(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】凍結搬送容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/18 20060101AFI20240318BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240318BHJP
C12N 1/04 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B65D81/18 B
C12M1/00 Z
C12N1/04
(21)【出願番号】P 2022504374
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2021007818
(87)【国際公開番号】W WO2021177265
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2020039093
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020039094
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米内 冠
(72)【発明者】
【氏名】馬瀬 輝
(72)【発明者】
【氏名】竹内 弘次
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100857(JP,A)
【文献】特開2017-165487(JP,A)
【文献】実開昭53-152259(JP,U)
【文献】特開2008-105720(JP,A)
【文献】特開2015-010868(JP,A)
【文献】特開2013-103747(JP,A)
【文献】特開2011-240939(JP,A)
【文献】特開2016-186399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/18
C12M 1/00
C12N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結された凍結対象物の搬送に用いられる凍結搬送容器であって、
上部が開口した断熱容器と、
前記断熱容器の上部開口部を閉塞する断熱蓋と、
液体窒素を吸収した状態で、前記断熱容器内に保持される保冷ユニットとを備え、
前記断熱容器の内側には、前記凍結対象物を保管する保管具を収容するための収容空間が設けられ、
前記収容空間に位置する前記保管具を前記断熱容器内に収容した状態のまま、前記断熱容器の上部開口部を通して前記保冷ユニットが着脱自在とされて
おり、
前記保冷ユニットは、液体窒素を吸収する吸収材が設けられた保冷部と、前記保冷部の上部に位置して断熱材が設けられた断熱部と、前記断熱部の上部に位置する位置決め部とを有し、
前記断熱容器の上部には、ガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、前記位置決め部に対応した形状のガイド部を含み、
前記保冷ユニットが前記ガイド部に沿って前記断熱容器の上下方向に案内されると共に、前記ガイド部の内側に前記位置決め部が位置することによって、前記ガイド部材に対して前記保冷ユニットが位置決めされることを特徴とする凍結搬送容器。
【請求項2】
前記保冷ユニットには、前記収容空間を区画する貫通孔が上下方向に貫通して設けられている請求項1に記載の凍結搬送容器。
【請求項3】
前記保冷ユニットは、液体窒素を吸収する吸収材が設けられた保冷部と、前記保冷部の上部に位置して断熱材が設けられた断熱部とを有する請求項1に記載の凍結搬送容器。
【請求項4】
前記保冷ユニットは、前記断熱部の上部に位置して前記断熱容器の上部に固定される固定部を有する請求項3に記載の凍結搬送容器。
【請求項5】
複数の前記保冷ユニットが前記収容空間の周囲を囲んだ状態で設けられている請求項1に記載の凍結搬送容器。
【請求項6】
前記断熱容器の内側の底部には、前記保管具を支持する支持部が設けられている請求項1に記載の凍結搬送容器。
【請求項7】
前記支持部は、前記断熱容器内に保持された前記保冷ユニットと当接されることによって、前記断熱容器の半径方向における前記保冷ユニットの移動を規制する請求項6に記載の凍結搬送容器。
【請求項8】
前記ガイド部材の上部には、押さえ部材が着脱自在に設けられ、
前記押さえ部材は、前記断熱容器内に保持された前記保冷ユニットと当接されることによって、前記断熱容器の上下方向における前記保冷ユニットの移動を規制する請求項
1に記載の凍結搬送容器。
【請求項9】
前記断熱蓋には、前記収容空間に挿入される断熱凸部が設けられている請求項1に記載の凍結搬送容器。
【請求項10】
前記断熱容器は、真空断熱構造を有する請求項1に記載の凍結搬送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結対象物の搬送に用いられる凍結搬送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、不妊治療や再生医療などの医療分野、新薬の開発などの研究分野では、精子や卵子、胚、血液、細胞などの生物学的試料(以下、単に「試料」という。)の劣化を防ぐため、凍結保存するのが一般的である。凍結保存には、液体窒素(沸点-196℃)を収容した凍結保存容器が、試料を安定した状態で長期間保存できるため、広く用いられている。また、細胞性医薬品や低分子医薬品やワクチン等の医薬品、化学物質等の薬剤、食品等の物品を凍結し超低温環境下で保存することも求められている。以下、試料や物品などの凍結対象を「凍結対象物」という。
【0003】
また、凍結保存容器の中には、凍結対象物の搬送に用いられるドライシッパー(凍結搬送容器)がある(例えば、下記特許文献1を参照。)。ドライシッパーは、上部が開口した断熱容器と、断熱容器の上部開口部を閉塞する断熱蓋と、液体窒素を吸収した吸収材とを備えている。
【0004】
ドライシッパーでは、液体窒素が吸収材に吸収された状態で断熱容器内に保持されるため、仮に断熱容器が倒れたとしても、液体窒素が断熱容器の上部開口部から外部へと漏れ出す心配がない。したがって、断熱容器内の温度を超低温(-150℃以下)に保ったまま、凍結対象物をより安全に搬送することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来のドライシッパーは、断熱容器の内側に取り付けられた吸収材に液体窒素を吸収させた状態で使用される。このため、吸収材を取り外すことができないため、使用後に断熱容器の内側の清掃や消毒などのメンテナンスを行うことが困難である。また、ドライシッパーは繰り返し使用されるが、液体窒素の吸収効率を高めるためには、使用後に吸収材を十分に乾燥させてから、新たに液体窒素を吸収材に吸収させて使用する必要がある。
【0007】
また、ドライシッパーでは、吸収材に吸収された液体窒素が断熱容器内で気相状態となって徐々に減っていくため、この吸収材に吸収された液体窒素が減少した場合、吸収材に液体窒素を再吸収させる必要がある。この場合、凍結対象物を保管したキャニスターなどの保管具を断熱容器の中から一旦取り出す必要がある。また、凍結対象物の温度管理のため、断熱容器から取り出した保管具を別の凍結保存容器などに速やかに移し替える必要がある。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、メンテナンス性に優れ、なお且つ、凍結対象物の温度管理を適切に行うことが可能な凍結搬送容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1] 凍結対象物の搬送に用いられる凍結搬送容器であって、
上部が開口した断熱容器と、
前記断熱容器の上部開口部を閉塞する断熱蓋と、
液体窒素を吸収した状態で、前記断熱容器内に保持される保冷ユニットとを備え、
前記断熱容器の内側には、前記凍結対象物を保管する保管具を収容するための収容空間が設けられ、
前記収容空間に位置する前記保管具を前記断熱容器内に収容した状態のまま、前記断熱容器の上部開口部を通して前記保冷ユニットが着脱自在とされていることを特徴とする凍結搬送容器。
[2] 前記保冷ユニットには、前記収容空間を区画する貫通孔が上下方向に貫通して設けられていることを特徴とする上記[1]に記載の凍結搬送容器。
[3] 前記保冷ユニットは、液体窒素を吸収する吸収材が設けられた保冷部と、前記保冷部の上部に位置して断熱材が設けられた断熱部とを有する上記[1]に記載の凍結搬送容器。
[4] 前記保冷ユニットは、前記断熱部の上部に位置して前記断熱容器の上部に固定される固定部を有する上記[3]に記載の凍結搬送容器。
[5] 複数の前記保冷ユニットが前記収容空間の周囲を囲んだ状態で設けられている上記[1]に記載の凍結搬送容器。
[6] 前記断熱容器の内側の底部には、前記保管具を支持する支持部が設けられている上記[1]に記載の凍結搬送容器。
[7] 前記支持部は、前記断熱容器内に保持された前記保冷ユニットと当接されることによって、前記断熱容器の半径方向における前記保冷ユニットの移動を規制する上記[6]に記載の凍結搬送容器。
[8] 前記保冷ユニットは、液体窒素を吸収する吸収材が設けられた保冷部と、前記保冷部の上部に位置して断熱材が設けられた断熱部と、前記断熱部の上部に位置する位置決め部とを有し、
前記断熱容器の上部には、ガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、前記位置決め部に対応した形状のガイド部を含み、
前記保冷ユニットが前記ガイド部に沿って前記断熱容器の上下方向に案内されると共に、前記ガイド部の内側に前記位置決め部が位置することによって、前記ガイド部材に対して前記保冷ユニットが位置決めされる上記[1]に記載の凍結搬送容器。
[9] 前記ガイド部材の上部には、押さえ部材が着脱自在に設けられ、
前記押さえ部材は、前記断熱容器内に保持された前記保冷ユニットと当接されることによって、前記断熱容器の上下方向における前記保冷ユニットの移動を規制する上記[8]に記載の凍結搬送容器。
[10] 前記断熱蓋には、前記収容空間に挿入される断熱凸部が設けられている上記[1]に記載の凍結搬送容器。
[11] 前記断熱容器は、真空断熱構造を有する上記[1]に記載の凍結搬送容器。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、メンテナンス性に優れ、なお且つ、凍結対象物の温度管理を適切に行うことが可能な凍結搬送容器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るドライシッパー及び保管具の構成を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示すドライシッパーの保管具が収容された状態を一部切り欠いて示す断面斜視図である。
【
図3】
図1に示すドライシッパーの保管具が収容された状態を示す平面図である。
【
図4】
図1に示すドライシッパーの保管具が収容された状態を示す半断面図である。
【
図5】
図1に示すドライシッパーを構成する断熱容器及び複数の保冷ユニットを示す分解斜視図である。
【
図6】断熱容器内に複数の保冷ユニットが保持された状態を一部切り欠いて示す断面斜視図である。
【
図7】断熱容器内に複数の保冷ユニットが保持された状態を示す平面図である。
【
図8】断熱容器内に複数の保冷ユニットが保持された状態を示す半断面図である。
【
図10】断熱容器の構成を一部切り欠いて示す断面斜視図である。
【
図11】複数の保冷ユニットを取り外した状態で、断熱容器内に保管具が収容された状態を一部切り欠いて示す断面斜視図である。
【
図13】保冷ユニットの変形例を示す斜視図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態に係るドライシッパーを構成する断熱容器及び複数の保冷ユニットの一部を切り欠いて示す断面斜視図である。
【
図15】断熱容器の内側に複数の保冷ユニットが収容された状態を示す平面図である。
【
図16】断熱容器の内側に複数の保冷ユニットが収容された状態を示す半断面図である。
【
図17】断熱容器の構成を一部切り欠いて示す断面斜視図である。
【
図18】本発明の第3の実施形態に係るドライシッパーの構成を示す分解斜視図である。
【
図19】
図18に示すドライシッパーを構成する断熱容器及び保冷ユニットを一部切り欠いて示す断面斜視図である。
【
図20】断熱容器内に保冷ユニットが保持された状態を示す平面図である。
【
図21】断熱容器内に保冷ユニットが保持された状態を示す半断面図である。
【
図22】断熱容器の構成を一部切り欠いて示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば
図1~
図13に示すドライシッパー1Aについて説明する。
【0014】
なお、
図1は、ドライシッパー1A及び保管具50の構成を示す分解斜視図である。
図2は、ドライシッパー1Aの保管具50が収容された状態を一部切り欠いて示す断面斜視図である。
図3は、ドライシッパー1Aの保管具50が収容された状態を示す平面図である。
図4は、ドライシッパー1Aの保管具50が収容された状態を示す半断面図である。
図5は、ドライシッパー1Aを構成する断熱容器2及び複数の保冷ユニット4を示す分解斜視図である。
図6は、断熱容器2内に複数の保冷ユニット4が保持された状態を一部切り欠いて示す断面斜視図である。
図7は、断熱容器2内に複数の保冷ユニット4が保持された状態を示す平面図である。
図8は、断熱容器2内に複数の保冷ユニット4が保持された状態を示す半断面図である。
図9は、断熱容器2の構成を示す平面図である。
図10は、断熱容器2の構成を一部切り欠いて示す断面斜視図である。
図11は、複数の保冷ユニット4を取り外した状態で、断熱容器2内に保管具50が収容された状態を一部切り欠いて示す断面斜視図である。
図12は、保冷ユニット4の構成を示す斜視図である。
図13は、保冷ユニット4の変形例を示す斜視図である。
【0015】
本実施形態のドライシッパー1Aは、
図1~
図4に示すように、凍結対象物(図示せず。)の搬送に用いられる凍結搬送容器である。ドライシッパー1Aは、複数の凍結対象物を保管する保管具50を内部に収容して、気相状態の液体窒素により内部を超低温(-150℃以下)に保ったまま、凍結対象物を搬送するものである。
【0016】
保管具50は、
図1に示すように、複数の凍結対象物を上下方向(高さ方向)に並べて収納するラックを構成している。保管具50は、例えばステンレスやアルミニウム合金などの板金からなり、全体として上下方向に延びる略直方体形状を有している。また、保管具50の上部中央部には、取手50aが設けられている。
【0017】
なお、保管具50については、搬送対象となる凍結対象物を保管可能なものであればよく、このようなラックを構成するものに限らず、例えばドロワーやキャニスターなどの任意の保管具を用いることが可能である。また、本実施形態のドライシッパー1Aの内部に収容可能なものあれば、保管具50の構成については特に限定されるものではない。
【0018】
本実施形態のドライシッパー1Aは、
図1に示すように、上部が開口した断熱容器2と、断熱容器2の上部開口部2aを閉塞する断熱蓋3と、液体窒素を吸収した状態で、断熱容器2内に保持される複数(本実施形態では4つ)の保冷ユニット4と、断熱容器2の上部に設けられたガイド部材5と、ガイド部材5の上部に着脱自在に設けられた押さえ部材6とを備えている。
【0019】
断熱容器2は、
図9及び
図10に示すように、真空断熱構造を有する二重容器からなる。具体的に、この容器本体2は、例えばアルミニウム合金やステンレス等の金属からなる有底円筒状の外容器7及び内容器8と、例えばエポキシ樹脂等の断熱材からなる円筒状の断熱筒9と、例えばアルミニウム合金やステンレス等の金属からなる円形リング状の上壁板10と、例えばエポキシ樹脂等の断熱材からなる棒状の下部サポート11とを有している。
【0020】
断熱容器2では、外容器7の内側に内容器8が同心円状に収容されると共に、外容器7の内側の底面中央部と内容器8の外側の底面中央部との間が下部サポート11を介して支持されている。また、外容器7の開口端部と上壁板10との外周端部とを重ね合わせた状態で、互いの重ね合わせ部分が全周に亘って接合されている。断熱筒9は、内容器8の開口端部と上壁板10の内周端部との間で、内容器8の内周面と面一となるように取り付けられている。
【0021】
これにより、断熱筒9の上端部は、断熱容器2の上部開口部2aとして、平面視で円形状に開口している。また、断熱容器2の内側は、上部開口部2aと同径のまま、内容器8の底部に向かって円筒状に形成されている。
【0022】
また、外容器7及び上壁板10と内容器8及び断熱筒9との間には、真空断熱層12が設けられている。真空断熱層12は、上壁板9に設けられた脱気口(図示せず。)から脱気した後に、この脱気口を栓体13で塞ぐことによって高真空に形成されている。
【0023】
断熱容器2内側には、保管具50を支持する支持部14が設けられている。支持部14は、内容器4の底面中央部から上方に向かって起立した脚部14aと、脚部14の先端に取り付けられた支持板14bとを有している。また、支持板14は、保管具50の形状に合わせて、平面視で矩形状(本実施形態では正方形状)に形成されている。保管具50は、
図11に示すように、この支持板14上に載置することが可能となっている。
【0024】
断熱蓋3は、
図1に示すように、例えばアルミニウム合金やステンレス等の金属からなり、平面視で円形状の天壁部3aと、天壁部3aの周囲から下方に向かって突出された周壁部3bとを有している。また、断熱蓋3の下面中央部には、断熱凸部15が突出して設けられている。断熱凸部15は、例えばポリスチレンやポリエチレン、ポリウレタン等の発泡樹脂を用いた断熱材からなり、断熱筒9に対応した長さ(高さ)で、全体として上下方向に延びる略直方体形状を有している。
【0025】
断熱容器2の内側には、
図1~
図4及び
図6~
図8に示すように、保管具50を収容するための収容空間Kが設けられている。複数の保冷ユニット4は、この収容空間Kの周囲を囲んだ状態で断熱容器2内に保持されると共に、断熱容器2に対して着脱自在に設けられている。
【0026】
本実施形態のドライシッパー1Aでは、保管具50の形状に合わせて略直方体状に区画された収容空間Kの四方を囲む位置に、4つの保冷ユニット4が着脱自在に設けられている。また、本実施形態のドライシッパー1Aでは、断熱容器2の上部開口部2aを断熱蓋3が閉塞したときに、断熱凸部15が上方から収納空間Kに挿入される構成となっている。
【0027】
各保冷ユニット4は、
図12に示すように、液体窒素を吸収する吸収材が設けられた保冷部16と、保冷部14の上部に位置して断熱材が設けられた断熱部17と、断熱部17の上部に位置する位置決め部18とを有している。
【0028】
保冷部16は、吸収材を収納するケースを構成している。ケースには、例えばアルミニウム合金やステンレス、銅等の金属を用いることができるが、それ以外の材料を用いてもよい。また、ケースの側面には、液体窒素が通過するスリットや孔部が設けられている。吸収材には、例えば液体窒素が吸収可能な樹脂や繊維や布などを用いることができる。保冷部16は、内容器8に対応した長さ(高さ)で、全体として上下方向に延びる略直方体形状を有している。
【0029】
断熱部17は、例えばポリスチレンやポリエチレン、ポリウレタン等の発泡樹脂を用いた断熱材からなり、断熱筒9に対応した長さ(高さ)で、全体として上下方向に延びる略直方体形状を有している。
【0030】
位置決め部18は、例えばアルミニウム合金やステンレス等の金属からなり、ガイド部材5に対応した厚みで、略矩形平板状に形成されている。また、位置決め部18には、幅方向の両側から突出された一対の位置決め凸部18aが設けられている。
【0031】
保冷ユニット4は、断熱容器2の形状に合わせて外面が全体として曲面、収容空間Kの形状に合わせて内面が全体として平面となる形状を有している。また、位置決め部18の上部には、取手4aが設けられている。
【0032】
なお、保冷ユニット4については、例えば
図13に示すように、保冷部16の外面のみが平面となる形状を有していてもよい。これにより、保冷部16のケースの形状を簡略化することが可能である。
【0033】
ガイド部材5は、
図1~
図11に示すように、例えばアルミニウム合金やステンレス等の金属からなり、断熱容器2の上部の形状に合わせて、全体として略円形平板形状を有している。ガイド部材5は、上壁板10に重ね合わされた状態で、上壁板10に対してネジ止めにより取り付けられている。なお、ガイド部材5については、上壁板10と一体に形成されたものであってもよい。また、ガイド部材5には、上述した断熱材などを用いてもよい。
【0034】
ガイド部材5の中央部には、開口部5aが設けられている。開口部5aは、断熱容器2の上部開口部2aの形状に合わせて、平面視で略円形状に開口している。
【0035】
ガイド部材5は、複数の保冷ユニット4の各々に対応した位置に、複数(本実施形態では4つ)のガイド部19を有している。各ガイド部19は、各保冷ユニット4の位置決め部18の形状に合わせて切り欠かれている。また、ガイド部19には、一対の位置決め凸部18aが係合される一対の位置決め凹部19aが設けられている。
【0036】
本実施形態のドライシッパー1Aでは、各保冷ユニット4が各ガイド部19に沿って断熱容器2の内側へと挿入される。また、保冷ユニット4がガイド部19に沿って断熱容器2の上下方向に案内されると共に、ガイド部19の内側に位置決め部18が位置することによって、ガイド部材5に対して保冷ユニット4が位置決めされた状態となる。
【0037】
これにより、断熱容器2内に保冷ユニット4を保持することが可能である。また、断熱容器2内に保持された複数の保冷ユニット4の内側には、上述した収容空間Kが区画されている。
【0038】
また、本実施形態のドライシッパー1Aでは、断熱容器2内に保持された保冷ユニット4の内面が支持板14b(支持部14)と当接されることによって、断熱容器2の半径方向における保冷ユニット4の移動を規制している。これにより、ドライシッパー1Aの搬送時において、断熱容器2内に保冷ユニット4を安定した状態で保持することが可能である。
【0039】
なお、ガイド部19と位置決め部18との形状については、上述した形状に特に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。また、本実施形態では、位置決め部18側に位置決め凸部18a、ガイド部19側に位置決め凹部19aが設けられた構成となっているが、位置決め部18側に位置決め凹部、ガイド部19側に位置決め凸部が設けられた構成とすることも可能である。さらに、位置決め部18及びガイド部19が互いに係合される位置決め凸部及び位置決め凹部を各々有する構成であってもよい。
【0040】
押さえ部材6は、例えばアルミニウム合金やステンレス等の金属からなり、ガイド部材5の開口部5aの形状に合わせて、全体として略円形平板形状を有している。また、押さえ部材6の中央部には、開口部6aが設けられている。開口部6aは、収容空間Kの形状に合わせて、平面視で略矩形状(本実施形態では正方形状)に開口している。
【0041】
また、押さえ部材6は、その外側の周囲から下方に向かって突出された外側周壁部6bと、その内側の周囲から下方に向かって突出された内側周壁部6cとを有している。外側周壁部6b及び内側周壁部6cは、保冷ユニット4の取手4aの高さに合わせて突出して設けられている。
【0042】
押さえ部材6は、複数の保冷ユニット4の上部を覆った状態で、ガイド部材5に対してネジ止めにより固定される。なお、押さえ部材6のガイド部材5に対する固定手段については、このようなネジ止めに限らず、任意の固定手段を用いることが可能である。また、押さえ部材6には、上述した断熱材を用いてもよい。
【0043】
本実施形態のドライシッパー1Aでは、断熱容器2内に保持された各保冷ユニット4に押さえ部材6が当接されることによって、断熱容器2の上下方向における各保冷ユニット4の移動を規制している。これにより、ドライシッパー1Aの搬送時において、断熱容器2内に保冷ユニット4を安定した状態で保持することが可能である。
【0044】
なお、押さえ部材6については、必ずしも必要な構成ではないため、場合によっては省略することも可能である。この場合、保冷ユニット4をガイド部材5に対して固定する任意の固定手段を設けた構成とすればよい。
【0045】
以上のような構成を有する本実施形態のドライシッパー1Aでは、上述した収容空間Kに位置する保管具50を断熱容器2内に収容した状態のまま、断熱容器2の上部開口部2aを通して各保冷ユニット4を個別に取り付けたり、取り外したりすることが可能である。
【0046】
したがって、本実施形態のドライシッパー1Aでは、何れかの保冷ユニット4に吸収された液体窒素が減少した場合に、断熱容器2から保管具50を取り出すことなく、保冷ユニット4に液体窒素を再吸収させたり、液体窒素を吸収させた別の保冷ユニット4と交換したりすることが可能である。
【0047】
これにより、凍結対象物の温度上昇を抑制し、凍結対象物を低温のまま安定した状態で保冷することが可能である。また、周囲の温度変化に対する影響を抑えつつ、この凍結対象物の温度管理を適切に行うことが可能である。
【0048】
また、本実施形態のドライシッパー1Aでは、使用後に複数の保冷ユニット4を容易に取り外すことが可能である。これにより、各保冷ユニット4及び断熱容器2の内側の清掃や消毒などの作業を簡単に且つ短時間で行うことができ、優れたメンテナンス性を得ることが可能である。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば
図14~
図17に示すドライシッパー1Bについて説明する。
【0050】
なお、
図14は、ドライシッパー1Bを構成する断熱容器2及び複数の保冷ユニット4の一部を切り欠いて示す断面斜視図である。
図15は、断熱容器2の内側に複数の保冷ユニット4が収容された状態を示す平面図である。
図16は、断熱容器2の内側に複数の保冷ユニット4が収容された状態を示す半断面図である。
図17は、断熱容器2の構成を一部切り欠いて示す断面斜視図である。また、以下の説明では、上記ドライシッパー1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0051】
本実施形態のドライシッパー1Bは、
図14~
図17に示すように、断熱容器2の内側に略円柱状に区画された収容空間Kを設け、この収容空間Kの周囲を囲む位置に、複数(本実施形態では6つ)の保冷ユニット4が着脱自在に設けられた構成を有している。それ以外は、上記ドライシッパー1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0052】
断熱容器2の支持部14は、平面視で円形状に形成された支持板14bと、支持板14bの周囲から上方に向かって突出された筒状部14cとを有している。
【0053】
各保冷ユニット4は、断熱容器2の形状に合わせて外面が全体として曲面、収容空間Kの形状に合わせて内面が全体として曲面となる形状を有している。また、位置決め部18には、外周端部の中央部から外側に向かって突出された位置決め凸部18aが設けられている。
【0054】
ガイド部材5は、複数の保冷ユニット4の各々に対応した位置に、複数(本実施形態では6つ)のガイド部19を有している。ガイド部19には、位置決め凸部18aが係合される位置決め凹部19aが設けられている。
【0055】
本実施形態のドライシッパー1Bでは、各保冷ユニット4が各ガイド部19に沿って断熱容器2の内側へと挿入される。また、保冷ユニット4がガイド部19に沿って断熱容器2の上下方向に案内されると共に、ガイド部19の内側に位置決め部18が位置することによって、ガイド部材5に対して保冷ユニット4が位置決めされた状態となる。
【0056】
これにより、断熱容器2内に保冷ユニット4を保持することが可能である。また、断熱容器2内に保持された複数の保冷ユニット4の内側には、上述した収容空間Kが区画されている。
【0057】
また、本実施形態のドライシッパー1Bでは、断熱容器2内に保持された保冷ユニット4の内面が支持板14b及び筒状部14c(支持部14)と当接されることによって、断熱容器2の半径方向における保冷ユニット4の移動を規制している。これにより、ドライシッパー1Bの搬送時において、断熱容器2内に保冷ユニット4を安定した状態で保持することが可能である。
【0058】
なお、図示を省略するものの、保管具50は、本実施形態のドライシッパー1Bの内部(収容空間K)に収容可能なものあれば、保管具50の構成については特に限定されるものではない。また、断熱蓋3の断熱凸部15は、収容空間Kの形状に合わせて、全体として上下方向に延びる略円柱形状を有している。押さえ部材6の開口部6aは、収容空間Kの形状に合わせて、平面視で円形状に開口している。
【0059】
以上のような構成を有する本実施形態のドライシッパー1Bでは、上記ドライシッパー1Aと同様の効果を得ることが可能である。すなわち、収容空間Kに位置する保管具50を断熱容器2内に収容した状態のまま、断熱容器2の上部開口部2aを通して各保冷ユニット4を個別に取り付けたり、取り外したりすることが可能である。
【0060】
したがって、本実施形態のドライシッパー1Bでは、何れかの保冷ユニット4に吸収された液体窒素が減少した場合に、断熱容器2から保管具50を取り出すことなく、保冷ユニット4に液体窒素を再吸収させたり、液体窒素を吸収させた別の保冷ユニット4と交換したりすることが可能である。
【0061】
これにより、凍結対象物の温度上昇を抑制し、凍結対象物を低温のまま安定した状態で保冷することが可能である。また、周囲の温度変化に対する影響を抑えつつ、この凍結対象物の温度管理を適切に行うことが可能である。
【0062】
また、本実施形態のドライシッパー1Bでは、使用後に複数の保冷ユニット4を容易に取り外すことが可能である。これにより、各保冷ユニット4及び断熱容器2の内側の清掃や消毒などの作業を簡単に且つ短時間で行うことができ、優れたメンテナンス性を得ることが可能である。
【0063】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態として、例えば
図18~
図22に示すドライシッパー1Cについて説明する。
【0064】
なお、
図18は、ドライシッパー1Cの構成を示す分解斜視図である。
図19は、ドライシッパー1Cを構成する断熱容器2及び保冷ユニット40を一部切り欠いて示す断面斜視図である。
図20は、断熱容器2内に保冷ユニット40が保持された状態を示す平面図である。
図21は、断熱容器2内に保冷ユニット40が保持された状態を示す半断面図である。
図22は、断熱容器2の構成を一部切り欠いて示す断面斜視図である。また、以下の説明では、上記ドライシッパー1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0065】
本実施形態のドライシッパー1Cは、
図18~
図22に示すように、上記複数の保冷ユニット4の代わりに、保冷ユニット40を備えている。また、押さえ部材6が省略されている。それ以外は、上記ドライシッパー1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0066】
保冷ユニット40は、液体窒素を吸収する吸収材が設けられた保冷部41と、保冷部の上部に位置して断熱材が設けられた断熱部42と、断熱部42の上部に位置して断熱容器2の上部に固定される固定部43と、保冷部41、断熱部42及び固定部43の中央部を上下方向(高さ方向)に貫通する貫通孔44とを有している。
【0067】
本実施形態のドライシッパー1Cでは、この貫通孔44により収容空間Kが略直方体状に区画されている。また、断熱容器2の上部開口部2aを断熱蓋3が閉塞したときに、断熱凸部15が上方から収納空間K(貫通孔44)に挿入される構成となっている。
【0068】
保冷部41は、吸収材を収納するケースを構成している。ケースには、例えばアルミニウム合金やステンレス、銅等の金属を用いることができるが、それ以外の材料を用いてもよい。また、ケースの側面には、液体窒素が通過するスリットや孔部が設けられている。吸収材には、例えば液体窒素が吸収可能な樹脂や繊維や布などを用いることができる。
【0069】
保冷部41は、内容器8の内側の形状に合わせて、全体として上下方向に延びる略円柱形状を有している。また、保冷部41の中央部には、貫通孔44を構成する四角筒状の孔部41aが上下方向に貫通して設けられている。
【0070】
断熱部42は、例えばポリスチレンやポリエチレン、ポリウレタン等の発泡樹脂を用いた断熱材からなり、断熱筒9の内側に形状に合わせて、全体として上下方向に延びる略円柱形状を有している。また、断熱部42の中央部には、貫通孔44を構成する四角筒状の孔部42aが上下方向に貫通して設けられている。
【0071】
固定部43は、例えばアルミニウム合金やステンレス等の金属からなり、断熱容器2の上部の形状に合わせて、全体として略円形平板形状を有している。また、押さえ部材43の中央部には、貫通孔44を構成する開口部43aが設けられている。開口部43aは、貫通孔44(収容空間K)の形状に合わせて、平面視で略矩形状(本実施形態では正方形状)に開口している。また、固定部43の上部には、一対の取手40aが設けられている。
【0072】
本実施形態のドライシッパー1Cでは、保冷ユニット40が上部開口部2aを通して断熱容器2の内側へと挿入される。これにより、断熱容器2内に保冷ユニット40を保持することが可能である。
【0073】
また、本実施形態のドライシッパー1Cでは、断熱容器2内に保持された保冷ユニット40の内面が支持板14b(支持部14)と当接されることによって、断熱容器2の半径方向における保冷ユニット40の移動を規制している。これにより、ドライシッパー1Cの搬送時において、断熱容器2内に保冷ユニット40を安定した状態で保持することが可能である。
【0074】
さらに、本実施形態のドライシッパー1Cでは、固定部43が上壁板10に重ね合わされた状態で、上壁板10に対してネジ止めにより固定される。これにより、断熱容器2の上下方向における保冷ユニット40の移動を規制し、ドライシッパー1Cの搬送時において、断熱容器2内に保冷ユニット40を安定した状態で保持することが可能である。
【0075】
なお、固定部43の上壁板10に対する固定手段については、このようなネジ止めに限らず、任意の固定手段を用いることが可能である。
【0076】
以上のような構成を有する本実施形態のドライシッパー1Cでは、上記ドライシッパー1Aと同様の効果を得ることが可能である。すなわち、収容空間Kに位置する保管具50を断熱容器2内に収容した状態のまま、断熱容器2の上部開口部2aを通して各保冷ユニット40を取り付けたり、取り外したりすることが可能である。
【0077】
したがって、本実施形態のドライシッパー1Cでは、保冷ユニット40に吸収された液体窒素が減少した場合に、断熱容器2から保管具50を取り出すことなく、保冷ユニット40に液体窒素を再吸収させたり、液体窒素を吸収させた別の保冷ユニット40と交換したりすることが可能である。
【0078】
これにより、凍結対象物の温度上昇を抑制し、凍結対象物を低温のまま安定した状態で保冷することが可能である。また、周囲の温度変化に対する影響を抑えつつ、この凍結対象物の温度管理を適切に行うことが可能である。
【0079】
また、本実施形態のドライシッパー1Cでは、使用後に保冷ユニット40を容易に取り外すことが可能である。これにより、各保冷ユニット40及び断熱容器2の内側の清掃や消毒などの作業を簡単に且つ短時間で行うことができ、優れたメンテナンス性を得ることが可能である。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記保冷ユニット4,40では、断熱部17,42が一体に設けられた構成となっているが、このような構成に限らず、上記保冷ユニット4,40とは別体に断熱部17,42が設けられた構成であってもよい。
【0081】
また、上記保冷ユニット40では、断熱部42と固定部43とが一体に設けられた構成となっているが、このような構成に限らず、上記保冷ユニット40とは別体に固定部43が設けられた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1A,1B,1C…ドライシッパー(凍結搬送容器) 2…断熱容器 2a…上部開口部 3…断熱蓋 4…保冷ユニット 5…ガイド部材 6…押さえ部材 7…外容器 8…内容器 9…断熱筒 10…上壁板 11…下部サポート 12…真空断熱層 13…栓体 14…支持部 15…断熱凸部 16…保冷部 17…断熱部 18…位置決め部 19…ガイド部 40…保冷ユニット 41…保冷部 42…断熱部 43…固定部 44…貫通孔