部に適切に形成されていない場合、ウエーハ1を適切に分割できずウエーハ1に損傷が生じる。すなわち、クラックが予定された方向から逸脱して進行してデバイス5に達する場合や、ウエーハ1が分割されて形成されたチップの端部が荒れてチップの品質が低下する場合がある。
【0026】
そこで、レーザ加工されたウエーハ1を検査して、改質層3aがウエーハ1の内部に予定通りに形成されているか否かを確認することが考えられる。ただし、形成される改質層3aがウエーハ1の外部から視認できない。そこで、改質層3aが形成されたときにウエーハ1の裏面1b側に微小な凹凸形状が現れることを利用する。
【0027】
すなわち、ウエーハ1の裏面1bに光をあてて反射光を撮像して撮像画像を形成し、該撮像画像に基づいて改質層の形成状態を判定する。該反射光が写る画像には、凹凸形状が強調されて写る。この現象は魔鏡と呼ばれており、この魔鏡を利用して改質層3aの形成状態を判定する。
【0028】
ここで、改質層3aの形成状態を高精度に検出するためには、凹凸形状が鮮明に反映された反射光の撮像画像が得られる必要がある。しかしながら、反射光の撮像画像のコントラストは低くなりやすい傾向にあるため、該撮像画像に基づいて改質層3aの形成状態を精密に判定するのは容易ではない。
【0029】
そこで、本実施形態に係るウエーハ検査装置は、高コントラストで鮮明な反射光の撮像画像を取得しウエーハ1の内部の改質層3aの形成状態を精密に判定できるように、以下に説明するように構成される。次に、本実施形態に係るウエーハ検査装置について説明する。図3は、本実施形態に係るウエーハ検査装置8を模式的に示す斜視図である。
【0030】
ウエーハ検査装置8は、各構成要素を支持する基台10を備える。基台10の上面には、ウエーハ1を保持する保持テーブル34をX軸方向に移動させるX軸方向移動ユニット12と、保持テーブル34をX軸方向に直交するY軸方向に移動させるY軸方向移動ユニット22と、が設けられている。
【0031】
X軸方向移動ユニット12は、X軸方向に沿った一対のX軸ガイドレール14を基台10の上面に備える。一対のX軸ガイドレール14には、X軸移動テーブル16がスライド可能に取り付けられる。X軸移動テーブル16の裏面側にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部にはX軸ガイドレール14に対して概ね平行なX軸ボールネジ18が螺合されている。
【0032】
X軸ボールネジ18の一端部には、X軸パルスモータ20が連結されている。X軸パルスモータ20によってX軸ボールネジ18を回転させることにより、X軸移動テーブル16がX軸ガイドレール14に沿ってX軸方向に移動する。
【0033】
Y軸方向移動ユニット22は、Y軸方向に沿った一対のY軸ガイドレール24をX軸移動テーブル16の上面に備える。一対のY軸ガイドレール24には、Y軸移動テーブル26がスライド可能に取り付けられる。Y軸移動テーブル26の裏面側にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部にはY軸ガイドレール24に対して概ね平行なY軸ボールネジ28が螺合されている。
【0034】
Y軸ボールネジ28の一端部には、Y軸パルスモータ30が連結されている。Y軸パルスモータ30によってY軸ボールネジ28を回転させることにより、Y軸移動テーブル26がY軸ガイドレール24に沿ってY軸方向に移動する。Y軸移動テーブル26の上面には、X軸方向移動ユニット12及びY軸方向移動ユニット22を覆うカバー32と、ウエーハ1を保持する保持テーブル34と、が設けられている。
【0035】
保持テーブル34の周囲には、フレームユニット11のフレーム7を把持する複数のクランプ34bが設けられる。保持テーブル34は、上面34aに露出する多孔質部材と、該多孔質部材に一端が接続された吸引路と、該吸引路の他端に接続された吸引源と、を備える。該吸引源を作動させると、保持テーブル34に載せられたウエーハ1が吸引保持される。
【0036】
保持テーブル34の上方には、保持テーブル34で吸引保持されたウエーハ1を撮像する撮像ユニット38が設けられる。撮像ユニット38は、基台10の後方上面から上方に伸張した柱部と、該柱部の上端から保持テーブル34の上方に伸びた腕部と、を備える支持部36により支持される。支持部36の上には、例えば、各種の情報を表示できる液晶ディスプレイ等の表示ユニット40が設けられてもよい。
【0037】
図4は、ウエーハ検査装置8の光学系を模式的に示す側面図である。該光学系は、例えば、支持部36に収容される。ウエーハ検査装置8は、保持テーブル34に保持されたウエーハ1の裏面1b側に照射される光を発する点光源56と、該点光源56から発せられウエーハ1の裏面1bに照射された該光の反射光を撮像する撮像ユニット38と、を備える。
【0038】
撮像ユニット38は、保持テーブル34に保持されたウエーハ1に対面する結像レンズ42と、該結像レンズ42の結像点46に位置づけられたスプリッター44と、該スプリッター44によって分岐された第一の光路50上に配設されたカメラ48と、を含む。カメラ48は、CCDセンサまたはCMOSセンサ等のイメージセンサを備え、カメラ48に到達した光を撮像して撮像画像を形成できる。
【0039】
スプリッター44で分岐される第二の光路62には、点光源56が配設されている。点光源56は、例えば、一端に光源52が接続された光ファイバー54の他端側で構成され、光源52から発せられ光ファイバー54を進行した光が第二の光路62に向かう際の出発点となる。なお、光源52は、例えば、レーザを発振するレーザ発振器であり、該点光源56は、該光としてレーザビームを発する。ただし、光源52はこれに限定されず、光源52は、LED等でもよい。
【0040】
第二の光路62には、点光源56から発せられた光64を平行光に生成するコリメートレンズ58と、該コリメートレンズ58によって生成された該平行光をスプリッター44に集光する集光レンズ60と、が配設されている。集光レンズ60の集光点は、結像レンズ42のスプリッター44に位置づけられた結像点46と一致する。なお、図4では、点光源56から発せられた光64の拡散が強調して描かれている。
【0041】
内部に改質層3aが形成されたウエーハ1をウエーハ検査装置8で検査する際には、まず、保持テーブル34でウエーハ1を保持する。このとき、ウエーハ1の裏面1b側が上方に露出する。そして、ウエーハ1の観察したい領域を結像レンズ42の下方に位置づける。なお、図4では、シート9及びフレーム7等が省略されている。
【0042】
次に、光源52を作動させると、点光源56から発せられた光64が第二の光路62を進行する。すなわち、光64がコリメートレンズ58に進み、該コリメートレンズ58で平行光に生成される。その後、光64が集光レンズ60に進みスプリッター44に集光され、スプリッター44で反射されて結像レンズ42に進行する。結像レンズ42で再び平行光に生成された光64はウエーハ1の裏面1b側に照射され、ウエーハ1に反射される。
【0043】
光64の反射光66は、結像レンズ42に進行し、スプリッター44に位置づけられた結像点46に集光される。その後、反射光66は第一の光路50を進行してカメラ48に到達する。カメラ48は、到達した反射光66を撮像して撮像画像を形成する。
【0044】
図5に示す通り、保持テーブル34で保持されたウエーハ1と、撮像ユニット38と、をX軸方向及びY軸方向に沿って移動させつつ、分割予定ライン3に沿って光64を照射して反射光66をカメラ48で撮像すると、ウエーハ1の裏面1bの全域を検査できる。
【0045】
ウエーハ1の内部に改質層3aが形成されると、ウエーハ1の裏面1bには改質層3aの形成状態を反映した微小な凹凸形状が現れる。そして、凹凸形状が現れた領域では光64が散乱されるため、反射光66を撮像した撮像画像では凹凸形状が生じた位置が明るく写る。この現象は魔鏡と呼ばれる。
【0046】
図6は、撮像画像13の一例を模式的に示す平面図である。図6に示す通り、撮像画像13には、改質層3aの形成状態を反映した明るい線15が写る。そのため、撮像画像13に基づいてウエーハ1の内部の改質層3aの形成状態を判定できる。例えば、撮像画像13に写る明るい線15に欠けがある場合、欠けが確認された領域において改質層3aが適切に形成されていないことが確認される。
【0047】
ここで、点光源56に代えて特定の大きさを有する線状または面状等の光源をウエーハ検査装置8に設けた場合、該光源の中央で発せられた光64と、端部で発せられた周辺光と、の進路の差により撮像画像13にぼけが生じる。これは、最終的に光64とともに周辺光がウエーハ1の裏面1bに入射する際に、該周辺光が該凹凸形状により予定されていない方向から入射し、その結果、該周辺光が予定されていない方向に反射されるためである。
【0048】
そこで、本実施形態に係るウエーハ検査装置8では、撮像画像13にぼけを生じさせる周辺光を生じさせないために、点光源56を形成する光ファイバー54は20μm以下の径とされるとよい。また、光源52にレーザ発振器を用いる場合、該レーザ発振器は、例えば、波長が600nm~700nmの範囲にあるレーザを発振する機能を有するとよい。レーザビームは単色で径が小さく極めて直進性のよいため、光64をレーザビームとすると得られる撮像画像13が鮮明となりコントラストが上がる。
【0049】
さらに、本実施形態に係るウエーハ検査装置8では、光64を集光レンズ60でスプリッター44に集光させるとともに、反射光66を結像レンズ42でスプリッター44に集光させる。そのため、スプリッター44に入射する光をスプリッター44に集光させない場合と比較して、スプリッター44における光の散乱が抑制される。そのため、撮像画像13がより一層鮮明となり、コントラストも上がる。
【0050】
図8は、スプリッター44に集光される反射光66の進路を模式的に示す側面図である。反射光66は、スプリッター44の結像レンズ42側の界面44aからスプリッター44に入射し、スプリッター44の内部で集光され、スプリッター44のカメラ48側の界面44bから該スプリッター44の外部に進行する。このとき、界面44a及び界面44bでは、反射光66の一部が反射される。
【0051】
図8には、反射光66の外縁を進む光66a及び光66bの進路が示されている。図8に示される通り、界面44bでは光66a及び光66bの一部が反射され、さらに、反射光68a,68bが界面44aで反射される。反射光68a,68bがカメラ48に到達して光66a,66bと同時に撮像画像13に写り込むと、撮像画像13が不鮮明となる。
【0052】
しかしながら、スプリッター44の内部に結像レンズ42の結像点46が位置付けられていると、界面44bにおける光66a,66bの入射角及び反射角と、界面44aにおける反射光68a,68bの入射角及び反射角と、が比較的大きくなる。そのため、反射光68a,68bはカメラ48から大きく離れるように進行するため、カメラ48に到達しにくい。
【0053】
これに対して、スプリッター44に結像レンズ42の結像点46が位置付けられていない場合、界面44a,44bにおける光の入射角及び反射角が小さくなる。この場合、界面44a,44bで反射された光がカメラ48に到達し易くなり、撮像画像13を不鮮明にする要因となる。
【0054】
したがって、本実施形態に係るウエーハ検査装置8を使用して得られる撮像画像13は高コントラストかつ高精細であり、該撮像画像13に基づくとウエーハ1の内部の改質層3aの形成状態についてより細かく解析し、より詳細な情報を得られる。
【0055】
次に、以上に説明したウエーハ検査装置8を使用してウエーハ1を検査する本実施形態に係るウエーハ検査方法について説明する。図7は、本実施形態に係るウエーハ検査方法の各ステップの流れを説明するフローチャートである。該ウエーハ検査方法は、図3等に模式的に示すウエーハ検査装置8で実施される。以下、本実施形態に係るウエーハ検査方法で検査されるウエーハ1と、各ステップと、について説明する。
【0056】
該検査方法で検査されるウエーハ1は、図1(A)に示される通り、互いに交差する複数の分割予定ライン3が表面1aに設定され、該表面1aの該分割予定ライン3によって区画された各領域にデバイス5が形成されたウエーハ1である。そして、図2(A)及び図2(B)に示される通り、ウエーハ1には、集光点4bをウエーハ1の内部に位置づけられた状態でウエーハ1に対して透過性を有する波長のレーザビーム6が照射されることで複数の分割予定ライン3に沿って改質層3aが形成されている。
【0057】
該検査方法では、まず、ウエーハ1の表面1aを保持テーブル34に向け、裏面1b側を上方に露出させた状態でウエーハ1を保持テーブル34で保持する保持ステップS10を実施する。
【0058】
次に、図4等に示す通り、点光源56から発せられた光64をコリメートレンズ58と、集光レンズ60と、スプリッター44と、結像レンズ42と、を経てウエーハ1の裏面1bに照射する照射ステップS20を実施する。光64は、例えば、波長600nm~700nmのレーザビームとするとよい。ただし、光64はレーザビームに限定されない。特に光64がレーザビームである場合に該光64の直進性は極めて良いが、図4では、説明の便宜のために点光源56から出た光64の拡散が強調して描かれている。
【0059】
点光源56から発せられた光64は、まず、コリメートレンズ58に進み、平行光に生成される。そして、平行光に生成された光64は集光レンズ60によりスプリッター44に集光され、結像レンズ42に向けて反射される。そして、結像レンズ42の結像点46がスプリッター44に位置づけられているため、光64は結像レンズ42で再び平行光に生成されてウエーハ1の裏面1bに照射される。
【0060】
次に、照射ステップS20でウエーハ1の裏面1bに照射されて該裏面1bで反射され、結像レンズ42と、スプリッター44と、を経てカメラ48に到達した光64の反射光66を撮像して撮像画像13を形成する撮像ステップS30を実施する。すなわち、光64がウエーハ1の裏面1bで反射された反射光66は、結像レンズ42によりスプリッター44に集光される。そして、反射光66の一部の成分が第一の光路50を進行してカメラ48に到達し、カメラ48のイメージセンサに受光される。
【0061】
次に、撮像ステップS30で得られた撮像画像13からウエーハ1の内部に形成された改質層3aの形成状態を判定する判定ステップS40を実施する。図6は、撮像画像13の一例を模式的に示す平面図である。撮像画像13には、魔鏡現象により明るい線15が写る。明るい線15は、ウエーハ1の内部に改質層3aが形成されたことでウエーハ1の裏面1bに現れた凹凸形状で光64が反射されたことに起因して撮像画像13に現れており、改質層3aの形成状態が反映されて撮像画像13に写る。
【0062】
例えば、一度にウエーハ1の裏面1bの全域に光64を照射できない場合、照射ステップS20及び撮像ステップS30を実施した後、ウエーハ1及び撮像ユニット38を相対的に移動させつつ照射ステップS20及び撮像ステップS30を繰り返すと良い。そして、ウエーハ1の裏面1bの全域にわたって撮像画像13が得られたとき、判定ステップS40を実施して、ウエーハ1の全領域における改質層3aの形成状態を実施するとよい。
【0063】
特に、本実施形態に係るウエーハ検査方法では、光64は、点光源56から発せられた光であるため、ウエーハ1の裏面1bに照射される際に光64の進行方向から外れた方向に進む周辺光の成分を有さない。そのため、撮像画像13が高コントラストとなり、該撮像画像13に明るい線15が高精細に写るため、撮像画像13に基づいて改質層3aの形成状態をより詳細かつ精密に判定可能となる。
【0064】
例えば、撮像画像13において、明るい線15が途切れている場合、明るい線15の途切れた箇所に相当する位置でウエーハ1の内部に改質層3aが形成されていないと判定される。また、明るい線15に大きく蛇行が生じている場合、改質層3aも蛇行していることが示唆される。さらに、明るい線15の太さや色等から改質層3aの大きさや形成深さ等を判定することも可能である。
【0065】
そのため、ウエーハ1の内部に改質層3aが十分に形成されていないと判定される場合に、該ウエーハ1に十分な改質層3aが形成されるように再度レーザ加工を実施したり、新たなウエーハ1をレーザ加工する際の加工条件を改良したりできる。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、保持テーブル34を移動させることでウエーハ1と、撮像ユニット38と、を相対的に移動させたが本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、撮像ユニット38がX軸方向及びY軸方向の一方または両方に沿って移動可能でもよい。
【0067】
上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0068】
1 ウエーハ
1a 表面
1b 裏面
3 分割予定ライン
3a 改質層
5 デバイス
7 フレーム
9 シート
11 フレームユニット
13 撮像画像
15 線
2 レーザ加工装置
4 レーザ加工ユニット
4a 加工ヘッド
4b 集光点
6 レーザビーム
8 ウエーハ検査装置
10 基台
12,22 移動ユニット
14,24 ガイドレール
16,26 移動テーブル
18,28 ボールネジ
20,30 パルスモータ
32 カバー
34 保持テーブル
34a 上面
34b クランプ
36 支持部
38 撮像ユニット
40 表示ユニット
42 結像レンズ
44 スプリッター
44a,44b 界面
46 結像点
48 カメラ
50,62 光路
52 光源
54 光ファイバー
56 点光源
58 コリメートレンズ
60 集光レンズ
64 光
66,68a,68b 反射光
66a,66b 光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8