(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240318BHJP
A21D 2/18 20060101ALI20240318BHJP
A21D 13/31 20170101ALI20240318BHJP
A21D 13/38 20170101ALI20240318BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240318BHJP
A23L 13/40 20230101ALI20240318BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20240318BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20240318BHJP
【FI】
A23L5/00 F
A21D2/18
A21D13/31
A21D13/38
A23L13/00 A
A23L13/40
A23L13/60 Z
A23L35/00
(21)【出願番号】P 2020557735
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2019046164
(87)【国際公開番号】W WO2020111059
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018226092
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】窪田 淳平
(72)【発明者】
【氏名】石川 千弘
(72)【発明者】
【氏名】相楽 浩二
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 耕士
(72)【発明者】
【氏名】長畑 雄也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 三四郎
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-320659(JP,A)
【文献】特開昭54-064649(JP,A)
【文献】特開平03-019663(JP,A)
【文献】特開平04-335864(JP,A)
【文献】特開2004-105028(JP,A)
【文献】特開2017-118865(JP,A)
【文献】特開平07-095855(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132534(WO,A1)
【文献】特開2005-065533(JP,A)
【文献】特開2005-000081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A21D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A
1)を食品素材に混合し、外層用混合物を得る工程と、
食品素材を混合し、内層用混合物を得る工程と、
前記外層用混合物で前記内層用混合物を包餡し、食品用組成物を得る工程と、
を含
み、
内層用混合物を得る前記工程において、前記内層用混合物に食用油脂組成物が0.3質量%以上40質量%以下の配合量となるよう添加され、
前記外層用混合物に含まれる前記成分(A1)の含有量が、前記食品用組成物中、0.05質量%以上20質量%以下である、食品の製造方法
(ただし、外層が衣材である食品の製造方法を除く。)。
成分(A1):以下の条件(1)~(
4)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3以上5×10
4以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が15質量%以上100質量%以下
【請求項2】
前記成分(A
1)の配合量が、前記外層用混合物中、0.08質量%以上25質量%以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記外層用混合物および前記内層用混合物の合計量に対し、前記外層用混合物が、10質量%以上90質量%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記食品が、加熱調理食品である、請求項1乃至
3いずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記成分(A1)の目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が60質量%以上100質量%以下である、請求項1乃至
4いずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記食品が、魚肉・畜肉加工品食品、魚肉・畜肉加工品様食品、および、包餡されたベーカリー食品から選択される1種である、請求項1乃至
5いずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
外層用混合物で内層用混合物が包餡されている食品用組成物であって、
前記外層用混合物が、以下の成分(A
1)を含
み、
前記内層用混合物が食用油脂組成物を0.3質量%以上40質量%以下含み、
前記外層用混合物に含まれる前記成分(A1)の含有量が、前記食品用組成物中、0.05質量%以上20質量%以下である、前記食品用組成物
(ただし、外層が衣材である食品用の組成物を除く。)。
成分(A1):以下の条件(1)~(
4)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3以上5×10
4以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が15質量%以上100質量%以下
【請求項8】
前記成分(A
1)の含有量が、前記外層用混合物中、0.08質量%以上25質量%以下である、請求項7に記載の食品用組成物。
【請求項9】
前記外層用混合物および前記内層用混合物の合計量に対し、前記外層用混合物が、10質量%以上90質量%以下である、請求項
7または
8に記載の食品用組成物。
【請求項10】
請求項
7乃至
9いずれか1項に記載の食品用組成物を含む食品。
【請求項11】
前記食品が、魚肉・畜肉加工品食品、魚肉・畜肉加工品様食品、および、包餡されたベーカリー食品から選択される1種である、請求項
10に記載の食品。
【請求項12】
外層用混合物で内層用混合物が包餡されている食品用組成物を含む食品のジューシー感を向上させる方法であって、
以下の成分(A
1)を、前記外層用混合物に含有させることを含
み、
前記内層用混合物が食用油脂組成物を0.3質量%以上40質量%以下含み、
前記外層用混合物に含まれる前記成分(A1)の含有量が、前記食品用組成物中、0.05質量%以上20質量%以下である、前記方法
(ただし、外層が衣材である食品のジューシー感を向上させる方法を除く。)。
成分(A1):以下の条件(1)~(
4)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3以上5×10
4以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が15質量%以上100質量%以下
【請求項13】
外層用混合物で内層用混合物が包餡されている食品用組成物を含む食品の喫食時の外観を向上させる方法であって、
以下の成分(A
1)を、前記外層用混合物に含有させることを含
み、
前記内層用混合物が食用油脂組成物を0.3質量%以上40質量%以下含み、
前記外層用混合物に含まれる前記成分(A1)の含有量が、前記食品用組成物中、0.05質量%以上20質量%以下である、前記方法
(ただし、外層が衣材である食品の喫食時の外観を向上させる方法を除く。)。
成分(A1):以下の条件(1)~(
4)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3以上5×10
4以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が15質量%以上100質量%以下
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
包餡された食品のジューシーな食感を向上させる手段として、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、トランスグルタミナーゼを作用させた挽肉を含有する外具材1で、中具材2を包むことを含む、挽肉加工食品の製造方法、中具材1が挽肉を含有する製造方法、中具材1に含有される挽肉にはトランスグルタミナーゼが実質的に作用していない製造方法、中具材1に炭酸ナトリウム、プロテアーゼ及びリパーゼのうち少なくとも一つが添加されている製造方法、挽肉加工食品がハンバーグ、メンチカツ又はミートボールである製造方法が開示されている。かかる製造方法により、中具が加熱調理後にジューシーな食感を保持し得る挽肉加工食品の製造方法が提供できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、包餡された食品にジューシー感を向上させ、喫食時の外観にも優れた食品を得るために、澱粉を含む特定の成分を使用することについて開示も示唆もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者等が鋭意検討したところ、包餡により製造される食品の外層に澱粉を含む特定の成分を含有させることで、ジューシー感を向上させ、喫食時の外観にも優れた食品を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明によれば、
以下の成分(A)を食品素材に混合し、外層用混合物を得る工程と、
食品素材を混合し、内層用混合物を得る工程と、
前記外層用混合物で前記内層用混合物を包餡し、食品用組成物を得る工程と、
を含む、食品の製造方法が提供される。
成分(A):成分(A1)および成分(A2)からなる群から選択される1種または2種
成分(A1):以下の条件(1)~(3)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
成分(A2):α化澱粉
【0008】
前記成分(A)の配合量が、前記外層用混合物中、0.08質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
【0009】
前記外層用混合物および前記内層用混合物の合計量に対し、前記外層用混合物が、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0010】
前記外層用混合物に含まれる前記成分(A)の含有量が、前記食品用組成物中、0.05質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0011】
前記食品が、加熱調理食品であることが好ましい。
【0012】
前記成分(A1)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が15質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0013】
前記成分(A1)の目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が60質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0014】
前記食品が、魚肉・畜肉加工品食品、魚肉・畜肉加工品様食品、および、包餡されたベーカリー食品から選択される1種であることが好ましい。
【0015】
内層混合物を得る前記工程において、前記内層用混合物に食用油脂組成物が0.3質量%以上40質量%以下の配合量となるよう添加されることが好ましい。
【0016】
また、本発明によれば、
外層用混合物で内層用混合物が包餡されている食品用組成物であって、
前記外層用混合物が、以下の成分(A)を含む、前記食品用組成物が提供される。
成分(A):成分(A1)および成分(A2)からなる群から選択される1種または2種
成分(A1):以下の条件(1)~(3)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
成分(A2):α化澱粉
【0017】
前記食品用組成物において、前記成分(A)の含有量が、前記外層用混合物中、0.08質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
【0018】
前記食品用組成物において、前記外層用混合物および前記内層用混合物の合計量に対し、前記外層用混合物が、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0019】
前記食品用組成物において、前記内層用混合物が食用油脂組成物を0.3質量%以上40質量%以下含むことが好ましい。
【0020】
前記食品用組成物において、前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が15質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
前記食品用組成物において、前記成分(A1)の目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が60質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0021】
また、本発明によれば、前記食品用組成物を含む食品が提供される。
【0022】
前記食品が、魚肉・畜肉加工品食品、魚肉・畜肉加工品様食品、および、包餡されたベーカリー食品から選択される1種であることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明によれば、
外層用混合物で内層用混合物が包餡されている食品用組成物を含む食品のジューシー感を向上させる方法であって、
以下の成分(A)を、前記外層用混合物に含有させることを含む、前記方法が提供される。
成分(A):成分(A1)および成分(A2)からなる群から選択される1種または2種
成分(A1):以下の条件(1)~(3)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
成分(A2):α化澱粉
【0024】
またさらに、本発明によれば、
外層用混合物で内層用混合物が包餡されている食品用組成物を含む食品の喫食時の外観を向上させる方法であって、
以下の成分(A)を、前記外層用混合物に含有させることを含む、前記方法が提供される。
成分(A):成分(A1)および成分(A2)からなる群から選択される1種または2種
成分(A1):以下の条件(1)~(3)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
成分(A2):α化澱粉
【0025】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明には、上記本発明における製造方法により得られる魚肉・畜肉加工品食品、魚肉・畜肉加工品様食品、および、包餡されたベーカリー食品から選択される1種への使用も包含される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の製造方法によれば、包餡された食品のジューシー感を向上させ、喫食時の外観にも優れた食品を得ることができる。ここで言う「喫食時の外観」とは、調理後の食品を、喫食時にナイフや手などで割って内層を露出させた場合に、中から肉汁等の液体があふれ出て美味しそうに見える様子のことをいう。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、各成分の具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
本実施形態において、食品用組成物の製造方法は、成分(A)を食品素材に混合し、外層用混合物を得る工程;食品素材を混合し、内層用混合物を得る工程;および、外層用混合物で内層用混合物を包餡し、食品用組成物を得る工程を含む。
また、本実施形態において、食品用組成物は外層用混合物で内層用混合物が包餡されているものである。
【0029】
(外層用混合物)
本実施形態において、外層用混合物は、食品素材と、以下の成分(A)を含む。
成分(A):成分(A1)および成分(A2)からなる群から選択される1種または2種
成分(A1):以下の条件(1)~(3)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
成分(A2):α化澱粉
以下、成分(A1)、および、成分(A2)についてさらに具体的に説明する。
【0030】
(成分(A1))
成分(A1)は、澱粉を主成分としてなる澱粉組成物である。
条件(1)に関し、成分(A1)は、食品のジューシー感を向上させる観点から、澱粉含量は75質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上である。
また、成分(A1)中の澱粉含量の上限に制限はなく、100質量%以下であるが、食品の性状等に応じてたとえば99.5質量%以下、99質量%以下としてもよい。
ここで、成分(A1)中の澱粉の含有量は、成分(A1)全体に対する含有量である。
【0031】
なお、条件(2)の低分子化澱粉は、条件(1)における澱粉に含まれる。
【0032】
条件(2)に関し、低分子化澱粉のピーク分子量は、食品のジューシー感を向上させる観点から、3×103以上であり、好ましくは8×103以上である。また、同様の観点から、低分子化澱粉のピーク分子量は、5×104以下であり、好ましくは3×104以下であり、さらに好ましくは1.5×104以下である。なお、低分子化澱粉のピーク分子量の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0033】
また、低分子化澱粉は、その製造安定性に優れる観点から、好ましくは、酸処理澱粉、酸化処理澱粉または酵素処理澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくは酸処理澱粉である。
【0034】
酸処理の条件は、問わないが、例えば、以下のように処理することができる。
アミロース含量5質量%以上の澱粉と水を反応装置に投入した後、さらに酸を投入する。あるいは水に酸をあらかじめ溶解させた酸水と原料の澱粉を反応装置に投入する。酸処理をより安定的に行う観点からは、反応中の澱粉の全量が水相内に均質に分散した状態、またはスラリー化した状態にあることが望ましい。そのためには、酸処理を行う上での澱粉スラリーの濃度を、たとえば10質量%以上50質量%以下、好ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲になるように調整する。スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度が上昇し、均一なスラリーの攪拌が難しくなる場合がある。
【0035】
酸処理に用いられる酸として、具体的には塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、種類、純度などを問わず利用できる。
【0036】
酸処理反応において、たとえば酸処理時の酸濃度は.0.05規定度(N)以上4N以下が好ましく、0.1N以上4N以下がより好ましく、0.2N以上3N以下がさらに好ましい。また、反応温度は、30℃以上70℃以下が好ましく、35℃以上70℃以下がより好ましく、35℃以上65℃以下がさらに好ましい。反応時間は、0.5時間以上120時間以下が好ましく、1時間以上72時間以下がより好ましく、1時間以上48時間以下がさらに好ましい。
【0037】
成分(A1)中の低分子化澱粉の含有量は、食品のジューシー感を向上させる観点から、3質量%以上であり、好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは13質量%以上である。
一方、成分(A1)中の低分子化澱粉の含有量は、同様の観点から、45質量%以下であり、好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
ここで、成分(A1)中の低分子化澱粉の含有量は、成分(A1)全体に対する含有量である。
【0038】
また、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量は、5質量%以上であり、食品のジューシー感を向上させる観点から、好ましくは12質量%以上、より好ましくは22質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上、さらにより好ましくは55質量%以上、最も好ましくは60質量%以上である。なお、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量の上限に制限はなく、100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0039】
低分子化澱粉の原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉として、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉および、これらの原料を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。食品のジューシー感を向上させる観点から、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、および、タピオカ澱粉から選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。また、同様の観点から、アミロース含量5質量%以上の澱粉は、好ましくはハイアミロースコーンスターチである。ハイアミロースコーンスターチのアミロース含量は、40質量%以上のものが入手可能である。アミロース含量5質量%以上の澱粉は、より好ましくはアミロース含量が40質量%以上のコーンスターチである。
【0040】
また、成分(A1)は、冷水膨潤度について特定の条件(3)を満たす。
条件(3)に関し、食品のジューシー感を向上させる観点から、成分(A1)の25℃における冷水膨潤度は5以上であり、好ましくは5.5以上であり、さらに好ましくは6以上、さらにより好ましくは6.5以上である。
また、同様の観点から、成分(A1)の25℃における冷水膨潤度は20以下であり、好ましくは17以下、さらに好ましくは15以下である。
ここで、冷水膨潤度の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0041】
次に、成分(A1)の粒度を説明する。
成分(A1)の、目開き3.35mmの篩の篩下かつ0.038mmの篩の篩上の含有量は、食品のジューシー感を向上させる観点から、成分(A1)全体に対して好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは85質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、よりいっそう好ましくは95質量%以上である。
また、目開き3.35mmの篩の篩下かつ0.038mmの篩の篩上の含有量の上限は100質量%以下である。
【0042】
また、成分(A1)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量は、カットした際の液体量を増加させる観点から、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは22質量%以上である。
成分(A1)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量の上限に制限はなく、100質量%以下であり、ジューシー感およびほぐれやすさを向上させる観点から、好ましくは97質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0043】
また、成分(A1)中、目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.075mmの篩の篩上の含有量は、カットした際の液体量を増加させる観点から、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.075mmの篩の篩上の含有量の上限に制限はなく、100質量%以下であり、ジューシー感およびほぐれやすさを向上させる観点から、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは87質量%以下である。
なお、本実施形態で使用する篩は、JIS-Z8801-1規格のものである。
成分(A1)の、所定の篩の篩上または篩下の含有量は、成分(A1)を所定の篩に通したときの、成分(A1)全体に対する篩上または篩下の画分の含有量である。
【0044】
本実施形態において、成分(A1)中の上記低分子化澱粉以外の澱粉成分としては、様々な澱粉を使用することができる。具体的には、用途に応じて一般に市販されている澱粉、たとえば食品用の澱粉であれば、種類を問わないが、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉などの澱粉;およびこれらの澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉などから、1種または2種以上を適宜選ぶことができる。好ましくは、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの架橋澱粉からなる群から選択される1種または2種以上の澱粉を含有するのがよく、より好ましくは、コーンスターチを含有するのがよい。
【0045】
また、本実施形態における成分(A1)には、澱粉以外の成分を配合することもできる。
澱粉以外の成分の具体例としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの不溶性塩や色素が挙げられ、不溶性塩を配合することが好ましく、不溶性塩の配合量は、0.1質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
次に、成分(A1)の製造方法を説明する。成分(A1)の製造方法は、たとえば、以下の工程を含む。
(低分子化澱粉の調製工程)アミロース含量5質量%以上の澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×103以上5×104以下の低分子化澱粉を得る工程。
(造粒工程)原料に低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ低分子化澱粉と低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、原料を加熱糊化して造粒する工程。
【0047】
低分子化澱粉の調製工程は、アミロース含量5質量%以上の澱粉を分解して低分子化澱粉とする工程である。ここでいう分解とは、澱粉の低分子化を伴う分解をいい、代表的な分解方法として酸処理や酸化処理、酵素処理による分解が挙げられる。この中でも、分解速度やコスト、分解反応の再現性の観点から、好ましくは酸処理である。
【0048】
また、造粒工程には、澱粉の造粒に使用されている一般的な方法を用いることができるが、所定の冷水膨潤度とする点で、澱粉の加熱糊化に使用されている一般的な方法を用いることが好ましい。具体的には、ドラムドライヤー、ジェットクッカー、エクストルーダー、スプレードライヤーなどの機械を使用した方法が知られているが、本実施形態において、冷水膨潤度が上述した特定の条件を満たす成分(A1)をより確実に得る観点から、エクストルーダーやドラムドライヤーによる加熱糊化が好ましく、エクストルーダーがより好ましい。
エクストルーダー処理する場合は通常、澱粉を含む原料に加水して水分含量を10~60質量%程度に調整した後、たとえばバレル温度30~200℃、出口温度80~180℃、スクリュー回転数100~1,000rpm、熱処理時間5~60秒の条件で、加熱膨化させる。
【0049】
本実施形態において、たとえば上記特定の原料を加熱糊化する工程、および、上記工程により加熱糊化して得られた造粒物を、必要に応じて、粉砕し、篩い分けをし、大きさを適宜調整することにより、条件(3)を満たす成分(A1)を得るとよい。
【0050】
(成分(A2))
本実施形態における成分(A2)は、成分(A1)以外のα化澱粉である。具体的には、澱粉を糊化処理して得られる。
α化澱粉の原料澱粉としては、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉および、これらの原料を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。食品のジューシー感を向上させる観点から、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、および、タピオカ澱粉から選択される1種または2種以上を用いることが好ましく、ハイアミロースコーンスターチがより好ましい。ここで、ハイアミロースコーンスターチは育種によりアミロース含有量を高めたコーンスターチである。ハイアミロースコーンスターチのアミロース含量は、40質量%以上のものが入手可能である。
ハイアミロースコーンスターチのアミロース含有量は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは48質量%以上である。
また、ハイアミロースコーンスターチのアミロース含量の上限に制限はなく、100質量%以下であるが、食品のジューシー感を向上させる観点から、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下、さらにより好ましくは60質量%以下、殊更好ましくは55質量%以下である。
【0051】
ここで、α化処理の方法としては、ジェットクッカー処理、ドラムドライヤー処理、エクストルーダー処理等が挙げられる。
また、α化澱粉のα化の度合いを示す指標としては、上述した冷水膨潤度を用いることができる。
α化澱粉の25℃における冷水膨潤度は、食品のジューシー感を向上させる観点から、乾物換算で、好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上、さらに好ましくは4.5以上、さらにより好ましくは5以上、よりいっそう好ましくは5.5以上である。
また、同様の観点から、α化澱粉の25℃における冷水膨潤度は、乾物換算で、好ましくは40以下であり、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、さらにより好ましくは15以下、よりいっそう好ましくは12以下である。
【0052】
以上により得られる成分(A1)および成分(A2)から選択される1種または2種の成分(A)と、食品素材を混合して外層用混合物を得る。成分(A)と食品素材の混合方法は限定されず、手で混合してもよいし、各種ミキサー等を用いてもよい。
【0053】
(食品素材)
本実施形態における食品素材とは、食品に通常使用される食品素材であれば限定されないが、具体例としては、米、小麦、大麦、とうもろこし、大豆等の穀物・穀粉及びそれらを加工したもの;野菜;果実;畜肉およびそれらをミンチ状、ペースト状に加工したもの、魚肉およびそれらのすり身;砂糖、果糖、ブドウ糖、異性化糖、転化糖、オリゴ糖、デキストリン、トレハロース、糖アルコール等の糖類;アスパルテーム、アセスルファムカリウム等の甘味料;上述の成分(A)以外の、澱粉あるいは澱粉組成物;ふすま、セルロース、難消化性デキストリン等の食物繊維;ベーキングパウダー等の膨張剤;マーガリンやショートニング、菜種油、大豆油などの食用油脂;牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、チーズ、ヨーグルト等の乳製品;全卵、全卵粉などの卵類;グアーガム、アルギン酸エステル等の増粘多糖類;乳化剤;ココアパウダー、抹茶パウダー等の風味付与素材;食塩、酒、出汁、グルタミン酸ナトリウム等の調味料類が挙げられる。
なお、外層用混合物および内層用混合物に用いられる食品素材は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
外層用混合物中の成分(A)の配合量は、食品のジューシー感を向上させ、食品から流れ出る液量を増加させる観点から、好ましくは0.08質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.4質量%以上である。ざらつきを抑制し、繊維感を向上させる観点から、外層用混合物中の成分(A)の配合量は、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、さらにより好ましくは6質量%以下である。
ここで、外層用混合物中の成分(A)の配合量は、外層用混合物全体に対する外層中に配合された成分(A)の量である。
【0055】
(内層用混合物)
本実施形態における内層用混合物は、食品素材をそのまま用いてもよいが、複数の食品素材を混合して混合物とすることが好ましい。食品素材は、外層用混合物の項で例示したものを好適に使用できる。好ましくは内層用混合物に使用される食品素材は、魚肉・畜肉素材、魚肉・畜肉加工品素材および魚肉・畜肉加工品様素材を含む。
また、内層用混合物は、外層用混合物と同じ組成であってもよいし、異なった組成でもよいが、食品のジューシー感を向上させる観点から、好ましくは成分(A)を含まない。
【0056】
本実施形態における内層用混合物には、食用油脂組成物を0.3質量%以上含有させることが好ましく、食品から流れ出る液量を増加させる観点から、食用油脂組成物を好ましくは1質量%以上含有させ、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、さらにより好ましくは6質量%以上、よりいっそう好ましくは10質量%以上含有させる。また、食品のほぐれやすさを向上させる観点から、内層用混合物には、食用油脂組成物を40質量%以下含有させることが好ましく、36質量%以下含有させることがより好ましく、32質量%以下含有させることがさらに好ましい。
内層用混合物中の食用油脂組成物の含有量は、内層用混合物全体に対する含有量である。
【0057】
本実施形態における食品用組成物において、内層用混合物に添加した食用油脂組成物に対する、外層用混合物中の成分(A)の質量比は、ジューシー感およびほぐれやすさを向上させる観点から、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.07以上である。また、内層用混合物に添加した食用油脂組成物に対する、外層用混合物中の成分(A)の質量比は、ざらつきの抑制および繊維感を向上させる観点から、好ましくは3以下であり、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下、さらにより好ましくは0.9以下である。
【0058】
(食用油脂組成物)
内層用混合物に添加する食用油脂組成物は、食用油脂を含む組成物であり、食用油脂含量が、好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは75質量%以上100質量%以下である。
ここで、食用油脂組成物中の食用油脂の含有量は、食用油脂組成物全体に対する食用油脂の含有量である。
食用油脂組成物としては、制限はなく、バター、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等の形態をとることができる。
食用油脂としては、通常の食用に用いられるものを使用することができる。具体的には、パーム核油、パーム油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ゴマ油、オリーブ油、ヒマワリ油、サフラワー油、アマニ油、えごま油、カカオ脂等の植物油脂、乳脂、ラード、牛脂、ケンネ脂等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド等、及び、これらに分別、エステル交換、水素添加等の1又は2以上の加工処理を施した加工油脂が挙げられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
食用油脂組成物に含まれる食用油脂の20℃における固体脂含量(SFC)は、食品のジューシー感を向上させる観点から、好ましくは55%以下であり、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは45%以下である。また、同様の観点から、食用油脂組成物の20℃における固体脂含量の下限は、例えば0%以上であってもよく、好ましくは5%以上であり、より好ましくは15%以上である。
食用油脂組成物に含まれる食用油脂の10℃における固体脂含量(SFC)は、食品のジューシー感を向上させる観点から、好ましくは95%以下であり、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは75%以下である。また、同様の観点から、食用油脂組成物の10℃における固体脂含量の下限は、例えば0%以上であってもよく、好ましくは5%以上であり、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは25%以上である。
食用油脂組成物に含まれる食用油脂の35℃における固体脂含量(SFC)は、食品のジューシー感を向上させる観点から、好ましくは10%以下であり、より好ましくは9%以下、さらに好ましくは8%以下である。また、同様の観点から、食用油脂組成物の35℃における固体脂含量の下限は、例えば0%以上であってもよい。
【0059】
(食品用組成物)
本実施形態における食品用組成物は、内層用混合物を本実施形態の外層用混合物で包餡し、内層と外層を形成してなる。ここで、内層は1つでもよいし、複数あってもよい。外層は1つでもよいし、複数あってもよい。また、本実施形態の外層用混合物以外の外層を含んでいてもよい。また、肉まんや惣菜パン、ピロシキの皮などのベーカリー生地等も、本実施形態の外層用混合物の一態様である。ただし、フライや天ぷらの衣材は、本実施形態の外層には含まれない。
本実施形態の食品用組成物に外層が複数ある場合、本実施形態の外層用混合物が最外層であることが好ましい。また、食品用組成物に外層が複数ある場合、最外層の食品用組成物に成分(A)が配合されていることが好ましい。
【0060】
(包餡の方法)
本実施形態の製造方法において、食品用組成物を得るために外層用混合物で内層用混合物を包餡する方法は、内層用混合物が外層用混合物で被覆されれば制限されず、公知の方法で適宜行えばよい。これらは手作業でも行い得るが、工業的には、例えば市販の全自動包餡機等を使用して行うことができ、全自動包餡機を用いることが好ましい。
また、外層用混合物で内層用混合物の表面を実質的に全て被覆することが好ましい。ここで、「内層用混合物の表面を実質的に全て被覆する」とは、不可避的に生じるピンホールのような微細な未被覆部分を除いて、内層用混合物の全ての表面を被覆することを意味する。
【0061】
食品用組成物中の外層用混合物は、食品のジューシー感を向上させる観点から、外層用混合物および内層用混合物の合計量に対し、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、30質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上87質量%以下であることがさらに好ましく、55質量%以上85質量%以下であることがさらにより好ましい。
同様の観点から、食品用組成物中の外層用混合物の含有量は、外層用混合物および内層用混合物の合計量に対し、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらにより好ましくは55質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは87質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0062】
以上のようにして得られた食品用組成物は、そのまま食品として食してもよいし、加熱調理して食品を得てもよいが、加熱調理されることが好ましい。加熱調理の具体例として、焼成、ボイル、電子レンジ加熱、蒸煮、スチームコンベクション加熱、油ちょう等が挙げられ、焼成、蒸煮、スチームコンベクション加熱および油ちょうから選択される1種または2種以上の加熱調理が好ましい。
【0063】
本実施形態の製造方法で作製した食品用組成物を加熱調理する場合、加熱調理前に冷凍保存あるいは冷蔵保存し、その後加熱してもよい。あるいは加熱調理後得られた食品を冷凍保存、冷蔵保存、常温レトルト保存等の保存後、喫食時に再加熱してもよい。再加熱の方法は、上述の加熱調理で挙げられた方法と同じものが適用可能であるが、好ましくは電子レンジによる加熱である。
【0064】
外層用混合物に含まれる成分(A)の含有量は、食品のジューシー感を向上させる観点から、食品用組成物中、好ましくは0.05質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以上6質量%以下である。
同様の観点から、食品用組成物中、外層用混合物に含まれる成分(A)の含有量は、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
ここで、食品用組成物中、外層用混合物に含まれる成分(A)の含有量とは、食品用組成物全体に対する外層用混合物中に含まれる成分(A)の含有量である。
【0065】
また、食品用組成物は、外層用混合物および内層用混合物以外に、食品素材を含んでいてもよい。
【0066】
(食品)
本実施形態における食品は、限定されないが、具体例としては、ハンバーグ、メンチカツ、ミートローフ、肉団子、小龍包、餃子、焼売等の魚肉・畜肉加工品食品;畜肉等を大豆タンパク質等で代替した魚肉・畜肉加工品様食品;総菜パン、肉まん、包みパイ、包みピザ等の包餡されたベーカリー食品;まんじゅう等が挙げられ、好ましくは魚肉・畜肉加工品食品、魚肉・畜肉加工品様食品、および、包餡されたベーカリー食品からなる群から選択される1種である。
【0067】
本実施形態における食品用組成物を含む食品は、有効成分として外層に成分(A)を含むため、ジューシー感を向上させることができる。
また、本実施形態における食品用組成物を含む食品は、有効成分として外層に成分(A)を含むため、喫食時の外観を向上させることができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 以下の成分(A)を食品素材に混合し、外層用混合物を得る工程と、
食品素材を混合し、内層用混合物を得る工程と、
前記外層用混合物で前記内層用混合物を包餡し、食品用組成物を得る工程と、
を含む、食品の製造方法。
成分(A):成分(A1)および成分(A2)からなる群から選択される1種または2種
成分(A1):以下の条件(1)~(3)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3
以上5×10
4
以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
成分(A2):α化澱粉
2. 前記成分(A)の配合量が、前記外層用混合物中、0.08質量%以上25質量%以下である、1.に記載の製造方法。
3. 前記外層用混合物および前記内層用混合物の合計量に対し、前記外層用混合物が、10質量%以上90質量%以下である、1.又は2.に記載の製造方法。
4. 前記外層用混合物に含まれる前記成分(A)の含有量が、前記食品用組成物中、0.05質量%以上20質量%以下である、1.乃至3.いずれか1つに記載の製造方法。
5. 前記食品が、加熱調理食品である、1.乃至4.いずれか1つに記載の製造方法。
6. 前記成分(A1)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が15質量%以上100質量%以下である、1.乃至5.いずれか1つに記載の製造方法。
7. 前記成分(A1)の目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が60質量%以上100質量%以下である、1.乃至6.いずれか1つに記載の製造方法。
8. 前記食品が、魚肉・畜肉加工品食品、魚肉・畜肉加工品様食品、および、包餡されたベーカリー食品から選択される1種である、1.乃至7.いずれか1つに記載の製造方法。
9. 内層混合物を得る前記工程において、前記内層用混合物に食用油脂組成物が0.3質量%以上40質量%以下の配合量となるよう添加される、1.乃至8.いずれか1つに記載の製造方法。
10. 外層用混合物で内層用混合物が包餡されている食品用組成物であって、
前記外層用混合物が、以下の成分(A)を含む、前記食品用組成物。
成分(A):成分(A1)および成分(A2)からなる群から選択される1種または2種
成分(A1):以下の条件(1)~(3)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3
以上5×10
4
以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
成分(A2):α化澱粉
11. 前記成分(A)の含有量が、前記外層用混合物中、0.08質量%以上25質量%以下である、10.に記載の食品用組成物。
12. 前記外層用混合物および前記内層用混合物の合計量に対し、前記外層用混合物が、10質量%以上90質量%以下である、10.または11.に記載の食品用組成物。
13. 前記内層用混合物が食用油脂組成物を0.3質量%以上40質量%以下含む、10.乃至12.いずれか1つに記載の食品用組成物。
14. 前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が15質量%以上100質量%以下である、10.乃至13.いずれか1つに記載の食品用組成物。
15. 10.乃至14.いずれか1つに記載の食品用組成物を含む食品。
16. 前記食品が、魚肉・畜肉加工品食品、魚肉・畜肉加工品様食品、および、包餡されたベーカリー食品から選択される1種である、15.に記載の食品。
17. 外層用混合物で内層用混合物が包餡されている食品用組成物を含む食品のジューシー感を向上させる方法であって、
以下の成分(A)を、前記外層用混合物に含有させることを含む、前記方法。
成分(A):成分(A1)および成分(A2)からなる群から選択される1種または2種
成分(A1):以下の条件(1)~(3)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3
以上5×10
4
以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
成分(A2):α化澱粉
18. 外層用混合物で内層用混合物が包餡されている食品用組成物を含む食品の喫食時の外観を向上させる方法であって、
以下の成分(A)を、前記外層用混合物に含有させることを含む、前記方法。
成分(A):成分(A1)および成分(A2)からなる群から選択される1種または2種
成分(A1):以下の条件(1)~(3)を満たす澱粉組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3
以上5×10
4
以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
成分(A2):α化澱粉
【実施例】
【0068】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の趣旨はこれらに限定されるものではない。
【0069】
原材料として、主に以下のものを使用した。
(澱粉)
β澱粉(コーンスターチ):株式会社J-オイルミルズ製、コーンスターチY
ハイアミロースコーンスターチ:株式会社J-オイルミルズ製、HS-7(アミロース含量:70質量%)
α化ハイアミロースコーンスターチ:株式会社J-オイルミルズ製、ジェルコールAH-F(アミロース含量:50質量%、冷水膨潤度6.5)
(食用油脂組成物)
食用油脂組成物1:牛脂(精製牛脂)、植田製油株式会社製
食用油脂組成物2:AJINOMOTOオリーブオイルエクストラバージン、株式会社J-オイルミルズ製
食用油脂組成物3:ラード、雪印メグミルク社製
食用油脂組成物4:AJINOMOTOごま油好きのごま油、株式会社J-オイルミルズ製
食用油脂組成物5:後述の製造例2で製造した
食用油脂組成物6:AJINOMOTOさらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製(10℃、20℃および35℃のSFCはいずれも0%)
(その他)
大豆タンパク質:フジプロFR、不二製油株式会社製
粒状大豆タンパク質:ニューフジニックAR、不二製油株式会社製
強力粉:カメリヤ、日清フーズ株式会社製
薄力粉:フラワー、日清フーズ株式会社製
ベーキングパウダー:ベーキングパウダー赤、株式会社アイコク製
セミドライイースト:サフ セミドライイースト、ルサッフル社製
エバミルク:北海道濃縮ミルク、雪印メグミルク株式会社製
液糖:マービー、H+Bライフサイエンス社製
【0070】
(製造例1)成分(A1)の製造
本例では、低分子化澱粉として酸処理澱粉を用いて、成分(A1)を得た。
【0071】
(酸処理ハイアミロースコーンスターチの製造方法)
ハイアミロースコーンスターチを水に懸濁して35.6%(w/w)スラリーを調製し、50℃に加温した。そこへ、攪拌しながら4.25Nに調製した塩酸水溶液をスラリー質量比で1/9倍量加え反応を開始した。16時間反応後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、酸処理ハイアミロースコーンスターチを得た。
得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量を以下の方法で測定したところ、ピーク分子量は1.2×104であった。
【0072】
(ピーク分子量の測定方法)
ピーク分子量の測定は、東ソー株式会社製HPLCユニットを使用しておこなった(ポンプDP-8020、RI検出器RS-8021、脱気装置SD-8022)。
(1)試料を粉砕し、JIS-Z8801-1規格の篩で、目開き0.15mm篩下の画分を回収した。この回収画分を移動相に1mg/mLとなるように懸濁し、懸濁液を100℃3分間加熱して完全に溶解した。0.45μmろ過フィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25HP PTFE 0.45μm)を用いてろ過を行い、ろ液を分析試料とした。
(2)以下の分析条件で分子量を測定した。
カラム:TSKgel α-M(7.8mmφ、30cm)(東ソー株式会社製)2本
流速:0.5mL/min
移動相:5mM 硝酸ナトリウム含有90%(v/v)ジメチルスルホキシド溶液
カラム温度:40℃
分析量:0.2mL
(3)検出器データを、ソフトウェア(マルチステーションGPC-8020modelIIデータ収集ver5.70、東ソー株式会社製)にて収集し、分子量ピークを計算した。
検量線には、分子量既知のプルラン(Shodex Standard P-82、昭和電工株式会社製)を使用した。
【0073】
(成分(A1)の製造方法)
β澱粉79質量%、上述の方法で得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチ20質量%、および、炭酸カルシウム1質量%を充分に均一になるまで袋内で混合した。2軸エクストルーダー(幸和工業社製KEI-45)を用いて、混合物を加圧加熱処理した。処理条件は、以下の通りである。
原料供給:450g/分
加水:17質量%
バレル温度:原料入口から出口に向かって50℃、70℃および100℃
出口温度:100~110℃
スクリューの回転数250rpm
このようにしてエクストルーダー処理により得られた加熱糊化物を110℃にて乾燥し、水分含量を約10質量%に調整した。
次いで、乾燥した加熱糊化物を、卓上カッター粉砕機で粉砕した後、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けした。篩分けした加熱糊化物を、表1の配合割合で混合し、以下の2種の成分(A1)(A1-1およびA1-2)を調製した。
また、成分(A1)の25℃における冷水膨潤度を後述の方法で測定したところ、A1-1は7.8、A1-2は10.5であった。
【0074】
(冷水膨潤度の測定方法)
(1)試料を、水分計(研精工業株式会社、型番MX-50)を用いて、125℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)この乾燥物質量換算で試料1gを25℃の水50mLに分散した状態にし、30分間25℃の恒温槽の中でゆるやかに撹拌した後、3000rpmで10分間遠心分離(遠心分離機:日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプタ)し、沈殿層と上澄層に分けた。
(3)上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とした。
(4)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とした。
(5)BをCで割った値を冷水膨潤度とした。
【0075】
【0076】
注)例えば、「3.35mm篩下、1.4mm篩上」とは、「JIS-Z8801-1規格の目開き3.35mmの篩の篩下かつ1.4mmの篩の篩上」を意味する。
【0077】
(製造例2)食用油脂組成物5の製造
下記に記載の方法で、食用油脂組成物5を製造した。
用いた食用油脂の原料油脂は下記の通りである。
・菜種油 製品名;AJINOMOTOさらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製
・パーム核油 精製パーム核油、株式会社J-オイルミルズ製
・ヤシ極度硬化油 精製ヤシ油を極度硬化し、精製したもの
・エステル交換油脂1 パームステアリン(ヨウ素価35)75質量%、パーム油10質量%、大豆油15質量%を混合後、ナトリウムメトキシドを触媒としたエステル交換を行い、さらに、精製したもの
・エステル交換油脂2 パーム油30質量%、パーム核油70質量%を混合後、極度硬化し、ナトリウムメトキシドを触媒としたエステル交換を行い、さらに、精製したもの
・エステル交換油脂3 製品名;パーキッドY、不二製油株式会社製
(食用油脂組成物5の調製)
原料油脂(菜種油を5部、パーム核油を35部、ヤシ極度硬化油を15部、エステル交換油脂1を20部、エステル交換油脂2を5部、エステル交換油脂3を20部)を60℃で溶解し、パーフェクターを用いて、急冷捏化し、食用油脂組成物5を得た。
【0078】
また、食用油脂組成物1~5に含まれる食用油脂の固体脂含量(SFC)を表2に示す。
【0079】
(SFCの測定方法)
AOCS Official Method Cd 16b-93 METHOD Iに準じ、固体脂含量(SFC)(%)を測定した。
【0080】
【0081】
(実験1)
本例では、成分(A)としてA1-1を配合して外層用混合物を作製し、該外層用混合物で内層用混合物を包餡したハンバーグの作製および評価をおこなった。表4にハンバーグの配合を示した。
【0082】
(ハンバーグの製造方法)
表4に記載の配合により、ハンバーグを下記手順で製造した。
1.(内層の原材料A混合)ケンミックスミキサーのボウルに、表4の内層の欄に記載の原材料Aを入れ、手で捏ねて粘りを出した。
2.(内層の原材料B混合)さらに表4に記載の原材料Bを投入し、混合した。
3.(内層の混練)ホイッパーを取り付けたケンミックスミキサー(強度1)にて3分間混ぜて内層用混合物を得た。
4.(外層の原材料C混合)ケンミックスミキサーのボウルに表4に記載の原材料Cを入れ、手で捏ねて粘りを出した。
5.(外層の原材料D混合)さらに表2に記載の原料Dを投入し、混合した。
6.(外層の混練)ホイッパーを取り付けたケンミックスミキサー(強度1)にて3分間混ぜて外層用混合物を得た。
7.(成形)内層用混合物37.5gを丸め、それを外層用混合物112.5gで覆うように丸めた後、手で楕円形に成形して食品用組成物の成形物を得た。
8.(焼成)250℃に加熱した鉄板に成形物を乗せ、表面を1分30秒、ひっくり返して裏面を1分焼成した。
9.(蒸煮)食品用組成物を180℃、相対湿度60~70%に設定したスチームコンベクションオーブン(株式会社ラショナル・ジャパン、型式:61モデル)に8分間入れ、ハンバーグを得た。
【0083】
(官能評価)
蒸煮直後のハンバーグを試食し、ハンバーグのジューシー感、繊維感(肉本来の繊維感があるか)、ほぐれやすさ(咀嚼した際のほぐれやすさ)およびざらつきの無さを4人の専門パネラーが評価した。各評価項目について、4名の合議で採点し、3点以上を合格とした。各項目の評点を表3に示す。また、各例の評価結果を表4に示す。
【0084】
【0085】
(調理歩留まりの算出)
上記7.で得られた成形後のハンバーグ質量と、上記9.で得られた蒸煮後のハンバーグ質量から、以下の計算式で調理歩留りを算出した。
調理歩留り(%)=(蒸煮後のハンバーグ質量/成形後のハンバーグ質量)×100
各例の算出値を表4に示す。
【0086】
(カットした時のあふれ出てくる液体量計測)
あらかじめ質量を測定しておいたキッチンペーパーを敷いておき、蒸煮直後のハンバーグを置いた。ハンバーグを包丁で中心から半分にカットした。カット時にあふれ出てくる液体量(g)をキッチンペーパーの質量変化を計測することで算出した(N=1)。結果を表4に示す。
【0087】
【0088】
表4に示すように、成分(A)としてA1-1を配合して外層用混合物を作製し、該外層用混合物で内層用混合物を包餡したハンバーグは、ジューシー感に優れ、繊維感、ほぐれやすさ、ざらつきの無さ等の食感も好ましく、またカットした時に中から液体が流れ出る、好ましい外観を有していた。
外層用混合物中の成分(A)の含有量は、ジューシー感の観点では0.56質量%以上4.04質量%以下のとき優れており、1.04質量%以上2.06質量%以下のとき、より優れていた。ほぐれやすさの観点では、0.56質量%以上4.04質量%以下含有するとき優れており、1.04質量%以上4.04質量%以下含有するとき、より優れていた。繊維感や、ざらつきの抑制の観点では、0.56質量%以上4.04質量%以下含有するとき優れており、0.56質量%以上2.06質量%以下含有するとき、より優れていた。カットした際の液体量については、0.56質量%以上4.04質量%以下のとき多かった。
食品用組成物に含まれる成分(A)の含有量は、ジューシー感の観点では0.42質量%以上3.03質量%以下のとき優れており、0.78質量%以上1.55質量%以下のとき、より優れていた。ほぐれやすさの観点では、0.42質量%以上3.03質量%以下含有するとき優れており、0.78質量%以上3.03質量%以下含有するとき、より優れていた。繊維感や、ざらつきの抑制の観点では、0.42質量%以上3.03質量%以下含有するとき優れており、0.42質量%以上1.55質量%以下含有するとき、より優れていた。カットした際の液体量については、0.42質量%以上3.03質量%以下のとき多かった。
内層用混合物に添加した食用油脂組成物に対する成分(A)の質量比では、ジューシー感の観点では0.096以上0.697以下のとき優れており、0.180以上0.356以下のとき、より優れていた。ほぐれやすさの観点では、0.096以上0.697以下含有するとき優れており、0.180以上0.697以下含有するとき、より優れていた。繊維感や、ざらつきの抑制の観点では、0.096以上0.697以下含有するとき優れており、0.096以上0.356以下含有するとき、より優れていた。カットした際の液体量については、0.096以上0.697以下のとき多かった。
また、実施例1のように、内層用混合物に食用油脂組成物を添加しなくとも、脂質の含有量の多い牛豚挽肉を使用した場合、外層用混合物に成分(A)を含むと、ジューシー感に優れたハンバーグが得られることがわかった。
また、各例で得られたハンバーグはいずれも好ましい歩留まりのものであった。
【0089】
(実験2)
本例では、表5に示した配合に変えたこと以外は、実験1と同じ操作で、ハンバーグの作製および評価をおこなった。また、比較例1として成分(A)の代わりにコーンスターチを配合したものも同じ操作で作製した。表5にハンバーグの配合および評価結果を示した。
【0090】
【0091】
表5に示すように、成分(A)としてA1-1、A1-2、およびA2を配合して外層用混合物を作製し、該外層用混合物で内層用混合物を包餡したハンバーグは、いずれもジューシー感に優れ、繊維感、ほぐれやすさ、ざらつきの無さ等の食感も好ましく、またカットした時に中から液体が流れ出る、好ましい外観を有していた。
成分(A1)としては、ジューシー感やほぐれやすさの観点からは目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が、27.4質量%の場合(A1-1)、より優れていた。カットした時の液体量を増加させる観点からは、目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が38.7質量%の場合(A1-2)、より優れていた。
また、成分(A)としてA2を使用した場合も、カットした時の液体量が対照に比べて多く、好ましいハンバーグが得られた。
一方、比較例1より、成分(A)の代わりにコーンスターチを使用した場合、ジューシー感、繊維感、ほぐれやすさ、ざらつきの無さが劣り、かつカットした際の液体量も少なかった。
【0092】
(実験3)
本例では、表6に示した配合に変えたこと以外は、実験1と同じ操作で、ハンバーグの作製および評価をおこなった。表6にハンバーグの配合および評価結果を示した。
【0093】
【0094】
表6より、内層用混合物に添加する食用油脂組成物の量や種類を変えても、好ましいハンバーグが得られた。
具体的には、内層用混合物に食用油脂組成物を29.6質量%添加した場合、17.4質量%添加した場合と比べてカットした時の液体量が増加した。
また、食用油脂組成物の種類としては、食用油脂組成物1および食用油脂組成物2のいずれを使用しても、好ましいハンバーグが得られた。原料となる食用油脂の10℃のSFCが41%であり、20℃のSFCが23.7%である食用油脂組成物1の方が、原料となる食用油脂の10℃および20℃のSFCが0%の食用油脂組成物2より、カットした時の液体量、ジューシー感、ざらつきの無さの点でより好ましかった。
【0095】
(実験4)
本例では、肉まんの皮に成分(A)を配合して外層用混合物を作製し、該外層用混合物で内層用混合物を包餡した肉まんの作製および評価をおこなった。
(肉まんの製造例)
1.表7に示した内層の原材料Aを混練し、その後原材料Bをさらに加え、均一にミキシングし、内層用混合物を得た。
2.表7の外層の原材料を混捏し、10分間28℃で発酵後、50gずつに分割して10分休ませ、外層用混合物(すなわち肉まんの皮の生地)を調製した。
3.上記2.で得られた外層用混合物50gに上記1.で得られた内層用混合物30gを包み(外層用混合物および内層用混合物の合計量に対し、外層用混合物が62.5質量%)、30~35分間、40℃、湿度50%で2次醗酵させ、食品用組成物を得た。
4.上記3.の食品用組成物をスチームコンベクションオーブン(株式会社マルゼン、型式SSC-03)にて100℃15分間蒸し加熱した後、室温で放冷し、肉まんを得た。
【0096】
【0097】
表7のように、実施例10の外層用混合物で包餡された肉まんは、対照例に比べ、内層がジューシーで、非常に好ましいものであった。
また、食用油脂組成物として、原料となる食用油脂の10℃のSFCが53.4%であり、20℃のSFCが27.0%である食用油脂組成物3と、原料となる食用油脂の10℃および20℃のSFCが0%の食用油脂組成物4の、2種の食用油脂組成物をそれぞれ外層用混合物および内層用混合物に配合した場合にも、好ましい食品が得られた。
【0098】
(実験5)
食用油脂組成物1を食用油脂組成物5に変えた以外は、上述の実施例2と同じ配合および同じ手順でハンバーグを成形し焼成した。室温まで冷ました後、1個ずつ食品用ラップに包み、さらにチャック袋に入れ、冷凍庫(設定温度:-20℃)に入れ放置した。1週間後、冷凍庫から取り出したハンバーグを、電子レンジで1000W、3分間の条件で加熱し、喫食したところ、内層がジューシーで、カットした際に液体が流れ出る、非常に好ましいハンバーグが得られた。
【0099】
実験3~実験5より、ジューシー感の観点から、食用油脂組成物としては、原料となる食用油脂の10℃における固体脂含量が0%以上68.2%以下で優れており、41.0%以上68.2%以下で、より優れていた。また、同様の観点から、食用油脂組成物としては、原料となる食用油脂の20℃における固体脂含量が0%以上36.7%以下で優れており、23.7%以上36.7%以下で、より優れていた。またさらに同様の観点から、食用油脂組成物としては、原料となる食用油脂の35℃における固体脂含量が0%以上5.9%以下で優れており、4.1%以上5.9%以下で、より優れていた。
また、本実施例の製造方法で作製したハンバーグは、冷凍した後再加熱した場合でも、ジューシー感に優れ、繊維感、ほぐれやすさ、ざらつきの無さ等の食感も好ましく、また喫食時の外観が非常に好ましかった。
【0100】
(メンチカツの製造方法)
表8に記載の配合により、ハンバーグを以下の手順で製造した。
1.(内層の原材料A混合)表8の内層の欄に記載の原材料Aをボウル入れ、手で捏ねて粘りを出した。
2.(内層の原材料B混合)表8に記載の原材料Bを別のボウルに投入し、混合した。
3.(内層の混練)原材料AとBそれぞれの混合物をケンミックスミキサーのボウルに投入し、ホイッパーを取り付けたケンミックスミキサー(強度1)で3分間混ぜて内層用混合物を得た。
4.(外層の原材料C混合)次に、表8に記載の原材料Cをボウルに入れ、手で捏ねて粘りを出した。
5.(外層の原材料D混合)表8に記載の原料Dを別のボウルに投入し、混合した。
6.(外層の混練)原材料CとDそれぞれの混合物をケンミックスミキサーのボウルに投入し、ホイッパーを取り付けたケンミックスミキサー(強度1)で3分間混ぜて外層用混合物を得た。
7.(成形)内層用混合物20gを丸め、それを外層用混合物54gで覆うように丸めた後、手で楕円形に成形して食品用組成物を得た。
8.(オーブン加熱)中種を250℃、相対湿度60%に設定したオーブンに7分間入れ、予備加熱中種を得た。
9.(放冷)予備加熱中種の粗熱がとれるまで25℃で放冷した。
10.(バッター・パン粉付け)予備加熱中種に、小麦粉バッター(1.8倍加水)を付けた後、生パン粉をまぶし、フライ前メンチカツを得た。
11.(冷凍保管)上記10.で得られたフライ前メンチカツを℃で24時間、冷凍保管した。
12.(フライ)170℃の菜種油で凍ったままのフライ前メンチカツを6分間揚げ、メンチカツを得た。
13.(放冷)メンチカツの粗熱がとれるまで20℃で放冷した。
14.(レンジアップ)電子レンジを用いて、700Wで1分間加熱した。
【0101】
(調理歩留まりの算出)
上記7.で得られた成形後の食品用組成物質量と、上記9.で得られた蒸煮後の予備加熱中種質量から、以下の計算式で調理歩留りを算出した。
調理歩留り(%)=(予備加熱中種質量/成形後の食品用組成物質量)×100
各例の算出値を表8に示す。表8中、「成分(A)/食品用組成物」における成分(A)は、外層および内層に配合された成分(A)の合計である。また、「成分(A)/外層用混合物」および「成分(A)/内層用混合物に添加した食用油脂組成物」における成分(A)は、いずれも、外層に配合された成分(A)である。
【0102】
【0103】
実施例11および12のメンチカツは、喫食した際に、中から肉汁があふれ出し、非常にジューシーで好ましいものであった。
中でも、外層用混合物中の成分(A)の含有量が0.50質量%以上1.50質量%以下でジューシー感、繊維感、ほぐれやすさが優れており、1.50質量%の場合、より優れていた。さらに、フライ前の調理歩留まりも、成分(A)の含有量が1.50質量%の場合、より優れていた。
また、外層用混合物だけでなく内層用混合物にも成分(A)を配合した場合でも、好ましいメンチカツが得られた。
さらにまた、調理工程の途中で冷凍保存した場合でも、包餡された食品のジューシー感を向上させ、喫食時の外観にも優れた食品を得ることができるという効果が十分発揮できた。
【0104】
(ハンバーグ製造例1および2)
前述のハンバーグの製造方法のうち、ハンバーグ製造例1については実施例2と同じ配合で、ハンバーグ製造例2については、実施例2のうち成分(A)としてA-1を内層用混合物の原材料Bに0.21質量部配合したこと、さらにハンバーグ製造例1および2はいずれも以下の手順を変更したことを除き、実施例2と同じ製造方法でハンバーグを作製した。
7.(成形)のあと、得られた食品用組成物を食品用フィルムにくるみ、チャック付きビニール袋に入れ、-20℃にて冷凍保管した。3日後、冷凍庫から取り出し、4℃にて6時間解凍した。解凍した食品用組成物を8.(焼成)および9.(蒸煮)に供し、本例のハンバーグを得た。
【0105】
この出願は、2018年11月30日に出願された日本出願特願2018-226092号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。